平成28年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇2番(臼澤勉君) 無所属の臼澤勉でございます。
このたびは、一般質問の機会をいただきました先輩、同僚議員の皆様方に感謝を申し上げます。
まずもって、熊本地震で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
私は、昨年の県議会議員選挙において、選挙区内の多くの皆様方の御支援をいただき、県議会議員として県政に携わることになりました。人口減少社会を迎え、内外ともに、これまで経験したことのない大変大きな変化が予測される中、未来志向の県土づくりを進める極めて重要な時期であると認識しております。
25年前に抱いたふるさと岩手のために身をささげる志は何も変わりません。引き続き、県勢発展のために全力を尽くしてまいる所存であります。
さて、我が国と世界の動きは、依然として潜在成長力を下回る中、イギリスのEU離脱により世界経済への影響が極めて憂慮されるほか、紛争やテロ、難民の流れが世界の経済環境を複雑にしており、人類相互の協調と恒久平和が強く求められております。
国内においては、高齢社会、人口減少社会を迎え、構造改革と東京一極集中の是正、対流促進型の国土形成、防災、減災を踏まえた国土強靭化の一層の促進が課題となっております。
本県においては、これまで整備してきた社会資本を活用し、生産性の高い産業振興に取り組むほか、東日本大震災津波からの本格復興の完遂とILC誘致により国際的な知の拠点形成に向け、各種施策を展開しているところであります。しかし、本県の所得水準は依然として全国の中でも低位にあるほか、若者を中心とした人口が流出し、出生率の低下と相まって人口減少が進んでおり、東京一極集中などの課題は解消されていないところであります。
岩手ならではの幸福度、満足度を高め、県政運営を進める観点から順次質問いたしますので、前向きで積極的な答弁をお願いいたします。
初めに、国土利用と社会資本の維持管理についてお伺いいたします。
国において大都市と地方の不均衡を是正するために、全国総合開発計画や21世紀の国土のグランドデザインを策定し、国土の均衡ある発展を目指した開発が進められてきたところでありますが、知事はこれまでの国土開発をどう総括されているのか、まず初めにお伺いいたします。
あわせて、人口減少に立ち向かうための岩手県ふるさと振興総合戦略を策定いたしましたが、どのような哲学と理念で、岩手の未来を見据えた国土開発やふるさと振興を進めるお考えか、基本政策は何かお伺いいたします。
次に、土地利用についてお伺いいたします。
従来の人口増加社会においては、都市計画法や農業振興地域の整備に関する法律等の土地規制による抑制的なコントロールを通じて適正な土地利用が担保されてきました。一方、人口減少社会においては、都市郊外や近郊農村における市街地化が今後大きく進展するとは考えがたく、農業従事者の高齢化や農業生産の効率化から、保全すべき農用地の面積は減少することが見込まれます。
人口減少に伴うコンパクト化が必要なことは理解できます。一方、人口減少で生み出された空間を公園緑地の拡充や公共施設のゆとりに充てるなど、過度に人口密度を高めるよりも、既存市街地や集落拠点を中心に人口密度を下げ、空間的なゆとりの確保を優先する視点も必要と考えます。留意すべきは、安全な居住、活動空間の確保と、所有から利用へ土地利用施策を誘導させ、地域の活性化と生産性の向上の観点が重要であります。
そこでお伺いします。人口減少局面に入って初めての国土利用計画岩手県計画が策定されますが、どのような基本方針で将来を見据えた県土利用を進めるお考えか、基本政策は何かお伺いいたします。
あわせて、人口増が想定される地域においては、地方版総合戦略に位置づけられた開発計画に基づき、市街化区域の拡大や市街化調整区域への移住、定住、雇用の場の確保に向けた環境整備が図られるよう、地域の実情に合った総合的な視点から都市計画制度の柔軟な対応も必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
次に、社会資本の維持管理計画についてお伺いいたします。
高度成長期以降に急速に整備してきた道路や河川等の老朽化が進み、増加する維持管理費にいかに対応するかが大きな課題であります。
平成28年に策定された岩手県公共施設等総合管理計画によりますと、産業振興にも大きくつながる公共インフラである橋梁は、例えば、矢巾町と盛岡市にかかる徳田橋など、施設の約4分の1が建設後50年以上を経過しております。修繕、更新に係る経費は、今後30年間で約1兆5、112億円、年平均で約504億円が必要になると試算されております。
そこでお伺いいたします。増大する老朽化社会資本に対し、維持管理に係るコスト縮減や財政負担の平準化にどのように取り組まれるのか、民間活力の導入を含め、具体的な対応方針と戦略をどう考えているのかお伺いいたします。
一方、県が保有する建物等の公共施設のうち、建設後50年以上経過する施設は約3%にとどまっておりますが、30年後には施設の約4分の3に増加することが見込まれます。特にも、県庁舎は昭和40年に建設されて以降、既に50年以上が経過しております。県庁舎の老朽化、狭隘化のほか、公用車の駐車場の分散化など効率的な行政運営の面でも課題が見られます。
県民への行政サービスの向上と効率的な行政運営、地震災害発生時における防災拠点施設としての適切な機能整備が喫緊の課題であります。
岩手医科大学の移転を機会に、今こそ、県庁舎とこの周辺の未来構想図を検討すべきと思いますが、現在の県庁舎の修繕計画の調査検討状況についてお伺いいたします。
次に、財源確保対策についてお伺いいたします。
本県財政は、復旧、復興に必要な多額の財源に加え、社会保障経費の自然増や県債償還がピークに達するなど、中長期的に自由度が極めて低い硬直的な財政状況にあります。今後、地方創生、人口減少対策を初め、国土強靭化のための防災、減災事業、教育、医療、高齢者対策等の行政サービスを十分に担えるよう、一般財源総額を確保すべきであります。
これまで、県は、給与関係経費や投資的経費など懸命な歳出削減に努め、社会保障関係費の増嵩分を吸収してきましたが、限界に近づいております。
産業振興とあわせ、いわて森林づくり県民税のように新たな税制の調査研究も必要と考えますが、知事は安定的な財政運営に必要な一般財源をどう確保するお考えかお伺いいたします。
次に、総合産業政策についてお伺いいたします。
歴史を振り返ると、明治14年、当時の政府は、産業振興の重要性と財政節減の必要性から、大隈重信、伊藤博文の建議を契機に、産業を所管する役所として農商務省を設置いたしました。しかし、第一次世界大戦後、農業、工業のそれぞれの専門性が高まり、大正14年、農商務省を農林省と商工省に分割し、今に至る歴史があります。
私は、県民所得の底上げの視点と産業の生産性の向上の視点から、各部局間の産業政策の調整や県民所得の調査等を所掌し、総合産業政策を統括する組織が必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
また、県は、これまで、岩手県産業成長戦略構想や新・科学技術による地域イノベーション指針を策定し産業の育成を図ってきましたが、これからの成長産業をどのように捉え、どの分野を重点的に推進するお考えか、あわせてお伺いいたします。
次に、国際戦略についてお伺いいたします。
私は、国内市場が縮小する中、農林水産物を含む県産品の販路拡大や、観光客の誘客を積極的に推進するため、岩手の優位性を見出し、施策を展開する本県独自の国際戦略を官民協働で早急に策定する必要があると思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
特にも、国際観光の振興については、今回の6月補正予算案に、国際定期便誘致に向けた戦略的、効果的なプロモーションの実施経費や、無料無線LANの設置等に要する整備費が計上されました。
震災前から、県と観光事業者等が一体となって、香港やタイ、オーストラリア等をターゲットに、グルメツアー等の新たな商品造成や受け入れ態勢の整備に取り組んできたところであります。いよいよ、これまでまいた種が芽を出し花が咲く時期と思いますが、国際定期便誘致の見通しを含め、事業成果と今後の展望について、あわせて知事にお伺いいたします。
次に、農業振興についてお伺いいたします。
県内農業の現状を見れば、農業就業人口は、平成17年11万4、009人から平成27年7万357人と、この10年間で4割弱も減少し、3人に2人が65歳を超える状況にあるほか、地域農業の担い手不足が進み、危機的な状況にあります。年々増加する耕作放棄地への対応も含め、持続可能な本県農業の振興に向け、さまざまな課題に取り組まなければなりません。
宮城大学の大泉特任教授は、世界には三つの農業の型があるとおっしゃっております。一つは、中国のような国民を養うことを第一の課題とし、原料穀物の生産に特化した農業、一つは、アメリカやオーストラリアのような広大な農地を利用した労働生産性の高い大陸農業、そして一つは、欧州のような新たな価値創造を重視する市場や商品開拓を課題とする農業とのことです。本県の農業はどのタイプを目指しているのでしょうか。
国のTPP交渉後の動きも見据え、本県の基幹産業としての地域経済を支える農業の型をどう捉え、今後の振興策に取り組むお考えかお伺いいたします。
農業を成長軌道に乗せるには、農業を成長産業にできる担い手が必要であります。県の基本方針では、農地集積率の目標80%に相当する耕地面積11万9、000ヘクタールに対応できる経営体数を、平成37年までに6、800経営体確保する目標を立てております。あわせて、個別経営体の場合、本県の他産業従事者並みの所得水準550万円を目標に掲げております。
そこでお伺いしますが、人口減において維持していける農地の見通しと担い手を含む農業就業人口等の農業構造をどう展望し、所得構成別の経営体の目標をどのように立てているのか。農業産出額、土地生産性、労働生産性の高い本県農業を支える経営体の育成を具体的にどう図っていくお考えかお伺いいたします。
次に、医療と地域福祉の推進についてお伺いいたします。
予防医療は、口腔の健康からと言われます。先月、福岡市在住の医師による鼻呼吸推進の口の体操の講演を伺いました。誰でもできる予算のかからない簡単な体操で、生活習慣病や気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患が治る症例等が紹介され、大変興味深い内容でした。また、歯周病と糖尿病の相互関係を初め、歯の健康と全身の健康が密接な関係にあることがさまざまな分野で指摘されているところであります。
そこでお伺いいたします。岩手県の健康寿命を延ばし医療費を縮減するために、予防医療は口腔の健康からをスローガンに、鼻呼吸と歯磨きを奨励するなどの県民運動的な予防医療の推進を図るべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
次に、地域包括ケアシステムについてお伺いいたします。
誰もが住みなれた地域で安心して暮らすことを目標にしておりますが、老人ホームを含めた在宅死亡率は、平成26年に全国平均が18.5%、本県は16.8%であり、全国水準を下回っております。在宅医療、介護の連携や認知症対策、生活支援などの充実が求められております。しかし、地域包括ケアシステムの壁は、担い手となる人的資源と社会的資源の絶対数の不足と偏在であり、都市部と過疎地域において著しいサービスの格差が生じない施策が必要であります。特にも、医療人材の養成と在宅医療提供体制の整備が重要であります。平成29年から新たな専門医制度が発足する予定ですが、医師の地域偏在を助長し、地域医療への影響が大きく懸念されるとの声も聞いております。
そこでお伺いいたします。県は、地域包括ケアシステムの実現性をどう捉え、多様な医療人材の養成と在宅医療提供体制の充実強化に向け、どのように関係機関や市町村と連携し取り組むのかお伺いいたします。
次に、認知症対策についてお伺いします。
ことしから岩手医科大学が行う発症要因を分析する追跡調査により、認知症予防や治療法の確立につながることが期待されます。一方、認知症対策では、矢巾町のわんわんパトロール隊のような地域の見守り活動が重要であり、地域の実情に即した総合的な対策が求められております。
認知症への早期対応に向けて、認知症初期集中支援チームが平成30年4月までに各市町村に設置される予定であります。認知症の方や家族を訪問し、早期に適切な医療や介護等が受けられるようサポートする重要な役割を果たすことが期待されますが、現在、設置済みは5市町村にとどまっております。
設置が進まない要因と課題、今後、市町村等の取り組みをどのように支援しながら岩手型の認知症対策を推進していくお考えかお伺いいたします。
〔副議長退席、議長着席〕
次に、自殺対策についてお伺いいたします。
先日、県南の中学生が、みずから命を絶つという悲しいニュースが流れました。本県の平成26年人口10万人当たりの自殺死亡率は26.6と、中期的には減少しているものの、20年、25年前の水準を上回る、依然として高い水準で推移しています。
平成27年自殺対策白書において特に深刻な状況と指摘するのが、若い世代の自殺であります。10歳代の自殺死亡率は平成10年以降大きく変動していないほか、20歳代の自殺死亡率は、自殺者数が急激に増加した平成10年の水準をいまだ上回っている一方、50歳代以上においては、既に平成9年の水準にまで自殺死亡率は低下しております。
今年度から、国では、各県に地域自殺対策推進センターを設置し、統計情報の分析、情報提供等を行うこととしており、本県でも自殺予防情報センターの職員を増員して、相談支援、人材育成、自死遺族支援等に対応すると聞いています。
そこでお伺いいたします。県として、自殺の現状を世代別にどう分析し、これまでの対策をどう評価されているのか。特にも、10代、20代の若い世代への取り組みとして、今後どのような点に重点を置き、実効ある対策を強化するお考えかお伺いいたします。
次に、教育についてお伺いいたします。
現在、児童生徒数が減少しておりますが、小中学校の先生は戦後3回目の大量採用期の最中である一方、10年後には、80年代に大量採用された先生方の定年退職のピークを迎えます。
2011年、オバマ大統領は一般教書演説において、韓国では、教師を国家を築く者たちと呼んでいる。アメリカでも、すぐれた教師に報酬を与え、教師の質の悪さに対する言いわけをやめることを望む。そして、今後10年で団塊世代の教員が多数引退することから、教育分野の新たな教員を10万人準備する。きょうの一般教書演説を視聴する進路検討中の若者たちよ、もしアメリカをよくしたいなら、そして、子供たちの人生に影響を及ぼしたいと考えるなら教師になりなさい。アメリカは、君たちを必要としていると国民に呼びかけました。
そこで、総合教育会議を主宰される知事にお伺いいたします。知事ならば、教員としての進路を検討されている若者たちに、どのようなメッセージを伝えたいか、御所見をお伺いいたします。また、教育の最前線で活躍されている教員に対し何を伝えたいか、あわせてお伺いいたします。
次に、キャリア教育の推進についてお伺いいたします。
私は、教育の目的を、子供が持つ可能性を高め生きる力を育むことと捉えております。つまり、人が生涯の中でさまざまな役割を果たす過程で、みずからの役割の価値や関係を見出していく積み重ねがキャリアであります。このキャリアは、子供、若者の発達段階や発達課題の達成と深くかかわりながら発達していくもので、学校教育において最も重要な視点の一つと考えております。
そこでお伺いいたします。岩手県の学校教育において、学力向上以外に何を大事に、何に最も力を入れて取り組まれているのか、岩手県の学校教育と言えばこれだという特徴は何でしょうか。人生の目標やなりたい自分、職業、目標を持たせること、自発的、内発的な力を育てるために、キャリア教育を小・中・高等学校の発達の段階に応じて取り組むべきと考えますが、県の御所見と対応についてお伺いします。
次に、不登校児童生徒の支援についてお伺いします。
平成26年度の県の資料によると、小学校で143人、中学校で791人であり、5年前に比べ、小中学校ともに不登校児童生徒数及び全在籍数に占める割合が増加しています。特に中学校の不登校生徒数は、小学校の不登校児童数の約5倍強という実態を非常に問題視いたします。
不登校の要因として、本人の意欲や対人関係、家庭環境、さらには複合的に要因が絡むなど、一律的にその解決方策を見出すことが困難と思われますが、不登校は決して異常な問題行動ではありません。
児童生徒が安心して学べる環境を整備し、学校に戻る子、戻れない子も含めて、社会としてしっかりと支援することが政策の基本であるべきと考えますが、フリースクール等の実態を含め、現在の取り組み状況と今後の対応についてお伺いいたします。
次に、発達障がい児への教育支援についてお伺いいたします。
発達障がいを早期に発見した後は、適切に福祉的、教育的な援助にも結びつけていくことが重要であり、そのためにも実態の把握が基本であります。
国が平成24年に公表した全国公立小中学校における発達障がいの可能性のある児童生徒に関する調査結果への質問に対して、県は、具体的な実態把握については別途検討する旨、過去に答弁されております。
改正学校教育法では、幼稚園から高校まで、発達障がいを含む幼児、児童生徒へ適切な教育を行うことが盛り込まれ、新学習指導要領においても、校内体制での支援充実が明記されております。
そこでお伺いいたします。県は、発達障がいを持つ児童生徒の学習活動等を支援するため、実態把握をどのように行い、課題をどう捉えているのか、特別支援教育支援員の配置計画も含め、今後どのような支援体制を構築していくお考えかお伺いいたします。
次に、震災復興と防災についてお伺いします。
県では、平成24年2月に、防災対策の観点から、東日本大震災津波に係る災害対応検証報告書をまとめ、客観的な分析による検証を実施し、岩手県地域防災計画を見直し、防災体制の強化及び充実を図ったところであります。
今回の熊本地震による被災地に対し、本県が経験した課題や改善案等について、どのように共有できたのでしょうか。また、仮設住宅から災害公営住宅等復興が進む事業計画段階、実施段階、仮設住宅から本設住宅への移行段階といったそれぞれのステージにおける課題等、本県の教訓を熊本に伝える責務があると思いますが、御所見をお伺いいたします。
あわせて、熊本地震から本県の防災対策に生かしていく点があれば、御所見をお伺いいたします。
活断層の現状についてお伺いします。
県内の主要な活断層のうち、都市部に近く、活動度が高いと推測される北上低地西縁断層帯と雫石盆地西縁断層帯について、平成7年度から平成9年度にかけて、活動間隔や活動した場合の地震の規模等について報告書にまとめられておりますが、あれから20年近くがたちます。
岩手大学の地域防災研究センターの齋藤客員教授は、活断層の存在を意識して防災対策を進める必要があると指摘しておりますが、県では、この活断層付近に集積している公共施設や病院等の不特定多数の県民が利用される建物の現況調査をしているのでしょうか。今後、どのように防災、減災対策を進めるお考えか、御見解をお伺いいたします。
水道施設の耐震化についてもお伺いいたします。
水道の防災対策は、個々の施設の強化対策に頼らず、水道システム全体として強化する必要があります。また、被災時の水の確保対策や迅速な施設の復旧対策など、総合的かつ広域的な対策を図ることが必要であります。特に大規模災害が発生した場合、広域的に断水することがないよう、活断層付近にある管の耐震化を進めていくことが極めて重要であります。
県では、平成13年に岩手県水道広域的防災構想を策定しておりますが、水道施設の耐震化計画の策定状況と進捗はどうなっているのでしょうか。今回の震災被害を教訓に、今後、水道の安定的な供給と市町村の水道施設の耐震化支援にどう取り組むのかお伺いいたします。
防災、減災対策についてお伺いいたします。
十和田八幡平国立公園八幡平地域は、ことしで指定60周年を迎えました。当該地域は、桜と雪の回廊や秋の紅葉を見るために、台湾や香港を初め、国内外から多くの観光客が、車や大型バスで訪れる、本県を代表する観光地であります。一方で、岩手山火山災害も懸念されるエリアであり、避難路を確保する必要があります。
東日本大震災津波からの教訓の一つに、複数の避難路の確保が挙げられます。防災、減災の観点から、物資等の輸送路を兼ねた盛岡インターチェンジ方面に抜ける避難路の調査研究が必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
最後に、史跡の保存と活用についてお伺いいたします。
文化財や史跡の保存を図る上では、県民が歴史や文化に親しむ場として活用されることが社会的に要請されます。本県では、平泉の歴史文化遺産や縄文遺跡群など多くの文化財が指定され、地域への誇りを育み親しまれております。一方、国指定史跡徳丹城跡は、発掘調査により住宅等の移転を進めても、広大な低、未利用地のみがあらわれている状況にあります。史跡の保存は活用の視点をしっかり入れながら、個性ある地域づくりに寄与すべきと考えます。
県は、国指定史跡徳丹城跡を初めとする史跡の保存と活用方策をどのように認識し、今後どのように国や町と連携するお考えかお伺いいたします。
結びに、今の時代、未来予想図が立てにくい時代に突入しております。この20年間を見ましても、携帯電話やパソコン、スマートフォン等のICT技術が急速に進み、社会の仕組みや仕事の仕方が大きく変わりました。だからこそ、急激に変わる環境変化に対応し、俯瞰して物事を見、行動できる人づくり、おのれの軸をしっかり育て、自身の興味、関心事を追求し、人間力を高める教育の振興が重要であります。
県民が抱く夢や希望に向かって懸命に生きられる環境を整備していきたい。岩手ならではの価値軸で、ふるさと岩手の創造に向け、県議会議員として取り組んでまいります。
以上で私の一般質問を終了いたします。なお、答弁によっては再質問いたしますので、よろしくお願いいたします。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 臼澤勉議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、全国総合開発計画の総括とふるさと振興総合戦略についてでありますが、国では、5次にわたり総合開発計画を策定し、国土の均衡ある発展に取り組んできたほか、平成20年以降も全国総合開発計画の後継となる国土形成計画を策定し、国土利用の質的向上に取り組んできたところでありますが、東京一極集中などの課題は依然として解消されていないと認識しております。
こうした状況も踏まえて、県では、県外への転出超過を解消し、岩手に新しい人の流れを生み出すことが喫緊の課題であるという認識のもと、ふるさとを消滅させないという思いで岩手県ふるさと振興総合戦略を策定いたしました。人口の社会減ゼロに向け、道路、港湾、情報通信を初めとした社会基盤や本県ならではの地域資源を生かして、総合戦略における三つの柱であります岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすに基づく取り組みを県民総参加で進めることにより、岩手に住みたい、働きたい、帰りたいという願いに応え、あらゆる世代が生き生きと暮らす岩手の実現につなげてまいります。
次に、財源確保対策についてでありますが、東日本大震災津波からの本格復興を推進するとともに、地域の実情に応じた地方の責任と創意による地方創生の取り組みを戦略的、機動的に進めるためには、一般財源総額の確保が極めて重要であります。
現在、県は東日本大震災津波からの復旧、復興の途上であり、県民の十分な理解が必要な新たな税制については、受益と負担の関係を含め、慎重な検討が必要と考えております。まずは、国に対し、偏在性が少なく税収が安定的な地方税体系の構築や、地方創生の推進を支える地方一般財源総額の確保について引き続き要請するとともに、県としても、一般財源の確保に向けて県税徴収の強化や未利用資産の売却を進めるほか、今年度創設された地方創生推進交付金や東北観光復興対策交付金等も効果的に活用して地域経済の活性化による税源涵養を図ってまいります。
次に、総合産業政策を統括する組織についてでありますが、本県の産業政策の推進に当たっては、社会経済のグローバル化の一層の進展を背景に、世界と直接結びつく世界の中の岩手の観点に加え、持続可能で活力ある地域経済社会の実現に向け、中小企業を重視するローカル経済振興の視点、地域資源を発掘し磨き上げ、付加価値を高めながら、地域の内外とつながる地域に根差した価値を生かした産業により地域経済を振興する視点が必要と考えております。
このような考え方に基づき、昨年10月に策定した岩手県ふるさと振興総合戦略では、三つの柱のうち岩手で働くにおいて、ものづくり産業や食産業、地場産業のほか農林水産業や観光産業などさまざまな産業分野の施策の総合的な展開を打ち出しており、また、本年2月のいわて県民計画第3期アクションプランでは、戦略を包含する形で産業創造県いわてと食と緑の創造県いわての実現を掲げております。
こうしたことから、戦略やプランが示す方向性のもとで、これら総合的な企画立案や県民所得等の経済統計を所管する政策地域部と商工労働観光部や農林水産部などの関係部局が緊密に連携し、さらに、いわてまるごと売込み推進本部やいわてで働こう推進本部会議など、知事、副知事、部局長等で構成する会議において、政策横断的な観点から情報共有、議論を行いながら総合的に産業施策を進めてまいります。
次に、これからの成長産業についてでありますが、本県では、県民計画の長期ビジョンにおいて、岩手の未来をつくる七つの政策の一つに産業創造県いわての実現を掲げ、国際競争力の高いものづくり産業の振興や次代につながる新たな産業の育成を推進してまいりました。具体的には、自動車、半導体などを中核産業と位置づけ、地場産業の技術力や競争力の向上のほか、産学官金の連携による研究開発や新技術の導入に取り組んでまいりました。
こうした中、近年では、三次元デジタル技術や人工知能─AIに代表される情報処理技術の革新など、産業を取り巻く環境が大きく変わってきており、県としても、これらに的確に対応しながら、中長期的視野で地域の強みを最大限発揮できる産業の展開を進める必要があると考えております。このため、平成27年3月に、本県の有する技術や人材、産学官金連携などのポテンシャルを十分に踏まえ、新・科学技術による地域イノベーション指針を策定し、次世代自動車、ロボット、加速器関連など、今後重点的に取り組むべき七つの技術分野を設定いたしました。加えて、ことし2月に策定した第3期アクションプランでは、次代につながる新たな産業の育成の政策項目を強化する形で、科学技術によるイノベーションの創出を新たな項目として追加したところであり、今後、持続的なイノベーションの創出を図りながら、競争力のある産業の育成を図ってまいります。
次に、国際戦略についてでありますが、今後、成長が見込まれる海外市場において、農林水産物や県産品の販路拡大、外国人観光客の誘客拡大に戦略的に取り組み、より多くの外貨を獲得していくことが重要であります。
これまで、県産品の販路拡大については、南部鉄器を通じて本県の認知度も高まってきた東アジア等、農林水産物については、経済成長が著しく、日本食レストランが増加している東アジアや東南アジア、北米地域等を主なターゲットとして取り組んできたところであります。特にも国際観光については、台湾を最重点として誘客に取り組んできた結果、平成27年の本県の外国人観光客の入り込み状況は、宿泊者数で見ると約10万5、000人泊と過去最高となり、その半分以上を台湾からの観光客が占めています。また、本年4月に中華航空会長が来県し、5月には台湾でトップセールスを行い、中華航空からは、来年─2017年春からの季節ごとの定期便の運航について11月ごろまでに判断をしたいという発言があり、国際定期便就航に向けて大きく前進したと考えています。
今後も、国が創設した東北観光復興対策交付金も活用し、受け入れ態勢の充実を図りながら、国際定期便の就航を見据えて、台湾からのフルシーズンでの誘客とともに、震災前は台湾に次ぐ実績があった香港や最大の訪日外国人市場となった中国からの一層の誘客等に取り組んでまいります。
県では、昨年4月、いわてまるごと売込み推進本部を設置し、対外的売り込み活動を部局横断的に推進しているところであり、今後は、各市場の特性に応じた国際戦略についても民間の意見を取り入れながら総合的に検討してまいりたいと思います。
次に、教員に対する思いについてでありますが、教育には、個人のあしたをつくり、岩手の地域地域や日本の未来をつくる大きな役割があり、特に学校教育における教員は、社会の形成者となる子供たちの成長に直接携わることができる魅力的な仕事であります。
教育は人なりとよく言われるとおり、学校教育の成否は教員の力に大きくかかっており、責任が重く、さまざまな苦労も多い仕事ではありますが、それだけに、やりがいも十分にあると同時に、子供たちの日々の成長を間近に見詰め、また、教員自身もともに成長することができる仕事であります。このようなことを私からも社会に飛び立とうとする多くの若者たちに伝えたいと思いますし、また、岩手の教育、未来をともに切り開いていってほしいと願っています。
また、岩手の教育は、日々情熱を持って子供たちに向き合い、誠実に職務に精励している多くの教員の力によって支えられ、この岩手の地からさまざまな分野で活躍する多くの人材を輩出してきています。岩手の子供たちに、グローバル化や情報化の一層の進展、さらには、産業界の技術革新など大きく変容するこれからの社会を生き抜いていく力を身につけてもらうために、教員一人一人が教育に対する情熱、真剣さを持ち続けながら、教育的な力量や総合的な人間力を一層高め、岩手の子供たちを育んでいってもらいたいと期待しています。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
〔環境生活部長津軽石昭彦君登壇〕
〇環境生活部長(津軽石昭彦君) まず、国土利用計画岩手県計画案についてでありますが、本計画は、国の国土利用計画を基本としつつ、いわて県民計画や岩手県ふるさと振興総合戦略などの内容も踏まえ、改定に向けた作業を進めているところでございます。
計画の改定案では、基本方針といたしまして、県民の暮らしを支える県土利用、自然環境や美しい景観を守り活かしていく県土利用、安全・安心を実現する県土利用の三つを掲げております。このうち、人口減少局面に対応した具体的取り組みといたしまして、都市機能や居住の集約化を図るため、市街地の低、未利用地や空き家等を住居や公共施設、自然再生のためのオープンスペースなどに有効利用する取り組みや、荒廃農地の発生防止、解消を図るため、農業の担い手への農地集積や地域協働による農地の保全管理などの取り組みを行うこととしております。このほか、自然環境の有する多様な機能の活用や災害対応拠点等の適正な配置などを行うこととしております。これら計画的かつ総合的な土地利用を通じて持続可能な県土の管理と利用を進めてまいります。
次に、水道施設の耐震化についてでありますが、水道事業体のうち、水道施設耐震化計画を策定済みの事業体は4事業体、策定中とする事業体も4事業体となっておりますが、各事業体では施設の更新等に合わせて水道施設の耐震化を進めており、これにより、上水道の基幹管路の耐震適合率は平成26年度末時点で46.2%と、全国平均36%を上回っている状況でございます。また、災害時の水道の安定供給を確保するため、異なる給水区域を連絡する緊急時連絡管や地震発生時に配水池からの異常流出を防ぐための緊急遮断弁などを順次整備しているところであり、今後も、今年度から実施しております水道施設耐震化等推進事業費補助金を活用いたしまして、水道の安定供給や水道施設の耐震化に係る事業を支援してまいりたいと考えております。
〇議長(田村誠君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〔県土整備部長及川隆君登壇〕
〇県土整備部長(及川隆君) まず、都市計画制度の柔軟な対応についてでありますが、市街化区域等の見直しは、人口等の動向による区域変更の必要性、開発計画の緊急性、確実性等の検証を行い、関係機関と協議の上、実施することとしており、盛岡広域都市計画区域においては、これまで延べ16回の市街化区域の拡大を行っているところです。県としましては、地域からの具体的な提案があり次第、区域拡大要件に当てはまるものについては、地域の実情も十分に考慮しながら、引き続き速やかに都市計画変更を行っていきたいと考えています。
次に、老朽化社会資本の維持管理の課題についてでありますが、県ではこれまで、橋梁や県営住宅などにおいて岩手県公共施設等総合管理計画の個別施設計画に当たる長寿命化計画を策定し、予防保全型の維持管理を進めることでコスト縮減や財政負担の平準化に取り組んできたところです。また、民間活力の導入については、道路や河川の草刈りや清掃などにおいて、県民との協働などによる維持管理に取り組んできたところでございます。
今後は、個別施設計画が未策定の施設についても国の策定指針に従い計画を策定し、これにより国からの交付金の活用を図るとともに、地域の方々の協力も得ながら、一層のコスト縮減や財政負担の平準化を進め、適切な維持管理に努めてまいります。
〔総務部長風早正毅君登壇〕
〇総務部長(風早正毅君) まず、県庁舎の修繕計画の調査検討状況についてでありますが、県庁舎は建築後50年が経過し老朽化が進行している現状を踏まえ、昨年度、劣化診断調査を実施したところ、電気、機械設備等の経年劣化は進んでいるものの、構造躯体はおおむね健全であることが確認され、長寿命化、老朽化対策等の実施によりさらに長期間の使用が可能なこと、また、平成9年度に実施した耐震診断と同様、震度6弱から6強程度の地震動では崩壊する危険性が低いことが検証されましたが、防災拠点施設として大地震発生後も継続的に機能を確保するため、電気、機械設備等を含め、耐震性の向上が必要であることが確認されました。
今回の調査結果を踏まえ、岩手県公共施設等総合管理計画に基づき平成32年度までに策定します個別施設計画において、老朽化、狭隘化などの課題も含め、県庁舎の整備計画を検討することとしております。
次に、熊本地震への対応、教訓の共有についてでありますが、県では、東日本大震災津波で得たノウハウを生かしてもらうため、発災直後の4月20日から熊本県に職員を派遣し、災害廃棄物の事務処理等に関し、東日本大震災津波発災時の組織体制、国、市町村との連携のあり方、国庫補助制度の処理方法等について情報提供やアドバイス等を行うなどをしたところであります。また、県では、昨年3月に開催されました国連防災世界会議に合わせて、東日本大震災津波で得られた教訓や防災、復興に関する岩手県の取り組み事例、及びそれらを踏まえた岩手県からの提言を取りまとめて熊本県や大分県などにも提供を行ったところであり、今後とも、熊本地域の被災地から求めがあった場合、本県における取り組み事例等をお伝えしてまいります。
今回の熊本地震では、住家を初め防災拠点となる庁舎の損壊や避難所となる体育館の被害、罹災証明書の発行のおくれなどの教訓、課題があったところであり、県では、国の調査や市町村、防災関係機関の意見などを踏まえ、地域防災計画の見直しを進めてまいります。
次に、活断層の現状についてでありますが、県内では、北上低地西縁断層帯、雫石盆地西縁断層帯、折爪断層といった活断層の存在が知られていますが、平成22年度に活断層の長期評価手法が変更され、最新の知見に基づく再評価を行う必要があります。県としては、国に対してこれらの活断層における地震の発生確率等の再評価を要望しているところであり、現時点で現況調査等は行っておりません。
一方、活断層直上地域以外の地域でも地震が発生したり、震源地から離れていても揺れが大きな場合もあることから、県全体を対象に、大規模な地震が発生した場合の被害を最小限に食いとめることを目的として、本年4月に第2期岩手県耐震改修促進計画を策定したところであります。
今後においても、この計画に掲げた目標を達成できるよう、市町村とともに木造住宅の耐震診断等を通して着実に耐震化を推進していくほか、県広報誌等を通じ、家具等の転倒防止についても県民への普及啓発を図り、地震に強いまちづくりを進めてまいります。
次に、岩手山火山への複数避難路の調査研究についてでありますが、岩手山については、当時の噴火危機を踏まえて、平成10年に想定される噴火の被害等を示した火山防災マップを作成し、また、平成12年に噴火前から復旧、復興までの具体的な対策を示した岩手山火山防災ガイドラインを策定したところでありますが、避難の対象地域や避難経路などについて具体的に定めた避難計画は未策定となっていたところであります。
こうした中、昨年7月に活動火山対策特別措置法(活火山法)が改正され、火山災害警戒地域に指定された県、市町村は共同で火山防災協議会を設置し、一連の警戒避難体制について協議することが義務づけられたことから、今年3月29日、活火山法に基づく岩手山火山防災協議会を立ち上げ、同協議会のもとに避難計画作業部会を設け、来年度までに岩手山に係る避難計画を策定することとしております。避難計画の策定に当たりましては、住民、登山者、観光客等が避難するルート等についても検討を行うこととしており、その中で、複数の避難路や盛岡インターチェンジ方面に抜ける避難路についても有識者に御相談をしてまいります。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、農業振興策についてでありますが、本県の農業は、産地の核となる担い手を中心として、多くの農家が生産活動に携わりながら畜産、稲作、園芸など特色ある産地を形成し、我が国の食料供給基地としての役割を担ってきております。また、丹精込めて生産された農畜産物は安全・安心、高品質であり、全国的にも高く評価されております。
こうした評価をより高め、生産者の収益性向上につなげていくためには、県産農畜産物のブランド力向上と、消費者のニーズを踏まえた農畜産物の高付加価値化等を進めていくことが重要と考えております。このため、県では、いわて県民計画第3期アクションプランに基づき、生産性、市場性の高い産地づくりの推進、高品質、安定生産のための高度な生産技術の開発、普及、地域の特色ある農畜産物を活用した6次産業化の推進と国内外への販路拡大などの取り組みを推進し、農業者が豊かさを実感できるような農業振興を進めてまいります。
次に、農業経営者の育成目標と具体的対策についてでありますが、農業就業人口の減少が続く中、本県の農業は大規模な経営体が生産の中心になりつつあります。平成27年現在では1戸当たりの経営耕地面積が平均で2.7ヘクタールとなり、この10年間で約1.4倍に拡大したほか、販売額3、000万円以上の経営体数が827と、この10年間で47経営体増加するなど、農地利用集積による規模拡大が着実に進んだものと考えております。このため、県では、販売額3、000万円以上、または所得1、000万円以上の経営体を本県の農業を牽引するリーディング経営体に位置づけ、平成30年度までに940経営体にすることを目標とし、いわてリーディング経営体育成支援事業による個別経営体への直接的な機械、施設の整備や、いわてアグリフロンティアスクールの開設による経営感覚、企業化マインドを持った農業者の育成、さらには、農地中間管理事業による担い手に対する効率的な農地の集積、集約化などにより地域農業の担い手の育成に取り組んでまいります。
〔保健福祉部長佐々木信君登壇〕
〇保健福祉部長(佐々木信君) まず、口腔の健康を通じた予防医療の推進についてでありますが、口腔の健康はバランスのとれた食生活を可能とし、生活習慣病や誤嚥性肺炎の予防にも寄与するなど、心身ともに健やかで豊かな人生を送る上で重要な役割を果たしています。
議員から御紹介のあった口腔の健康と全身の健康の関係については、糖尿病が歯周病を進行させ、一方、歯周病が糖尿病の血糖コントロールに悪影響を与えるなど、密接な関連があると承知しております。
県では、岩手県口腔の健康づくり推進条例及びその実施計画であるイー歯トーブ8020プランに基づき、市町村や歯科医師会等の関係機関と連携して、学校、事業所、地域住民への健康講座やいい歯の日のイベントなどの普及啓発、歯科保健従事者研修会などの人材育成、学校や社会福祉施設における対象者の特性に応じた歯科保健指導などにより8020運動を進めているところであり、今後とも、口腔の健康を通じて、全ての県民が生き生きと安心して質の高い生活を送ることができるよう取り組んでまいります。
次に、地域包括ケアシステムについてでありますが、システムの実現のためには、介護予防や認知症施策の推進、生活支援体制の整備などを着実に進めるとともに、在宅医療を担う人材の確保や、医療、介護連携の一層の推進を図ることが重要であると認識しております。
県ではこれまで、医師会など関係団体と連携し、医療従事者を対象に在宅医療への理解を深める研修を開催してきましたが、今後、対象となる職種を広げながら多くの地域でこうした研修を開催し、在宅医療への多様な人材の参入を働きかけてまいります。また、各市町村に対して医療、介護の連携拠点の設置を働きかけてきましたが、未設置の圏域もあるため、新たに、市町村職員を対象に、在宅医療、介護連携施策の企画立案に資する研修を実施しながら広域での拠点設置を働きかけるなど、県内全域で医療、介護連携体制が構築されるよう支援していきます。
次に、認知症対策についてでありますが、認知症初期集中支援チームは、認知症サポート医と保健師や介護福祉士等の医療、介護の専門職2名の計3名以上で編成することとされておりますが、市町村によっては認知症サポート医の確保が進まず、チームの設置に時間を要しているところです。このため、県では、認知症サポート医不在市町村の医師を対象にサポート医養成研修の受講料を負担するなど、市町村によるチーム設置の取り組みを支援してまいりました。
また、地域における見守り体制の構築等を担う認知症地域支援推進員の養成や、認知症グループホーム等の介護基盤の整備を支援するとともに、認知症疾患医療センターの追加指定による専門医療提供体制の強化や介護従事者の資質向上に加え、本県独自の取り組みである孫世代のための認知症講座などによる正しい知識の普及にも努めてきたところです。
今後とも、こうした取り組みを進めるとともに、認知症の早期発見、早期対応に向けて、新たに歯科医師や薬剤師等を対象とした対応力向上研修を開催し、総合的に認知症対策を推進してまいります。
次に、自殺対策についてでありますが、人口動態統計による世代別の自殺者数は、本県では、男性は50歳代、女性は70歳以上が最も多く、その主な原因、動機は、50歳男性は経済、生活問題及び健康問題、70歳以上の女性は健康問題となっています。このため、県では、自殺対策アクションプランに基づく包括的な自殺対策プログラムの普及などの取り組みに加えて、男性については、働き盛り世代への普及啓発活動の強化、女性については、介護予防面からの心身の健康チェック等の取り組みを強化しているところです。こうした取り組みにより、本県の自殺死亡率は長期的には減少傾向にあるものの、全国的には依然として高位にあります。
10代及び20代の自殺者数は全体の約1割であり、原因、動機別で見ると、健康問題、家庭問題、勤務問題が上位で、次いで、男女問題、学校問題、経済、生活問題の順となっています。
こうした多様な原因、動機に対応するためには、周囲の人々が若者の心や表情などの変化に気づき、声をかけ、見守っていくことが重要であることから、県としては、ゲートキーパーの養成や高校カウンセラーの配置、事業所におけるメンタルヘルス対策の要請等に取り組むとともに、年代や悩みごとに応じた相談窓口が活用されるよう周知に努めるなど、市町村や関係機関、学校、企業等と力を合わせて若い世代の自殺対策に取り組んでまいります。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 本県の学校教育の特徴等についてでありますが、学校教育は、教育関係諸法令や学習指導要領等に基づき、子供たちの発達段階に応じて適切な教育を行っていくことが基本でありますが、本県の教育の特徴としては、まず、学校、家庭、地域などの5者が相互に連携して学校教育に参画する教育振興運動の取り組みが極めて特徴的な活動と捉えております。
学校がPTAや自治会など、多くの関係者の皆様の御理解と御協力をいただいて行うこの取り組みを通じ、それぞれの地域の特色を生かしながら、教育水準の向上、子供の健全育成、家庭や地域の教育力の向上など、本県の教育環境の整備、充実に大きな役割を果たしてきたと認識いたしております。
また、東日本大震災津波発災を機に、本県が独自に開発した岩手の復興教育は、大震災で得た教訓の伝承やさまざまな人、地域とのつながりの発展などを目指し、いきる、かかわる、そなえるの三つの教育的価値を本県の子供たちに育もうという教育プログラムであり、本県の教育の大きな特徴であります。
キャリア教育については、変化の激しい社会を生き抜いていく今の子供たちが主体的にみずからの未来を切り開いていくためにも、議員御案内のとおり、小学校から高等学校段階まで、計画的かつ継続的な取り組みが求められていると認識いたしております。
本県においては、キャリア教育指導指針に基づき、確かな学力や豊かな人間性などの総合的な生活力を小学校段階から育むとともに、職業観や勤労観、将来の進路を設計する力等の人生設計力を育成するなど、学校教育全体で、社会的、職業的自立に向けて、子供の発達段階に応じた教育活動に取り組んできているところでございます。
今後におきましても、産業界や関係機関等との連携を図りながら、児童生徒の学びがみずからのキャリア形成に着実につながるよう、指導の充実に努めてまいります。
次に、不登校児童生徒への支援についてでありますが、基礎的な学力や人間関係などを築いていく学校教育において、児童生徒が不登校にある場合、その要因を丁寧に解消し、復帰に向けた支援を行っていくことは極めて重要であります。
議員御案内のとおり、不登校の要因は一人一人さまざまであり、一律的にその解決策を見出していくことは難しい面もありますが、何よりも学校が保護者等からの理解や協力をいただきながら、子供に寄り添った丁寧な対応をすることが大事であります。
このような考えのもとに、県教委におきましては、スクールカウンセラーの配置による教育相談体制の充実に加え、本年度からは、総体的にさまざまな課題が多い中学校教育の充実に向け、35人以下学級を中学2年生に拡大するなど、生徒一人一人に寄り添った体制の整備にも取り組んでいるところであります。
また、県内各自治体においても、不登校児童生徒の学校復帰を目的とした適応指導教室などが設置されており、指導員等が不登校児童生徒を支援いたしております。
一方、民間団体等が不登校児童生徒の支援を行っているいわゆるフリースクールは、準備段階のものも含め、現在、県内5市町において七つの組織が設置されており、学校に通っていない児童生徒に、学習を初めさまざまな活動の機会を提供する取り組みを行っていると承知いたしております。
今後におきましては、不登校児童生徒への支援をより一層充実させるとともに、フリースクール等の関係する機関等との連携も図りつつ、児童生徒の不登校対策に取り組んでまいります。
次に、発達障がい児への教育支援についてでありますが、まず、その実態の把握につきましては、本県独自での調査を平成26年度に実施したところであり、その結果を申し上げますと、小中学校の通常学級に在籍する児童生徒で、学習面または行動面で特別な支援が必要とされた児童生徒数は5、521人、割合にして約5.7%となっております。
県教委におきましては、地方財政措置を踏まえた特別支援教育支援員の配置が適切に行われるよう市町村教委に要請するとともに、市町村に配置されている支援員を対象とした研修会の実施などを行い、その支援の充実に努めてきております。
課題といたしましては、学校、保護者、行政など、関係者間での共通の支援ツールとなる個別の教育支援計画の作成の定着がまずもって大事と考えておりますが、対象となる児童生徒の増加等に伴い、その浸透が十分には図られていないということや、教職員の一層の専門性の向上などが課題というように捉えております。
今後におきましては、児童生徒への指導、支援のさらなる充実を図るため、特別支援学校が小中学校等を支援するセンター的機能をさらに活用し、学校への訪問支援や当該校における校内研修の充実に向けた支援を進めるとともに、個別の教育支援計画の作成率の向上や教職員の専門性の向上などに努めてまいります。
次に、史跡の保存と活用についてでありますが、文化財保護と地域振興の観点から、史跡の保存と活用は非常に重要であると認識いたしております。
矢巾町の国指定史跡徳丹城跡は、胆沢城跡、志波城跡と並び全国的にも著名な古代城柵であり、矢巾町において保存管理計画と整備計画を策定し、これまで74回に及ぶ発掘調査を行い、植栽や柱跡の遺構表示による整備を行うなど、継続的に発掘調査や整備を実施してきております。しかしながら、議員御案内のとおり、矢巾町が策定した当初の計画どおりには整備が進んでいない状況にありますが、矢巾町においては、徳丹城跡の整備を昨年度策定した第7次総合計画に掲げ、今後その実現に向け着実に取り組んでいくことと聞いております。
このような史跡の整備については地域の期待が大きいと認識しており、県教委といたしましては、これまで市町村の史跡整備に関する調査指導委員会に参画しているところでありますが、今後もその整備が促進されるよう、文化庁の指導等もいただきながら、市町村における史跡の保存と活用への支援を行ってまいります。
〇2番(臼澤勉君) 御答弁大変ありがとうございました。幾つか今後確認したい点もありますが、本日は2点ほどちょっと確認させていただきたいと思います。
まず初めに、財源確保対策についてお伺いいたします。
知事のほうからも、受益と負担との関係から、慎重に検討する必要があるという御答弁がありました。私は、国からの財源を確かに有効に引き出してやっていくことの重要性というのも認識しております。ただ、一方で、自立した県行政の運営においては、自主財源といいますか、新たな超過課税の導入も含めた課税自主権の検討を進める必要があるのではないかと考えております。
過去にも、例えば隣の秋田のほうでは、昔、子育て支援の税制の検討も進められてきた経緯はありますけれども、まさに今、この人口減少社会の中で、子育て支援であったり教育の充実、今後の社会保障ニーズに対応するためにも、県民総参加で支える安定的、継続的な仕組みづくり、財源確保対策が必要ではないかと考えるものでございます。
改めて、ここら辺の今後の新しい税制の導入に向けた調査研究の必要性等について、知事にお伺いしたいと思います。
そして二つ目は、若い世代に対する自殺対策について先ほど保健福祉部長のほうからも御答弁がありました。特に、10代、20代の若い世代の自殺、これの発生の時間帯というのが午前0時に多くあらわれている、特に男の子の場合が多いという傾向もございます。
24時間体制の無料電話相談という寄り添いの体制があるのも知っておりますが、実効性を高めるために子供たちの心理状態を私なりに想像すると、誰もいない、1人になって静かな状態で聞けるような状況、そういった環境整備というのはすごく大事ではないかと、未然に防止するためにも必要だと認識してございます。そういった環境整備、それから親とか先生には相談できない、第三者に相談できるような生活圏ごとの小さな拠点づくりみたいなものを、今後私は進めていく必要があるのではないかと思ってございます。
知事が言う、住みよい、生きやすい岩手づくりのために、ぜひそういった環境整備を御検討していただければと思いますが、御所見をお伺いして終わります。
〇知事(達増拓也君) 新たな税制の調査研究の必要性についてでありますが、これまでも、県では、法定外目的税である産業廃棄物税、県民税の超過課税であるいわての森林づくり県民税、産業振興に関する施策推進のための県民税法人税割の特例措置など、特定の政策目的を実現するための税制について、県民の理解を得ながら導入してまいりました。
議員御指摘のとおり、こうした独自の財源確保は極めて重要でありますが、子ども・子育て支援の拡充を初めとする社会保障の充実、安定化等の全国的な課題については、国、県、市町村の役割分担も含めた幅広い議論が必要と考えます。
県としては、全国知事会と連携の上、地方一般財源総額の確保や税財源の偏在性解消について要請、提言し、地方の自由度の高い財源の確保を図っているところであり、受益と負担の関係について、県民の十分な理解が必要な新たな税制については慎重な検討が必要と考えます。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 若い世代に対する自殺対策についてでありますが、先ほど答弁申し上げましたとおり、10代及び20代の自殺には、健康問題や家庭問題、勤務問題などさまざまな原因、動機がありますが、県内でも、例えば鬱やいじめ、仕事上の悩み、多重債務問題など、さまざまな分野の支援機関において専門家による相談窓口が開設されており、それぞれ相談に対応しているところです。
こうした窓口の中には県内数箇所に設置されているものもあり、また、各保健所がそれぞれの保健医療圏において、心と体の健康に関する相談に応じています。
県では、悩みを抱えいずれかの相談窓口に来て相談された方について、その年代や悩み事の内容などに応じて、より適切なふさわしい機関があればそちらの支援機関につなぐという、いわゆる相談のワンストップ化に向けた検討を行っておりまして、こうした相談体制の充実を図ることなどにより、若い世代に対しても実効ある自殺対策を推進してまいります。
〇2番(臼澤勉君) 窓口体制とかそういった部分の周知を、ぜひ徹底していただければと思います。特に子供たちとか若い世代、そういうサービスを知らないでいる子供たちも多いと思います。電話代もかからない無料のサービスもございますので、ぜひ県当局におかれましては、特に学校との連携を含めてそういった場のシステム、仕組みの情報の見える化をぜひ進めていただければと思います。終わります。
〇議長(田村誠君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
日程第2 議案第1号平成28年度岩手県一般会計補正予算(第1号)から日程第33 諮問第1号退職手当支給制限処分に係る異議申立ての諮問についてまで
〇議長(田村誠君) この際、日程第2、議案第1号から日程第33、諮問第1号までを一括議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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