平成29年2月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(五日市王君) 創成いわて、ことし年男の五日市王でございます。
登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員に感謝を申し上げ、知事演述並びに平成29年度予算案等に対し、会派を代表して質問をいたします。
さきの知事演述では、台風第10号及び東日本大震災津波からの復興を県政の最優先課題に掲げ、台風第10号からの一日も早い復旧、復興と東日本大震災津波の復興計画である第3期復興実施計画の着実な推進を掲げております。
改めまして、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。
東日本大震災津波からの復興基本計画及びマニフェストサイクルに合わせたいわて県民計画の最終年度は、ともに平成30年度であり、震災の影響で任期が延長されたことを除けば、知事の任期と同じくあと2年となります。そういう意味では、知事にとって平成29年度予算は、平成30年度までの2カ年を見据えた知事人生の総仕上げの予算編成であったかと思います。
これまで知事としての10年間の所感と、復興及びいわて県民計画の完遂に向けた今後2年間の意気込みをお聞かせ願います。
次に、東日本大震災津波からの復興基本計画では、平成29年度から平成30年度の2カ年をさらなる展開への連結期間と位置づけ、第3期復興実施計画の策定が進められております。第2期実施計画の事業に対する進捗率は、80%以上の進捗率が80.9%、実質的おくれが8.1%となっておりますが、今後2カ年での見通しについてお伺いいたします。
また、平成31年度以降にずれ込む事業も多数あると思いますが、復興基本計画の延長も考えられるのか、10カ年計画を策定している国や被災市町村との整合性はどのようにしていくお考えかをお伺いいたします。
台風第10号災害からの復旧についてお尋ねいたします。
昨年8月に観測史上初めて太平洋側から襲来した台風第10号災害からの復旧は、国による災害査定も終了し、いよいよ本格復旧へと工事が進んでいくものと思います。県においても、今定例会の補正予算でさまざまな対応をしていただきますことに感謝を申し上げます。
そこで、まず、災害査定の結果についてお伺いいたします。今回の公共事業に係る災害箇所のうち、国の査定で認められた箇所、認められなかった箇所をどのように捉えているのか、また、査定で認められなかった箇所や査定対象とならなかった箇所について、県の対応についてお伺いいたします。
次に、台風第10号による被害の特徴として、河川の氾濫による孤立集落の発生や商工業地域への浸水などが挙げられますが、これらの被害を二度と繰り返さないために、河川改修や道路ネットワークの整備がぜひとも必要と思いますが、これらの見通しについてもお伺いいたします。
次に、災害復旧事業の地元発注についてお伺いいたします。
東日本大震災津波からの復興途上において、台風第10号による被害をこうむったことから、復旧に携わる建設業関連の発注が増大しております。地元の工事はなるべく地元業者でとの思いがある一方、地元業者でとの縛りが強過ぎると、進捗におくれが生じることも懸念されております。
災害復旧事業の地元発注をふやすための方策と、進捗におくれが出ないための方策を、いかにバランスをとりながら地元還元を図っていくかが課題となっておりますが、県の認識をお伺いいたします。
次に、いわて国際戦略ビジョンについてお伺いいたします。
県では、海外展開に戦略的に取り組むため、今般、いわて国際戦略ビジョン案を示し、農林水産物や伝統工芸等の海外での販路拡大や外国人観光客誘客の拡大等の取り組みを戦略的に行うこととしております。
我が国では、人口減少が始まり国内市場が縮小していくことから、人口増や経済成長が見込まれるアジア地域市場への積極的な参入に大きな期待を寄せているところでございます。
そこで、まず、海外市場への展開の推進についてお伺いいたします。
昨年の国内の農林水産物、食品の輸出額は前年比0.7%増の7、503億円と過去最高となりましたが、政府が掲げる2019年1兆円にはほど遠い状況にあります。これらをいわて国際戦略ビジョンで掲げた重点品目別で見ると、米、牛肉、日本酒は着実に輸出額をふやしている一方、リンゴに関しては、米国産に押され1%の減となっております。一方、県内の農林水産物、食品の輸出状況は、東日本大震災津波後落ち込んだものの、現在では22億円前後と回復傾向にあります。
いわて県民計画のアクションプランには、これら輸出の目標値を設定してありますが、今回示されているビジョンには、具体的な目標値が設定されておりません。戦略であれば重点品目ごとにきちんと目標値を設定し、必要な予算措置を講ずるべきと思いますが、いかがでしょうか。
また、輸出好調の米や牛肉などは、定着市場への輸出拡大がメーンで、新たな輸出先の拡大や輸出に踏み出す産地の拡大が課題と認識しておりますが、今後の輸出拡大に向けた産地拡大のための戦略並びに生産者への支援策は、どのように考えているのかお伺いいたします。
外国人観光客の誘客の拡大についてお伺いいたします。
日本全体がインバウンド需要に沸く中、昨年1月から11月までの東北への外国人延べ宿泊数は59万6、430人泊と、前年に比べ20.7%の増ではありますが、全体から見れば、東北地方は、いわばひとり負けの状況が続いております。
本県の宿泊数は前年比11.6%増の10万7、450人泊ですが、伸び率で言うと東北で第5位という結果でありました。東北では官民挙げてさまざまな対策を講じており、また、県においても、平成29年度予算にさまざまな対策が盛り込まれておりますが、課題をどのように捉えているのか、現状認識と対策についてお伺いいたします。
昨年の予算特別委員会総括質疑において、インバウンドや交流人口拡大のため、ワーキングホリデー制度を積極的に活用するべきとの指摘をいたしましたが、ビジョンにおいては、留学生等とのネットワークづくりに、このワーキングホリデーが大いに活用されるとのことであります。
私自身も、19歳のときにワーキングホリデービザを取得し、オーストラリアへの滞在経験があることから、今後、インバウンドや交流促進が図られ、ひいては県内移住者が増加することを期待するものでございます。
総務省においても、昨年、都市部の若者が、長期休暇などを利用して一定期間地域に滞在し、働いて収入を得ながら地域の人たちとの交流をしてもらう、国内版ワーキングホリデーであるふるさとワーキングホリデー事業を実施し、北海道、福島県など8道県が採択団体に決定いたしました。この8道県は、合計で約1、100人の受け入れを行う予定とのことであり、本県においてもこの制度を積極的に活用すべきと思いますが、見解をお伺いいたします。
岩手県産品の輸出拡大、インバウンド誘客拡大、若者交流による移住、定住の促進など、海外戦略は必要不可欠ではございますが、同時に、足元をしっかりと見詰めることが大事であると思います。
我が国の農林水産物の輸出額は過去最高となった一方、外国からの輸入額は8兆5、440億円と輸出額の11倍を占めており、いまだ食料自給率は39%であること、日本人相手に愛され、支持されている場所でなければインバウンド誘客もうまくいかないこと、人は何らかの御縁で訪れた場所以外にはめったに移住、定住しないこと、これらが厳しい現実でございます。
このことをしっかりと肝に銘じ、内需底上げにも引き続き全力で取り組むことが必要と思いますが、知事の見解をお伺いいたします。
県北・沿岸振興について幾つかお伺いいたします。
平成29年度の予算編成において、予算規則に基づく予算編成方針の留意事項の中に、県北・沿岸圏域の地域資源を活用した産業振興や広域観光を通じた交流人口の拡大など、地域の振興を図る取り組みの推進に十分留意することとされてございます。
県北・沿岸振興本部を立ち上げ11年が経過いたしましたが、予算編成に当たりましては、毎年度、各部局とも特段の御配慮を賜っておりますことに、衷心より感謝と御礼を申し上げます。
知事演述の中にも、県北圏域においては、食、漆、アパレルなどすぐれた地域資源を生かした産業振興や交流人口の拡大に取り組みますと強調され、力強い思いをいたしているところでございます。
そこで、まず、平成29年度の県北・沿岸振興の位置づけと、重点的に取り組む課題をお聞かせ願います。
次に、県北・沿岸振興策について具体的に幾つか質問をいたします。
初めに、漆産業の振興についてお伺いいたします。
国内の漆需要は年間約50トンでありますが、ほとんどが中国産で、国産漆は約2%の1トン程度であります。この国産漆のおよそ7割が県北浄法寺で生産されており、国内シェアは全国第1位であります。しかしながら、漆かき職人の高齢化や後継者不足などにより、これまでも一定の需要はあったものの、産業としては伸び悩んでいるのが現状であります。
このような中、県では、新年度、新たにいわての漆産業新時代開拓事業を立ち上げ、品質、全国シェアともに日本一である漆産業の支援に積極的に乗り出していただいたことに感謝を申し上げます。まずは、この事業内容と今後の取り組み方針についてお示し願います。
文化庁は、平成27年2月に、国宝、重要文化財建造物の保存修理における漆の使用方針について、原則として国産漆を使用すること、平成30年度までに上塗り、中塗り、下地全てを国産とするよう通知を出しました。このことにより、今後、国産漆の需要は一気に高まってくることが予想されますが、この需要に応えるため、原木の確保も大きな課題となっております。
福島県では、福島県森林環境税を活用し、県主体で漆かきの養成研修や市町村交付事業を通じた保全事業など、漆振興に力を入れているとお聞きしております。この際、いわての森林づくり県民税の使途を漆産業や木炭産業に拡大し、県民挙げて日本一産業をバックアップしていくことが必要と考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
御案内のとおり、漆を初め、本県には全国シェア第1位、つまり日本一のシェアを誇る農林水産物が幾つかございます。生漆、木炭、ホップ、日本短角種、養殖ワカメ類、アワビ類であります。これらは、生産量は多いとは言えませんが、岩手の誇りであり、岩手の宝であります。
しかしながら、特にも生漆や木炭の生産現場は、高齢化や後継者不足などにより、もがき苦しんでいるのが現状でございます。昨年の決算特別委員会の部局審査において、この現状を訴えるとともに、これらの主生産地は県北・沿岸地域であることから、県北・沿岸振興の観点からも、これら日本一の農林水産物を応援するプロジェクトを立ち上げ、生産からわざの伝承、販売など、全庁挙げて積極的に支援するべきとの提案をさせていただきましたが、知事の所感をお聞かせ願います。
次に、産業振興策として、企業誘致についてお伺いいたします。
県央・県南地域に比べ、県北・沿岸地域への企業誘致は苦戦しているのが現状であります。平成27年度実績では、県央、県南がともに6件、県北、沿岸がともに1件の合計14件となっており、今年度も同様の傾向にあるのが実情でございます。新年度は、県北広域産業力強化促進事業費補助が新規に盛り込まれ、誘致企業、地場企業の別を問わず設備投資等への支援強化策を創設したことは評価いたしますが、今後の具体的な取り組み方針についてお伺いいたします。
産業振興策の2点目として、アパレル産業振興についてお伺いいたします。
二戸、久慈両地域には日本を代表する技術を有する縫製業が集積し、関連業者間では北いわてアパレル産業振興会を立ち上げ、学生ファッションショーの開催や首都圏での商談など、県の支援を得ながら縫製業振興に向け鋭意取り組みを進めているところであります。また、近年では、知事も身につけておられますいわてまるごと売込み隊ユニフォームや農業青年ユニフォームの製作など、地元でつくられた製品を地元の人が着る地産地着プロジェクトも進められており、この展開拡大が大変重要と考えております。県内企業等でも制服や作業服を着用する事業所等は相当数あると思います。これらの企業等へはできるだけ地産地着を進めるよう促していただきたいと思いますし、まずは範を示す意味でも、岩手県関係者である県議会議員、県庁職員、警察、教員など、スーツや制服の更新の際には岩手県産にするよう啓発を行うべきと思いますが、知事の見解をお伺いいたします。
なお、本日着用の私のスーツを初め、冬物のスーツは全て紛れもなく岩手県産の地産地着でございますので御報告申し上げます。
県北地域の米政策についてお伺いいたします。
県では、昨年、オリジナルブランド米である銀河のしずくと金色の風を相次いでデビューさせ、市場や消費者などから高い評価をいただいているところであります。金色の風は、金色好きのトランプ大統領にもぜひお召し上がりいただきたいと思いますが、それはさておき、これらの品種は県南・県央地区で作付されており、県北地区はいわてっこが主流であります。先般、私の地元の二戸市議会議員との懇談の場や北部地区町村議会議長会との懇談の場において、県北地域へも作付できないのかという御意見を多数頂戴したところでございますが、オリジナルブランド米の今後の展開や県北地域の米政策の方向性についてどのような展望をお持ちなのかお伺いいたします。
最後に、地域医療についてお伺いいたします。
昨年策定された岩手県地域医療構想では、平成37年における地域の医療需要を見た場合、県内多くの二次医療圏で回復期の病床機能不足が浮き彫りとなり、今後の大きな課題となっております。現在、県内で回復期のリハビリテーションを行っている医療機関は、二次医療圏ごとに盛岡8施設、岩手中部2施設、胆江、両磐、宮古、久慈それぞれ1施設となっており、二戸、釜石、気仙の3医療圏にはございません。このため、私の住む二戸圏域では、回復期のリハビリテーションを受ける患者は盛岡地域や八戸地域への入院や通院を余儀なくされ、本人や家族の負担が重くのしかかっているのが現状であります。
このような中、一部介護施設による訪問リハビリテーションが行われておりますが、一日も早く回復期のリハビリテーション施設の整備を望むものであります。二戸医療圏を含めた回復期リハビリテーション病床空白圏域への対策についてお伺いいたします。
先般、環境福祉委員会において、私の選挙区でもあります一戸町の県立一戸病院の視察調査を行いました。病院内の空き病床を活用し、特別養護老人ホームや有料老人ホーム等の介護事業を行っているものであります。一戸病院では、医師確保が困難な状況にあることや、今後も入院患者の増加が見込めないことなどから、本年1月から1病棟58床が休止となっております。こうした空き病棟をリハビリテーション病床に転換することも一つの方策と思いますが、このことも踏まえ、今後、地域医療構想で示されたあるべき方向性に移行していくためのスケジュールはどのようになっているのかお示し願います。
以上で質問を終わりますが、去る2月19日、二戸市民文士劇が行われました。ことしの演目は、みちのく忠臣蔵〜相馬大作物語でございました。相馬大作は、南部藩忠義のため、裏切り者である津軽氏の暗殺を企てますが、密告により失敗、処刑されてしまいます。が、その志は後の吉田松陰に影響を与え、明治維新につながっていくことを考えれば、歴史的に大きな意味があったと思います。秀吉にけんかを売った九戸政実、忠義のために命をかけた相馬大作、この2人の南部藩士の気骨を受け継ぎ、県勢発展に向け努力することをお誓いし、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 五日市王議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、これまでの10年間の所感と今後2年間の意気込みについてでありますが、知事に就任後、人口の社会減拡大を初めとする大都市圏と地方の格差の深刻化などの危機を希望に変えるべく、本県のすぐれた地域資源を活用した産業振興や、地域の個性や特色を生かした地域振興に全力で取り組んでまいりました。また、東日本大震災津波からの復興を最優先に、被災者一人一人に寄り添った人間本位の復興を目指し、県民一丸となった復興を推進してきました。このような取り組みを土台に、昨年開催した希望郷いわて国体、希望郷いわて大会においては、その成功を通じ、岩手県民が自信や誇り、そして希望を持つことができたと思います。
平成29年度当初予算案の未来につなげる復興ふるさと振興予算は、県政の喫緊の課題である東日本大震災津波と台風第10号災害からの復興と、かねてからの県政の重要課題である人口減少対策に重点的に取り組むことを改めて掲げたものであり、今後2年間、これらの取り組みをしっかり進めることにより、県民一人一人が将来にわたって確かな未来を描くことができる岩手の実現を目指していきます。
次に、復興に向けた今後の見通しについてでありますが、社会資本の復旧、復興事業の動きや今後の見通しに関する社会資本の復旧・復興ロードマップに示されているとおり、主要8分野のうち、平成30年度までに復興まちづくり、漁港、教育、医療の4分野を初めそのほとんどが完成する見通しでありますが、大規模な水門などについては平成31年度以降の完成が見込まれています。これまで、市町村を初めとする関係者との調整、施工条件の変化や台風等やむを得ない事情によっておくれが生じた事業もありますが、その原因に応じて適切に対応してきたところであり、今後においても、事業の着実な実施に向け、市町村、県、国が一体となって取り組んでいきます。
次に、復興基本計画の考え方についてでありますが、先ほど申し上げたとおり、一部の社会資本等については平成31年度以降の完成が見込まれています。平成31年度以降の復興の推進に当たっては、国が平成32年度までと位置づける復興・創生期間と連動し、市町村における復興の取り組みの進捗との整合性に十分に配慮する必要がありますことから、復興に関する県の計画については、県民的な議論を通じて策定していきたいと思います。
次に、災害査定の状況についてでありますが、河川、道路等の公共土木施設の災害査定については、県及び市町村合わせて1、891件が査定決定されたところですが、復旧効果が小さいなどの理由により、査定で認められなかった箇所が4件となっています。また、農地や林道等の災害査定については、県及び市町村合わせて、申請した672件全ての箇所で認められたところです。査定で認められなかった箇所や被害額が国の採択基準に満たなかった箇所については、県単独の災害復旧事業等により対策を講じていきます。
次に、台風災害への対応策についてでありますが、今回の台風第10号により、多くの家屋や事業所等で浸水被害があった久慈川や小本川などにおいては、河川の拡幅や築堤等による河川改修を3年から5年の間で行い、再度の浸水被害を防止することとしております。あわせて、住民の円滑かつ迅速な避難を促すため、今後、順次、水位周知河川の指定やタイムラインの導入等のソフト対策にも取り組んでまいります。
次に、災害復旧工事の地元発注についてでありますが、公共土木施設や農地及び林道等の査定決定額は、県及び市町村合わせて2、563カ所で555億円余りにも及んだところであり、早期の災害復旧を図る上では被災地域の企業のみでは難しいと考えられることから、広域で対応することも必要であると認識しております。同時に、地域に密着した建設企業の地域精通度や調整力を活用することが効果的であると考えておりますことから、地元建設企業の参入にも可能な限り配慮した発注に努めていきます。
次に、いわて国際戦略ビジョンの目標設定についてでありますが、現在策定中の本ビジョンは、いわて県民計画第3期アクションプランの推進やその先のあるべき姿の実現に向け、県として戦略的に取り組む海外展開に係る関連施策の基本方針を定めようとするものであり、当面は、アクションプランの農林水産物の輸出額の目標値である平成30年度27億円の達成を目指しているところです。
農林水産物の輸出額は、東日本大震災津波前の平成22年は16億8、000万円でしたが、東日本大震災津波の影響で平成23年は5億5、200万円まで減少しました。しかし、その後回復し、平成26年は19億3、000万円、平成27年は22億5、800万円となっております。県では、引き続き、海外での取扱店舗の拡大に向け、商談会の開催や、輸出コーディネーターの活用による新規取引先の開拓を図りながら、輸出額の目標達成に向けて取り組んでいきます。
次に、輸出拡大に向けた戦略と生産者への支援策についてでありますが、県では、これまで、関係団体、企業とで構成するいわて農林水産物輸出促進協議会を中心に農林水産物の輸出拡大に取り組んでおり、平成27年の輸出額は前年対比16%増の22億5、800万円となるなど、順調に推移しています。
一方、農林水産物の輸出に当たっては、輸出手続が煩雑なことや、海外での販路開拓が難しいこと、一定の取扱量が求められることから、輸出に当たってのさまざまなノウハウを習得し、取引先との緊密な関係を構築することが必要です。このため、県では、輸出手続等の研修会や海外バイヤーを招聘しての産地商談会を引き続き開催するほか、新たに複数の事業者によるパッケージ型輸出の導入に取り組むこととしており、今後とも、輸出に意欲的に取り組もうとする生産者や事業者の海外への販路拡大を積極的に支援していきます。
次に、外国人観光客の誘客に向けた課題と対策についてでありますが、外国人観光客の誘致を拡大するためには、東北各県と連携して効果的なプロモーションを展開することにより、東北広域と岩手のブランド構築や、個人旅行者も見据えての受け入れ態勢の充実が課題であると考えます。このため、昨年8月には台湾において東北各県の知事等による東北トップセールスを行い、本県や東北ならではの自然や祭り、世界遺産、食などの魅力をPRしたほか、東北の観光の魅力を紹介する動画の海外向け発信、台湾のテレビドラマのロケ誘致、各国のキーパーソンの招聘などによるプロモーションの展開や、県内の宿泊、観光施設への無料公衆無線LAN、多言語表示等の整備支援による受け入れ態勢の充実に取り組んできたところであります。
今後においても、ラグビーワールドカップ2019や東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、今年度中に策定するいわて国際戦略ビジョンに基づき、本県の誇る日本酒や伝統工芸品、農林水産物を組み込んだ旅行商品の造成、販売を促進し、岩手を丸ごと売り込んでいくとともに、二次交通を初め受け入れ態勢の一層の拡充に取り組み、東北、そして岩手へ、さらには県北・沿岸地域に至るまでの広いエリアへの周遊の促進など、外国人観光客の誘客拡大を図っていきます。
次に、ふるさとワーキングホリデー事業の活用についてでありますが、本事業は、都市部の若者などが、地域での仕事や田舎暮らし、地域住民との交流を体験することにより、将来的な地方移住の掘り起しが期待されるものであります。一方で、数週間から1カ月程度の若者などの受け入れに当たっては、受け入れ先の企業等において労働契約の締結が必要であり、受け入れ態勢の構築などの課題もあると考えております。
県では、これまで、若者を含めた移住の推進や岩手ファンの拡大を図るため、市町村と連携しながら地域の仕事や暮らしの魅力を体験してもらうための短期移住体験ツアーを実施しているほか、産学官が連携した本県企業でのインターンシップの取り組みを強化しているところであります。
今後においても、このような若者の移住や交流、U・Iターンの促進を図るための取り組みを積極的に展開するとともに、ふるさとワーキングホリデー事業の先行事例の状況を調査し、市町村、関係機関、企業等の意向を伺いながら、その導入も含めて活用を検討していきます。
次に、内需底上げについてでありますが、国際戦略ビジョンの関連施策については、農林水産業、食産業、地場産業、観光産業など幅広い分野にわたっており、その推進に当たっては、世界と直接結びつく世界の中の岩手の視点に加え、足元の取り組みとして、地域資源の発掘、磨き上げや高付加価値化、ブランド化を目指すことが重要であります。このような取り組みは、国内需要の掘り起こしとともに地域経済への好循環にもつながることからふるさと振興総合戦略にも反映しており、来年度のふるさと振興関連施策である県オリジナル水稲新品種の知名度向上や地域のブランド果物の販路拡大、ワイン産業を核とした中山間地域等の活性化、三陸地域への誘客促進などにも織り込んでいます。
次に、県北・沿岸振興の位置づけと課題についてでありますが、これまで、県北・沿岸の発展なくして岩手の発展はあり得ないという基本的な考えのもと、県北・沿岸振興本部を中心として全庁挙げて県北・沿岸振興に取り組んできており、平成29年度当初予算案の編成に当たっても、一層の取り組みの強化を図るよう指示してきたところであります。
県北・沿岸圏域においては、復興需要もあり、1人当たりの市町村民所得の地域間格差については縮小してきているものの、依然として県平均を上回る人口減少が続いており、若者の地元定着に向けた産業振興や人材の育成、確保の取り組みのほか、食や漆など、すぐれた地域資源を生かした体験交流型観光の受け入れ態勢の強化による交流人口の拡大などを重点的に進めていくことが必要と考えております。
このような認識のもと、県北・沿岸振興に当たっては、これまで以上に、市町村を初め関係団体、企業等と連携の上、部局横断的な取り組みを全力で進めていきます。
次に、漆産業の振興についてでありますが、これまで、国宝や重要文化財の修繕などで国産漆の需要が高まっていることを背景として、国内随一の産地である二戸市などにおいて漆の生産拡大や漆かき職人の育成などの取り組みが進められてきています。
このような状況を踏まえ、県では漆生産の一層の拡大を図るとともに、いわての漆産業新時代開拓事業において、漆ゆかりの市町村や団体による体制整備を図り、漆生産の産業化や、漆器を初めとする漆製品の新たな展開や高付加価値化などに取り組むとともに、シンポジウムの開催等を通じた漆文化の魅力発信などを進め、生漆の生産から漆製品の製造販売まで一貫して対応する国内漆関連産業の一大産地形成に向け取り組んでいきます。
次に、いわての森林づくり県民税の使途についてでありますが、いわての森林づくり県民税は、本県の豊かな森林環境を次の世代に良好な状態で引き継いでいくため、県民みんなで支える仕組みとして平成18年度に創設したものであり、その使途は、森林環境保全に関する施策に要する費用に充てるものとしているところです。このため、現行制度では、水源の涵養などの公益的機能の高い森林へ誘導する間伐や、県民理解の醸成を図るための地域住民活動などに支援しているところであります。したがいまして、漆産業や木炭産業等の施策は森林づくり県民税の活用の対象となっておりませんが、この県民税のあり方については、今後、外部有識者等で構成する事業評価委員会、県民の皆様や県議会の御意見などを参考にしながら検討していきます。
次に、農林水産物応援プロジェクトの設置についてでありますが、本県が日本一の生産量を誇る生漆や短角牛、ワカメなどの農林水産物は県北・沿岸地域における重要な品目であり、引き続き、生産量の確保、拡大や高付加価値化、販路の拡大を進めていくことが重要であります。
このため、県では、漆資源の確保に向けた苗木の植栽や食のプロフェッショナルチームアドバイザーによるワカメ等の海産物を活用した魅力ある商品づくりを支援するとともに、短角牛の販路開拓、拡大に向けて産地見学会や商談会の開催などに取り組んできたところです。
今後におきましても、市町村を初め関係団体等と連携し、県の総力を挙げて県北・沿岸地域の農林水産業の振興に取り組んでいきます。
次に、県北・沿岸地域への企業誘致についてでありますが、県では、地域資源を生かした産業の集積と高度化を推進してきたところであり、震災後は、道路や港湾などのインフラ整備の進展を生かし、いわゆる津波補助金の活用等も提案しながら企業誘致などに努めた結果、食品や物流関連など、県北・沿岸地域に38件の新増設があったところです。今後、さらなる産業集積を進めていく上では、地元企業の生産性や技術力の向上といった地域産業力の強化が重要となってきますことから、今般、市町村との協調による新たな補助事業について当初予算案に盛り込んだところであり、また、従前の企業立地補助制度においてもさらなる要件緩和等を行うこととし、これらを活用して、引き続き、市町村等と連携して地域特性を生かした一層の産業の集積と高度化を推進していきます。
次に、アパレル産業振興についてでありますが、本県のアパレル産業は、県北地域を中心として、定評ある繊細な仕上げやすぐれた縫製技術を有する国内屈指の技術力の集積が認められてきているところであり、その優位性を広く認知してもらうとともに、岩手ならではの取り組みを進めていくため、本県と連携協定を締結している学校法人文化学園の協力を得て各種ユニフォームを製作してきたところであります。特に農業青年ユニフォームは、1月に完成披露発表会を開催し若手農業者等に紹介したところであり、本格的な受注と発売に向けた準備を進めています。また、北いわて学生デザインファッションショーや県北地域のオリジナル製品カタログの作成を通じて県北地域の縫製事業者を県内外に広く周知しているところであり、今後においてもこのような取り組みを進めていきます。
次に、オリジナルブランド米の今後の展開と方向性についてでありますが、全国の米産地から食味レベルの高い新品種が次々とデビューする中、金色の風と銀河のしずくについては、全国トップクラスの評価をかち取り、ブランドを確立することが重要であります。
このため、いわてオリジナル品種ブランド化戦略では、作付農家や栽培圃場の選定基準、栽培マニュアルや品質目標を厳守し、米の食味ランキングで特A評価を獲得し続けることとしております。
県北地域に向けては、消費者からの需要が高いいわてっこの生産性や食味の向上に加え、モチ米のふ系糯234号の作付拡大などに取り組んでおりますほか、現在、県農業研究センターにおいて県北地域に適した主食用品種の調査を進めているところでありまして、今後とも地域特性を生かした米づくりの推進に取り組んでいきます。
次に、回復期の病床の確保についてでありますが、今後の高齢化の進展等に伴う医療需要の変化に対応するため、急性期や回復期の医療から在宅医療に至るまで、切れ目のない良質な医療提供体制の構築が求められていることから、県では、昨年3月に将来の目指すべき医療提供体制を定める地域医療構想を策定したところであります。その推進に当たっては、回復期リハビリテーションを初めとする回復期機能の病床の整備などの課題を踏まえ、病床機能の分化と連携、医療従事者の確保等に取り組む必要があります。
県では、医療機関が回復期等の地域で不足する病床機能への転換に取り組む場合に地域医療介護総合確保基金を活用した補助により支援を行うなど、医療需要の変化に対応した医療提供体制の確保に努めてまいります。
次に、地域医療構想に基づく取り組みの進め方についてでありますが、限られた医療資源のもとで、持続的かつ効率的な医療提供体制を整備していくためには、構想区域ごとに医療関係者や介護関係者、市町村等を構成員として設置した地域医療構想調整会議の場において協議を行いながら取り組むことが必要です。平成28年度においては、各構想区域における協議を開始し、現状や目指すべき姿について認識の共有を図っているところであり、平成29年度以降、地域の実情を踏まえて構想区域における課題の抽出や医療機関の役割分担などについて協議し、地域における必要な医療提供体制の構築に取り組んでいきます。
失礼いたしました。
台風災害への対応策の項で、道路ネットワークの整備については、被災した箇所の早期復旧を図るとともに、異常気象時においても救援活動等が可能な災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築を目指し、緊急輸送道路であります国道281号や国道455号などにおいて道路改良や防災対策を行っていきます。
〇議長(田村誠君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後4時37分 散 会

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