平成30年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇33番(岩崎友一君) 自由民主クラブの岩崎友一です。会派を代表して質問いたします。よろしくお願いいたします。
東日本大震災津波発災から間もなく7年を迎えます。ここに改めて犠牲となられた方々の御冥福をお祈り申し上げ、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。また、今なお行方不明となっている1、121名の方々、身元が特定されていない53名の方々全員が一日も早く御家族のもとへ戻られますことを心から御祈念申し上げます。
それでは、質問に入ります。
初めに、東日本大震災津波からの復興について伺います。
県では、発災後、8年間からなる岩手県東日本大震災津波復興計画を策定し、五つの目指す姿、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生を三つの原則とし、復旧、復興を進めてきました。
この間、大きくおくれが生じている事業もあるものの、住まいの確保は着実に進み、多くの方々が新たに住宅を再建されたり、災害公営住宅に入居することができました。一方、今なお7、758人の方々は応急仮設住宅等での避難生活を余儀なくされていることから、面的整備、災害公営住宅の整備を加速させ、早期に全員が恒久住宅へ移り、日常を取り戻すための取り組みを最優先で進めていかなければなりません。
長期化する避難生活は身体的にも経済的にも入居者に多くの不安を与えています。私も応急仮設住宅で暮らす一人として、入居者への経済的な支援の継続や孤立防止への対応など、これまで以上に丁寧な対策を講じていくことの重要性を感じています。
国のグループ補助金や津波立地補助金を活用し、多くの事業者が再建を果たすことができました。一方、高齢であることや経済的な理由から本設再建を断念する事業者も出てきていることや、復興需要終了後の経済に大きな不安を感じている事業者が年々ふえてきていることも事実であります。
県がことし1月に行ったいわて復興ウォッチャー調査においても、地域経済の回復度が昨年7月と比較し低下していることは憂慮すべき問題であります。
沿岸部では、復興需要により、建設業が牽引する形で地域経済の好循環を生み出してきたと分析していますが、この経済の好循環を腰折れさせることなく、持続的な経済成長につなげていくことこそが復興の本質であると考えています。
これらの課題については知事演述でも触れており、同じ認識を持っていると思いますが、それぞれの課題について具体的な対応策が示されておりません。
新年度は復興計画の最終年度を迎えるわけでありますが、これまでの復興の取り組みをどう評価し、これらの課題に具体的にどのように対応していくのか、知事の目指す復興の姿とあわせて伺います。
来年、2019年春、JR山田線宮古-釜石間の復旧工事が終了し、三陸鉄道による一貫経営がスタートします。2018年度には釜石秋田線が全線開通、八戸市から仙台市を結ぶ三陸沿岸道路も2020年度末までの全線開通に向け整備が進められています。
新たな交通ネットワークの整備は本県にとって最大のチャンスであり、釜石港のガントリークレーンの整備や宮古-室蘭間の定期フェリー航路の開設を好機と捉え、物流の活性化に向けた今後の県の取り組みが問われています。
また、現在、県主体で進めていただいている高田松原海岸、根浜海岸、浪板海岸の砂浜再生を初めとした観光資源の復旧、外国人観光客の受け入れ態勢の整備等を通じ国内外の交流人口の拡大を図るなど、観光産業の活性化も図っていかなければなりません。
一方、地域間競争が激化することが想定され、目的地のない市町村は単なる通過点と化し、経済の好循環どころか、過疎化が進んでしまう事態となってしまうことから、観光地の再生はもとより、各市町村が連携した旅行商品の造成、宿泊客の増加による消費単価の向上、その情報発信など、三陸DMOセンターを核とした観光戦略が重要となってきます。
道路ネットワークの整備により、より仙台圏が近くなることから、県都盛岡を初め内陸部への誘客促進も大きな課題です。県として、新たな交通ネットワークのメリットを最大限生かし、また、デメリットを補う観光施策が必要であると考えますが、知事の見解を伺います。
次期総合計画における復興計画の位置づけについて伺います。
県では、1年後の復興計画終了後、復興計画を延長させることなく、次期総合計画の一部として位置づける方針を示しております。計画終了時においても、避難生活を続けざるを得ない方々がいること、防潮堤や水門等ハード面の整備進捗率も71%の見込みであること、住宅再建後や災害公営住宅入居後もコミュニティーの再生支援や生活相談支援等の継続した支援が必要であることなど、復興という名のもとにやらなければならない事業が数多く残ります。
国においては、復興・創生期間として、3年後の2020年度まで、財源確保も含め、被災地の将来を見据えた復興を推し進めていく方針を示している中で、被災地である岩手県が早々に復興の旗をおろすことに違和感を覚えます。また、再来年以降も避難生活を続ける方々が取り残されていると感じてしまうことはないか、被災地の風化が進むのではないかなど、大きな懸念を感じています。
今なお有事であるということ、国や各都道府県の支援が必要であるということを明確に示していくことが必要であり、最低でも、国と同様に、2020年度まで復興計画を延長すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、本県は再来年─2020年の40万5、000人をピークに、高齢者人口は減少に転じます。出生率が低いことや社会減に歯どめがかかっていない現状から、高齢化率は上昇を続けますが、逆に捉えると、出生率の向上、社会増減をプラスに転じさせることにより高齢化率は低下し、社会保障の安定はもとより、歳入の増額により、新たな経済対策や子育て施策の充実を図ることができるなど、本県の明るい未来をつくり出すことができると考えます。
そこで、若者定住及び子育て支援について伺います。
若者に県内に定住してもらうためには、小中学校からの教育が重要と考えます。現在、新卒者の県内就職率は、高卒者が66%と着実に向上しているのに対し、大卒者は45%と低い状況が続いており、大卒者を受け入れる県内企業の成長支援や大企業の誘致を進めるなど、大卒者の受け入れに、より注力していく必要があります。
日本全体を見れば、今後も生産性の向上が図られたとしても、全国的な人口減少により、数十年は企業側の最大のニーズは労働力にあると考えることから、私は、将来を見据え、大企業の本社機能の本県への移転を視野に入れて、企業と連携し、小中学校の段階から企業側の求める人材育成を始める取り組みを提案いたします。
若者の定住促進に向けて、企業のニーズを把握した産業人材育成を今から着実に進めていくことが重要であると考えますが、知事の見解を伺います。
少子化からの脱却を目指すためには、経済的な支援と待機児童の解消は必須です。県においても、この間、子供の医療費助成制度の拡充や保育士修学資金貸付制度の導入、保育士・保育所支援センターの再就職支援コーディネーターの増員など、国の制度とも連動し前向きな取り組みを進めておられます。今年度は、平成27年度から5年間にわたり計画された子ども・子育て支援事業計画の中間年に当たり、現在、各市町村において計画の見直しが行われていると思いますが、県内の待機児童解消の見込みはいつと見込んでいるのか、これまでの取り組みの評価と今後の施策について伺います。
次に、今後の県財政の運営について伺います。
平成30年度当初予算案は総額9、533億円、昨年度に引き続き1兆円を下回る予算規模であり、国による手厚い財政支援が講じられている東日本大震災津波からの復興事業については、今後も事業の進捗に伴い減少していくことは避けられません。このような中、ラグビーワールドカップ2019釜石開催の成功やILCの誘致実現に向けた取り組みはもちろんのこと、人口の社会増を目指す本県にとって、県独自の地方創生の取り組みは急務であります。
新年度は、本県にとって2019年度から2028年度までの10年間を計画期間とする次期総合計画を策定する重要な1年となります。地方創生を強力に進めるためには、安定的な財政基盤が必要不可欠でありますが、足元では、平成30年度当初予算編成においても収支不足を解消できず、主要3基金から146億円もの繰り入れによる財源対策を講じており、基金頼みの財政運営が続いております。
平成30年度末の主要3基金残高は232億円、これは、今回の規模の財源対策を講じた場合、2年分にも不足する規模です。財政の弾力性を確保するためにも不可欠である主要3基金の残高を今後どのように確保するつもりでしょうか。次期総合計画の推進に向けた今後10年間における財政運営の考え方とあわせて伺います。
平成28年台風第10号災害への対応について伺います。
平成28年台風第10号災害の発生から間もなく1年半を迎えます。改めて、犠牲となられた皆様の御冥福をお祈り申し上げ、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。
災害発生から、この間、被災世帯の見守り活動や健康支援等については東日本大震災津波の教訓が生かされ、被災者に寄り添った対応が進められていると感じています。
一方、これから本格復興が始まろうとしている中で、県では、台風災害復旧復興推進室を廃止し、地域振興室に事務の移管を図ることとしておりますが、果たして、新たな体制がこれからの復興を現場本位で円滑に進められるのか不安であります。
県では、平成28年台風第10号災害からの復興をいつまでに遂げようとしているのか、また、今後の県の役割をどう捉え、経済の再生を初めとして、どのような支援を行っていくのか伺います。
平成28年台風第10号災害は、特に被害の甚大であった岩泉町、宮古市、久慈市以外にも県内各地に大きな爪跡を残しました。住民の方々からも、河川堤防のかさ上げや河道掘削など、これまで以上に多くの要望を頂戴するようになり、県民の水害に対する防災意識が非常に高まってきていると感じております。
国も本格的な対策に乗り出し、中小河川緊急治水対策プロジェクトとして、洪水時に特化した低コストの水位計の開発や砂防堰堤等の整備、河道掘削など、2020年度を目途に全国で対策が行われるよう財政支援も決定したところでありますが、県管理河川における今後の防災、減災対策をどのように進めていくのか伺います。
農林水産業の振興について質問いたします。
初めに、中山間地域の農業振興について伺います。
本県は広大な面積と地域特有の自然環境に恵まれており、特に、県土の8割を占め、農業者の8割が居住する中山間地域での農業振興は極めて重要であります。所得の向上や後継者の確保など課題が山積している状況にあって、地域農業の中核となる担い手を育成し、特色ある産地づくりを進めるなど、農業振興の方向性を具体的に示すことにより、中山間地域における農業産出額や農業所得の向上を図っていくことが重要と考えます。現在、着実に沿岸地域や県北地域でも若い担い手が育ってきており、取り組みを強化していくことにより、農家所得の向上、定住人口の拡大など、中山間地域の活力につながるものと期待するものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
今後、本県の中山間地域の農業振興をどのように進めようとしているのか伺います。
次に、林業を担う経営体と人材育成について伺います。
本県の木材生産量は震災前を大きく上回っており、また、森林資源の循環利用に必要な造林の面積も確実に増加するなど、順調に推移しているように思います。
昨年4月に開講したいわて林業アカデミーの第1期生15名全員は県内への就業が決まり、現場で活躍する日が近づいているとの話も聞いており、貴重な資源である森林を適切に維持管理していくことで、将来に向けた林業、木材産業の振興のみならず、地域振興への貢献も期待しているところであります。
一方、全国の状況を見ると、貴重な森林の所有者の多くがみずからによる森林経営を放棄しているほか、中には相続が全く行われず、誰が本当の所有者なのかわからなくなっている森林も数多く存在しております。
国では、このような状況を解決するため、意欲ある林業経営者に経営を委託するなどの新たな森林管理システムの創設を目指しているところであり、また、これに関連し、市町村が行う森林整備などの財源に充てられる森林環境税も創設される見込みです。
国が制度の創設を目指している新たな森林管理の仕組みを踏まえ、今後どのように本県の林業を担う経営体と人材の育成を進めていこうとしているのか伺います。
次に、サケの不漁対策と原材料の確保対策について伺います。
本県水産業は、沿岸地域の基幹産業として地域経済の活性化に欠かせない重要な産業でありますが、東日本大震災津波以降、生産量の低迷や就業者の減少など非常に厳しい状況にあります。特に、主力魚種であるサケの水揚げ量は、平成8年度には7万トンを超える水揚げを記録したものの、その後は段階的に減少し、東日本大震災津波以降は、震災前の約3割程度にとどまっております。平成29年度の水揚げ状況は、金額は単価の上昇により前年度を上回っておりますが、水揚げ量は1月31日現在で7、283トンと、不漁と言われた前年度をも下回っております。
サケの水揚げ状況は漁協経営に直結します。サケの増殖については、今後とも種苗を放流し、持続して資源を造成していくことが本県の基幹産業である漁業を維持することにつながっていくと考えますが、サケの漁獲が不振であることの要因と、今後どのように対応していくのかを伺います。
サンマやスルメイカについても、ここ数年の水揚げ量は震災前と比べて大幅に減少しております。県の被災事業所調査において、水産加工業者が一番の課題に挙げているのが材料調達であり、サンマ、スルメイカの不漁は、本県水産加工業者の経営に大きな影響を及ぼしております。漁業とともに、水産加工業の発展なくして復興計画にうたうなりわいの再生はなし得ません。
そこで、水産加工業者の原材料の確保及び販路拡大や付加価値向上に向けた県の対応はどのようになっているのか伺います。
いじめ対策について伺います。
全国的に学校におけるいじめが横行し、自殺まで至るという最悪の事態が発生していることを踏まえ、国では、文部科学省や警察庁、法務省が連携し、各地方公共団体での取り組みを促してきているところであります。本県においても、平成26年、平成27年と、2年続けていじめが一因と思われる自殺という、あってはならない悲しい事件が発生しました。県では、これを受け、国のいじめ防止対策推進法に基づき、岩手県いじめ問題対策連絡協議会を初めとした三つの委員会を設置するなど、学校現場だけではなく、福祉分野を初め、関係機関が一体となって対策を講じているものと認識しております。
いじめ撲滅は何よりも優先されるべき課題です。一方、いじめが放置、隠蔽されることにより、自殺という最悪の事態を招くことのないよう、早期発見、早期対応も不可欠であり、そのため、軽微と思われる事案でも積極的にいじめを認知し解決に取り組む必要があり、いじめ認知件数が多い地域は荒れた地域ではなく、いじめ対策に積極的に取り組んでいる、よい地域であるという考え方を共有していくことが重要であると考えます。
そこで伺います。いじめの認知は、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものであり、積極的に認知件数を上げることが重要であるとの認識が、学校、保護者、教育委員会を含む行政等、全ての関係者に周知徹底されているのでしょうか。また、特に、いじめを認知していない学校や認知件数が少ない学校においては、いじめの認知件数がゼロあるいは少なかったということを児童生徒や保護者向けに公表し、検証を仰ぎ、認知漏れのないような丁寧な取り組みが行われているのか、あわせて伺います。
平成27年4月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正に伴い、本県にも総合教育会議が設置されました。総合教育会議は知事と教育委員会で構成され、本県における教育行政の指針となる大綱を策定するわけでありますが、知事としていじめに対しどのような見解を持っているのか。また、二度といじめによる自殺という最悪の事態を招くことのないよう、万全の対策を講じることが重要であると考えますが、これまでの教育委員会の取り組みをどのように評価しているのか伺います。
最後に、ILC─国際リニアコライダーの誘致に向けた取り組みについて伺います。
ILCは、本県そして東北にとってまさに復興の象徴であり、何としても誘致を実現させたいビックプロジェクトです。ヨーロッパの次期素粒子物理5カ年計画の議論開始時期を踏まえると、ことしの夏ころには国が日本への誘致の可否を決定しなければならないことから、ことしは本県にとって勝負の1年となります。そのような状況も踏まえてか、知事は、本定例会初日の演述で、県としてもこれまで以上に関係機関や関係団体と一致団結しながら、ILC受け入れに万全を期し、国に対する積極的な働きかけを行っていくと述べられました。しかしながら、これまでの活動を見ていると、県と関係市町の連携に不足があるのではないかと感じており、実際、関係市町からも同様の声が上がっています。なぜそのようなことが生じているのか、これまでの市町村連携のあり方について、県の評価と今後の方針について伺います。
知事が述べられたように、国への積極的な働きかけが必要です。しかしながら、これまでの知事の要望状況を見ると、積極的どころか、極めて消極的であります。このたびの知事演述を見ても、余りにも漠然としたもので、かつ、国へ要望していくという他力本願ばかりが目立つ内容であり、県としての活動方針が全く示されないなど、残念ながらILC誘致に向けた知事の本気度を疑わざるを得ません。
知事は、誘致に向けた課題をどのように整理し、今後、岩手県知事として具体的に何をすべきと考え、行動していくのか、誘致へ向けた思いとあわせて県民の皆さんにお示し願いたいと思います。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩崎友一議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、東日本大震災津波からの復興の取り組みの評価と課題への対応、目指す復興の姿についてでありますが、発災以降、県政史上かつてない規模の事業に取り組んできたところであり、復興まちづくり事業は約7割が完了し、災害公営住宅の約9割が完成するなど恒久的な住宅への移行が進み、また、商店街や商業機能の再生も本格化しています。
一方、復興の長期化に伴う心と体のケアや生活環境の変化に伴う新たなコミュニティー形成、また、水産業や商店街の再生、中小企業における事業再開後の販路回復などに取り組んでいく必要があります。このため、岩手県こころのケアセンターにおける相談対応や生活支援相談員による見守り活動など、きめ細かな心と体のケアに引き続き取り組むとともに、住宅再建先でのコミュニティー形成が円滑に進むよう支援をしてまいります。
また、地域に根差した水産業の再生を図るために、担い手の確保、育成、高度衛生品質管理体制の構築による高付加価値化に取り組むとともに、被災地域の経済を支える中小企業の本格的な再生、復興に向けて、本設移転や販路拡大による収益性の回復を支援します。今後も、復興計画に掲げるいのちを守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造に向け、全力で取り組んでまいります。
次に、新たな交通ネットワークを生かした観光施策についてでありますが、内陸の観光地を含め、県内をより広く、より長く周遊、滞在する観光を促進していくことが重要であります。これまで、三陸DMOセンターでは、沿岸各市町村における観光資源の磨き上げへの支援を行い、また、県、市町村、観光関係団体等で構成するいわて観光キャンペーン推進協議会を通じた二次交通の充実への支援に取り組んでまいりました。
今後におきましては、これまでの取り組みに加えて、広域振興局の体制強化で、各市町村そして関係団体による地域ならではの観光振興に向けた取り組みを一層支援することとしております。
さらに、青森県、宮城県など近隣県からの誘客も視野に、魅力ある広域周遊、滞在型旅行商品の造成促進と効果的なプロモーションを展開することとしており、これらの取り組みにより、新たな交通ネットワークを生かした観光の振興を図ってまいります。
次に、若者の定住促進に資する産業人材育成についてでありますが、岩手のものづくり産業を支え得る人材の育成に当たりましては、大企業を含む企業ニーズや教育現場からの意見などを踏まえながら、産学行政が一体となって組織している各地域のものづくりネットワークを中心に、ものづくり産業への興味が湧いてくる小中学生、次代のものづくり産業を担うことが期待される高校生、大学生及び産業を支える企業人のそれぞれに対し、人材育成の取り組みを展開しているところです。
新年度からは、広域振興局等の産業振興体制を強化し、市町村や地域企業との一層緊密な連携によってさらなる企業ニーズの把握に努め、ものづくりネットワークの活動に的確に反映させるなど、若者の定住促進に向けた産業人材育成の取り組みを引き続き推進してまいります。
次に、子育て支援についてでありますが、保育の実施主体である市町村においては、子ども・子育て支援事業計画に基づき、待機児童の解消に向けて取り組んでいるところであります。県では、平成27年度以降、保育所等の施設整備に対する財政支援によって1、354人の定員増を支援して、おおむね計画どおりに受け皿整備を進めてきたほか、保育士・保育所支援センターを設置して、潜在保育士302人の再就職を支援してまいりました。一方、保育ニーズの一層の高まり等によりまして、待機児童の解消には至っていないところであります。
こうした状況を踏まえて、市町村は今年度計画の見直しを進めており、現時点では、保育の利用ニーズを上回る定員が確保される計画となる見込みです。
県といたしましては、来年度も、保育施設の整備により受け皿のさらなる拡充を図りますほか、保育士の確保を強化するため、保育士修学資金貸付事業に沿岸希望枠を創設する経費を当初予算に盛り込んだところでありまして、待機児童の解消に向けて、引き続き市町村の取り組みを支援してまいります。
ただいま答弁しました若者の定住促進に資する産業人材育成についてと子育て支援についての前に御質問をいただいた次期総合計画における復興計画の位置づけについて、順序が逆になって申しわけございませんけれども、ここで答弁をさせていただきたいと思います。
次期総合計画における復興計画の位置づけについてでありますが、今後10年間の岩手の未来を示す長期ビジョンにおいては、復興に関する一章を設けて、東日本大震災津波からの復興に向けた基本方針に掲げた一人一人の幸福追求の権利を保障すること、そして、犠牲者のふるさとへの思いをしっかり引き継ぐという二つの原則を引き継いで、復興推進の基本方向を定める考えであります。そして、アクションプランとしましては、2019年度から2022年度までの復興推進計画となります(仮称)復興プランとして、現行の復興実施計画と同様に具体的な施策や事業を盛り込むことで、切れ目のない復興の取り組みを進めていく考えであります。
次に、今後の県財政の運営についてでありますが、厳しい財政状況が続く中にありましても、東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復旧、復興、ふるさと振興総合戦略を強力に推進する必要がありますことから、あらゆる手法による歳入確保や歳出の精査に努めた上で、主要3基金の取り崩しにより、必要な財源を確保したところであります。
今後も、地方創生推進交付金等の国庫財源の有効活用や効果的、効率的な予算執行を図りながら、基金残高の確保に努めてまいります。
また、次期総合計画の策定を見据え、持続可能な財政構造の構築が必要となりますことから、産業振興による税源涵養を初め、安定的な税財源確保の取り組みや事務事業の一層の選択と集中を進めるとともに、国に対しては、地方の実情に即した地方創生を強力に進めるため、地方一般財源総額を確保するよう強く求めてまいります。
次に、平成28年台風第10号災害への対応についてでありますが、県では、早期の復旧、復興を図るため、これまで、国の制度の対象とならない被災世帯に対して、市町村と連携して県独自の支援金を支給してまいりましたほか、サケ・マスふ化場の再開支援や被災3市町に対する自由度の高い交付金の創設等を行ってまいりました。
今後も、2021年度までとしている岩泉町の災害復興まちづくり計画と歩調を合わせながら、被災した県管理道路や河川の復旧等を迅速に進めますとともに、被災市町のマンパワーの確保や被災企業の販路開拓等によるなりわいの再生、被災者の住宅再建や心のケアなど被災市町と連携し、被災者一人一人に寄り添いながら、県として必要な支援を行ってまいります。
次に、県管理河川における今後の防災、減災対策についてでありますが、まず、甚大な浸水被害があった小本川や安家川などにおいて再度の浸水被害を防止するため、2020年度の完了を目標として河川改良復旧事業を進めてまいります。また、全ての県管理河川を対象に、予防的な治水対策としての河道掘削や立ち木伐採を計画的に実施しますとともに、地域住民との協働や民間の砂利採取の活用を促進し、適切な河川の維持管理に努めてまいります。
あわせて、近年、豪雨災害が激甚化、頻発化していますことを踏まえ、施設の能力を超える洪水は発生するという認識のもと、水位周知河川や洪水浸水想定区域の指定の拡大、ホットラインの運用やタイムラインの推進、危機管理型水位計の設置等のソフト対策を進め、市町村や関係機関と連携しながら警戒、避難体制の充実強化を図ってまいります。
今後とも、社会全体で洪水に備える水防災意識社会の構築に向け、ハード、ソフトを総動員した治水対策にしっかりと取り組んでまいります。
次に、中山間地域の農業振興についてでありますが、本県の中山間地域は、多様な気象条件や変化に富んだ地形を生かし、地域の核となる担い手や小規模、兼業農家が生産活動に携わっている現状にあり、こうした多様な農家が参画した取り組みを通じて、活力ある農業、農村を実現していくことが重要です。このため、県では、平成28年に策定したいわて農業農村活性化推進ビジョンに基づき、標高差などを生かした野菜の産地化や地域の特色ある農畜産物の加工、直売等による6次産業化に取り組んでいます。また、豊かな自然や食などの地域資源を生かした都市住民との交流など、地域の創意工夫に満ちた取り組みを促進するとともに、岩手大学等との連携による地域リーダーの育成を推進しています。
今後におきましても、経営の発展を目指す担い手や小規模、兼業農家がともに豊かさを実感できる中山間地域の農業、農村の実現に向け、力強く取り組んでまいります。
次に、林業を担う経営体と人材の育成についてでありますが、県では、地域単位で森林経営を担う経営体の育成が重要でありますことから、平成18年度から地域けん引型林業経営体の育成に取り組み、既に43の経営体が生産性の高い森林経営を実践しています。
現在、国が創設を目指している新たな森林管理システムにおいても、このような経営体が地域の森林経営の主体として位置づけられています。このため、引き続き、経営体が徹底した生産性の向上とコスト縮減を図り森林所有者へ収益を還元できるよう、路網整備や高性能林業機械の導入など重点的な支援を行ってまいります。
また、いわて林業アカデミーにおいて、第1期生の実績を踏まえ、今後も林業技術者を養成していくほか、関係団体と連携し、作業工程管理やコスト分析などを行う管理責任者を育成していきます。
これらの取り組みを進め、地域の林業を担う経営体と人材の育成を図り、本県の森林資源の適切な管理と林業の成長産業化を推進してまいります。
次に、サケの不漁対策についてでありますが、本年度のサケの漁獲量は2月10日現在7、287トンで、震災前同期に比べ約3割となっています。漁獲不振の原因は、ふ化場の被災により稚魚の放流数が少なかったことから、回帰主群の4年魚、5年魚の漁獲量が減少しましたほか、放流後の海水温が急上昇して稚魚の生存に影響した可能性や、全国的にも漁獲量の減少が見られることから、広く北洋海域で稚魚が減少した可能性が考えられます。
このため、県では、引き続き、計画している4億尾水準の放流を確保していくとともに、高水温でも回帰する北上川水系のサケを使用した新たな稚魚生産技術の開発などによって、海水温の変動に強い種苗生産を推進してまいります。また、北洋海域での減少要因を把握するための調査の拡充を国に要望するなど、あらゆる取り組みを推進し、サケ資源の回復に努めてまいります。
次に、サンマ、スルメイカの不漁に伴う水産加工業の原材料の確保対策についてでありますが、まず、原材料の確保については、水揚げ状況などの情報提供や、サンマ、スルメイカ以外への原料転換を検討する事業者への助言、国の補助制度の活用などを支援してまいりました。市町村や漁協と連携し、漁獲が好調なサバ、イワシのまき網漁船を地元魚市場に誘致し、代替原料の安定的な確保に努めております。
販路拡大や付加価値向上につきましては、復興シーフードショーIWATE等のコンクールや商談会の開催、漁獲から流通、加工までの一貫した高度衛生品質管理、専門知識を有するアドバイザーの派遣などにより支援しています。
県では、引き続きこのような取り組みを進め、地域の水産物を生かした品質の高い加工品の製造と販路の拡大を積極的に推進してまいります。
次に、学校におけるいじめの認知についてでありますが、いじめの積極的な認知は、児童生徒の生命等にかかわる重大な事案の未然防止等の観点から、極めて重要であります。
教育委員会におきましては、市町村、関係機関等と連携しながら、いじめの積極的な認知等について合意形成や周知徹底を図り、学校においては、いじめ防止基本方針をそれぞれの学校で定め、保護者等に公表し、児童生徒や保護者を対象とした年に複数回の定期的なアンケート調査や教育相談等を通じていじめの積極的な認知に努めており、本県のいじめの認知件数は増加し、いじめを認知していない学校数は減少してきています。
県におきましては、いじめ対策の充実を図るため、昨年9月、いじめ防止等のための基本的な方針を改定したところでありますが、今後とも、この方針に基づいて、いじめを認知していない学校等も含めたいじめの積極的な認知と対策の充実に努めてまいります。
次に、いじめに対する見解と教育委員会の取り組みに対する評価についてでありますが、いじめは、いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものです。
教育委員会では、いじめ問題に関する総合教育会議での協議、調整等を踏まえ、本県で発生した痛ましい事案等を教訓に、自他の命と他者の人権を尊重する教育に努めてきていると承知しておりまして、私も総合教育会議において、教育委員会の取り組みに対し、情報を共有し、また意見を述べるなどしているところでありますが、今後におきましても、こうした取り組みを充実させていく考えであります。
次に、ILCの実現に向けた市町村との連携についてでありますが、ILCの建設候補地である一関市と奥州市については、職員を県の組織で受け入れるなど、日ごろから情報共有を図っていますほか、一関市、奥州市に加え盛岡市及び大船渡市、盛岡、県南の広域振興局で構成されます連絡会議を定期的に開催して、情報共有や事業の連携を進めています。
また、首都圏で開催された大規模展示会への出展や、英語版情報誌ザ・キタカミタイムスの発行など、地域の情報の一元的な発信など、地域が一体となって取り組んでいるところであります。
昨年、国の有識者会議における報告書において、ILC周辺の生活環境要件や社会基盤要件の整備には関係自治体の協力が必要とされたところでありまして、今後、県と関係市町との連携は一層重要となってくると考えております。
このようなことから、平成30年度は、受け入れ環境の整備や情報発信、関連産業の振興など、これまで以上に関係市町との連携強化に努めてまいります。
次に、ILCの実現に向けた課題と今後の取り組みについてでありますが、国の有識者会議においては、我が国におけるILCの実現には、国際的な協力が得られること、CERNのLHC実験の動向を見きわめること、そして国民の理解を得ること等が必要とされています。
国際的な協力については、現在、超党派の国会議連が中心となって、米国や欧州との具体の協議に向けて尽力されています。
LHC実験との関係については、これまでの実験結果から、世界の研究者の間で、ILCとLHCは相互に補うことが重要とされ、課題とされた巨額な建設コストも、昨年、ILCを20キロメートルとする、いわゆるステージングによる計画の見直しにより大幅に削減される見込みとなりました。
国民の理解については、産学官の全国組織や本県、東北の関係者などで積極的に活動を進めています。
一方、建設候補地としても、ILCへの理解を深める取り組みを進めながら、社会環境基盤や外国人等の受け入れ環境の整備を行って、関連技術や研究成果を地域のイノベーションにつなげていくことが重要でありますことから、東北ILC準備室とも密接に連携し、具体的な対応を行ってきたところであります。
ILCの建設に必要な安定した地質などの条件を満たす場所がこの岩手県の北上山地であり、ILCを実現させることは岩手の使命と言うことができると思います。
このため、こうした地域の取り組み状況を国に訴え、誘致決断の後押しとするため、先般、鈴木俊一大臣らとともに要望を行ったところでありますが、今後とも関係団体等とも綿密に協議、調整し、機会を捉え要望を行うなど、ILCの実現に向けて全力で取り組んでまいります。
〇副議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
午後2時43分 休 憩
出席議員(46名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 中 平   均 君
35  番 五日市   王 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 小野寺   好 君
40  番 飯 澤   匡 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 柳 村 岩 見 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 大 輔 君
48  番 樋 下 正 信 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時4分再開
〇副議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。佐々木努君。
〔15番佐々木努君登壇〕(拍手)

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