平成30年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇30番(郷右近浩君) 改革岩手の郷右近浩でございます。
質問に先立ち、東日本大震災津波から間もなく7年、また、平成28年の台風第10号災害から1年半を迎えようとしている今、いまだに不自由な生活を余儀なくされている被災者の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
それでは、登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げ、会派を代表して質問させていただきます。
初めに、平成30年度当初予算について伺います。
平成30年度は、いわて県民計画と復興計画がともに最終年度となります。沿岸被災地においては、災害公営住宅の約9割が完成し、防潮堤の整備も進み、新たな商業施設も相次いでオープンするなど、復興の姿が徐々に明らかになっています。本年6月には、宮古-室蘭間のフェリー定期航路が開設されるなど、当初の想定以上に進展する分野も見られるようになりました。これまで復興に携わってきた方々に対し、改めて感謝申し上げる次第であります。
一方で、こうした被災地に実際に足を運べば、いまだ復興は道半ばであることを実感せざるを得ない状況であることは、多くの人々が思うところであります。また、本県全体の人口減少も進んでおり、その対策も急務となっております。
こうした中、知事は、明日への一歩予算として、平成30年度当初予算を編成されました。二つの計画の締めくくりに当たって、いわての学び希望基金奨学金の拡充や、子供の貧困対策に資する全国と比べても意欲的な生活実態調査の実施などが盛り込まれたことは、子供たちの未来にきめ細かく配慮したものと評価するものであり、本県の次の10年を明らかにしていくことが待たれます。
ラグビーワールドカップ2019や三陸復興博の開催準備、ものづくり産業の集積促進など、まさに岩手の新たな希望につなげる正念場を迎えているものと考えますが、次期総合計画の策定につなげていくものとして、平成30年度当初予算に込めた知事の思いと、どのように重点化を図ったのか、その方針について伺います。
本県にあっては、依然厳しい財政状況が続いていると認識しております。公債費については、平成26年度をピークに減少しているとはいえ、今後も高水準で推移する見込みです。また、プライマリーバランスについても、平成30年度末の見込みで232億円のプラスと8年連続の黒字を見込んでいますが、財源対策3基金からの取り崩し額を146億円見込んでおり、その残額は、平成28年度末が454億円、平成29年度末が377億円、そして平成30年度末には232億円に減少する見込みとなっております。さまざまな施策の推進が求められる一方で、今後、県財政をどのように運営していくお考えかお伺いします。
次に、総合計画について伺います。
知事は、就任1期目の平成21年12月に、いっしょに育む希望郷いわてを基本目標とするいわて県民計画を10年間の県の政策推進の方向性を示す総合計画として策定されました。しかし、その1年3カ月後に東日本大震災津波が発生し、本県を取り巻く環境に大きな変化をもたらしています。こうした環境変化は、長期ビジョンに描いた目指す姿や、六つの構想の一つとして示した海の産業創造いわて構想の実現などに、少なからぬ影響を及ぼしたものと思います。
そこで、まずは、いわて県民計画の長期ビジョンについて、知事自身はどの程度実現できたと総括されているのかお伺いします。
現在、検討が進められている次期総合計画については、現在の計画と同様、10年間の長期ビジョンとマニフェストサイクルを考慮したアクションプランで構成し、平成31年度を初年度とする計画として策定する方向性が示されております。世界の動きや科学技術、情報化の動きなどが目覚ましく、数年先の姿さえ予想しがたい今日において、総合計画に長期ビジョンを示さない都道府県もあると承知しておりますが、次期総合計画において、長期ビジョンを示す意義を知事はどのようにお考えでしょうか。
また、県民に対し、長期ビジョンとして10年後の岩手の将来像を示そうとするのであれば、県民と深く共有できるものとすることが重要であると考えます。その一つの手段として、知事が力を入れている幸福度とあわせ、復興後の三陸の姿やILC誘致が実現した後の状況、さまざまな国の人々と地域の方々が一緒に暮らしている姿といった大きなプロジェクトを具体的に示し、県民と希望を共有していくことが重要と考えますが、所感をお示しください。
次期総合計画においては、アクションプランの中に復興プランを盛り込む方向であるとのことですが、現在、総合計画、復興計画、ふるさと振興総合戦略の3本の計画の中で、総合計画とふるさと振興総合戦略に関しては重なり合う部分も多く、また、復興計画についてはその性質を異にするものであり、総合計画と切り離すべきとの意見もあると認識しております。今後、これらの計画をどのように関連づけ、県民によりわかりやすく説明していくお考えか伺います。
次に、国際戦略について伺います。
昨年、知事は、いわて国際戦略ビジョンを策定し、農林水産物等のブランド化の推進や、各国の市場のニーズに合わせたプロモーションの展開を初めとした国際戦略に重点的に取り組んでこられ、着実に成果があらわれているものと認識しております。
現在、本県は、中国の大連と韓国のソウルの2カ所に海外事務所を設置しており、この4月には、中国の雲南省に新たな海外事務所を開設し、タイやベトナムといった南アジア諸国のゲートウエーとしての役割も担うとされております。また、ヨーロッパについては、フランスのコルマール国際旅行博覧会やイタリアのミラノ国際博覧会への出展実績があり、ことしはパリを中心とした大規模な日本文化紹介行事であるジャポニスム2018への参加を表明しております。
このように、中国を初めとした東アジア、タイやベトナムなどの南アジア、さらにはヨーロッパ等、広範囲にわたる海外展開に取り組んでおられますが、それぞれの地域にどのようにかかわっていこうとしているのか、海外展開の基本方向について、来年度の具体的な取り組みとあわせてお示し願います。
東アジアへの輸出拡大について伺います。
県内企業が県産品を輸出するに当たっての課題が、小口の輸出を行う場合の輸送手段が確保できないことにありますが、この課題の解決策の一つとして、沖縄国際ハブクラスターの活用が考えられます。
沖縄国際ハブクラスターとは、沖縄が東アジアの中心に位置している有利性を生かし、日本国内から輸出物を集め、これらをまとめて輸出しようとするものであり、中小企業の海外展開に対する支援機関として、官民一体となって推進されているものです。また、毎年、沖縄市内で大規模な食の国際商談会である沖縄大交易会が開催されており、これを活用することで、アジアを中心とした各国との商談が可能となります。
県においても、以前から、この沖縄国際ハブクラスターの活用を検討していたと認識しておりますが、現在の状況と今後の方向性をお示しください。
次に、ILCについて伺います。
昨年8月、岩手県議会欧州視察団12名のうちの1人として、CERN─欧州原子核研究機構及びDESY─ドイツ電子シンクロトロン研究所を訪れ、国際研究機関の運営や研究者の生活環境について、直接、現地関係者から意見を聴取するとともに、CERNの近隣にある2自治体から、国際研究機関と地元自治体のかかわりを学ぶことを目的とした調査を行ってまいりました。この調査において、世界の物理学者の多くが日本政府の決断を待っていること、欧州ではクリックという線形加速器計画が検討中であり、日本の判断がおくれればその計画が動き出す可能性があること、また、外国人研究者の生活環境の構築に当たっては、地域センターや相談できる場所の整備といったソフト面の取り組みも必要であることなどを再認識したところであり、この調査結果を踏まえ、去る1月11日に、岩手県議会欧州視察団として、知事に対し、政府の決断を促す運動を速やかに進めることを初め、八つの項目の提言書を提出いたしました。私自身、こうした現地の動きから、政府の決断はことしの前半が山場になるのではないかとの思いを強くするとともに、研究者の方々の実現への熱意を感じてまいりました。
さて、一昨日から本日までの3日間、一関市で、本県において2度目となる国際会議が開催されており、ILCの建設実現を熱望している国内外の研究者が集結しております。
新聞報道によれば、この中で、ヨーロッパの次期素粒子物理学計画にILCを盛り込むための諸資料の提出期限が本年10月18日との説明があったとのことであり、日本政府側の方針を示す時期が刻一刻と迫ってきております。まさに正念場の今、国への要望を初めとしたILC建設実現に向けた取り組み状況と平成30年度の取り組み、そして知事の決意を伺います。
次に、産業振興について伺います。
今年度、デンソー岩手の大型増設、そして東芝メモリの新工場建設が決定するなど、本県のものづくり産業の柱である自動車、半導体産業の集積促進に向けたこれまでの取り組みが実を結び、今後の産業振興に大きな期待を抱いているところであります。
また、こうした動きに呼応し、今般、県では、北上市を拠点に専担の職員を配置し、産業集積や産業人材確保に向けた体制強化を図ったところであり、迅速な対応を評価するものであります。しかしながら、産業集積すべき工業団地に着目すれば、県南圏域の86の団地のうち既に57の団地が完売されており、全体の分譲率が90.3%となっております。
今般の東芝メモリの新工場建設により、半導体関連企業の新たな立地が見込まれるところであり、また、リスク負担等も考慮すれば、自動車、半導体のほかにも、医療機器産業などの幅広い産業集積を進める必要があると考えます。
北上川流域は東北を代表する産業集積地でありますが、さらなる企業立地を円滑に進めていくためには、進出を検討している企業へのアプローチに際し、土地を初めとした立地環境を相手方に見える形で示していく必要があると考えます。もとより、企業立地は市町村が主体となるものでありますが、全体をコーディネートするのは県の役割であると私は思っております。
北上川流域における今後の産業集積の方向性について、工業用地をどのように確保していくかを含めてお示し願います。
また、産業集積を促進していくに当たっては、用地のみならず、道路整備や工業用水の確保策などについて部局横断的に対応していくことが重要と考えますが、現在の状況と今後の方向性をお示しください。
次に、産業集積を支える人材確保について伺います。
県内の高卒就職者のうち、毎年1、000人以上が県外に流出する状況が続いています。また、本年度公表された若年者雇用動向調査によると、県内に本社がある企業を1社も知らないと答えた学生の割合が37.3%にも上っています。産業集積を進めていく上で大きな課題が人材確保であり、県内の産業の状況や企業の認知度を高めていくためには、高校生をターゲットとしたのでは既に遅く、小学生段階から、その保護者を含めてアプローチしていくことが極めて重要と考えます。
さらに、人口減少が進む状況においては、首都圏の若者を岩手に引き込んでくるため、岩手の魅力や岩手で暮らす幸福度を効果的に首都圏の学生に発信していくような戦略を強化する必要があると考えます。県内就職の促進に向けた取り組みの方向性とあわせ、知事の所感をお示し願います。
次に、林業振興について伺います。
知事は、さきの演述において、4年後の平成34年に、本県で2回目となる全国植樹祭を招致するとの宣言をされました。今回の英断は、本県の林業関係者を勇気づけるものであり、ふるさと振興を一層進める上での原動力になるものと、私自身も考えるところであります。
今年度の富山県の開催状況を見ますと、既に3年前から、全国植樹祭で植樹する苗木の一部を県内の小中学校等で育てる苗木のホームステイといった取り組みを進め、開催の前年のプレイベントを初め、さまざまな記念行事を実施しております。本県においても、今後、開催機運の醸成や基本理念の普及啓発を進めていくため、速やかに記念事業の企画などを行っていく必要があると考えます。
知事は、本県の森林、林業の特徴を生かした岩手らしい全国植樹祭の招致、開催に向けて、どのように取り組んでいかれるのか伺います。
昨年12月に公表された国の平成30年度与党税制大綱において、いわゆる森林環境税と森林環境譲与税の創設が明記されたところであります。その内容は、平成36年度から1人当たり1、000円の森林環境税が国税として徴収されるものであり、これに先立って、平成31年度から、都道府県及び市町村に森林環境譲与税が譲与されることとなっており、平成31年度の全国譲与額は、都道府県が40億円、市町村が160億円と見込まれています。
本県では、平成18年度にいわての森林づくり県民税を創設し、その税収を財源に、公益上重要で緊急に整備が必要な人工林の間伐等を展開しており、一方、国の森林環境税は、自然的条件が悪く採算ベースに乗らない森林を、市町村がみずから管理する場合に必要となる費用等に充てることが予定されております。
今後においては、国が新たに創設する森林環境税と、本県が先駆けて導入した県民税の双方を活用し、より効果的に本県の森林環境保全と林業振興を進めていくべきと考えますが、国の森林環境税創設を踏まえた県民税のあり方について伺います。
林業振興を進めていく上での大きな課題が担い手の育成であり、また、森林所有者にしっかりと利益が還元されるように、木材の需要と付加価値を高めていくことが重要であると考えます。
広大な森林を有する本県では、いわて林業アカデミー等による高い技術を持った林業技術者の養成や、林業事業体への高性能林業機械の導入支援などを通じ、森林所有者に利益を還元できる環境が整い始めているようですが、全国では、長引く木材価格の低迷等から、一番肝心な森林所有者の経営意欲がまだまだ減退していると聞いております。このような状況を踏まえ、県では、森林所有者に対する支援をどのように行おうとしているのか伺います。
次に、地域医療について伺います。
県では、これまで、奨学金制度の新設や拡充を行うとともに、全国に先駆け、奨学金養成医師が各自のキャリア形成と地域の医療機関への勤務が両立できるような配置調整や研修の仕組みを構築するなどの取り組みを展開しており、来年度は、岩手医科大学に在籍を希望する42名を含む75名の奨学金養成医師などが県内医療を支える予定となるなど、効果が出てきておりますが、県の取り組みのみでは、診療科の偏在解消や絶対数の確保など、まだまだ問題解決が困難な状況となっております。
こうした状況を打破すべく、知事は、平成24年4月に、国が主体的に医師を計画的に養成し、適正配置を行うことなどを盛り込んだいわゆる地域医療基本法の草案を策定し、その立法に向けた働きかけを行っており、その実現が待たれるところであります。
知事は、昨年、本県で開催された全国知事会議において、この法律の制定の必要性を訴えるプレゼンテーションを行ったところであり、さらに本年1月には、全国自治体病院協議会で講演を行ったとのことであります。
そこでお伺いいたしますが、法律の制定に向けた取り組みについて、最近の国における医師確保対策の考え方や動向を含めてお示し願います。
あわせて、地域医療基本法の制定に関する全国の知事や医療関係者の反応と連携状況をお示し願います。
また、地域医療基本法には個別具体の記載はありませんが、岩手の周産期医療体制は崩壊の危機にあると私は感じております。今定例会に提出されている平成30年度当初予算案には、周産期医療体制整備に対する幾つかの施策そして予算が盛り込まれておりますが、県北、沿岸はもとより、県南においても、胆江地域は地域の産婦人科医だけで支えることが困難となり、近隣の両磐、岩手中部地域も、何とか踏ん張っている状況であります。
こうした現状を解決するためにも、私は、国が主体的に医師を計画的に養成するとともに、適正配置を行うことを盛り込んだ地域医療基本法の制定が必要と考えますが、これからの周産期医療をどのようにして守っていくのか、地域で安心して産み育てることができる体制をどのように考えているのか、知事の考えを伺います。
最後に、災害への備えについて伺います。
平成28年の台風第10号による甚大な被害に対し、今まさに、県、関係市町は、その総力を挙げて復旧、復興に取り組んでいる途上であり、早期に安全・安心の確保が進むことを期待するものであります。
近年、全国各地でこのような豪雨が頻発、激甚化しておりますが、平成28年台風第10号からの教訓を踏まえた災害への備えが不可欠であると考えます。その一つが河川環境の整備であり、私は以前、立ち木の伐採、持ち帰りを希望する企業等を公募する国土交通省の取り組みを紹介し、県の所見を求めたところであります。県では、河道掘削や立ち木の伐採の5カ年計画を策定し計画的に進めていくとしていますが、限られた財源の中、効率的に計画を進めるため、民間の力も活用した方策を導入することが必要と考えますが、御所見を伺います。
また、道路においても、県内の多くの幹線道路が各地で寸断され、救命、救急活動や救援物資の輸送に支障を来したことから、県では、県民の安全・安心な暮らしを確保するため、災害に強い道路ネットワークの構築を進めていると認識しております。
三陸沿岸道路は、来月、田老-岩泉間が開通、また、東北横断自動車道釜石秋田線や宮古盛岡横断道路など、横軸も着実に整備が進んできております。
災害に強い道路ネットワークの構築には、これらの道路を補完し、北上山地を縦断する国道340号の整備が重要であると考えます。特に、これまで、我が会派の伊藤勢至議員も機会あるごとに指摘してまいりました車両のすれ違いすら困難な状況にある押角峠前後の区間の整備について、県の所見を伺います。
以上、質問してまいりましたが、岩手にはまだまだ多くの課題があります。その課題を幸福度という内面の尺度ではかり、満たしていくということは、本当に大変なことだと思います。折しも、現在行われております平昌オリンピックにおいて、本県の永井選手や小林兄弟、スノーボードの岩渕選手が活躍しております。特に、小林陵侑選手は、国民体育大会、2020東京オリンピックを目標に県が取り組んできたスーパーキッズ1期生であり、県の取り組みが形になってきたものと思います。
こうした成果の一つ一つの積み重ねが県民の幸福度に結びついていくものであり、知事には、新総合計画の策定、実行により、これから10年後に県民ひとしく幸福が実感できる岩手の未来をつくり上げるべく邁進していただきますよう御期待申し上げ、会派を代表しての質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 郷右近浩議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、平成30年度当初予算の重点化方針についてでありますが、平成30年度当初予算は、次期総合計画の策定も見据えながら、第3期復興実施計画に基づく東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧、復興を最優先に、ふるさと振興総合戦略を強力に推進する予算として編成しました。
復興については、三つの原則に基づき、被災者イコール復興者一人一人の復興を見守りながら、三陸のよりよい復興の実現を目指す三陸復興、創造に取り組んでまいります。また、復興道路やフェリー航路など、新たに交通ネットワークを活用した産業振興や交流促進、ILCの実現を初めとする科学振興施策などの三陸創造プロジェクトを進めてまいります。
総合戦略の計画期間の後半に入るふるさと振興につきましては、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの柱に基づく取り組みを市町村等と連携しながら強力に推進してまいります。
具体的には、自動車や半導体関連産業などの産業振興、出産、子育て支援、働き方改革や若者、女性の活躍支援などの取り組みを進めます。また、ラグビーワールドカップ2019などを見据え、スポーツを通じた交流人口の拡大も推進してまいります。これら各般の施策によって、県民の明日への一歩と共に進む取り組みを推進してまいりたいと思います。
次に、今後の県財政の運営についてでありますが、議員御指摘のとおり、プライマリーバランスの黒字を継続してきたことによって県債残高は着実に減少しておりますが、社会保障関係費が増加傾向にあり、また、公債費はピークを越えたものの、依然として高い水準にございます。当面は厳しい財政状況が続くと見込まれます。
こうした中、次期総合計画の策定も見据えて、中長期的な視点に立った財政運営を行っていくことが重要と考えます。引き続き、中期財政見通しのもと、歳入面では、地方創生推進交付金等の有効活用を初め、県税徴収の強化や未利用資産の売却などあらゆる手法によって財源確保に努めるとともに、国に対しては、地方一般財源総額の確保等について要望してまいります。また、歳出面では、事業効果や効率性等を踏まえ、事務事業を1件ごとに精査し、一層の選択と集中を図ることによって、限られた財源の重点的かつ効率的な活用を進め、財政運営の健全化と施策の着実な推進を図ってまいります。
次に、現行のいわて県民計画の総括についてでありますが、計画に掲げた7つの政策分野ごとの成果といたしまして、産業・雇用の分野では、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積等が進み、また、正社員の有効求人倍率が7年連続で上昇しております。
農林水産業の分野では、認定農業者への農地の集積や中核的漁業経営体の育成などが進みました。また、金色の風や銀河のしずくに代表されるブランドの確立が図られたところであります。
医療・子育て・福祉の分野では、医療を担う人づくりを進め、人口10万人当たりの病院勤務医師数が増加いたしました。保育所整備や保育人材の確保、子供の貧困対策などの取り組みが進んでおります。
安全・安心の分野では、人口10万人当たりの刑法犯認知件数が全国トップレベルの少なさとなっております。若者の交流促進や活動支援の取り組みを着実に進めております。
教育・文化の分野では、平成23年、平泉の文化遺産が、そして平成27年、橋野鉄鉱山がそれぞれ世界遺産に登録されました。また、グローバル人材の育成等によって海外とのネットワーク形成が広がっています。
環境の分野では、再生可能エネルギーの導入量が着実に増加していますほか、リサイクル等の促進に取り組んで、廃棄物の排出量が減少傾向にございます。
社会資本・公共交通・情報基盤の分野では、復興道路等の整備が順調に進んでいますほか、いわて花巻空港の国際線受け入れ機能の強化や国際線チャーター便の運航拡大に取り組んだ結果、本県初の国際定期便の就航に向けて大きく前進しています。
東日本大震災津波は、多くの犠牲と甚大な被害をもたらしましたが、地元の底力とさまざまなつながりの力を結集し、県民一丸となって復興に取り組む中、現行のいわて県民計画は多くの成果を上げ、次期総合計画につながる土台を築いたものと考えます。
次に、次期総合計画における長期ビジョンの意義についてでありますが、技術革新やグローバル化の急速な進展など本県を取り巻く環境が大きく変化し、先を見通しにくい時代だからこそ、新しい時代の潮流を踏まえながら、岩手の長期的な将来像を県民の皆さんと共有し、その実現に向けて一緒に努力していくことが重要と考えます。
また、岩手の未来を担う子供たちや地域を支える人材を育てる人づくり、暮らしの基盤となる持続的で安定的な経済基盤の構築などは長期的な視点で取り組む必要があります。
このような考えのもと、人口減少や少子高齢化などに伴うリスクや、本県が持つ豊かな地域資源の活用によるさまざまなチャンスなどを分析し、県民や市町村、企業、団体等と幅広い議論を行いながら、幸福をキーワードに、今後10年の目指す将来像や取り組みの方向性などを明らかにしていきたいと考えております。
次に、次期総合計画におけるプロジェクトの提示についてでありますが、長期ビジョンでは、政策分野ごとの取り組みに加えて、戦略的な考え方に立って、長期的、政策横断的に取り組むプロジェクトを位置づけることとしております。
プロジェクトでは、IoTやAIなどの先端技術をさまざまな産業や社会生活に取り入れることや、ILCの実現や復興の先を見据えた持続可能な地域のあり方などの社会経済環境の変化を視野に入れながら、創造性や独自性が高い取り組みや新たな仕組みづくりの方向性を示し、岩手の将来像を描いていきたいと考えています。
具体的な内容については、専門的な知見を有する有識者のほか、県民、各種団体、そして市町村など幅広く御意見を伺いながら、総合計画審議会における議論を踏まえて、今後、検討を進めてまいります。
次に、次期総合計画におけるアクションプランの構成等についてでありますが、沿岸市町村において総合計画の中に復興の取り組みを位置づける動きがございます。県においても、次期総合計画において、市町村や国と一体となった切れ目のない復興の取り組みと、復興の先を見据えた地域振興の取り組みをあわせて定めていきたいと考えております。
その上で、アクションプランにつきましては、政策編とは別に、現行の復興実施計画に倣って具体的な施策や事業を盛り込んだ復興に関するプランを策定する方向で検討しております。
計画の策定過程における節目において、県民を対象とした地域説明会やパブリックコメントなどを行い、また、専用ホームページなどを通じた情報発信も積極的に行って、県民の理解が得られるように取り組んでまいりたいと思います。
次に、県の国際戦略における海外展開の基本方向についてでありますが、成長が見込まれる海外市場に向けて岩手ブランドを発信し、より多くの外貨を獲得していくため、いわて国際戦略ビジョンに基づいて、市場の特性に応じた戦略的な売り込みや、県産品の販路開拓と観光誘客の連携など分野横断的な取り組みを進めることとしています。
地域別の取り組みを申し上げますと、例えば中国では、これまでの大連経済事務所に加えて新たに雲南事務所を開設し、地方政府間交流を起点にして、経済、観光、農林業、青少年の相互交流など幅広い分野で交流を深めてまいります。
また、海外からの観光誘客の最重点市場であります台湾では、本県初となる国際定期便の就航実現に向けて、フルシーズンでの誘客促進や、多言語対応を初めとする受け入れ態勢の強化に引き続き取り組んでまいります。
ヨーロッパでは、これまでパリで日本酒や食材のPRを行ってきた実績をもとに、ことし新たにジャポニスム2018に参加するなど本県の認知度を向上させ、県産品の販路拡大や人的、文化的交流の拡大を図ってまいります。
今後、世界に岩手を売り込む絶好の機会となるラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック、パラリンピックを迎えますことから、これまでの取り組みで得られたつながりを生かしながら、世界に開かれた岩手の実現を目指して、市町村や民間団体等と連携した積極的なプロモーションを展開してまいります。
次に、東アジアへの輸出拡大についてでありますが、今後も引き続き高い経済成長が見込まれる東アジアにつきましては、いわて国際戦略ビジョンにおいても重要な市場と位置づけ、県産品の輸出拡大に取り組んでいるところです。
県では、これまで、東アジアとの多様な流通拠点となっている沖縄において、国際的な商談会である沖縄大交易会の場を活用し県産品をPRするとともに、輸出展開の可能性を探ってまいりました。
こうした取り組みの結果、沖縄の地域商社等で構成する沖縄国際ハブクラスターと県内企業とのマッチングが進んできております。今後におきましても、沖縄国際ハブクラスターとの連携を強化して一層のマッチング拡大を図りながら、東アジアへの県産品のさらなる輸出拡大につながるよう取り組んでまいります。
次に、ILC実現に向けた取り組み状況等についてでありますが、県におきましては、これまで、東日本大震災津波の発災直後から、復興構想会議等あらゆる機会を通じてILCの必要性を訴えてまいりました。国や世界の研究者の動向等、最新の情報をいち早く収集しながら、国への要望や研究者等の受け入れ環境の具体の検討、加速器関連産業の振興などを加速させてきたところであります。
このような中、平成30年度は、国の有識者会議の議論が終盤を迎え、欧州の次期加速器計画の策定スケジュールなどから極めて重要な年であると認識しております。このようなことから、県としては、全国的な理解と支援を広げるため首都圏でのPR活動を強化し、教育、医療などの分野における具体の対応策を取りまとめますほか、加速器モジュール実機展示の常設や試作開発等の促進により、県内企業の加速器関連への参入を進めてまいります。
また、国への要望が一層重要となると認識しておりまして、去る2月7日には、鈴木俊一大臣、谷村邦久岩手県国際リニアコライダー推進協議会会長、そして鈴木厚人岩手県立大学学長とともに合同で国に対し地域の取り組み状況を説明し、ILCの早期実現について要望を行ったところであります。
このようにILCをめぐるさまざまな動きを把握しながら、平成30年度においては、関係者が一丸となってILC実現に向けた活動を展開してまいります。
次に、北上川流域における今後の産業集積の方向性についてでありますが、県では、これまで、自動車、半導体関連産業を初め本県経済を牽引するものづくり産業の集積に努めてきておりまして、その結果、新規立地のほか増設等も活発化し、本県経済や雇用に着実な進展が見られます。
こうしたことから、特に県南地域におきまして、今後、大規模立地に対応する大きな区画の用地が必要となってくる見込みでありまして、その整備に当たっては、企業活動が持続的に展開され地域振興につながるよう、周辺の産業集積やインフラの状況等を踏まえ、計画的に進める必要があります。
このため、県では、市町村による整備計画の立案段階から連携を密にして対応しておりまして、今後におきましても、市町村等と連携して立地環境の整備を進め、誘致企業と地場企業との連携なども支援し、さらなるものづくり産業の集積に取り組んでまいります。
次に、産業集積に向けた部局横断的な対応についてでありますが、産業集積を進める上で周辺インフラの整備は不可欠であり、これまでも円滑な立地促進のため部局横断的に対応してきたところであります。
例えば道路整備については、国道4号の渋滞解消に向けた整備が、北上、金ケ崎、そして水沢の各地区において進展しており、また、工業用水の確保についても、関係部局が需給見通しを共有して、施設の能力維持等のための経費を一般会計からも負担するなどして対応してまいりました。
今後におきましても、産業集積の一層の促進に向けて、産業経済の状況や個々の企業の動向を的確に把握しながら、関係部局の緊密な連携のもと、必要な周辺インフラの整備に取り組んでまいります。
次に、県内就職の促進についてでありますが、若者のいわゆる地元志向は着実に高まってきていると受けとめております。一方、県内企業をよく知らないまま県外に就職してしまう若者が多いのではないかと考えております。
そうしたことから、これまで、県内の企業を知ってもらうことや、岩手で働くこと、暮らすことの魅力やよさをわかってもらうよう努めてきたところでありますが、新年度におきましては、これまでの取り組みに加えて新たに人材育成・定着支援員を県内各地に配置し、広域振興局等の体制強化による市町村との連携を一層緊密にしながら、小中学校における地域企業に関心を持ち知ってもらう取り組みも強化してまいります。
さらに、首都圏等の大学を対象に岩手U・Iターンクラブを新たに設置しまして、大学側の協力のもとに、学生のU・Iターン就職の拡大を図ることとしております。これらの取り組みによりまして県内就職を一層促進してまいります。
次に、全国植樹祭についてでありますが、本県の森林は針葉樹と広葉樹のバランスがとれ、全国的にすぐれた木材や特用林産物を産出します。また、水資源の涵養や県土の保全、地球温暖化防止など、さまざまな公益的機能を発揮する県民共通の社会的な財産であります。
この豊かな森林環境を次の世代に引き継ぐため、県民理解の醸成や、林業の持続的で健全な発展を図るとともに、震災から復興した姿を全国に発信するため、2022年の全国植樹祭招致を進めてまいります。
また、全国植樹祭の開催理念やテーマ、規模などの基本構想は、今後、関係団体等の代表者などで組織する岩手県準備委員会において十分検討し、決定していくものと認識しておりますが、構想の策定に当たりましては、県土の8割を占め、多様な樹種で構成されている岩手の森林の特色や、また、この岩手の地域に根差した森林文化などを生かした岩手らしい内容となるよう検討してまいります。
次に、森林環境税の創設に伴う県民税のあり方についてでありますが、いわての森林づくり県民税につきましては、豊かな森林環境を次の世代に良好な状態で引き継いでいくため、県民の理解と参画のもと創設したものであり、現在、2020年度を終期とする第3期の取り組みを推進しています。
今後の県民税のあり方につきましては、国の森林環境税の使途等を精査し、いわての森林づくり県民税との関係を整理するとともに、第3期における取り組みの成果や課題を踏まえて、県民の皆さんを初め事業評価委員会や県議会の御意見なども伺いながら、具体的な検討を進めてまいります。
なお、森林環境税については、豊かな森林環境の保全など、市町村が主体となった森林整備等の財源として有効に活用されるよう、市町村と連携して取り組んでまいります。
次に、森林所有者に対する支援についてでありますが、本県の森林資源は、戦後に造成した人工林が成熟して利用期を迎えているものの、木材価格は長期にわたって低迷してきたところであります。
一方で、合板工場の本格稼働や木質バイオマス発電施設の相次ぐ整備など、国産材需要の本格的な高まりを受けて、林業の生産現場では施業の集約化や高性能林業機械の導入等で生産コストの低減が進み、林業の収益性に改善が図られています。
県では、これまで、森林所有者に対して、林業普及指導員や森林組合を通じて、木材市況など情勢の変化や助成制度に関する情報提供を初め、森林経営に関する知識の普及や技術の指導に取り組んでまいりました。
今般、国では、市町村が中心となって、小規模な森林を意欲と能力のある林業経営体に委ねる新たな仕組みを検討しているわけでありますが、県では、その動向を注視していくとともに、市町村等と連携し、高い生産性や収益性を実現する経営体の育成に努めて、森林所有者の所得向上の取り組みを進めてまいります。
次に、(仮称)地域医療基本法についてでありますが、その法制化を実現するため、これまで、北海道東北地方知事会や全国自治体病院協議会、地域医療を守る病院協議会等と連携した国への提言、要望など、さまざまな機会を通じて情報発信等に取り組んでまいりました。また、平成29年7月の全国知事会議では、本県から地域医療基本法の必要性を説明し、複数の県から賛同の意見をいただいたところであります。
現在、厚生労働省では、新たな医師偏在対策として、都道府県による医師確保計画の策定や医師少数区域で勤務した医師の認定制度の創設などを進める方針を明らかにしています。これらは、医療法等の改正によって医師の偏在解消を目指すもので、本県が提言してきた医師不足地域での勤務を医療機関の管理者要件とする制度の実現が期待されるなど、一定程度評価できる内容も含まれますが、依然として都道府県の取り組みが中心となっており、国を挙げて取り組む視点が不足しているものと考えております。
県としては、抜本的に医師の不足と偏在を解消し、地域医療のあるべき姿を実現するため、関係団体とのさらなる連携強化を図り、引き続き(仮称)地域医療基本法の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
次に、周産期医療についてでありますが、安心して妊娠、出産、子育てができる環境の整備は、岩手県ふるさと振興総合戦略の基本目標の一つであります社会全体で子育てを支援し、出生率の向上を目指す上でも重要な課題であります。
県では、これまで、県内四つの周産期医療圏を設定して、医療機関の機能分担と連携のもと、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の整備を進めてきたところであり、今年度は、分娩取扱施設を確保するため、その維持、開設に要する経費への支援制度の創設や、助産師等を活用して地域で妊産婦を支える体制づくりに取り組んでいるところであります。
また、周産期医療を担う医師を確保するため、産科等を専攻した奨学金養成医師については、地域周産期母子医療センターでの勤務に専念することで、義務履行とキャリア形成の両立を可能とする特例措置を来年度から設けることといたしましたほか、新たに新生児のヘリコプター搬送体制の整備や分娩取扱診療所の再開、開設への支援の拡充について当初予算案に盛り込んだところでありまして、県内どの地域においても安心して出産できる体制の構築に努めてまいります。
次に、河道掘削の進め方についてでありますが、県では、河道掘削や立ち木伐採を計画的かつ効率的に進めていくため、民間活力の導入を計画しています。
具体的には、県管理河川におきまして、堆積土砂の撤去の推進及び資源の有効活用を図るため、河川管理者が選定した区間で砂利採取を行う場合には、砂利採取料を徴収しない公募型の土砂撤去の取り組みについて、平成30年度から新たに開始する予定であります。また、立ち木伐採についても、民間事業者のニーズを踏まえ、同様の検討を進めてまいります。
次に、災害に強い道路ネットワークの整備についてでありますが、県では、国が進めている復興道路の整備に合わせて、これを補完する幹線道路を復興支援道路として位置づけて、重点的に道路改良や防災対策等を進めています。
議員御指摘の国道340号押角峠については、廃線となったJR岩泉線のトンネルを活用し、2020年度の開通を目指して、延長3.1キロメートルのトンネル整備を進めていますが、その前後は未改良区間として残っております。
道路は、つながってこそ初めて防災や救急医療、物流等の面でその効果を発揮しますことから、トンネルの前後区間については整備が必要な区間と強く認識しており、事業化を見据えながら、ルートや構造、優先区間の検討など、必要な調査を進めてまいります。
〇議長(佐々木順一君) 次に、岩崎友一君。
〔33番岩崎友一君登壇〕(拍手)

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