平成27年6月定例会 第20回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(小野寺好君) 公明党の小野寺好であります。
現在、国会において平和安全法制整備法案が審議されていますが、教育や福祉のように身近な政策課題であれば家庭や職場でも話題となりますが、これは、防衛、外交という複雑な国政問題であり、重要ではありますが、なかなかなじみにくい課題であります。
日本は、今まで平和国家であったのだから、今後も今のままでいいのではないか、現状を変えないでほしいというのが素直な国民感覚であり、こうした立場からは、この法案を否定的に捉えるのが一般的であろうかと思います。にもかかわらず、なぜ、今、こうした法律を整備しなければならないのか。それは、平時にあってこそ有事に対する備えを万全にする必要があるからであります。
これまで、圧倒的な力で世界の警察役を果たしてきた米国の近年の変化と、東アジアのパワーバランスの激変を考えなければならないと言わざるを得ません。日本がひたすら経済活動の道を突き進んでこられたのも、米国の庇護のおかげだと言われております。しかし、1990年代からは、特にも、北朝鮮の核ミサイル開発と中国の軍備拡張、海洋進出は目覚しく、大きな脅威になっております。
これに対し、日本の防衛費は従来からGDPの1%以内におさめてきており、さらに現下の急激な少子高齢社会に要する社会保障関係費を考えれば、これ以上増額することができないのは明白であり、自衛隊の物的装備力や人的組織力を増強することはできません。にもかかわらず、頻繁に行われる日本の領空、領海侵犯に対するスクランブル発信、大挙して押し寄せたサンゴの密漁団、漁師のそぶりをした武力集団等々の対策に、警察、海上保安庁、自衛隊は大変に困難をきわめていると言われております。
6年ほど前、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは、10分程度で岩手県の上空を通過して太平洋に着水しました。また、3年前には、人工衛星と称するもテポドン2号改良型弾道ミサイルが発射され、沖縄県石垣市上空を通過しましたが、国民は米国からの報道で直後にこれを知りましたが、当時の民主党政権がこの非常事態を把握し発表したのは1時間近く経過してからでありました。もしも、首都東京や原発などの急所にと思うと、背筋が冷たくなるのであります。この脅威は今も続いているのであります。
これらのことから、装備を拡充できない日本としては、米国との日米安保を大事にしていくしかないという結論になります。そして、この日米間の連携協力を強化することが、結果として他国の武力行使の抑止力を高め、他国との紛争を未然に防ぐことになると確信いたします。
一つの新規立法と10の法律の一部改正案からなる平和安全法制整備法案の内容は、二つの柱からなっております。日本の安全に関するものと国際社会の安全に関するものであります。
一つ目の日本の平和と安全に関連する法案は、自衛隊法改正案、周辺事態法改正案、そして武力攻撃事態法改正案であり、これには自衛権発動に際して武力行使の新3要件が明文として法制化されます。
すなわち、1、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。2、これを排除し我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がないとき。3、必要最小限度の武力の行使であることであります。しかしながら、この新3要件に該当した場合に可能となる武力の行使は、国連憲章第51条で認められている集団的自衛権一般を認めるものではありません。日本の平和と安全を守るために活動している外国艦船に対する攻撃を排除するのは専守防衛の範囲内であり、従来の政府の憲法解釈の枠を超えるものではないことになります。
二つ目の国際社会の安全に関する法案は、PKO法改正案と国際平和支援法の新たな制定であります。国際社会の平和と安全のために、日本らしい国際貢献が望まれています。
自衛隊の海外派遣に関しては、我が党としても自民党との協議で、1、国際法上の正当性、2、国民の理解と国会関与など民主的統制、3、自衛隊員の安全確保の3原則を掲げるとともに、特に後方支援については、戦闘行為が行われていないことの確認や国連決議を絶対条件とし、国会の例外なき事前承認を義務づけるなど、厳格な歯どめを用意しております。
いずれ、我が国の主体的判断で、我が国の自衛隊にふさわしい役割を果たすには紛争を未然に防止する平和外交努力が前提であり、非軍事的分野での国際貢献が重要になります。
県議会に提出された発議案第1号の意見書案の文言に、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を前提とする法案とありますが、昨年7月1日の閣議決定の内容に、集団的自衛権の行使を容認するとは一言も書かれていないことからわかるとおり、このたびの法案も集団的自衛権の行使を厳しく断じ、専守防衛の立場を明確にしたものであり、意見書案は誤認に基づいたものであります。
また、自衛隊の後方支援が他国軍隊の武力行使の一体化につながりかねないとの懸念は、さきに紹介しました三つの原則により厳格な歯どめがかけられ、心配には及ばないものであります。
また、3人の憲法学者が違憲であるとの見解を示したことを挙げておりますが、確かに学者の真理探究の成果は傾聴に値するものであります。
一方、政治をあずかる立場の者は、最高規範である憲法を頂点とした法体系の中で、最高価値である国民の基本的人権をどのようにして擁護していくかという責任を負っています。
一朝有事の場合や不意の自然災害等最悪の場合を想定し、なお国民を守る手段を講じていかなければなりません。学者の見解よりも、現実的な従来からの政府見解の踏襲を優先させるべきことは論を待ちません。
案文には、歴代の政府見解を一内閣において変更することは立憲主義に反するとありますが、繰り返しますが、法案は専守防衛の範囲内にとどめられた内容になっており、安倍内閣が従来の見解を変更したとの批判は当たりません。
国内外の客観情勢の変化をもとに、国民には感情的ではない、冷静かつ懸命な判断が求められております。このようなとき、岩手県議会が事実誤認に基づく意見書を発議するのはいかがかと思います。
以上のことから、発議案第1号の意見書案の主張には理由がなく、採択には反対いたします。
以上であります。(拍手)
〇議長(千葉伝君) 次に、高橋元君。
〔21番高橋元君登壇〕

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