平成29年9月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇29番(小野共君) 改革岩手の小野共です。
本日の一般質問の機会を与えていただきました先輩議員及び同僚議員に感謝を申し上げます。
東日本大震災から6年と6カ月がたちました。改めて、亡くなられた方々にお悔やみを申し上げ、被災された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。
通告に従い質問をいたします。
初めに、県の国際戦略について伺います。
今から8年後の平成37年、国内では介護人材が約38万人不足すると予測されております。国内の労働人口の減少の中で、今後、介護関連職員をどのように確保していくのかは、次の10年の岩手だけでなく国内の最大の課題の一つであります。解決策の一つは外国人であり、ことしから外国人の在留資格に介護が加わり、外国人技能実習制度の対象職種にも介護が加わりました。政府は、介護だけでなく、農業等、今後担い手が不足する分野を外国人の在留資格に加える方針を固めております。人手が不足する業界への外国人の流入は、先進国と言われる国々での現実となっております。
現在、岩手における在留外国人は平成27年現在5、902人。外国人観光客の県内宿泊者数は震災以降増加の一途をたどっており、県内自治体は、2年後の釜石市でのラグビーワールドカップ、3年後の東京オリンピックに向け、防災復興博覧会や外国チームのホストタウン及びキャンプ地の検討を含め、さまざまな準備を始めております。
さらに、政府が国際リニアコライダーの国内への誘致を判断するのはことしか来年と見られ、奥州市、一関市への建設が決定すれば、少なくとも今後30年間は、研究者、家族含め1万人の外国人が岩手に滞在すると予想されております。
さらに政府は、平成32年度までにGDPを現在の546兆円から600兆円まで押し上げる目標を掲げており、国内の人口と労働者が減少している現在、GDPをふやすには、何かに付加価値をつけるか生産人口をふやすしかなく、外国人を国内の生産活動における労働者に加えていくことが、GDP増加のための一つの確かな方法であることは間違いありません。
同じく政府は平成31年までに農林水産物の輸出を1兆円にするという目標を立てており、人口減少社会の中で国内の農林水産業の従事者の所得を守るために、長期的に需要を国内だけに依存するのではなく、爆発的に人口が増加し続ける世界に目を向けるのは当然です。
好む好まないにかかわらず、日本は国際化と民族多様化の流れの真っただ中におり、一国の大国の経済の不具合が瞬時に世界に波及する現代において、岩手も生き残りをかけ国際化の流れに対応、対処していく必要があります。そして、国際化への対応は復興後の岩手の産業振興の大きな鍵になります。岩手におけるその具体的対処の一つが今回の国際室の設置であり、そして、いわて国際戦略ビジョンの策定であったのだと思っております。その意味で、今後の岩手の発展のために国際室には大いに期待しております。
知事に伺います。
県は、この4月の組織再編で政策地域部の中に国際室をつくりました。知事が国際室に期待することを聞かせてください。あわせて、いわて国際戦略ビジョンの策定理由を聞かせてください。岩手に当然必要なビジョンであります。そして、知事はこのビジョン策定に当たり特にどのような指示を出されたのかも聞かせてください。
2点目。世界の中で多国間の自由貿易を主導してきたアメリカ、ヨーロッパにおいて自由貿易を否定する主張が出始めております。資本主義国における貿易施策は自由貿易であるべきなのか、それとも保護貿易であるべきなのか、そのバランスが世界の学者と政治家の間で大きな議論の一つとなっているのは周知のとおりであります。
食料供給県岩手において、県の利益として岩手の食料を国内だけでなく世界に供給先を求めることは合理的であり、そのために、それでは貿易の制限をどのように考えるのかは、本県が具体的に輸出を考えている以上、県が考えておかなくてはいけない基本的なものの一つであります。この2年間、国内外でTPPの是非の議論があり、最近ではEUとのEPAの議論も盛んに行われております。
岩手の方針として食料の輸出は自由にしたいが輸入は制限したいでは、国際的な理解は得られません。韓国の日本産水産物の禁輸措置はけしからぬとする一方で、アメリカ産冷凍牛肉に対しセーフガードで輸入を制限するのでは国際的な理解は得られません。少なくとも日本の主張の合理性を説明する必要があります。
それでは、現行の貿易体制の中で基本的に食料の輸入をある程度制限する必要があるとすれば、それはどのような場合なのか。そして、輸入を制限するのであれば、それはどのような方法であれば世界的に同意を得られやすいと県は考えているのか。その主張が正しいか、間違っているかではなく、県が今後輸出を考える上で、このような貿易についての基本的な哲学を持っておく必要があるのです。日本は今までこの哲学を外国との交渉の場で説明してこなかったから、あるいはうまく説明できなかったから、貿易交渉の場で主導権を握れなかったのです。このような基本的な方針を県で考えておく部署が国際室であります。貿易の制限についての県の基本的な認識を聞かせてください。
3点目。国は平成31年度に農水産品の輸出額を1兆円にする目標を立てております。それでは、県では、国際戦略ビジョン終了時の平成33年度に県の農水産品の輸出額をどのぐらいにしようとしているのか聞かせてください。
4点目。平成25年9月以後、韓国は、福島原発事故による水産物の放射能汚染を理由に、岩手県を含む8県からの全ての水産物の輸入を禁止しております。韓国の禁輸措置に対し日本はWTOに提訴し、平成27年9月に貿易紛争を処理する小委員会がWTOに設置されました。あれから2年たちましたが、韓国の禁輸措置が国際的に見て不当であるかどうかの結論がまだWTOで出ておりません。県内農林水産品の輸出を増加させるのであれば、今後、国際室は解決するための努力を当然しなければいけません。
WTOの審議は現在どのようになっているのか。審議の間、農林水産部は漁業関係者と連携しどのような動きをし、そして、今後、禁輸解除に向けどのように動いていく方針なのか聞かせてください。
5点目。本県の海外での経済社会活動の核になるであろう本県の海外事務所の今後の展開を伺います。
現在、本県の海外事務所は韓国ソウル、中国大連とアジアに二つだけです。今定例会において、雲南省交流連携推進事業費の中に岩手県雲南事務所の開設準備経費が計上されておりますが、雲南事務所の開設目的、開設の時期、そして体制を聞かせてください。
6点目。県内港の国際化への対応について伺います。
現在、宮古港、釜石港、大船渡港には京浜港を経由し外国へ向かう定期航路があり、結果として岩手は中国、アジア、北米、欧州、オーストラリアへの貿易ルートを持っていることになります。さらに、釜石港においては、京浜港を経由せず海外の港を直接結ぶ外貿定期コンテナ航路が開設されることになっており、この9月には大型コンテナ船の受け入れのためのガントリークレーンが整備され、県内港の国際化と大量のコンテナ処理のための整備は着々と進んでおります。
このように県内の港には物流航路はできている一方で、実際には県内の荷物のほとんどは県内の港から出荷されず、荷物の約半分は鉄道や東北自動車道を渡り京浜港から出荷され、2割が仙台港、残りの2割が秋田港、そして八戸港から出荷されているのが現状です。
まず、県内の荷物が県内の港から出荷されない理由をどう分析しているのか聞かせてください。
さきの質問でも述べたとおり、岩手の食べ物を国内だけでなく外国に販売先を求めるのは合理的な判断です。いわて国際戦略ビジョンにも、岩手の牛肉、水産物、米、リンゴなどを外国へ輸出するとの方向性が記載されております。そして、現在、中国やシンガポール、アジア、アメリカを中心に日本産の食肉の需要は高まっており、特に岩手のブランド肉は有名であり、県北や沿岸は鶏肉の一大生産地でもあります。
しかし、現状では県内の港から食肉を含む畜産品を輸出することはできません。港が畜産品を取り扱うためには国から動物検疫の指定を受けなくてはならず、県内でその指定を受けている港は今のところありません。つまり県内の港から我々の誇るべきブランド肉を輸出できません。いわて国際戦略ビジョンで県は県産ブランド肉を含む畜産物を外国へ輸出する方向性を打ち出しております。輸出はするが、輸出するための港は県内ではなく県外の港を使うというのであれば、県の戦略としては不十分と言わざるを得ません。
県内さまざまな施設の国際化は今後避けては通れません。長期的な視点で県産品の輸出を考えた場合、県内のどこかの港に動物検疫の指定を受けておき、直接輸出の場合の荷役に備えておくことは、県経済の発展を考える上では欠かせません。
〔議長退席、副議長着席〕
県内の港における動物検疫の指定について知事の考えを伺います。
あわせて、釜石港での完成自動車の積み出しについて伺います。
6年前の震災で釜石港が大きく破壊され、当時の関東自動車工業の完成自動車の陸揚げと積み出しは依然ストップしたままです。それまで釜石港は4日置きに400台を揚げ積みする完成自動車物流港でありました。
震災前に釜石港で積み出していた完成自動車の全ては、現在、仙台港から出しておりますが、復興道路完成後の県内高速交通網を見たとき、コストと時間だけから言えば、仙台港より釜石港に積み出しの優位性があります。震災直後から県内全ての港湾の復旧工事が始まり、釜石港においても順調な復旧事業の進捗と並行し、2本のコンテナ定期航路が開設されております。長期的に県内港湾の振興を考えた場合、トヨタ自動車に釜石港から再び完成自動車を積み出してもらうことを考えるのは当然であります。また、自動車関連産業の誘致を目指す本県にとって、トヨタ自動車の完成自動車の物流ルートを県内に持っているかどうかも、少なからず今後の岩手の経済発展のくさびの一つとなっていくはずです。
釜石港の公共埠頭自体は、埠頭へのアクセス道である高速交通網を除きほぼ完成しました。今後の積み出しの可能性は、震災後、トヨタ自動車へのポートセールスをどのようにやってきて、今後、トヨタ自動車にどのように働きかけるかにかかっております。
釜石港の完成自動車物流は、平成元年から東日本大震災津波発生まで約22年間にわたり行われてきました。震災で釜石港からの積み出しは中断しておりますが、トヨタ自動車の物流を一手に担うトヨタ輸送株式会社のホームページには、震災から6年が経過した現在でも、いまだにトヨタ輸送株式会社の海上輸送拠点として釜石港と、釜石港の名前が大きく掲載されております。これほどの大企業がホームページの更新を忘れているはずもなく、これは何かしらのメッセージを岩手県に伝えていると受け取れます。
質問いたします。トヨタ自動車東日本の釜石港からの完成自動車の積み出しを県の産業振興の視点からどのように考えているのか聞かせてください。震災後今まで、トヨタ自動車への働きかけはどのようなものだったのか、あわせて聞かせてください。
また、湾口防波堤が完成する平成29年度─今年度が釜石港の完成自動車物流再開にとって一つの大きなターニングポイントであります。今後、トヨタ自動車に対しどのようなアクションをとっていくのか、あわせて聞かせてください。
次に、県内ものづくり産業の振興について県の対応を伺います。
9月6日、東芝メモリが北上市への新工場の立地を発表しました。金ケ崎のデンソー岩手も生産拡大に伴う新工場の建設が始まり、トヨタ自動車東日本も新たに企業内保育所を開所するなど、県内のものづくり産業は新たな展開を見せ始めております。特に東芝メモリの新工場建設については、平成20年に東芝が北上市と四日市市への新工場建設を発表し、その後、世界同時不況によって建設が延期されている期間においても、知事は機会を捉えて北上市長と一緒に東芝の幹部に会い、新工場の建設を要請してきたと伺っております。企業誘致には、やはりこのような継続した働きかけと熱意が必要であります。これが今回、結実したものと認識しております。
今後、このような本県の自動車産業と半導体企業の生産拡大から連動させ、物流、港湾、そして他の産業へと、経済活動のいい流れを県内経済に大きく波及させていく施策を県を挙げてつくっていく必要があります。
一方、先ほど来話しておりますように、全国的な人手不足により、従業員の確保が課題であるとの声も聞かれるところであります。デンソー岩手で400人、東芝メモリは雇用計画を明らかにしていないと伺っております。しかし、恐らく相当の人数が必要になることは想像にかたくありません。
知事に伺います。デンソー岩手や東芝メモリ新工場の稼動に伴い必要とされる従業員の確保について、県はどのような支援を行っていくのか聞かせてください。
あわせて伺います。人手不足への企業の効果的な対応の一つが企業内保育所であるのは言うまでもありません。トヨタ自動車東日本岩手工場においても企業内保育所が開所いたしました。県内の就労環境の整備に対する知事の認識を伺います。
次に、東日本大震災津波被災者の国民健康保険等の一部負担金、いわゆる窓口負担免除について伺います。
現在、震災の被災者の方々は、国民健康保険制度、後期高齢者医療制度、介護保険または障がい福祉サービスを利用する場合、払うべき一部負担金、いわゆる窓口負担が免除されております。住民が医療機関等を利用する場合、災害等の理由による生活困窮等のため被災者の一部負担金の免除をする必要が発生した場合、その減免額が全体の3%を超える場合、国はその減免額の8割を市町村に交付するという国の制度があります。現在、残りの2割は県と市町村が折半しております。岩手県においてはこの財政支援はことし12月までとしており、来年以降の支援の方針をいまだ発表しておりません。被災者に対する一部負担の免除により、市町村の国保会計にも負担がかかるのはそのとおりです。しかし、それにもかかわらず市町村が市町村独自の判断として免除の要望をしてくるのであれば、県はその要望どおりに対応すべきです。
知事に伺います。来年1月以降の一部負担金免除に対する県の財政支援についてどのように考えているのか聞かせてください。
次に、国民健康保険の財政運営の県への移管について伺います。
来年4月から現在の市町村運営の国民健康保険の財政運営が県に移管されます。もともと加入者の人口構成、職業などの理由により、全国的にどの市町村にしても国保会計が比較的不安定であったことはそのとおりであります。事実、全国的に年間3、000億円ほどの赤字が出ており、一般会計や財政調整基金を崩しやりくりしていたのが現行の国保会計でありました。これを人口規模の大きい都道府県に財政運営を移管することにより、保険制度をより安定させるというのが政府の移管の狙いであります。
先日、県が公表いたしました県内市町村の保険税額の試算によると、来年4月から県民1人当たりの年間税額は11万5、189円となり、これは平成28年度と比べ約1、900円の増額となっておりました。この試算によると、県内33市町村のうち13市町村が増額となります。正確な市町村ごとの納付金、標準保険料率は平成30年1月に県が各市町村に通知することとなっておりますが、特にさきの東日本大震災津波で被害の大きかった沿岸南部の地域では税額の大幅な値上げが見込まれております。
県は市町村が県に納めるべき納付額を市町村に伝え、市町村はこの納付額を必ず支払うことになります。市町村が被保険者の保険税でこの納付額を賄えない場合は、他の財源から持ち出しても県に支払わなくてはいけない仕組みとなっております。保険税は医療費や所得が高い市町村で高くなる傾向にあり、被災地の事情を言えば、震災の影響により一時的に被災地は医療費がふえており、そして公共用地のための土地の売却により一時的に個人の収入がふえております。つまり被災地では、特殊、一時的な要因により保険税が高く試算される可能性が高いということです。これら実態が正しく反映されない状況で県に納めるべき納入額が算定されます。これら被災地特有の事情は、納入額を算定する上で配慮されるべきです。
しかも、来年4月から国保会計が市町村から県に移管されても、保険税の徴収や書類の交付は引き続き市町村の業務のままです。例えば、県へ移管することにより医療費を抑えたいという目的が潜在的にあるとするならば、会計を現行のとおり市町村のまま小さく区切り、市町村ごとに競争してもらったほうが県へ移管するよりも医療費の抑制には効果的であります。
質問いたします。今回の国保の財政運営の県移管について、特に現場の市町村にとってはどのようなメリットがあるのか聞かせてください。特に今回の移管については、医療環境に変化があったわけではないのに全ての自治体において保険税額が変わることになります。現場の自治体では住民への説明に四苦八苦しているのが現状です。わかりやすい答弁を聞かせてください。
あわせて伺います。移管により納付金の額や保険税額が劇的に上がる市町村に対し、県はやはり何らかの支援をすべきだろうと思います。県の対応を明らかにしてください。
次に、国保の保険税の今後の方向性を伺います。
来年4月から、県への移管により、県に被保険者数約29万人の巨大な会計ができることになります。現行制度では、一つの市町村において同じ所得、同じ世帯構成の2家族があるとすれば、その二つの家族の保険税は同じでありました。一つの市で独身で年間400万円の収入の方は、同じ市町村であればどこに住んでいても同じ保険税です。一つの市町村内で一つの基準です。当然です。
しかし、来年の4月からは、医療費水準、所得水準に基づき、県が示した基準により各市町村が保険税額を決定することとなります。つまり、先ほどの例で言えば、独身で年間400万円の所得の方の保険税が県内市町村どこに住むかによって違ってくるという状況が発生します。同じ所得、同じ世帯構成でも、住む自治体によって保険税が違うという状況になります。単純に、同じ会計区域であれば同じ保険税であるべきなのではないでしょうか。
先日のマスコミ報道によれば、47都道府県中、一律の保険料を検討しているのは9府県だそうです。一律になれば住民の負担も公平です。来年4月の移管時期からの保険税の統一化は確かに少し乱暴です。混乱を招く可能性が大きいでしょう。しかし長期的には、同じ保険区域では一律の保険税を導入するのが本来のあり方なのだと思います。単純に比較はできませんが、例えば後期高齢者医療制度は県内一律の保険料でやっております。保険税について自治体間の差が大きいほど一律の保険税化が難しいのはそのとおりであります。しかし、長期的にはやはり保険税は一律を目指すべきであり、それが望ましいのだと思いますが、見解を聞かせてください。
次に、ラグビーワールドカップ2019釜石開催の準備状況について伺います。
釜石市と岩手県がそもそも開催地に立候補するに当たって、最大の課題の一つがスタジアムの建設費の調達でありました。調達の方法は、復興交付金、民間の財団からの寄附、地方債発行などさまざまな方法を工夫、検討しているのは存じております。釜石市では平成27年に釜石市ラグビーこども未来基金を設置し建設費の寄附金を集めており、現在、残高が2億2、000万円ほどになっておりますが、それでは、県では寄附金についてどのように考えているのか聞かせてください。
次に、東京2020オリンピックへの本県の対応を伺います。
東京でのオリンピック開催は、平成23年、東日本大震災津波の年に東京都が日本でのオリンピックの開催意義を復興五輪とし、東京への誘致の立候補を表明したのが始まりでありました。2020年のオリンピックが復興五輪であるとした日本の誘致活動は、平成25年のIOCの総会での開催地決定まで行われました。あれから4年たちますが、被災地の感覚として、2020年の東京開催のオリンピックが被災地と何らか関係があると思っている被災地の住民は少ないのではないでしょうか。
ことし8月の段階で、全国にオリンピック参加国の選手と国際交流事業を展開するいわゆるホストタウンに登録されているのは全国で179ありますが、現在、岩手でのホストタウンの登録は盛岡市のみです。参加国の事前キャンプ地については、現在、県内で2市となっております。東京オリンピックに対する県内の関心とかかわりは高いとは言えません。
2020年にオリンピックが日本で開催される以上、本県は被災地として積極的にこの国際大会にかかわり、被災地の現状を情報発信すべきです。そして、この国際大会の日本開催の最も重要な意義である災害の怖さと人間のたくましさを世界の人々に知ってもらうために、何らかの形で必ずかかわらなくてはいけません。2020年の東京オリンピックがそういう大会にならなくては、この国際大会は最終的に後世の世代から失敗だったと判断されることになります。
知事に伺います。知事は、この東京オリンピックに本県は被災県としてどのようにかかわっていくべきと考えているのか聞かせてください。
あわせて伺います。ホストタウンとキャンプ地は、本県にとって国際交流と被災地からの情報発信のための重要な機会です。県は、県内市町村のホストタウンとキャンプ地の誘致に向け、今後どのような取り組みを進めていくのか聞かせてください。
次に、主要地方道釜石遠野線笛吹峠の通行どめの解除の見通しについて伺います。
昨年8月の台風第10号襲来から1年余りたちますが、笛吹峠はいまだ通行どめの状態が続いております。被災箇所は28カ所と多い上に、沿岸地域の土木工事業者は既存の工事で手いっぱいで、結果として台風第10号被災箇所の工事着工に手間取っておりましたが、峠部の工事区間は全て業者が決まり、工事が始まっております。しかし、通行どめ以後、釜石市の栗橋地区及び鵜住居地区等の住民が内陸部に向かうためには、釜石駅前を経由し、市を大きく迂回しなくてはいけません。沿岸広域振興局の皆様には、定期的に地元で説明会を開催して丁寧に進捗を説明していただき、感謝いたしております。昨年12月の一般質問では今年度末の完成予定との答弁をいただきましたが、地元の住民の間では、少なくとも雪が降る前の開通をとの声が大きくなっております。
質問いたします。工事の進捗と問題点、そして開通の見込みを聞かせてください。
壇上からの質問は終わります。不明な点があれば自席から再質問を行います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小野共議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、国際室に期待することについてでありますが、県では、これまで、県産品の販路開拓や外国人観光客の誘客拡大を図るため、上海万博やミラノ万博への出展など、岩手の持つさまざまな魅力を世界に発信してきたところでありますが、これらの取り組みにより、岩手が世界に向けて大きく飛躍する機会を得てきたところであります。また、今後も、ラグビーワールドカップ2019釜石開催や復興五輪を掲げる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、ILCの実現に向けた取り組みなど、岩手と世界のつながりをさらに深める大きなチャンスが広がっているところであります。
こうした状況を踏まえ、成長が見込まれる海外市場のダイナミズムを東日本大震災津波からの復興やふるさと振興の力としていくため、本県が海外展開を図るための基本方針であるいわて国際戦略ビジョンに掲げたさまざまな施策を部局横断により一体的に推進し、最大限の効果が得られるよう、国際室が総合的な企画調整機能を発揮していくことが必要になると考えているところであります。
次に、いわて国際戦略ビジョンの策定についてでありますが、いわて国際戦略ビジョンは、人、物、情報、技術などが国境を越えて活発に行き交うグローバル化が進展する中で、成長が見込まれる海外市場において岩手のさまざまな魅力を岩手ブランドとして発信し、産品やサービスの付加価値を高めながら海外展開を促進することにより、本県における産業振興や雇用の確保を図っていくため、国際関連施策を展開する上での基本方針として策定したものであります。
いわて国際戦略ビジョンの策定に当たりましては、本県の強みを最大限に生かしつつ、各市場の特性に応じた対応を検討すること、販路開拓や誘客拡大といった経済分野のみならず、人的交流や学術、文化交流など多面的かつ互恵的な交流を促進すること、また、庁内で円滑な連携が図られる体制を構築するとともに、県内の企業、大学、関係団体等との連携を密にし、ビジョンを総合的かつ効果的に推進していくことなどを指示したところであります。
次に、貿易の制限に対する認識についてでありますが、国においては、通商政策や貿易交渉の考え方として、人や物などの自由な流通とグローバル経済への参加の裾野を広げる通商政策の推進や、食料輸出国と輸入国のバランスのとれた農産物貿易ルールの確立を目指すことなどを掲げているところであります。
現在、各国との間で交渉が行われているTPP協定や日本とEUのEPA交渉などは、その結果によっては、本県の基幹産業である農林水産業を初め、製造業、食の安全、医療、労働など、県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。
貿易交渉に当たっては、その時点の国際貿易秩序の範囲内で、それぞれの国内事情に配慮しながら、個別課題ごとに相互に知恵と力を合わせて解決策を探っていくことが重要であると認識しております。また、食料の輸入については、食の安全・安心が損なわれたり、農林水産業やその関連産業に重大な影響が生じるおそれがある場合などに、国内法令や国際協定に基づいて制限することは一定の合理性を持つものと考えます。こうした考えのもと、県としては、国に対し、国民生活に及ぼす影響等について十分な情報開示と国民的議論を尽くすことや、農林水産業の体質強化に向けた施策の充実などを引き続き要望してまいります。
次に、動物検疫の指定についてでありますが、現在、岩手のブランド肉の輸出においては主に航空便が利用されていると聞いておりますが、県内の港湾が家畜伝染病予防法に基づく動物検疫の指定港となることにより畜産物の輸出入における輸送手段の多様化が図られ、県内港湾の国際化にも資するものと考えております。一方で、指定港となるためには、動物検疫の対象貨物について、その港湾で十分な輸出入の需要が見込まれることが前提であると国から聞いているところであります。
県といたしましては、県内の港湾が動物検疫の指定港となる可能性を見据え、まずは、荷主や物流事業者からの情報収集を通じ、今後の県内港湾での対象貨物の需要見込みの把握に努めてまいりたいと思います。
次に、ものづくり人材の確保に係る県の支援についてでありますが、デンソー岩手や東芝メモリの新工場建設は、本県ものづくり産業の集積や高度化を一層加速させるものであり、地域産業の力強い牽引役として本県経済の活性化に大きく寄与していただけるものと期待しております。
新工場建設の決定理由として本県の人材の優秀さを高く評価していることが挙げられており、また、産業界と行政が一体となった地域ものづくりネットワークを初めとする各種人材育成の成果があらわれたものと認識しております。
東芝メモリは現時点では雇用計画を明らかにしておらず、その詳細については承知していませんが、現在、稼動している四日市工場では五つの工場で6、000人を超える従業員が働いており、デンソー岩手の雇用増と合わせて県内において相当規模の雇用が創出されると想定しております。
県としては、これまでもいわてで働こう推進協議会の取り組みを初めとして、新規学卒者の県内定着の促進やU・Iターンによる人材の確保に取り組んできたところでありますが、今後におきましては、このような取り組みを一層強力に推進し、誘致企業のみならず、県内ものづくり企業全体の持続的発展につながるよう、推進体制の強化も含めて検討を進め、ものづくり人材の確保に努めてまいります。
次に、企業内保育所についてでありますが、本県経済を牽引するものづくり産業の集積をより一層加速させるためには、女性や若者の定着等による人材確保が不可欠であり、子育て世代、特に働く女性が安心して働き続けることができる就労環境の整備も重要であると認識しております。
このような中、今般、トヨタ自動車東日本と周辺企業群、町や県が一体となり、地域住民も利用できる企業内保育所を整備したことは、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの柱で進めているふるさと振興にも大きく貢献するものと考えます。こうした取り組みは、地域産業の大きな課題である人材確保にも有効であり、働き方改革にもつながりますことから、県としては、複数の企業が連携し、市町村と一体となって行う同様の取り組みが県内各地域に広がることを期待するとともに、必要な支援を行ってまいります。
次に、東日本大震災津波被災者の国民健康保険等の一部負担金免除についてでありますが、平成30年1月以降における被災者の一部負担金等の免除措置について、市町村等に対しその意向を確認したところ、国保財政が厳しい状況になっていることなどから、対象者の見直しや免除措置の終期の検討についての意見もございましたが、最終的には、国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険及び障がい福祉サービスについて、全ての市町村等において現行制度のまま継続するとの回答を得たところであります。
県といたしましては、いまだ多くの被災者の方々が応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされており、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保に努める必要があることから、平成30年12月までの1年間、これまでと同様の財政支援を継続していきたいと考えております。
次に、東京オリンピックへの被災県としてのかかわりについてでありますが、復興五輪を理念に掲げる東京2020オリンピック・パラリンピックは、本県にとって、全世界からいただいた御支援に対する感謝の思いを伝え、復興の姿を世界中に発信する絶好の機会であり、大会に向けた県民の意識を高め、一人でも多くの県民が参加していくことが重要と考えております。このため、県では、さまざまな機会を通じて広く大会のPRを行うとともに、被災地の方々の協力を得てPR動画を作製し、全国知事会議の場で放映するなど、復興五輪の理念の発信と浸透に取り組んでまいりました。また、ホストタウンの登録や事前キャンプの誘致に向けて、市町村や競技団体などを対象に説明会や個別相談会を開催するなど、その取り組みをきめ細かに支援してきたところであります。
今後とも、市町村や関係団体等と一丸となり、オール岩手で東京2020オリンピック・パラリンピックの機運を盛り上げるとともに、市町村のホストタウン登録や事前キャンプ誘致の実現に向け積極的に取り組んでまいります。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、農林水産品の輸出目標についてでありますが、いわて県民計画第3期アクションプランにおきまして、平成30年度における県農林水産物の輸出額の計画目標値は、国が見込む輸出の伸びから推計した27億円としているところであります。また、直近の平成28年度の輸出額の実績は約22億円となっており、水産物の漁獲量減少などの影響により、平成28年度の輸出目標である23億円の96%にとどまっているところであります。
いわて国際戦略ビジョン終了後の平成33年度における県農林水産物の輸出額の計画目標値については、国際的な需要や動向を探りながら、これまでの輸出実績や現在の輸出の取り組み状況を踏まえ検討を進めてまいります。
次に、韓国への水産品禁輸措置についてでありますが、国におきましては、平成27年8月、WTO─世界貿易機関に対して紛争解決小委員会の設置を要請し、同年9月に同委員会が設置され、審理が開始されたところであります。この小委員会の審理は国家間の交渉の場として国が主体となって対応するものであり、審理の状況についても非公表となっているところであります。このため県では、これまで、北海道東北地方知事会や岩手県漁業協同組合連合会と連携して、韓国政府に水産品の禁輸措置が一刻も早く解除されるよう強力に働きかけることを国に対して強く要望してきたところであります。韓国の水産品禁輸措置解除につきましては、基本的に国家間の交渉で解決していくべきものでありますが、県としては、今後とも北海道東北地方知事会などと連携しながら、あらゆる機会を捉えて国に対して働きかけてまいります。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、岩手県雲南事務所についてでありますが、去る6月定例会において、今後の中国展開に関連し、雲南省への新たな拠点の設置については企画理事から御答弁させていただいたところでありますが、雲南省と本県との交流は、南部鉄瓶とプーアル茶を通じたプーアル市との交流からスタートし、上海万博への出展を経て省レベルへの交流へと発展し、平成25年には日本国岩手県と中華人民共和国雲南省との友好交流協力協定を締結し、青少年訪問団の相互派遣、経済、観光及び農林業交流など、幅広い分野での連携、交流に拡大してきているところでございます。
こうした中にあって、今後一層の交流の深まりが見込まれるとともに、南アジアへのゲートウエーであることも踏まえ、交流全般に係る雲南省との連絡調整、本県関係者と雲南省各界との円滑な交流の支援及び観光、文化などの情報発信を担う事務所を平成30年4月に雲南省昆明市へ設置しようとするものでございまして、その体制は、所長及び所員の計2名とする予定でございます。
次に、釜石港での完成自動車の積み出しについてでありますが、トヨタ自動車のコンパクトカー生産の中核を担っておりますトヨタ自動車東日本岩手工場の完成自動車積み出し港として釜石港が機能することは、本県自動車関連産業のさらなる集積へ寄与することが期待されるとともに、さまざまな経済活動への波及効果があるものと捉えております。
県では、震災以降、港湾や道路等の復興状況について、毎年、トヨタ自動車及びトヨタグループ各社に対し、トップセールス等を通じて積極的にPRしてきているところでございます。今後においても、引き続き、湾口防波堤の復旧見込みや復興関連事業の進捗状況など、釜石港を取り巻く利用環境が改善していることを提示しながら、トヨタ自動車に対して釜石港の利用について働きかけてまいります。
〔県土整備部長中野穣治君登壇〕
〇県土整備部長(中野穣治君) まず、県内荷物の県内港からの出荷についてでございますが、平成25年に国土交通省が実施した全国輸出入コンテナ貨物流動調査の結果によりますと、県内発の輸出コンテナ貨物のうち、県内港湾を利用して輸出された割合は約8%にとどまっている状況でございます。
県内港湾の利用が進まない理由といたしましては、外国とダイレクトに結ばれる航路がないことや船の便数が少ないこと、また、内陸部から港湾への道路のアクセスが悪いことなどが、県内事業者へのヒアリング調査においては挙げられております。
県としては、東北横断自動車道釜石秋田線など復興道路の開通による港湾へのアクセスの改善、新たに供用開始したガントリークレーンを初めとする港湾機能の充実、また、新たな定期コンテナ航路の開設など、県内港湾を取り巻く環境が大きく変化していることを踏まえ、ポートセールスを強化し、県内の港の利用促進に努めてまいります。
次に、主要地方道釜石遠野線笛吹峠の通行どめ解除についてでございますが、台風第10号による釜石遠野線の被災箇所は28カ所に及びますが、通行どめの解消に向けて必要となる復旧工事はこれまで全て発注済みとなっております。工事を実施している区間は峠部であり、地形が急峻な上、幅員が狭小であるなど、作業状況が厳しいことから復旧に時間を要しており、利用者の皆様には御不便をおかけしております。
複数の箇所を同時に施工するなどの抜本的な工期短縮を行うことが難しい区間ではありますが、効率的に現場作業が進められるよう施工計画の精査や業者間の調整を行い、本格的な降雪の前までに可能な限りの工事の進捗を図り、できるだけ早い時期に通行どめの解除を目指してまいります。
〔保健福祉部長八重樫幸治君登壇〕
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 国民健康保険の財政運営の県移管に係るメリットについてでありますが、財政基盤が脆弱な小規模保険者が多い市町村国保においては、人工透析等による高額医療費の発生により財政運営が不安定になるなどのリスクを抱えていますが、県が財政運営の責任主体となることで財政運営上のリスクが県全体で分散され、急激な保険料上昇が抑えられるなど、財政運営の安定化が期待されています。
保険税額が上がる市町村に対する都道府県の対応については、保険税負担が平成28年度と比較して一定割合を超えて増加する市町村に対して、県繰入金等を活用して保険税負担を軽減できることとされています。
県では、平成30年度において、新制度に円滑に移行するため、制度施行当初に市町村の保険税が急激に増加することがないよう最大限配慮する必要があることから、平成28年度の保険税と同程度の水準まで激変緩和を講じる方向で市町村等と協議しているところであります。
次に、国民健康保険税の今後の方向性についてでありますが、国が示した国民健康保険事業費納付金及び標準保険料率の算定方法に係るガイドラインにおいては、保険料率は医療費水準に応じ市町村ごとに算定することを基本としつつ、地域の実情に応じて県内一律の保険料率とすることも方策としては示されております。
本県においては、医療費水準に約1.6倍の差異があり、直ちに保険税の統一を行うことは、多くの市町村において被保険者の負担の急変を招くことが懸念されることなどから、平成30年度から当面の間は県内統一の保険料水準とはしない方向で市町村等と協議を進めているところであります。
保険料水準の統一については、医療費適正化の取り組み等による医療費水準の平準化の状況を見ながら、3年ごとに行われる岩手県国民健康保険運営方針の見直しの際に検討してまいります。
〔文化スポーツ部長上田幹也君登壇〕
〇文化スポーツ部長(上田幹也君) まず、ラグビーワールドカップ2019についてでございますが、ラグビーワールドカップ2019開催に係る寄附金について、県においては、昨年11月、ふるさと納税制度を活用したふるさと岩手応援寄付に、新たにラグビーワールドカップ2019を契機とした観光客受け入れ等の基盤整備のメニューを設け、大会開催のための寄附を募っているところであります。
また、釜石市においては、平成27年度に釜石市ラグビーこども未来基金を設け、ラグビーワールドカップ2019への準備や、大会開催後のラグビーを活用したまちづくりに活用するため寄附を募っているところであります。
このような取り組みを受け、ラグビーワールドカップ2019釜石開催実行委員会において、県のふるさと岩手応援寄付と釜石市ラグビーこども未来基金等を盛り込んだPRパンフレットを作成したところであり、今後とも、各種広報、イベントなどさまざまな機会を捉え制度の周知を図るとともに、県内外の企業、団体、個人に対し広く寄附の協力を呼びかけてまいります。
次に、ホストタウン等の誘致に向けた取り組みについてでありますが、現在、盛岡市がカナダのホストタウンに登録され、また、花巻市がボート競技日本代表チームの、盛岡市が水泳競技カナダ代表チームの事前キャンプ地に指定されております。
県におきましては、ホストタウンや事前キャンプ地の誘致に向けて、これまで、市町村や競技団体を対象に説明会を開催するほか、全33市町村に足を運び、導入に向けた検討を進めていただくようお願いするとともに、相手国との関係構築が課題となっている市町村に対しては、国と連携して個別に相談に応じてきたところであります。さらに、英語で県内のスポーツ施設等に関するスポーツキャンプガイドブックを作成するなど、市町村の取り組みをきめ細かに支援してきたところであります。
また、国においては、先月から、東日本大震災津波の被災3県の自治体に対して、登録を支援する復興ありがとうホストタウンの取り組みが開始され、県においては、10月4日にこの取り組みに関する説明会を開催いたします。
今後とも、国を初め関係機関、団体と緊密な連携を図りながら、市町村のホストタウン登録や事前キャンプ誘致の実現に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。
〇29番(小野共君) 再質問をさせていただきます。何点か不明な点がありましたので、少しお伺いをさせていただきたいのですが、最初に、雲南事務所の開設につきまして、今後の国外事務所の設置基準といったものを、一般論として、県の方針、方策を考えていただきたいと思うわけでありますが、それをお聞きしたいと思います。
現在、海外事務所が大連、ソウル、そして今回、雲南事務所とアジアだけに三つという話になりました。それも中国二つ、韓国一つという話になりましたが、雲南事務所の話は、プーアル市との上海万博への共同出展でありますとか、人的交流、あるいは協力協定みたいなものがあったと。下から積み上げてきた結果として事務所を置くといったような、両国の関係が熟してきたから今回の事務所を置くといったようなことなのだろうと思いますけれども、今後、例えば観光誘致を考えるのであれば、台湾がそうでしょうし、中国あるいは韓国もそのとおりでありますように、いわて国際戦略ビジョンに書いておりますとおり、食べ物の輸出だと、さっきの観光客誘致の中国雲南省であるとか韓国のほかにタイ、ベトナム、香港であるといったような話も出てくるのだろうと思います。恐らく、観光客でいったら、まず台湾という話なのだろうと思います。
それでお聞きしたいのが、今後、事務所を展開するに当たってどんな基準でつくるのか。では、どうして台湾ではなかったのかと。今後、事務所を設置するための基準というものも必要でしょうし、その基準が、事務所を廃止するといったときの基準にもなり得るのだろうと思います。恐らく下から上がってきた交流がうまくいっているから、そこに事務所を置くといった自然発生的なものも、考え方としてはそのとおりですけれども、では、今後、このような場所にこのような基準で置くのだと。だから、その基準がなくなかったから廃止するのだといったような、一般論として、そういう戦略というものを考えておく必要があるのだろうと思います。その話をまず1点お伺いしたいと思います。
あと、ホストタウン、キャンプ地についてお伺いしたいのですが、先ほど来、冒頭でも申しましたように、国際交流のホストタウンは本当にいい機会なのだろうと思います。被災地の議員として言わせていただければ、ホストタウンで今決まっているのが盛岡市だけと。恐らく第6次、第7次の登録に行くに従って、県も一生懸命説明会を開いているということでしょうから、さまざまな県内市町村がホストタウンに選ばれるところも出てくるのだろうと思います。その中で、1次的にはカナダのホストタウンで盛岡市が出ていると。盛岡市が基本的にカナダとの国際交流事業をどのようなものをするのかというのは、決めるのは恐らく盛岡市が中心となるのでしょうけれども、県としてもそこにかかわっていただきたい。そして、先ほど来、私は冒頭で申し上げましたとおり、被災地の状況がこういうものなのだ、ここまで進んだんだというようなことも国際交流の一環としてどうしても私は伝えてほしいと。それが被災県としての岩手の役割なのだろうと思っております。
そういう意味で、今後、カナダのホストタウンの盛岡市、あるいはほかのホストタウンができたときに、県がどのようにかかわって、どのような交流事業というものをイメージしているのかというようなことをお聞きしたいと思います。
そして教育長、教育委員会のほうにもお伺いしたいのですが、小学生、中学生あるいは高校生にとっても、ホストタウンあるいは事前キャンプ地の事業が本当にいい機会なのだろうと思います。この機会を利用して、教育委員会として、県内の子供たちがオリンピックのホストタウンあるいは事前キャンプ地にどのようにかかわっていくのかといったような、まだまだといっても、もう3年になりましたので、その辺の今のところの基本的な認識を聞かせていただきたいと思います。
あとはトヨタ自動車の完成自動車の積み出しの件で、これは知事にお伺いしたいのですが、先ほど来、東芝メモリの北上市への誘致の話もございました。知事が平成20年度から本当に頻繁に北上市長、北上市の関係者の皆様と東芝に行って、企業誘致をうまく、粘り強くやられたと。私はそのとおりなのだろうと思います。やはり熱意が企業を動かすのだと。さまざまな企業誘致のアナリストの方々の書いた本あるいは雑誌などを読ませていただくと、やはり最後に物を言うのは、さまざまな条件よりも地元の熱意だといったような話がよく聞かれるところであります。私もそのとおりなのだろうと思います。
トヨタ自動車の完成自動車の積み出しというのも、釜石港に、県内にそのルートを持っているということも、今後の新たな県の経済振興の大きな鍵になるアイテムの一つなのだろうと思います。そのアイテムを幾つ持っているかと。完成自動車のルートもそのとおりですし、動物検疫の話もそのとおりなのだろうと思います。そういった県としてのさまざまなアイテム、経済振興のための持っていなければいけないアイテムというものを幾つ持っているのかというのが、今後、岩手県が北東北あるいは東北の経済振興の中でどれだけの経済的な影響力を持てるかどうかということの本当に大きな鍵になっていくのだろうと思います。私は、本当に大きな意味があるのだろうと思っております。
先ほど商工労働観光部長の答弁がありましたので、知事に、完成自動車の物流について、釜石港にルートを持っているということの基本的な認識を聞かせていただきたいと思います。
国保、後期高齢者医療制度、介護保険等の一部負担金の免除の話がありました。これは本当にありがとうございます。被災地にとりましては、そろそろ来年からですか、災害公営住宅の家賃の低減措置が6年目から徐々に終わり始めるという大きな問題が出てきております。恐らく復興が終わっても、今度は沿岸振興策として、家賃の低減制度の持続であったりとか、そういうことにも恐らくなっていくのだろうと思います。今回のこういう負担金の免除の話は本当にありがたいと思っておるところであります。
質問に対する答弁をお願いします。
〇知事(達増拓也君) 釜石港での完成自動車の積み出しについてでありますけれども、トヨタ自動車東日本岩手工場の完成自動車積み出し港として釜石港が機能することは、やはり岩手の自動車関連産業のさらなる集積への寄与が期待されることでありますし、また、さまざまな経済活動への波及効果もあると考えております。
毎年、トヨタ自動車そしてトヨタグループ各社と、トップセールスなど県側とやりとりする機会がさまざまある中で、港湾の活用についても積極的にPRしているところでございますけれども、今後においても、引き続き、港湾や道路等の復旧、復興状況、特に湾口防波堤の復旧見込みなど釜石港を取り巻く利用環境が改善していることを提示しながら、トヨタ自動車に対して釜石港の利用について働きかけていきたいと思います。
そして、東日本大震災津波被災者の国民健康保険等の一部負担金免除については、やはりいまだ多くの被災者の方々が応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされていて、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保に努める必要があるということから、平成30年12月までの1年間、これまでと同様の財政支援を継続していきたいと考えているところであります。
〇企画理事(岩間隆君) 海外事務所の設置あるいは廃止について、一定の考え方、基準を持って戦略的に臨むべきではないかというようなお尋ねだと思います。
県では、平成14年に韓国における観光誘客の拠点としてソウル事務所を設置しております。それから、平成17年には中国との経済交流、観光誘致の拠点として、御指摘のとおり、大連経済事務所を設置しております。今後設置しようとしております雲南の関係につきましては、先ほど、商工労働観光部長のほうから御答弁を申し上げました。
基本的な考え方といたしましては、国際戦略ビジョンの中でも規定しておりますが、本県を取り巻く国際情勢の変化を踏まえながら、海外事務所について、そのあり方を検討していくということをビジョンの中で書かせていただいております。基本的には設置、廃止を含めて、その時々の国際情勢でございますとか、あるいは相手国の経済、社会状況、本県との取引ですとか観光誘導の状況等々、さらには中央政府間協定の有無─これは大連の事務所もそうですし、設置をしようとしている雲南もそうですが、こういった中央政府間協定の有無などといったことを総合的に勘案して個別具体に判断してまいりたいと考えております。
台湾の事例が御質問の中にございました。基本的に台湾は民民ベースでの交流が非常に活発でございまして、そういった民民ベースでの活発な交流がなされているというところに関しては、県としては、例えばミッション団を派遣するですとか、あるいはトップセールスをしながら、そういった動きを支えていくということになろうかと考えております。
〇文化スポーツ部長(上田幹也君) ホストタウンの目的でございますが、やはり相手方の国との交流を深める、それから、スポーツを通じてということになりますので、例えば事前キャンプとか、実際にそこに来ていただいて、スポーツをやる場所になっていただく、そういった大きな方向が二つございますけれども、どちらも大事とは思っております。特に被災地の状況あるいは復興の状況とかをお伝えする非常に大きな目的がございますので、そういったことはやはり相手国との交流という面が非常に大事かと思っております。
今、登録されております盛岡市でも、市民あるいは小・中・高校生を対象といたしましたカナダの言語や文化の学習会、あるいは盛岡のさんさ踊りに相手国の関係者を御招待するなどのさまざまな国際交流事業が計画されていると聞いております。
今、さまざまな取り組みを通じまして、県下でさまざまな市町村、特に沿岸の市町村も含めまして、ホストタウン登録に向けた関心を持っていらっしゃるところが幾つかございます。そちらに対して支援をしてまいりたいと思いますが、そのイメージというお尋ねでございますけれども、まず一つは、相手側の国との橋渡しといいますか、そういったところで各市町村では戸惑い持っていらっしゃるところもあるやに聞いておりますので、そういったところではぜひお役に立ちたいと。
それから、実際に交流事業をされる際にはさまざまな面で課題が出てこようかと思いますので、そこについてはきめ細かに御相談に応じ、対応させていただきたいと考えております。
〇教育長(高橋嘉行君) ホストタウンにおける学校のかかわりについてでございます。
カナダ選手団のホストタウンに登録されている盛岡市では、小中学生を対象としたさまざまな交流事業が予定されていると承知いたしておりますけれども、このような動きが県内の他の市町村にも広がることには大きな意義があると考えております。世界のトップアスリートであるオリンピアン、パラリンピアンとの交流の機会を持てることは、岩手の子供たちにとって世界と直接つながる絶好の機会でございますし、練習の見学、触れ合いなどを通じて、子供たち自身の未来への大きな刺激ともなるだろうと思っております。
また、東日本大震災津波の被災県といたしまして、世界の多くの方々からの御支援によって育まれたつながりということが一層深まることにもつながると期待されますので、県教育委員会といたしましては、学校教育においても、さまざまな交流が深められるように、市町村、市町村教育委員会等とともに十分に連携しながら積極的に対応していきたいと考えております。
〇副議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
午後3時29分 休 憩
出席議員(47名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 嵯 峨 壱 朗 君
35  番 中 平   均 君
36  番 五日市   王 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 小野寺   好 君
40  番 飯 澤   匡 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 工 藤 大 輔 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時53分再開
〇副議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第3、一般質問を継続いたします。城内よしひこ君。
〔21番城内よしひこ君登壇〕(拍手)

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