平成25年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(久保孝喜君) 社民党の久保孝喜でございます。
 間もなく、大震災から2年を迎えようとしております。県政史上最悪の大災害は、それ自体の復興を懸命に軌道に乗せることを前提としつつ、この復興が目的とする到達点に向けた取り組みと、内陸市町村の抱える根源的命題を同時一体的に対応していかなくてはなりません。それが人口減少問題だと考えます。
 沿岸被災地では、発災当初から人口流出問題が懸念されてまいりました。その懸念は、復興が緒についた今、改めて大きな課題となっております。そして一方、内陸の自治体、とりわけ小規模、山間自治体にとっても人口の減少はとどまる気配もなく、内在する少子化と高齢化の現実に追われる日々が続いております。
 沿岸被災地では復興のつち音のすぐそばで、内陸の小規模自治体では復興支援のかけ声の足元で、同じ重い課題にさいなまれている現実をしっかりと見詰め、向き合っていかなくてはなりません。県政にとっては、宿命的とも言える、長く続く、古くて新しい困難な課題です。
 昨日までの一般質問でも、この人口問題に触れる質問がございました。2006年以降、年間1万人を超える人口減少が続いている本県の事態は、誰もが看過できない現実です。しかし、そうした事態、現実に対し、知事の答弁は、社会減は5年連続で減少しているとか、取り組みの成果があらわれているというものでした。私は、余りに危機感に乏しいと言わざるを得ません。
 確かに、社会減はこのところ減少しています。それは好ましいことに違いありません。しかし、転出超過の事態が解消されているわけではありませんし、転出者と転入者の隔たりが、わずかに改善されているものでしかありません。長引く経済の低迷や少子化がもたらしている一時的な現象との分析もあり、ひとり本県だけの成果でもございません。問題なのは、自然減を含む絶対的な人口減少が持続的に、しかも、震災の影響も大きく今後も続くという懸念です。部分的数値が示す傾向の問題ではないことをしっかり捉えるべきです。かつて、知事が危機だとした人口減少の実相は、今なお続いていることは、県の統計数値が明確に示しています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 本県市町村の過去10年間において、人口減少率が10%を超える自治体は21市町村に上ります。この10年で人口がふえたのは4市町村だけです。年間2%を超える減少率を示す10市町村の存在がございます。平成の合併を経てなお、人口が1万人台以下の自治体は全体の半数を超えています。また、人口減少率や人口密度が要件となる国の地域指定では、過疎地域指定が一部指定を含めて22市町村、準指定を含めると24市町村、復興山村指定では、全域と一部指定を含め29市町村であり、辺地を包括する市町村の指定は31市町村に上ります。
 さて、復興課題と今後の県政方向を人口問題の同軸上で捉えるとき、震災前の県の重点施策であった県北・沿岸振興策を、小規模自治体と県行政の関係性や過疎、人口減少対策を検証するモデルにすべきと考えます。
 平成18年に産業振興を柱として始まったこの取り組みは、一方で市町村の政策スキルアップや職員の能力開発なども構想し、流入人口増や定住化策、内発型の活性化策なども目指し、広域振興局の新たな役割とも相まって、人口問題へのアプローチとして期待されてまいりました。その予算措置の推移や効果、活性化の展開実績や人的支援の実際などを検証することは、県北・沿岸にとどまらず、全県の、特にも小規模自治体への支援方策を考える上で、極めて重要なステップになると思われます。
 そこで、知事にお伺いいたします。
 復興における課題認識とあわせ、本県の過疎問題、人口減少に係る自治体支援のあり方を、これまでの取り組みの検証の上でどのように考えているのかお伺いをいたします。また、県政の中軸課題としての人口問題に対する認識と今後の取り組み姿勢をお伺いいたします。
 以上、登壇での質問といたします。率直な御答弁をお願い申し上げます。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 久保孝喜議員の御質問にお答え申し上げます。
 人口減少及び小規模自治体支援についてでありますが、本県においては、ここ数年、人口の社会減が減ってきておりますものの、自然減は拡大傾向にあり、全体として人口の減少が依然として続いております。地域経済の規模縮小、若年層の減少による活力の低下、地域コミュニティの維持が困難になることなどが懸念されておりまして、過疎地域や被災地域では、こうした傾向が特に顕著であります。このため、県では、過疎市町村における情報通信基盤など社会インフラの整備や、地域の資源を生かした特産品開発や体験交流事業の実施など、個性豊かな地域として積極的に発信し、雇用の場の創出や定住、交流に向けた取り組みを支援してきたところであります。
 今後も、市町村と十分連携をしながら、地域の個性や特色を生かした、その地域ならではの価値を高める取り組みを積極的に支援してまいります。
 また、被災地域においては、安心して故郷に、安心してふるさとに住み続けることができるよう、復興計画に基づいて、安全で安心なまちづくりや、住宅再建を初めとする被災者の生活とコミュニティの再建、さらには、水産業など地域産業の再生を進めてまいります。
 議員御指摘のとおり、県北・沿岸地域の抱えている課題はまさに過疎地域や被災地域の人口減少であり、今後も市町村と十分連携し、県北・沿岸振興策の実績を生かしながら、地域の課題解決に向けた取り組みを支援してまいります。
 さらに、今年度は、県総合計画審議会の中に人口検討部会を設置しました。本県の人口減少、少子高齢化を踏まえた課題や今後の対応方向について検討いただいているところでありまして、その議論も踏まえて、人口減少にかかわる諸問題に対するさらなる対応について検討してまいります。
〇15番(久保孝喜君) 御答弁ありがとうございました。
 そこで何点かお尋ねしますが、もとより、この人口問題は、何かこれをやればというような特効薬があるわけでもありません。県政施策の全体を通して、底上げを図っていく以外に方法はないわけでありますが、しかし、そうは言っても、今、復興という大きなまさに大変な事業をやろうとしているときに、抱えている課題が内陸部とまさに根っこは一緒なんだということを頭に入れるか入れないかでは、復興の姿のその到達点と県政が本来やっていかなければならない課題というのが全くマッチングしてくるという意味で、私はこの問題というのは非常に大きいと思っているわけです。
 けさは新聞各紙が人口問題を取り上げておりましたが、この人口問題で言うと、被災3県の沿岸部の42市町村のうち、震災前に比べて人口がふえているのは、仙台市と宮城県の利府町でしたか、わずか二つだけ、あとの40市町村は軒並み人口減となっているということ。一番ショッキングだったのは、この人口減少のうちの半数を超えるのが30代以下であるという点で、将来に非常に大きな暗い影を落としているわけです。
 本県にあっては、1万6、000人余が減少しているという指摘もされております。したがって、先ほど私が申し上げた県北・沿岸振興の問題の成果なるもの、これが、これまでの平成18年からの中でどんなところが成果があったのか、あるいは人口問題に一定の寄与をしたと考えているのか、その成果はどうだったのかというところをまず検証しなければいけないと思うんですが、この点は部長からお尋ねをしたほうがいいかもしれませんけれども、どのように御認識なさっているでしょうか。
〇政策地域部長(中村一郎君) これまでの県北・沿岸振興対策の成果ということでございます。
 県では、平成18年の1月に県北・沿岸振興本部を立ち上げ、これまでいろいろ取り組みをしてまいりました。その取り組みは、先ほど議員からお話があったように、基盤整備、例えば道路整備であるとか通信インフラの整備といったような基盤整備を含め、また、いろいろなソフト的な対策も含めて総合的に実施をしてまいりました。これが県北・沿岸の人口問題に一定の寄与はしてまいったとは考えておりますが、具体的に、数字的に、それでは何人分の効果があったというところまではなかなか算出が難しいところがございます。基本は、やはりその地域に住む方々が、主体的にいろんな取り組みをやっていただくということの条件整備を我々行政がやり、また、そこに住む方々がそういった取り組みをやっていくような仕組みをいかにつくり上げていくかというところが、大きな課題かなと認識をしてございます。なかなかそれは、これをやればでき上がるということではないので、永続的な取り組みが、そういった面では今後とも必要なものと認識してございます。
〇15番(久保孝喜君) 永続的な取り組みという点で、私は、達増県政になって翌年でしたか、県内の全集落、コミュニティの調査に手をつけたというのがございました。あの取り組みは、本来、基礎的自治体である市町村がフォローすべき課題を県が率先してやって、その開示をしていく、そういう手法として私は評価できるんだと思うのですが、問題は、そういうコミュニティに手をかける、ひいては、その先に人口問題を見据えて本格的にやるのかなと思いきや、先ほど来指摘している県北・沿岸振興でも、ソフト事業中心だと言いつつも、残念ながらその実が上がっていないという感じがしてならないわけですよ。
 そこで、注目すべきその集落調査に引き続く事業として今脚光を浴びているのが、地域おこし協力隊という総務省の事業があるわけです。これによって、コミュニティによそから、いわばよそ者が生活費と活動費を保障されて入るということです。その人数は極めてささやかなんですが、しかし、全国的に注目を浴びているのは、そういう方が入ってくることで地域の空気感が変わってくるという点で、非常に大きな効果があると言われてまいりました。
 しかも、これが3年間という時限ですので、問題は、その3年間を超えてなお、そういう方々が定住できるのかどうかということにも関心が集まっていまして、それを行政がフォローできる仕組みをつくることができないのかというのが、私の問題意識なわけです。
 そういう意味で、例えば3年間が期限であれば、残る2年については県と市町村が共同でバックアップをしていこうとか、あるいは別な形で人的な配置を考えていくとか、そういう仕組みをつくるとか、そういうことを考えるのが、まさに永続的な対策ということになるのではないでしょうか。その辺の御認識はいかがでしょうか。
〇政策地域部長(中村一郎君) 今、議員のほうからお話がございました地域おこし協力隊の取り組み、これは、国のほうの制度として今取り組みが行われているものでございます。全国的にも進められておりまして、本県でもこういった取り組みを進めているところでございます。
 また、それとは別に、別途、集落支援員といったような制度もございます。これは、その地域に住まれている方でも結構なんですが、地域の自治会活動を含めて、いろいろな活動をまたフォローしていくような制度でございます。そういったことを、国の制度が終了した後、地域のほうで何らかの形でフォローできないのかといったお話を今頂戴いたしました。そこについては、我々県のほうとしても、市町村のほうとも少し相談をしながら、何らかの方策ができるのかどうかも含めて、そこについては検討させていただきたいと思います。
〇15番(久保孝喜君) 今回、間もなく2年を迎えるこの震災では、さまざまなメディアを通して文明論みたいなものが盛んに言われております。つまり、従来の右肩上がりの成長論だけでこの先やっていけない、本県のような人口減少が続くところではなおのこと、従来型の発想では乗り越えられない、そういう警鐘なんだろうというふうにも思います。
 そして、この人口問題は、今お話ししたような人口過疎のコミュニティの再生、再生と言っても、今あるコミュニティの持続性をどうやってつけていくのかということなんだろうと思うんですね。爆発的に人口がふえるわけではもちろんないわけですから、いかに持続的にやっていくか、私は、こういうことが着実に進められるそういう知恵を今出し合っていかなくてはいけないんだろうと思っております。
 沿岸で復興が進んで、社会的インフラは整備されたけれども、そこに住む方々がどんどん少なくなっていくのでは、本来、復興が到達点とする目標にはずれてきてしまうというところの問題意識をもっと持つ必要があるだろうと思います。
 経済成長に寄りかからない村の幸福みたいなものの発信は、岩手でしかできないのではないかという思いがあるわけですが、この点、最後に知事にお伺いしますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 今、沿岸被災地のほうで見えてきているなと思いますのは、高齢者の方の割合が多いコミュニティ、また、過疎地にあるコミュニティ、そういったところに、岩手の内陸、さらには県外からどんどん人が入って、昔からある生活様式と、そして、今、都会のほうであるようないろいろな新しい試みが一緒になりながら、お互いの幸せを実現していくという、ある種日本のあるべき姿ということが実現してきていると思っております。
 やはり交流ということが非常に大事で、その交流にかかわるテクノロジーは、道路もそうでありますし、新幹線や飛行機もそうでありますし、また、インターネットのような情報通信技術もそうでありますし、交流を加速する技術が非常に発達しておりますので、それを生かせば、人口減少社会にあっても、お互い助け合い、一人一人の暮らし、一世帯一世帯の生活というものは、支え合いながら持続していくことが実現するのではないかということを感じております。
 大震災前にも、元気なコミュニティ100選に選ばれたコミュニティを幾つか訪問しましたけれども、やはりその町を、その村を出て都会に行った人たちと、いまだにニュースレターでやりとりをしていて、お祭りのときには帰ってきてもらえる、都会から友達も連れてきてもらえる、そういったことに成功しているところは、過疎地であっても、持続的な、これは発展と言うと語弊があるのかもしれませんが、未来に続く持続性が期待できるということがありまして、岩手にはそういうところがありますから、それをぜひ岩手の中で、さらにお互いのものにし、また、全国にも発信できればと思います。
〇15番(久保孝喜君) ありがとうございました。
 社会的インフラ、特にも高速交通網などでは、これまでの全国的な例でも、本県でもあるわけですが、いわゆるストロー効果という負の側面も残念ながら生じているわけですね。その結果、基盤は整備されたけれども、人口がどんどん吸われていく、そういう負の側面もしっかりと捉えながら、今後の政策を進めていただきたいと思います。
 次の質問に入りたいと思います。安倍自公政権の評価と県政運営について。これは、4点にわたってまとめてお尋ねしたいと思います。
 昨今、アベノミクスという言葉がかなり宣伝されていまして、これが株高、円安に大きな効果を発しているというような見方もございますし、こうしたかなり強権的手法と言えば語弊があるかもしれませんけれども、財政出動、金融緩和、成長戦略、いずれにとっても、経済全体が、デフレから脱却できるのはいいことかもしれませんけれども、一方で円安による被害というものも国民生活に及んでいるというのは、昨今伝えられているところでもございます。
 こうした安倍政権の経済財政政策を被災県の知事としてどのようにこれを評価するのか、県内外にメッセージを発していくのか、まず、その見解をお尋ねしたいと思います。
 2点目は、国と地方との関係についてでございます。国の新年度予算編成において非常に問題が大きいと指摘されている事案がございます。地方交付税の問題でございます。国の公務員の給与削減に伴って、地方公務員もそれに準じた給与削減をすべきだということで、あらかじめ交付税からその分を削減するという極端な強権的な手法が今回初めてとられたわけです。
 一方で、これもこれまで議論されてきたように、一括交付金制度が事実上廃止されるというようなこともございますし、不十分ながら一定程度進んできた国と地方との関係が、ここに来て頓挫をしたととられてもしようがない事態が続いているわけですが、こうした国と地方の関係について変化が生じているわけですが、知事はどのようにこれを受けとめ、なおかつ、対峙しようとしているのかということをお尋ねしたいと思います。
 3点目は、アジア外交、TPPの問題でございます。安倍政権が発足してすぐに外国のメディアは、外交姿勢にとって極めて危うい政権だという評論を一斉に載せましたが、本県にとっても、アジア、そして近隣の諸国との物産の交流を含めて、この外交姿勢にかかわってのこれからの行方というのは看過できないものがあるんだろうと思いますが、その点の所感をどのように思っていらっしゃるのかお聞きしたい。
 TPP問題では、この一般質問でもさんざん取り上げられてまいりましたのですが、県にとって死活的な課題になっておりますので、改めて立ち向かう姿勢というものをお示しいただきたい。
 最後の4点目は、安倍内閣、これは安倍総理自身の年来の主張でありますが、憲法改正の意図を隠さない。昨日の所信表明でも、その点が表明されたわけです。
 復興に際して、1カ月目に発した復興宣言の中で、知事は、幸福追求権という言葉、これは憲法の条文の中にある言葉でありますが、この幸福追求権という言葉をお使いになりました。大賛成でございますが、そうした憲法そのものが変えられるかもしれないという動き、これをどのように捉えていらっしゃるのか、御自身の憲法観とともにお示しをいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず、安倍政権の経済財政政策に対する評価についてでありますが、これまで政府に対しまして、東日本大震災津波からの復興を進めるに当たりましては、思い切った財政出動が必要であるということを訴えてきたところであります。
 安倍政権には、大震災津波からの復興に国家プロジェクトとしてしっかりと取り組もうとする意欲を感じたところであり、復旧、復興予算の総枠を見直したことや、経済再生に向けた財政出動を伴う施策を打ち出すなどのスピード感を持った対応について、評価をしているところであります。
 今後は、復興を加速し、地域の実情を踏まえた効果的な経済対策を復興施策と一体的に切れ目なく実施し、小泉政権のもとで進められたような地方切り捨ての政策ではなく、地方経済が主役となるような内需拡大型の経済対策を推進していくことを期待しておりまして、そういったことをさまざまな機会を捉えて訴えていきたいと思います。
 次に、国と地方との関係についてでありますが、地方公務員給与費の取り扱いについては、これは、地方との協議が十分に行われないまま、その削減分を地方交付税に反映したということで、地方が行ってきた行財政改革の努力を十分理解していない一方的なものであり、極めて問題であると捉えています。
 また、現政権において、一括交付金制度の廃止など、前政権が進めてきた地域主権改革にかかわる施策の見直しが進められているわけでありますが、今後の地方分権改革をどのように進めようとしているのか、現時点においては、その全体像は明確になっていない状況であります。
 県としては、今後の国の動向を注視するとともに、地域のことは地域に住む住民が決めることができるよう、地方分権の着実な推進を全国知事会等とも連携しながら国に働きかけてまいります。
 一方、本県におきましては、東日本大震災津波への対応の中で、地方の現場が国を動かす状況や、また、これまでにない主体的かつ大規模な自治体間連携など、地域の主体性を発揮した復興が進められていると思っておりまして、こうした復興に継続して取り組んでいくことが、地方分権の推進にもつながっていくものと考えております。
 次に、アジア外交にかかわる本県への影響についてでありますが、いかなる政権であれ、国際の法と正義に基づく外交を進めつつ、国民の外国での活動や国民の外国との関係を守り、また育てる使命があると考えます。
 日本政府には常に賢明な外交を望むものでありますが、県は県といたしまして、中国を初めとする東アジア地域でこれまで培ってきた取引実績や人脈、信頼関係などを大切にしながら、相互に一層の理解と経済的効果が得られるよう、地域レベルでの着実な経済交流を進めてまいります。
 TPP問題に係る本県への影響についてでありますが、本県農業への影響額が1、400億円、農業生産額の約6割が減少すると試算され、農林水産物の生産はもとより、食品製造業などの中小企業、さらには地域の暮らしやコミュニティにも大きな影響が生じると懸念しております。
 日本側の一部の品目が関税撤廃の例外とされたとしても、農林水産業全般への影響は免れず、一方で、米国側が工業製品を例外化しますと、日本の輸出産業にとってメリットがなくなる可能性もございます。
 関税以外にも各種のサービスや政府調達のあり方など、TPPは非常に幅広い分野にわたる交渉が必要となっており、十分な戦略を持って臨まなければ、日本側の不利益ばかりがふえる結果にもなりかねないわけでありますが、交渉に向けての方針や優先事項については明らかでない現状でございまして、交渉参加には賛成しかねるものであります。
 県といたしましては、情報収集に一層力を入れ、各分野における本県社会経済への影響の的確な把握に努めるとともに、安易な交渉に臨むことがないよう、機会を捉えて国に要望してまいります。
 次に、憲法改正をめぐる動きと憲法観についてでありますが、日本国憲法は、国家権力の権限と義務を定め国民の基本的人権を保障する我が国の最高法規であり、そして、我々公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負っています。
 憲法の改正については、憲法の最高法規性を踏まえながら、また、幸福追求権の保障など日本国憲法の理念を守るという観点から、国民的な議論が十分に行われる必要があると考えております。
〇15番(久保孝喜君) 安倍政権の評価をそれぞれの課題ごとにお答えいただきましたが、アベノミクスを含めた経済財政政策については、情緒的にはよろしいのではないか、こういう受けとめ方をしているのかなとお聞きいたしました。
 1点だけお尋ねしますが、国と地方の関係に基づいて、この地方交付税にかかわってでありますが、新年度予算は、本県では従前どおりの条例に基づいて削減することなく計上された、こういうことでありますが、この先、国の予算の成立などを含めて事態の推移を見たときに、そうして削減したものが、このままで推移するのかという点、これは、地方に対する圧力とは言いませんけれども、強硬な要請なるものが当然想定されるわけですが、年度内にもそうした動きがあるかもしれない。その点で、県政トップの知事は、そうした要請があった場合にどういうふうに対峙をしていくおつもりでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 既に全国知事会を通じまして、理論武装し、そして法制化されている国と地方の協議の場で、政府に対してはきちっと主張をしているところであります。
〇15番(久保孝喜君) 簡単明瞭にお答えをいただきました。
 続いて、次の質問に入りたいと思います。商工業振興について2点お尋ねさせていただきます。これもまとめてお尋ねさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初に、商店街振興の現状についてお尋ねしたいと思います。昨年の一般質問でもこの問題を取り上げさせていただきました。人口減少の問題とも当然絡むわけですが、県内の小売業の低迷というのは依然としてなかなか歯どめがかかっていない。結果、既存の商店街は衰退する。一方、ロードサイド店といいますか郊外店は、それぞれ規制緩和のもとでかなり膨張し続けている、こういう構図があるわけです。
 そこで、県行政としての焦点が、この商店街振興あるいは商業振興という観点ではどこに向かっているのかというところが、私はかねがねなかなか捉え切れないなという思いでいるわけです。当然のことながら、この商店街振興の際は、それぞれの個店、一つ一つのお店の努力ではもう追いつかない現状というものは誰が見てもわかるわけですが、その打開策や、あるいは商店街全体の中で何をターゲットにしてこの振興策というものを考えていくのかというところがもうちょっと明らかになればいいかと思いますので、その点の策をお示しいただきたい。
 こうした商店街の振興に寄与するという目的を持って、例の高度化資金というものも従前やってきたわけですね。この高度化資金が、こうした現在の商店街の商況と言われるものにどういう影響を与えて、現状どうなっているのか、その支援成果というものはどういうふうに捉えているのか、これをお示しいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 商店街振興の現状についてでございますが、少子高齢化など商店街を取り巻く環境変化によりまして、中心市街地の商店街の多くは、集客力の低下、後継者の不足、空き店舗の増加など種々の問題を抱えております。
 このようなことから、国、県、市町村においては、各種イベントの開催、買い物バスの運行、コミュニティ施設の設置、リーダー研修による人材育成や空き店舗への出店助成など、商店街が抱えるさまざまな問題に対応した取り組みについて、それぞれ支援しているところであり、今後とも、国、県、市町村が有しております支援策を有効に活用するとともに、連携を図りながら商店街振興に努めてまいりたいと考えております。
 また、高度化資金につきましては、商店街がアーケードや街路灯などを整備する際、その8割以内を無利子、長期で貸し付けるものでございますが、県では、これまで30の商店街に貸し付けをしており、その多くが来街者の利便性向上のために街区内の施設整備を行ったところでございます。こうしたハード整備に加えまして、商店街では、集客イベントを開催するなど積極的に活動を展開しておりまして、これら振興策は、にぎわい創出など商店街の活性化に一定の効果があったものと認識をしております。
〇15番(久保孝喜君) まとめて聞くと言いながら1点だけしか聞いていませんでしたが、もう1点は、工業技術集積支援センターについてお尋ねしておきます。
 新年度、県は、自動車関連産業振興のための組織を本庁内に新たにつくることになりましたが、その結果といいますか、そのために北上に設置しておりました工業技術集積支援センターが廃止統合される、こういうことになっているわけです。
 平成16年につくられたこのセンターでありますが、その後幾つか所属がえもしていると。挙げ句に今度は廃止吸収、こういう話なわけですが、結局この組織の設置やその後の展開は何を目的にしていたのかという点で、いまいち腰が定まらない思いがはたから見るとするわけです。
 もちろん、自動車産業の拠点整備、組織的な整備というものは私も必要だと思いますから、それ自体に異を唱えるわけではありませんけれども、今回の決定に至る検証過程というものをぜひお示しいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 工業技術集積支援センターについてでありますが、平成16年度、企業誘致等による発注率の向上や産学官連携による地域産業の競争力強化を図るため設置されたものでございます。
 所管につきましては、平成18年度の広域振興局再編の際、その目的の一つであった産業振興を推進する観点から、県南広域振興局に移管をし、その後、県自動車関連産業成長戦略の策定を受けまして、平成21年度、全県業務を担う組織として再度本庁所管となり、現在に至っているものでございます。
 東北における自動車産業を取り巻く環境でございますが、昨年のトヨタ自動車東日本の発足以来、国内第3の拠点化や現地調達拡大の方針を受けまして大きく変化してきております。国内自動車生産の重要な地域になりつつあるところでございます。
 こうした状況から地域間競争も激しさを増してきておりまして、県として今後の明確な方針が必要との観点から、県内の産学官関係者等から御意見をお伺いしながら、本年2月に岩手県自動車関連産業振興アクションプランを策定し、今後5年間の戦略と目標を定めたところでございます。
 このプランの策定過程におきまして、産業界から、ワンストップで業務を進めてほしいとの専担組織設置の提言も受けたところであり、環境が変化している中にあって、本プランを実効性のあるものとするための体制強化といたしまして、本庁関係課及び工業技術集積支援センターの業務を統合した新組織を設置することとしたものでございます。
〇15番(久保孝喜君) この商工業振興については、予算委員会などでも議論をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 続いて、地域防災計画(原子力災害対策編)についてお尋ねしたいと思います。
 この原子力災害対策の最終案が示されております。隣接県となります青森、そして宮城の原発立地県の対応も大変注目されるところですが、隣接県としても、これは人ごとではもちろんないわけでして、既に示されているこの原子力対策については、その大枠としては十分評価もしなければなりませんし、これを実効あるものにしていかなくてはいけないというのは、そのとおりだろうと思います。
 幾つかの問題があると思うのですが、一つは、やっぱりモニタリング体制をどうやって強化していくのかということがまず第1点ですし、さらに、その前提となるべき電気事業者、電力事業者との関係で、先ほど岩渕議員とのやりとりもございましたが、その情報提供をどういうスムーズな形で受け取ることができるのか、ここが私は一番最初の問題として浮上するだろうと思います。
 協定協議の進捗状況、先ほど一定のお話は聞きましたが、昨年12月定例会でも同様のことが言われて、同様の答弁がされているわけですけれども、何がこの協定の締結に至らない原因になっているのか、そこも含めて経過をお示しいただきたいと思います。
 あるいは、モニタリングポストの拡充策をこの災害対策編ではどのようにうたっているのか、その点もあわせてお示しいただきたい。
 さらに、今回盛り込まなかった課題、先ほどもこれまたやりとりがございましたが、ヨウ素剤配布の問題を含めて、どういう課題を想定されておるのか、その見通しも含めてお示しいただきたい。
〇総務部長(加藤主税君) まず、原発事業者との協定協議の進捗状況についてでございます。
 今般、県地域防災計画に盛り込む予定の原子力災害対策を確実に実行するため、法令に定められている基準以上の放射線量の検出など、国が報告を義務づけている事象について速やかに連絡を受けられるよう、東京電力株式会社との間で協定締結に向けた協議を進めております。
 12月時点と答弁が同じだという御指摘を頂戴いたしましたが、12月時点から、いただく情報の内容等につきまして具体的に詰まってきております。どういう事象が起こった場合に、その連絡、情報を受けるかということで内容的に詰まってきておりまして、そうしたものをやっている。東北電力との間でも真摯に話し合いを進めておりますし、あちらにも応じていただいているということでございます。特に難航しているということではございません。
 なぜ協定締結に至っていないかと申しますと、基本的に、今答弁でも申し上げましたように、防災計画に盛り込んだものを確実に実行できるようにということでやっておりますので、最終的な詰めを行っておりまして、防災計画の見直し、原子力災害対策編の策定にあわせて協定を締結するということで最終的な詰めを進めているということでございます。
 防災計画の今の見直し、これは案の段階でございまして、年度末に県の防災会議を開催いたしまして正式な決定を見たいと考えておりますので、それに合わせる形で締結を図りたいということでございます。
 次に、モニタリングポスト等の拡充、モニタリング体制の問題でございます。
 県では、東京電力の原子力発電所事故に係る対応の中で、モニタリングポストを県内9カ所に増設し、県下全体で10カ所で測定する体制を整えましたほか、広域振興局等へのサーベイメータの配備など、測定体制の強化を順次図ってきたところでございまして、当面はこの測定体制を維持していく考えでございます。
 なお、原子力規制委員会におきまして、今後、緊急時モニタリングのあり方について検討を深められていくこととされておりますので、この状況も踏まえながら、必要に応じて県の体制の強化、名称をきめ細かくするかどうかというものについては検討してまいりたいと考えております。
 また、原子力災害対策編に盛り込まれなかった課題についてということでございますが、行いましたパブリックコメントの中では、今御指摘も頂戴いたしましたが、安定ヨウ素剤の備蓄の問題でございますとか、緊急被曝医療体制の充実強化など、こういったものについてもどうなんだという御意見を頂戴いたしました。これらにつきましては、今回の議論の中では、一足飛びにそこまでは定めなくてもいいのではないかと、避難を中心にということで整理させていただきましたが、今後、原子力規制委員会の議論がさらにさまざま多角的に進むと思いますので、その議論も踏まえまして、県としても議論を重ね判断すべきという整理をしております。
 現時点におきましては、今後どうなるかという見通しを持ち合わせているわけではございませんが、そういう姿勢で、引き続き幅広に検討していって、対応も考えていきたいと思っております。
〇15番(久保孝喜君) 基本的なことをもう一点だけお尋ねをしたいと思います。
 情報を確実に得るという意味で、もう一つ、県民にとっては重大な問題があるんだろうと思います。それは、運搬事故対策の問題でございます。
 県を貫く高速道を含めて、核物質を含めたそういう運搬が行われているであろうと思われるわけですが、そうした運搬情報というのがこれまで私どもの耳には全く入ってきませんし、当然、県においても、これから先想定されるという意味では、この運搬情報というのは非常に大きな意味を持つんだろうと思いますが、現在、これはどのように交渉されておられるのか、原子力事業者に対して。東北電力だけではもちろんないんだろうと思いますので、その点はいかがでしょうか。
〇総務部長(加藤主税君) 核燃料あるいは核物質等の運搬の情報ということでございます。
 今、東北電力を中心に協議、話を進めさせていただいているものにつきましては原子力事業所、いわゆる原子力発電所、あと、発電所ではないんですが原子力事業所というものがありますが、それを念頭に置いてやっております。ただ、それのみならず、原子力の運搬に伴う事故、事象ということも考えられるわけでございまして、今般の原子力災害対策編では、基本的には原子力発電所事故を中心に検討しておりますが、どういった運搬の過程の中で事故なりそういう事象が考えられるのか、それに基づいてこれはある意味、原子力災害対策編とパラレルの部分もありまして、その応用問題みたいなところもあろうかと思いますが、その中で必要となる情報等につきましては情報入手できないかどうか、これは関係者、関係事業者と話し合いをしてまいりたいと考えております。
 いろいろ運搬情報につきましては、なかなか事業者なり扱う側にとってはセンシティブな情報だということで、非常に守秘を徹底しなくちゃいけないということでございまして、なかなかさまざまそういう整理が要る部分がございますので、そういったことも含めまして県としてどういう情報が得られるのか、得るべきなのかということも含めて、関係事業者と真摯に、いろいろ協議を進めていきたいと考えております。
〇15番(久保孝喜君) 原発事故に際して想定外などという言葉が飛び交いましたし、これから先の県民の安全・安心をつくっていくためには、想定外という範囲をどれだけ小さくできるかというのが当然大きな責務になってくるだろうと思いますので、ぜひとも対応を急いでいただきたいと思います。
 次に、JR路線の維持、再建についてお尋ねをしたいと思います。
 これも幾つかの方が触れられておりますけれども、最近、私は議会報告会などでお話をした際に、県民の中に、JR線の復旧という話が三鉄の復旧とダブってしまって、その実態というか実相がなかなか見えていないというところにたびたび出くわすわけです。来年度、三陸鉄道が、社長以下、全線開通をするという懸命な努力をしている。それはもう、全く頭が下がる思いですし、頑張っていただきたいわけですが、一方で、2年になろうとしているのに、1センチも1メートルも復旧が進んでいないという現実があるというところには、到底これは県民の理解は得られないわけです。
 県当局としても、もちろん相手のある話ですから、意思を固めさえすれば動き出すという話ではもちろんないですので、一方的に攻められる筋合いはないと思われるかもしれませんけれども、この交渉過程を含めて幾つかの疑問が当然のことながら湧いております。
 その一つは、最近、復旧の言明もない中で、鉄道の利用促進にかかわる首長さんたちの会合、協議があって、これから進めていきましょうと。いや、これを否定するわけではありませんよ。否定はしませんけれども、県の取り組む姿勢として、ちょっと順番が違うんじゃないのという思いがしてならないわけです。同時平行でもちろんやっていいことですし、やらなければならないことなんですが、今、それを首長さんにお願いをしてやるということに、どういう根拠、意味があるのかという点ではちょっと首をかしげているわけですが、その点はどういうお考えなんでしょうか、お示しをいただきたいと思います。
〇政策地域部長(中村一郎君) JR線のお尋ねでございます。
 これまで、県のほうでは、復興調整会議が4回開催をされてきてございますが、それ以外にもJR、国土交通省とは何度も交渉を重ねてきてございます。今、議員のほうから利用促進の検討組織の立ち上げのお話がございました。これにつきましては、JR側の主張では、いわゆる復旧方針を明示するに際しては、本当に復旧したときに、地元の方々がしっかり利用していただけるのかどうかというところが課題の一つだと言っております。ですから、我々としては、課題を解決するべく、こういった地元で利用促進の検討を、県、沿線の市町村が一緒になって行いながら、こういったことを地元としては取り組みますよといったようなこともしっかりと具体的にJR側に明示をしながら、できるだけ早期の復旧方針を引き出していきたいということで、先般、首長会議を開催させていただき、そういった合意を取りつけ、できるだけ早い時期にこの組織については立ち上げをしてまいりたいと考えております。
〇15番(久保孝喜君) この問題では、本議会の中でもいろいろやりとりがあったわけですけれども、その答弁の中で、既存の線路をかさ上げするなどのいわゆるかかり増し経費、かかり増し費用について、これを復興交付金などを活用して使えないのかということを復興庁に要請しているという話が答弁として出ていましたが、県がこれを要請しているという理解でよろしいんでしょうか。そういうチャンネルを使って要請活動を行っているという理解なのかどうか、そこを改めて確認をさせていただきたいと思います。
〇政策地域部長(中村一郎君) 復旧経費の関係ですが、JR側のこれまでの主張では、基本的には、原状復旧経費についてはJR側が負担をするということは明言をされてございます。ただ、原状復旧以上の経費がかかる場合には、その部分については行政サイドにというようなことがこれまでJR側が主張してまいりました。
 今、議員のほうからお話があった一部区間については、路盤をかさ上げするとか、ないしは一部ルートも変更するといったようなところがまちづくりの関係で出てきてございます。それについては、今のまちづくりの事業の中で、いわゆる負担ができるのではないかというような御議論もあり、これについては我々県のほうとしては、復興庁のほうとも今協議をさせていただいているという現状でございます。
〇15番(久保孝喜君) この問題が非常に奇異に映るのは、県も含めて、結果的に日本を代表するような大企業の保有する資産の復旧について、結果的にJR側の意をそんたくして、周辺の環境整備に県が立ち回るというような姿にどうも見えてしようがないわけです。それもこれも、まだ復旧するという明言すらないというところに一番大きな問題点があるわけですね。苦渋の答弁だったろうと思いますが、JR側が言っている一つ一つの条件を潰していくという環境整備なんだという点では理解はしますし、そういうやり方も必要なんだろうと思いますが、何よりこの問題で欠けているのは、復旧の第一義的な責任者であるJR側が、その復旧の方向性すら明示していないという中で、行政がやるべきなのは、そのJR側、鉄道事業者に対する社会的責任の追及というところがきちんとやられていないと、JRの思惑で我々が動くみたいな、そういう姿を結果的につくり出してしまっているのではないか。そこが県民の理解も及ばない話で、だって来年は開通するんでしょみたいな話になっている一番重要な背景になっているのではないかと私は思っているわけです。しかも、今回、近々に復旧費用の明示がされるという報道がございましたが、この問題も、あの廃止言明をした岩泉線のやり方といいますか手法と全く同じだなという感じがしてならないわけです。これだけかかりますと、かかり増し経費もこれだけですと。しかし、私たちはこれしか払えません、どうしますかと地元自治体に投げかけるような、そういう話として受け取られかねない、極めて私は不誠実な態度だと思いますが、そういうところをきちんと社会的にも訴えるという姿勢が私は必要なんだろうと思いますが、ここはトップとしての知事の見解をお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 県とJR東日本との関係については、もうこれは知事がJR東日本に土下座したほうがいいというような御意見もあったように記憶をしておりますけれども、そのような関係ではないと思っております。やはりここは毅然と、県として筋を通しながら交渉を進めていく必要があると思っております。
 また、一方、県の県民に対する関係としては、県民が望んでいる、沿線住民が望んでいるJR線の復旧ということができるだけ早く実現するように、さまざまな働きかけを国も含めて行っていくべきと考えておりまして、そうしたところには、これもまた力を抜かずにやってまいろうと思っております。
〇15番(久保孝喜君) 次の質問に入ります。地域医療の将来像についてでございます。
 次期岩手県保健医療計画の問題で、これまでの論点あるいは課題などを含めて検討状況をまずはお示しをいただきたいと思いますし、さらにこの計画をつくるに際して、議会でも長年時間を費やして議論をしてきた例の花泉地域診療センターの民間移管に関する検証、この検証結果がどのように反映されているのかというところをお示しいただきたいと思います。
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 大きく2点お尋ねがございました。
 まず、次期岩手県保健医療計画の検討状況についてでございますが、次期計画の策定に当たりましては、患者の視点に立って、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、患者が一貫した治療方針のもとに、切れ目のない医療を受けることができるような医療提供体制を確保していくことを基本としてございます。国の指針に従いまして、疾病、事業ごとや在宅医療に係る医療提供体制の構築に向けた施策の方向性や主な取り組みを取りまとめたところでございます。特に、病院と診療所、この連携による切れ目のない医療提供体制の構築や、医療から介護まで連続したサービスの提供などが求められておりますことから、地域の医療機関が協働して医療連携に取り組む地域連携クリティカルパスの導入などによる医療機関のネットワークの取り組みを初めといたしまして、地域の病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護サービス事業所等との一層の連携強化を重点的に進めていく取り組みなどを盛り込みまして、医師等医療従事者の確保とあわせて、体系的に取り組んでいくこととしているところでございます。
 それから、今回の計画の中に花泉地域診療センターの民間移管に関する検証の議論をどう反映させたのかということでございますが、さきの検証の中では、県立病院が民間事業者のノウハウを活用していくに当たって、地元市町村や地域住民、医師会等関係団体との密接なかかわりや十分な意識の共有、専門的意見も踏まえること等の重要性に鑑みまして、公募の実施、審査の考え方や手続、事業主体への指導、支援のあり方などに関するさまざまな改善策が検討されたところでございます。
 今回の計画案についてでありますが、病院や診療所のそれぞれが持つ機能を十分に生かせるよう、地域の実情に応じて、特に他に入院医療機関のない地域の公立病院、有床診療所では、市町村あるいは地域包括支援センターとの円滑な連携を図り、患者が退院後も在宅や介護施設等において療養が継続できるよう、調整支援する退院支援担当者の配置や、在宅療養患者の急変時の受け入れ等の役割を担うことなどを盛り込んでおります。
 今後、各圏域では、こうした保健、医療、介護の連携体制の構築について、必要に応じて公的部門における民間事業者のノウハウの活用も含めて、具体的に検討、推進していく必要があると考えております。
〇15番(久保孝喜君) ネットで公開をされている検討状況の文章を見ても、今の答弁にあるような、つまり、地域医療の将来像にかかわって県立病院などのネットワークがどういうふうに、あるいは行政がどういうふうに関与していくのかという姿が、なかなか読み取ることができないわけですね。その象徴的な例が、例えば保健医療提供体制の構築という、この計画の本旨のところ、本文のところの一番最後に、いわゆる地域保健、医療、介護、福祉などの総合的な取り組みと。最後に書いているから軽視しているとは思いませんけれども、残念ながらそういうところが表に出て、地域医療の将来はこうなんだっていうところを示しているとはなかなか読み取れないと私は思っております。この計画自体が、県立病院などの機能はこうしますということは明示していても、役割、将来像についてはなかなか触れられていないという問題意識を私は持っておりまして、この点はこれからの委員会などでも議論をさせていただきたいと思います。
 次の質問に入りたいと思います。
 次に、学校現場と教育委員会制度のあるべき姿ということでお尋ねをしたいと思います。
 いじめや体罰問題など、最近、教育にかかわる話は毎日のように報道されております。けさの地元紙にも、県内の体罰の問題がちょっと出ておりましたけれども、いずれにしても、こういう教育の現場の話がどんどん社会的な認知として広がっていくに従って、現在ある教育委員会制度が果たして本当に県民にとってプラスなのかどうかという、全国の首長の中では、廃止論とは言いませんけれども、かなり変質させる条例なども出している自治体もあるわけでして、そういう意味では、今こそ学校現場と教育委員会制度がどう機能しようとしているのか、しているのかを含めて、県民の理解を広げなければいけないと思いますが、学校現場と市町村教育委員会、そして市町村の教育委員会と県教委と、この関係性は協同の関係として機能しているのかどうか、まずはそこの辺の認識からお尋ねをしたいと思います。
〇教育長(菅野洋樹君) 学校現場と教育委員会制度のあるべき姿についてでありますが、小中学校と市町村教育委員会につきましては、市町村教育委員が学校を訪問し教職員との懇談を行っていますほか、会議における校長との意見交換や教員研修などを実施し、子供たちの育成に取り組んでいるものと承知いたしております。
 県教育委員会と市町村教員委員会につきましては、両教育委員会による意見交換や市町村教育委員会を対象とした研究協議会などを開催いたしております。さらに、県教育委員会と学校につきましては、教育委員が学校に足を運び、学校関係者や地域住民の方々と意見交換を行ったり、教育委員長が各地域で開催される学校長会議に参加いたしたりしております。こうしたさまざまな取り組みを通じまして、学校現場、市町村教育委員会及び県教育委員会の相互理解や信頼関係の醸成に努めてまいっておりますし、これからもこういった努力をふだんずっと継続し、お互いの信頼関係の醸成に努めていくことが非常に大事なことであろうと思っております。
〇15番(久保孝喜君) 大阪の問題などを含めて、県民の関心が教育現場に向いている中にあって、最近、私は県内の問題で、これはどうなんだろうと思う事案を知ることができました。
 それは、県内のある小学校の校長先生による不適切な指導と言ったほうがいいかと思いますけれども、子供の人権に係る言動あるいはいじめ、体罰とも受け取られかねない、そういう言動が関係者から指摘をされて教育委員会に投書が入るというような話、あるいは、これは某議会にもそういう投書が入ったというようなこともございまして、この対応をお聞きするに及んで、今お答えいただいたような、現場と教育委員会が本当に機能して子供たちのためにということになっているのだろうかと実は思ったところなわけです。
 この事案は、昨年の7月に起きている。最初の投書が1回目、そして2回目、3回目、3回も同じような内容で投書があって、その都度、県教委は指導をしているということなんですが、3回目の投書で初めてマスコミ云々の話が出たと同時に、やっと自治体の事実解明の動きになっていったと。そこまで来るのに、半年以上かかっているわけですね。そういう姿というのが、言われるような現場と県教委含めた、そういう関係性を県民に理解される動きとして映るんだろうかと、こういう疑念が私の中には湧いてきたわけですね。そういう意味で、最後の3回目の投書の後の事実解明では、ほぼ投書の内容が裏づけられたということですから、その指摘は正しかったということになるわけですけれども、いずれにしても、そういうことで、果たして本当に健全な関係性が市町村教育委員会と県教委、そして、そこと現場がなっているのだろうかということを含めて私は疑念に思いましたが、その点については何かコメントはあるでしょうか。
〇教育長(菅野洋樹君) 個別の事案についての話というより一般的にお答えさせていただきますが、いずれにいたしましても、それぞれ学校、校長も含めた教職員それから市町村教育委員会、県教育委員会が同じ思いを持って、それぞれの地域で子供たちの育成に取り組んでいかなければならない。確かに、個別の事案について課題があることがあるとすれば、それぞれ学校は学校として、それを支えるべき市町村教育委員会が学校を支え、それをさらに県教育委員会が支えるという相互の信頼関係に基づいて教育を行わなければならないと思っておりますし、それぞれの役割を十分に果たしながら、当然県は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に定められております市町村教員委員会に対する指導助言、そういう役割を持ってございますので、市町村教育委員会、学校ともども、それぞれ岩手の子供たちの健やかな育成のために取り組んでいかなければならないと思っておりますし、一つ一つの事案を反省しながら、それぞれ教訓として取り組んでいかなければならないと思っております。
〇15番(久保孝喜君) 今の答弁は、全国的にニュースになったさまざまな事案と同じ答弁なわですね。個々の事案をどうこうという話ではもちろんありませんけれども、しかし問題なのは、そこに潜む問題点、課題というのはないんだろうかと。
 今回の事案に即して言えば、たまたま対象児童が不登校になったりとか、あるいは不測の事態ということはなかったからよかったようなものの、実はそういう危険性もはらんでいたというような認識が教育委員会の側にあれば、打つ手はもっと早くにできたんではないかという思いがするわけです。そういう風通しのよさが、残念ながら失われているのではないかというところに、私はこの問題の根の深いところがあるのではないかと思うんですね。現場から教育委員会に対する情報も含めて、あるいはそれを事実解明して、これを全体の教育に生かそうという県教委の立場、あるいは法律を含めた監督責任はどこにあるのかという、法律上の制約ももちろんあります。しかし、それら全体を含めて、県教委がその問題の深刻さ、そういうものにチャンネルを常に動かして、情報収集をしたり対応を決めていくという判断力が、このケースでは6カ月後ですよ。という点で、私は非常に問題点があると思います。
 こうした事案が繰り返されないことを願うばかりなんですが、学校現場のそうした個々の事案をどうこうというよりも、教育委員会の側にそうした事態が起きたときの対応、指針みたいなのはきちんと現在も備わっているんでしょうか。いかがですか。
〇教育長(菅野洋樹君) 個別の事案については、私どもとして情報を収集した都度、それぞれ対応してまいったつもりでございます。ただ、個別の事案ごとにどういった場合にどういった対応をとるかというのは、非常にそれは個別の事情によりますので、これをマニュアルですとか具体的な基準を定めるというのは非常に難しいわけですが、何よりも、先ほど申し上げましたとおり、子供たち、学校の運営を第一に考え、それぞれ対応すべき問題であろうと考えております。
〇15番(久保孝喜君) 今回の事案でも、投書が、同じような内容が3回、ほぼ半年以上にわたって続いてきたと。その原因は、結果的に、そうした通報が目に見える形で対応がとられていないと思われたからですね。つまり、情報開示が全くないわけです。つまり、具体的に言うかどうかは別にしても、学校でこういう事案があってこういう批判がありました、あるいはこういう指摘がございました、それについてはこういうふうにしましたという情報開示でもあれば、3回にもわたってなどということは多分、恐らくなかったんだろうと。そういう情報開示の問題も実はこの問題、この事案が、私は教訓としてあるんだろうと思います。
 それからもう一つ、これはよく言われる茶飲み話的な話ではなくて、かなり本質論だと思うんですが、県教委には教育現場から職員が来る、あるいは市町村立教育委員会にもそういうケースがある。しかし、そこで学校との関係を見た場合に、例えば管理者である学校長と教育委員会の職員がどういう関係になるのかということですね。本来の組織論から言えば、市町村立教育委員会が学校現場と連携をとりながら指導するという立場があるんだろうと思うんですが、その配置されている職員の人間関係、あるいはそういう俗人的な関係から言うと、学校の管理者は、教育委員会職員の大先輩ということが往々にしてある。それは同じように県教委の中にはあるという関係性を抜きにして、組織論だけで本当にやっていいんだろうかという、かなり本質的な指摘も実はあるわけですが、そういうことを含めて、これからの教育委員会制度のあるべき姿をどのようにお考えですか。
〇教育長(菅野洋樹君) 組織でございますので、当然、人間関係というのはそれぞれ持っているわけなんですが、ただ、やっぱり大事なのは、それぞれの組織において、その職分に応じて職務を全うしていくということが最も大事でありますので、それがたまたま対象が先輩であるとか後輩であるとか、それによって取り扱いが異なる、それは公務員としてあってはならないことだろうと思っておりますので、それは、いずれ組織人としての役割をしっかり果たしていくということに尽きるんだろうと思います。
 それから、教育委員会制度そのものについては、全国的にいろんな議論がなされてございます。そこは私どもとして真摯に受けとめなければならないと思ってございますが、いずれ、私どもに託されている役割を今しっかり果たしていくということで、その職分を果たしていくことが大事だろうと思ってございます。
 なお、御指摘のありました点について、確かにいろいろ投書をいただいたたびに、それぞれの市町村教育委員会によって対応していたところでございますが、それが学校の中において、PTAとかそういったところに非常に見えにくかったということについてはやっぱり議論としてあるだろうと思っておりますので、学校としてもしくは教育委員会として、より情報を提供していくということが非常に大事だろうと思っております。
〇副議長(柳村岩見君) 以上をもって久保孝喜君の一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
   午後3時36分 休 憩
出席議員(47名)
1  番 高 田 一 郎 君
2  番 佐々木 茂 光 君
3  番 小 泉 光 男 君
4  番 清 水 恭 一 君
5  番 名須川   晋 君
6  番 後 藤   完 君
7  番 佐々木 朋 和 君
8  番 佐々木   努 君
9  番 軽 石 義 則 君
10  番 神 崎 浩 之 君
11  番 城 内 愛 彦 君
13  番 吉 田 敬 子 君
14  番 木 村 幸 弘 君
15  番 久 保 孝 喜 君
16  番 小 西 和 子 君
17  番 岩 渕   誠 君
18  番 郷右近   浩 君
19  番 喜 多 正 敏 君
20  番 高 橋 但 馬 君
21  番 小 野   共 君
22  番 高 橋   元 君
23  番 高 橋 孝 眞 君
24  番 岩 崎 友 一 君
25  番 工 藤 勝 博 君
26  番 及 川 あつし 君
27  番 飯 澤   匡 君
28  番 関 根 敏 伸 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 高 橋 昌 造 君
31  番 五日市   王 君
32  番 小田島 峰 雄 君
33  番 大 宮 惇 幸 君
34  番 熊 谷   泉 君
35  番 嵯 峨 壱 朗 君
36  番 工 藤 勝 子 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 小野寺   好 君
39  番 佐々木 順 一 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 伊 藤 勢 至 君
42  番 佐々木   博 君
43  番 田 村   誠 君
44  番 渡 辺 幸 貫 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 佐々木 大 和 君
欠席議員(1名)
12  番 福 井 せいじ 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時53分 再開
〇副議長(柳村岩見君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。斉藤信君。
   〔37番斉藤信君登壇〕(拍手)

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