平成23年2月定例会 第20回岩手県議会定例会 会議録

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〇37番(阿部富雄君) 希望王国マニフェストの達成状況についてお聞きします。
 知事の任期最後の予算編成が終了しました。マニフェストを推進する上で、予算は大きなウエートを占めます。希望王国マニフェストの数値目標が入っているのは、通例、行財政改革と整理される政策ですが、道義的信頼を高め、岩手のソフトパワーを強化する戦略の一環として個々に掲げますとして、知事の退職金は廃止します、知事の任期は原則2期8年とします、プライマリーバランス─基礎的財政収支の均衡を図ります、そして、政策の6本柱の中で、男女共同参画の停滞を打破すべく、県の審議会等の女性比率を30%以上に高めます、インターネット人口普及率を現状31.5%から50%に引き上げますと規定されている項目です。
 知事の任期、原則2期8年にはどう対応されるのでしょうか。マニフェスト策定時点と変わりないのかお聞きします。
 プライマリーバランスの均衡を図りますについては、2011年度の県債残高が1兆4、645億円と過去最高に上り、公債費は2015年度まで伸び続け、県財政をさらに圧迫する見通しにある中で、プライマリーバランスは22億円の赤字となっています。平成19年度を除き、知事就任以来、毎年赤字になっていることは遺憾であり、県民の信頼を損ねるものです。
 県債の増大は、将来の県民負担をもたらします。それは、今の国の財政状況を見れば明らかです。国の平成22年度の一般会計92兆円のうち税収は37兆円、44兆円を借金でしのいでいる。使い道のうち20兆円は過去の借金の返済に向かい、そのうち9兆円が利子に消えていく。利払いが何と予算の1割にもなります。この結果が公式発表で919兆円という累積債務、借金の総額である。この数字は公式であり、かつ毎年かなりの規模でふえているから、GDPの2倍くらいと見てよい。
 次に、税収だが、所得税13兆円、法人税6兆円、消費税10兆円だ。これに相続税、酒税、たばこ税、揮発油税などが加わる。仮に経済成長率が今後も余り変わらず、同じ税率で、入ってくる税収も同じだとしよう。すると、所得税を2倍、法人税を2倍、消費税を3倍にすることで、やっと他の税収と合わせて80兆円くらいになる。これに自然増収という期待値として10兆円を加えると均衡財政が実現する。これだけ増税しても今の90兆円予算が賄える程度で、ここには、毎年、高齢化によってふえ続ける社会保障の1兆円を超える自然増加は含まれていない。
 さらに、これほど増税しても、1、000兆円の累積債務は簡単には減らない。毎年9兆円の利子を払いつつ、減っているのは11兆円。このような無謀な増税を実現できたとしても、すべての借金の返済には100年くらいかかるのです。こうした現実を知事はどう見るのかお聞きします。
 プライマリーバランスの均衡は、時の為政者の判断というより、県政の普遍の規律として行われるべきものです。知事は、みずからのマニフェストのかかわりで県民にどのように責務を果たそうとするのかお聞きします。
 知事の退職金は廃止しました。廃止の理由は何であったのでしょうか、お聞きします。
 一方で、政務秘書を任用し、新たな経費がもたらされています。政務秘書は公費を使うわけでありますから、県民の理解が得られるような使途に限定すべきであります。政務秘書はどのような仕事をされてきたのでしょうか、お聞きします。
 知事の県政運営を見る限り、今までの政策、旧政権が取り組んできた政策を踏襲し、民主党が掲げる理念や政策が生かされているように見受けられません。政務秘書は、民主党政権が何をやろうとしているのか、どのような政策方向を目指しているのかなどを掌握し、知事に伝え、知事はそれを県政運営に反映することと思います。政務秘書を活用し、民主党が掲げる政策を県政にどう取り入れてきたのか、それによって県民生活の向上や地域振興がどう図られたと考えるのかお聞きします。
 農業政策についてお聞きします。
 平成21年の農業産出額は2、395億円で、前年に比べ50億円、2%の減少となりました。平成2年は3、478億円ですから、19年で1、083億円の減で、年々減少の傾向にあります。減少の原因をどう分析しているのか、また、今後どのようにして産出額を伸ばそうとしているのかお聞きします。
 全国農協中央会が推定している米の自給見通しは、平成22年10月末持ち越し34万トン、平成22年産米生産量824万トン、計858万トンの供給見通しに対し、需要見通しは811万トンであり、平成23年10月末持ち越し見通しは47万トンと供給過剰にあります。平成23年生産目標数量削減は18万トンとしています。日本穀物検定協会の2010年産米食味ランキングで、岩手県南地区のひとめぼれが1994年以降16回目となる最高位特Aの評価を受けても需要拡大には必ずしも結びついていません。
 2010年の全国の米輸出実績は1、898トン、6億9、000万円で、前年比145%と大きく増加しており、輸出先は香港が大きく伸長しており、全体の34%を占めています。全農全国本部の輸出実績は平成22年度300トン程度と見込まれ、特に中国向けでは平成22年度93トンと伸長しています。
 岩手県産米輸出実績は、ふるさと農協、江刺農協、純情米いわてで今のところ約90トンとなっています。全農全国本部は来年度の輸出方針を、新規需要米を基本に水田フル活用へ貢献することなどを前提に、JAグループ一体となり、香港、シンガポール向けとして販路拡大、量販、業務用に重点推進し、量的拡大を推進、中国向けとしてCOFCO社との連携を最重要視しつつ拡大に取り組む、その他新規市場拡大を図るとして500トンを目標としています。全農県本部は、新規需要米として100トン、20ヘクタールを目途に取り組みを検討するとしています。全農県本部と連携をとり、米輸出の戦略や方針を明確にすることが必要です。県は、米輸出についてどのように対応していくのかお聞きします。
 中国への米の輸出については、若林農林水産大臣と温家宝首相との会談で100トンを輸出することが確認され、平成19年度から継続して輸出されています。昨年末には、中国を訪問中の筒井農林水産副大臣と食品関連で最大の国営企業である中国農業発展集団の劉会長が、米を初めとする日本食品の輸出拡大に向け、中国側が努力することなどを盛り込んだ覚書を交わしました。大きい需要が期待できる中国市場の拡大に努めることが重要ですが、対応をお聞きします。
 中国への米輸出は、指定精米工場での精米及び登録薫蒸倉庫での薫蒸が義務づけられています。現在、指定されている中国向け精米工場は神奈川県にある全農パールライス東日本株式会社の精米工場1施設であり、登録されている中国向け精米、薫蒸倉庫は日新神奈川倉庫の1カ所3施設のみです。国では、中国へ輸出する米の薫蒸を行うため、植物防疫所への登録を予定している倉庫業者の募集を行いましたが、本県からは応募がありませんでした。中国への米輸出には欠かすことのできない施設ですが、どのように対応されていくのかお聞きします。
 また、農林水産省では、2011年度に精米工場も各地に整備することを検討していると聞いています。全農県本部など農業団体と一体となり、本県に整備することが中国への米輸出の推進力になると思いますが、対応をお聞きします。
 本県の肉用牛生産は肥育素牛生産が主体となっていることから、生産振興を図るためには肥育頭数の拡大が重要と考え、産肉の能力の高い県有種雄牛の造成と活用を図り、収益性の高い肥育素牛の生産促進に力を入れるとしています。牛肉をめぐる全国における本県の位置づけをどのようにとらえているのか、その振興をどう図るのかお聞きします。
 株式会社岩手畜産流通センターは、県産牛肉の販路拡大の一環として、全国農業協同組合連合会とともに牛肉輸出に取り組むこととし、最も高度な衛生管理が要求される対米輸出食肉取扱施設の厚生労働省による認定を目指し、牛の屠畜施設を平成20年から平成22年度までに国や独立行政法人農畜産業振興機構の補助を受け、総事業費約4億6、000万円を投じ、整備しました。
 平成21年10月からシンガポールに向け輸出を開始し、平成22年4月に宮崎県における口蹄疫の発生を受けて一時停止しましたが、平成22年10月から輸出を再開しています。対シンガポール向けの本県の輸出量は、平成21年度輸出停止前は2、234キロ、22年度輸出再開後は1、058キロと、全国輸出量のほぼ1割を占めています。平成21年11月に対マカオ、タイに輸出認定を取得しているが、マカオについては輸出業者のめどが立っていないこと、タイについては国内情勢が不安定なことから輸出実績はありません。
 岩手畜産流通センターは、対米輸出食肉取扱施設の認定を受けるため、厚生労働省の認定取得に向け手続を進めており、本年1月に現地調査が終了し、厚生労働省の対応を待っている状況にあります。対米輸出食肉取扱施設の認定を受けた後に対香港への輸出認定も申請予定と聞いております。農業団体と一体となり、県産牛の販路拡大として牛肉輸出を戦略的に位置づけ、海外展開を図ることが必要ですが、どう考えるのかお聞きします。
 また、輸出業者等との連携、ジェトロの活用など輸出に向けた体制づくりを急ぐべきですが、対応をお聞きします。
 輸出食肉を取り扱おうとする屠畜場及び食肉処理場においては、対米輸出食肉について化学物質等の残留のモニタリングを実施しなければなりません。適正なモニタリングを実施するためには、同一の飼養条件下にある出荷農家をあらかじめ選定しておく必要があります。本県の出荷農家群は岩手県農協肉牛経営者協議会が組織されています。しかし、輸出のために特化した飼養管理指導など畜産農家育成は特に行われていませんから、同一の飼養条件下にある出荷農家の育成、組織化することも必要です。これらについてはどのように対応されていくのかお聞きします。
 平泉文化遺産の世界遺産登録についてお聞きします。
 平泉文化遺産の世界遺産登録について、平成20年7月に第32回世界遺産委員会─カナダにおいて登録延期の決議がなされました。平成23年の登録を目指し、推薦書作成委員会の設置、開催、海外の専門家等を招聘しての意見聴取等を行い推薦書の改定を進め、平成22年1月の世界遺産条約関係省庁連絡会議において提出が決定され、同年、イコモスへ提出、同年9月、イコモスによる現地調査が行われました。
 イコモスによる現地調査では、推薦書記載内容を踏まえ、主として保存、管理状況について調査が行われ、調査状況は話さないようにとのことでありながら、一定の理解を得られたとしています。また、文化庁は2月1日、イコモスから推薦に関する追加情報の提供を求められなかったことを明らかにしました。必要な情報がそろっているということであり、そのまま登録か否かというわけではないと説明。今後も県、町とともに登録に向け努力していくと語ったところです。
 平泉の文化遺産は目で見てわかるものは少なく、説明しなければわからない遺産が多いことからも懸念されるところです。前回は最後まで世界遺産委員会委員国への説明を行ってきましたが、今後どのような取り組み、努力をされていくのかお聞きします。
 世界遺産への登録はスタートであり、世界の、人類の大切な宝を後世にいかに引き継ぐのかが問われます。平泉町民の責任は重いと思います。平泉町では、景観形成を初め、観光施設の整備や清掃、草刈り、観自在王院池への水張りなど、保存、管理を住民一体となり取り組んできました。世界遺産登録で、観光、物産振興等による経済効果をどう試算されるのかお示し願います。そのうち、平泉町なり町民にはどの程度もたらされると試算されるのかお聞きします。
 平泉町は観光と農業のまちと言われてきましたが、産業らしきものが少ない中で、地域の活性化を図ることには難しさがあります。県は、平泉の文化遺産の世界遺産登録後1年をいわて平泉年とし、自立と共生の理念を柱とする平泉の文化遺産の価値の普及等に関する取り組みを集中的に実施するとしています。平泉町が計画している地域づくりについて、県としても支援を行うことにより、将来にわたって文化遺産の保存、管理が適切に行われるようにすべきです。
 平泉スマートインターチェンジは、増大する観光客の受け入れと利便性の向上、地域の活性化を目指し計画されているものですが、接続位置及び道路構造についてネクスコ東日本及び国と協議を進めてきたと聞いております。ただ、平泉町から、用地問題、工業団地関連、渋滞関係から下り線中尊寺パーキングエリアのパーキング接続型スマートインターチェンジを変更し、上り線と同じ位置に本線直結型スマートインターチェンジとして計画してほしいとの要望がなされています。こうした設計の見直し、採算性の検討について早期の検討を行うことが望まれます。今後の対応は、国及びネクスコ東日本と設置要件等にかかわる協議、その後、連結道路管理者である平泉町が実施計画書の作成、国土交通大臣に連結許可の申請となりますが、一連の事務手続の見通し、時期についてお聞きします。
 連結道路管理者は平泉町となりますが、連結には多額の財源を要し、財政力の弱い平泉町の施行では数年の工期を要することになります。県は、希望郷いわてづくりに向け、平泉の文化遺産の世界遺産登録に関する取り組みを行うとしていますから、県代行で行うことにより工期の短縮を図り、観光客の受け入れと利便性を向上すべきですが、対応をお聞きします。
 平泉スマートインターチェンジは、平泉の文化遺産の世界遺産登録を見据えて計画されていますから、設計時期を失することなく取り組むべきです。県はいつの時期を目途に取り組んでいくのかお聞きします。
 中尊寺パーキングエリアに隣接して国土交通省が北上川遊水地事業の築堤のための土取り場があります。約30ヘクタールが平坦地化されています。地権者平泉町は工業団地として活用を計画しており、県にも支援を要望しています。県は、平泉町とどのような協議を行っているのでしょうか。県土地開発公社が取りつけ道路などのインフラ整備を寄附行為として行うことも支援の方法と思いますが、対応をお聞きします。
 県南地域5市町村と商工会議所、商工会、観光協会など民間団体は、平成22年12月24日に平泉ナンバーを実現させる会設立準備会議を開催、平成23年1月28日には平泉ナンバーを実現させる会決起大会を一関市東山町で開催しました。ご当地ナンバーは、国土交通省が、地域内で登録自動車数が10万台を超える、地域特性として一定のまとまりがあることなどを条件とし、自動車のナンバープレートに表示する地名に新たな地名を定めることを可能にした制度です。地域や観光振興の観点で2004年に募集、2006年に交付しました。これまで仙台や会津など全国19カ所のナンバーが交付されています。
 平泉ナンバーを実現させる会決起大会は、その趣旨を、本年は平泉の文化遺産の世界遺産登録再挑戦の年であり、登録実現に向け、地域が一体となった運動を図るとともに、世界遺産を核とした地域づくりを進めるとしています。平泉ナンバーがもたらす効果を導入地域の例からどのように想定しているのでしょうか。また、実現にはどのような課題があるのか、県はどのような支援を行っていくのかお聞きします。
 行政委員会のあり方についてお聞きします。
 本県は、教育、選挙管理、人事、監査、公安、労働、収用、海区漁業調整、内水面漁場管理の各行政委員会を設置しています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 知事が行政委員会の人事案件を提出しようとするときは、あらかじめ議運営委員会に示し、質疑を行うことを平成22年9月15日の議会運営委員会で決定しました。これにより一定のチェック機能が付加されたところです。
 1人の者が長期にわたり任命される、年齢が70歳を超えた者が任命される、1人が複数の行政委員を兼ねるなどの実態があります。また、それぞれの独立職務権限を有するものですが、議決機関あるいは広く県民との関係において、執行権限に統一ある行動を期し、地方公共団体の一体性を確保することが求められるものの、それに協調しないなどの問題も出ています。行政委員の任期は2期まで、年齢は任期満了時点で70歳を超えない、1人が複数の行政委員を兼務しないなどのルールをつくり、県民に理解を得る形で提案すべきです。どう対応するのかお聞きします。
 行政委員会の委員報酬は、地方自治法第203条の2第2項、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでないとされています。本県の行政委員会の委員報酬は月額で支給されてきました。平成21年1月22日に大津地裁で、月額報酬を払うことは違法であるとの判決が出されました。その後、平成22年4月27日に大阪高裁の控訴審判決で、一部の委員を除き月額報酬を払うことは違法であるとの判決が出されました。これらの判決を受け、地方自治法の規定である日額支給の原則に基づき、これまで月額支給が慣例とされてきた行政委員の報酬について見直しの動きが出てきており、日額支給へ改正を行っている都道府県もあります。
 全国知事会の行政改革プロジェクトチームの都道府県の行政改革では、地方自治の趣旨から、月額支給とすることができる特別な事情がある行政委員は、現行の勤務形態として日数が多いことなどから、見識を有する者から選任された非常勤の監査委員、公安委員。すべての行政委員会において、会議や出張等の活動に対する日額報酬を基本にしつつ、日額報酬では評価しがたい職務や職責について引き続き報酬の対象としていく必要があると判断し、基礎報酬─月額を支給するとしています。本県はどう見直しを進めているのか、いつ改正するのかお聞きします。
 また、平成21年度に見直しを行った団体の予算の縮減等行革効果は、試算によると平均34%の縮減とされていますが、本県はどの程度見込まれるのかお聞きします。
 森のトレーについてお聞きします。
 いわて森のトレー生産協同組合が平成10年度から12年度に国庫補助金12億7、900万円余、県補助金2億5、500万円余を受け、間伐材を利用した木製トレーの生産、販売を図るとしていました。トリニティ工業株式会社が納入した製造設備のふぐあいが判明したとして、同社に債務不履行による損害賠償請求を提訴したが、請求を棄却され、1審の判決を覆すことができるような新たな証拠の提出は困難と判断し、控訴断念に至りました。この間、会計検査院から国庫補助金は不当とされ、返還命令があり、県、久慈市は平成16年に3分の1、延滞金免除が可能と見込み、県は平成20年から22年で残る3分の2を返還しました。
 未回収債権への対応については、債務超過に陥っている状態にあるため、組合が現時点での資産や債務、債権の状況を整理し、優先債権を有する金融団を含むすべての債権者との話し合いを行い、その上で久慈市が債権を回収できるかどうか見きわめることが必要であるとしています。組合の資産や債権債務をどう把握しているのかお聞きします。また、債権者との話し合いはどのような状況にあるのかお聞きします。債権回収はノウハウを持っている金融団と一緒に行い、成果を上げるべきですが、対応をお聞きします。
 久慈市議会では、トレー組合の理事長の資産28カ所のうち、事業中断前後に19カ所の資産が処分されていることが明らかにされています。事実関係をどう調査されているのかお聞きします。
 中小企業等協同組合法第38条の3の規定により、理事にその職務を行うにつき悪意または重大な過失があった場合は、契約関係にある第三者に損害賠償責任を負うとされています。県は、弁護士に相談したら、役員の第三者に対する損害賠償責任は難しいとのことで消極的ですが、法の趣旨から見ても損害賠償は追及すべきです。債権が回収できない場合は、久慈市に対して債権を有する立場の県としても、事業計画、資金計画、販売計画に重大な過失があることから損害賠償を求めることを助言していくべきですが、対応をお聞きします。
 久慈市に対する対応については、本事案について久慈市のかかわり方は限定的であり、特に事業計画の策定や事業計画の変更は県が組合を直接指導する形のもとで行われたものであって、この段階で久慈市の主体的な参画はほとんどなかった。一方で、久慈市はこれまで訴訟を通じての補助金回収に最大限努めてきたと認められることから、今後、相当の事情変更がない限り、久慈市に対して国の追加返還分及び県費補助分に係る負担を求めないとしています。この考え方が通るのであれば、久慈市が債権回収に直接携わることも理屈が成り立ちませんし、負担が伴わないのであれば、回収への熱意がないものになります。訴訟を通じて補助金回収に努めてきたと認められるとしていますが、控訴断念は、組合、久慈市、県が協議して決定し、みずから訴訟による回収を放棄したものです。これは相当の事情変更に当たるものと思います。久慈市に対して相応の負担を求めるべきですが、対応をお聞きします。
 久慈市はその上で、県の直接指導で行われたものであり、久慈市の主体的な参画はほとんどなかったとして県に賠償を求めるというのが筋です。それが行政のあるべき姿ですが、どのように対応されるのかお聞きします。
 県は、平成16年3月に、トレー組合が意図したような形できちっとした事業が遂行されなかったことについて県の指導監督の責任において処分を行った。今後の対応、取り組みについての処分という案件にはならないとしています。未回収債権が残る場合の対応について、債権放棄で県民に転嫁することを憂えています。県が補助事業の適正な実施を講じてこなかったことで未回収債権が発生し、何ら責任のない県民に負担を強いることはできません。さらなる懲戒処分を求めるものではありません。懲戒処分と損害賠償は別のものであります。原因をもたらした者に賠償させることが基本ですが、対応をお聞きいたします。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 阿部富雄議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事の任期についてでありますが、私は、首長の多選には弊害があると考えており、そのことから、知事の任期は原則2期8年までという旨、マニフェストに示したところであり、その考えは現時点でも変わっておりません。
 次に、国の累積債務の状況に対する所感についてでありますが、右肩上がりで経済のパイの拡大が見込まれた時代には、将来における償還負担を織り込んだ財政運営を行い、所得を向上させていくという仕組みに合理的な面もありました。公共事業による社会資本整備など、債務を負わなければ得られなかったような便益を多数獲得してきたということも事実であります。
 しかしながら、これからは、自律的内需拡大が実現するような経済構造への改革が求められており、力強い国民経済が、税収増、財政健全化につながるようにしていかなければならないと考えております。
 次に、プライマリーバランスの均衡についてでありますが、過度に将来の負担を増加させず、責任ある財政運営を行っていくため、ある年に県民サービスの提供のために必要となる一定の経費については、借入金以外のその年の税収などで賄うとする基礎的財政収支の均衡を図ることが、財政運営の目標の一つの考え方となるものと認識しております。
 同時に、地方債の発行により、各年度で必要となる事業を的確に実施していくことも、県民の仕事と暮らしを守る上で重要と考えております。
 近年、地方財政は、国税収入の減少を背景として、地方交付税の振りかえである臨時財政対策債が急増しており、本県の県債発行額にも大きな影響を及ぼしています。
 また、県経済や雇用情勢が極めて厳しい状況の中で、基礎的財政収支という財政規律のみを重視し、税収の範囲内に事業規模を縮小させることは適当ではなく、長期、短期の視点から、県民の生活を守り、さらに岩手を発展させていくため積極的な事業展開を行っていくことが必要と考え、適切な財源対策を講じつつ予算の編成を行ってまいりました。
 その結果として、基礎的財政収支は赤字となっておりますものの、県として管理可能な県債は縮減させるとともに、主要3基金への積み立てを行うなど、将来に備えた手だてもしっかりと講じてまいりました。
 今後においても、基礎的財政収支や健全化判断比率などの財政指標を参考としつつ、将来の負担を過度に増加させないように、適切な財政運営を行っていくことが必要と認識しております。
 次に、知事の退職手当の廃止についてでありますが、私は、衆議院議員時代に議員年金廃止の活動に参画しており、同じように選挙で選ばれる議員には退職手当がないのに、知事には高額な退職手当が支給されることに疑問を感じていたため、私が知事に就任した平成19年、特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例を改正し、私への退職手当の支給をしないようにしたものであります。
 本県の財政が大変厳しい折、少しでも県民の暮らしと仕事の向上に役立つ税金の使い方をすべきであると考えた結果であり、私の希望王国マニフェストでお示ししたとおり実行したものであります。
 次に、政務秘書の業務についてでありますが、知事は、行政の長として行政事務をつかさどるほか、公選による職として政治活動を行う場合があることから、政務秘書には、政治活動にかかわる秘書業務など一般職の秘書に対応させることが適当でない業務や、行政事務と政務との調整などを担当させております。
 次に、政務秘書を活用した民主党が掲げる政策の県政への反映についてでありますが、政務秘書の職務内容は、先ほど申し上げましたように、政治活動にかかわる秘書業務や行政事務と政務との調整などであります。
 県の政策形成につきましては、前回の知事選挙に際して掲げた希望王国マニフェストを基盤にしながら、広く県民の意見を取り入れて、いわて希望創造プランやいわて県民計画のアクションプランを策定しているところであり、これにより、県民の仕事と暮らしを守るための施策を推進してきたものであります。
 次に、農業産出額の減少の原因についてでありますが、平成2年当時、産出額全体の3分の1を占めていた米が、米価の下落と生産調整等により大きく減少したことに加え、農産物全体の価格低迷や農業従事者の減少、高齢化が進行し、生産力が低下したことが主な原因と考えております。
 こうしたことを踏まえて、本県の農業産出額を伸ばしていくためには、売れる米づくりの徹底により確実な販路を確保するとともに、国産志向を受けて需要拡大が見込まれる園芸や畜産部門を中心に、生産力の向上を図っていくことが重要と考えています。
 このため、今後においては、本県農業の将来を担う青年の就農促進や栽培品目の見直し等による園芸、畜産産地の若返りを図るとともに、本県の生産環境を生かした安全・安心な農産物の生産の拡大を推進するほか、国内外での販路開拓に努め、産出額を増大させていく必要があると考えております。
 次に、米の輸出への対応についてでありますが、これまで、シンガポールを初めとした経済成長が著しい東南アジア等において、天日干し米を初めとした高付加価値米を、現地の邦人や富裕層をターゲットに販売してきたところでありますが、販売数量の増大に向けて、現在、値ごろ感のある商品の提供により、すそ野を広げる取り組みを行っております。
 しかし、輸出先での産地間競争が厳しくなってきておりますことから、輸出コーディネーターや輸出サポーターなどの民間力を最大限に活用した販売チャネルの拡大を図るとともに、全農岩手県本部など関係団体と連携しながら、新規需要米制度を活用した価格競争力のある輸出用米への取り組みの支援、輸出先における県産米海外フェア等を通じたPRなどにより、県産米のシェアの拡大に取り組んでいくこととしております。
 次に、牛肉をめぐる全国における本県の位置づけとその振興についてでありますが、本県の肉用牛は、子牛、肥育牛の出荷頭数ともに全国上位にあり、また、今般、日本農業賞大賞を受賞する、いわて前沢牛に代表される全国トップレベルの銘柄を有しており、こうした産地力をさらに高めていくためには、高品質な牛肉の生産拡大やブランドイメージの定着などを進めていく必要があります。
 このため、全国肉用牛枝肉共励会で名誉賞を受賞した菊福秀など県有種雄牛の利用拡大を図るとともに、その産子の県内保留の促進や、食肉卸売業者に対するトップセールスなどを行っているところであり、今後は、肉質が最上級のプレミアム牛肉、いわて牛五つ星の販売拡大や首都圏でのいわて牛消費者まつりの開催など、一層のブランド向上に取り組むこととしております。
 次に、県産牛肉の輸出とその体制づくりについてでありますが、昨年6月に策定したいわて牛ブランド戦略において、海外市場への販路拡大を国内市場における評価向上に向けた重要な戦略と位置づけ、シンガポールなどへのいわて牛の輸出量の拡大を図るとともに、アメリカ、香港など新規輸出先の開拓を進めることとしています。
 このため、シンガポールにおいて、現地の小売、流通業者に、いわて牛の魅力を直接アピールするとともに、岩手畜産流通センターやジェトロなどの関係者で構成する、いわて農林水産物輸出促進協議会を設置し、JAグループとも連携した販売促進活動を展開しています。
 今後は、シンガポールへの輸出拡大を図るとともに、アメリカ、香港向け輸出施設の早期認定の取り組みを支援し、これまで以上に、官民一体となった販売促進活動に取り組んでまいります。
 次に、平泉文化遺産の世界遺産登録についてでありますが、前回は、イコモスからの登録延期の勧告後、国や関係市町と相談の上、委員国の駐日大使館などの訪問などを行ったところであります。
 現在は、今後の取り組みについて、国や関係市町等と打ち合わせを行っている段階であり、勧告の内容等を踏まえながら、登録に向けて必要な対応を実施していくこととしています。
 引き続き、関係者と連携、協力しながら、万全の対応を行っていく必要があると考えております。
 次に、世界遺産登録による観光、物産振興等への経済効果についてでありますが、平泉の文化遺産が世界遺産に登録されることにより、有形、無形のさまざまな効果をもたらすものと認識しておりますが、まずもって、世界遺産登録を契機に、平泉の文化遺産の自立と共生の理念や平和への願いが、普遍的な価値を持つものとして全世界に広く知れ渡ることが、最大の効果と考えております。
 また、地元平泉町、そして町民の方々のみならず、すべての岩手県民が、これまで大切に守り伝えてきた平泉の文化遺産が、世界に誇る財産として広く認識されることにより、観光客の増加にとどまらず、子々孫々の代まで末永く引き継がれていく、はかり知れない効果をもたらすものと確信しております。
 世界遺産登録による観光客の増加等により、経済効果も伴うものとは考えられますが、これら将来にわたる有形、無形の効果を経済的な価値として換算するのは、極めて困難と考えております。
 次に、行政委員任命のルールづくりについてでありますが、各行政委員の任命については、各行政委員会の責務等を踏まえ、最もふさわしい方を選ぶという観点で行っているところであり、任命について、一律の基準を設定することは、かえってその人選に制約を及ぼすおそれがあると考えられることから、慎重に対応する必要があるものと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〇議長(佐々木一榮君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔企画理事藤尾善一君登壇〕
〇企画理事(藤尾善一君) 平泉ナンバーがもたらす効果についてでありますが、これまで導入された地域の先例や、昨年12月の県南広域振興局主催の講演会で、富士山ナンバーを導入した静岡県御殿場市の前市長の話などによりますと、動く広告塔として、知名度アップにつながり、観光振興に寄与すること、地域の連帯感や地元への愛着心が醸成されること、運転マナー向上による地域のイメージアップが図られることといった効果が挙げられたところでございまして、平泉ナンバーの場合も、同様の効果が想定されるところでございます。
 とりわけ、世界遺産の登録名を冠した御当地ナンバーとしては我が国初でございまして、対外的な発信力は大きく、多くの人々の注目度や関心が高まるとともに、地域住民の誇りにもつながり、その一体感のもとで、世界遺産を核とした地域づくりが着実に進展するものと期待いたしております。
 次に、導入実現に向けての課題についてでありますが、関係市町の住民等の理解と賛同を得ること、国におきまして、要望の受け付けを再開してもらうことなどが考えられます。
 次に、県の支援についてでありますが、これまでも、県南広域振興局が、関係機関との調整等を支援してきたところでございますけれども、今後におきましても、平泉ナンバーが実現できるよう、実現させる会との連携を密にしながら、住民等への一層の理解促進に向けた活動や先進地域の情報収集と地域への情報提供、そして、国への働きかけ等、積極的に支援してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長小田島智弥君登壇〕
〇農林水産部長(小田島智弥君) まず、中国に対する米の輸出についてでありますが、中国市場における日本産米は、贈答品としての人気はあるものの、現地米との価格差が大きいため、贈答期以外は販売量が大きく減少するなど、価格面での競争が大きな課題と聞いております。
 また、価格差のほかにも、商慣習の違い、信頼のおける現地小売業者や輸入業者を確保することなど、多くの課題があると考えております。
 これらの課題を解決するため、今後とも、大連経済事務所やジェトロ等を活用し、引き続き、現地の市場状況や有望な取引先の情報収集を進めるとともに、あわせて、これまで培ってきた日系小売店等の海外ネットワークなどを利用した現地の販売先の開拓、さらには、輸出実績のある全農全国本部への働きかけなど、県産米の輸出の実現に向けて、さまざまな可能性を検討してまいります。
 次に、米輸出に必要となる施設の整備についてでありますが、県産米を独自に中国に輸出するためには、精米施設や薫蒸倉庫について、輸出用の施設として指定等を受ける必要があり、国においては、その調査費用を対象に支援することとしております。
 しかしながら、この支援は、中国政府に対する薫蒸義務の撤廃や要件緩和等の検疫に関する協議が決着するまでの緊急措置と伺っており、本県における施設の指定等の要否については、国と中国政府との協議の動向を踏まえつつ、県内精米業者の意向や、輸出要件を満たす精米施設を有する大手業者の意向も確認しながら、検討を進めてまいります。
 次に、畜産農家の育成対応についてでありますが、米国への牛肉輸出に関し求められている安全基準については、薬事法や飼料安全法、食品衛生法などによって使用基準が定められ、基本的には、それに基づき使用されていることから、現状においては、本県で生産された牛肉は、米国の残留物質モニタリング検査の基準を満たすものと考えております。
 しかしながら、今後、米国に対する県産牛肉の輸出を拡大していくためには、生産工程管理を強化し、安全性に対する信頼を高めていくことが重要と考えております。
 このため、全農岩手県本部が組織する岩手県農協肉牛経営者協議会の生産者を中心に、生産履歴の記録や飼料添加物、動物医薬品等の使用基準の遵守など、安全基準に対応した生産管理の徹底を図ってまいります。
 次に、森のトレーについてのお尋ねであります。
 まず、組合の資産や債権債務についてでありますが、組合の決算報告書によると、平成22年3月末現在、資産合計29億700万円余に対して、負債合計は40億8、500万円余であり、11億7、800万円余の債務超過となっているところであります。
 次に、債権者との話し合いの状況についてでありますが、まず、昨年11月に県が呼びかけて、債権者である金融団、久慈市とトレー組合との間において、債権回収に向けた協議が行われたところであります。
 それ以後、久慈市は、組合との間において、現在まで3度にわたって、補助金返還金の回収等に対して協議を行っているところであります。
 次に、債権回収の対応についてでありますが、金融団は、トレー組合の施設に抵当権を有しており、その立場で債権回収を進めると聞いているところであります。
 そのように、優先債権を有している金融団でありますが、県及び久慈市は、これまでも金融団と必要な意見交換を行ってきているところであり、今後も、債権回収等に関する調整を図ってまいります。
 次に、事業中断前後の資産処分の事実関係についてでありますが、トレー組合の理事長の資産が事業中断前後に処分されていることについては、平成16年9月の久慈市議会で明らかとなったものであり、県も承知しているところであります。
 現在、久慈市においては、組合から提出のあった決算報告書による組合資産等の内容の精査とあわせ、組合理事長ほか役員の資産状況等の調査を行っているところであります。
 次に、損害賠償責任の追及に係る久慈市に対する助言についてでありますが、久慈市では、現在、組合や役員の資産状況の確認、精査を行う一方、弁護士などの意見を伺いながら、補助金返還金の回収について、損害賠償請求を含めたあらゆる角度から検討を重ねているところであります。
 県としても、久慈市のこのような取り組みについて随時報告を受け、打ち合わせを行いながら、必要な助言や支援を実施しているところであります。
 次に、久慈市に対して相応の負担を求めることについてでありますが、県としては、久慈市は、本件訴訟の利害関係者として訴訟に補助参加し、全力で訴訟支援に当たったものと受けとめており、相当の事情変更がない限り、今後、久慈市の追加負担は求めない方針としているところであります。
 その上で、直接の債権者である久慈市には、組合に対して、最後まで補助金返還金の回収努力を続けていただく必要があると考えております。
 久慈市からは、組合の資産や債権債務の整理状況や補助金返還資力の有無などを見きわめ、未収金債権の回収に向けて全力で取り組む旨の意向を示されているところであり、県としては、今後の取り組み状況を見きわめるとともに、適切な指導助言を行っていく所存であります。
   〔県土整備部長平井節生君登壇〕
〇県土整備部長(平井節生君) 平泉スマートインターチェンジについてでございますが、今後の見通しにつきましては、地元からの要請を受けて、インターチェンジの構造形式について、これまでの上下線別の位置での検討に加え、現在、上下線同一位置での概略設計や交通量推計などを実施しているところでございます。
 来年度におきましては、これらの検討結果を踏まえ、当該事業の費用便益比や高速道路会社にとっての採算性など、国土交通大臣の許可要件の確認を行う必要があると考えております。
 これら許可要件の検討につきましては、国、ネクスコ東日本、平泉町と協議をしながら進めておりますが、クリアした時点で、地区協議会の設置等、具体的な手続に入っていきたいと考えております。
 次に、連結道路整備の県代行についてでございますが、平泉町は、県代行事業の根拠となるいずれの法律においても、該当ないし指定のない地域であることから、県代行事業による対応は困難な状況でございますが、今後、事業計画を詰めていく段階で、県としてどのような支援ができるかを検討してまいります。
 次に、設置時期についてでありますが、スマートインターチェンジの整備の枠組みである高速道路の利便増進事業を規定する道路整備事業財政特別措置法の改正案につきましては、さきの臨時国会で廃案となったところでございます。
 その結果、従前の利便増進事業による枠組みでスマートインターチェンジの整備を進めることとなり、国では、できるものから速やかに着手する考えを示しているところです。
 このため、早期整備着手が図られるよう、許可要件の各項目等について、関係機関との調整を行いつつ、早期に整備目標等を示せるよう、地元平泉町とともに取り組んでいく考えでございます。
   〔商工労働観光部長齋藤淳夫君登壇〕
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) 工業団地整備に係る県の支援についてでありますが、御案内のあった土地を工業団地として整備、利用することにつきましては、平成21年7月30日に県南広域振興局において実施されました市町村要望の際の意見交換の中で、当時の平泉町長から口頭で支援の要請を受けたところでありますが、その後、町のほうから整備構想の策定等の具体的な動きはなく、協議は進んでいないところであります。
 なお、御提言のありました岩手県土地開発公社が寄附を前提として取りつけ道路等のインフラを整備することは、適正な対価を得て事業を進め、独立採算の仕組みをとっている公社の健全な事業経営の観点からは、なじまないものと考えられます。
 県といたしましては、まず、平泉町におきまして、工業団地として活用するための構想や具体の整備計画を整えるべきものと考えております。同団地の整備につきまして、町側から相談があれば、可能な限り対応してまいりたいと考えております。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 行政委員の報酬の見直しとその効果についてでありますが、全国では、平成21年度以降、これまで15道県が見直しを行っている状況であります。本県におきましても、地方自治法の規定の趣旨を踏まえるとともに、各行政委員会の業務の性格や勤務実態等を勘案し、また、他の都道府県の見直しの動向なども踏まえ検討しているところでございます。
 現在、行政委員会の委員報酬に関しましては、滋賀県を初め1都4県で訴訟が提起されていると把握してございます。裁判所の判断も分かれておりまして、うち2件が、最高裁において係争中でございます。
 また、先行して見直しを行っている団体においても、見直しの内容がさまざま分かれている状況にもございます。したがいまして、これらの状況も見きわめた上で、早急に結論が得られるよう検討してまいりたいと考えております。
 また、見直しによる予算の削減効果でございますが、先行して見直しを行った都県によりますと、一定の削減効果が見られるということでございますが、どのような見直しを行うかによってそれは異なると考えておりますので、現段階でお示しすることは困難でありますので、御理解いただきたいと存じます。
 次に、未回収債権に係る職員の損害賠償についてのお尋ねでございます。
 県といたしましては、先ほど農林水産部長が御答弁申し上げましたとおり、久慈市の取り組みについて必要な助言、支援を行うなど、組合からの債権回収に向けて、引き続き努力を行っているところでございます。
 したがいまして、御質問の趣旨につきましては、これらを踏まえた上でのことになろうかと存じますが、制度的なもので申し上げますと、地方自治法におきましては、契約履行の確保のための監督または検査に関し、故意または重大な過失による法令違反により県に損害を与えた場合は、職員が賠償責任を負うこととされております。
 森のトレー事案につきましては、これまで検証がなされてはおりますが、故意または重大な過失による法令違反は確認できないところでございまして、職員に対して損害賠償請求は、現段階においては困難ではないかと考えているところでございます。
〇37番(阿部富雄君) それでは、不明の部分についてお聞きいたします
 まず、プライマリーバランスの関係ですけれども、今議会でも多くの議員が財政問題、特に基礎的財政収支について質問がありました。やっぱり将来の県財政を憂えてのことだと思います。
 お話しするのは、知事の責任を問うとか、あるいは批判をするというつもりは毛頭ございません。県民のために財政均衡を図らなければならない、これは、もう皆さんわかっているとおりであります。知事も、それが必要と思ってマニフェストに盛り込んだのだろうと思うんです。知事は、就任前は国会議員をやられておりましたから、地方自治体を取り巻く財政状況だとか臨時財政対策債がどういうものであるかということは十分精通して知事に就任されたもの、このように思っています。言われるように、確かに臨時財政対策債が急速に増加したということもあります。それから、県民の生活をどうするか、あるいは県内の経済や雇用をどうするか、こういう難題に直面してきたこともわかりますけれども、ただ、そういった場合には、本予算なり、あるいは補正予算の編成段階で一時的にプライマリーバランスが崩れるということはあり得るでしょう。これは瞬間、瞬間で見ればそういうことはあると思いますけれども、このプライマリーバランスの均衡については、4年間の県政運営を通じて均衡を図るということだって私は可能だったと思うんですが、そういう思いがなかったのかなと思います。
 ですから、知事が県政運営の基本としてやってきたのは、あるいは県政運営の指針というのはどこに求めてやってきたんでしょうか。そして、県政運営でマニフェストというのはどのように位置づけられてきたのか、お尋ねしたいと思います。
 それから2点目は、農業の産出額の関係でありますけれども、御答弁いただきましたように、規模拡大であるとか高度化、多様化、さまざまな取り組みの仕方で産出額をふやすということを否定するものではありませんけれども、ただ、農業県と言われているところの状況をやっぱりきちっと見て岩手県も対応していくということが必要だと思います。
 私は、こういう他県の先進農業県を見た場合に、やっぱりまず第一に岩手県がやらなければならないのは、農業の構造改善に取り組む。従来の農業の経営対策ではできないということだと思っています。それは具体的に言いますと、農業の産出額の多い県はどうなっているのか、あるいは面積当たりの産出額の多い県はどうなのか、農業就業人口当たりの産出額の多い県との比較はどうなのかということを見てみると明らかなんです。
 岩手県の平成20年度の統計で見ると、農業産出額というのは2、445億円、全国12番目なんです。それから面積当たり、これは10アール当たりということになりますけれども、10アール当たりの産出額は15万円、全国40位です。それから、農業就業人口当たりの産出額は214万5、000円、全国の21位、こういうことが統計では出ているんです。これを見ると、面積当たり、それから農業就業人口当たりの産出額が農業先進県の3分の1から2分1程度にとどまっている。やっぱりこの実態を見逃してはならないと思うんです。同じ労力をかけても、面積当たり、就業人口当たりの産出額に大きな違いが生じている。これはどこに原因があるかということをやっぱり、農業のやり方をきちっと見直ししていかなければ産出額の増額にはつながらない、このように思うわけであります。生産性の向上を図るためにさまざまな努力をする。無駄を排し、生産性を高める。いわゆる農業の構造を変えていく、このことなくして県の農業の産出額の増額というのは私は図られないだろうと思います。
 ぜひこの農業構造の改善に取り組むということが必要だと思いますけれども、知事はどのようにお考えでしょうか。
 それから二つ目は、やっぱり農業は、販売を前提とした経営を推進するという目標をきちっと打ち出していかなければならないと思います。そのためには、販売ですから、お客さんのいないところにはどんな産業も成り立ちませんし、まして農業でつくったって売れるわけではありませんから、どこに売るか、そういう戦略部分をきちっととらえていくということ。それはとりもなおさず大消費地であり、国内の消費地はほぼ成熟しつつありますから、海外にもその販路を求めていく、こういう方針を打ち立てていかないとなかなか現在の状況は打開できないんだろうと私は思っております。
 そのためには、安全・安心な農作物を安定的に供給する体制をつくる。かつて私も経験したことがあるんですけれども、個々の農産物というのは大体1億円以上の売り上げがないと市場は相手にしてくれない、こういう時期がありました。ですから、やっぱり最低でも1億円、現在では恐らく3億円とか5億円とか、そういうふうな売り上げになっていると思いますけれども、まずそういう量をつくるということをやっていかないと市場の評価は受けられない、こういうことになると思うんです。ぜひここはきちっと、岩手の農業を再建する意味では欠かすことのできない課題だと思いますので、このことは取り組みをきちっとやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 それから三つ目は、やっぱり農業団体としっかり連携することだと思っています。かつて本県の農業というのは、農業者、農協が生産を担う、そして経済連と言われた全農が販売を担う、県が技術指導をする、市町村が国や県の補助金を含めて資金支援を行う、こういう取り組みでやられてきました。そして、市場の動向だとか消費者の意向などが生産現場に確実に届けられてやってきたんです。ところが、こうした役割分担、連携が希薄になっているのではないでしょうか。ここにもやっぱり私は大きな問題があると思っています。
 特に、最近、県の動きを見てみますと、生産、加工、流通、販売、いわゆる6次産業化だ、あるいは農商工連携だ、食産業の育成、こういうことを推進しております。これはこれで必要だと私も思いますけれども、こういうことを進めるがゆえに農業団体との連携がないまま進められている。農業団体からは、県庁は第2農協づくりじゃないかという冷めた見方もされているところがあるわけです。やっぱり岩手の農業の発展のためには、何をなさなければならないかということを農業者、農業団体、行政が認識を合わせて、一体となって役割分担や連携した取り組みを行っていかないと、生産性の向上や販売に成果を上げる、こういうことはなかなかできないと思いますから、ぜひこの3点目の農業団体との連携をしっかりつくっていくということをやっていただきたい。
 特に、知事もトップセールスだとか、県でもいろいろ取り組みをしていますけれども、全農であれ経済連であれ、そういうところが、はるかに販売のノウハウだとか販売先の相手を持っているわけですから、そこをもっともっと連携していかないと成果は上がらないと思いますので、この部分については今後どのように進めていくというふうにお考えなのかお聞きしたいと思います。
 それから、平泉町の地域づくりに対する支援の関係ですけれども、平泉町は、かつて観光施設の整備を目的に、昭和46年から観光施設税というものを創設して、昭和60年まで15年間、課税をして観光施設の整備を行ってきました。ところが、昭和60年の年に、いわゆる拝観施設のある団体から観光税については廃止をしてくれという根強い反対論が出て、残念ながらこの観光税は廃止せざるを得なかったという状況になりました。それについては、反対の見返りといいますか反対の対応として、平泉町では、平泉町と中尊寺と毛越寺と西光寺、いわゆる拝観料を徴収している施設と協議をして、それぞれお金を出し合って観光施設の整備に充てましょう、こういうふうな制度をつくっていたわけであります。その後、平成14年から新たな制度の見直しにするということで改正をして、それを基金に切りかえて今日に至っている。今までは何とか観光客にも観光施設の整備費を負担してもらうということでやってきたわけでありますけれども、そうした地域事情によって廃止せざるを得ず、平泉町が観光施設の整備に大きな負担を強いられている、こういうことをまずひとつ理解していただくということが必要だと思います。
 これから世界遺産登録になれば、ますます保存、管理というのは平泉町に大きな負担になっていくわけであります。県も柳之御所などをするということになると思いますけれども、県は柳之御所だけやればいいんですが、平泉町は柳之御所に行く道路から、すべての面についてそういう整備をする、保存をする、こういう役割が課せられるわけですから、そういうことを考えた場合には、やっぱり平泉町がそういう世界遺産の保存、管理を担っていけるような地域づくりというものをあわせてやっていかないと、私はできないんだろうというふうに見ているわけであります。
 ですから、先ほど壇上でも言いましたけれども、平泉町が計画しているスマートインターチェンジであれ工業団地であれ道の駅であれ、やっぱりそれらの地域活性化施設を、県でも、世界遺産を活用した地域振興策の一つだと、こういうふうな位置づけで支援をしていく、そのことが私は欠かすことができないと思いますけれども、知事、これについてはどのようにお考えでしょうか。
 それから、最後になりますけれども、森のトレーについては、中身については、今までの取り組みについては大体理解いたしました。これについても知事にお聞きしますが、安易に債権放棄をすることなく、県民に負担を転嫁させない、そういう取り組みを行っていくと理解してよろしいのかお聞きします。
〇知事(達増拓也君) まず、プライマリーバランスについてでありますが、プライマリーバランスは臨時財政対策債を含めて考えるべきという指摘はそのとおりでありまして、県としても、すべての県債を合計したものとしてプライマリーバランスを公表しております。
 プライマリーバランスはさまざまな指標の一つとして財政運営の参考としており、重要なものであると考えております。
 平成23年度当初予算では22億円の赤字と、平成22年度当初予算の276億円の赤字と比べ、赤字幅を大きく減少させております。
 今後も、県民への必要なサービスの提供と持続可能な財政運営の両面を見ながら予算編成を行っていく必要があると考えております。
 農業の構造改革についてでありますが、先般公表された世界農林業センサスによりますと、平成22年の借り入れ耕地面積や1経営体当たりの経営耕地面積は5年前と比較しそれぞれ増加しており、担い手に対する農地の流動化や経営規模の拡大が進みつつあります。
 今後も産地力の強化を図っていくことが重要であり、地域農業の核となる担い手の確保、育成、農業産出額の増加に向けた高収益作目である園芸や畜産の振興など、農業の構造改革を進めていく必要があると考えております。
 ロットの観点からの海外展開の戦略的な位置づけについてでありますが、岩手ならではの特徴を生かした農林水産物を国ごとの市場ニーズに合わせて輸出していくことが重要で、香港、シンガポール等成熟市場における天日干し米や高級牛肉の定着と拡大、また、マレーシア、中国へのサンマやサケ等の水産物、台湾、タイへの高糖度リンゴの輸出拡大など、国別、品目別に戦略的に海外展開に取り組んでいくこととしております。
 農業団体等との連携についてでありますが、これまでも、生産性、市場性の高い産地形成に向け、農業団体と連携しながら、地域特性を生かした農産物の生産拡大や供給体制の確立、生産技術の開発と普及、定着など、地域協働による支援体制の確立に努めてきました。
 農産物の高付加価値化に向けた取り組みが活発化していますが、こうした動きを地域全体に波及させるためには農協等も参画したネットワークづくりが必要でありまして、市町村、農業団体等との連携をより密にし、生産、加工、販売の各分野にわたって、関係機関、団体と一体となった農業振興施策の推進に努めてまいりたいと考えております。
 森のトレー事案に係る債権回収の取り組みについてでありますが、県としては、引き続き久慈市と連携して補助金返還金の回収に努めてまいります。
 平泉の振興についてでありますが、県では、平泉町を初め、地元市町との連携を図りながら、柳之御所遺跡等の保存、管理、歴史的な景観に配慮した道路環境整備などに取り組んでいるところであります。
 今後とも、地域の意向を伺いながら、県としてどのような支援ができるか検討していくことが必要と考えております。
〇37番(阿部富雄君) では、最後、森のトレーにだけ限ってお尋ねしますけれども、残念ながら私が質問した趣旨について知事のほうからはなかなか御答弁いただけなかったわけです。これからの森のトレーの進め方として、さまざまな取り組みをして方向性が出ている部分もあると思いますけれども、やっぱりすべてが決まってから議会に報告するとか何とかじゃなくて、私は、逐次、状況の取り組み方針をこういうふうにしたいというようなことを議会に報告して、議会の意見も聞く、そういうふうな形でこれから進めていくということが必要だと思いますけれども、まず、こういう進め方をされるというふうに思うかどうか、その点をお尋ねしたいと思いますし、それから、総務部長の答弁では、懲戒処分と損害賠償は別のものであるということをお話しして、損害賠償にかかわるものについては法律の中でこういう規定があるということで、県ではまだその部分については詳しく精査をしていないということでありますけれども、やっぱり県民に安易に転嫁をするということがあってはならない。したがって、県としても、さまざまな事例、判例があると思いますから、それらも踏まえて、未回収債権が出た場合にはどう対応すべきかということをきちっと方針を私は立てるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 先ほどは、事前に再質問、プライマリーバランスについて、ぎりぎりまで出るか出ないがわからない中、最後にプライマリーバランスの質問というように理解をしている中で、答弁の順番等その場で混乱があり、平泉の答弁を最後に回したことについては以上のような経緯からであったことを申し述べさせていただきたいと思います。
 森のトレーに関しては、さきの12月定例会におきましても県のほうからその経緯等を説明させていただいた。ただし、今、森のトレー問題に関する再々質問については事前に伺っていませんでしたので、ちょっと今の言葉遣い、あるいは議会の名前等、正確さを欠くかもしれませんけれども、随時、議員の皆さんにも状況をお知らせしているところでありますので、基本的にそのような取り組みでまいりたいと考えております。
〇総務部長(菅野洋樹君) 損害賠償の関係につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、今後精査する格好になりますが、制度的な問題としての制約もあるということについては御理解をいただければと思います。
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   日程第2 議案第2号平成23年度岩手県一般会計予算から日程第85 議案第86号職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例まで
〇議長(佐々木一榮君) この際、日程第2、議案第2号から日程第85、議案第86号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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