平成24年9月定例会 第7回岩手県議会定例会 会議録

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〇28番(関根敏伸君) 希望・みらいフォーラムの関根敏伸でございます。
 発議案第2号消費税増税時の低所得者等対策に関する意見書に対し、反対の立場から討論いたします。
 さきの通常国会において、税と社会保障の一体改革関連法案が可決、成立いたしました。しかしながら、この法案の衆参の審議の過程において、国論を二分するかのような議論が起こる中で、国会は大きな混乱を来し、現在の事態に至っていることは議員各位御承知のとおりでございます。
 提案されております発議案は、今回成立した法律の施行に際し、逆進性の対策を含めた低所得者対策等を国に求めているものであります。私は、そこに書かれている趣旨すべてを否定するものではありませんが、そもそも、今一度、この法律自体の是非を再び問い直すことこそが必要であるという立場から反対をするものであります。
 その理由の1点目は、この法律は、その成立過程と手続において、十分な正当性を満たしていないと言わざるを得ない点であります。
 政権選択選挙となった平成21年の衆議院選挙において、民主党はそのマニフェストには消費税増税には一切触れず、当時の鳩山代表も、4年間は消費税を上げないことを明言し、結果、308議席の獲得という圧勝の中に歴史的な政権交代が実現いたしました。その後、鳩山内閣から政権を引き継いだ菅総理は、突如、消費税の増税を含む政策の大転換を打ち出しましたが、直後に行われた参議院選挙において民主党は敗北を期し、現在の衆参のねじれを生じさせることになったのであります。
 この二つの選挙結果を通じて明らかになったことは、消費税増税に対する主権者である国民の意思は、既に二度にわたり明白に示されているということであります。
 さらに、民主党内の意見集約に当たり、一任取りつけによる審議の打ち切りが法案に慎重な議員の反発を招き、結果として党分裂に至ったものでありますが、みずから掲げたマニフェストを捨て、他党のマニフェストの実現を図ろうとする党の方針に対し、徹底審議と納得のいく説明を求めるのは当然のことであります。
 国政は主権者である国民の厳粛な信託の上に成り立っているという憲法の大原則に立ち返れば、この手続は本当に正しかったと言えるのでありましょうか。
 今回の成立過程における審議のあり方と、決める政治という名目のもとに行われた3党合意という手法は、議会制民主主義の否定に直結するものであると言わざるを得ません。
 2点目は、改革という冠が付された法の立法趣旨と、その実態が余りにもかけ離れているということであります。
 そもそも、この議論の出発点は、少子高齢化の流れの中で、社会保障費の安定財源を消費税に求めると同時に、社会保障制度の充実、安定化、さらには、財政の健全化をも同時に達成しようという目的で始まったものであります。しかしながら、今回成立した法律は、増税の時期と税率は明記されているものの、将来にわたる持続可能な社会保障制度の方向性や財政健全化のための道筋が全く明確にされておらず、単に増税を決めただけと言われてもいたし方ないものがあります。さらには、既にこの増税分をめぐったさまざまな予算獲得の動きも見え始めており、改革という趣旨が全く置き去りにされていると感じざるを得ないものであります。
 3点目は、財政再建の目的を持った増税の実施が、その意図するところとは反対に、国民生活や経済活動に大きなブレーキをかけることとなり、結果として増収に結びつかない可能性が否定できないということであります。
 平成9年、橋本政権下で実施された消費税の増税が、当時、ようやく回復基調にあった日本経済を極度の増税不況に陥らせ、税収の増加に結びつかないばかりか、長期にわたって個人消費を冷え込ませ、その後遺症に長年にわたって苦しめられたことは、記憶に強く残っているところであります。
 増税時には4兆円の税収増になったものの、その2年後には所得税と法人税で合計6兆5、000億円の減収となり、増税分が完全に吹き飛んでしまったとされております。現在の円高とデフレ、欧州経済の状況、さらには、中国や韓国との経済摩擦の長期化が懸念される中、今、増税にかじを切ることには大きなリスクが伴うということを正面から直視する必要があります。
 時に、財政再建は焦眉の急と主張されることがありますが、経済動向に十分配慮しない財政再建や増税は経済を悪化させると同時に、財政収支をも悪化させるとの主張は、多くの専門家からも指摘されているところであります。
 4点目は、言うまでもないことでありますが、この増税の影響を最も強く受けるのは、震災の被災地とそこに住む住民であるということであります。
 今、県当局を含む関係者の懸命の努力によって、復興への取り組みが進められておりますが、増税が予定される2年後は、まさに住宅の再建や産業の再生が本格化する時期でもあります。増税は日々の生活の中にも当然重くのしかかってまいりますが、特にも住宅を初め、なくした財産を一つずつ取り戻していく過程においては、その負担はまことに大きなものになります。
 また、事業所にあっても、その負担増は同様でありますが、失った販路を何とか取り戻そうとしている渦中にあっては、消費者や取引先に税の転嫁を行うことは事実上困難であり、結果として経営の悪化や事業所再建の断念にも結びつくことともなってまいります。
 震災からの復興と日本経済の再生に最優先で取り組むとたびたび述べておられる野田総理でありますが、復興と日本経済の先行きに不透明感を増しかねない増税という大きな痛みを伴う政策に盲目的に突き進もうとすることには、大いなる不安を覚えずにはおられません。
 我が国に消費税が導入されたのは、平成元年の自民党竹下内閣のときでありましたが、その導入実現までには、長年にわたる国民的な議論と中曽根内閣時代に示された売上税法案の廃案という、紆余曲折を経て初めてされたものと記憶をしております。
 当時の竹下総理は、消費税導入に当たって、消費税という税は恐ろしい性格を持っている。財政再建のためとか、赤字を埋めるために税率を上げるという考え方であれば、国民生活を崩壊させ、逆に財政を悪化させることになると、消費税の持つ逆進性や国民生活に与える影響を十分に把握した上で、安易な税率引き上げによる増税に対する戒めとも言える言葉を残しております。重みのある言葉であり、この意味をしっかりと受けとめることが必要であります。
 北欧諸国で、高税率の消費税が受け入れられているのは、政治、行政、司法、財政がしっかりと国民から信頼されているからというのは、よく知られているところであります。
 今一度、消費税を含む税のあり方というものを根本的に議論し直し、国民の信頼の上に成り立つ税体系のあり方を時間をかけて模索し、国民とともにつくり上げていくべき時期であり、そのための時間は残されていると確信しております。
 以上、発議案への反対理由を順次申し上げてまいりました。議員皆様方の御賛同をいただけますよう、心からお願いを申し上げます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木博君) 次に、福井せいじ君。
   〔12番福井せいじ君登壇〕(拍手)

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