平成15年6月定例会 第3回岩手県議会定例会 会議録

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〇知事(増田寛也君) 本日、ここに第3回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 私は、このたび、県民の皆様から多くの御支援をいただき、三たび県政を担当することとなりましたが、県民の皆様から寄せられた期待の大きさと責任の重さに身の引き締まる思いがいたします。
 これからの4年間は、知事に初当選した新人のつもりで、これまで私が8年間取り組んできた政策についても、全く新しい視点でこれを見直し、その結果、改めるべきものは大胆にこれを改めるなど、これからの岩手を、経済的にも精神的にも自立する非常に強固な自治体としていくため、全身全霊で取り組む決意であります。
 今日の国際社会は、経済、地球環境などのさまざまな分野において、国際的な連携や国家間の相互依存が一層拡大するなど世界的な連帯感が醸成される一方で、東西冷戦構造の終えんにより、これまで顕在化していなかった宗教や民族をめぐる対立や人道上の問題が各地で発生するなど不安定な情勢にあり、世界平和や国際協調のあり方が、これまで以上に強く問われてきております。
 さらに、2001年9月11日のアメリカにおける同時多発テロは、世界平和や国際協調のあり方についての考え方を大きく変えました。それ以来、国際紛争の解決方法について、国連を中心として国際協調を図ろうとするのではなく、軍事力などの力によって国際秩序を維持しようとする考え方が大きな位置を占めるようになってきております。
 私は、21世紀の国際平和は、全地球的な立場からの国際協調を基本とすることで成り立つものと考えており、今、世界で唯一の被爆国である我が国に求められているのは、まず、私たち国民一人一人が、日ごろから国際平和の問題に真摯に向き合い、常にみずからの問題としてとらえていくとともに、国においても、平和に対する国民的コンセンサスを得て、しっかりとした外交理念を確立し、全地球・全人類のために主体的に平和を希求する努力を積み重ねることであり、また、国連を中心とした国際協調を進める担い手としての役割を積極的に果たしていくことであると認識をしております。
 さて、国内に目を転じますと、右肩上がりの経済成長が終わりを告げ、長引く景気の低迷と先行き不透明な経済社会情勢が続く今日、我が国がこうした閉塞状態から立ち上がり、豊かで安らぎのある社会を実現するためには、これまでの中央省庁主導の画一的な中央集権的行政システムを、生活者や地域の視点に立って、みずからの責任で物事を決めていくことのできる住民本位の新しい行政システムにつくり変えていくことで、地方みずからが地域の経営を担う自立型の社会を形成していくことが何よりも重要であると考えております。
 こうした地域自立型の社会を形成していくためには、地方分権改革を強力に推進することが必要であります。
 まず、いわゆる補完性の原理に基づき、事務や権限の配分に当たっては、住民に身近な事務については基礎的自治体である市町村が担い、次いで市町村が処理できないものは県が担い、国際的な事項や全国的視点に立って行うべき事務などは国が担うというような、国と地方、さらには都道府県と市町村との役割分担を明確にする必要があります。
 あわせて、地方においては、その財政基盤を確立するため、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を見直し、これを三位一体として改革し、制度的にも地方の税財源を確保充実する必要があります。
 さらに、地方自治体間にあっても、相互に連携・協調・補完し合いながら、その自立性を高めていくことが重要であり、とりわけ、住民に最も身近な基礎的自治体である市町村が、合併などによりその行財政基盤を強化し、自立的な地域づくりを進めていくことが必要であります。
 また、地域に暮らす人々も、その創造力を十二分に発揮し、みずからの判断と責任でお互いに役割を分担しながら、個性豊かな地域づくりに主体的に参画していくことが大切であります。
 私は、このように、地方分権改革を進めることによって、地方が国の関与や庇護から脱却して、地域住民の意思に基づき、みずからの判断と責任で、地域の特性を生かしながら、魅力ある地域づくりを進めていくことができるものと考えております。
 平成5年8月の細川内閣の成立以降、地方分権改革の動きが活発化し、私が知事に当選した平成7年当時は、地方分権推進法案が閣議決定されるなど、その動きは一層の高まりを見せておりました。
 こうした地方分権改革の大きな動きを背景にして、私は地方が住民本意の立場に立って、みずからの判断と責任により物事を決めることができるという地方分権改革の精神の先取りに努め、例えば、徹底した情報公開や県政への住民参画、現場において地域課題に総合的かつ迅速に対応できるようにするための地方振興局の機能強化等、生活者主権、地域主権の観点に立った仕組みづくりに積極的に取り組むとともに、市町村への大幅な事務移譲や総合補助金の創設などにより、市町村が自主的に総合行政に取り組めるよう努めてまいりました。
 このように、私は、2期8年間を、地域の自主性、自立性を高めるために最大限努力してまいりましたが、こうした取り組みを進めていく中で、地方の自立を困難にしている根深いさまざまな問題があらわれてきました。
 例えば、ただひたすら中央に追いつくことを目指してきたぬぐい切れない中央志向の問題、地方の実情とかけ離れた霞が関の基準、いわゆる霞が関スタンダードの安易な受け入れ、経済対策や地域振興といった観点から進められてきた公共事業等は、それらによって地方の社会資本の整備は進んだものの、結果として地方財政の疲弊を招くとともに、地方の自助努力を損ね、地方の自主性、自立性の芽を摘み、中央に依存しがちな土壌がつくり上げられてきており、地方分権改革が進む中でも、依然としてその依存体質から脱却できずにいます。
 私は、この際、こうした地方の自主性、自立性を困難にしている構造的な問題に真正面から向き合い、国に対してその改革を求めるとともに、みずからもその姿勢を率直に反省し、経済的にも精神的にも自立した社会の実現を目指していく考えであります。
 すなわち、豊かな自然環境や農林水産物などの地域資源に加え、岩手発の新しい産業技術やこれまでの産業集積を生かした産業の活性化を図り、多様で厚みのある産業構造を構築することによって安定した雇用の場を創出し、すべての県民が安心して暮らせるような社会、とりわけ、これからの岩手を担う若者が希望を持って生活できるような社会を築き上げていきたいと考えております。
 あわせて、県民の皆様が、心の豊かさやゆとりを実感できるような社会、つまり、県民一人一人が、経済的な利益を偏重したり、効率性のみを追求するといったような価値観よりも、恵まれた時間や安らぎ、自然の中で、地域の歴史や文化と向き合い、物心ともにバランスがとれ、人間らしく生きることを大切にする社会を創造してまいりたいと考えております。
 私は、これからの任期4年間を自立を進める4年間と位置づけ、県民一人一人が、自立した個人として主体的に活動し、また、それぞれの地域が、個性を持って生き生きと光り輝き、それが県全体の活力となっていく地域づくりに全力を尽くす考えであります。
 まず、真に自立した地域社会の形成を図るためには、その前提として、現在の県の行財政の構造を、自立のための政策を強力に推進していくことができるような体制や体質に転換していかなければならないと考えております。
 そこで、私は、これまでの県の行財政のあり方に鋭くメスを入れ、一切の聖域を設けず、あらゆる分野において一から徹底的に洗い直し、抜本的な改革を断行する決意であります。
 この改革の目指すものは、従来のような単なる歳出の一律削減や収支の均衡を図ろうとするだけのものではなく、これまでの常識にとらわれない全く新しい視点に立って、自立のための政策を着実に推進していけるような、非常に強固な行財政構造に改めることであります。
 私は、この改革を通じて、県の体制をスリムで効率的なものとしながらも、県民の皆様にこれまで以上に質の高い行政サービスを提供できる仕組みに変えていく決意であります。
 特に、以下の5点について、平成18年度までに実現できるよう全力を尽くしてまいります。
 第1に、公共事業の投資規模を、平成14年度の当初予算を基準として平成16年度までに30%を段階的に削減し、国の経済対策が推進された以前の平成3年度決算ベースの水準に平準化するとともに、政策の選択と集中、事務事業の徹底的な見直し等の歳出削減策により、一般財源を4年間で200億円生み出し、特に県民から施策の充実が求められている環境、雇用、福祉、教育などの分野に重点的に取り組みます。
 第2に、地域の経済力を高めることが、県の安定的な財政基盤の強化につながるとの観点から、産業の活性化や雇用の創出策を積極的に講ずることや、新しい税制度の創設などにより、安定的な税源の確保を図ります。
 第3に、県のこれまでの仕事の仕組みを、県民本位の視点に立ってすべてゼロベースで見直し、組織・職員体制も徹底的にスリム化し、人件費総額を削減いたします。
 第4に、平成18年度には、人口減少、低経済成長のもとであっても、持続可能な財政運営が可能となるよう、新規の県債発行額を県債元金償還額以下に抑えること、いわゆる県版プライマリーバランスの均衡を達成するとともに、将来の世代に過大な負担を残すことのないような財政構造を構築いたします。
 第5に、県・市町村・民間の役割分担を見直し、市町村への権限移譲、民間への業務委託などを積極的に進めるとともに、NPOなど多様な主体の参加と協働により、より一層質の高い公共サービスを提供いたします。
 行財政構造改革を進めていくとき、これまでのように、すべての県民の皆様の御要望にこたえるように行ってきた、あれもこれもということはできなくなります。これからは、受益と負担の関係を明確にし、地域にとって真に必要なものは何か、すなわち、あれかこれかを、住民みずからの判断で決定していただくことが必要となってまいります。
 こうした取り組みの過程においては、必ずしも県民の皆様すべての御満足をいただけないこともあるかもしれませんが、県民の皆様に対し繰り返し十分な説明を行い、可能な限りの御理解、御納得をいただけるよう努めてまいります。
 私は、今後4年間、強いリーダーシップを発揮してこの行財政構造改革を断行し、次の七つの施策に重点的に取り組んでまいりたいと考えております。
 第1に、産学官の連携をさらに強めながら、地域の資源や新しい技術を生かした新しい産業が活発に展開する、21世紀型の新しい産業先進県を実現いたします。
 第2に、産業廃棄物の不法投棄対策の推進や二酸化炭素排出量削減の努力などにより、環境首都を目指す環境先進県を実現します。
 第3に、子供たち一人一人が健康で、知性においても人間性においてもバランスのとれた人間に育つよう、新しい時代を担う人づくり教育推進県を実現します。
 第4に、健常な人も障害を持つ人も、男女の別なくすべての人々が自立し、不自由なく日常生活ができるよう、バリアのないユニバーサル社会先進県を実現します。
 第5に、すべての人々が健やかで、どこに住んでいても行き届いたサービスを受けることができる、安心して暮らせる社会先進県を実現します。
 第6に、地域の特性を生かした安全・安心な食を確立し、県内外に向けた農林水産物の供給基地を形成する、スローライフを基調とした食と森先進県を実現します。
 第7に、すべての県民が、高度情報化社会のメリットを身近に実感できる、だれでもいつでも情報を受発信できる情報先進県を実現します。
 こうした取り組みを通じて、経済的にも、精神的にも、また、物的にも、人的にも、さらには知的にも自立した岩手を目指してまいります。
 今回提案した補正予算においては、厳しい財政環境にはありますが、政策評価を一層徹底するとともに、政策形成・予算編成システムの本格的な導入により、行政ニーズに即し、かつ、行政サービスの質の向上に直結する政策立案と予算編成事務の簡素合理化を図りながら、県民の方々にとって緊急度と優先度の高い施策を厳選して計上したところであります。
 特に、自立した地域社会の形成に向けて、新たな政策を進めていくプロジェクトを中心として事業を重点化したところであり、今後、その着実な執行に努めてまいります。
 以下、平成15年度の主要な施策について、七つの重点施策ごとにその概要を申し上げますが、その中で、雇用対策と青森県境産業廃棄物不法投棄事案への取り組みと循環型社会の形成、この二つについては、特に緊急に取り組まなければならない課題であり、任期前半の2年間で成果が上がるよう最優先に取り組んでまいります。
 第1に、雇用対策についてであります。
 完全失業率が高水準で推移するなど、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いていることから、新たに知事直轄組織として総合雇用対策局を設置したところであり、今後、この組織を中心として、雇用対策について全庁を挙げて最優先に取り組んでまいります。
 特に、若年者の雇用については、近年の経済の低迷の中で企業が新規採用を抑制するなど、大変厳しい状況にありますが、こうしたことは、長期的に見ても我が国の大きな損失であります。
 そこで、若年者が希望する仕事につくことができるよう、来春卒業予定の高校生を対象として、全県規模の就職面接会や職業講習等を実施するほか、未就職者を対象とした就業体験を行うなど、就職支援の一層の強化を図ってまいります。
 また、緊急地域雇用創出特別基金事業等を活用し、雇用の場を確保するとともに、意欲ある起業家の育成や新分野の創業支援、成長分野の企業誘致に取り組んでまいります。
 特に、サービス関連産業については、地域の資源を生かした幅広い創業が期待できることから、雇用の受け皿として大きな可能性を有しておりますので、今後、サービス関連産業の創出に積極的に取り組み、平成14年度から平成18年度までの5年間に新たに1万5、000人の雇用を創出し、地域経済の活性化につなげてまいります。
 また、障害者の就業支援を充実するため、県内で3カ所目となる障害者就業支援センターの設置に取り組んでまいります。
 さらに、構造改革が求められている建設業については、新たな雇用の創出と拡大を目指し、企業連携、新分野への進出、新市場の開拓などを積極的に支援し、経営基盤の強化を図りながら技術と経営にすぐれた企業の育成に取り組んでまいります。
 第2に、青森県境産業廃棄物不法投棄事案への取り組みと循環型社会の形成についてであります。
 青森県境における産業廃棄物の不法投棄事案については、早急に地域の安全な生活環境を取り戻すため、人の健康または生活環境に被害を生ずるおそれのある特別管理産業廃棄物の撤去をおおむね3年程度で完了するとともに、廃棄物撤去の措置命令を発するなどして、排出事業者等の責任を徹底追及してまいります。
 また、新設した産業廃棄物税等を活用し、産業廃棄物等の減量やリサイクルを促進するため、産業界の取り組みや技術開発を支援し、環境関連産業の振興を図るとともに、循環型社会の担い手として、優良な産業廃棄物処理業者の育成を進めてまいります。
 次に、七つの重点施策であります。
 第1に、21世紀型の新しい産業先進県の実現に向けた施策についてであります。
 商工業の振興については、国際的な競争環境の中で足腰の強い産業を発展させていくため、県内の大学などのポテンシャルを生かした有望な研究テーマを重点的かつ柔軟に支援する制度を創設し、研究開発型企業の育成や立地の促進に努めるとともに、将来に向けた新しい産業を育成するため、創業・ベンチャーへの重点的な支援を行うほか、自動車関連産業の育成など、ものづくり産業の高度化と集積に取り組んでまいります。
 また、本県の豊かな森林資源を活用したいわて型ペレットストーブの普及を図るなど、新たな視点に立った緑の産業の振興に取り組んでまいります。
 第2に、環境首都を目指す環境先進県の実現に向けた施策についてでございます。
 平成22年の二酸化炭素排出量を平成2年レベルから8%削減する目標の達成に向けて、地域における実践的な環境配慮活動の展開を促進するとともに、事業者への排出量の削減を指導するほか、環境林整備に係るグランドデザインを策定してまいります。
 また、廃棄物の適正処理やリサイクルを進めるため、盛岡以北に資源循環型モデル施設を整備する方向で検討を進めるとともに、産業廃棄物の不法投棄対策については、産廃Gメンによる立入検査や隣県との県境合同パトロールなどのほか、GPSによる監視システムの実証試験を行うなど、監視指導の強化を進めてまいります。
 さらに、エネルギー需給における環境負荷の低減及び電力自給率の向上を目指し、新エネルギーの導入や省エネルギーについて普及・啓発に努めるとともに、太陽光や風力、地中熱さらには木質バイオマスなど、地域特性に応じた自然エネルギーを複合利用するシステムについて、モデル地域でその実現の可能性について調査するほか、太陽光発電などを取り入れたいわて環境共生住宅の普及に努めてまいります。
 また、ふるさとの森と川と海を守るという理念に立った条例を整備し、良好な環境を次の世代に引き継ぐための施策を推進してまいります。
 第3に、新しい時代を担う人づくり教育先進県の実現に向けた施策についてでございます。
 児童生徒の学力の向上を図るため、学習の定着度をより正確に把握し、習熟の程度に応じたきめ細かな指導の充実を図るとともに、教員の指導力向上のための実践的な研修を進めてまいります。
 また、学習障害児などの教育の充実やその保護者等の不安解消に向け、各地域の盲・聾・養護学校を地域の特別支援教育センターとして、その機能を強化いたします。
 さらに、生徒・保護者の価値観の多様化などに対応して、県立高等学校の後期整備計画の策定に取り組むとともに、より多くの選択肢を生徒・保護者に提供するため、併設型中高一貫校やコミュニティ・スクールなど、新しいタイプの学校づくりを推進いたします。
 また、小学校における英語教育のモデルカリキュラムの開発に取り組むとともに、県立学校に民間人の校長を登用するなど、特色ある学校づくりに取り組んでまいります。
 さらに、スポーツの振興については、県民の豊かなスポーツライフの実現に向け、広域スポーツセンターを整備するなど、地域における生涯スポーツを一層推進してまいります。
 第4に、バリアのないユニバーサル社会先進県の実現に向けた施策についてであります。
 すべての人々が自立し、不自由なく日常生活が送れるよう、県民、事業者の方々に対してユニバーサルデザインの考え方の一層の普及を図り、ひとにやさしいまちづくりの推進に努めてまいります。
 また、障害のある人が住みなれた地域において自立し、就労しながら生活できるよう、グループホームや障害者福祉作業所等の整備を拡大するほか、授産施設等の安定した経営の仕組みづくりを検討してまいります。
 さらに、男女が対等な立場で、その個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現に向けて、男女共同参画サポーターの養成などによる人材育成や、県民を対象とするさまざまな研修を実施するとともに、自主的な地域活動に対する支援や市町村における男女共同参画計画の策定を進めてまいります。
 第5に、安心して暮らせる社会先進県の実現に向けた施策についてでございます。
 自分や家族の望むスタイルで医療が受けられる環境を整備するため、県民への健康情報の提供のあり方を検討するとともに、医療従事者の人材育成や情報ネットワークを活用した小児救急体制の整備等を進め、質の高い県民医療の基盤整備に努めてまいります。なお、SARS(サーズ)等の感染症への対策を強化するなど、健康危機管理体制の整備も進めてまいります。
 また、本年3月に策定したいわていきいきプラン2008に基づき、高齢者が元気で生きがいを持ちながら安心して暮らせる地域社会の構築を進めるほか、老人福祉施設や介護老人保健施設等の整備を進めてまいります。
 さらに、子供を産みやすい、育てやすい岩手県の実現を目指し、県立児童館いわて子どもの森と各地域の児童館等との連携により、児童の健全育成を推進するとともに、地域と一体となった子育て支援体制の整備を進め、次代を担う子供たちが健やかに育つ環境づくりに取り組んでまいります。
 第6に、スローライフを基調とした食と森先進県の実現に向けた施策についてであります。
 生産者と消費者の結びつきを強化し、食品に対する安心感や信頼感を築き保っていくため、県内産の牛肉のほか、米、ネギ、リンゴ、ワカメなどの食品履歴情報の開示に向け、積極的にトレーサビリティシステムを導入していくほか、地産地消を一層強力に展開するとともに、その基盤整備に向けて、水田農業や養殖漁業の構造改革を進めてまいります。
 また、ゆとり・安らぎなど本県の特性を生かしたグリーン・ツーリズムを進めるとともに、いわて自然健康院構想の普及啓発を図り、自然、歴史・風土、文化などの地域資源を生かした地域づくりを進めるほか、こうした岩手らしいぬくもりを感じることができる観光の創出に取り組んでまいります。
 さらに、森林・林業の活性化を図るため、公共施設や公共工事において率先して県産材の利用に努めるとともに、木質バイオマスエネルギーの利用拡大に取り組んでまいります。
 また、いわてブランドの育成・定着に向けて、伝統工芸品関連産業等における商品開発や販路拡大を支援するとともに、首都圏等において食の情報発信を進めるなど、県産品のPRと需要拡大に取り組んでまいります。
 第7に、だれでもいつでも情報を受発信できる情報先進県の実現に向けた施策についてであります。
 住民や地域の視点に立った情報化に向けて、携帯電話や高速インターネットが利用できる地域の拡大に努めるとともに、生活に密着した行政情報や文化情報を提供するほか、地域の情報化を牽引する専門家の育成に努めてまいります。
 また、県民サービスの一層の向上を図るため、電子県庁の構築に向けて、電子入札システムの整備に着手するとともに、市町村の電子自治体の構築を支援してまいります。
 以上、今後における県政運営の基本方針と、平成15年度の主要施策の概要について申し上げました。
 右肩上がりの成長がもはや望めない今日、県民が豊かでゆとりのある生活を確保していくためには、地方は、もはや国からの改革を座して待っているわけにはまいりません。
 いつの時代においても変革をリードしてきたのは、地方であります。
 今こそ、県民一人一人が立ち上がって、岩手の自立に向けて、しっかりと地に足のついた改革に取り組み、みずから未来を切り開いていくことが必要でございます。
 切り開いていく未来は、いつも手探りであります。しかし、試行錯誤を繰り返しながらも勝ち取っていく未来にこそ、私は意義があると考えております。
 私は、岩手における地域の自立へ向けた改革の火の手が、全国に燎原の火のごとく広がり、それが日本を変えていく起爆剤になればと強く願っております。
 我が郷土の長い歴史に思いをめぐらしますと、私たちの先人は、すぐれた英知とたゆまぬ努力を積み重ねて、前に立ちはだかる幾多の困難を乗り越えてまいりました。
 新渡戸稲造博士は、その著書一日一言の中で、「意思あれば道あり……堅き決心の前には山も崩れ……荊棘の中にも作れば路は出来る。」このように述べております。
 私は、博士のこの精神をしっかりと受け継いで、たとえイバラの険しい道であっても、その先には、すべての県民が心の底から幸せを感じることができるような明るい社会があることをかたく信じて、4年間全力で取り組む決意であります。
 議員の皆様の一層の御理解、御協力と県民の皆様の自立へ向けた新しい岩手づくりへの積極的な参加を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   
日程第4 議案第1号平成15年度岩手県一般会計補正予算(第1号)から日程第45 報告第7号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで

〇議長(藤原良信君) 次に、日程第4、議案第1号から日程第45、報告第7号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。時澤総務部長。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕

〇総務部長(時澤忠君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成15年度岩手県一般会計補正予算であります。
 御案内のとおり、当初予算は、統一地方選挙が予定されていたため、いわゆる骨格予算として編成したところであり、今回の補正は、新規または政策的な経費を中心に、緊急度と優先度の高い施策を厳選して計上するとともに、去る5月26日に発生したいわゆる三陸南地震に伴う災害の復旧に要する経費等について、総額で137億9、200万円余を補正しようとするものであります。
 補正の主なものは、特別養護老人ホーム施設整備費補助4億3、300万円余、児童福祉施設整備費5億7、100万円余、循環型地域社会形成推進事業費1億5、300万円余、緊急地域雇用創出特別基金事業費補助4億2、000万円、治山事業費8億5、900万円余、港湾災害復旧事業費4億4、700万円、学校施設災害復旧事業費1億8、900万円余等であります。
 次に、債務負担行為の補正は、社団法人全国農地保有合理化協会が社団法人岩手県農業公社に融通した資金の損失補償について新たに追加しようとするものであります。
 また、地方債の補正は、老人福祉施設整備ほか1件を新たに追加するとともに、土地改良事業ほか12件の限度額を変更しようとするものであります。
 議案第2号は、平成15年度岩手県県有林事業特別会計補正予算でありますが、これは、事業計画の変更に基づいて所要の補正をしようとするものであります。
 議案第3号から議案第7号までの5件は、予算の補正に伴う建設事業に要する経費の一部負担及び一部負担の変更に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第8号から議案第28号までの21件は、条例議案でありますが、これは、岩手県県営建設工事入札契約適正化委員会条例及びいわて銀河鉄道経営安定化基金条例を新たに制定するとともに、政治倫理の確立のための知事の資産等の公開に関する条例、特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例など19条例の一部を改正しようとするものであります。
 議案第29号から議案第32号までの4件は、工事の請負契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第33号は、財産の譲渡に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第34号は、損害賠償請求事件に係る和解及びこれに伴う損害賠償の額を定めることに関し議決を求めようとするものであります。
 議案第35号は、公平委員会の事務の受託の協議に関し議決を求めることについてでありますが、これは、規約を定めて公平委員会の事務を岩手中部広域行政組合から受託しようとするものであります。
 報告第1号から報告第5号までは、平成14年度一般会計及び特別会計の繰越明許費の繰越し及び事故繰越しについて報告するものであります。
 報告第6号は、公営企業予算に係る支出予算の繰越額の使用計画について報告するものであります。
 報告第7号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願いいたします。
   
日程第46 議案第36号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについて

〇議長(藤原良信君) 次に、日程第46、議案第36号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについてを議題といたします。
 提出者の説明を求めます。高橋副知事。
   〔副知事高橋洋介君登壇〕

〇副知事(高橋洋介君) 本日提案いたしました人事案件について御説明いたします。
 議案第36号は、人事委員会の委員であります伊藤方子氏の任期が7月2日で満了となりますので、その後任として、新たに、阿部由美子氏を選任するため、議会の同意を求めようとするものであります。
 よろしく御審議の上、原案に御同意くださいますようにお願い申し上げます。

〇議長(藤原良信君) お諮りいたします。ただいま議題となっております議案は人事案件でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(藤原良信君) 御異議なしと認めます。よって、これより議案第36号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 ただいま議題となっております議案第36号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(藤原良信君) 起立全員であります。よって、議案第36号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについては、これに同意することに決定いたしました。
   
日程第47 発議案第1号岩手県議会会議規則の一部を改正する規則(継続審査の分)

〇議長(藤原良信君) 次に、日程第47、発議案第1号岩手県議会会議規則の一部を改正する規則を議題といたします。
 本件につきましては、去る5月9日に行われました第1回臨時会の本会議におきまして継続審査とされましたことから、5月30日及び6月16日に議会運営委員会を開き、慎重に審査をいたした結果、採決をすべきとの結論に至った次第でありますので、御報告いたします。
 これより討論に入ります。
 討論の通告がありますので、発言を許します。佐々木博君。
   〔29番佐々木博君登壇〕


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