平成16年12月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇29番(佐々木博君) ただいまの伊藤勢至議員の質問に関連しまして、岩手県競馬組合改革実行計画について伺います。
 去る11月20日、岩手県競馬組合改革アクションプランが公表されました。さきに示されていた改革案の基本方針にほぼ沿った内容ではありますが、大きく異なる点は、構成団体への資金繰りの支援要請が盛り込まれていることであります。県は、この要請を受け入れて今議会に競馬組合に50億円を貸し付ける補正予算案を提出するようですが、平成17、18年度の2年間で可能な限りの対応策をとっても236億円から524億円の財源が不足するなど県財政自体が大変厳しい状況下、競馬組合に50億円の貸し付けをすることについて県民の理解を得るためには、第一に、県として競馬組合の存在意義をどう認識しているのか県民に明確に示すべきではないでしょうか。今まで地方競馬は地方財政に寄与することが第一義的な存在理由ととらえられ、実際岩手県競馬組合は、昭和39年度から平成10年度まで構成団体へ収益配分金として総額407億円余を配分してきたのであります。しかしながら、経営の悪化から平成11年度以降配分金はゼロで、今後も期待できる状況ではありません。このような財政に貢献することが期待できない現状の岩手県競馬組合の存在意義というものをどうとらえているのか知事の御所見をお伺いします。
 また、県議会出資法人等調査特別委員会は、本年8月に、公営ギャンブルという性格から、教育、医療、福祉等と異なり、構成団体からの財政支援は、県民の理解を得ることは困難と考えられることや競馬議会の議員定数の増員など幾つかの提言を行っておりますが、本アクションプランでこれらの提言がどう生かされたのか、あわせて御所見をお伺いします。
 次に、アクションプランの中身について伺います。
 平成19年度より経常損益の黒字化を図り平成28年度までに累積損失を解消し、健全なる財務体質を確立するとありますが、基本的に右肩上がりの計画で、特にも平成17年度から21年度までの間に売上高を348億円から495億円まで5年間で約150億円も伸ばす計画となっており、中央競馬でさえここ五、六年で約1兆円近くも売り上げを減らしている中にあって、本当に実現可能な数字なのか強い疑問を覚えざるを得ません。
 また、その内訳を見ますと、既存体制での発売についてはほぼ現状のまま推移するものとし、民間委託や集客効果、JBC競争の開催等で売り上げを伸ばす計画となっています。しかしながら、民間委託については、競輪などと同様に、民間事業者に発売は認めても、結果を集計して払戻金を算定する部分は委託を認めない方向で決定されるのが確実だと言われており、受託する民間事業者としては、発売から集計、さらには払戻金の決定と一連の業務をすべて受託できればメリットも大きいわけでありますが、販売の委託だけでは意欲がわかなく、どれほど積極的に参入してくるか見通しが立たないとも言われております。また、JBC競争を初めとするいわゆるダートグレード競争についても、売り上げに対する賞金や手当の比率が高いため採算に合いにくく、レース全体のリストラが必要で、特にもJBC競争についていえば、大井以外で開催することは致命傷になりかねないと指摘する声もあります。JBCを開催してたとえ売り上げが伸びたとしても、財務体質の改善に結びつくとはとても思えないのです。
 さらに加えて、売り上げに最も影響を与える要因として景気の低迷があります。政府は、再三景気は回復傾向にあると言いますが、岩手の住民で、景気が回復していると感じている人は皆無と思われます。そして、景気の低迷がこのまま推移すれば、計画どおりの売り上げを確保することはますます困難ではないかと危惧されるのであります。
 マスコミに対する知事の発言や提出予定議案説明会での農林水産部長の発言を聞きますと、ラストチャンスを与えたいとか、状況によっては貸付金を年度途中でも引き揚げることもあり得るとか、希望が持てるか持てないのか傾向が見えた時点で廃止を含めて判断するとか、このアクションプランで確実に再生できるとの強い自信があるようには見えないのですが、知事は、このアクションプランで確実に再生できると認識されているのか御所見をお伺いします。
 ところで、今度の構成団体への資金繰りの支援要請は、民間の金融機関が融資に応じないことが原因で、県民は、改めて岩手県競馬組合の経営状況の悪化を再認識させられました。そして、今、競馬を廃止すれば、構成団体はどれほどの損失負担をしなければならないのかと不安を覚えると同時に、非常に高い関心を持って見守っております。資産の評価で難しい点もあろうかとは思いますが、現時点で廃止した場合、どの程度の損失が想定されるのか具体的に金額でお示し願います。

〇知事(増田寛也君) 競馬組合の関係について4点お尋ねがございましたので、お答え申し上げます。
 まず、岩手競馬の今日的な意義でございますけれども、3点あると考えます。第1点は、約2、800名が関連業務に従事するなど、雇用の場の提供や関連産業の活性化も含めた地域経済への貢献、これが第1点。2点目は、馬産地岩手に根づき、馬との触れ合いの場を提供することなどによる馬事振興、馬事文化の継承、これが第2点目。第3点目は、競馬のみならず、憩いの場としても活用される競馬場を中心とした健全な娯楽の提供。今日的意義は以上3点大きいものがある、このように考えます。とりわけ第1点目の地域経済への貢献という面に関して見ますと、今申し上げましたような雇用の場のみならぬ、非常に広い地域経済への貢献がございまして、仮に岩手競馬が廃止となった場合には地域経済に大きな損失を与えかねないものと認識しております。
 次に、県議会の出資法人等調査特別委員会提言の、今般、競馬組合が取りまとめました改革実行計画への反映状況でございます。委員会の方から幾つか提言をいただきましたが、その中で、実行計画に取り込めなかった内容についてまず申し上げます。
 1点目は議員定数の見直しでございまして、これにつきましては特にアクションプランで触れておりませんが、これは構成団体の議会で議決をしていただくべきもの、このように判断をしたものでございます。したがいまして、そういう議会の方の御判断があれば当然議員定数を拡大していくもの、こういうふうに考えております。
 2点目、水沢、盛岡競馬場の2場体制の見直しでございますけれども、これにつきましては、現状では、コストのかかり増しなどによりまして1場体制による十分なメリットが見出しにくいと判断いたしまして、これについては現在の2場体制を維持、こういうふうに判断をしました。
 それから3点目、管理者、副管理者及び岩手県競馬組合事務局の経営責任ということでございますが、これにつきましては、競馬組合と競馬振興公社の一元化によります人心の一新をこの計画に盛り込んだわけでございます。さらに、管理者の責任につきましては、これは、今後時期を見て明らかにしたい、このように考えております。
 今申し上げましたことが実行計画に具体的に触れていない事項でございますが、そのこと以外の提言につきましては、例えば、委託業務の内容及び経費の積算について精査をするように、これにつきましては、平成19年度までに総額24億円のコスト削減を盛り込みました。それから、競馬法改正の活用を十分に検討ということ、これは、他主催者との事業連携、そして民間委託の積極的導入ということで具体的な数値を盛り込んでおります。従来の枠を超えた抜本的改善計画の早期提示ということで、これにつきましては、人員の3分の1の削減などを盛り込んだ大胆な計画を公表したということでございまして、これは主な項目でございますが、委員会の方から提言のありました項目はすべて実行計画に盛り込まれている、このように考えております。
 三つ目のお尋ねで、今回のアクションプランでございますが、これは、民間委託の実施や他主催者との連携強化、それから明確な数値目標の設定と管理、さらには、多様な営業戦術を実行する営業体制の強化など民間の手法を取り入れました新しい切り口での売り上げ拡大、従来にはない新しい切り口での売り上げ拡大を目指しております。またさらに、今申し上げましたとおり、競馬組合と競馬振興公社の一元化による組織の抜本的見直しと人心の刷新を図ったものとなっております。
 このように、コストの削減にとどまらず、増収振興策につきましても改正競馬法の内容を最大限取り込んで、また、これまでとは全く異なる手法を取り込んだ計画として仕上がっておりまして、私は、これは競馬組合の管理者という立場での私は、この計画を先頭に立って確実に実行していくことで組合再建が必ず成功できるものと。まず、競馬組合の管理者としては、この計画によって組合再建が必ず成功できるものと、このように確信をしております。
 また、一方で、私は、構成団体の長という立場も持っております。構成団体の長である知事といたしましては、この競馬組合を改革する上で、開催経費等のコスト削減と増収振興策が重要でございまして、とりわけ増収振興策につきましては、今回の改正競馬法の精神、趣旨をどこまで計画の中に取り込めるか、そして従来にない発想で改革に取り組めるか、この大きな二つがポイントになると、このように構成団体の長である知事としては考えてございましたが、今回競馬組合の方から県の方に示された実行計画は、今申し上げた二つのポイントが十分に取り込まれておりまして、県の知事の立場としても、組合再建に結びつくものと高く評価をしているわけでございます。
 今般、組合からの支援要請があったわけでございまして、これは先ほど御答弁で申し上げたところでございますが、それにつきましては、現在、前向きに対応したいということで準備をしているわけでございます。
 今後、県の立場として、組合の方から支援要請を受けますと、これは支援を受けた側としては、私は融資する立場の長ということでございますので、毎年毎年進捗状況を厳密にチェックをしていかなければならない、そういうことがございます。したがいまして、貸す立場の長としては、それだけの慎重さを持って適切に進行管理をしていく必要があると思っておりますので、内容、計画については高く評価をしておりますが、そうした支援要請を受けた側としては、適切な進行管理が大変重要だと、そのような意識を持って取り組んでいきたいと考えております。
 それから4点目でございますが、仮に競馬組合の経営が破綻して解散した場合の損失額についてお尋ねがございました。これにつきましては、実は土地、建物など、処分資産の評価が大変難しいと思うのでございます。それから、人員の整理をあの中に盛り込んでいるんですが、これにつきましては、関係者に対する見舞金の支払いなどをほかの競馬場で行っているような場合もございまして、多額の費用を要することも考えられます。実は、こうしたことをどう算定するかということがございまして、今この時点で損失の総額を組合として試算するのは大変難しいと思っておりますが、お尋ねがございましたので、これは現在競馬組合の方に作業をさせております。早急に、今できる範囲でどういうふうな形になるかを取りまとめるようにということで作業をさせておりまして、後日、柴田副管理者の方からこの点については報告をさせたいと思っております。これは組合の立場でございますので、それをさらに県としてどう評価するかという問題がございますが、まず、その組合の試算というものがベースになると思いますので、今、早急にそれを組合の立場で取りまとめるように作業をさせておりますので、繰り返しになりますが、後日、柴田副管理者から報告させますので、御了承をお願いしたいと考えております。

〇29番(佐々木博君) 今の4点目、損失額の問題でありますが、大体地方競馬は繰り上げ充用、そして市中銀行からの借り入れがストップして構成団体からの返済義務のある借り入れ、そして返済義務のない繰り入れと、大体そういう方向でいくわけでありまして、私はそういう点では競馬組合は第2段階に来たなと思っております。市中銀行がお金を貸さない理由はいろいろありますけれども、やはり経営が非常によくないということが大きな理由でありまして、借り入れをしなければいけなくなったいわば第2段階に進んだ段階で、今、廃止をすればどれほどの損失が生じるか計算をしていないということは、私はおよそ考えられない、本当に信じられないことであります。本当にこの県議会で、これから、あす正式に議案が出るようでありますけれども、まず、今度の提案は余りにも早急で、初日の提案にも間に合わなかった、異例であります。
 この50億円もの融資、県のいろいろな、例えば出資団体であろうと何であろうと、こんなに短時間で融資を決めて議会に出すなんていうことは、多分あり得ないと思う。それだけ迫っている中で、しかもこんな異例なやり方でやって、先ほどの伊藤勢至議員の質問に対しまして、柴田副管理者を議会に呼んで説明をいただけるということ、大変結構でありますけれども、何かまだいろいろ都合悪いことを隠していてオープンにしていない、そんな我々、本当にそういった思いを実は持っております。
 それで、いずれあす正式に提案されて、それから議論が始まるわけでありますが、この損失額の問題も含めまして、とにかく可能な限り、我々が必要とする資料についてはできるだけオープンに出していただきたいということを、競馬組合の管理者の増田知事として、管理者として、ここではっきりとまず明言をしていただきたい、そのことが第1点でございます。
 それから、知事はこのアクションプラン、確信があるとおっしゃいましたけれども、実際にこの経済状況の中で、しかもレジャーが非常に多様化している中で、大変私は厳しいだろうと思っております。特にも映像の関係ですけれども、実は競馬場に行かないで映像で競馬を見るということになりますと、ますます中央競馬が有利になるんですね。地方競馬の魅力というのは、馬の息づかいが聞こえるようなところでレースを見るというところが魅力でして、映像で見るだけでしたらばますますJRAにやられちゃう、私はそういう危機感を持っておりますので、その辺についても、できれば再検討していただきたいと思うんですが、御所見をお伺いします。

〇知事(増田寛也君) 今、大変もっともなと思っております御指摘をいただきました。この競馬組合の再建については、いずれにいたしましても正確な事実をすべてオープンにして、内容を明らかにした上でいろいろと御議論をいただくと、これがすべてだと思います。オープンに、そしていろいろといただきました議案を公平に私どもの方で受け入れて、それで再建に向かうと。必ずやこの競馬組合を再生させると、これに結びつけていくことが大変大事かと思っておりますので、そういう心づもりで組合としてすべての情報を全部オープンにすると、そういう形で臨みたいというのがまず第1点でございます。
 今の損失額の点についても、大変粗い試算等はもちろん手元に持ってございますが、さらに精査をして、それをきちっとこちらの方に出したいと思います。
 それから、売り上げの増をあの中で見込んでおりますが、これについて、今、映像というよりも生でということは、これはファンとしては当然そうだろうと思います。一方では、今の競馬の売り上げが以前と違って、そういった新しいツールを使って現実にかなりそこの部分が伸びてきていると。それから今後、そうした売り上げ自体がそういうものを使って伸びていくということが当然予想されるということもございますので、これをどのように見るのか。できればそういう力を我々の岩手競馬の中にも取り込んで、そして2場をしっかりと反映させていくということが大事かと思いますので、これが今回の計画の一番大きなポイントかというふうに思います。この売り上げ、あそこで見積もっておりますのがどれだけ将来的に確実性を持っているのか、ここの点も十二分に御吟味いただきたいと思います。それに耐えるだけの準備をしてそしてまた臨みたいと、そして必ずやこの計画を実行に移して競馬を再生したいと、このように申し上げておきたいと思います。
   〔「議事進行について」と呼ぶ者あり〕


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