平成23年2月定例会 第20回岩手県議会定例会 会議録

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〇14番(高橋博之君) 地域政党いわての高橋博之です。
 初めに、ニュージーランドで震災に遭われた被害者の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 さて、1年と数カ月ぶりの一般質問となります。知事は県民全体の代表、私も県民の一部の代表であります。知事と議員、双方が、それぞれ代表する民意を統合し、岩手の未来を青空にできるような建設的な議論にしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 私たちが暮らす社会の問題を解決するためには、この先、この社会がどう変わっていくのかを予測することが大事になります。しかし、将来を予測するのは簡単ではありません。経済の専門家ですら、バブル経済の崩壊、サブプライム危機を予測していたのは、ほんの一握りでした。予測できなかった私たちは、今、その余波を受け、苦しみ、もがいております。
 私たちの将来に確かなものはありません。しかし、そんな不確実な将来についても、比較的確かに予測できる分野があります。それが人口問題です。私たちは、現在日本にいる、そして岩手にいる人々の年齢別分布状況を知っており、年齢別平均寿命もわかっております。わからないのは、これからの出生率だけです。したがって、出生率さえ仮定すれば、将来の人口の姿をほぼ確実に予見することができます。つまり、人口は確かな未来を示しているのであり、人口予測は将来展望の基礎ということになります。
 これからの日本の人口構造は、極めて大きな変貌を示すことになります。全国平均を上回るスピードで少子高齢化する本県は、その先頭におります。その変化は、既に現在の経済社会全体に大きな影響を及ぼしつつあり、その影響は、今後ますます大きくなることが確実です。
 中でも根幹にかかわってくるのが社会的意思決定、つまり選挙への影響です。人口構造の変化は、年齢別の投票者構成の変化を通じて、政治的意思決定プロセスに大きく影響してまいります。その年齢別投票者数の分布は二つの要素で決まります。一つは年齢構成であり、もう一つは年齢別の投票率です。この二つの要素を掛け合わせれば、年齢別の投票構造がわかります。
 この投票者構造の推移と今後の予測を見ると、1967年は、投票者全体に占める20代の割合が25%に対し、高齢者の割合が9.2%だったのが、2008年には、20代の割合が10%に低下し、高齢者の割合が28.9%に上昇しています。さらに、2050年には、投票者構造の高齢化がさらに進み、20代の割合はわずか6.2%に低下し、高齢者の割合は45.1%に達すると予測されます。高齢化率の高い本県では、この傾向はさらに強まります。
 日本の投票者分布は、現在、既に大きく高齢者に偏ったものとなっており、その度合いは、今後、急速に強まることになります。これが、今後の社会的意思決定を方向づけることになります。
 こうした投票者構成の変化によって、政治的意思決定は、勤労世代よりも引退世代の意思が反映されやすくなったり、将来世代への負担の転嫁が行われやすくなったりします。こうした民主主義のバイアス、つまりゆがみ、偏りは、既に私たちの身の回りで現実のものとなっており、このゆがみ、偏りは、今後ますます大きくなってまいります。
 具体的な影響としては、勤労世代よりも引退世代の意思が反映されやすくなるため、供給力重視の政策より、分配重視の政策がとられやすくなる、また、高齢者の負担を避け、勤労世代の負担が強まるような政策がとられやすくなる、さらには、将来世代への負担の転嫁が行われやすくなるなどが挙げられます。
 問題は、このような政策的意思決定のゆがみ、偏りが、全人口に占める高齢者の割合が高まる人口負荷時代に求められる政策的方向と全く逆であるということです。人口負荷時代には、人口1人当たりの生産性を引き上げるために供給力を高める政策が必要になります。また、勤労者の社会保障負担がますます重くなっていくので、この負担を軽減する政策も必要になります。巨額な財政赤字の解消もやらなければなりません。
 しかし、政治的意思決定のゆがみ、偏りが、今、障害となっております。こうして、人口負荷時代の投票者構成のゆがみは、人口負荷時代に私たちが直面しつつある諸問題の解決を、より難しい方向に作用することになります。これが、人口負荷時代における民主主義の失敗の形です。
 しかし、幸いにも確かな未来を示す人口予測から導き出されたこの将来の問題を、私たちは、問題が起きる前、つまり今この時点で知ることができます。ならば、対策も講じることができるはずです。
 民主主義の失敗を解決するためには、出生率を劇的に上げ、確実な人口予測を覆すことが必要になりますが、これには多額の予算と時間がかかり、解決も容易ではありません。それよりも、予算をそれほどかけずに、すぐにでも取り組めることがあります。それが若者の投票率の向上です。極端に低い若者の投票率を高めることで、投票者構成のゆがみを正すのです。そうなれば、人口負荷時代に求められる政策的方向へと政治的意思決定が向かうことになります。
 岩手を代表する2人の先人は、選挙を明るく正しいものにしようという運動の先頭に立ってきました。現在、明るい選挙を象徴するものとして白バラが親しまれておりますが、これは、明治時代に選挙、政治を正すために活躍した原敬が、白バラを胸につけて登院したことが由来だと言われています。また、政治をよくするためには、まずは選挙を正しいものにしなければならないということから、後藤新平が、政治の倫理化運動を行いました。
 未来は私たち若者の手にあります。私たち若者の無関心は未来を台なしにします。だれかの手にゆだねるのではなく、この岩手に暮らし、岩手の未来に責任を持たなければならない私たち若者が、自分たちの暮らすまちの未来を真剣に考え、自分たちの未来を託す代表を決める選挙に参加する、そんな社会を岩手につくりたいという思いで、以下、質問をいたします。
 まず初めにお聞きしますが、若者の投票率改善に向けて、県選挙管理委員会は、これまでどのような対策を講じてきたのでしょうか。これまでの取り組み内容と成果及び課題について示していただきたいと思います。
 以上で登壇をしての質問といたします。
   〔14番高橋博之君質問席に移動〕
   〔選挙管理委員会委員長八木橋伸之君登壇〕
〇選挙管理委員会委員長(八木橋伸之君) それでは、高橋博之議員の御質問にお答え申し上げます。
 若者の低投票率の改善のこれまでの対策についてでありますが、県選挙管理委員会では、関係団体や市町村の選挙管理委員会と連携しながら、若年層の有権者が、選挙の重要性を認識するとともに、選挙への関心を高められるよう、あらゆる機会をとらえて啓発等に取り組んでおります。
 具体的には、選挙に際して、さまざまな媒体による広報、学生の参加を得た街頭での啓発、投票立会人としての選挙事務所への参画の呼びかけなどを行っております。
 また、平時においては、各種研修やホームページを活用した情報発信等を行うとともに、投票率向上のための研究会への大学生の参画などのほか、昨年の参議院議員選挙後には、20代の有権者を対象とした意識調査を実施し、その意識や行動様式に応じた効果的な啓発活動のあり方を検討し、今後の取り組みに反映させていくこととしているところであります。
 私どもといたしましては、このように、より効果的な方策を模索しつつ種々取り組んでおります。若年層の投票率の向上という観点からは、必ずしも成果があらわれているとは言いがたいものの、他の年代に見られるような右肩下がりでの投票率の低下は、避けられているものと考えております。
 また、さきの20代の意識調査の結果によると、投票しなかった理由として、仕事が忙しくて時間がない、候補者の政策がわからない、選挙によって政治や暮らしがよくならない、適当な候補者がいないなどが上位を占めており、若年層の投票率向上は、私どもの取り組みだけでは容易に解決できない、非常に難しい課題であると認識しているところでございます。
〇14番(高橋博之君) ありがとうございます。明るい選挙を目指して質問をしておりますので、もうちょっと明るい答弁をいただければと思います。
 難しいということでありました。確かに、私もその選挙に関する意識調査の結果を読みましたけれども、今、御答弁いただいたように、やはり、まず我々政治の側にも責任があると思いますが、それは、我々おのおの頑張るしかないと思っておりますが、きょうはこういう場ですので、もう一つの理由、先ほどさまざま、仕事が忙しいですとか、レジャーだとか、旅行だとか、あとは家の中にいて外に出るのが面倒くさいとか、こういう理由がたくさんあるんですけれども、つまり休みの日にそういう機会、費用の損失というんですか、そこまでして行く意味を感じられない、こういうことなんだろうと思います。
 そういうことですと、啓発をたくさんこれまでしてきたようでありますが、ポスターを張ったり、あとは車で走って回ったり、啓発ということでは、選挙に行くことの意味をなかなか理解してもらえないのではないだろうか、私は、こういうふうに心配をしておるわけです。
 同じ調査で投票率の向上の対策も聞いていますけれども、若い人にですね。そうすると、こういう答えがあるんですね、インターネットでの選挙運動を可能にすると。ただ、これは法律を変えなければいけないので難しいのですが。学校教育の現場で政治や選挙の重要性を教える、これも上位を占めておりました。
 一方、選挙への啓発活動をより積極的に進めるは、たったの3.5%でした。つまり、ポスターとか街宣カーとか、あとは、選挙のめいすいくんというキャラクターをさんさ踊りに投入しているようですが、あれを見たからといってなかなか、かわいらしいキャラクターでしたけれども、それでもって選挙に行くということにならないと思うんですね。したがって、おっしゃるとおり、選挙管理委員会だけの力では、なかなか解決できない問題だと思いますので、これは、やはり教育との連携というものが、大変重要になってくると思っております。
 そこで教育長にお尋ねいたしますが、若者の低投票率の対策として、学校教育ではどのような取り組みが行われているのか、また、若者の政治リテラシー向上に向けてどのような取り組みを行っているのか、お伺いいたします。
〇教育長(法貴敬君) 若者の政治リテラシーに関する教育ということでございますが、政治リテラシーに関する教育は、児童生徒の発達段階に応じて行われております。
 まず、義務教育段階、特に小学校では、選挙権は、国民が政治に対して意見を示す権利の一つであり、二十以上のすべての国民に選挙権が与えられていること、あるいは、選挙で有権者の一票一票が大切にされなければならないことを学習します。
 また、中学校では、選挙の意識や選挙制度の仕組みを具体的に学び、その中で、投票率の低さ、1票の格差など、選挙についてのいわゆる課題についても学習します。
 さらに、高等学校段階では、政治参加と世論形成の意味について学び、民主社会における個人と社会の関係について、望ましい政治と主権者としてのあり方について、これを具体的に討論やディベートなどを通じて、広く深い理解と健全な判断力を身につける学習を行っています。
 学校教育を終えまして社会に出た際に、実際の投票行動に結びつかないということがありますけれども、いわゆる若者の政治的無関心と言われる風潮が今あるわけですが、これは、学校教育のみならず、国民一人一人が政治に関心を持ち、投票行動に移行して、いわゆる社会参加に向かうという意識づけが成るような社会というものを、社会全体で考えていく必要があるのではないかと考えております。
〇14番(高橋博之君) 昔、なぜ若者の投票率が高かったのかということを考えますと、その地域で、今も雪かきボランティアとか、若者がそういう運動を始めていますけれども、昔は、雪かきを初め、地域の課題解決に、まさに若者も地域住民の一人として参画をし、政治についていろいろ世代を超えて議論をしたり、語り合ったり、そういう機会が昔はあったんだと思うんですね。
 つまり、政治を通じて自分たちが社会を変えていくんだと、そういう力が政治にはあるんだということの意味をわかっていたと思うんですが、今こういう地域社会のつながりも大分薄れてきてしまいまして、なかなかそういう場を若いうちに持てないということになると、やはり学校教育が果たすべき役割というのは、私は極めて大きくなると思います。
 今、伺った学校教育の内容ですと、制度の理解ですとか、あとは、三権分立はどうしたとか、被選挙権はどうしたとか、丸暗記して試験に臨むと。卒業したら、まだ18歳ですから2年間ブランクがあって、二十になって投票権を得ても、やっぱりなかなか投票に行くということにならないんだと私は思います。
 今、学校教育の現場で、私は、この政治教育、教育基本法の中にも、政治的教養の涵養ということがしっかり書かれておりますので、やはり、もう少し突っ込んだ取り組みが必要になると思います。
 例えば、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパを含めて、自分たちが、この政治を使ってどのように社会を変革していくのか、そういう政治を活用する能力をきっちりと身につけさせるような取り組みですとか、あるいは争点教育といって、政策のメリットとデメリットについて考えさせるような授業も積極的に行っているようであります。
 そういうような取り組み、いろいろ学校現場の話を聞いておりますと、なかなか扱いにくいと。日本では、やはり政治的に見解が分かれる問題を授業では扱わないとタブー視をしてきたわけですけれども、政治教育の中立性というものをしっかり踏まえた上であれば、こうしたもう少し踏み込んだ政治教育に臨めるのではないのかと思いますが、教育長に見解を求めます。
〇教育長(法貴敬君) 議員御案内のとおり、政治的中立というものを踏まえた上で、先ほども申し上げましたとおり、政治を通じて何ができるのかということも、ディベートなどを通じて、今現在、高校では取り組んでおります。
 他県では、投票の模擬投票をやったり、さまざまなこともやっていますし、本県でも、学校現場ではそういうことも取り入れられたり、あるいは町村議会への発言みたいなものもやられているわけですけれども、そういう中で、さまざまな政治の仕組みのみならず、政治を通じて何ができるか、社会がどういうふうに変革していくかということについても、議員の御提言を踏まえて検討してまいりたいと思います。
〇14番(高橋博之君) 先ほど登壇して長々と私は自分の問題意識を話しましたけれども、やっぱりこれまでのような問題意識ではだめで、教育委員会だけではなくて、教育長も含め、そして、この後、知事にもお伺いしたいと思いますが、大きな問題意識を持って、この問題に取り組んでいただきたいと思います。
 一人一人は、やはり自分が行っても恐らく変わらないと。例えば、有権者10万人いる中で、10万人のうちの自分一人が仮に行かなくても変わらないだろうと思って行かないわけですね。だけれども、みんなが同じことを考えて、若者がみんな行かないと、それこそ合成の誤謬ではありませんけれども、そういう結果を招いているということですので、ぜひ教育長、この政治教育について、しっかりと今後考えていただきたいと思います。
 次に、知事にお伺いいたしますが、この政治教育をこれからしっかり充実させていかなければならないと思うんですが、それとともに、もう一つ、セットでぜひ進めていきたいものがあります。それが、選挙権を引き下げるということであります。
 学校で政治教育の授業を受けている身で、それが、実際に社会で選挙をやっていると。それで、学校で学んだことをそのまま、制服を着たまま投票に行くということになれば、私は、より関心を高められるのではないかと思っているのですが。
 民主党がマニフェストにも掲げております18歳の選挙権、憲法改正のための手続を定める国民投票法の投票権について、18歳以上とすることが見送られてしまいまして非常に残念だったんですけれども、知事は、この投票権を引き下げることについて、このことが若者の投票率向上に結びつくのかどうか、期待をできるのかどうか、そのあたり、知事はどういうふうにお考えになっているのか、御見解をお聞かせ願いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 突然の質問で、今いろいろ関係のことを思い出しているところでありますけれども、若い皆さんが、いろいろな機会に、法律的にも、政治的にいろいろ参画するのを保障されていくということは、いいことだと思います。
〇14番(高橋博之君) 今、いいことだというお話を伺ったのですけれども、そうしたら、国では見送られてしまいましたが、知事、ぜひ国に先駆けて岩手県でやってみてはいかがでしょうか。
 地方自治体で条例などで投票年齢引き下げを先取りしている例がたくさんあちこちで出ています。市町村が中心でありますけれども。全国で初めて18歳の未成年者にも投票権を与えた秋田県の岩城町、ここで、住民投票に18歳まで認めるといったら、制服姿の高校生や専門学校生が投票所に足を運んで、何と未成年者の投票率が66.4%だったというんですね。やはり僕はすごく、学校で学んだことがそのまま社会とダイレクトに結びつく、こういう経験を高校時代に積んでおくということは大変重要だと思うんですが、住民投票は、公職選挙法に縛られることなく、各自治体が条例で制定できます。
 都道府県に関しては、北海道が全国で初めて常設型のこの住民投票条例というものを導入したようでありますが、知事、ぜひ岩手県でも、この常設型の住民投票規定ですか、地域主権ということですから、国の動向を見ながらということではなくて、いいことですから、検討に向けてぜひ議論を始めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) その辺から中学生、高校生の皆さんに議論してもらうといいと思います。
〇14番(高橋博之君) なるほど、その辺から中学生、高校生から議論をしてもらったら、そうですね、いいと思います。
 中学生、高校生、そうですね、この規定に、要は投票権を下げることがいいことかどうか議論することはとてもいいという御答弁が、今、知事からございましたので、教育長、ぜひ学校現場の中で、先ほどの話に戻るわけですけれども、若い人が、投票権を持って社会づくりに参画していくことの意味も議論をしたらどうだと思うのですが、その点についていかがでしょうか。
〇教育長(法貴敬君) 御提言を受けて、さまざま検討してまいりたいと考えております。
〇14番(高橋博之君) 知事、今の御発言、本当にいいことだと思います。その議論から高校生、中学生が始めるということはですね。そうしたら、県が、行政が、ぜひ火つけ役になっていただいて、そういう場でこの規定を検討するという議論になれば、そこに中高生を巻き込んで、果たして何歳が適当なのか、こういう議論もできると思いますので。
 この住民投票については、この後、地域主権の部分でもお話ししますので、ここでやめます。
 なかなかこの住民投票が難しいということであれば、それならぜひ、先ほど教育長もお話になっておりましたが、この模擬投票、これをもう少し岩手県で広げられないものか、こういうふうに思います。
 高校生に投票に関心を持ってもらおうと、神奈川県の松沢知事が、前回の参議院議員選挙にあわせて、神奈川県内の全県立高校で、この模擬投票をしてほしいと教育長に要請して、実施したそうであります。衆議院議員選挙のときには、この模擬投票は全国で20校だったそうでありますが、参議院議員選挙には、神奈川県の例もあって170校にふえたそうであります。
 知事、先ほどおっしゃったように、これは議論になると思います。高校生たち、中学生たちにそういうことを考えてもらう一つのきっかけとして、模擬投票でしたらできると思うんですけれども、次の国政選挙がいつになるのかわかりませんが、そこを見据えて、本県でも、県立高校で実際に選挙にあわせて模擬投票を広めるということをぜひ実現していただきたいわけですが、どうでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 市町村で、子ども議会というようなタイトルで身近な問題について、その地域の中で、ふだん市町村議会をやっている本会議場に、あれは中学生でしょうか、高校生でしょうか、入って、そういう議員がやるようなことをやるということが、岩手県内でも行われているようで、大変いいことだと思っております。
 そういうものは地域から、あるいは子供たちの中から、こういうテーマでやりたいとか、こういうやり方でやりたいとか出てくるのがいいのではないでしょうか。
 私も中学校のころに、200海里問題ですよね、岩手の漁業が大変な影響を受ける、そういう議論を中学生のときにした記憶が、今、こう思い出すとあるんですけれども、その時々の大事なテーマについて、子供たちで議論したり、勉強したりするのは、大変いいことだと思います。
〇14番(高橋博之君) 花巻市でも子ども議会というものをやっているようでありまして、僕はこの前、行けなかったんですけれども、その場にいた議員からお話を伺ったら、とてもいいことだと先ほど言ったような理由をおっしゃっておりましたが、しつこいようなんですけれども、模擬投票、神奈川県では、知事が号令をかけてやったようでありますが、今ここでやる、やらないを言わなくても、ぜひ前向きに検討していただきたいと思うんです。
 この質問は最後にしますが、冒頭、僕はそこで登壇して質問させていただきましたが、この若者の投票率が低いということに対して、私は、これからもっと、教育委員会だけではなくて、本当に県庁全体で、あるいは市町村も含めて、問題意識を持って、もう少し力を入れて取り組んでいかなければならないと思っておるんですが、その点についても知事の御所見をお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 模擬投票というのが、何か人のリストの中から、だれか人を選ぶというような一種の選挙のようなものであるとすれば、岩手県内においても、小学校の児童会とか中学校、高校の生徒会とか、かなり真剣に自分たちの中から代表を選んで、そして自分たちの学校の中の自治を進めていこうということが行われていて、また、そういうことの教育の現場での研究もかなり進んでいるのではないかと思うのですけれども、そういうことがさらに、さらにというか、今の調子でやっていくとかなりいいのではないかと思います。
 若い皆さんには、これからの世の中は自分たちがつくっていくんだということをしっかり意識を強く持ってほしいと思っていますし、政治に関心を持ってもらうためには、学校教育や社会教育の場でさまざま教えることも大切だと思いますし、また、政治に携わっている関係者が、県民に対して政治をより身近なものに感じさせるよう、積極的に自由に政治活動を行っていくことも必要ではないかと考えております。
〇14番(高橋博之君) 生徒会、僕、小学校のとき副会長に立候補して落選したんですけれども、子供のとき、小・中・高の生徒会の選挙の経験、それがなぜ卒業して二十になると投票に行かないことになるのかと僕もすごく不思議なんです。もちろんそういう経験も僕は大事だと思いますが、学校で学んだことが社会で今起こっていると。それがリアルに、学んだことをそのまま制服を着て外に飛び出して投票所に行くという経験をしてみるということがとても大切だと思います。こればかりやっていると時間がなくなるので、ぜひお願いをしたいと思います。
 次は地域主権の問題に移りますけれども、要は地域主権の担い手を育てていくという意味で冒頭この質問をさせていただいたわけですが、地域主権、まずお聞きします。
 地域主権改革を民主党は重要政策に掲げて地域主権戦略大綱を閣議決定しました。知事は知事演述の中で、地域主権型社会の主役は言うまでもなく地域住民であり、地域住民の願いが議会や行政を通じて実現されるときに地域主権が実現をしていると言えますと述べております。確かにそのとおりだろうと思いますが、この地域主権、古くは地方分権、もう十何年、20年になるんですか、大分前から言われてきていまして、しかし、なかなか前に進まないと。
 実は、これはとてもいいことだし、やらなければいけないんですが、そもそも住民の皆さんがこの地域主権を果たして欲しているというか求めているのかといえば、求めてこなかったからなかなか進んでこなかったというような背景もあると思うんですが、そもそも地域住民の皆さんはこの地域主権の確立を望んでいると知事はお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 今、質問の中で紹介いただきました、地域住民の願いが議会や行政を通じて実現されるときに地域主権が実現しているというその地域主権の定義からいたしますと、住民の皆さんは、さまざまな願いを議会や行政を通じて実現することを望んでいますので、そういう意味では地域主権の実現を望んでいると認識しております。
〇14番(高橋博之君) ちょっと時間がないので飛ばそうと思ったんですけれども、でも大事だと思うので、ここやります。
 まさに住民の皆さんの意思がそういう形を通じて自治体運営に反映されていくということが地域主権なのだと思いますが、実は、この地域主権、住民の皆さんの意思が反映しやすい自治体に財源や権限、決定権を落としてくるということはそのとおりなんだろうと思いますが、片山総務大臣も地域主権の本質は住民の政治参加の拡大だという話をしていまして、僕もそのとおりだろうと思うんです。しかし拡大しても、よく観客民主主義だとか言われていますけれども、観客席の上から住民の皆さんにおりてきていただかないことにはなかなかこの地域主権が根づかないんじゃないかと、僕、心配しているんです。
 それは私の実体験に基づいておりまして、この5年間、地域の公民館460カ所を回ってきました。延べ人数でいうと3、800人の方に来ていただいて、それぞれ2時間、住民の皆さんと対話を重ねてきましたけれども、これ、各会場でいうと平均三、四人でありまして、だれも来ないということもありまして、地域一軒一軒案内チラシを配って当日待っているわけですけれども、だれも来ないこともあるんですね。せっかく、私、県議会議員ですから、県政にいろいろな日ごろの思いをぶつけていただくチャンスをたくさんつくろうと思って回っているんですけれども、つくってもなかなか来てくれないんですね。特に若者は、ほとんど来てくれません。
 そこで、どうしてかとずっと考えてきたんですが、やはり、よく言われるお任せ民主主義、観客民主主義ということがまさに今、私はこの日本社会で問われている問題ではないんだろうかと思っております。
 弁護士の中坊公平さん、裁判員制度の旗振り役をやりましたが、あの方が前、テレビに出てこういうことを言っていたんですけれども、日本の近代法は外国法の見よう見まねで始まったので、その精神には建前と本音の乖離があった。そのため、形では近代国家になったが、国民の意識はそうならなかった。これが封建時代そのままの統治客体意識、つまり統治されるという意識である。敗戦後、初めて国民主権になったが、やはり変わらず、そのまま現在に至っている。国民が主権者であるという意識が座っていない。何かあると役所任せにするところに我々の基本的な問題がある。こういう話をしておりまして、国民の司法参加を求めるということで裁判員制度の旗振り役をやったようでありますが、地域主権は、僕、これと本当に同じだと思っていまして、国民の司法参加ではなくて、国民、住民の政治参加をより進めるという意味で、私はとても意義のあることだとは思うんですけれども、この点について、どうやれば住民の皆さんに観客席からおりてきていただけるのかというのを考えたら、やはり知事がさっきおっしゃったように、自分たちの意思を、政治を動かしたり、あるいは住民投票を活用して自分たちの身の回りの暮らしを変えるという経験をこれまでなかなかできる機会がなかった。つまり、手ごたえを感じていないと思うんです。つまり、その手ごたえを感じる環境を今から整えておく必要があると思うんですが、その意味で住民投票についてお伺いいたします。
 通常国会に提出を予定しておる地方自治法改正案で片山総務大臣は、住民投票制度の拡充を盛り込もうと意欲を見せておりますが、全国知事会など地方6団体から反発や慎重論が相次いでいる。何で反対するのか、僕すごく不思議なんですけれども、知事は、地域主権型社会の実現という観点から、この住民投票制度の拡充についてはどのようにお考えになっておりますでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 住民投票制度の導入については、住民自治の充実強化の観点から重要な論点であると考えておりますけれども、地方行財政検討会議の場で各都道府県の知事からの意見ももらいながら、それを参考にして提言してきたんですけれども、制度化に当たっては、投票結果の法的拘束力ですとか対象とする事項ですとか住民投票と議会のあり方との関係ですとか、多方面から慎重な検討が必要と考えております。
〇14番(高橋博之君) 多方面から慎重な検討が必要という御答弁でありましたが、覚えておられるかどうかわかりませんけれども、前回の私の一般質問に対する答弁で、二元代表制というものにどう直接民主制を取り入れていくかということは地方自治にとって非常に重要な課題だと思いますので、さまざまな工夫をしていきたい、こういう御答弁をされております。
 この住民投票をそれぞれの地方自治体で広げていく、直接民主主義の幅を広げ、入り口を広げていくということについては、その趣旨についても前向きではない、こういうことなんでしょうか、知事は。
〇知事(達増拓也君) 今、問題になっているのは、地方自治法改正案の中に大規模な公の施設の設置について住民投票に付すことができるという条例を定めることができるようにするということですけれども、そういう大規模な公の施設の設置について、つくる、賛成、反対あるいはつくるかつくらないかということですけれども、そういうマルかバツかということで一気に住民の意見を聞くということが有効な場合もあると思います。ただ、つくるにせよ、こういうふうにしてつくったほうがいいんじゃないかとか、こういう理由があるから反対しているんだがというのに対して、いやいや、だったらそういうつくり方はやめて別のつくり方にしようとか、特に議会の場で話し合って決めるほうが有効な場合もあり得るんじゃないかというような多方面からの検討が必要と考えているわけであります。
〇14番(高橋博之君) この住民投票については、我々議員の中でもやはり慎重にするべきだという意見が根強いわけですけれども、私は、例えば住民投票に法的な拘束力を持たせることに反対するというのは、我々議員の立場からするとなぜかなというふうに不思議に思うんですけれども、直接民主制を制度として認めることは、いわゆる間接民主制である議会の権限を侵すことになるんじゃないのか、こういう御意見もありますが、これは果たして本当にそういうことになるのか疑問なんです。
 なぜなら、議会や行政の権限は、本来、住民から授権されたものであります。そういうことを考えると、地方分権や地域主権を叫びながら住民投票に法的拘束力を持たせることに反対するということは自己矛盾になると思うんですが、知事は、今の御答弁を聞いておりますと、間接民主主義を補完する形で直接民主主義がありますが、ケース・バイ・ケースでそれを今、整理をしている段階で、整理をした時点でそういうものを取り入れていくことは大いにやったほうがいい、こういう認識でよろしいですか。
〇知事(達増拓也君) 多方面から慎重な検討が必要ということであります。
〇14番(高橋博之君) では、消極的だということですかね。
 では、最後にいたしますが、もう一つ、直接民主主義の入り口として、直接請求制度の見直し、要件緩和についてお伺いいたします。
 この直接請求制度の対象に地方税条例を含める方針についても、地方側から安易な減税要求が乱発されるんじゃないかという懸念が相次いでおります。知事は、地域主権型社会の実現という観点から、この直接請求制度の要件緩和についてどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 直接請求制度は代議制を補完するものとして意義あるものでありますけれども、真に必要とされるときに機能する仕組みとなるよう見直しを図っていくことが必要であります。こうした観点に立って、現実の事案にも即して、必要な改正措置が議論、検討されるべきと考えます。
 受益と負担のあり方については、住民本位の行政サービスを提供していくために、その負担をどう賄うか幅広く議論を行いながら決定していくべきで、議会の場を通じて県民に開かれた議論を行い、県民の理解を得ていくことが必要と考えます。
 このような過程の中で、地方税の賦課徴収等の直接請求をどう取り扱うかについては、受益と負担の均衡の確保や減税要求の乱発に対する歯どめなど、さまざまな論点を想定した、より丁寧な検討が必要と考えます。
〇14番(高橋博之君) 地域主権の本質は、僕は住民の皆さんの政治参加の拡大だと思っておりますが、知事もその点については異論なかろうと思います。その広げ方についての温度差だろうと思うんですが、次の質問に入る前に、大事なところなので、ちょっとここ少し認識がずれておりますので、民意の統合ではありませんけれども、少し私の考えもお話しさせていただきたいんですが、地域主権の担い手として住民一人一人が自立をして責任を持ってやっていく。このことに私は先ほど来、果たして今のままで本当に地域住民の皆さんが責任を持ってみずから行動するということにつながっていくのかということについて実体験に基づいて心配しておりますが、実は、こういうことをお話しされている方がかつておりました。
 戦後の民主主義について問われて、経済復興だけ一生懸命やって、とにかく食うことだけ、もうけることだけ、それはアメリカ連合軍も望んでいることだったわけだ。だから今、突然、国際社会の中で、もう一度目を向けて責任を果たせ、役割を果たせと言われたって、忘れちゃったことだ。日本国家として、国民として都合の悪い部分は考えないということになってしまった。たらふく豊かに食っていけばこんなにいいことはないよね。だから、国家を形成する、あるいは共同体を形成するみずからのコスト─責任と行動、それは家庭でも村落共同体でも市町村でも国家でも国際社会でも、共同体を形成していくためには、それだけの責任と努力と役割を果たさなければ共同体は成り立たないわけだ。その共同体の利益を享受する以上、その責任を果たさなきゃならん。コストを負担しなきゃいかんでしょう。その部分が全部欠落しちゃったんだな、そういうたぐいのもろもろ。こういうお話をされている方がおりましたが、これは知事が師として仰いでおります小沢一郎さんが自民党幹事長時代に湾岸戦争への対応に取り組んでいたときに朝日新聞のインタビューに答えた話ですけれども、あれから随分たっていますけれども、この発言の内容については今なお色あせていないと僕は思っております。
 朝日新聞を戦争責任をとるといってやめて、今、秋田県に帰ってジャーナリストをやっている武野武治さんという方が朝日新聞にコラムを書いていますけれども、実は同じことを言っていまして、普天間基地の問題もそうですけれども、まるっきりみんな見物客だと。要はごみ問題と同じで、自分はごみを出すけれども、不衛生だから家の近所に処理場をつくるのは嫌だと。英語ではNIMBY─ノット・イン・マイ・バックヤードと。その施設の必要性は認めながら、自分の視野に入るところにはつくるなと。
 これが本当に私は今の日本にとって財政赤字の根本的な要因でもあるし、それから地域社会の崩壊の根本的な要因でもあるし、ここをやはり正していくというか、民主主義をこの国につくっていかないと本当に未来が危ういものになると心配をしているんですが、今の話も受けまして知事に改めてお伺いいたしますが、地域主権はもちろんやらなければならない。しかし、今から財源、権限がおりてくるわけですけれども、我々の側が果たしてそれらを使いこなせるだけのトレーニング─準備が今できているのかということについて、知事は率直にどういうふうにお感じになっていますか。
〇知事(達増拓也君) 県行政の現場では、県民の皆さんからああしたほうがいい、こうしたほうがいい、さまざまな意見、要望もたくさん来ております。それから広域振興局で、例えば道路を直すとか、あと河川を直すとか、そういうインフラ整備をする際、最近は、もう設計、デザインの段階からそこの地域の住民の皆さんと相談をして、どういうふうにするか。ある河川改修の場合は、本当に白地のところから住民の皆さんと議論を始めて、住民の皆さんがさすがに専門家じゃないので全然わからないから、まず幾つか選択肢を持ってきてくれということで、県の河川の専門家がいろいろな幾つかの案をつくって持っていって、それで議論して、ああ、では、ここはこうしたほうがいい、ああしたほうがいい。そのように、住民が行政あるいは議会を通じて自分たちの願いを実現させていくということは、岩手においてはかなり活発にいい勢いで行われていると思っておりまして、そこにさらなる今、国が持っているような権限や財源が来れば、もっとすごいことができるという確信のようなものは持っております。
〇14番(高橋博之君) 大変いい取り組みだと思います。
 次の質問に─まさに今、核心の部分に知事に触れていただいたわけですが─かかわってくるわけですけれども、その地域主権のもう一つの側面、自分たちの自由な意思で自分たちの思いを自治体運営に反映させられる。反面、やはり責任が伴う。あるいはコストについても一緒に考えていく。受益と、まさにこれまで足りなかった負担の部分についても住民の皆さんに考えていただくということがこれから極めて大事になってくるわけです。
 そこで次の質問に入りますが、バブル経済が崩壊し、20年たちました。利益の配分から負担という痛みの配分に─知事はこの痛みという表現は嫌いなようですけれども、表現のことはちょっと別にして、いずれ利益の配分から負担配分に政治の役割が移ったと言われて久しいです。新たな時代の政治とは、選択と説得の政治と言うべきものであります。多額の借金を抱え、この先、財源が細る中、あれもこれもではなく、あれかこれかを選び、重点投資する。足りない分は負担を求める。負担増となる人々にはその理由を説明し、納得を得る努力を重ねることが大事になる。
 この県民の負担を前提として、選択と説得が県民の利益を最大化する改革に不可欠な作業と考えますが、これは前回からの延長線になりますが、知事は、この限られた財源の中で選択と説得をどのように進めていこうとしておるのかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 厳しい行財政状況を踏まえて、基本的に、歳入構造に見合った持続可能な歳出規模となるように抑制を図りながら、選択と集中によって行財政資源の最適配分を図るということが引き続き必要と考えています。
 そして、県民負担の公平性を確保していくという観点からは、県税収入の適切な確保を図るほか、使用料の見直しなど、受益と負担の適正化ということに努めていくことも重要と考えています。
 こうした行財政運営に当たっては、県民の十分な理解をいただくことが重要ですので、県の取り組みについて、いわて県民計画のアクションプラン改革編に盛り込んで、そして毎年度、その取り組みと成果を県民に公表しているところであります。
〇14番(高橋博之君) 税収がこれから減っていきます。財政がどんどん収縮しておる中で、サービスや、あるいは事業が維持されているということになりますと借金だけがふえていくということで、ここを何としても入り込んでいかなければならないところだと思いますが、そこには、痛みを伴うと言うと知事は痛みじゃないと言うのかもしれませんが、前回、私ここでやりとりしたときに、実はあのときちょっと理解ができなかったんですが、あの後、答弁書を何度も読んで、知事の言っている意味がよく理解できるようになりました。
 つまり、ここに書いている、痛みじゃないんだと。最終的には個別利益の最大化を図っていくことになる。要するに、診療センターを無床化して入院できなくなった。しかし、それをやらなければ、命にかかわるような病気になったときに、果たしてそういう基幹病院で高度医療が受けられなかったらどうするんですかと。まさにそのとおりだと思うんです。教科書上というか頭の中ではそのとおりだし、そこにしか行けないと思うんです。それが県民利益の最大化だと思います。
 ただし、長い目で見ればというか目先もそうですけれども、無床化されてベッドがなくなった地域住民の皆さんからしてみると、例えば、そこにじいちゃんが入院していたからばあちゃんは毎日見舞いに行って、見舞いに来てくれるものだからじいちゃんも元気に頑張れていた。ところが、入院できなくなって遠くの病院に行っちゃうと、ばあちゃんは毎日見舞いに行っていたものが2週間に1回しか行けなくなったり、おじいちゃんもおばあちゃんの顔を見られなくなると元気がなくなって急に体力を落としていくということもあるわけでして、そこだけ局所的に見ると、やはり心を痛めたり、あるいは苦しんだりという方が出てきてしまうと思うんです。その方々に対してどう説明をしていくのかということがすごく大事だと思うんですが、達増県政の1期目のこの4年で、やはり最大の問題は県立病院の問題だったと思いますが、そこから一番学び取るべき教訓ではなかったのか。
 先ほど知事が僕の質問に対して、岩手県で既にそういう取り組みをしているんだ、いろいろ計画段階から住民の皆さんにも入っていただいてという話をしておりましたが、やはり一番大事なところはそこなんじゃないのかと。計画をつくる段階から、やはり手間はかかりますけれども、当事者の皆さんにも代表者の方に入っていただいて、それで県が置かれた状況も全部つまびらかに明らかにして、その上で、これだけ大変なことになっているということも一緒に考えていただく。そのことは新しい県民計画の中でも住民の皆さんに一緒に受益と負担の問題を考えていただくという話も書いておりますので、そのような行政運営のあり方をぜひ、より丁寧な民主主義のプロセスということになると思うんですが、これからはやはりそういう改革をしていかなきゃいけなくなります。
 この後、県立病院の問題についても話をしますけれども、高校の問題もそうですし、それをぜひシステム化というか、基本的な行政運営の方針として皆さんに踏まえていただきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 例に出された入院患者さんのケースなどは、お一人お一人に対して病院の現場できめ細かく対応することだと思います。自宅療養のほうがいいのであればそうするとか、また、どこかに入院しなければならないのであれば、家族の皆さんの事情もちゃんと承知した上で移転先を手配するとか、そういうことが重要だと思います。
 それから、県立病院の経営については、そもそも医療局という公営企業ですから、そういういわば民間企業のようなガバナンスのシステムの中で専門性や経営判断ということを中心に決めていくというようなことで、他の一般の行政分野ほど県民の声を聞かないようなところが昔はあったのかもしれませんけれども、私は任期当初から、医療崩壊と呼ばれる地域医療の危機を解決するには、県民一人一人が医療を自分の問題と考え、そのことは県立病院の新しい経営計画の1年前、既に県の医療計画の中に盛り込んでいるところでありますし、そして、県民がきちんと医療システムの基本であるとか病院の経営システムの基本であるとか、そういったことをちゃんと理解して、その経営にも参画していくということが目指すべき方向だと考えて、そういう基本方針を医療計画にも盛り込んでいるところであります。
 そして実際さまざまな、病院のある地域で住民の皆さんのそういう主体的な運動、病院を守る運動とかいろいろな手伝いをする運動とかも起こっていて、この調子で進めていけばかなりよくなっていくのではないかと考えております。
〇14番(高橋博之君) 前に伺ったときの八ツ場ダムの話も、ダムをやめることによってどこがよくなるということを示していないからだめなんだみたいな話をされていたんですね、知事は。民主党がコンクリートから人へと言って、そのとおりだと多くの国民の皆さんが支持して政権交代したわけですが、何ごとも総論賛成、各論反対でありまして、そのとおりなんだけれども、いざ各論が自分の身に降りかかってくるとやはり反対になるというのは、これは暮らしがかかっていますし、当たり前のことだと思うんですが、行政と国民や、あるいは住民との関係で─知事が言ったんですけれども─何かをしてあげる、してもらう、足し合わせれば負担と得るものはイコールだと。そういう意味で、本質が変わるわけじゃないと。ただ、高度経済成長時代には借金をベースにした行政、政治がうまく回転していたということで、国民、住民が未来の自分たち、あるいは次世代からちょっと借金をして、それなしでは得られないような便益を得ていた、こういう御発言をしておるんですが、これからは、もう借金頼りではなくて普通に税金を中心とした負担、自分が払った分だけの便益を受ける、こういうような仕組みに変えていかなければならない。その際に協働していかなければならない、こういうふうにお答えになっているんですが、そのとおりであります。
 しかし、裏を返せば、今まで自分たちが負担した以上のものを受益していた住民からすれば、これは明らかに、感覚としては負担増になっていくイメージでありまして、そこをどうやっぱり説明をするのかと。
 とにかく説明というのがすごく大事だと思うんですが、次に、この説明の部分ですね、選択と集中を今、徹底しています。行財政改革をやっていますが、財政の収縮に追いついていません。これからますます追いつかなくなります。
 財政が収縮していく中で、サービスと事業の規模が維持され、借金がふえています。多額の予算措置が伴う県の重要施策についても、優先順位を決め、選択と集中を図る必要があります。その際、知事自身が、県民に優先順位について説明をすることが必要ではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 例えば、いわて県民計画には、岩手の未来をつくる七つの政策という政策の柱が掲げられているんですけれども、それは、それぞれ着実に推進していく必要があって、その七つの分野の中で、どれが優先という順位をつけるのは難しいと思っております。
 その時々の県民の置かれた状況に応じて、七つの政策を構成するさまざまな施策について、最適な組み合わせを見出していくということであって、そうした過程で選択と集中を強めていくのだと考えております。
 選択と集中の結果については、例えば、当初予算案の公表の際に、重点的に取り組む政策として、その都度、明らかにして、知事演述の中で、その年度の取り組みとその考え方について説明をしているところです。
〇14番(高橋博之君) この問題は最後にいたしますが、来年度予算は、県立病院予算と言っても過言ではないと思います。岩手県は、全国で最も県医療にお金をかけている県です。しかしながら、今後、財政運営が一層厳しさを増す中、一般会計から191億円もの巨額な繰り入れを行い続けると、県立病院の財政負担が重くなっていく一方であるという現実を、そろそろ直視をしなければならないと思います。
 本県は、県立医療に巨額な予算を投じている分、他の、農業の抜本改革とか、若者の雇用、産業振興などの─そのほかもあると思うんですけれども─重要施策については、逆に言うと、ほかの県ほど総体的に充てる予算が少なくなっているということにもなると思うんですが、このまま岩手県は財政負担と赤字を許容し、県医療をある意味で最優先施策としてとらえていくのか、あるいは少しダウンサイジングして、ほかの分野に、農業や産業振興などの他の重要施策に振り分ける予算を確保する方向にかじを切るのか、そろそろ決断をしなければならないときだと思いますが、知事のお考えをお聞きいたします。
〇知事(達増拓也君) 宮沢賢治さんが今ここにいたとして、それで宮沢賢治さんに、今、農業、科学技術、医療、文化芸術、どれが最優先ですかと聞けば、全部大事だと答えるのではないかと思います。
 平成23年度予算は、やはりそういう発想でつくられておりまして、病院最優先という発想ではありません。しかしながら、今まで180億円水準だったものが、繰入金が190億円台に乗りました。それは、やはり今、県民が直面するこういう情勢の中で、それが県民の意思にかなうのであろうという判断でそういうふうにしているわけでありまして、同様に、他の分野についても、平成23年度予算案として御提示、御提案しているところであります。
〇14番(高橋博之君) 知事に宮沢賢治を語られてしまいましたけれども、賢治は多彩な人でありまして、そのとおり、いろいろな分野に興味を持って研究をされた方ですが、やはり時代が大きく変わりましたので、おっしゃるように、すべて大事な分野でありますが、大変なスピードで世の中は変わり、財政も収縮していく中にありまして、みんなそれなりに力を入れて守っていければいいんでしょうけれども、やはり力を入れる分野とそうでない分野、県の特色ということになると思うんですが、以前は医療ということだったんでしょうけれども、これから岩手県は何に特にも力を入れていくのかと。ゼロか100じゃないですけれども、その知事の優先順位、知事は、4年間かけて民意に触れてきたと思いますが、知事の考えるある程度の優先順位を、ぜひ次のマニフェスト選挙で県民の皆さんに示して、審判を、判断を仰いだらいかがかなと思いますが、ちょっと時間がないので、その点はぜひ、みんな聞きたいと思います。知事は、どこに特に力を入れていきたいと思っているのかということは、やはり、これから限られた財源の中でありますので、ぜひお願いしたいと思います。
 時間がないので、次の公務員制度改革についてお伺いいたしますが、いわゆる天下りの問題についてお伺いします。
 県出資法人土地開発公社への県庁職員OBの再就職は、いわゆる天下りではないのでしょうか。県として、この天下りの問題について、どう考えているのかお聞きいたします。
〇総務部長(菅野洋樹君) いわゆる俗に天下りというお話でございますが、なかなかその定義というものは判然としないところがございます。ただ、一般には、巷間、天下りについては、国において、特に、いわゆるキャリアといいます上級職出身者で、事務次官出世レースから外れた同期入省者が、定年退職年齢よりかなり、相当程度前に退職しまして、それも省庁のあっせんにより、その関連団体に再就職した上で、しかも再就職先で、いろいろ新聞記事でも言われておりますが、1、000万円等を超すような高額な収入を得ると、またはいろいろな、俗に車とか、秘書とか、そういう話もございますが、そういう待遇を受けている。そういうことをした上で、なおかつ、そういう法人を渡り歩いて、そのたびに退職金を得ているということについて、非常にやはり違和感を持たれている。そういうことについて、天下りという表現がされているようだと承知いたしてございます。
 ただ、本県におきましては、確かに今、御指摘にありましたとおり、土地開発公社に県の出身、県を退職した者がトップに任命されているわけでございますが、今、巷間、申し上げたような特別な待遇を受けているわけではないと承知してございまして、そういった面においては、俗に言う天下りに類するものではないのではないかと考えております。
〇14番(高橋博之君) 天下りの問題の本質は、私はそこじゃないと思います。今、中央省庁の天下りが世間で問題になってきましたが、あっせんの禁止、渡りの全面禁止もいいですけれども、そこは私、議論の本質ではないと思います。
 天下りの害悪は、各省OBの卒業後の仕事先を無理やりつくって、そんなものは要らないという団体を食わせるために要らない仕事を続けていると。そのほうがよほど害悪であり、本質的であり、無駄だと思います。
 そういう意味で、この土地開発公社についてお伺いをいたしますが、設立の趣旨は、昭和48年、私が生まれる前年ですけれども、公共用地、公用地等の取得、管理、処分等を行うことにより、地域の秩序ある整備と県民福祉の増進に寄与する、こういう設立当初の役割があるわけですが、今お見受けするに、完全にこの役割を既にもう果たしてしまっているのではないのかと。
 そこに対して県庁職員OBが2人も天下り、さらには職員が、常勤がすべてで14人いるということで、こういうものを維持していること自体が問題ではないのかと、こういう疑念を県民の皆さんから私はぶつけられまして、調べたところ、もう役割を終えていると。
 しかも調べたら、この法人の先行取得、用地取得は、事業の発生予測がもう困難であると。県として公有地取得事業を委託する予定がないと。もう公共事業もこのとおりでありますし、買う土地もない中で、何でこんなの維持しているんですか。
〇総務部長(菅野洋樹君) ただいま議員から御指摘のありましたとおり、必要もない出資法人を存続させるということについては、極めて問題であろうと思ってございます。
 したがいまして、本県におきましても、県の出資法人改革の中で、施策推進上の使命を終えた法人、または、立ち上がりは支援しなければならないけれども、立ち上がり時期を超えて、もう自立に至った法人については、出資を引き上げる、もしくは、場合によってはその法人を廃止する、そういった方針に基づいて、これまで改革を行ってきたところでございます。
 土地開発公社につきましては、お話のあったとおり、工業団地の分譲、そういったものを行ってきたところでございますし、公共事業に係る用地取得等も行ってございます。
 現在は、そういう観点から廃止いたしました岩手県住宅供給公社、ここから引き継いだ宅地分譲、あっせん事業などを現在ここで実施しているところでございますし、加えて、今年度から、国土交通省から磐井川堤防改修用地取得事業を受託いたしてございます。
 したがいまして、土地開発公社については、これらの事業を行う以上、県政推進上においても、まだ役割を担っているものと考えてございまして、お話のとおり、この土地開発公社につきましては、役割を終えたと判断する時点において、また、しかるべく県としての判断を行ってまいりたいと考えております。
〇14番(高橋博之君) それは後づけじゃないですか。設立当初の役割を終えた公社については廃止するという方針を立てて、先ほど私が説明した設立当初の趣旨は、もう果たしています。
 今、部長がおっしゃった事業については、公社でなければだめなんですか。解散をして、県でやるというわけにいかないんですか。
〇総務部長(菅野洋樹君) 事業の性格上、土地開発公社で行うことが最も適当であろうという判断のもとに行ったところでございます。
〇14番(高橋博之君) 他の市あるいは県でも、随時、この土地開発公社の解散を行っているようであります。バブル期と違って、公社が用地を先行取得しておくという考え方自体が、もうそぐわないし、組織を温存させているという意味で、私は、もうこれは問題だと思います。
 だって、その必要があれば、その都度、議会でオープンに諮ればいいわけでありますし、先ほど土地開発公社のほうが効率的だというお話をしていましたけれども、磐井川の件についても、国からそういうことだったという話ですが、では、仮にその今の事業が終わったら、やめる、解散するということですか。
〇総務部長(菅野洋樹君) 先ほど申し上げましたとおり、県出資法人改革の中で、県の方針は先ほど申し上げたとおりでございますので、したがいまして、土地開発公社につきましても、その行っている役割、今、具体的に申し上げましたが、事業が完了した時点において、改めてその必要性について議論をさせていただき、必要がないと判断した場合については、所要の措置を講じたいと考えております。
〇14番(高橋博之君) 僕は、もう必要ないと思っていまして、そういう議論もあろうかと思いますが、私は、県民の方の何人かから言われたんですね。きちんと基準に、設立当初の使命を果たしたものについては解散をすると書いているんです。読むと、もう設立当初の趣旨は果たしているんですね。その後いろいろ出てきた事業をやっているといったら、いつまでもこれ、やめられませんよ。
 どこかの段階で決断をするということが必要で、少なくとも、こういう設立当初の役割を既に終えたものに対して、県庁職員のOBが2人もいわゆる天下りをしているということに対して、この厳しい財政状況の中で、県民の皆さんの向ける目が大変厳しくなっていて、疑念を持たれているということをお話ししているわけです。いかがですか。
〇総務部長(菅野洋樹君) いずれにいたしましても、県としての出資法人改革についての考え方はいささかも変わってございませんので、それぞれの状況におきまして、土地開発公社の役割、そういったものが、県政運営上、終了したと判断した場合においては、所要の措置を講じさせていただきたいと思っております。
〇14番(高橋博之君) 時間がなくなってしまったので、介護の話まで行きませんでしたけれども、いずれ、県として、県としてということではなくて、我々県民の側からすると、この公社の役割は既にもう終わっていると。事業がまだあるといって続けていることに対して、県庁のOBが2人も天下り、さらに14人も職員がいて、この事業自体、公社を存続させること自体が、僕は問題だと思いますよ。
 そういうことでありまして、ぜひ、この後もどこかのタイミングで、この問題については取り上げたいと思っております。
 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって高橋博之君の一般質問を終わります。
〇議長(佐々木一榮君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時18分 休 憩
出席議員(46名)
1  番 吉 田 敬 子 君
2  番 工 藤 勝 博 君
3  番 高 橋 但 馬 君
4  番 小 野   共 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 岩 崎 友 一 君
10  番 木 村 幸 弘 君
11  番 久 保 孝 喜 君
12  番 小 西 和 子 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 及 川 あつし 君
16  番 亀卦川 富 夫 君
17  番 高 橋 昌 造 君
18  番 中 平   均 君
19  番 五日市   王 君
20  番 関 根 敏 伸 君
21  番 三 浦 陽 子 君
22  番 小田島 峰 雄 君
23  番 熊 谷   泉 君
24  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 大 宮 惇 幸 君
27  番 千 葉 康一郎 君
28  番 新居田 弘 文 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 佐々木 順 一 君
31  番 佐々木   博 君
32  番 田 村   誠 君
33  番 工 藤 勝 子 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 及 川 幸 子 君
40  番 佐々木 一 榮 君
41  番 伊 藤 勢 至 君
42  番 渡 辺 幸 貫 君
43  番 吉 田 洋 治 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
34  番 平 沼   健 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時33分 再開
〇議長(佐々木一榮君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。郷右近浩君。
   〔6番郷右近浩君登壇〕(拍手)

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