平成29年2月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇27番(工藤勝博君) いわて県民クラブの工藤勝博でございます。
会派の先輩、同僚各位の御配慮により登壇の機会をいただき、会派を代表して代表質問させていただきます。
まず初めに、県政運営について伺います。
1点目は、達増知事の10年についてであります。
平成19年1月、全国高等学校サッカー選手権大会で県立盛岡商業高校サッカー部が見事日本一に輝き、そして4月から盛岡を舞台にしたNHK連続テレビ小説どんど晴れが放送され、岩手が全国の注目の的となりました。また、4月の統一地方選挙で達増岩手県知事が全国最年少知事として誕生し、時を同じくして八幡平選挙区から県議会の議席をいただき、今日に至っております。
知事は、岩手の危機を希望に変えるとの選挙フレーズで県民の支持をいただき、はや10年がたちます。この10年、2度の政権交代、リーマンショック、自然災害の頻発など県民生活に大きな影響を及ぼしている中で、改めて10年を振り返り、知事の県政運営に当たっての自己評価を伺います。
2点目は、平成29年度予算についてであります。
東日本大震災津波発災後、1兆円を超えていた当初予算が6年ぶりに割り込みました。それだけ復興事業が着実に進んでいると理解したいと思います。
一方、被災地では、依然として明るい声は聞こえがたい状況です。平成28年度を本格復興完遂年として震災分4、005億円が充当され、進捗率で見ますと、安全の確保では、海岸保全施設、湾口防波堤、復興道路整備事業などは完了、工事中がほとんどであります。また、暮らしの再建においては、応急仮設住宅入居戸数が1月末現在で6、179戸であり、3割の世帯の方々がいまだもとの生活に戻っておりません。なりわいの再生では、販路の回復、人材の確保、水産資源の造成が課題であります。
平成29年度は、第3期復興実施計画の初年度として、復興事業の総仕上げから復興の先を見据えた地域振興を図る重要な年度になりますが、三陸沿岸のさらなる展開に向けた知事の所見を伺います。
また、復興事業以外の通常分6、754億円は前年比1.5%増で、台風第10号の災害復旧、復興等が計上されました。その中で、天皇杯、皇后杯とも第2位となった希望郷いわて国体と139個のメダルを獲得した希望郷いわて大会のすばらしい成果をどのように次世代に継承し、岩手のスポーツの競技力を向上させていくのか伺います。
3点目に、全国知事会議についてであります。
全国知事会は毎年3回程度全国知事会議を開催しており、夏の全国知事会議は都道府県の持ち回りで行われ、平成29年度は、7月に初めて岩手県での開催が決定されています。昨年の知事会議では、全国各地で発生している災害への対応、超高齢社会や社会保障財源の問題、地域経済対策など我が国のさまざまな課題や参議院議員選挙における合区の解消、東京一極集中の問題など、真正面から取り組まなければならない多くの格差が指摘されています。地方がみずからの手でみずからの未来を切り開くために、実効性のある形で反映するよう国に要請しております。
そこで、本年の知事会議ホスト県の知事として何をアピールするのか伺います。
4点目は、ふるさと納税についてであります。
急増するふるさと納税が注目されています。ふるさと納税制度は、福井県が提唱し、平成20年に導入され、平成27年度では過去最高額になる見込みです。自治体が贈る牛肉や米などのお礼目当てでは寄附の理念に沿わないなどの声もありますが、都市住民が地方に目を向けるきっかけになるのは間違いありません。返礼品は、農産物の場合には宣伝機会、販売拡大に結びつきます。また、寄附の窓口サイトふるさとチョイスを運営するトラストバンクによると、関東、京阪神、名古屋の3大都市圏に住む人々が地方都市に対して寄附するケースが大半だということです。都市に集中する富が一部とはいえ自発的な思いによって地方に還流することは、税収減にあえぐ地方自治体にとっては積極的に取り入れるべきと考えます。
ふるさと納税ふるさとチョイスアワード2016で北上市が大賞を受賞しました。全国展開する力を持たない農産品、製品をふるさと納税のルートを通じて全国デビューさせることができています。代表例はわけありリンゴ、カシミヤ製品で、市場出荷できないわけありリンゴと表示したところ大変な人気を呼び品切れ状態となり、11月には取り扱いを中止するうれしい悲鳴であるとお聞きしております。
東北では、山形県が県内市町村分を含めた全体額で全国2位の140億円であるのに対し、岩手は23億8、100万円にとどまっております。返礼品をめぐってはいろいろと課題も指摘されていますが、まちおこしと税収確保の両面から積極的に活用すべきと考えます。県の取り組みについて伺います。
次に、岩手県ふるさと振興総合戦略について伺います。
1点目は、人口減少に対する取り組みであります。
岩手県ふるさと振興総合戦略では、まち・ひと・しごと創生法第9条に基づき、岩手県人口ビジョンを踏まえ、県民の希望の実現を図るため、ふるさと振興、人口減少に立ち向かうための基本目標を定め、今後5年間の主な取り組みや具体的施策、目標が示されています。国では、平成29年度から交付税算定で人口増加などに向けた取り組みの成果をこれまでよりも一層反映させるということです。自治体に実効性のある人口減少対策を促すのが狙いでもあります。新たな成果枠を設け、段階的に取り組み、必要度から配分額をシフトすることを表明しています。このことからも、従来に増して戦略体制を強化しなければならないと考えますが、その施策について伺います。
また、人口減少の要因となっている若年層の県外転出や出生率の低迷等を克服するため、やりがいと生活を支える所得が得られる仕事を創出し、新たな人の流れを目指すとあります。まさに社会減をいかに減らすかにかかっています。
平成28年4月時点で都道府県の職員数が25年ぶりに増加しているとのことです。職員数のピークは平成バブル期の1991年で、その後、総務省が職員数の抑制を求める事務次官通知を出したほか、地方税収が伸び悩んだこともあり、各自治体が職員数の削減を進めてきました。地方では、公務員、団体職員は一丁目一番地の職場であり、地域づくりの頭脳集団でもあります。その職場が、市町村合併、各団体の合併統合により大幅に減少しています。人口減少の一因に、新卒採用の枠を狭くした行政にもその責任の一端があるのではないでしょうか。県の姿勢を伺います。
2点目に、地域産業の振興についてであります。
人口減少が進む中でも、県内自治体で果敢に取り組んでいる町があります。ミルクとワイン、そしてクリーンエネルギーの町、株式会社岩手県葛巻町。地域資源である酪農、畜産、林業の付加価値を高める6次産業の先駆けで多くの雇用を創出しています。また、昨年8月30日の台風第10号で甚大な被害をこうむった岩泉町では、全国ブランドの乳製品、キノコ、三大鍾乳洞の龍泉洞を生かした産業振興を図り、雇用創出と地域経済の基盤強化を行政が中心となって進めています。
このように、行政が率先して地域資源を活用した岩手ならではの取り組みをさらに推進していくことが必要ではないでしょうか。特にも、企業誘致がなかなか進まない地域の産業振興を推進する施策が求められます。県の見解を伺います。
3点目は、地域おこし協力隊についてであります。
地域おこし協力隊は、平成21年から始まった総務省の事業です。都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した方を地方公共団体が地域おこし協力隊員として委嘱し、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発、販売、PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの地域協力活動を行いながら、その地域への定住、定着を図る事業であります。平成27年度で見ますと673団体に2、625名が隊員となっており、4割は女性、8割は20代、30代であり、任期満了後は約6割が同じ地域に定住されています。また、地域おこし協力隊員の活動に要する経費は、隊員1人当たり400万円を上限に特別交付税により財政支援があります。岩手県内では、ここ数年大きく伸びているものの、平成27年度の活動状況は11市町村で40名と、制度をうまく活用し、成果を上げている北海道、中国、四国地方には遠く及ばない状況であります。本県において取り組みのおくれた要因と今後の対応を伺います。
次に、岩手の食と農林水産業の振興について伺います。
1点目は、岩手の農業史の継承についてであります。
昭和54年1月、岩手の農業史が発刊されました。農政部長が千田知事から農業史の編さんを命じられ、3年の月日を要し、1、450ページから成る岩手県の農業史ができ上がったものです。千田知事の言葉をかりますと、我が郷土岩手県の社会、経済、文化の発展の歴史は、農業を基盤に根を張り、枝を伸ばし、葉を茂らせてきたと言えます。それは、岩手に生きてきた人々の生命を保ち、今日に生を受ける我々の血脈を支えてきた源泉でもありました。また、緑豊かな自然を保ち、工業や商業の産業を育むなど、時の流れの中で県民生活の安定基盤として役割を果たしながら、本県の固有の風土を培い、県民の豊かなる人間性を形成してきたと言えます。
今日、本県の主な農畜産物は全て全国指折りの主産地として成長し、生産技術や農業経営の水準も、先進地として全国に注目される地位を築いています。生産技術の革新や農産物の需給事情の変化は農業の構造そのものを基本的に変え、社会経済の高度な発展は、農家生活に村の態様を見違えるほど変容させました。こうした農業や農村生活の移ろいの足跡である記録や物証を広く収集し、整理して歴史的遺産として後世に伝えることは、今日を築いてきた先人に対しても、また、後世の発展を担っている人々に対しても、現代に生きる、今日の大変革を進めてきた我々がなすべき責務であります。
私は、時代は変われど、本質的な状況は40年前と大きな差異はないと感じています。国が進めようとしている農政改革と岩手の先人の築いた礎にどう向き合い、新たな歴史を刻んでいくのか知事の見解を伺います。
2点目は、2018年からの米政策への対応についてであります。
県オリジナル水稲品種銀河のしずく、金色の風には多くの県民が期待しているところです。一方、米の生産調整見直しまで残り1年余りとなりました。現行制度との最大の変更点は、行政による配分を廃止することにあります。国から県、市町村、農家へと、かつては減反面積、現在は生産数量目標が割り当てられる仕組みはなくなり、生産者や集荷業者、団体が中心となって需要に応じた生産を行う方法に変わります。県内の収穫量に占める全農岩手県本部の取扱量のシェアはほぼ50%であります。農協に頼らず直接販売する農家や農業法人がふえており、行政が関与していたときと比べるとそのグリップ力は弱まり、米の過剰生産による価格不安が懸念されます。
また、これまで生産調整に協力した農家に対して支払われてきた米の所得を補填する米の直接支払交付金が2018年から廃止になります。生産調整に協力した農家に対するインセンティブがなくなる中、需要に応じた主食用米の生産が可能でしょうか。需要に応じた生産の円滑な実施と農家所得の最適化に向けた県の取り組みについて伺います。
3点目は、農林水産物の魅力発信についてであります。
秋田県で毎年開催されている農業大イベント秋田県種苗交換会。もともとは手づくりの作物や種子を持ち寄り、お互い見せ合い、交換することを目的としたイベントでありましたが、現在では、それらに限らず、農業に関連するさまざまな展示販売を行う総合イベントとなっています。
〔副議長退席、議長着席〕
歴史は大変古く、1878年11月29日から1週間、現在の秋田市八橋の県営植物園で開催され、秋田県最大級のイベントとして発展継承されてきました。139回目の昨年は湯沢市で10月29日から11月4日まで開催され、期間中に約80万人の入場者があったとのことです。八幡平市内でも集落ごとに多くの生産者が見学に訪れます。
そこで、岩手では何かできないでしょうか。県等が主催する農林水産業の振興の催事、イベントの実績を見ますと、10年続いたものが平成9年から平成18年度までのいわてめぐみフェアだけであり、他は単年や3年ごとにイベントの名称が変わり、定着したイベントと言えないものが多いと言えます。このことからも、多様な食材で高い評価を得ている県産農林水産物を生産者、消費者、食品関連の事業者等が連携してもっと強く発信する機会を創出し、岩手の魅力アップにつなげていくべきと考えますが、県の見解を伺います。
次に、観光振興についてですが、1点目は、インバウンドの拡大であります。
訪日外国人客が全国的に急増しているのとは対照的に、東北6県では伸び悩みが目立ちます。東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故の影響が残るほか、海外では東北の認知度が低いことも背景にあると考えます。かつて東北は北海道を上回っていたものの、平成15年度を境に大きく差が開きました。北海道ブームが台湾で起き、平成17年度にはエバー航空が台湾、新千歳空港を週9往復、中華航空も定期便を6往復運航、さらに国際チャーター便も道内各空港に2、340便就航し、観光客を増大させています。東北でも昨年8月、東北6県と新潟県、仙台市の知事等が台湾を訪問しトップセールスが実施されたところであり、全ての観光資源が北海道を上回る東北の魅力をいかにアピールするか、その行動力が問われます。また、台湾などアジアからの訪日ツアーの主流は4泊5日で、いかにして移動時間を短くして広域観光の商品を創出するかが課題と言われています。ラグビーワールドカップ2019釜石開催、東京2020オリンピック・パラリンピック等を見据えた観光戦略をどう推進していくのか伺います。
2点目は、三つ目の世界遺産登録に向けた取り組みであります。
一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録に向け、4道県が推薦書素案の改訂版を文化庁に提出する予定と聞いております。実現すれば県内の世界遺産は三つとなり、全国最多の奈良県と並ぶ可能性があります。ただ、御所野遺跡の知名度は県内でもまだまだ足りないのが実情です。県議会文化芸術振興議員連盟において、昨年、北海道函館市の登録に向けた取り組みについて調査いたしました。残念ながら昨年の登録推薦は見送られましたが、さらに厳選した改訂版に望みを託したいと思うと同時に、その価値を広めることが肝要と思われます。北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録は県北地域の観光振興においても重要であると考えますが、県は登録に向けた取り組みをどのように進めていくのか伺います。
最後に、災害対応について伺います。
1点目は、危機管理についてであります。
平成28年は日本列島至るところで大災害が発生しました。特に、4月の熊本地震、また、8月に本県に上陸した台風第10号は、気象庁の統計開始以来初めて東北からの上陸で、三陸沿岸に甚大な被害をもたらしました。改めて、被災されました皆様に哀悼の意とお見舞いを申し上げます。
岩泉町では町全体が豪雨被害に見舞われ、河川、道路、電気、水道等インフラがずたずたに寸断され、行政も麻痺状態でありました。その対策に、県はいち早く盛岡広域振興局長を現地災害対策本部長として常駐させ陣頭指揮に当たりましたが、東日本大震災津波で得た教訓を生かしたものだったのか伺います。
また、緊急事態の中で県の災害派遣医療チームを統括する岩手医科大学眞瀬教授らは、役割分担を的確に示し、高齢者の対応に大きな混乱もなく移動できたことは高い評価に値するものと思います。眞瀬教授は、東日本大震災津波で連携の重要性を痛感し、消防、自衛隊、県警察の担当者と年に数回懇談を設けていて、普段の積み重ねが大きな成果をあらわしたと言っております。
一方、これだけ自然災害が多発する今日、防災危機管理監が不在の市町村もあると伺っております。各市町村とも自然災害などの対応において自衛隊との連携が重要と思われますが、市町村と自衛隊との連携体制についてどのようにお考えかお伺いします。
2点目は、災害対応を踏まえた建設業の発展についてであります。
昨年の台風第10号による豪雨では、その全容が明らかになるにつれ、想像を絶する想定外の被害がありました。県からの要請で復旧工事に必要な重機を運んだ建設会社。とっさの判断で大型のトレーラーで現場に向かったものの、現地に入れず引き返し、一回り小さいサイズの重機で再び現場に行き、夜通しの作業、仮眠はトラックの中、まさに応急復旧に当たったのは建設機械や資機材をすぐに手配できる地元の建設業者しかありません。東日本大震災関連事業もある中、優先的に岩泉町の現場で復旧に当たられた事業者には敬意を表したいと思います。
存在感を高める建設業でありますが、課題も多いのが実情です。県の建設業構造実態調査では従業員の高齢化が進んでいることが明らかになっておりますが、東日本大震災津波の復興工事で需要が高まる一方、人材不足を補うため、経験者を再雇用した結果と見られます。復興工事はいずれ終わり、需要が縮小する中でも人材育成や技術の維持、継承を考えなければなりません。地域の建設業が先細りすれば地域の防災力の低下につながり、また、雇用が減ると他の産業にも負の影響が及びます。生き残りはどうあればいいか、災害対応を含め、建設業の持続ある発展をどう捉えているのかお伺いします。
たび重なる災害復旧、復興、県民計画のアクションプランが着実に進展することをお願い申し上げて質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝博議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、10年間の県政運営の評価についてでありますが、知事に就任した平成19年以来、国民所得に対する県民所得の水準の乖離や厳しい雇用環境、人口流出など、岩手が直面する危機を希望に変えていくため、いわて希望創造プラン、いわて県民計画を策定し、本県のすぐれた地域資源を活用した産業振興や、地域の個性や特色を生かした地域振興に取り組んできたところです。その結果、県民所得については国民所得との乖離が縮小し、有効求人倍率の改善が図られるなど、これまでの取り組みの成果があらわれてきているところです。
また、この間、東日本大震災津波に見舞われ、未曾有の被害の中、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を目指す姿とし、地元の底力とさまざまなつながりの力を結集し、県民一丸となって復興に取り組んでまいりました。昨年開催された希望郷いわて国体、希望郷いわて大会においては、その成功を通じ、岩手県民が自信や誇り、そして希望を持つことができました。一方、本県の人口は社会減の状況にあり、雇用の質の向上が重要となるなど、新たな課題も生じています。
今後においては、10年間の取り組みの成果を踏まえ、県政の喫緊の課題である復興とふるさと振興に取り組み、県民一人一人が将来にわたって確かな未来を描くことができる岩手の実現を目指していきます。
次に、三陸沿岸のさらなる展開についてですが、平成29年度は、第3期復興実施計画の初年度として、復興基本計画の三つの原則である安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生に基づく復興事業を引き続き進めるとともに、さらなる展開への連結期間のスタートにもなるよう、参画、交流、連携の三つの視点を重視し、復興事業の総仕上げを視野に復興の先も見据えた地域振興にも取り組んでまいります。
平成30年度には宮古-室蘭間のフェリー航路の開設や三陸鉄道による久慈-盛間の一貫経営が、平成31年度にはラグビーワールドカップ2019の釜石開催が予定されるなど、今後、復興のさらなる展開に向けた好機が訪れます。このようなことから、これらの機会を生かしながら三陸創造プロジェクト等を展開します。すなわち、復興道路など新たな交通ネットワークを活用した産業振興、三陸ジオパークの充実、観光地域づくりを担うDMO機能の整備等を展開することで、長期的な視点にも立ちながら新しい三陸地域の創造を目指してまいります。
次に、スポーツ振興についてでありますが、希望郷いわて国体、希望郷いわて大会における本県選手団のすばらしい活躍は県民に大きな喜びと感動を与えてくれたところであり、両大会を通じて得た成果や教訓などのレガシーを未来に継承し、本県の競技力の向上に生かしていくことは極めて重要であります。このような考えのもと、県においては、現在策定を進めている文化・スポーツ振興戦略において、競技力向上やトップアスリートの育成に重点的に取り組むこととしております。
具体的には、中長期的な視点に立った選手育成や指導者の養成、スポーツ医・科学サポートの充実などを推進しながら、本県の競技力の向上を図り、今後の国体、大会などに向けてもしっかりとした目標を持ちながら選手強化に取り組むとともに、この岩手の地から、全国の舞台やオリンピック、パラリンピック等の国際大会でも活躍するトップアスリートの輩出などを目指していきます。
次に、全国知事会議についてでありますが、全国知事会議の開催は、これまでの復興支援に対する感謝と東日本大震災津波の教訓や復興への着実な歩み、さらには、本県の多様な魅力を全国の知事に伝える絶好の機会です。
被災地で初の開催となることから、会議の開催にあわせ、応援職員と各知事との懇談の場や沿岸部を視察する機会を設けるほか、岩手、宮城、福島被災3県による観光、物産のPRなども計画しており、こうした取り組みにより復興の状況をしっかり発信していきます。
さらに、世界に誇る平泉の文化遺産や伝統芸能、食や文化などの岩手のあふれる魅力に加え、若者が活躍する姿などもアピールしていきます。
また、全国知事会が主催する知事会議の場では、関連する議題の中で、復興に向けた継続した支援を呼びかけるとともに、各知事とともに、地方創生に向けた一層の取り組みを国に対し強く訴えていきます。
次に、ふるさと納税についてでありますが、ふるさと納税が、寄附という経済的利益の無償の供与を前提に、生まれ故郷など応援したい地方団体を支援するという制度であることから、寄附者の気持ちにしっかりと寄り添った対応をしていくことが大切であります。
このような趣旨を踏まえ、県におきましては、多くの方々が県の施策や事業に共感できるよう、昨年11月、ふるさと岩手応援寄付の寄附項目を見直したところです。
また、より一層県の施策や事業への理解と支援拡大を図るため、制度の趣旨を踏まえた節度ある返礼品を送ることとし、平成29年度当初予算案に所要の経費を盛り込んだところです。
このような取り組みにあわせて、引き続き、寄附の呼びかけや寄附金の活用状況の周知等を充実し、本県を応援したいという方々の気持ちにしっかりと応えていきます。
次に、人口減少に対する施策についてでありますが、平成29年度当初予算案は、未来につなげる復興ふるさと振興予算と名づけ、ふるさと振興に重点的に取り組むこととしております。
具体的には、岩手で働くでは、ものづくり分野における高付加価値製品の開発や生産性向上による企業の魅力と雇用の質の向上、農林水産物の輸出拡大を図るためのプロモーション活動の強化とともに、奨学金を活用した大学生等の県内への還流、定着促進に取り組みます。
また、岩手で育てるでは、i-サポの拠点増設による出会いから結婚までの支援の強化や、地域で妊産婦を支える体制の構築を進めることとしています。
さらに、岩手で暮らすでは、建設業における女性技術者のネットワーク構築を初めとする若者、女性の活躍支援のほか、地域における産学官連携による新産業創出や起業を志向する学生向けの実務教育など、ふるさとの未来を担う人づくりを目指す施策を推進することとしており、引き続き人口減少対策に注力していきます。
次に、人口減少の要因についてでありますが、国が三位一体改革を進める中、地方分権の推進や少子高齢化の進行、厳しい財政状況など、地方行財政を取り巻く環境の変化に対応するため、国の指針に基づき、各市町村が平成17年度に集中改革プランを策定し、事務事業の見直しや定員管理の適正化などが進められてきたところです。
また、並行して、地方分権の担い手となる基礎自治体にふさわしい行財政基盤の確立などを目的として市町村合併が行われたこともあり、市町村の新採用が抑制され職員数は減少してきたところです。
合併した市町村においては、旧市町村ごとの地域コミュニティーの活性化を図るなど地域づくりに取り組んでいますが、今後、行政サービス水準の維持、向上や多様化する住民ニーズに対応していくことが求められています。
こうしたことから、県では国に対し、地方の一般財源総額の確保や地方重視の経済財政政策の推進について引き続き求めていくとともに、市町村間の連携や人材の育成に努めるなど、市町村が、これまで以上に地域経済の活性化や人口減少対策に取り組むことができるよう支援していきます。
次に、地域産業の振興についてでありますが、地域の特性と歴史的、文化的な背景のもとに育まれた地域産業は、経済的視点のみならず、魅力と活力あふれる地域社会の維持、発展に貢献するものでもあります。
そのため、地域産業の担い手である企業や関係団体と市町村が一体となって、各地域の強みの掘り起こし、新商品の開発や高付加価値化、販路開拓などに取り組むことが重要であり、県としては、これら産業化の各段階に応じた重層的な支援を行うことによって、地域が目指す産業振興や地域づくりの実現への取り組みをしっかりと支えていきます。
次に、地域おこし協力隊についてでありますが、地域おこし協力隊は、外部の視点、若者の視点といった柔軟な視点によって、地域に根差した活動を展開するなど、地域づくりを進める上で貴重な人材であり、また、活動期間終了後の地域への定着も期待されています。
県では、市町村への制度の周知や県内外の隊員の活動事例の紹介など、制度活用の促進に努めてきたところであり、今年度は18市町村で81名まで拡大してきております。
また、県や沿岸市町村においては、このような地域おこし協力隊の活用に加え、東日本大震災津波の被災地における類似の制度であります復興支援員制度を積極的に活用しているところであります。
今後とも、これらの制度の積極的な活用を促進して、県外から若者を地域に呼び込むとともに、市町村等と連携を図りながら、活動終了後の定住への誘導も視野に入れた取り組みを積極的に進めていきます。
次に、岩手の農業史の継承についてでありますが、本県の農業は、厳しい自然と共生しながら、地域の立地条件や資源などを生かし、英知と努力によって特色のある産地を形成し、受け継がれ、発展してきました。また、農村という生活と生産の場を通じて多彩な文化や人間性が育まれ、豊かな地域社会が築かれてきました。こうした本県の先人が積み上げてきた農業、農村の持つ多面的な機能や根源的な価値をしっかりと受けとめ、若い世代に引き継いでいくことが重要と考えます。
現在、国は、米政策を初め競争力のある農業への改革を進めていますが、本県では、中山間地域などの条件不利地にも十分配慮し、小規模農家、兼業農家も参画した産地づくりや、地域特産品の高付加価値化の取り組みなどにより、農業者の所得向上と農業、農村の活性化に向け、今後とも力強く歩みを進めていきます。
次に、2018年からの米政策への対応についてでありますが、現在、関係機関、団体や県で構成する岩手県農業再生協議会において、米政策の見直しに的確に対応する仕組みの検討を進めており、昨年12月、今後5カ年の水田農業の推進方針の策定や、毎年、各地域において具体的な生産計画を作成することなどを内容とする中間取りまとめを行ったところです。
水田農業の推進方針については、主食用米と転作作物の最適な組み合わせによる水田農業のあり方について、流通業者や担い手農家などからきめ細かに意見を伺いながら、5月をめどに策定することとしています。
各地域の生産計画については、県協議会が算定する市町村別の生産量の目安をもとに、市町村や農協等で構成する地域協議会が作成して、それに沿った作付を進めることとしております。
こうした対応を着実に行うことにより、米政策の見直し後においても、需要に応じた生産や、消費者、実需者に支持される米づくりを進めるとともに、国の助成制度を活用しながら、飼料用米や大豆への転換、野菜、花卉等の高収益作物の生産拡大を促進するなど、農業者の所得向上に力強く取り組んでいきます。
次に、農林水産物の魅力発信についてでありますが、本県の農林水産物は、安全・安心で、全国トップレベルの品質を有し、全国的にも高く評価されています。こうした評価をさらに高め、本県農林水産物の販路の開拓、拡大を図るため、産地の魅力や農林水産物の特徴などを広く発信していくことが重要であります。
このため、県では、量販店でのフェア等の開催や希望郷いわて国体、希望郷いわて大会を初め、市町村や関係団体、民間企業によるさまざまなイベントへの参画などを通じて、生産者みずからが県内外の消費者等に対し、本県農林水産物の魅力を積極的にPRする取り組みを支援してきたところであります。
また、本年8月に開催を予定していますいわてICT農業祭におきましても、先端技術を活用した次世代の農林水産業の姿を実感していただくとともに、高い生産技術に裏打ちされたおいしさや、安全・安心、品質にこだわった本県農林水産物の魅力を広く発信したいと考えており、こうした取り組みを通じて、本県農林水産物のさらなる評価の向上と消費の拡大を図っていきます。
次に、インバウンドの拡大についてですが、昨年の本県の外国人宿泊者数は、11月までで11万9、520人泊と既に過去最高となっていますが、一層の上積みを図る必要があります。
このため、東北各県と連携したトップセールスなどによる世界遺産や国立公園、食などのテーマ性のある周遊ルートの売り込みや海外旅行博への出展、人気の高い海外テレビドラマ、旅番組のロケ誘致など、海外の方々に直接訴求するPRを展開してきました。
今後も、これらの取り組みに加え、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催を好機と捉え、三陸や岩手の多彩な魅力をPRするとともに、外国人観光客の玄関口であり、オリンピック、パラリンピックの開催地である東京都と共同で設置した誘客連携体制によって、東京から東北、そして岩手へ誘引するさまざまな取り組みを展開していきます。
次に、三つ目の世界遺産登録に向けた取り組みについてでありますが、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群については、昨年7月に国の文化審議会から示された課題の解決に向けて、現在、専門家や文化庁との協議を重ねながら、わかりやすい表現で国際的な視点からも理解が得られるように、推薦書案の改訂作業を集中的に行っているところであります。
また、来年度は登録に向けた機運醸成を図るため、新たに本県独自の取り組みとして、県内各地で縄文遺跡群を中心とした世界遺産に関する巡回展示を計画しており、所要の経費を当初予算案に盛り込んだところであります。
縄文遺跡群の世界遺産登録に対しては、遺跡群の持つ普遍的価値の重要性や地域振興に資する県民の大きな期待がありますので、青森県など関係自治体と連携しながら、早期の登録の実現に向けて取り組んでいきます。
次に、台風第10号災害時における現地災害対策本部についてでありますが、今回は、特に岩泉町で甚大な被害を受けたことから、9月2日、岩泉町に盛岡広域振興局長を本部長とする現地災害対策本部を設置し、さまざまな調整や災害応急対策に当たらせたところであります。
現地災害対策本部の設置は今回初めてのことでありますが、災害時における県と市町村との密接な連携の重要性は、東日本大震災津波の経験から得た教訓の一つであり、今後においても、災害の発生状況、発生地域等を勘案の上、必要に応じ、現地災害対策本部を設置し、災害対応に当たっていきます。
次に、市町村と自衛隊との連携体制についてでありますが、自衛隊には、これまで、災害時において人命救助や道路の啓開、人員及び物資の輸送など、さまざまな救援活動を行っていただいており、県や市町村と自衛隊との連携は極めて重要であります。
こうしたことから、県では、自衛隊OBを平成14年から防災危機管理監として配置し、災害時における防災関係機関との連携調整などに当たっているところです。
また、県内7市町においても自衛隊OBを防災危機管理監等として配置しており、県としては、引き続き、防災訓練等を通して、市町村と自衛隊との連携を支援していきます。
次に、災害対応を踏まえた建設業の発展についてでありますが、昨年の台風第10号災害でも、多くの建設企業から迅速な対応や早期の復旧に御尽力をいただいたところであり、地域の安全と安心を守る建設業の重要性、必要性が改めて強く認識されたところであります。
地域の建設業は、災害等の緊急時に即応できる必要不可欠な存在として、また、社会資本の整備や維持管理の担い手として、地域に欠かせない重要な役割を担う産業であります。
このため、県では、復興後を見据えて昨年度策定したいわて建設業振興中期プランに基づいて、建設企業がみずから取り組む経営改善や経営基盤強化の支援、ICT技術の活用による経営効率化の推進を図るとともに、若者、女性が働きやすい職場環境の整備により、新たな担い手の育成、確保を支援するなど、必要な施策を着実に推進していきます。
〇議長(田村誠君) 次に、五日市王君。
〔36番五日市王君登壇〕(拍手)

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