平成25年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇17番(岩渕誠君) 希望・みらいフォーラムの岩渕誠です。
 登壇の機会を与えていただきました全ての皆様に感謝申し上げます。
 質問に入る前に、アルジェリアで発生した人質テロ事件で犠牲となられた日本人10人を含む8カ国、37人に対しまして哀悼の意を表すとともに、御遺族にお悔やみ申し上げます。
 犠牲者の中には、青春時代をこの岩手、一関の地で学び、卒業後もたびたび母校を訪れ、非常勤講師として後進の指導に当たってこられた伊藤文博氏もおり、改めて心からの御冥福をお祈りいたします。
 あわせて、問題の解決を暴力にのみ求めるテロリズムは非道きわまりない行為であることについて改めて国際社会が認識し、その根絶のため、連携してあらゆる対策をとられることを強く求めます。
 では、質問に入ります。
 最初に、新年度予算編成と県財政について伺います。
 東日本大震災から3年目を迎える新年度は、県が基盤復興期間と位置づける最終年度であり、次のステージとなる本格復興期間につなげるべく、過去最大の1兆1、500億円規模の予算編成となりました。復興を加速するため、全体の4割強が復興関連に支出されているほか、中長期的な課題に対応するため、新たに希望郷創造推進費枠を設け、19事業、5億1、000万円を計上しています。この希望郷創造推進費について質問します。
 この予算枠には、震災復興のみならず、岩手のあるべき未来について達増知事の思いが込められたものと理解をしておりますが、まず、この推進費の狙いをお聞かせください。
 県政の歴史をひもとくと、希望郷創造推進費に類似するものとしては、増田前知事時代に推進された総額200億円に上る40の政策枠が思い出されます。しかし、この40の政策枠予算は、一つには、本来、部局予算に組み込むべき予算がマイナスシーリングによって削減され、実質的には復活予算枠の性格が色濃く残ったこと。二つには、予算の投入効果については、その後の政策評価の対象としたことで、予算編成前の査定作業が厳格ではなかったこと。そして三つ目に、政策評価も長期的な視点ではなく、単年度ごとの評価が中心で、かつ、その評価が人事にも反映されたことで長期的な視点が軽視され、政策のダイナミズムが失われたことなど、弊害が多かったと私は思います。税収が減少し予算規模が縮小する当時の局面において、政策の優先順位を全庁的に決定するシステムを放棄し、各部局編成にシフトしたこととあわせ問題のある仕組みであり、岩手県における政治主導の代表的失敗例と言わざるを得ません。
 そこで、こうした過去の予算編成と希望郷枠の編成過程の違いについて認識を伺います。
 また、あわせて、中長期的狙いを持った予算については、現状の近視眼的評価だけに陥らず、5年以上のスパンで政策評価を行えるシステムを導入すべきと考えますが、見解をお示しください。
 さて、今後の財政運営に目を転じれば、県債残高などの今後の見通しに触れないわけにはまいりません。財政健全化判断比率の一つである実質公債費比率は、新年度には18%を超え、以降、最大で19%前後となる見通しで、新たな借金をするには国の許可が必要となってきます。最悪なことに、最も財政出動を必要とする震災復興期間は、岩手県においては過去の借金の返済のピークと重なり、非常に難しい財政運営を余儀なくされることとなります。
 この点に着目して新年度予算を見ていきますと、成果と課題が浮き彫りになっています。
 御承知のとおり、一口に県債と言っても、その中身は通常の県債と臨時財政対策債に分けることができます。
 臨時財政対策債、いわゆる臨財債は、本来、地方交付税で措置すべき額を地方に借金をさせているもので、国が責任を持つべき債務です。この臨財債の割合が増大しています。裏返しとして、県の責任で発行した県債、つまり、通常の県債と言ってよい県債の総額は、新年度1兆円の大台を切りました。これは、平成9年度以来であり、特にも達増知事の就任以来2、000億円以上減少させており、評価されてしかるべきものと思います。新年度以降も優先順位を明確にした本来の予算編成システムの強化により、真に足腰の強い財政体質を構築することを求めます。
 問題は臨財債です。新年度では、初めて県債残高に占める臨財債の残高割合が3割を超えました。このことによる課題は多くの地方自治体に共通しており、本当に政府が臨財債の償還に責任を持つのか、そもそも地方財政の中で臨財債の持つ割合が大きくなっていてよいのかなど懸念が増してきていますが、県ではこの点をどう捉えているのでしょうか。ひもつき補助金の増大ではない地方の創意工夫が生かされる一括交付金制度の維持など、被災県だからこそ声高に訴えるべき課題とあわせ、見解をお示しください。
 次に、復興対策について総括的にお尋ねします。
 震災から3年目を迎える新年度は、やはり実感の伴う目に見える復興を実現させなければなりません。復興を加速できるかどうかは、まさにここ2年の反省を踏まえて体制を整えられるかに尽きると思います。技術系職員や復興の各種建設工事に当たる民間部門を含めた人材確保の問題、各種手続の簡素化や被災地の実情に即して使い勝手のよい予算の確保など、非常時に対応する仕組みづくりの問題、そして、震災と復興への関心の薄れ、風化という問題。特にこれら三つの課題の解決なくして前進はあり得ないと感じますが、県として、こうした課題にどう取り組んでいくつもりなのかお伺いいたします。
 次に、復興と国政の重要課題のかかわりについて、知事にお尋ねいたします。
 安倍総理は、先週の日米首脳会談を踏まえ、TPPの交渉参加を前提に動きを加速させています。関税撤廃に関し例外品目もあるとしていますが、それが決定したわけでもなく、アメリカ国内の政治的圧力を考慮すると、見通しは極めて不透明です。また、政府・与党が言う聖域とは一体何か、国益とは何か、そして非関税障壁への対応などが明確にならないままの前のめりの姿勢は、岩手県議会の議決と多くの国民の声に背を向けた行為であります。
 ところで、岩手県の試算によれば、TPP参加による本県の農林水産業への影響額は、直接的影響で1、682億円、地域経済への波及の影響で728億円の、合わせて2、410億円の減少となっています。これは、産業全体の数字ですが、県は、米や畜産など、品目別の詳細の影響額と減少率を明らかにして具体的な実感を示すべきです。
 私の調査によれば、米、乳牛などは壊滅、鶏卵を除き畜産品目は壊滅に近く、岩手の農林水産業も地域も崩壊が極めて憂慮される状況で、交渉参加には強く反対するものですが、影響額の詳細を明らかにした上で、TPPの交渉参加についての御所見を伺います。
 また、消費税増税も、いわゆる景気条項を踏まえて秋までには最終判断されます。政府は、4月から6月までのGDPを増税の判断材料にするとも伝えられていますが、地方経済の実態、特にも被災地にある地場企業や家計の状況を的確に把握し判断すべきです。知事の御所見、御見解を伺います。
 登壇しての質問の最後に、ILC─国際リニアコライダーについてお尋ねします。
 宇宙の始まりを探るという壮大なこの国際プロジェクトは、世界中の研究者の英知を集め、人類の夢を実現するものであり、その研究過程の中で、未来に続く最先端の技術開発が期待され、私たちの身近な暮らしを変える可能性が詰まったものであります。
 東日本大震災津波からの復興のシンボルとしても、そして、国土の均衡ある発展からおくれてきた歴史から見ても、この東北の地にこそ最もふさわしく、世界に飛躍するチャンスだと確信いたします。この夏には、北上高地と九州の脊振山地の二つの国内候補地が一つに絞られるとあって、いわゆる誘致活動というものが盛んであります。
 私は、皆さんと同じように、一人の岩手県人としてまた政治家として、岩手に建設実現したいという夢を持っております。そして、どこよりもこのプロジェクトには北上高地がふさわしいと信じていますが、昨今のにわかとも言える、言い方を変えれば、相手方に仕掛けられた形の誘致合戦にはいささかの戸惑いを覚えます。
 今回のプロジェクトはまさに世界に一つだけのものであり、まず尊重されなければならないのは、成果を出すために必要な条件を十分備えているかどうかだと思います。その点、北上高地は断層帯もなく、平面的に50キロの直線を確保できるという、根本的条件を満たしているという点で、既に群を抜いた存在であります。
 また、このプロジェクトに欠かせない素粒子物理学では、我が国が世界のトップを形成する科学者の質と量を誇っています。そして、その主要な科学者の多くは、適地として北上高地を推しています。プロジェクトの候補地として東北の地は既に揺るぎないものであり、科学の視点で見ると誘致合戦などあり得ないということです。重要なことは、科学の視点で見た科学者の声を、科学者の総意を候補地選定に反映する環境をつくることではないでしょうか。
 岩手では、20年にわたって地道に培ってきた科学者との信頼関係があります。東北以外では、あからさまに政治決着を求める声があると聞きますが、誤解を恐れずに申し上げれば、これは科学者の良識に政治が口を差し挟むことになります。今回の候補地決定において、政治決着などというものがあってはなりません。科学に寄り添い、その後方支援に従事する姿勢も必要ではないでしょうか。その上で、県としてはILCへの理解を深め、このプロジェクトを核とした学術研究文化圏域の構想の磨き上げと具現化を図るのが役目ではないでしょうか。実際、既に各自治体がILCに関連するまちづくりなどの各種構想を練り上げていますが、東北ILC推進協議会が示した将来ビジョンとの整合性に苦慮する声が出ており、県として構想を持つべきとの指摘もあります。こうしたことを踏まえ、ILCの候補地選定への県としての取り組みと今後の役割についてお示しください。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、希望郷創造推進費の狙いについてでありますが、希望郷創造推進費は、これまで以上にしっかりとした部局間の連携を図り、岩手の強みを生かした将来の希望につながる取り組みに積極的に挑戦していく機運を醸成し、いわゆる予算の部局枠にとらわれることなく、高い成果を生むことが期待できる施策の立案につなげることを狙いとして、予算上、特別な取り扱いとしたものであります。岩手のあるべき未来に追いつく復興と、その先にある希望郷いわての実現に向けた一歩になるものと考えております。
 次に、TPPの交渉参加についてでありますが、農林水産省が平成22年度に、関税を撤廃し生産量の減少に対し何らの対策も講じないとの前提で行った計算方法を参考にした本県の農林水産業に与える影響額の試算によりますと、品目別に、米は影響額が596億円、減少率95%、牛肉は120億円、61%、乳牛214億円、100%、豚肉186億円、80%、鶏肉310億円、80%の減少となります。また、水産業では、影響額が191億円で減少率42%となるなど、本県の農林水産物生産額が全体では55%減少するとの結果となっています。
 さきの日米首脳会談では、TPP協定について、一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められているものではないことが確認されたものの、農林水産省によれば、現在、日本の農林水産品においては、800品目以上にわたり輸入関税が設定されており、関税撤廃の例外がどこまで認められるかは不明であります。国において、交渉に向けての方針や優先事項、必要な国内対策をどう講じるかなどを明らかにしていない現段階においては、TPP交渉に参加すれば、農林水産業を初めとする地方の経済、社会に大きな影響を与え、東日本大震災からの復興の妨げになるおそれも大きいと考えられますことから、交渉参加には賛成しかねるものであります。
 次に、消費税増税についてでありますが、沿岸地域では、被災した企業の約8割の事業所が事業を再開しているものの、取引先が思うように戻らないなどの将来の経営に不安を抱えるところも多く、農業や水産業も含め、地域経済の先行きは不透明感が大きいところであります。消費税増税の実施時期は来年4月とされていますが、この時期はちょうど住宅再建などを初め、被災者が生活再建のためのさまざまな投資や消費を本格的に始める時期と重なることが想定されます。復興を本格的に推進していく時期に、被災地に税負担がのしかかれば地域経済の低迷等を招くこととなり、暮らしの再建やなりわいの再生の足かせとなるのではないかと強い懸念を持っております。
 県としては、国に対して、地方経済の実態を的確に把握した上で、慎重に判断するよう求めていきたいと思います。
 次に、国際リニアコライダーについてでありますが、国内の研究者グループが設置したILC立地評価会議では、候補地の一本化を進めるに当たり、まず地質などの技術的、工学的観点による評価、次に、研究環境、まちづくりなどの経済的な観点による評価を行い、その後、政策的判断に委ねると聞いております。
 まず、第1段階の技術的、工学的観点による評価においては、地質、防災、土木等の専門家の意見を聞きながら行われますことから、地質面での適正な評価が得られるように、詳細なデータ収集のための現地調査を実施することとしております。
 また、経済的な観点による評価については、どのように国際的な研究圏域を形成していくことができるか、その道筋を示すことが重要でありますことから、東北ILC推進協議会等と連携し、昨年策定したILCを核とした東北の将来ビジョンをさらに具現化する国際的なまちづくりのグランドデザインを年度内に取りまとめ、評価会議に提案するなどによりまして、北上山地が建設地に選定されるよう、最大限努力をしてまいります。
 なお、その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願いします。
   〔総務部長加藤主税君登壇〕
〇総務部長(加藤主税君) まず、過去の予算編成と今回の平成25年度当初予算編成との違いについてでございますが、過去の政策形成プロジェクトなど予算の政策枠につきましては、各部局間で政策を競うことなどを通じまして、政策形成能力の向上を図る狙いがあったものであります。また、各部局に予算枠を配分し、各部局から主体となって予算編成する仕組みにつきましては、より現場に近い視点での政策立案と予算への反映を目指していたものでございます。
 このような予算編成に対しましては、厳しい財政環境のもとで、財源配分の調整をどうするのかという問題や、予算執行に対する効果がどれくらいであるかなど、財政効率的な評価の面での指摘も見られましたことから、順次、見直しを図ってきたところでございます。
 平成25年度の当初予算編成におきましては、財源の重点的かつ効果的な活用を図るため、全庁的な視野のもとに、全ての事務事業について1件ごとに精査したところでございます。こうした中で、復興計画の三陸創造プロジェクト等におきましては、部局横断的に取り組むべき課題も多いことから、これを積極的に後押しする仕掛けとして、希望郷創造推進費を設けて対応したものでございます。全庁的な議論、検討のもとに対象経費を選定いたしまして、その上で財政的な観点からも必要な調整、精査を行い、計上したものでございます。
 次に、臨時財政対策債についてでございます。
 地方財政全体として多額の財源不足額の恒常化に対し、臨時財政対策債の発行を含む対応が行われてきております。本県におきましても、地方交付税の振りかわりとして、毎年、相当規模の臨時財政対策債の発行を余儀なくされてきましたことから、県債残高に占める割合は年々高まっております。
 臨時財政対策債の元利償還金相当額につきましては、その全額を後年度、地方交付税の基準財政需要額に算入することが地方財政法などに明記されております。制度的には担保されることになっております。こうした制度的な手当ては存しますものの、臨時財政対策債に依存した地方財政対策、それ全体が制度の持続可能性の面で懸念が出てくるという面がございます。そのため、法定率の引き上げも含めました地方交付税制度の抜本的な見直しを検討するよう、全国知事会等と連携しながら、引き続き国に働きかけてまいります。
 また、一括交付金が目指したようなひもつきの補助金でない、地方が歳出の内容をより自由に決定できる財源は、地方の創意工夫にとって大変有効であると考えております。特に、本格的な復興を進めるに当たり、地方が主体性を持って決定し、その財源を国が強力に支援するという財政スキームを明確にする上で、使い勝手がよく自由度の高い交付金等は不可欠と認識しております。現在もあるにはあるわけでございますが、県が求めているもの、期待するものとは乖離があるという面もございますので、県が期待するものに近づきますよう、今後も国に対し、こうした要請を強くやっていく考えであります。
   〔政策地域部長中村一郎君登壇〕
〇政策地域部長(中村一郎君) 中長期的狙いを持った予算の評価についてでございますが、希望郷創造推進費による事業を初めとする中長期的な課題等への取り組みにつきましては、事業の進捗や効果の発現状況を毎年度確認するだけではなく、時宜を捉えて全体を振り返り、中長期的な視点で評価を行うことも必要と認識をしており、今後、その対象や手法も含めて検討してまいりたいと考えております。
   〔理事高前田寿幸君登壇〕
〇理事(高前田寿幸君) 復興の加速に向けた課題解決についてでございますが、まず、人材の確保につきましては、任期つき職員や再任用職員の採用を進めるほか、総務省の派遣スキーム等に基づく職員派遣要請を継続し技術系職員の確保を図るとともに、復興JV制度の活用等により、技術者や作業員の確保に努めることとしております。
 また、ふくそうする復旧、復興工事の円滑化を図るために、新たに設置した岩手県復旧復興工事施工確保対策連絡調整会議を活用し、関係機関や業界団体と連携を図りながら、技術者や労働者の確保などのさまざまな課題に対応することとしております。さらに、今後、復旧、復興事業を加速させていくためには、事業用地の円滑な確保が必要であり、行政手続の抜本的な簡素化による土地収用手続の迅速化が求められるとともに、なりわいの再生等、被災地の多様な状況やニーズに応じ、復興の現場で創意工夫し、迅速かつ柔軟に対応していくための自由度が高い財源の追加措置が必要であり、これらの実現に向け、引き続き国に要望してまいります。
 また、大震災津波から2年が経過しようとする中、全国的には、震災記憶の風化や復興に対する意識の低下が懸念されるところでございますが、大震災津波の全貌と教訓をわかりやすくまとめた東日本大震災津波記録誌や復興に関する広報誌を発行するとともに、首都圏等で開催する復興フォーラムや、復興に関連したテーマで、県内で開催される国際会議等の場を通じ、被災地の暮らしや産業の現状、直面している課題、さらには将来の生活に対する不安などの被災者の思いをしっかりと情報発信してまいります。
〇17番(岩渕誠君) 中村政策地域部長の答弁の中で、中長期的な評価について検討するというお話がありました。これは、ぜひやっていただきたい。特に、この震災からの復旧というスパンで考えますと、そういった評価というのは大変大事でありますので、ぜひ早急に具現化をしていただきたいと思います。
 さて、非常に重大な答弁をいただいたと思っております。TPPへの影響額でございます。米で596億円が失われて95%減少する。そして、牛肉でも6割、乳牛は100%減少する。そして、豚肉も80%減少すると。これは本当に率直に申し上げまして、大変恐ろしい数字だと思っております。経済界を中心に、1次産業の減少分についての何らかの手段をとればいいんじゃないかというような議論もありますけれども、これは札びらで農家の顔をたたくようなやり方でありまして、これは経済的な問題だけではなくて、農村、漁村の文化、伝統、歴史の問題でもあります。ぜひともその辺を、この影響額以上にあるということも御認識をいただきたいと思います。
 また、2次産業、3次産業の影響、政府も慌てていろいろやっているようでありますけれども、本当に地方が2次産業、3次産業の分野でもメリットがあるのかどうかというと、私は大変疑問に思っております。
 一部で言われておりますけれども、産業部分、農業、林業、水産業を除く分野の評価については、為替の水準をどの程度に持っているのか、為替の水準がどれぐらいの期間続くのかという前置きした前提をよく見ないと、これはただつくられた数字ということになると思いますので、県としても、そうしたものが出てきた場合にはしっかりと分析をして、岩手としてとるべき道をリードしていただきたいと思います。
 あとは、ILCに関して申し上げますが、グランドデザインをつくっていく、科学者に寄り添っていくということが大切だと思いますけれども、ILCの研究そのものは究極の温故知新であります。私たちのレベルを超えた宇宙の成り立ちということでございますので、温故知新ということから言いますと、やはり周辺部の平泉という非常に私たちが学ぶべき世界遺産もありますので、そういったところも踏まえて、学術研究の文化都市構想をぜひ充実していっていただきたいと思います。
 それでは、次の質問に参ります。被災地の問題についてお伺いいたします。
 私は、復旧期から本格復興期を迎えて、被災地でのいわゆるイ、ショク、ジュウというものの意味合いが変わってきていると思っております。これをどう進めるかがポイントだというふうにも思っております。
 着るもの、食べるもの、住むところという衣食住から、福祉を含めた医療体制の充実を図るという意味での医、仕事、職業を確保するという意味での職、そして、高台移転などによる住宅再建という意味の住ということなんですが、職と住は、当然密接な関係を持っています。新年度は高台移転に向けて予算も計上されておりますけれども、宅地造成をしても、そこに人が住まないと意味がないという点では、やはり被災地経済の活性化や雇用の確保によるなりわいの再生が極めて重要になると思っておりますが、現実にはなかなか厳しい。
 いろいろなデータがございますけれども、きょうは、県の産業復興相談センターのデータをちょっと取り上げますが、昨年に仮設店舗へのアンケートを行ったそうでありますが、震災前との比較で見ますと、売り上げ、客足とも、やや減少と答えたのが2割近く、大きく減少と答えたのは4割を超えております。6割が何らかの形で程度の差はあれ減少しているということなんですが、そして、その仮設店舗の開店時と比べても、4割以上が、客足、売り上げともに減少していると答えております。仮設店舗の再開時には一時的に注目を集めますので、それはそのとき効果はあったんだけれども、やはり人口流出や厳しい経済環境を反映して、さらに厳しいところに追い込まれている小売業の実態が見てとれると思います。
 グループ補助金の問題ともあわせて、こうした部分に支援をしていかないと、これでは、本格的なまちづくりが始まる前に人も商店街もにぎわいもなくなってしまうと思いますが、今後の取り組みについてお聞かせください。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 仮設店舗の支援についてでありますが、入居している事業者が、今後、用地を確保して本格再開を果たせるよう、仮設店舗での営業において、経営力や集客力を向上させる機会を設けることが重要と考えております。
 そのため、個店指導のアドバイザーを派遣いたしまして販売促進活動を支援するほか、阪神・淡路大震災の復興に携わったアドバイザーを派遣いたしまして、商店街再生のビジョンづくりを支援しているところでございます。
 今後は、さらに個店指導の実施地区をふやすほか、仮設商店街のにぎわいを演出できるよう、看板、倉庫など共用施設の整備や各種イベントの開催を支援することに加えまして、これから復興しようとする商店街が新たにグループ補助金を申請できるよう、アドバイザーが計画策定を支援するなど、商店街の復興支援を通じまして新たなまちづくりを加速させてまいります。
〇17番(岩渕誠君) ぜひ政策効果が上がるようにお願いしたいと思います。
 次に、復興対策のうち、放射能問題についてお聞きいたします。
 去る1月30日に開かれた国の原賠審─原子力損害賠償紛争審査会の第30回会合におきまして、岩手県の農林水産業の風評被害を賠償対象に追加するということがようやく決まりました。放射能の被害救済に向けて一歩前進と考えているところであります。
 私どもの希望・みらいフォーラムが、先日、東京電力に対して申し入れを行いましたけれども、この風評被害の点についても、東電側は、早ければ今月中にも賠償の体制を整えていきたいという回答があったところであります。
 賠償可能となる対象が広がりましたので、県として対象者の的確な把握をまず進めていただきたい、そして、手続をサポートしていただきたいと思います。
 これまで実損部分についての損害賠償についても、手続が煩雑で、法律知識を持った専門家の支援を求める声が各地から上がっていたわけでありますが、この点とあわせて県の対応策をお示しください。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 風評被害を含む損害賠償の請求の支援についてでありますが、県は、これまで、生産者団体や関係機関と損害賠償に関する情報の共有化を図るとともに、農林水産関係損害賠償協議会の活動への参画、あるいは東京電力に出席を求めての説明会、個別相談会の開催を支援してまいりました。
 先般の原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針の第三次追補で、農林漁業・食品産業の風評被害に本県の農林水産物等が追加され、風評被害であることの挙証負担が軽減されたことから、風評被害に関する損害賠償請求が増加するものと見込まれますが、これまでと同様、支援要請に応えていくことが必要と認識してございます。
 県は、本年1月に弁護士資格を有する職員を任用して損害賠償に関する支援体制を強化しておりますが、今後とも、生産者団体や市町村等の関係機関と連携して、追補内容や相談窓口の周知を図りますとともに、相談へのきめ細やかな対応を徹底するなど、生産者等の賠償請求が円滑に進むよう支援してまいります。
〇17番(岩渕誠君) 弁護士資格を持つ職員、非常に期待しておりますので、ぜひ風評被害の損害賠償が進むようにお願いしたいと思います。
 一方で、損害賠償は風評被害と実損部分というのがあるわけでありますけれども、この実損部分についての損害賠償については、昨年12月に牛に関係するもの、それからシイタケに関係するもの、これは本賠償という形になりました。その残るところについてもある程度見通しがつき始めておりますが、今後の焦点は、何といっても再生産対策、産地ブランドの回復をどう進めるかというところがウエートの相当な部分を占めると私は認識しております。
 一関市が調査した資料が手元にあるわけでありますけれども、原木シイタケの生産者のうち、生産再開を希望する人はおよそ3割にとどまり、7割がもうやめるとしております。このままでは全国に知られた産地の崩壊が現実のものになりかねません。改めて原発事故の影響の深刻さというものを実感させられるわけであります。
 また、子牛の生産を見ましても、私の地元でも、繁殖農家をやめた軒数がいつもの年に比べて倍になりました。これは、牧草の利用自粛などによって意欲がなえてしまったというのが原因ですと言う人が少なくないんですね。
 実損、風評のいずれにいたしましても、早期完全賠償を実現した上で、まさに今、全力を上げなければならないのは、その生産サイクルをもう一回もとに戻すということだと思います。
 しかしながら、苦言を申し上げますが、シイタケに関しては、残念ながら取り組みは不十分と言わざるを得ません。例えば当面の生産再開に当たっては、露地でなくて施設栽培にしたいと考える農家が、一関市では既存の施設の活用も含めて実は4割おります。新年度予算では、確かに施設栽培を希望する農家に対して、国、県、市町村合わせた形で補助金が計上されておりますけれども、全体の事業費の6分の1は自己負担をする形になっております。私が計算しますと、1戸当たり数十万円という負担が見込まれますけれども、これは全く信じがたい。県の、県というよりは、国の補助要件が全く平時のままと同じ、そのことが一番の原因だと思いますけれども、収入が途絶えて生産サイクルができていない中で、これでは、生産者は利用したくても利用できないというのが実態ではないでしょうか。
 再生産については、当然、東電も責任を持ってもらわなければなりません。農家のこの6分の1という負担を補償する、あるいは施設そのものの整備を東電が行うというのも一つの手だと思います。実は、東電側は、再生産に関しても金額の賠償以外でも何かしたいという思いがあるようでありまして、具体的には、今、農業団体がシイタケ農家を対象にアンケートをとっておりますが、このアンケートをもとに検討したいという回答も先日あったところであります。県もしっかり対応すべきだと思いますが、再生産対策への認識を伺います。
〇農林水産部長(東大野潤一君) シイタケの再生産対策についてでありますが、原木シイタケの産地の再生に向けましては、まずは、出荷制限の解除に向けて国との協議を急ぐとともに、生産再開のため、指標値を超過したほだ木の処理、そして、ほだ場の落葉層の除去、新たな原木の確保を進めており、これに加えて、当初予算では、放射性物質の影響を受けにくい栽培方法とされる人工ほだ場等のモデル的な整備を支援する事業を盛り込んでおります。
 新たな施設整備に伴う生産者の負担軽減につきましては、モデル的な施設整備事業では、国庫補助事業を活用しながら、県、市町村が単独でかさ上げすることとしており、国に対しては、国庫事業の補助率の引き上げ、単独かさ上げの地方財政措置のほか、新たな施設整備経費を損害賠償の対象とするよう東京電力を指導することを要望しております。
 今後とも、原木シイタケ産地の再生に向けて、国や東京電力に対して必要な措置を講ずるよう求めるとともに、県としても、生産者が再び意欲を持って生産活動に取り組めるよう、できる限りの支援をしていく考えです。
〇17番(岩渕誠君) 先ほど私、一関市の資料では3割が再開するという資料を紹介しましたが、実態はもっと厳しいです。きのう、磐井東農協のシイタケ部会のほうで会合があったそうであります。大体50人近い部会員がいるそうでありますが、実際にこの春、再生産をするのはわずか4人です。3割ではありません。現実はもう1割にも満たない、相当厳しいところに来ているということを認識していただきたいと思います。
 その上で、東京電力に対しても、国を介してということではなくて、やはり新たに施設整備の部分も県から直接、これはきちんと対応するようにということを申し入れるべきだと私は思いますが、農林水産部長、いかがですか。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 損害賠償に関して、ほかの案件でも同様ですが、国に対して直接申し上げる、求める、機会を見つけて東京電力に対しても同じような賠償に関する要請をしてございますので、同様に取り組んでまいりたいと考えております。
〇17番(岩渕誠君) いずれ再生産ができない理由は、今、生産、出荷停止の状況でありまして、その道筋がどういうふうにすれば再開できるのか、それから、ほだ場の除染をどう進めればいいのか、そして、仮に今、植菌をしたとしても、何年後かに成果品になったときに、今の相場ではとてもやっていけないということもあるわけです。そのところに対しての補償は、果たして3年後、5年後もきちんと続いているのだろうか、これが一番の農家にとっては心配なことなのであります。そういったところを踏まえて総合的に厳しくやっていただきたいと思います。
 復興対策の最後に、再生可能エネルギーの導入についてお尋ねしてまいりたいと思います。
 県は、本年度から防災拠点などに対して再生可能エネルギーの導入を進めるべく導入補助を始めております。これは、民間の医療機関など幅広く対象にして、事業費も、国の支援を受けて単年度でも35億円近い力を入れた事業であります。新年度も40億円が計上されておりますけれども、今年度の交付件数は75件、執行率は3分の1にとどまっております。特にも民間の交付決定というのはわずか1件であります。これは大変残念な数字であります。
 これは、関根敏伸議員が本会議で取り上げておりますけれども、やはり固定価格買取制度に基づいた制度設計になっていないということが大きな原因でありますので、これは、ぜひ改善をしていただきたいと思います。これは指摘にとどめたいと思います。
 私がお聞きいたしますのは、さらなる導入促進には、中山間地の耕作放棄地などを初めとする農地の活用を積極的に検討すべきだということであります。特にも草地、牧草地ですね、これは県内におよそ4万ヘクタールあるのでありますが、放射性物質の除染が難しくなっているところ、それから、飼育頭数の減少で将来的には活用が見込めない場所というものもあります。
 国庫補助金を導入して造成した牧草地が実は多いのでありますけれども、そういうお金を入れてやると、その後、転用は原則としてできないということから、再生可能エネルギーへの活用を検討するものの、頓挫してしまうケースをよく耳にしております。
 実際、岩手県では、この4万ヘクタールのうち、大体9割が何らかの補助金が導入されているということで阻害要因にもなっております。優良農地や後継者の見通しがあるところは別ですけれども、まず、牧草地の実態と今後の見通しを把握して、希望するのであれば、再生可能エネルギーの導入に向けてアクセルを踏むべきと考えますけれども、県の見解を伺います。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 再生可能エネルギーについてでございますが、県では、市町村と連携いたしまして、大規模太陽光発電の候補地紹介事業を実施いたしました。その中で市町村からは、除染が困難なため遊休化が懸念される牧野などを活用したいという旨の相談もあり、県では、関係法令に照らしながら、可能な限り導入が図られるよう努めているところでございます。
 また、あわせて、復興特区制度を活用し、土地利用関係法令の規制を緩和することで円滑な導入が図られるよう、再生可能エネルギー導入促進特区の提案に向けて復興庁及び関係省庁と協議を重ねているところでございます。
 これまでの協議におきましては、再生可能エネルギーは全国的な課題であり、震災復興との関連が弱いとの指摘を受けておりまして、協議は進展しない状況となってございます。このため、防災のまちづくりや地域の多面的な活性化に重要な役割を果たし、震災復興を進める上で不可欠であることを引き続き強く訴え、国から理解が得られるよう努めてまいります。
〇17番(岩渕誠君) 工藤部長の答弁の中で、国の方針、関連性が薄いような発言があったとお聞きいたしました。これは、やはり認識が相当違うのではないかと思いますので、県のほうも頑張っていただきたいと思います。
 いずれ、農地、牧草地もお金を入れて、税金を投入してやってはいたものの、ここに来て、やはりこのまま手をかけなければ、また荒れ地に戻ってしまう。だったら活用できる方法を考えるというのが、私は税金の使い道としてもある程度理解をされるのではないかと思っておりますので、ぜひそのようにお願いしたいと思います。
 次に、この4月からスタートいたします障害者総合支援法についてお尋ねいたします。
 これまでの障害者自立支援法を改正したこの総合支援法でありますけれども、障がい者の範囲に難病を追加し、これまで制度のはざまで苦しんできた難病患者の生活支援に道が開かれた点では、一定の評価をするところであります。
 難病は、その種類が5、000とも7、000とも言われており、56の特定疾患患者も県内には8、500人がいるとされています。総合支援法では、当面、暫定的に130疾患を対象としていますけれども、県の難病連などが求めておりましたポルフィリン症や線維筋痛症などが除外されているなど、新たな格差を生みかねません。早期に対象を拡大するとともに、県内の難病患者の実態とサービス受給のニーズの掘り起こしを進めてほしいと強く感じます。
 障害者総合支援法の施行に当たり難病患者団体が懸念している一つは、難病患者の特性がきちんと障害程度区分の判定に反映されるのかということであります。専門家による第三者委員会の設置など公平な判定の仕組みはどう担保されるのでしょうか。また、福祉サービスは拡大されることにはなっているものの、人材の確保や施設整備などの面で、本当に必要なサービスが受けられるのかどうか、そもそも難病患者に新制度が周知されているのか。これまで市町村は、難病患者に対しての支援になかなか踏み込めないでいたこともありまして、患者団体の懸念は大きくなっておりますが、県の今後の対応についてお示しいただきたいと思います。
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 障害者総合支援法の施行に向けた対応についてでございます。
 まず、難病患者の障害程度区分の判定についてでありますが、難病患者の方は、症状が固定している身体障がい者と違い、症状が変化すること等が特徴でございます。認定に当たりましては、その特性を踏まえたきめ細やかな配慮が必要だと考えてございます。
 この障害程度区分の認定は、全国共通の106項目について市町村の認定調査員が調査し、コンピューターで一次判定したものを、学識経験者等による市町村審査会において、医師意見書や特記事項を勘案して検証した上で二次判定することとしております。この認定調査に当たりましては、今般、厚生労働省から示されました難病患者等に対する障害程度区分認定のためのマニュアルにおきましては、症状がより重度の状態を聞き取るなど、その疾病の特徴に配慮して認定することとされております。
 なお、この市町村の認定に不服がある場合は県に審査請求ができることとされておりまして、市町村審査会による二次判定とあわせ、公平性が担保される仕組みとなってございます。
 また、議員御指摘の対象疾患の拡大につきましては、国は当面の措置として、現在、市町村で実施されております難病患者等居宅生活支援事業の対象疾患と同じ範囲の130疾患の方に制度を施行することとし、本年1月18日に政令を公布したところでございますが、今後の検討状況を注視しつつ、難病関係団体の御意見も伺いながら、国へ要望してまいりたいと考えております。
 次に、サービス提供体制と制度周知についてでございますが、今般、障がい者の範囲に追加される130疾患の難病患者につきましては、現在、市町村事業である難病患者等居宅生活支援事業によりまして、ホームヘルプ、短期入所、日常生活用具の給付が受けられますが、難病患者の中には既に身体障害者手帳を交付され障害者自立支援法のサービスを受けている方や、介護保険の対象となっている方もいらっしゃいます。利用者は全国的にも少ない状況になってございます。
 県では、これまで、市町村や障害福祉サービス事業所を対象とした説明会のほか、難病関係団体、民生児童委員等が出席する研修会等において、制度の概要や施行までに必要な準備等について周知を図り、円滑な制度移行を期してきたところでございますが、今後は、さらに、医師会や医療機関等の協力もいただきながら、対象疾患の方への制度周知を図ってまいります。
 さらに、4月以降のサービス利用の状況や利用希望などを踏まえて、市町村等と連携しながら、サービス基盤の整備やサービスに従事する人材の確保等に取り組んでいきたいと考えてございます。
〇17番(岩渕誠君) 難病の問題では、この福祉サービスの問題と対をなす医療面での支援というものが、これは患者団体が非常に要望しているのですが、実はこっちのほうも課題が多いものと認識しております。専門医が不足していること、それから、広大な県域でありますので受診負担が重くなっていること、長期療養者を抱える家族全体の収入減少などがあります。
 こうした中でも、県は難病相談・支援センターを設置しておりますけれども、これは、就労支援活動も含め全国のモデル的事業として高い評価を得ておりまして、その機能強化にも期待が寄せられているところであります。
 今後、県として、センターの機能強化や難病患者への医療支援や通院、難病手当など経済的サポートをどのように考えるかについてお聞かせください。
 また、新年度予算案では、災害時の難病患者への対応についても予算計上されております。具体策をお示し願います。
〇保健福祉部長(小田島智弥君) まず、難病相談・支援センターの機能強化や難病患者への経済的サポートについてでございますが、県では、平成15年度に、難病患者の日常生活における相談や支援を行うため県難病相談・支援センターを設置し、これまで、就労に関する相談対応を行う就労支援員を配置したほか、当初予算案では、新たに難病患者支援に係る諸制度に関する普及啓発を行うことを目的に、難病患者や家族を対象とした研修会や説明会を実施するために必要な経費を計上したところでございます。
 先般、国の厚生科学審議会疾病対策部会で了承されました難病対策の改革についての提言におきましても、難病相談支援センターの機能強化が盛り込まれたところでございまして、県といたしましては、国による難病対策の法制化の動きを注視しつつ、引き続き、岩手県難病・疾病団体連絡協議会と協議をしながら、そのさらなる機能強化に取り組んでまいりたいと考えております。
 それから、難病患者への医療支援などの経済的サポートにつきましては、今後、国の難病対策委員会におきまして、医療費助成の対象疾患の拡大や難病患者の経済的負担の軽減について、引き続き議論されることとなっております。県といたしましては、その動向も踏まえながら、適切に対応してまいりたいと考えております。
 また、新年度予算案における災害時の難病患者に対する具体策についてでありますが、災害に伴う停電等におきまして、在宅難病患者が人工呼吸器等を使用できるようにするため、在宅難病患者に貸与する非常用発電機等について、県内の難病医療拠点病院、協力病院に整備することとしているところでございます。
〇17番(岩渕誠君) これは、難病患者さんのサービスの問題は、なかなか自分が難病を患っているということを表に出したがらない。病気の中身によっては詐病扱いされるというようなこともありますので、やはりそういったところの理解の進捗というところも、あわせて対応策を御検討いただければと思います。
 それでは、県産品の販売対策についてお伺いいたします。
 御案内のとおり、県内の農産品は、震災以来、風評被害もありまして販売環境が大変悪化しております。県では、国内外の商談会の開催やスーパーマーケットトレードショーなどに対して岩手県ブースの展開などを支援しております。私も視察をさせていただきました。達増知事みずから、そういったところ、さまざまなところに足を運んでおりまして、その姿勢にも敬意を表したいと思います。
 しかし、依然として販売環境は厳しいままであります。むしろBSEの規制緩和による影響など、新たな懸念も出ております。
 BSEの規制緩和は、本来であれば、日本が国際的なBSEステータスの分類において、管理されたリスクの国から、無視できるリスクの国、平たく言うと清浄国、安全な国ということになるわけですから、輸出増への期待など歓迎すべきことなのですけれども、とりわけ生産管理体制が不十分なアメリカ産牛肉の輸入の緩和の一方、国内の検査対象月齢の引き上げについては、国が、本来発揮すべきリスクコミュニケーションの機能を放棄しているなど、その対応には問題があると言わざるを得ません。
 厚生労働省は、屠畜場におけるBSE検査の対象月齢を現行の20カ月齢超から30カ月齢超に引き上げ、本年4月1日から施行するということになっておりますが、県は、現在、独自に全頭検査をBSEに関してはやっております。今後も継続するおつもりなのかどうか、今後の方針をまずお示しいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今後のBSE検査の体制についてでありますが、本県では、平成17年、国において検査対象を全頭から20カ月齢超に見直した後も、産地として消費者の信頼を確保していく必要があることから、全頭検査を継続実施してまいりました。
 今般、検査対象月齢が20カ月齢超から30カ月齢超に見直されましたが、和牛の屠畜月齢が30カ月齢前後に集中する中、この区分に従い検査を実施した場合、検査牛と未検査牛が混在し、市場の混乱や風評被害を招くおそれがあること、また、当面は検査に係る国の現行の補助制度が継続され県に対する新たな負担が生じることはないということなどから、本年4月1日以降も全頭検査を継続します。
〇17番(岩渕誠君) 非常に効果のある対策だと私は思います。
 一方では、安全ということ、安心ということをそれぞれ言われますけれども、安全は、科学的見地に基づいて基準線を引けば済むという話でありますが、安心は、それだけじゃいけないということは、これはBSEを見ても、放射能問題を見ても、御承知のとおりだと思います。やはり消費者に安心感を持っていただかないと販売はふえないというのが実態でありますが、現在の取り組みは、卸業者や小売業者向けの取り組みにとどまっているのではないでしょうか。もっと消費者にアピールをする機会があってもいいのではないかと思っております。
 また、岩手の若い生産者の中には、それこそ、みずから消費者に働きかけたいという意欲がありながら、その機会に恵まれないという人たちも多くおります。すばらしい岩手県の農林水産業であります。もっと踏み込んで、こういう若い人たちと取り組んだ販売対策というものも必要だと思いますが、認識をお示しください。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 消費者に安心感を与える踏み込んだ販売対策についてでありますが、県では、風評被害の防止に向けて、県産農林水産物の安全性確保の取り組みや生産者の一生懸命な姿をPRするポスターを作成して、首都圏の駅や電車、新聞、インターネット等から広く発信するとともに、実際の取引に結びつけるための商談会の開催のほか、県内外で生産者団体と連携した牛肉や海産物の試食販売など、消費者へのPR活動に取り組んでまいりました。
 県産農林水産物への信頼を回復していくためには、産地として生産物の安全性やおいしさを消費者に直接伝えていくことも重要と考えますことから、生産者が消費者に直接アピールする機会の設定も含めて、生産者団体と意見交換しながら、具体的な取り組みを進めていく考えです。
〇17番(岩渕誠君) 確かにポスター、立派なのをつくっておったと思います。私の地元の若い畜産農家、佐藤良君という、イケメンの農家でありますけれども、一生懸命頑張っている姿が出ておりましたけれども、やっぱり実物がいいんですね。実物はもっといいですから、ぜひ東京とか、そういった若い人たちをどんどん表に出してやっていただきたいと思います。
 全般的には、販売対策は頑張っているのではないかと思いますけれども、あえて申し上げますが、農産品の中で最も販売対策が見えないのは、米だと私は思っております。食味ランキングで特Aを維持していることや、このところ取引価格が上向いていることで取り組みが停滞しているのではないでしょうか。
 食味ランキングでは、ことしも確かに県南産ひとめぼれが18回目の特Aとなっておりますが、ランキングトップは熊本県でございます。このところ、北海道に加えて九州産の新銘柄が市場に攻勢をかけておりますし、東北でも山形が新ブランドを展開しております。岩手県はどうでしょうか。県が目指してきたプレミアムブランド米の取り組みも頓挫していると言わざるを得ませんし、新品種の開発も具体的には見えてきておりません。私は大変な危機感を持っておりますけれども、県の見解を示すとともに、今後の米の販売対策について明確にお答えください。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 今後の米の販売戦略についてでありますが、県では、生産者団体の販売組織である全農岩手県本部と共同で、本県産米の生産から販売までの戦略をいわて純情米の新たな戦略として取りまとめ、良食味米生産技術の向上や多様な販売ルートの開拓など、高品質、良食味米の産地づくりと県産米の販売力の強化に取り組んでおります。このような取り組みもあり、平成24年度の食味ランキングでも、御紹介のあったとおり県南産ひとめぼれは特Aを確保しておりますし、一等米比率も現在時点で全国1位となっているほか、系統販売の販売契約率は本年1月で9割を超えるなど、本県産米は品質、販売とも高い評価を得ているものと認識しております。
 今後も、安全性や品質にすぐれる県産米の特徴を県内外に情報発信するとともに、より高い県産米の評価を目指して、コシヒカリを超える良食味品種の育成にも取り組んでおりますので、全国の消費者から高い評価と信頼が得られるよう、取り組んでまいります。
〇17番(岩渕誠君) 私はこの米の販売戦略、何度かいろんなところで取り上げているんですが、いつも判で押したような答えでありまして、残念ながら今回もそうでありました。安全でおいしいというのはわかっています。それで、数字もそのとおりです。だけれども、もっと高く売りたいわけです。もっと量を売りたいわけです。そこで、農家の生計を立てていきたいわけです。そこが詰まっているから、何かもうちょっと考えてくれないかということでありますので、ぜひやっていただきたいと思います。この続きは予算委員会でやりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、世界遺産についてお伺いをいたします。
 平泉の世界遺産登録から2年近くが経過いたしましたが、登録効果そのものやデスティネーションキャンペーンもありまして、おかげさまで観光客の入り込み数も、過去2番目に多い264万人を記録いたしました。しかし、世界遺産に登録された国内の文化遺産は、登録後、観光客が押しなべて減少するなどしており、平泉にとってもこれからが課題でございます。世界遺産にふさわしいまちづくりや観光戦略などについて、県はどう取り組むおつもりでしょうか。加えて、平泉の場合は追加遺産を目指しております。柳之御所や骨寺村荘園遺跡の調査はどう進めていくのか、お示しいただきたいと思います。
 一方で、県内には、世界遺産を目指す一戸町の御所野遺跡と釜石市の橋野高炉跡など、いずれも貴重な文化的遺産があります。新年度は、この二つの遺産がいよいよユネスコに推薦書を提出するということになりますけれども、県内での認知度には課題が多いのが実情ではないでしょうか。県としてどう取り組むのか、お知らせください。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 世界遺産にふさわしいまちづくりや観光戦略についてでありますが、世界遺産にふさわしいまちづくりについては、これまで、地域との連携のもと、毛越寺通りの電線地中化や中尊寺通りの建物デザインの統一化、お休みどころの整備などが進められてきたところであります。
 今後も、中尊寺通りの電線地中化など、景観に配慮した環境整備や、食や物産など、地域資源の磨き上げによる魅力ある地域づくりを進めてまいります。
 また、観光戦略につきましては、世界遺産登録による誘客効果の維持、拡大を目的に、平泉と本県のさまざまな観光地を組み合わせた旅行ルートの定番化を図るため、いわてDCの取り組みなどにおいて、平泉と各地の観光資源を組み合わせた旅行商品や、平泉と各地をつなぐ二次交通の充実に努めてきたところです。
 今後とも、魅力ある地域づくりを誘客につなげていくため、平成25年度においても大型観光キャンペーンを実施し、平泉の食、物産の魅力の発信や、首都圏企業等への中長期滞在型旅行のセールス、本年4月から、DCを実施いたします宮城県の観光地から本県に向かうバスツアーの運行を初めとする二次交通の充実などに取り組み、誘客の維持、拡大に努めてまいります。
〇教育長(菅野洋樹君) 追加登録に向けた調査などについてでございますが、平泉の文化遺産の追加登録に当たりましては、専門家から基礎的な調査研究等の不足が指摘されていたことから、昨年10月に、一関市、奥州市、平泉町及び県による関係者会議を開催し、平成25年度から、当面5年間、調査研究を集中的に取り組むこととしたところでございます。
 県及び関係市町におきまして、その計画に基づき、追加登録のコンセプトとして想定されます都市などをテーマとした研究集会を開催するとともに、柳之御所遺跡及び骨寺村荘園遺跡につきましては、浄土との関係をより一層明らかにするための発掘調査等に取り組むことといたしております。
 次に、御所野遺跡と橋野高炉跡についてでございますが、御所野遺跡を含む北海道・北東北を中心とする縄文遺跡群と橋野高炉跡を含む九州・山口の近代化産業遺跡群の世界遺産登録に向けて、毎年、全国規模のフォーラムやシンポジウムを開催するとともに、パンフレットを作成するなどして認知度の向上に努めてまいりました。
 今後も、このような取り組みを継続するとともに、一戸町や釜石市を初め、事務局を担当する青森県、鹿児島県と連携を図りながら、資産の価値を十分に伝えるため、県民を直接の対象とした企画等を検討するなど、さらなる認知度の向上に努めてまいります。
〇17番(岩渕誠君) 私、今、三つの世界遺産を取り上げましたが、実はもう一つございます。それは、和食でございます。無形文化遺産で、岩手で言うと早池峰神楽もそうなんですけれども、これは今、推薦書を世界遺産登録に向けて出ております。ここには、一関の餅文化を初め、県内の事例も多く紹介されているんですけれども、県の取り組みはどうなっているでしょうか。早ければ、ことしの秋にも登録の可否が決まるということですけれども、ぜひ食の復興と岩手の食文化を世界に広げるためにも、しっかりと取り組んでいただきたいと思いますが、認識をお示しください。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 和食の世界無形文化遺産登録に向けた取り組みについてでありますが、国においては、日本人の伝統的な食文化としての和食につきまして、本年12月のユネスコ政府間委員会での世界無形文化遺産登録を目指しておりますが、県は登録申請の前の段階から、国に本県の食文化や伝承、普及活動の状況を紹介して、平成23年12月には、登録への賛同団体となるなどの取り組みを進めてまいりました。
 現在、国では、シンポジウムを開催するなど、登録実現に向けた国民的な機運醸成を図っておりますが、本年1月に仙台市で開催されたシンポジウムでは、本県の一関の餅文化の活動事例も発表されており、県としても、和食の世界無形文化遺産登録は、本県の特色ある食文化を広く知ってもらう好機と捉えて、引き続き登録実現に向けた国の動きと呼応しながら、本県の食文化の情報発信に取り組んでまいりたいと考えております。
〇17番(岩渕誠君) ありがとうございました。
 最後に、県の防災計画についてお尋ねをしてまいります。
 県は、震災を受け新しい防災計画の策定を進めております。今月中にも正式決定されるとお聞きをしております。この中で、初めて避難対策を中心とした原子力災害対策編がまとめられましたが、この中では、原子力事業者から情報提供を受けることとなっております。これは、協力を求めるレベルにとどまるのか、協定として正式に締結をするつもりなのか、明確になってはおりません。県の方針をお示しいただきたいと思います。
 また、この問題では、立地周辺自治体からの避難という、もとの関係性も出てまいります。県域をまたいだ連携と調整が必要だと思っておりますが、今後の対応についてお答えを願いたいと思います。
 さらに、この防災計画では、国の旧原子力安全委員会において検討されておりました原発の30キロから50キロ以内の範囲での安定ヨウ素剤の配備について見送られております。50キロ以内ということになりますと、女川原発から一関市の南側はその圏内に十分に入っております。この安定ヨウ素剤の配備については、国の方針が後退したということに県も連動したと私は受けとめておりますけれども、子供たちの健康被害に関連する大変重要な視点でもあろうかと思います。今後の配備の可能性についてお示しをいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) まず、原子力事業者からの情報提供に係ります県の方針についてでございますが、県では、原子力災害対策編を実効性あるものにするために、重大な事故に結びつくような事象につきまして、事象発生後、速やかに情報収集することが不可欠と考えております。このため、東北電力株式会社と、原子力災害対策特別措置法に規定されている原子力緊急事態宣言に結びつく事象を初めといたしまして、発電所敷地内における火災等、国への報告が義務づけられている事象につきまして、県において速やかに連絡を受けることを内容といたしました、履行する責任のある協定として締結するよう、現在、協議を進めているところでございます。
 次に、避難対策における県域を越えた連携と調整についてでありますが、今般の県地域防災計画の見直しにおきましては、原子力災害を含め、他県において災害が発生し、本県に対して避難者の受け入れ要請があった場合には、県内市町村と連携、協力しながら、県外避難者を受け入れることとする規定を新たに盛り込んだところでございます。今後、この見直しを踏まえまして、県外避難者を本県において受け入れるための具体的な手順等を定めたマニュアルを整備していく予定でございます。
 このマニュアルの整備に当たりましては、原子力災害発生時、こういったことも含めまして、青森県及び宮城県と適切に連携が図られるよう、両県の原子力災害対策編の見直しの状況でございますとか、そもそも両県の意向、そういったことも十分に確認しながら、その内容を調整していきたいと考えております。
 3点目に、安定ヨウ素剤についての今後の配備の可能性についてでございます。
 原子力規制委員会がさきに公表いたしました原子力災害対策指針の改定案におきましては、原子力事業所からおおむね半径5キロメートルの区域においては、平時から地方公共団体が住民に対する安定ヨウ素剤の配布体制を整備し、緊急時におきましては、原則として、避難と同時に安定ヨウ素剤を服用できるようにしなければならないとされましたものの、半径5キロメートルということでございまして、その以遠の区域につきましては、今後の検討課題とされたところでございます。
 こうした原子力規制委員会における検討状況でございますとか、県の防災会議専門委員に任命いたしました放射線医療分野等の有識者の助言を踏まえまして、今般策定いたしました原子力災害対策編の案には、安定ヨウ素剤の備蓄等については盛り込まなかったところでございます。
 今後、原子力規制委員会、これから検討課題ということでございますので、この検討が進む可能性があるという面もございます。安定ヨウ素剤に関しまして、本県の区域を見ても備蓄等の対策を講じていく必要性が出てくることも考えられますので、そうした場合には原子力災害対策編を見直すなど、適切に対応していく考えでございます。
〇17番(岩渕誠君) ぜひ、しっかりとやっていただきたいと思います。
 きょう取り上げました課題のうち、何点かは県境でとどまる問題ではない、県境をまたいだ問題というのが数多くあるわけであります。私はまさに県境の地域に住んでおりまして、隣のいいところ、隣の悪いところ、地元のいいところ、悪いところ、非常に比較検討がしやすいところにあります。
 一方で、そうは言いながら、やはり連携をして、いいところは学びながら、そしてお互いに知恵を出すところは知恵を出してというところが、復興においても必要になってくると思います。ぜひとも、そういう広域連携についても一層踏み込んだ形で県政を展開していただくことを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木博君) 以上をもって岩渕誠君の一般質問を終わります。
 次に、久保孝喜君。
   〔15番久保孝喜君登壇〕(拍手)

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