令和元年12月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇2番(上原康樹君) 無所属の上原康樹でございます。初めての一般質問に当たり、県民の皆様によく届く言葉で、また、私の岩手への思いを込めながら質問させていただきたいと存じます。
 質問項目は八つあります。まず、災害時における知事の役割について伺います。
 日本列島を襲う台風は年ごとに大型化し、大雨や洪水などの被害は甚大です。岩手県におきましても、平成28年の台風第10号、ことし秋の台風第19号と、人の命を奪い深い傷跡を残しました。改めて、お亡くなりになった方々の御冥福を祈り、被災された皆様にお見舞い申し上げます。
 実に予測を超える事態、今までの経験が通用しない事態が相次いでいます。こうした自然災害の脅威が迫る中、まさにそのとき岩手をどう守るか、一刻を争う中で情報の提供、発信はとても大切です。それをより効果的に行うにはどうすべきかと考えるとき、県の存在、役割に思い至ります。
 県には、実に多くの情報が入ってきます。気象台、警察、消防、交通機関、さらには、各市町村から情報が集中します。それを総合的に分析、判断して、岩手全体が今どんな危機に直面しているのか、どういう備え、構えをとるべきか、県が強く、広く訴えるべきだと思うのです。私は、その先頭に立つべきは、知事ではないかと思っております。いささか唐突かもしれません、前例がないことかもしれませんが、近年の自然災害には、新しい構えで臨むという発想が求められていると感じます。
 被害を最小限にとどめるための体制づくりや迅速な避難行動を求める呼びかけを、知事が、みずからラジオ、テレビを通じて行うこともあってよいと思います。可能であれば、NHK、民放、全局同時に放送し、知事が県民に訴えるのです。1時間に1度、いや、30分に1度、1分でも2分でもいいのです。知事がお顔を出して、状況の変化に応じて県民に呼びかけるのです。それを受けて県民は危機意識を持ち、危機の回避へ向かうことが期待されます。さらに市町村と県との連携がおのずと強まるのではないでしょうか。メディアを通じて、中継で、ライブで、今県は、県民の皆さんの安全のために全力を尽くしている、機能している、動き出しているということを示せば、岩手全体が防災という一点でまとまるのではないか、そう思います。
 切迫した事態の中で、刻一刻変化する状況の中で、人の命を守ろうという意識を明確に持ってもらうということ、そのための呼びかけを、メディアを通じて知事が行うほうが、よほど重みがあり効果があると思います。43年間、報道現場にいた私の実感でございます。
 各放送局がそれぞれに大小さまざまな災害情報、気象情報を出す中で、住民は、ともすると、状況の整理がつかなくなるのではないかと想像してきました。常に大きな視野から発信される情報や呼びかけが必要だと感じているところです。
 深刻な事態の中では、県の災害対策本部を一つの情報発信基地にしてもよいかと存じます。テレビカメラを置いて、走り回る職員の姿が見えていてもよいと思います。各放送局の情報とあわせて、核心の部分は県が先頭になって発信する、災害と戦う県を目に見えるようにする、そうすることで情報全体への信頼感が生まれ、その後の県民の行動、活動につながると思います。
 単純なことかもしれませんが、県民にしっかりとした意識を持っていただくためには、シンプルかつインパクトのある呼びかけが一番です。技術的なことは各放送局との事前協議で解決するはずです。みんなプロです。
 そこで質問いたします。非常時における知事によるメディアを通じた呼びかけ、発信について、お考えをお聞かせください。
 次に、放射性物質を含む水の海洋放出について伺います。
 言葉というのは大切です。物事をどのように受けとめているのか、言葉にあらわれます。これから知事にお尋ねすることは、原発事故の現場から海へ放流が検討されている水について、その水をどう名づけるかということです。単なる水でないことは明らかです。
 3.11の大津波を受けてコントロール不能となった東京電力福島第一原子力発電所の高温で溶けて崩れた心臓部、そこから発生する高濃度の放射能を含んだ水は、今も日々ふえ続けています。この問題の水が6年前、2013年、海へ漏れ出す事故があり世界的に問題になりました。福島県のみならず、岩手県の漁業にも痛手となりました。その後も、問題の水はタンクにためられ続けて、敷地内の貯蔵タンクは837基にも及び、貯蔵は限界に近づいているとされています。
 こうした状況の中、ことし9月10日、原田前環境大臣は、放射能を含む水を処理して薄めて海へ放流するほかに手だてはないと発言されました。この水を政府、東京電力側は、処理水であるとするようです。しかし、幾ら処理しても処理し切れないものが残ります。トリチウムという放射性物質です。トリチウムは水素と性質が似ているため水から分離できず、東京電力の設備でも唯一除去できないということです。トリチウムは人の細胞に浸透し、遺伝子を破壊すると言われています。トリチウムを含んだ排水は、現在およそ100万トンがタンクに保管されています。この水が薄められた状態で海に放出されることが検討されているわけです。大変なことだと思います。
 今、この水を汚染水と呼ぶのか、それとも処理水と呼ぶのか、議論になっているところです。その言葉の選択は、つまり、原発に対する認識が問われるものです。東日本大震災津波の被害からの復旧、復興を進める我が岩手県の先頭に立たれる知事は、太平洋に放流が検討されている水をどう受けとめ、表現するのでしょうか。
 質問いたします。問題をはらむ汚染水とするか、問題のないレベルまで処理された処理水とするか、あるいはまたトリチウム水とでも言うのか、お聞かせください。
 福島第一原発の事故の後、汚染水が一時海に流れ出た事実により、福島県の漁業者は窮地に立たされました。海外から輸入制限を受け、国内にも拒否反応が出ました。幾ら福島県と漁業者が、とれた魚介類をモニタリングして問題なしとしても、思うように売れないと聞いています。こうした状況の中、トリチウムを含んだ水が薄められるにせよ、太平洋に大量に放出されれば漁業に及ぼす影響ははかり知れません。海に仕切りはないのです。懸命に復興に取り組んできた岩手県の沿岸漁業にとって、これは不安の波です。
 質問いたします。原発から出た水の海洋放出の可能性について、岩手県の漁業に携わる方々の不安は大きいものと思いますが、県はどのような対応を図っていくのか伺います。
 次は、森林の伐採と森林環境の保全について伺います。
 岩手県は日本有数の森林県です。広大な県の面積の8割は森林です。それは岩手の豊かな自然の象徴、理想郷イーハトーブという言葉が重なり、岩手の心の宝にも思えてきます。ところが、近年、岩手の森では樹木の伐採が盛んです。目を見張る速さで木々が切り倒され、運び去られ、一山丸裸という光景が至るところに広がっています。私は見てきています。日ごろ森林散策を楽しんできた私は、その手際のよさ、思い切りのよさに目を見張っているところです。いささか情緒的ではありますが、美しい森の記憶がばっさり削り取られていく気持ちになります。しかし、まあ、これが林業というものなのかとも思い直します。
 戦後間もないころ、荒廃していた国土に植樹する活動が起こり、それが雇用の場を生み、森林は再生されてきました。そして時代は昭和から平成、そして令和に至り、かつて植えられた木々はすっかり成長、伐採の時期を迎えています。人々の心を癒やしてくれる森林は、林業という生産現場、なりわいの場となっています。加えて、新しいエネルギー、バイオマス発電が普及し、木を燃やして電力を生み出す仕組みの材料、素材となる木材への需要は高まり、森林伐採の手は山の奥へ奥へと進んでいます。
 さて、こうした状況の中で、林業に関する法律が変わりました。国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案がことし6月、国会で可決、成立しました。これは、全国の国有林で、最長50年間、大規模に木を伐採、販売する権利を民間の業者に与えるという法律でございます。全国の森林の3割を占める国有林の伐採を民間へ開放し、林業の成長を促すというものです。しかし、どうなのでしょうか。林業の基本の一つに、木を切ったら木を植えるという再造林の作業がありますが、このたび改正された法律には、伐採する者の再造林の義務は明記されていません。不安視する向きもありますが、国が責任を持って再造林を行うと明言されているようです。そのとおりならいいのですが、人手不足の林業です。
 ここで質問いたします。作業に当たることになる方の多くは、地元岩手の林業従事者の皆さんになると思われますが、着実な再造林、伐採の後の植樹の実施は可能でしょうか。
 岩手県の森林面積117万7、000ヘクタールと広大です。そのうちの3分の1は国有林。国有林だから県は無関係かというと、そうではありません。国有林と岩手県の民有林の間に仕切りはありません。ともに岩手の大地に連続して広がるものです。森林であり、環境であり、さらに言えば風景でもあります。
 質問いたします。県には、岩手の財産とも言える森林全体に目を配り、守り、育てていく使命があると考えますが、伐採期を迎えた今、その使命はますます重要になると思います。どう、県は取り組んでいくのでしょうか。
 次に、水道事業の将来構想について伺います。
 水は人の暮らしにとって不可欠のものです。岩手には豊かな水資源があり、都会から来た人はそのうまさに驚きます。一般家庭の水道料金は、盛岡市の場合は月に3、500円ほど、ほかの市町村も同程度の料金です。安定して比較的安く、良質な水が手に入る。私たちにとって水は空気のようなものです。ところが、その水が、水道水がこれから先どうなっていくのか、いささか不透明な状態になってきました。
   〔副議長退席、議長着席〕
 既に、11月22日のNHKニュースで報道されたとおり、奥州市と金ケ崎町に水道水を供給している行政事務組合、正式名称は奥州金ケ崎行政事務組合は、人口減少による水道水の需要の低迷などを理由に、自治体に請求する来年度の水道利用料金を今より4割引き上げることを決めました。4割です。各自治体は、一般家庭の水道料金については、値上げは当面ない見込みだが慎重に検討したいとしていて、財政への影響や今後の水道料金の値上げが懸念されるという報道でした。これは、値上げは当面ない見込みだが、先々値上げもあり得るから、一般の利用者の皆さん、そういうときにはよろしくお願いしますというお話です。
 質問いたします。県はこのような状態をどのように受けとめているのでしょうか。
 岩手県内の水道を支える市町村などの上水道事業者などは26を数えます。一方、給水人口は減るばかり。2003年度の127万人から2016年度には118万人となり、13年間で9万人の減少です。この状態が続けば、水道施設の維持管理、水道管などの老朽化対策が難しくなるものと思われます。15年後の2034年には、その維持管理に249億円が必要になると試算されています。
 質問いたします。その日に向けて、県はどのような準備を進めているのでしょうか。
 もう一つ、水道事業への民間企業の参入、民間活力の採用という動きが出てきています。鉄道が民営化され、郵便事業が民営化されてきた国ですから、ああ、水道も民営化されるのかという話にはすんなりいかないと考えます。水は人が生きる上での絶対条件の一つです。ですから、市町村、県などの公の団体がその運営に携わっているわけです。赤字が出れば補填して利用者優先、公共のために頑張っているわけです。その水を民間企業に委ねてよいものでしょうか。言うまでもなく、企業の大きな目的は利益を出すことです。利益を優先すれば、水道料金の値上げは容易に想像できます。さらには、縮小、撤退の可能性も否定できません。
 質問いたします。国は去年、水道法を改正して民間企業の参入を促していますが、岩手県もその流れに乗ることになるのでしょうか、伺います。
 次は、子ども食堂について伺います。
 今、日本全国に広がりを見せている子供たちへの支援活動。家に帰っても、お父さんやお母さんは仕事に出ていて、帰ってくるのは夜遅くなる、そういう子供さんが大勢いると聞きます。とりわけ、ひとり親世帯のお子さんは、つらい時間を過ごすことが多くなる傾向にあると言われています。これは、今の日本の厳しい労働状況を映し出すものです。そういう家庭の子供たちに手を差し伸べようと、9年前、東京都大田区の八百屋さんが始めたのが子ども食堂。安い料金で料理を提供してきました。子ども食堂は口コミで全国に広まりました。現在、その数は2、300カ所。岩手県内にも、ことし10月1日現在で38の子ども食堂が確認されています。
 この子ども食堂は、子供たちのつらい様子を見てやむにやまれず、見るに見かねて善意の市民の皆さんが始めたことなのです。行政に先行する形で始めた活動です。とうといことだと思います。
 この市民活動、子ども食堂について質問いたします。運営している方々が抱えている課題にはどのようなものがありますか。また、それに対して、県は具体的にどのような支援を行っているでしょうか。
 次に、情報通信技術を活用した関係人口の創出について伺います。
 冬を迎えますと道路の様子が気になりますが、インターネットで見られる道路情報は重宝します。見入っているうちに旅の気分になって時を忘れます。現在、岩手県道路情報のサイトには、県内72カ所の画像情報が提供されています。遠く離れていてもその土地の今の様子が見られます。しかも無料。見覚えのある風景、忘れられない風景があります。誰にもそういう風景があります。私も4年ほど名古屋に単身赴任していたとき、この道路情報を毎日のように見ていました。真冬の国道455号早坂高原の夜、電球に照らし出された高原の道、雪に染まっているその風景、ぐっときました。このカメラは心のふるさと便りでもあると思います。
 さて、県では、いわて県民計画(2019〜2028)におけるプロジェクトとして、情報通信技術等の第4次産業革命技術を活用し、岩手県の地域や人々と多様にかかわる関係人口の質的、量的な拡大を図り、世界中がいつでもどこでも岩手とつながる社会を実現しようとしています。
 そこで提案します。情報通信技術の活用を図りながら、岩手を代表する風景の今を伝えるような取り組みを通じて、関係人口の拡大を目指してはどうでしょうか。
 質問いたします。このような情報通信技術の活用による関係人口の創出について、県の考えをお聞かせください。
 次に、教員の時間外勤務について伺います。
 教員の皆さんの仕事の厳しさは、既に広く知られているところです。時間外労働がなくては1日に区切りをつけることもままならず、月に50時間、80時間と残業を重ね、身を削って100時間越えというケースも出てきます。
 岩手県の平成29年度のデータによりますと、県立学校で1カ月100時間以上の時間外勤務を経験した教師は668人でした。ならば救いの手が必要です。それは、制度的にはあるのです。学校は心身の不調を訴える教師のために、面接指導する医師を用意しています。産業医という医師です。ところが、驚いたことに、平成29年度、岩手県の県立学校で1カ月100時間以上の時間外勤務をした教師668人は、産業医との面接指導を受けていないのです。ただの1人もいない、ゼロです。
 質問いたします。この制度のことを教師の皆さんに十分に知らせているのでしょうか。また、その後、産業医との面接指導を受けた先生はいらっしゃるのでしょうか、お示しください。
 面接指導を受けなかったという事実は、ある意味怖いです。違和感に満ちた静けさです。教師は社会において高い志と献身的な働きを期待され、また、さらに、御本人も厳しい勤務をやり抜いてステップアップを目指す方もいらっしゃることでしょう。では、なぜ産業医の面接指導を受けないのか。受ける暇もないのか。いや、それだけではないと私は想像します。人の心の問題は深いのです。まず、あの教師は産業医の面接指導を受けたという事実により、精神的に問題を抱えていると管理職に知られてしまうことを心配し、それによって昇進の道が暗くなるかもしれないという疑心暗鬼があるとしたら、残念なことです。今の時代にそんな意識はあり得ないと否定し切れない問題です。
 お尋ねします。産業医との面接指導に、そのような不安はないということがきちんと周知されているのでしょうか。
 最後の質問です。選挙ポスターの掲示場に設置されている、いわゆる掲示板についてお尋ねします。
 法律においては掲示場というのですね。初めて知りました。この後の質問では、耳になじんでいる掲示板とさせていただきます。
 私ごとではありますが、さきの県議会議員選挙を経験して、選挙の現場、選挙の仕組みに向き合うことができました。中でも印象に残ったのは、選挙ポスターの掲示板です。盛岡選挙区のポスター掲示板、何カ所あるか御存じでしょうか。581カ所です。私はボランティアの皆さんに助けていただきながら、夫婦2人だけで281枚のポスターを張って回りました。知らぬまち、入り組んだ住宅街、迷路のような路地裏、人里離れた集落。地図を見てすんなりたどりつける掲示板は少なく、1枚のポスターを張るのに小一時間かかるのも珍しくありませんでした。かなたにほかの候補者の皆さんの演説の声を聞きながら、ひたすらポスターを張っておりました。切なかったです。この気持ちを県議会で絶対に言ってやろうと決めた次第です。まあ、地域と向き合うよい道のりでもあったと振り返ります。私がポスターを張っていると近所の方から、1枚張られていなくて気になって仕方がなかったよと声をかけられました。ポスターを待っていらっしゃったのですね。そのようにして、選挙戦4日目にやっと完了したポスター掲示でした。
 有権者と候補者を結ぶポスター、民主主義を支える選挙の象徴とも言えるポスター掲示板ですが、今回、私は幾つか疑問を抱きました。
 例を挙げます。鬱蒼とした長い長い道のり、山深い場所、民家が二、三軒の集落、そういう場所にもしっかりポスター掲示板はありました。さすが民主主義の国の選挙です。しかし、そこに至るまでの道というより林道は、左右から人の背丈を超える夏草に覆われ、通行は困難をきわめました。
 一方、幹線道路沿い、コンビニエンスストアの裏、人影のない猫の額ほどの公園の片隅、ぼうぼうたる夏草の茂みに埋もれるように掲示板が立っていました。まだあります。土手の上に立つ掲示板、上の段のポスターのてっぺんにホチキスの針を打つのは曲芸わざが求められました。三脚を置くことさえ困難な場所がありました。もう、ポスターを張る者のことを考慮していません。そして、花壇の後ろに立つ掲示板、これも忘れられませんでした。下の段に掲示された候補者のポスターは、半分花に隠れてしまっているのです。このように首をかしげながらの作業の中で、大きく印象に残ったことがあります。人が多く住む場所、人通りがある見通しのよいところに限って掲示板の設置が少ないということです。
 そこで質問いたします。一つ目、なぜポスター掲示板が今取り上げた事例のような場所にあるのでしょうか。掲示板設置の根拠をお示しください。二つ目、周辺環境の変化に伴うポスター掲示板の設置場所の調整は行っているのでしょうか。三つ目、こうした掲示板の実態を実際に確認の上、問題があれば改善しているのでしょうか。
 私の質問は以上でございます。御答弁をお聞きした上で、再質問をさせていただくこともあるかと存じます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 上原康樹議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、災害時における知事の役割についてでありますが、災害対策基本法では、住民に最も身近な自治体である市町村が、災害に関する情報の収集、伝達や居住者等に対する避難勧告、避難指示(緊急)の発令及び初動対応を行うこととされています。
 県としては、市町村によるこれらの情報発信等を迅速かつ的確に支援することが重要であると考えており、今回の台風第19号災害においても、風水害対策支援チームによる助言を行うとともに、知事を本部長とする災害対策本部を早期に設置し、被害情報の収集や初動対応を行ったところであります。
 岩手県地域防災計画では、台風、地震、津波などにより相当規模の災害が発生または発生するおそれがある場合には、県の災害対策本部を設置することとしており、本部長である知事は、災害救助法の適用、他の自治体への相互応援協力、自衛隊への災害派遣要請に加え、報道発表や県民への呼びかけなどの役割を担うこととなっております。
 災害対策本部員会議は、東日本大震災津波以降、報道機関に公開して実施するとともに、台風第19号災害においても、人命第一で対応することなど最優先で取り組むべき事項を本部長である私から指示しており、市町村や防災関係機関と共通認識を持って、災害対応や復旧等を進めることができたものと考えております。
 近年、災害が大型化、複雑化する中、災害時の知事の役割についても、よりよいあり方を追求していくべきと考えており、議員の御提案も参考に、さらなる向上を図ってまいりたいと思います。
 次に、放射性物質を含む水の呼称についてでありますが、東京電力福島第一原子力発電所事故から8年8カ月が経過しましたが、地下水等が原子炉建屋内に流れ込み、燃料デブリの冷却に用いた水に触れることにより、いまだに日々汚染水が発生しており、そのことが、復興の足かせや風評の原因になっていると重く受けとめております。
 福島第一原子力発電所で発生している汚染水は、多核種除去設備―ALPSなどによって処理され、発電所敷地内のタンクに貯蔵されており、国においては、この水を多核種除去設備等処理水と称しているところであります。
 多核種除去設備等処理水の取り扱いについては、現在、国の廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議に設置された多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会において、風評被害などの社会的な観点等も含めた総合的な検討が行われているものと承知しております。
 この件に関しましては、全国知事会及び北海道東北地方知事会から、国に対し、汚染水問題の解決に向け、原子炉建屋等の止水など汚染水をふやさないための抜本的対策を講ずるとともに、多核種除去設備等処理水の取り扱いについては、環境や風評への影響などを十分議論の上、国民に丁寧に説明しながら慎重に検討を進めるよう提言しているところであり、引き続き、国の小委員会での議論の動向を注視してまいります。
 次に、水道事業を取り巻く経営環境についてでありますが、人口減少に伴う水需要の減少が見込まれる一方で、水道施設や管路の老朽化に伴い更新需要が増加し、水道事業における費用の増大が想定されます。
 今後は、経費に見合った適正な水道料金の設定などによる財源確保や、業務の効率化などによる経費削減などの経営基盤の強化に取り組むとともに、水道料金の見直しなどに当たっては、説明会や広報などを通じ経営状況の現状と見通しを十分に伝え、水利用者である住民の理解を得ることが重要であると認識しております。
 国は、水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、昨年12月に水道法を改正し、広域連携や適切な資産管理、官民連携の推進などを盛り込むとともに、国、都道府県及び市町村の責務として、水道の基盤の強化に関する施策を策定し、推進または実施するよう努めなければならないこととしたところであります。
 こうした状況を踏まえ、県では、将来における本県の水道のあり方を示した新いわて水道ビジョンを本年10月に策定し、現状と将来の見通しを考慮し、水道サービスの持続性、安全な水の供給、危機管理の対応の三つの視点から課題を整理し、持続的な水道事業に向けた取り組みの方向性を取りまとめたところであります。
 水道は、県民生活に欠かすことのできない重要なライフラインでありますことから、県としては、将来にわたり、安全かつ安心して利用できる水道水が供給されるよう、広域連携の推進など水道の基盤の強化に向けた市町村等の取り組みを支援してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長上田幹也君登壇〕
〇農林水産部長(上田幹也君) まず、漁業への影響に関する対応についてでありますが、現在、国により設置された汚染水処理対策委員会の小委員会において、多核種除去設備等処理水の取り扱いについて、風評被害などの社会的な観点等を含め総合的な検討が行われていると承知しております。これに対し、県内の漁業関係者や各漁協等からは、風評被害等について不安を感じるとの声が寄せられているところであります。
 県では、小委員会における議論の動向を注視しながら、県内の漁業関係者や各漁協等の不安が解消されるよう、必要に応じ、国に対し説明を求めるなどの対応を検討してまいりたいと存じます。
 次に、再造林についてでありますが、本県の森林は、戦後造成してきた人工林資源が本格的な利用期を迎えており、本県の林業を持続的かつ健全に発展させていくためには、伐採後の再造林による森林資源の循環利用を進めていくことが重要であります。
 また、間伐など適切な森林整備を進めていくことは、山地災害の防止や二酸化炭素の森林吸収源対策など、森林の有する多面的機能を高度に発揮させる有効な取り組みであります。
 このように、再造林等を着実に進め、健全な森林を育成していくためには、林業の現場で活動する人材の育成や造林産業の省力化等を進めることが重要であります。
 このため県では、平成29年度にいわて林業アカデミーを開講いたしまして、林業の専門的な知識や技術を身につけた現場技術者の養成に取り組むとともに、岩手県林業労働対策基金と連携し、新規就業者の確保に向けた就職相談会を開催するほか、森林施業に必要な技術研修を実施しているところであります。
 また、植林が容易となるコンテナ苗木の活用や造林前の林地の整理作業の機械化など、造林作業の省力化等に取り組んできたところであり、その結果、再造林面積は着実に増加しております。
 県としては、今後とも、林業関係団体等と連携し、現場技術者の育成や造林作業の省力化等により、再造林を推進するなど森林資源の循環利用を進めるとともに、地球温暖化対策に貢献する健全な森林の育成に積極的に取り組んでまいります。
 次に、県の取り組みについてでありますが、県土の8割を占める豊富で多様な森林は、ただいま申し上げましたとおり、多面的な機能を有しておりまして、本県の貴重な財産として守り育てていくためには、長期的な視点に立った計画的かつ適切な森林の管理を推進していく必要がございます。
 このため、森林法に基づく森林計画制度のもとで、県では、県内の民有林について、造林などの森林整備や森林の保全に関する事項等を定めた地域森林計画を策定しており、また、国では、国有林の地域別の森林計画を策定しております。
 これらの計画の策定に当たりましては、森林法の規定に基づいて、国と県が相互に意見を聴取するなど計画内容の調整を図るほか、パブリックコメント等によりまして、市町村や関係機関、地域住民等からの意見聴取も行いまして、地域の声を反映した計画としているものであります。
 また、国有林と民有林の森林、林業施策等に関する情報を共有するため、本県と東北森林管理局では、定期的に森林・林業政策連絡協議会や技術交流発表会を実施しているほか、現場において、効率的な再造林の技術を習得する研修を共同で実施するなどの取り組みを行っております。
 県といたしましては、今後とも、国と連携し、適切な森林整備を進めるなどによりまして、本県の豊かな森林資源を守り、あわせて県土の保全等が図られるよう積極的に取り組んでまいります。
   〔環境生活部長大友宏司君登壇〕
〇環境生活部長(大友宏司君) まず、水道料金収入の減少についてでありますが、本年10月に策定した新いわて水道ビジョンでは、本県の水道事業の将来を見据え、おおむね30年先である2045年度までの給水収益の見通しを推計しており、人口減少に伴う水需要の減少とともに、料金収入の対象となる有収水量の減少が見込まれることから、現行の水道料金のままで推移した場合には、給水収益が2016年度の約230億円に対し、2045年度は約172億円となり、約25%減少すると見込んでいます。
 一方、浄水施設や管路等の水道施設の更新需要については、施設の耐用年数をもとに試算すると、ピークとなる2034年度には2016年度実績の約1.8倍になると見込んでいます。
 このような状況に対応していくため、各水道事業者においては、それぞれの経営状況と将来見通しを踏まえ、中長期的な経営の基本計画である経営戦略を策定する必要があり、県では、小規模な水道事業者等を対象に、現地指導や研修会の実施などを通じて戦略策定の支援を行っております。
 また、各水道事業者においては、中長期的な財政収支見通しに基づいて施設の更新や耐震化等を計画的に実行していくため、水道施設のライフサイクル全体にわたって効率的かつ効果的に管理運営するアセットマネジメントの導入の促進が図られるよう、セミナーの開催や事業者ごとの指導などを行っております。
 今後も引き続き、将来にわたり、安全かつ安心して利用できる水道水が供給されるよう、水道事業者における基盤強化に向けた取り組みを支援してまいります。
 次に、民間企業の参入についてでありますが、昨年12月の水道法の改正により、水道の基盤の強化のために官民連携を行うことは有効であり、多様な官民連携の選択肢をさらに広げるという観点から、市町村等が水道事業者等としての位置づけを維持しつつ、水道施設の運営権を民間事業者に設定できる方式、いわゆるコンセッション方式が創設されたところです。
 宮城県においては、このコンセッション方式を活用し、みやぎ型管理運営方式として、水道用水供給事業、工業用水道事業及び流域下水道事業の3事業について、一体的に運転管理と設備更新業務を民間事業者に委ねる宮城県上工下水一体官民連携運営事業の導入を行うため、関係する条例の改正案を本年11月議会に提案したと承知しております。
 岩手県では、水道用水供給事業を実施していないことから、宮城県のように、県が主体となってコンセッション方式の導入を進めることはできないものと考えております。
 コンセッション方式は、まだ全国で導入された事例はなく、本県のように、中山間地など条件不利地域を抱える事業者において有効に機能するものなのかなど、さまざまな観点から慎重に検討していく必要があると考えており、全国の状況も見据えながら研究していくべきものと考えております。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) 子ども食堂についてであります。
 県では、子ども食堂を運営している方々との意見交換などから、安定的に運営するための活動資金の確保や、食事や遊び場等における安全確保などが課題となっていると把握しています。
 また、新たに子ども食堂など子供の居場所を開設する団体においては、立ち上げに要する経費や運営等に関するノウハウの不足、スタッフの育成などが課題となっていると認識しています。
 子供の居場所に対する支援については、昨年5月に、県も参画して設立された子供の居場所づくりに取り組む団体の連携組織である子どもの居場所ネットワークいわてにおいて、寄附や支援の呼びかけとマッチングを行うとともに、運営ノウハウや食品に関する安全管理等の研修を実施し、あわせてスタッフのスキルアップを図っています。
 また、今年度から、立ち上げの際の設備改修や調理器具等の備品購入に要する経費などに対し、県と市町村が連携して最大50万円の補助を行っているところです。
 県としては、子供の居場所を拡大していく必要があると考えており、そのためには、地域住民の理解と支援の促進を図ることが重要であることから、市町村広報紙を活用し、子ども食堂などの取り組みの紹介や県補助制度の一層の周知など、積極的な広報活動にも努め、子供の居場所づくりを支援してまいります。
   〔政策地域部長白水伸英君登壇〕
〇政策地域部長(白水伸英君) 情報通信技術―ICTを活用した関係人口の創出についてでありますが、議員御指摘のとおり、高精細画像の配信等により、岩手の姿や自然など、岩手の魅力を県内外へ発信することが可能になるなど、近年のICTの進展は著しく、関係人口の創出、拡大に向けて、その効果的な利活用は必要不可決であると考えております。
 県としては、SNSの普及等も踏まえ、本年度においては、特にSNSを活用し、岩手の魅力あふれる情報の拡散を図る岩手ファン情報拡散促進事業を実施したところでございます。
 今後、関係人口の創出、拡大につきましては、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げた人交密度向上プロジェクトや現在策定中の次期ふるさと振興総合戦略に基づき推進することとしておりまして、具体的には、岩手県に関するさまざまな情報やサービスの配信など、いつでも岩手とつながることができる環境の整備、また、ICTを活用したライフスタイルに合わせた働き方、地域貢献活動など多様な交流の場の創出などを行うため、どのようなICT技術を活用することが最も効果的かとの観点も含め、関係人口の創出、拡大に係る具体的な施策を検討してまいります。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) まず、産業医による面接指導の周知についてでありますが、県教育委員会では、毎年度4月に開催している県立学校長会議や副校長会議等で制度の内容を周知しているところであり、各学校においては、職員会議等を活用し、教職員に対して周知を図っているところです。
 平成30年度からは、面接指導対象者を時間外勤務が月100時間以上から月80時間以上に拡大するとともに、所属長が対象者一人一人に申し出の意向を確認し、申し出を促すようにしているところです。
 面接指導の実施件数については、平成29年度まではゼロ件でありましたが、平成30年度は12件実施、今年度は10月末現在で12件の申し出があり、そのうち6件の面接指導が実施されています。
 県教育委員会では、教職員からの面接指導の申し出をふやすために、今年度これまで、時間外勤務が多い学校など15校を訪問し、校長と面談したところであり、今後も、あらゆる機会を捉えて面接指導が行われるように取り組んでまいります。
 次に、面接指導を受ける際の不安への対応についてでございますが、産業医による面接指導は、脳疾患や心臓疾患の発症を予防し、教職員の負担軽減や職場環境改善及び心身の健康の保持、増進を図ることを目的としているものです。
 産業医は、面接指導において、教職員の勤務の状況及び疲労の蓄積の状況やその他心身の状況について確認を行い、所属長は、産業医から意見を聞いた上で、負担軽減のための校務分掌の見直しや業務改善を行うなど、面接指導の結果を踏まえた事後措置を講ずるものとされています。
 産業医の面接指導を受けることに対する不安の払拭に向けて、職員団体の協力も得るなどして、教職員に対し、面接指導の目的について周知に努めてまいります。
   〔選挙管理委員会委員長八木橋伸之君登壇〕
〇選挙管理委員会委員長(八木橋伸之君) 選挙ポスターの掲示場についてお答えいたします。掲示場か掲示板かと御指摘がありましたけれども、回答は掲示場で統一させていただきます。
 まず、選挙ポスター掲示場の設置の根拠についてですが、ポスターの掲示場は、公職選挙法等の規定により、投票区における人口密度、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して、公衆の見やすい場所に設置するよう定められており、法令の規定を踏まえて、市町村選挙管理委員会が選定しております。
 また、各市町村の掲示場の総数については、選挙人名簿登録者数とその面積に応じまして、原則として、1投票区につき5以上10以内と算出されております。
 次に、掲示場の設置場所の調整についてですが、市町村の選挙管理委員会では、選挙が行われるごとに設置場所を選定しており、住宅密集地で空き地等がないため設置が極めて困難である場合や、面積は広いが有権者が極めて少ないなど設置してもその効用が十分に発揮できない場合には、県選挙管理委員会と協議の上、設置場所を減少するなど必要な調整を行っております。
 また、設置場所については、例えば震災後の復興により新たなまちができた場合などに見直すほか、より見通しのよい場所に設置してほしいなどという有権者の要望を踏まえて、場所を移動した例もございます。
 次に、掲示場の実態の確認についてですが、県議会議員選挙のポスター掲示場の設置に関する事務は、条例において、市町村の選挙管理委員会が行うこととされており、県選挙管理委員会としましては、実際に確認してはおりませんが、設置箇所について有権者等から要望が寄せられた場合には、実際に改善した例があると承知しております。
 県の選挙管理委員会としては、人通りの多い道路や人の集まる公共施設等、多くの有権者が容易に見ることができる場所で、かつ、土地の所有者等の協力が得られる場所を選定するよう会議の場で周知してはおりますが、議員からの御指摘を踏まえ、ポスター掲示場が、より多くの有権者に見やすい場所に設置されるよう、今後とも市町村の選挙管理委員会に助言していく所存でございます。
〇2番(上原康樹君) 御答弁ありがとうございました。よく御説明していただいたおかげで、幾つか予定しておりました質問も一つになりました。
 それは、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質を含む水が海へ放流されることが検討されていることについてですが、これは福島県の海に限った話じゃないのですね。当然のことですが。ですから、地域を超えて共通の認識を持たなければ対応できない問題だと思うのです。
 漁業者はもちろん、専門家、行政、一般市民による広域的な検討の場、議論の場があってしかるべきかと思いますが、この広域的な連携、取り組み、検討に向けて、県はどのようにかかわっていくおつもりかお聞かせください。
〇農林水産部長(上田幹也君) 広域的な観点での議論の場の設置等についてお尋ねかと思います。
 先ほど御答弁申し上げましたので略称で言わせていただきますが、いわゆる小委員会がございますけれども、昨年8月に、福島県と東京都におきまして、多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会を開催し、その場面でも風評被害を懸念する意見など、さまざまな意見が出されたと聞いております。
 先ほど御答弁申し上げましたけれども、本県の漁業者等からも、風評被害等に不安を感じるとの声が寄せられておりますので、議員からただいま御提言がございました広範囲の漁業者等が参加できる開かれた議論の場が設けられることは、大変意義あるものと受けとめております。
〇2番(上原康樹君) 答弁をいただいて、私の意見を一つ申し上げて終わりたいと存じます。
 海に放流される水について取り上げた根本の理由を申し上げます。東日本大震災津波からの真の復興を願うからです。港や防潮堤、道路や鉄道、災害公営住宅などは、確かに目に見えて整備されてきました。しかし、被災地には目に見えない不安、課題が多く残されています。放射性物質を含むであろう水の放流も目に見えない問題の一つだと思います。
 私たちは、想像力を持って、目に見えないものに立ち向かい、一つ一つ解決しなければならないと思います。希望はその先に待っていることを信じて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   
   日程第2 議案第1号令和元年度岩手県一般会計補正予算(第4号)から日程第28 議案第27号当せん金付証票の発売に関し議決を求めることについてまで
〇議長(関根敏伸君) この際、日程第2、議案第1号から日程第28、議案第27号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。千田美津子さん。

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