平成31年2月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇34番(中平均君) 創成いわての中平均です。
2回目となる代表質問の機会をいただきました会派の皆様、並びに先輩、同僚議員を初め多くの皆様に感謝を申し上げます。
会派を代表して質問いたします。知事の明快な答弁を期待いたします。
先ほど来話になっておりますが、私からも人口減少社会への対応についてお伺いをいたします。
皆様御承知のとおり、日本の人口は平成23年を境に減少に転じました。岩手県は、平成9年から減少となっています。国は、平成26年に、まち・ひと・しごと創生法を制定し、各自治体においても地方版総合戦略の策定が求められ、平成27年から平成31年の5年間における数値目標を定め、取り組んでいるところであります。
こうした中、岩手県ふるさと振興総合戦略で掲げた目標値に対して、現状は、合計特殊出生率は平成29年実績値1.47と目標を達成しましたが、人口の社会減は平成30年実績5、215人減と、平成26年の2、975人から拡大しています。平成30年の人口減少数は、年間、自然減、社会減あわせて1万4、880人、山田町の人口とほぼ同じ人数となります。人口減少対策としての実態は残念ながら効果が出ているとは言いがたい現状にあります。
まず初めに、平成31年度が計画最終年度となる岩手県ふるさと振興総合戦略において、現時点における数字をどのように認識しているのか。達成できない項目についての理由をどのように考えるのか。重要業績評価指標─KPIの数値は、おおむね達成以上が8割以上と圧倒的なのに対して、結果が伴っていないことをどのように捉えているのかをお伺いいたします。
政策評価のあり方については後段に質問いたしますが、政策課題を明確化することによって対策を講じることができ、結果が伴わなければ問題設定か対策が間違っていると言えます。今議会で審査されるいわて県民計画にもつながってくることであり、はっきりした答えがいただきたいと考えます。
ここで、改めて人口減少がなぜ問題なのか考えてみます。
初めに、生産、消費人口の減少による購買力、生産力の低下、これが結果として経済の不振につながっていく。少子化の進行による学習環境の変化。少子高齢化による医療環境の変化、確実に受診者の減少がわかってしまう産科、小児科と、受診者が増加するであろう整形外科や眼科など、地域偏在、診療科目の偏在がさらに進む可能性があります。そして、地域コミュニティーの維持が困難になってくる。限界集落化していくことによる地域の文化等の喪失と行政コストの増加が挙げられます。最後に、税収入の減少と社会保障費の増加、以上、代表的な問題が挙げられます。
改めて解決方法を考えてみると、生産、消費人口の減少については、第4次産業革命等の進展による省力化、国内外への販路拡大、何より、生産人口が一番早く減っていく産業に従事する人の所得向上等の対策。
少子化の進行による学習環境の変化については、どんなに児童生徒の数が減っても、最初から統合ありきではない、教育水準を低下させない教員配置等の対策。
医療関係については、偏在解消に向けた各種政策誘導と県立病院を核とした地域医療体制の維持そして充実。
地域コミュニティーの維持については、世代間交流の活発化、空き家対策、若年世代の雇用対策等、地域に残れる仕組みづくり。
税収減、社会保障費については、各種産業の振興とともに、いわゆる働き方改革の推進と予防医学の徹底による健康寿命の延長を実現していくことが求められています。
また、大きな問題である、教育に係る費用の問題をどうするのか。子供を持てば持つだけ生活が苦しくなる。老後に向けた資金を子供の教育資金に充てなければならないといった声がなくならなければ少子化の問題は解決できません。まさに、産業構造の転換と教育費用の軽減、女性と60歳以上の方の働きやすい環境をどうつくっていくかということになります。
また、AIやIoTなどの第4次産業革命は、産業の効率化を実現させ、在宅勤務の増加や情報発信の手段の多様化は、今までの地方のデメリットを克服できるチャンスでもあります。しかし一方で、どんなに効率化が進んでも全く無人ということは考えられず、必ず人手はどの産業においても必要となります。
こうして考えていくと、地方を取り巻く環境は危機的とも言えるが、対策次第でチャンスにもなれる状況にあります。地方が危機にあるということは日本という国が危機に瀕していることであり、ここでどのような対策をとっていくのか、未来への責任を、今を生きる私たちがどう果たしていくのかが問われています。達増知事の言葉をかりるならば、危機を希望に変えるという言葉が今こそ必要と考えます。
人口減少という直面している危機に対しての知事の考えと、客観的な捉え方が難しい幸福度という指標が課題解決のためにどう機能していくのか、そして、新しい総合計画が岩手の未来をどうつくっていくものになるのかをお伺いいたします。
次に、県北・沿岸振興についてです。
平成18年に県北・沿岸振興本部を立ち上げ、各種取り組みが行われてきたところです。今議会招集日の知事演述における岩手県の取り組みとその成果を聞いても、北上川流域の成功事例が多く、県北・沿岸部での特記事項はありませんでした。
特に、昭和後期から取り組まれてきたインフラの整備は今まさに花開き、軌道に乗る産業振興や観光振興の礎のくだりは、いわて花巻空港の整備における当時の議論、財政は厳しくても将来への投資として事業を行うのか、先の見通せない空港活用のために多額の予算を投じるのかという議論を思い起こしたところです。もちろん、花巻空港は赤字が続いており、投下経費、維持経費に見合う効果を実現していかなければなりませんが、交流人口拡大に向けてのインバウンド対応に必要な空港であることもまた事実であります。
このような例と比較して、各種答弁や発言において県北・沿岸振興なくして岩手県の発展はないという知事の発言に期待し、しかしながら、先般の知事演述における成果で一切触れられない県北・沿岸部の現状は、岩手の二極化を示しているかのようでもあります。
そこで、岩手県として、県北・沿岸振興のこれまでの総括をどう捉えているのかをお伺いいたします。
東日本大震災津波の復旧、復興に全力を尽くしてきた中においての今後の取り組み状況はどうなるのか。以下、平成31年度予算においての事業について伺ってまいります。
県北地域の食材、産業などの魅力発信について、例えば地理的表示保護制度、いわゆるGI認証について、平成29年12月定例会の一般質問で質問した際、積極的な登録拡大と売り込みを図るというものでした。
県北広域振興局管内においてGI認証を取っているのは、平成29年11月の野田村の荒海ホタテ、昨年8月6日の岩手木炭、同じく12月27日の浄法寺漆と、三つものGI認証があるのは県北地域だけになります。また、アパレル産業、ブロイラー産業、ヤマブドウ、ウニ、アワビ、そして、最近では県の施策からは全く見当たらなくなってしまいましたが、雑穀などの地域産品を含め、今後どのように県北振興に生かしていこうとしているのかをお伺いいたします。
水産業について、先ほど来お話がございましたが、サケの回帰率向上が大きな課題となっています。水揚げ量は、震災前の2万6、741トンから平成30年度は1月末現在で1万266トン、金額ベースで、震災前の88億円から平成30年度は1月末現在で56億円となっている状況において、平成31年度事業では高水温に強い稚魚の研究開発を目的とした秋サケ緊急不漁対策事業が提案されています。
岩手県沿岸漁業の基幹魚種であるサケに寄せる期待は大きいものがあります。稚魚放流についても、海産親魚から種卵をとっているところでもありますが、計画数量の確保状況と、現時点で推計される平成31年度の水揚げ量、稚魚の研究開発の予定をお伺いいたします。
いわて水産アカデミーは平成31年度から実施でありますが、当然ながら先進事例の課題、成果を分析し、運営していくものと考えております。
〔副議長退席、議長着席〕
初年度に当たり、いわて水産アカデミーが今後、岩手県の水産業に与える効果、役割といったものをどう考えているのかをお伺いいたします。
三陸ジオパークについてお伺いいたします。
昨年度の再認定審査において、2年間の条件つき再認定となっています。ことし秋に予定される再認定審査に向けて、運営体制の強化や各地域の一体的活動の推進などの日本ジオパーク委員会から指摘された課題解決に取り組んでいると認識していますが、取り組み状況を踏まえ、確実な再認定に向けた知事の決意をお伺いいたします。
三陸防災復興プロジェクト2019についてです。
総額4億8、000万円余となるプロジェクトであり、県議会においてもさまざまな議論がありますが、やるからには一過性のイベントではなく、この事業をきっかけとして各種の波及効果が広がっていくものにならなければなりません。そのためにも、実施主体である県はもとより、国、市町村との連携、特に、地域における例年の各種行事のみならず、プロジェクトと連動した動きが出てこなければなりません。
そこで、改めてこのプロジェクトの意義、自治体の動きなどについて伺うとともに、プロジェクトをきっかけとした交流人口の拡大や地域の情報発信についてどう考えているのか。これだけの予算を投入する以上、単なるイベントで終わらせるわけにはいきません。復興の先を見据えた事業にする必要があると考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
国道281号の整備について伺います。
盛岡と沿岸北部を結ぶ国道281号は幹線道路であり、流通のかなめであります。平成28年台風第10号でも大きな被害を受けましたが、復旧工事、また、久慈-山形間の案内トンネルの開通、下川井トンネルの工事着工がなされ、また、大坊地区における工事も残り2年というところにきています。今後の隘路地区の解消、特に国の復興・創生期間終了後の整備について危惧する声が多いですが、県として国道281号の認識、整備のあり方について伺います。
また、昨年10月に北岩手・北三陸横断道路整備促進期成同盟会が立ち上がりました。これは、宮古盛岡横断道路が完成すれば、震災前と比較し、所要時間1時間15分で30分短縮、東北横断自動車道釜石秋田線は来月9日に全線開通し、釜石-花巻間が1時間5分で25分短縮となります。このような状況において、県北部と県央部をつなぐ高規格道路などの抜本的改良の必要性が問われていることから期成同盟会を設立したと認識していますが、県においては、高規格道路の必要性、実現に向けた行動をどのように考えているのかをお伺いいたします。
地域医療についてお伺いします。
昨日の新聞紙上にて厚生労働省の医師偏在指標が策定され、医師充足度は岩手県が最下位という報道がされました。総合計画において、人口10万人当たりの医師数がふえていることを強みとしていた記載への違和感を12月定例会における総合計画審査の際に指摘しましたが、地方の医療体制の脆弱さが改めて浮き彫りになったと言えます。
人口減少問題で触れたとおり、少子高齢化の進行によって、医療ニーズが高まる整形外科や眼科などと相対して産科、小児科は受診者数の減少が見込まれており、この対応はこれまでも大きな問題となっている医師の地域偏在、診療科の偏在の解消とあわせて考えていかなければならない課題と考えます。
これまでも岩手県では、奨学金養成医師の配置を初め、九つの二次保健医療圏を基本としながら、周産期医療体制では四つの医療圏を設定し、リスクに応じた医療を受けられる体制を構築、また、ICTなど先進技術の活用など、問題解決に向けた取り組みが進められています。
そこで伺いますが、奨学金養成医師の配置は平成28年度から始まっており、3年間で延べ83名配置されていますが、平成31年度の義務履行の状況と今後の見通しについて伺います。
診療科の偏在についてですが、ICTを活用した診療、ハイリスク出産の早期の拠点病院への搬送といった対策を行っている現状において、地域での完結を望む声が当然ながら大きいところです。また、県立久慈病院の眼科では、白内障の手術を受けるまで長期間待つ状況にあります。こうした例からも、地域における診療科の偏在の解消が望まれますが、県の取り組み状況についてお伺いいたします。
ドクターヘリの新生児搬送については、平成30年度に予算措置がなされ、岩手医科大学附属病院移転後からの運用と伺っていますが、周産期医療における緊急搬送体制の現状と、今後、ドクターヘリの新生児搬送をどのように運用されるのかを伺います。
少子高齢化による人口減少と、医師不足対策としてのICTを活用しての遠隔診療の普及によって、地方はさらに医師の集約化の対象になるのではないかという懸念があります。幾ら技術が進み搬送体制が充実したとしても、地域において医療行為が行われないのであれば、それは地域医療の崩壊と言えるでしょう。
岩手県の医療提供体制について、岩手県保健医療計画においては九つの二次保健医療圏を設定していますが、知事から今後の人口減少社会を見据えた地域医療のあり方、県としての施策の方向性を伺います。
次に、災害からの復旧、復興とその先について。
約8年前の東日本大震災津波、2年半前の台風第10号災害において亡くなられた皆様に心からお悔やみを申し上げ、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
東日本大震災津波からの復旧、復興事業は、昨年9月末時点で工事の完成が79.7%の進捗状況、平成28年台風第10号の公共土木施設などの災害復旧工事は、12月末時点で50.9%の完成となっています。平成28年台風第10号災害における県独自の交付金の創設は、中心市街地が水没した久慈市において復興に大きな役割を果たしたところであり、改めて県の積極的な姿勢を評価するところです。
また、沿岸部の所得も、震災需要とも言える状況から平成27年度283万6、000円となっていますが、今後、復興工事の完了とともに減少が予想されます。対策を考えていかなければなりません。
公共事業費は前年度比1.05のプラス査定を行い、今回、予算案として計上されています。厳しい財政環境下での英断と思います。しかし、県単独での公共事業費は、震災前が底打ちとも言える状況であったことから、この先の施策によっては大きな反動になる可能性があります。国の国土強靱化基本計画を受けての補正予算が今定例会にも上程されますが、今後においても国の補正予算が予想されることから、インフラ整備の必要性が大きい岩手県としての積極的な対応が必要と考えますが、いかがでしょうか。
公共事業とは別に、地域産業の発展のための施策を実行していく必要があります。県北・沿岸振興でも質問いたしましたが、急激な少子高齢化による人口減少を克服し、持続発展可能な社会構築こそが必要であり、そのために確実な波及効果を伴う事業を行わなければならないと考えます。いわて県民計画においての方向性、平成31年度予算においての事業が将来にどのようにつながっていくのかをお伺いします。
災害発生時における情報確保の手段をどうするかお伺いいたします。
県においては、携帯電話等エリア整備事業の活用などにより、毎年度、不感地域の解消に努めています。災害時における刻一刻と変わる情報の重要性は大震災時において痛感したところであり、主要幹線道路上における不感地域の解消も図る必要があると考えますが、どうでしょうか。県として必要性をどのように認識しているのか。必要であれば対策を講じていくべきと考えます。
また、交流人口の拡大にも当然ながら効果があります。実際に八戸自動車道のトンネル内は震災後、携帯電話がつながるようになっています。積極的な行動を図っていくことが必要ですが、今後の対応についてお伺いいたします。
東日本大震災津波伝承館がことし秋、ラグビーワールドカップ2019の開催時期と合わせて開館予定となっています。県の今後の防災対策と住民の命を守る行動に資するために、大震災前の避難訓練のあり方や、緊急物資の集積の状況といった発災前の状況と発災直後の対応、そして今日に至るまでの検証と総括の内容について公開していくことが他の地域での災害時の行動につながっていくことであり、まさに記憶を風化させないことになるのではないかと考えます。知事の考えをお伺いいたします。
被災地の心のケアに関しては、岩手県こころのケアセンターを設置、県内5カ所に拠点を置いて手厚く対応してきたところですが、震災後約8年を経てなお被災された住民の方々は生活再建の途上にあり、今後のニーズも続いていきます。
また、昨年度、閣議決定された新しい自殺総合対策大綱に基づき、県と各市町村は自殺対策の具体的なアクションプランの立案と実施を求められているところです。国の復興施策が縮小傾向にある中、県として、今後まだしばらくは必要となる被災地域の心のケア、そして自殺対策についてどのように取り組んでいくのか、予算措置を含めた考えをお伺いいたします。
政策評価のあり方についてお伺いいたします。
昨年12月定例会の次期総合計画特別委員会において、会派代表の工藤大輔委員の質問、政策評価システムの完成度を高めることが施策の着実な実現につながると考えますが、現在の政策評価システムの課題をどのように捉えているのかとの質問に対し、次期総合計画では、10の政策分野ごとに、県民にとってわかりやすく、比較可能で毎年度比較できることなどを考慮して具体的な推進方策指標を設定する、また、県民意識調査で、いわて幸福関連指標の達成状況や社会経済情勢などを総合的に勘案、政策の成果をより効果的に評価していける、施策の成果や課題を把握し、政策間の連携に十分に配慮しながらマネジメントサイクルを確実に機能させるという答弁でした。政策評価システムに求めるものはまさにこの答弁のとおりなのです。
そこで、私も指摘、提案しましたが、何回講演会を開催したか、何回マッチングを行ったか、登録の会社数、店舗数が目標数に達したかという項目も重要です。ただ、その達成数とともに、その先にある実数の数値が改善されてくることが必要であり、改善していなければ目標設定や施策を見直すことが必要となります。いわば、施策の達成度の指標と、達成によって得られる成果の二つの指標がなければなりません。そうすることにより、アクションプランの指標が県の施策によって向上し、実態として最上位の指標が向上していくということになります。
答弁では、政策推進プランの中に盛り込むのか、毎年の政策評価レポートで反映し、分析した上で提示したほうがいいか検討するとのことでありました。大きな政策目標を実現するための個々の施策を実行していき、各施策が達成することにより全体の目標をクリアしていく。人口減の問題でも触れましたが、人口の社会減の数値が目標値をクリアできない。しかし、個々の施策の達成目標はA判定となっている。普通に考えれば、これは施策が間違っていたのか、目標設定が間違っていたのかということになります。今までの議会で何度質問しても、また、多くの議員からの質問に対してもなかなか答弁は変わってきませんでしたが、前回の質問に対して検証するとの答弁は、大きな変換点、転換点ではないかと考えます。
いわて県民計画が議決案件となっているこの定例会において、改めて知事に伺いますが、政策評価システムをどのような形にしていこうと考えているのか。膨大な数の指標設定、県民アンケートの実施、政策評価にかけてきた人員と予算をより有効に、そして県民生活の向上につなげていくためのこれからの政策評価のあり方について伺います。
以上、会派を代表しての質問とさせていただきます。質問でも述べましたが、未来への責任は二元代表制である議会も負っているのであり、次世代、またその次の世代へとどのような岩手を託していくのか、知事を初め執行部と議会のたゆまぬ努力と行動がより必要な時代と認識しています。課題、問題の的確な把握と対処するための施策の実行、そして徹底した検証が必要だということを再度申し上げ、今回の質問、是々非々をもって質問、提言をさせていただきました。知事の答弁を期待して、終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 中平均議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、岩手県ふるさと振興総合戦略の取り組み状況についてでありますが、KPIの達成状況を見ますと、全体としてはおおむね順調となっており、施策推進目標のうち、岩手で育てるに関する合計特殊出生率については目標を達成したものの、岩手で働くに関する社会減ゼロと、岩手で暮らすに関する国民所得に対する県民所得水準の乖離縮小については未達成となっています。特に、社会減ゼロについては、平成29年の4、543人から平成30年は5、215人と減少幅が拡大しておりまして、年齢別には若年層の転出が顕著となっています。
こうした社会減は、近年の景気や雇用情勢などにより、東京圏への転入超過数が約14万人と前年から1万人以上拡大していることが背景にあり、社会減ゼロの達成に向けては、地方の取り組みに加えて、国による東京一極集中の是正に向けた抜本的な対策が不可欠と考えております。
国においては、次期まち・ひと・しごと創生総合戦略策定の準備を開始したところであり、県といたしましても、こうした動きを注視しながら、次期ふるさと振興総合戦略の策定に向けて、現行戦略の分析、検証を進めますとともに、国に対し、人口の東京一極集中の是正に向けた取り組みや、地方の実情を十分に踏まえた地方重視の経済財政政策を実施するよう、引き続き訴えてまいります。
次に、人口減少社会における課題解決についてでありますが、急速な人口減少の進行は、社会保障制度や経済活動、社会生活などにさまざまな影響を及ぼす重要な課題でありますことから、いわて県民計画最終案におきましては、平成27年度に策定した岩手県人口ビジョンを踏まえて、岩手の変化と展望の中で、2040年に100万人程度の人口を確保することを目指しております。
こうした展望のもと、岩手県ふるさと振興総合戦略に基づいて進めてきた施策について、新しいいわて県民計画の10の政策分野に基づいて推進することとしており、各政策分野のいわて幸福関連指標を高めることが、総合戦略における岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすに掲げる施策推進目標の達成に向けた前進につながるものと考えております。
今後、計画の推進に当たっては、これら地方の人々の暮らしや仕事を起点とする幸福を守り育てるための政策を展開することで、個性豊かな地域社会の形成、少子高齢化社会への対応など、岩手の未来につなげていきたいと考えております。
次に、県北・沿岸振興の総括についてでありますが、県ではこれまで、県北・沿岸振興を県政の重要課題に位置づけ、県北・沿岸振興本部を中心に全庁挙げて取り組んできたところであります。県北・沿岸圏域の1人当たりの市町村民所得は増加し、製造品出荷額も県北圏域では着実に増加するとともに、沿岸圏域でも震災前の水準まで回復したところであります。また、新たな交通ネットワークの効果により、港湾の利活用は震災前の水準を上回っています。
今後は、復興需要の減少や、全県に先行する人口減少と高齢化を見据え、県北・沿岸振興本部を中心に、持続的に発展する地域の創造に向けて取り組んでいく必要があります。
具体的には、県と市町村、多様な主体の参画と協働による先進的な地域づくりの推進を初め、AIやロボティクスなど先端技術を生かした産業振興や、三陸沿岸道路などの高速交通ネットワークを生かした交流人口と経済の拡大、地域の未来を担う人材の確保と育成など、県北・沿岸振興の取り組みを加速してまいります。
次に、県北地域の食材、産業等の魅力発信についてでありますが、県北地域は、農林水産省の地理的表示保護制度への登録が認められた岩手野田村荒海ホタテなどのすぐれた地域資源やアパレル産業などの特徴的な地域産業に恵まれており、こうした県北地域の多様な魅力を国内外に発信し、地域振興につなげていく取り組みを積極的に進めていく必要があります。
県ではこれまで、岩手の漆の魅力を発信する漆DAYSいわて2018の開催や、北岩手のアパレル産業の魅力を発信する北いわて学生デザインファッションショーなどの開催を通じて県北地域の魅力を発信してまいりました。
今年度、二戸市では、漆や日本酒、農業を活用してインバウンド等の交流人口の拡大を図る、にのへ型テロワールの取り組みが始まりました。今後は、県のこれまでの取り組みに加え、県北地域の市町村の取り組みとも密接に連携し、効果的な魅力の発信を図るとともに、地域の産業を担う人材の育成にも取り組みながら、地域産品の持つポテンシャルを最大限に生かし、販路の拡大やインバウンド等の観光誘客、さらには、若者等の地元定着やUターンの促進等にもつなげていきたいと考えております。
次に、サケ漁業の振興についてでありますが、今年度に確保しているサケの種卵数は、ふ化場間での種卵の移出入調整や定置網で漁獲したサケを利用するなどの取り組みにより、平成31年1月末現在4億7、000万粒と、計画数を約1、000万粒上回っている状況にあります。
また、来年度の水揚げの見通しについては、平成28年台風第10号の影響で放流数が減少した群が3年魚として回帰しますことから、この影響を含め、例年どおり8月をめどに解析を進めてまいります。
県では、サケ資源の早期回復に向けて、高い水温でも回帰する北上川水系のサケの遺伝子情報等を活用した種苗生産技術の開発に取り組むとともに、新たに、生残率─生き残る率が高いとされる遊泳力の高い稚魚の生産に向けて、効果的な飼育環境や生産技術の研究を進めることとしています。
次に、いわて水産アカデミーについてでありますが、アカデミーでは、漁業の基本的な知識や技術の習得を初め、ICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援するなど、将来の本県漁業の中核を担う人材を育成することとしております。県では、アカデミーの修了生が地域漁業の担い手として大いに力を発揮し、また、スマート水産業の牽引役として漁業生産の効率化や収益性向上に取り組むなど、地域の漁業振興と活性化に大きな役割を果たすことを期待しており、今後とも、アカデミーを核とした本県水産業の担い手の確保、育成に力強く取り組んでまいります。
次に、三陸ジオパークの再認定に向けた取り組みについてでありますが、三陸ジオパークの推進は、沿岸被災地における復興のシンボルの一つであり、いわて県民計画最終案においても、三陸防災復興ゾーンプロジェクトの重要な柱と位置づけております。
昨年度の再認定審査以降、各市町村単位の地域協議会や三つの広域ブロック会議の設立など、三陸ジオパーク推進協議会の運営体制が強化されるとともに、フォーラムや研修会の開催により各ガイド間の情報共有が図られるなど、エリアとしての一体的活動が着実に展開されてきていると認識しております。
県といたしましては、ジオガイド研修の充実、統一仕様の案内板の設置やジオストーリーに沿ったVR動画の制作など受け入れ環境の整備に努めてきたところであり、こうした取り組みをさらに強化してまいります。
三陸ジオパークは、5億年前からの日本列島の形成過程を体感できる学習フィールドとしてふさわしく、また、世界中から震災津波の記憶を後世に伝える役割が期待されていますことから、来年度、確実に再認定されるよう、市町村や関係団体等と連携して万全を期してまいります。
次に、三陸防災復興プロジェクト2019についてでありますが、2019年は、三陸鉄道リアス線の開通やラグビーワールドカップ2019の開催など、三陸地域が国内外から大きな注目を集める年となります。この機会を捉え、東日本大震災津波からの復興に懸命に取り組んでいる被災地の姿を発信し、東日本大震災津波の風化を防ぎ、国内外からの復興への支援に対する感謝を示し、また、被災県として東日本大震災津波の記憶と教訓を伝え、日本国内や世界の防災力向上にも貢献していきたいと考えています。
市町村とは、市町村連携会議を初め、個別事業の調整の場を通じて連携を図っており、また、各市町村においては、復興展示や食のブース出展など、本プロジェクト事業に連動した関連事業を実施する動きもあります。
今後とも、連動した関連事業の実施などについて、県としても支援を行っていきたいと考えております。
また、本プロジェクトで実施する事業の成果を踏まえて、復興を力強く推進し、新たな三陸の創造につなげていくことが重要と考えておりまして、いわて県民計画最終案に掲げる三陸防災復興ゾーンプロジェクトを展開し、三陸地域の多様な魅力を発信し、三陸地域への関心や認知度を高めながら、交流人口の拡大や地域経済の活性化を図り、持続的な地域振興につなげてまいります。
次に、国道281号の整備についてでありますが、国道281号は、久慈-盛岡間の交流連携や県北地域の振興に欠かすことのできない重要な道路と認識しておりまして、東日本大震災津波以降は復興支援道路に位置づけて重点的に整備を進めているところであります。
現在は、2020年度の供用を目指して、久慈市下川井工区と岩手町大坊の2工区において改築工事を行っているところですが、国の復興・創生期間終了後も、引き続き、交通の隘路となっている箇所の改良整備や防災対策等を進め、路線全体としての県北地域の振興を支え、災害時も機能する信頼性の高い道路として整備を進めてまいりたいと考えております。
次に、県北部と県央部をつなぐ高規格道路についてでありますが、県北地域の道路ネットワークの強化は、災害に強い県土づくりに加えて、物流の効率化や人の交流の活性化の面からも、県として特に重要な課題と認識しております。
また、新たに設立された期成同盟会が構想している自動車専用道路についてでありますが、全国の高規格幹線道路の整備状況や県が整備を進めている国道281号の効果なども含め、県北地域の道路ネットワークのあり方について、関係市町村とともに幅広く検討していきたいと考えております。
次に、奨学金養成医師の配置見通しについてでありますが、県では、良医を育て、質の高い地域医療の確保に寄与することを基本理念として、奨学金による医師養成に取り組み、平成28年度に配置を開始して以降、順次、配置数を拡大してまいりました。来年度は、配置先が調整中である数名を除いて、52名の養成医師を公的病院に配置することとしており、このうち沿岸地域には12名の配置を予定しております。
今後、さらなる増加が見込まれる養成医師の配置に向けて、専門医取得などによるキャリア形成のための義務履行の猶予も考慮に入れながら、地域偏在の解消や中小医療機関への配置の充実を図るなど、計画的な配置調整を進めることにより、できるだけ早期に公的病院等の医師不足の解消が図られるよう取り組んでまいります。
次に、診療科の偏在の解消についてでありますが、本県は全ての診療科で医師が不足しており、県では、これまで、医師の絶対数の確保に向けて、即戦力医師の招聘や奨学金による医師養成などの取り組みを推進してまいりました。あわせて、沿岸・県北地域の公的病院等の診療体制の充実を図るため、今回、医師免許を新たに取得する養成医師から、沿岸地域等での義務履行を必須化いたしました。さらに、産科等を選択した養成医師に対し、義務履行とキャリア形成の両立を可能とする特例配置の運用を開始するなど、診療科の偏在解消に向けた取り組みも進めています。
今般、昨年の医療法改正を受けて、国が定める医師偏在指標をもとに、具体的な医師偏在対策などを盛り込んだ県の医師確保計画を来年度新たに策定することとしておりまして、関係機関等と連携、協力のもと計画策定を進め、医師の偏在解消に向けた取り組みのさらなる充実を図ってまいります。
次に、ドクターヘリによる新生児の救急搬送についてでありますが、本県では、総合周産期母子医療センターであります岩手医科大学附属病院に救急搬送コーディネーターを配置して、緊急時における搬送受け入れ先の調整などにより、消防機関や医療機関など、関係機関間の連携体制を確保しているところであります。
新生児の救急搬送については、これまで、救急車により年間30名程度が総合周産期母子医療センターに搬送されておりますが、岩手医科大学附属病院移転後の新生児ドクターヘリ搬送の運用開始に向けまして、今後、運航マニュアルの策定や消防機関を交えた訓練を実施することとしています。あわせて、今年度中に全ての基幹病院のヘリポート整備が完了しますことから、新生児の救急搬送体制のさらなる強化が図られるものと認識しております。
次に、地域医療のあり方についてでありますが、昨年度に策定した岩手県保健医療計画において、人口減少を見据えつつも、本県は広大な面積を有し、地理的に峠や山地で隔てられた地域が多く移動に時間を要することなどの理由により、従来の二次保健医療圏の設定を継続することとしたものであり、一般の医療需要や脳卒中など、発症初期において速やかに受療する必要がある疾病については、圏域の中で対応する体制の整備を図っているところであります。
県では、県内九つの圏域に設置した地域医療構想調整会議におきまして、地域における将来のあるべき医療提供体制について協議しており、少子高齢化の進展などに伴う医療需要の変化に対応した効率的で質の高い医療提供体制の構築に向けて医療人材の確保を図りますほか、医療機関の役割分担と機能連携や在宅医療の推進などに取り組んでまいります。
次に、国土強靱化計画関係の補正予算への対応についてでありますが、今般の国の国土強靱化基本計画の見直しでは、近年の自然災害の教訓を踏まえた防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策を集中的に実施することとされ、総額1兆円を上回る補正予算が計上されたところであり、こうした動きを踏まえて、県としても、河道掘削や立ち木伐採を含む河川の改修や砂防事業、治山事業など、緊急に実施すべき対策に積極的に取り組むこととしております。
今後も、岩手県国土強靱化地域計画に基づいて、年度ごとの進捗状況や成果、課題等の把握、分析を行い、人命の保護、県民の財産、公共施設の被害の最小化が図られるよう、国の動きに呼応して着実に取り組みを進めていきたいと考えております。
次に、いわて県民計画の方向性と平成31年度予算についてでありますが、計画では、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを基本目標に掲げ、人口減少が進行する中、すぐれた地域資源などを最大限に生かし、東日本大震災津波からの復興とその先の振興も見据えながら、地域経済の基盤強化や持続可能な地域社会の構築を進めることとしております。
平成31年度当初予算は、こうした計画の考え方に基づき、東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧、復興に最優先で取り組みますとともに、自動車、半導体関連産業の集積や県内への就業の促進、農林水産業の生産性向上などの産業振興に向けた取り組みに加え、活力ある小集落実現プロジェクトや人交密度向上プロジェクトなど、長期的な観点に立ったプロジェクトを具体化する事業に着手することとしており、計画に掲げる目標の実現に向かってのスタートダッシュとなるものと考えております。
次に、携帯電話の利用可能地域の拡大についてでありますが、携帯電話は県民の暮らしに必要不可欠のものであり、その不感地域の解消は、本県の情報通信基盤を整備する上で重要な課題であります。その中でも、幹線道路における不感地域の解消は、災害時のみならず、産業の振興や広域的な観光振興の面で必要なものであります。こうしたことから、県におきましては、これまで、市町村と連携した国庫補助事業の活用や通信事業者に対する要望を行い、着実に不感地域の解消が進んできたところであります。
今後は、こうした取り組みに加え、国が現在取りまとめを進めている新たな携帯電話基地局の整備方針に本県の実情が反映されるよう働きかけますとともに、通信事業者への要望を強めながら、さらなる不感地域の解消を図ってまいります。
次に、東日本大震災津波伝承館の使命についてでありますが、この伝承館は、東日本大震災津波の悲劇を繰り返さないため、今回の災害の事実を踏まえた教訓を後世に伝承していくとともに、復興の姿を国内外の人々に発信することを目的として設置するものであり、本定例会に条例案を提案したところであります。
伝承館では、津波の実相や被害の状況、救助、救援活動、復旧、復興の歩み等について展示することとしており、東日本大震災津波の経験から得たさまざまな教訓を発信することで、東日本大震災津波の記憶の風化を防ぎ、国内そして世界の防災力向上に貢献できればと考えております。
次に、被災地の心のケア対策についてでありますが、県では、これまで、こころのケアセンターによる専門的な相談支援を行いますとともに、市町村との協働による戸別訪問やこころの健康相談支援を行うなど、生活再建のステージに応じた切れ目のない支援により、被災者の心のケアや震災関連自殺の防止に努めてまいりました。
被災地においては、被災者の方々が抱える問題が複雑化しており、復興の進捗に対応した心のケアの対策は中長期的な取り組みが必要であります。このため、県といたしましては、来年度もセンターの運営に係る被災地こころのケア対策事業費や自殺対策緊急強化事業費を本年度と同様の予算額を確保しながら、引き続き見守り活動等と連携した相談体制を堅持し、被災者一人一人の心のケアに取り組んでまいります。
また、現在策定中の次期岩手県自殺対策アクションプランにおきましても、1人でも多くの自殺者を防ぐため、被災地における包括的な支援を重点施策の一つに位置づけ、官民一体となった自殺対策に取り組むとともに、各市町村の自殺対策計画に基づく地域の実践的な取り組みを支援してまいります。
さらに、国の復興・創生期間終了後におきましても、被災地の心のケア推進が図られますように、必要な事業や制度の継続について他県とも連携しながら国に働きかけ、最後まで、誰ひとり取り残さないという視点で取り組んでまいります。
次に、政策評価のあり方についてでありますが、いわて県民計画最終案は、「岩手の幸福に関する指標」研究会報告書や総合計画審議会の議論を踏まえ、幸福の実感に関連する領域をもとに設定した10の政策分野を定めるとともに、各政策分野に幸福に関連する客観的な指標としていわて幸福関連指標を設定して、この指標の向上を図る取り組みを進めることによって、県民の幸福を守り育てていこうとするものであります。
また、政策推進プラン案については、いわて幸福関連指標と、それを達成するための具体的推進方策の関連性について十分に検討しながら策定を進めてきたところであります。
今後、政策評価に当たりましては、幸福に関連する10の政策分野を中心に、いわて幸福関連指標の状況や県民意識調査等で把握した県民の実感、また、今回新たに設定する参考指標、社会経済情勢などを勘案して評価を行い、取り組みの成果と課題を県民と共有して、計画の実効性を高めることで、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現に向けた取り組みを推進してまいりたいと考えております。
〇議長(佐々木順一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後4時45分 散 会

前へ 次へ