平成31年2月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇40番(飯澤匡君) いわて県民クラブの飯澤匡でございます。
今2月定例会に代表質問の機会をいただきました議員の皆様に感謝を申し上げます。私にとっても今任期最後の本会議場での質問になろうかと思います。達増県政3期12年の検証をしつつ、本県の未来に関する課題を中心に、昨年の佐々木努議員に続いて一問一答方式で質問させていただきますので、達増知事には真剣に向き合った答弁をお願いします。
知事演述に関して伺います。
2020年からの10年は、時代の大きな転換期であることは論をまちません。生産年齢人口の減少がこれまで世界をリードしてきた我が国の経済基盤を揺るがし、地域社会の崩壊にもつながる。既にこの現象は、私の住んでいる中山間地帯では急速に進行しています。人口減は、これまでの成功体験や慣例が通用しなくなる。このような厳しい時代を乗り越えていくには、リアリズムに沿った確かな施策が求められると考えます。それを確実に政策の柱として据え、問題を克服することが私は県行政の最優先課題だと信じて疑いません。今議会には、次期総合計画─いわて県民計画(2019〜2028)最終案が提案されています。ならば、10年後の岩手の姿に関して、ビジョンを自身の言葉で知事は明確に示すべきではなかったのか、違和感を禁じ得ません。
私は、基本目標とされているお互いに幸福を守り育てる希望郷いわてが、どういう姿をして10年後に岩手県の姿として存在しているのかいまだに想像ができず、困惑のさなかにいます。県民の代表たる議会に示すのは行政トップの知事の責任と思いますが、演述で示さなかった理由を明らかにしてください。
知事が演述の結びで述べた県民が幸福になってほしいとの願いと、私の人口減が及ぼす課題認識のギャップは深まるばかりです。この際、県民に対して、いわて県民計画によって、岩手の姿が人口減少という大きな課題とどのように向き合って解決しながら10年後の幸福に満ちた本県の姿になるのか明確に示していただきたいと思います。
〔40番飯澤匡君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 飯澤匡議員の御質問にお答え申し上げます。
知事演述についてでありますが、今議会における私の演述では、来年度予算案に関連した県の施策のあらましについて、平成から次の元号への移り変わりの節目であることも踏まえて述べたものでございますが、その内容は、いわて県民計画最終案に掲げている10年後の岩手の目指す姿を念頭に置いたものであります。その目指す姿については、さきの議会でも説明しましたとおり、基本目標と10の政策分野の冒頭に掲げているものでございます。
次に、人口減少という課題にどう対応するかについてでありますが、いわて県民計画最終案には、平成27年に策定した岩手県人口ビジョンと岩手県ふるさと振興総合戦略の考え方を包含しておりまして、岩手の変化と展望の中で、2040年に100万人程度の人口を確保するとの展望や人口減少対策の必要性を示しています。また、家族・子育てや居住環境・コミュニティ、仕事・収入など10の政策分野において、総合戦略に掲げた岩手で育てる、岩手で暮らす、岩手で働くに関する施策を盛り込んでおります。
さらに、テクノロジーの発展を政策に生かしていくことが重要でありますので、IoT、AIなどの活用による、さまざまな分野でのイノベーションの力を生かした北上川バレープロジェクトや活力ある小集落実現プロジェクトなども計画に盛り込んだところであります。
〇40番(飯澤匡君) それでは、これから一問一答でお伺いします。
最初に、今の答弁、また、さきに質問しましたお二方の答弁等も踏まえて質問しますが、今回のいわて県民計画最終案については、やはり今の人口がベースになっているのだろうと。中期財政見通しについてもかなり厳しい条件が示されている中で、私は、やはり県の最優先課題である人口減少対策に真っ正面から取り組むことが必要であると考えています。諸施策を計画に盛り込めばいいというものではない。やはり柱として据えるということが私は大事だと思っています。
人口は確実に減っています。今まではボディーブローのようにきいていましたが、私も感じるところは、就職先、または求人をしてもなかなか人も集まってきません。高校の卒業式を見ていても5クラスから3クラスになっている、これが現実であります。サービス業は、仕事はあるが人が集まらない。
我が会派では、佐々木努議員を中心に人口減少問題に正面から取り組んでまいりました。政策提言も具体的に行っています。ここ10年間、知事就任以来、私は、この問題について成果が上がっているとは思えません。政策形成過程でどのように整理されたのか。あわせて、人口減少と政策軸を同じくする労働生産効率を上げることにも触れていませんが、このことの知事の認識を問いたいと思います。
あわせて、このたび平成30年度の包括外部監査の結果報告書が出ました。これは、あえて子ども・子育てに関する財務事務の執行・管理についてであります。この中にも県行政の課題について詳しく指摘されています。やはり課題が多いという認識を私は新たにしました。その件についても触れて答弁をしていただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今、三つの質問があったかと思います。
まず、人口減少対策については、先ほど述べましたように、岩手県人口ビジョンと岩手県ふるさと振興総合戦略の内容を踏まえたいわて県民計画の各政策分野の施策になっておりまして、二つ目の質問は産業政策についてとお聞きいたしましたけれども、そういう意味では、2、家族・子育てというのが少子化対策には直接的に触れるところではありますが、6、仕事・収入についても、少子化対策はもとより、社会増減も含めて人口減少対策であります。自然環境や安全という分野も、やはり人口減少対策にかかわるものと思います。
3番目の質問は、外部監査の報告書と子育て支援の関連ということでありましたけれども、重要なテーマを外部監査のテーマにしていただいてよかったと思っておりまして、事業の数も多く、大変きめ細かな事務の執行を要する分野でありまして、かなりの御指摘、御意見をいただいたところでありますので、そこをしっかり直しながら行政として対応してまいりたいと思います。
〇40番(飯澤匡君) 盛り込んだというのはわかりました。それをどうやって動かすかなのですね、私がいつも指摘していますけれども。ですから、政策の柱になぜ据えなかったのかという疑問はいまだに残っています。
次の質問に入ります。
政策推進の基本方向に関して、主観的幸福感に関する12の領域をもとに10の政策分野を設定し、各政策分野に幸福に関する客観的指標─いわて幸福関連指標を定め、一人一人の幸福を守り育てる取り組みを展開するとしています。
まず、つくられた政策推進体系は誰に向けてのものなのか。また、客観的指標の客観的妥当性は誰がどのように評価し設定したのか。さらには、幸福を達成したかを判定する幸福の度合いに係る政策評価はどのように行われるのかお知らせ願います。
〇知事(達増拓也君) いわて県民計画最終案は、まずは、県の行政、県の政策推進の方向性や具体的な取り組みを体系的に示す計画であります。同時に、行政だけではなく、県民、企業、NPOなどのあらゆる主体がそれぞれの取り組みを進めていくためのビジョンとなるものでもございます。
そして、いわて幸福関連指標につきましては、「岩手の幸福に関する指標」研究会報告書や、先行研究、現行のいわて県民計画第3期アクションプランなどを参考に選定し、岩手県総合計画審議会での審議や、県議会での御意見も多くいただきました。また、パブリックコメント、住民説明会等の意見を踏まえて設定したものであります。
政策評価につきましては、幸福に関連する10の政策分野を中心に、いわて幸福関連指標の状況や、県民意識調査等で把握した県民の幸福に関する実感、社会経済情勢などを勘案して評価を行うことでマネジメントサイクルを機能させ、計画の実効性を高めてまいります。
〇40番(飯澤匡君) より多くのパッケージの中に入れて政策を回すというのはやり方としては理解しますが、何度も言いますが、私は、県民計画というのは、やはりわかりやすいものでなくてはならないという観点に立っています。
より多様性に着目したということをおっしゃっていますけれども、英語ではダイバーシティという言葉がありますが、幅広く性質の異なるものが存在すること、組織のダイバーシティとは、多様な人間を生かす戦略、さまざまな違いを尊重して受け入れ、違いを積極的に生かすこと、これが組織にとって有用だとされています。私は、この多様性の県の捉え方というのはいささか違うのではないかと思いますが、知事はいかに考えていますか。
〇知事(達増拓也君) 今、急に多様性ということで御質問がありましたけれども、違うのではないかという質問でありましたが、おっしゃったことはそのとおりだと思います。
〇40番(飯澤匡君) ちゃんと基本計画に書いてあるのですよ。県民の暮らしに着目して、10の政策に、県民一人一人の多様な幸福に対応できると書いてあるわけです。だから、私の言っているのとちょっと違うのではないですかという質問です。
〇知事(達増拓也君) 冒頭の部分を今、引用されたのかと思いますけれども、幸福についての多様性ということについては、飯澤議員も、今までの県議会の議論の中で、個人の幸福というのは多様ではないかとおっしゃっていたと記憶します。
〇40番(飯澤匡君) 次に進めますけれども、ダイバーシティ─多様性を阻害する考え方として、アンコンシャス・バイアス─無意識の偏見というのが最大の敵だと言われています。
私は今回、県が10の政策分野に定めたというのは、いわゆるこれは多様性を阻害する要因ではないかと思うのですが、そういう私の考えに対するお答えを求めたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 現行のいわゆる旧いわて県民計画に比べますと政策項目の数もふやしたところでありますし、特に、参画という要素を重大政策項目の一つに掲げて、あらゆる主体、県民が、それぞれの、男女でありますとか地域、生まれ、住所、あるいは性的指向の問題についても取り上げておりますし、多様性については現行いわて県民計画よりも内容がかなりふえていると思っております。
〇40番(飯澤匡君) 私は、量ではなくて、やっぱり質だと思うのです。私の考えをまず申し上げますと、こういう複雑な世の中というのが想定されるわけですから、県民計画というのは、やはり県民に共感を得るようなシンプルなメッセージが必要ではなかったのか。この計画で県民に幸福感の達成というのが素直にわかるでしょうか。これが疑問です。
それから、国の復興・創生期間も終了間近になり、政策の財政的保障が懸念されます。政策を広く大きく組み合わせるよりも重点化が必要ではなかったのか。高知県で産業振興策に特化したのは、行政としてもリスクを背負ったが、実効性重視と私は評価しているところであります。
ここに、私たちに資料として渡されております第1期アクションプランの行政経営プランというものがありまして、平成19年、達増知事が就任して以来、県職員の残業時間、年間の超過勤務時間はうなぎ登りに上がっているわけです。私は、今回、量をふやしたということを知事もおっしゃいましたから、これは膨大な量で構成されており、政策評価も膨大になることが予想されますが、これは時代と逆行しないかと懸念するわけであります。
総合的な見地というのがやっぱり必要だと思うのです、このプランをつくるには。そして、県職員というのは県行政の一つのモデルでもありますから、その点についてはどのように知事として差配されたのか、その内容をお知らせ願いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今、急な話でしたので、聞き取れなかったところ、答弁が足りなかったところについては御指摘をいただきたいのですけれども、まず、残業の問題については、これは確かにきちんと私としても見ていかなければならないことだと思います。
次に取り上げられたのは、県民計画のつくり方につきましては、基本目標と政策分野ごとの目指す姿というものを明らかにしながら、それを実現するのに必要な政策を項目ごとに挙げていくという作業を県の総合計画審議会を中心に行いながら、かなりさまざま市町村からも意見もいただきましたし、いろいろな団体、産業団体、経済関係団体にも見ていただいたりする中でこういう内容となっております。
その中で、シンプルであるほうがいいというのはそのとおりでありますので、あえて単純化すれば、お互いの幸福を守り育てる、そういう計画だと。一言で言えばそういう計画になっておりますけれども、幸福を守り育てるという内容については、各政策分野ごとに10の項目で明らかにしているところであります。
〇40番(飯澤匡君) ちょっと意地悪な質問ばかりで恐縮ですけれども、私の認識はかなり単純なのです。政策評価についてもかなり難しいと思いますよ。半ば幸福というのが出てくると思うのです。それに対して県民がどういう評価を与えるか。中間でこれが足りないあれが足りない、じゃ、これを満たせば幸福になるのかというロジックは、なかなか理解できないと思うのです。これについては、後の別の場面で質問させていただきます。
次に、一つ飛ばしまして、ILCプロジェクトについて。
先ほど来質問がありましたが、今回はいわて県民計画の中にはあえて盛り込まずに─それは決定していませんから仕方のないことでありますが、ただし、ILC実現の運びとなれば、これはプロジェクトではおさまらない。前回も次期総合計画特別委員会の中で質問しましたが、産業、教育、医療など県の主要施策にかかわる大きな問題です。県民計画の弾力的な変更は不可欠と私は思いますが、県の対応はいかにするのか。
また、グリーンILCなど、新規に即座に呼応した産業戦略を県は主導的に策定する必要があると考えますが、準備状況やスケジュールを想定しているのなら示していただきたいと思います。
私は、ILCと第1次産業とを連結する産業施策は最も本県の特徴を伸ばす施策と考えていますが、地域の第1次産業とのコラボレーションを今の段階でどのように考えているのかお知らせ願います。
〇知事(達増拓也君) ILCの実現といわて県民計画についてでありますが、ILC計画については、いわて県民計画最終案の長期ビジョンにおいて新しい時代を切り拓くプロジェクトに位置づけるとともに、政策推進の基本方向、地域振興の展開方向には基本的な取り組み方向を掲げ、さらに第1期アクションプランにおいて具体的な推進方策を盛り込んでいるところです。
ILCの実現に向けては、産業、教育、医療、まちづくりなどこれまで検討を進めてきた庁内研究会を発展させ、全庁的な取り組みに拡充、強化しますほか、関係市とも推進する体制を整備して、オール岩手で取り組みを進めてまいります。また、いわて県民計画のアクションプランの見直しについても、国際協議の進展など、必要に応じて弾力的に対応してまいります。
そして、産業戦略の準備状況やスケジュールについてでありますが、ILCの実現を契機として、イノベーションの創出や関連産業の集積を進めていくとともに、ILCの波及効果を地域全体に広めていくことが重要でありますので、産業振興の戦略を含む、仮称でありますが、ILCによる地域振興ビジョンというものを来年度の早い段階の策定に向けて取り組んでまいります。同ビジョンをもとに、ILCを核とした産業振興や受け入れ準備をさらに進めてまいります。
ILCと第1次産業との連結する産業施策については、まず、木材など地域が有する農林資源を積極的に活用するグリーンILCの取り組み、これは、1次産業の振興を初め、持続可能な社会の実現にも資するものであり、重要と考えておりまして、現在、岩手大学と民間企業が中心となって、県関係者も参画しながら、ILCからの排熱を回収、運搬し園芸施設など広域的に活用する研究や、県産材によるILC実験施設の木造化に関する研究を進めております。
また、今後は、外国人研究者、家族の皆さんに岩手のすぐれた農林水産物や加工品の情報発信を行うなど、消費拡大や海外発信に資する取り組みも展開していく考えです。
〇40番(飯澤匡君) その点は理解しました。それは弾力的に県民計画の中で反映していただきたいと思います。私は、新しい科学技術特区が生まれるように願いたいですけれども、実現すれば本当に新たな展開が出てくると思いますので、やはり先手、先手で、本県はそれを見据えて計画を練っていただきたいと思っています。
次に、産業基盤の確立と人材育成について伺います。
人口減社会に対応していくには、人材育成と産業振興が大きな政策の柱と私は考えます。私は、本県の産業を支えてきた、また未来に向けてさらに発展性を追求しなければならない第1次産業が、仕事・収入の政策分野に整理されたことにはいまだに合点がいっていません。
予算のシーリングについて伺いますが、いわば農林水産部と商工労働観光部が同居した形で、予算シーリングもこれに倣う形になるのか確認いたします。
続けて質問します。
第1次産業の人材育成について、第1次産業の人材育成にはもっと投資すべきであると考えます。いわて林業アカデミー等、県の取り組みには一定の評価をしますが、以前、農業大学校のプログラム深化、改革を提案した経緯がございますが、一向に県の対応が見えてきません。いわて林業アカデミーの発展策、農業大学校の発展的な活用策を示していただきたいと思います。
また、意欲ある生産者には、農産園芸トマトメガ団地が一つの例のように、重点的にモデル化するなどの施策を重層的に展開すべきであると考えますが、その対応についてはいかがするのかお知らせ願います。
〇知事(達増拓也君) まず、予算要求についてですが、それぞれの行政分野に専門性を持って対応するため、条例に基づいて設置された部局ごとに行うこととされております。
なお、部局横断的な分野につきましては、これまでも関係部局間で連携しながら事業を実施しておりまして、また、平成31年度当初予算編成におきましては、企画立案段階からさらなる部局間連携を図るため、新たな要求枠として政策・プロジェクト推進費を設けたところであります。
引き続き、部局の専門性の発揮と部局間連携の双方を促進しながら、いわて県民計画最終案に盛り込んだ施策を推進してまいります。
次に、第1次産業の人材育成についてでありますが、高齢化の進展などにより就業人口の減少が続く中、第1次産業が地域経済を支え、持続的に発展していくためには、次代を担う人材や地域の核となる経営体を育成していくことが重要であります。
このため、いわて林業アカデミーにおきましては、林業の知識や技術を体系的に習得し、将来的に県内事業体の中核を担う技術者を養成しておりまして、現在、研修を終えた第1期生全員が、林業技術者となる自覚と誇りを持って県内の林業現場の最前線で活躍しています。
研修期間など、将来を見据えたアカデミーのあり方につきましては、今後、有識者で構成するいわて林業アカデミー運営協議会や研修修了生の意見、林業事業体などのニーズを伺いながら検討を進めてまいります。
農業大学校につきましては、地域農業の発展を担うリーダーとなる青年農業者を育成するため、農業の専門科目の講義と実習、先進的な農業経営体での実務研修、さらに、カリフォルニア大学デービス校での海外農業研修など、理論と技術を一体的に学ぶ教育を実践しております。
今年度からは、新たにGAPの講座を開設しましたほか、環境制御型園芸ハウスを活用した高度、最新のスマート農業の実習を開始するなど、今後とも、本県農業を取り巻く情勢の変化等を見据え、教育環境の一層の充実を図ってまいります。
また、意欲を持って農業に取り組む経営体の経営力向上についてでありますが、今年度、いわて型野菜トップモデル産地創造事業を創設して、経営規模の拡大や生産の効率化などを重点的に支援してまいります。さらに、いわてアグリフロンティアスクールや、今年度開設のいわて農業経営相談センターにおいて、各分野の専門家が実践的なアドバイスを行うなど、経営管理能力の高度化を推進しているところであります。
〇40番(飯澤匡君) 最後の部分ですけれども、私は、国の食料・農業・農村白書構成案にも─平成30年度の部分ですが─記されているスマート農業も、それから農業者福祉施設等の農福連携にも最終的には人─人材だと思っています。これは、先ほど申し上げた人の量もそうですし、ただ、人口が減っていくというものについては、やはり人をどうやって鍛えていくかということを県は積極的にやるべきだと考えています。
最後の農産園芸トマトメガ団地の話ですが、実はこれは秋田県で、地域で検討された事業でありまして、これが逆に国の事業として発展したという格好になっています。この事業については、実は地元の生産者の方々と懇談をして、いろいろ、県の意欲は買うけれども、ハウスの部材のみが補助金の対象で、建設費や消費税は除かれると。建設には土地の敷地整備費用が必要であり、加えて水道、電気、コンピューター制御が標準装備だが、リース事業のみが対象だと。実感として実質50%ぐらいしか補助金の対象にならないと。秋田県では、こういう隙間を埋める補助金メニューとしてネットワーク型園芸拠点育成事業というのを立ち上げているわけです。これは、JA、市町村、広域振興局から成るプロジェクトチームを設置しています。
生産者は、全県のくくりだけでなく制度設計に関しても柔軟な対応を希望していますが、私は、政策、やはり人材育成の観点からも、現場の声をさらに聞く必要があるのだろうと思います。これに対して知事の所感、これから長期計画の策定に当たってどのような考えでいるのか、そんな難しい話ではないのでお答えを願いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 野菜販売額1億円産地のモデルとして、今、奥州市にネギの規模拡大に必要な機械、施設の整備を行っているところであり、また、次世代型施設園芸モデルとして、盛岡市、花巻市、一戸町にトマトの単収を飛躍的に向上させる環境制御装置の整備を行っているところであります。平成31年度は、八幡平市のニンニク、花巻市のピーマン、一関市のトマト、久慈市の菌床シイタケ等での事業導入を検討しているところでありますけれども、事業内容、また、実際の事業導入につきましては、御指摘を踏まえて検討してまいりたいと思います。
〇40番(飯澤匡君) それはぜひ市町村も巻き込んで、JAとも─系統だけではないのですけれども、いろいろ懇談の中によりよき政策を目指していただきたいと思います。
次に、地域医療について伺います。
厚生労働省が2月18日に発表した医師の偏在状況を示す新たな物差しである医師偏在指標によれば、本県の医師の充足度は、全国最下位というセンセーショナルな結果が出ました。これは極めて深刻で、重要な課題であると受けとめています。しかも、県内では九つある二次医療圏のうち、盛岡医療圏を除く8医療圏が、医師少数区域に分類されたことも明らかになり、県内においては、全県的な医師不足のみならず、盛岡医療圏と他の医療圏との地域格差が広がっていることも浮き彫りになりました。
私は、今後、医師の配置、地域偏在の解消についてはプログラム化をすること、そして、これは保健福祉部において、医療、介護、福祉の連携を市町村行政とのより深い協働により、県立病院も地域包括ケアシステムの一翼を担う体制の確立が必要と考えますが、さきの厚生労働省の発表も踏まえて、今後の取り組みについてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 今般、新たに国から示された医師偏在指標でありますが、これは人口10万人当たりの医師数をもとに、地域の医療ニーズや将来人口、医師の年齢構成による労働時間の差なども加味して算定されているものであります。
岩手県については、医療需要が高い高齢者人口が多いことや、労働時間が長く算定される若手医師が少ないことが数値を押し下げた面もありますが、深刻な医師の不足と偏在の状況にあるということは、そのとおりであると認識しております。
県では、これまで、医師確保対策アクションプランを策定して、奨学金による医師の養成や即戦力医師の招聘などに取り組んでまいりました。特に、奨学金養成医師については、平成20年度から岩手医科大学の地域枠を拡大し、平成28年度からその養成医師が現場で医療に従事するようになっています。
奨学金養成医師の配置に当たっては、養成医師を公的医療機関の基幹病院と中小規模の地域病院にそれぞれ一定期間配置することとしておりますし、あわせて、今回医師免許を新たに取得する養成医師から、沿岸地域等での義務履行を必須としたところであります。
また、県立病院における地域包括ケアシステムの体制についてでありますが、医療局では、来年度を初年度とする新しい経営計画におきまして、地域包括ケア病床の導入や、退院先の確保や退院後の社会福祉サービスの活用等について、市町村や介護施設等と連携、調整を進めること、また、リハビリテーション部門や医療社会事業士を増員するなど、さらなる体制強化を図ることによって、市町村が構築する地域包括ケアシステムに参画することとしておりまして、県としても、市町村の取り組みを支援し、地域包括ケアシステムを推進していくこととしております。
なお、今回医師偏在指標により改めて全国的な医師の遍在が明らかにされたところでありまして、この問題を解消するため、県といたしましては、県境を越えた医師の配置調整によって、全国的な地域偏在を根本的に解消するよう、(仮称)地域医療基本法の制定を提言しながら、今後、他県との連携を強化し、国に強く働きかけてまいります。
〇40番(飯澤匡君) 知事がそういう法の設置についても提案しているというのは認識をしていますが、より実効性のある方策も大事だと思うので、特に宮城県、青森県、秋田県もそうですが、それについてもしっかりと対応策を練っていただきたいと思います。
それとあわせて、地域医療に関しては、これからどんどん医療費が高額になっていく中で、いかにそれを低減させて地域の医療、保健、福祉を満足させていくかという観点もぜひ必要かと思いますので、北海道の夕張市等では、非常に驚くような成果も出ていると聞いていますから、それもぜひ研究して行っていただきたいと思います。
次に、社会資本の整備について伺います。
復興支援道路は被災沿岸地と内陸を結ぶ要諦であり、県は積極的に整備を図るべきと考えます。
国道343号新笹ノ田トンネルの実現への要請署名9万筆の重みを、知事はどのように考えているのか。また、ILCの推進と併行して前に進めるべき、これは進めなければならないと考えますが、知事の認識を示していただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 国道343号新笹ノ田トンネルについてでありますが、一関市や陸前高田市の方々を中心に、トンネル建設実現を求める9万筆を超える署名が集められたことは重く受けとめております。
国道343号は、気仙地区と内陸部を結び、沿岸地域の復興や県民の安全・安心、観光振興等を支える路線であり、ILCを推進する上でも、重要な位置づけを持つ路線であると認識しておりますが、笹ノ田峠に新たなトンネルを整備することについては多額の事業費が必要と見込まれますことから、安定的な事業予算の確保が課題となるとともに、事業効果などを確認することが必要であると考えております。
来月9日には東北横断自動車道釜石秋田線が全線開通するなど、県内の幹線道路ネットワークの姿が大きく変わっていきますことから、今後の交通の状況も見きわめながら、整備の必要性について検討してまいりたいと考えております。
〇40番(飯澤匡君) 達増知事は、みやぎ県北高速幹線道路について御存じでしょうか。
〇知事(達増拓也君) はい。
〇40番(飯澤匡君) 御存じであれば、これは宮城県の復興支援道路です。これは復興の財源とともに急速に整備をされた。私は、遠野市についても宮古市についても同じような状況であると考えますが、これはかなり、してやられたなという感じをしています。
一関市から宮城県栗原市築館までは、高速道路で30分もかかりません。ここの横断道を整備されたということは、岩手の県南地区における横断道にも、少なからず影響はあるものと思います。
とても残念なのですけれども、我々県南地区では、国道284号、国道343号、これらの内陸の復興支援道路については、現道を整備しながらという形でやっていますが、高速道路、高規格道路を望んでいるわけではないのです。国道284号は望んでいますけれども。せめて交通の隘路である笹ノ田峠ぐらいは整備していただかないと、9万筆に及ぶ署名というのはまさに例を見ない例ですから、これもしっかり考えてやる必要があると思うのですが、再度、知事の所見を求めたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 御指摘のあった宮城県内におけるそういった新たな交通ネットワークの展開についても踏まえて検討していかなければならないと思いますし、また、改めて御指摘のあったこの9万筆を超える署名ということについては、重く受けとめているところであります。
〇40番(飯澤匡君) ぜひ前に進めていただきたいと思います。
次の質問に入ります。三陸防災復興プロジェクト2019について伺います。
これは県単独予算です。単独予算4億8、000万円を投入するのであれば、プロジェクトの名にふさわしい内容にしなければ、私は納税者に対して説明がつかないと考えています。
三陸鉄道リアス線の開通イベントは、これはめでたいことですから私は了とするものでありますが、そのほかのイベントは一過性のものがほとんどであります。
ラグビーワールドカップの波及効果を県は過小評価していないでしょうか。震災復興への感謝の気持ちを全世界に伝えるならば、このラグビーワールドカップに合わせた日程に変更したほうがより効果的であり、納税者に対して説明ができるのではないか。知事の任期内に行う必要性は私は全くないと考えますが、いかがお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 三陸防災復興プロジェクト2019では、昨年8月19日に開催された釜石鵜住居復興スタジアムのオープニングイベントに合わせて、前日の8月18日に釜石市内でプレイベントを開催いたしました。これに対し、森喜朗元総理大臣を初め、ラグビーワールドカップ組織委員会関係者からも、防災復興とラグビーワールドカップとを連動させたことへの高い評価をいただいたところであります。
また、三陸防災復興プロジェクト2019の会期中の具体的事業においても、ラグビーワールドカップとも連携が図られるよう、ありがとう貝画企画、さんりく絆スポーツフェスタなど、ラグビーワールドカップ関連の事業が予定されてございます。
また、三陸地域の周遊観光や交流拡大につながるような旅行商品造成の取り組みも、ラグビーワールドカップに先駆けて、こうした事業を実施することにより、インバウンドを含む交流人口の拡大や地域振興に向けた取り組みの成果を、ラグビーワールドカップ2019につなげていくために意義のあるものと考えておりまして、このラグビーワールドカップ開幕前の機運醸成に寄与できるよう、取り組んでまいりたいと考えます。
なお、ラグビーワールドカップとの同時期の開催につきましては、開催市の負担も大きいとの意見のほか、津波対策、テロ対策、さらには多くのVIP対応など、当該期間は県を挙げて大会運営に集中しなければならないことから同時期の開催は困難と考えておりまして、昨年3月の三陸防災復興プロジェクト2019実行委員会総会において、本年6月1日から8月7日までを開催日程とする旨、決定されたところであります。
〇40番(飯澤匡君) 日程に合わせるという言い方についてちょっと誤解を招いたかもしれません。より多くの海外のマスメディアが、9月の大会に合わせて釜石入りするわけです。そこをしっかり狙うべきだと思うわけです。
質問の中で申し上げましたように、5月、6月からもう始めるわけです。余りにも期間が間延びしてしまって、所期の目的である感謝の気持ちや、岩手がこうやって復興を目指しているということを伝えるのなら、そういうマスメディアの到着とかに合わせてシンポジウムなどを開催したほうが、より効果的ではないですか。ぜひそれを考慮していただきたい。
話は変わりますけれども、この間、いわて牛の集いで、もう既に日程等のPRのビデオが流れていました。これは議会で予算も通っていないのに、こういうことをしていいのかなと思っていますが、それについてはどういう考えで流したのですか。
〇知事(達増拓也君) 三陸防災復興プロジェクト2019実行委員会として、この総会の決定に基づいて行われた活動と認識いたします。
〇40番(飯澤匡君) 議会の予算の決定というのは、どういう意味合いを持つのでしょうか。まだ予算は決定していないですね。
〇知事(達増拓也君) プロジェクト実行委員会の活動については、実行委員会総会において決議されているところでありますけれども、来年度予算案と─そうですね、実行委員会の事業との関連につきましては、今ちょっと資料を持ち合わせておりませんので、よろしければ、別の機会にお答えさせていただくようなことを調整させていただければと思います。
〇40番(飯澤匡君) 予算特別委員会もありますから、そのときでもいいです。
私は大きな問題点、これは内陸の市長から言われたのですが、より多く協力したいと。特に内陸の市町村は後方支援等でいろいろ支援もしてきた経過がある。何か手伝えないかと言ったら、いや、そういう必要はありませんと、むげに断られたというのですよ。知事はオール岩手で取り組む必要を常に示していますが、これとは全く言行不一致ではないかと思うのですが、これについてはどういう説明をされますか。
〇知事(達増拓也君) 事前に御質問の通告をいただいておりましたので簡単に調べてみましたところ、遠野市、紫波町、葛巻町、盛岡市などで、関連事業や広報を予定しているというところでございまして、今後においても、さらにそうした内陸市町村がふえるよう、県としても連携して活動していきたいと思います。
〇40番(飯澤匡君) 今のは事実ですから、そういうふうにちゃんと私も─我が会派では33市町村を歩きまして、三陸防災復興プロジェクト2019と長期計画について、いろいろヒアリングしてきました。いろいろな意見が出ましたけれども、もう内陸の自治体については、ほとんど県が沿岸でやるのだろうというような、そういう印象でした。知事がしっかりオール岩手で取り組むというのだったら、その名にふさわしいやり方でやっていただきたい。
今回、予算議案にも示されていますので、それについてはしっかり審査をしたいと思います。
それで、今回の三陸防災復興プロジェクト2019については、これだけではなくて、我が会派でも指摘をしてきましたが、県は今までいわて若者文化祭等イベント型事業が非常に多い。安直な予算消化型の事業は、私は見直すべきであると思っています。このようなイベント型の事業は政策評価で徹底的に調査すべきであり、人材育成に関するものは市町村と合同で資金需要なりを起こすなり、効果的なやり方を考えるべきだと思います。
私は、庁内のガバナンスが緩んでいるのではないかと危惧しますが、知事の所感を求めます。
〇知事(達増拓也君) SNSが普及する一方で、モノからコトへと人々のニーズや関心が変化している中、行政にあっても、人と人とが直接出会う形で情報や経験を共有し、それを生かすことでさまざまな政策目的を実現する手法の事業がふえております。
ICT利活用セミナー、環境関係のシンポジウムなど専門的な分野、あるいは動物愛護シンポジウム、アール・ブリュット作品巡回展など啓発普及関係、また、誘客キャンペーン、県産ブランドの首都圏でのプロモーションなど観光、物産に関するもの、企業ネットワークいわて、ポートセールスのような企業誘致関係、そして、地域医療を支えるための県民シンポジウムや食育推進県民大会など県民運動に係るものなどがございます。このような手法については、その効果が捉えにくい点などもございますので、その効果を適切に評価しながら、政策形成につなげていきたいと考えております。
また、人材育成に関係する取り組みということにつきましては、専門性の高い分野を中心に、県の取り組みとして実施することを市町村から期待されておりますが、市町村と協力、連携が必要な分野につきましては、市町村とともに取り組みを進めてまいります。
〇40番(飯澤匡君) この点については監査委員の皆様にも、議会選出の監査委員の方もいらっしゃいますから、しっかりやっていただきたいと思います。
最後の質問ですが、ローマ法王が、ことし来日をしたいと希望しているという情報があります。外務省でもそれは後押しをしたいというメディアでの情報もありました。特に、御本人が東日本大震災津波の被災地を訪問したいとの希望を持っていると聞いています。宗教が何かということにもかかわらず、ローマ法王の存在というのは、非常に宗教の枠を超えて大きなものでもございますし、今伝え聞くところによりますと、宮城県の三陸町という名前も実際に、具体的に出てきています。本県への来県に関しても、しかるべき機関に働きかけるべきではないかと。これは復興のありようであるとか、それから鎮魂の意味も含めて大いに私は有用であると、効果があると思っています。
一関市藤沢町大籠地区は殉教地でもありますし、宮城県登米市の米川地区との連携も非常に深く進んでおるところでありますので、その点も踏まえていろいろな情報をとらまえて、前に進めるところは前に進めるというような県の対応を求めたいわけですが、知事の所感をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 一部報道によりますと、11月下旬とされるローマ法王の来日の際に、東日本大震災津波の被災地への訪問を検討しているということで、国に対して、被災地訪問について照会しましたところ、現時点では確認できていないとのことでありますが、県といたしましては、本県被災地へのローマ法王の訪問が実現した場合、国内外に対し、これまでの支援に対する感謝と復興の現状を広く発信できますとともに、県民にとりましても大変意義深いものになると考えております。
こうしたことから、来日の時期や訪問地について情報収集に努めながら、県としても働きかけ方を検討してまいりたいと思います。
〇40番(飯澤匡君) 質問は終わりました。冒頭に申し上げましたように、いわて県民計画については今後の10年、私は大変厳しい時代だと思っています。今の時点でしっかり施策、特に人口減少問題については真正面から受けとめていかないと、2030年代がいかなる時代になるのかと、非常に不安を覚えます。したがって、政策体系として今回はクロスファンクショナルでいろんな部分を組み合わせてやっていますけれども、県民にとって、これを一概にまた変えるというわけにはいかないでしょうから、わかりやすい見出しのついた、これから予算の配置であるとかそのようなものを期待したいと思いますし、これから変更ができるものであれば、より一層委員会の中でも提言をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(五日市王君) 以上をもって飯澤匡君の一般質問を終わります。
傍聴者への配慮から、しばらくお待ち願います。
次に、中平均君。
〔34番中平均君登壇〕(拍手)

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