平成23年2月定例会 第20回岩手県議会定例会 会議録

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〇12番(小西和子君) 社民党の小西和子でございます。
 私にとって任期最後の一般質問の機会となります。先輩、同僚議員の皆さんの御協力に感謝申し上げます。
 それでは、通告に従い、順次質問いたします。
 初めに、年末年始の大雪、暴風、波浪警報に伴う被害に遭われました皆様方に心からお見舞いを申し上げます。
 県の平成23年度当初予算案は、総額前年度比2.5%減の約6、815億9、900万円、4月の知事改選期を控えた骨格予算となりました。また、年末年始の荒天による農林漁業被害を受け、対策費として、平成22年度の補正及び23年度の補正で総額15億6、900万円余を編成しました。無利子融資については、被害に遭われた方々が活用しやすいよう細やかな配慮を望みます。
 今回の当初予算編成を見ても、やはり心配になるのは将来の見通しについてであります。県債残高は約1兆4、600億円と過去最高に達しました。公債費は今後もふえ、平成27年度に約1、400億円とピークを迎える試算です。県は今後やっていけるのかとの有権者の不安の声も聞こえてきます。
 平成23年度当初予算編成を行った結果、将来の収支ギャップがさらに拡大するようなことはなかったのでしょうか。また、収支ギャップ解消の見込みや、これを乗り越えていくための方策と決意について知事にお伺いいたします。
 知事は11月の記者会見で、本県独自の若者就職支援について、県としては、まずジョブカフェで未内定高校生を対象にした就職内定応援ガイダンスを県内3地域で開催します、また、岩手労働局が岩手新卒者就職応援本部を設置しており、盛岡新卒応援ハローワークを9月に設置、大卒、高卒就職ジョブサポーターを17人から29人に増員、卒業後3年以内の方を採用した企業に対する奨励金制度の創設などを行っているのですが、その大卒、高卒就職ジョブサポーターと県の就業支援員が、求人開拓、学生・生徒に対する就職支援などを効果的にできるよう連携を図っているところですと述べていますが、その成果と課題をお示しください。
 新規高校卒業予定者の就職内定率は84.4%で、過去10年間で3番目に高いと言われていますが、いまだに内定していない卒業予定者が500人以上います。
 そこで、内定率を上げることに最後まで取り組むことはもちろんですが、未就職のまま卒業する方への継続的支援に、県として全力を尽くしていただきたいと考えます。知事に御見解をお伺いいたします。
 昨年11月に、商工文教委員会の調査で京都ジョブパークを訪れました。特に目を引いたのは、マザーズジョブカフェ、女性再就職・母子コーナーでした。働きたい女性一人一人に合ったサポートを行い、再就職または新たに就職するための就業支援から職業紹介、小さい子供がいる方には、子育てや保育情報を提供するというものです。
 例えば、次のようなサービスが受けられます。
 専任の女性カウンセラーによるきめ細かな個別相談、再就職に役立つミニセミナーやパソコンセミナー、子供が遊べるキッズスペースがあり、子供連れでも安心など、大変充実したコーナーでした。小さな子供を抱えての就職活動は大変な苦労があるかと思います。
 そこで、本県における子育て中の女性に対する就職支援の状況についてお伺いいたします。
 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく2010年6月1日現在における県内の実雇用率は、民間企業1.86%、県の機関2.32%、市町村の機関2.28%、県教育委員会1.69%であり、法定雇用率を達成している企業割合は53.2%であり、対前年比で2.0ポイント増加となっています。県教育委員会については不足数が29人となっており、改善は進んでいるものの、法定雇用率2.0とは相当の開きが見られます。他の部門については法定雇用率は達成されているものの、障がい者の雇用される人数、働く場の確保が難しく、自立した生活を営むための基盤が依然として脆弱なままとなっています。法定雇用率はあくまでも最低ラインであり、障がい者のだれもが安心して暮らせるようにするためには、未達成企業はもちろんのこと、既に達成している企業に対してもさらなる働きかけが必要と考えます。このたびの調査結果を受けての障がい者の雇用改善に向けた対応策をお伺いいたします。
 国を挙げて少子化対策に取り組んでいるものの、対策の基本中の基本であるはずの出産環境は悪化の一途をたどっています。医療をめぐる厳しい現状の中、岩手県においても、産科医、医療機関の拠点病院への集約化が進められ、統廃合地域、空白地域の広がりは、妊産婦や家族に不安と負担を強いるものになっています。県内の出産環境の現状や課題をどのようにとらえ、どのような方針で対策を講じようとしているのか、知事にお伺いいたします。
 また、県として、産科医分娩手当支給経費の補助事業や、出産後、NICUに入る新生児担当医に対する同様な補助事業を行ってきましたが、産科医等の定着と勤務環境向上となったのでしょうか、成果と課題をお示しください。
 また、県においては、総合周産期母子医療センターを中核として、地域周産期母子センター、協力病院、市町村等との機能分担と連携による岩手県周産期医療システムを構築して、ハイリスク妊婦や新生児に対する高度医療の提供などの対応を行ってきました。さらに、そのシステムの中に、インターネットを介して妊婦健康診査や診療情報を共有する周産期医療情報ネットワークを新たに構築して、ハイリスク妊婦等の搬送の円滑な実施を図ったり、市町村保健師等の家庭訪問による妊婦への保健指導の充実を図ったりしたということですが、これによりどのように周産期医療確保が図られたのか、お伺いいたします。
 身近な地域での健康な妊娠の継続と安心なお産には、医師、医療機関、助産所等多機能な連携が求められます。同時に、妊産婦の最も身近にあり、妊娠から出産まで一貫した見守りや、出産後もケアしてくれる助産師の役割、活用は欠かせません。
 県はこれまで、妊産婦の安心・安全、医療現場の過重負担の軽減等のため院内助産院や助産師外来等を設置し、助産師の活用を図ってきました。しかし、岩手県は広大な面積を持つため未設置地域は多く、その地域での早期の設置が待たれております。また、既に設置されている地域では、その存続に不安を抱いていることから、地域の安心にこたえられるような機能、スタッフの充実を図ることが必要と思われます。現在の院内助産院や助産師外来、モバイル遠隔妊婦健診実施助産院等の設置の状況についてお伺いいたします。
 出産は、お母さんやその家族が、子供をどう育てていくかの出発点であります。しかし、健診を受けない飛び込み出産や緊急搬送されるケースがふえています。就労環境の問題や妊婦自身の問題があるとはいえ、その多くは経済的な理由となっています。母体と赤ちゃんの健康を守るため、また、医療現場の過重負担を避けるためにも、内容の充実した健診の保障が必要です。国の妊婦健診の財政措置は、2011年─平成23年度までであることから、継続した財政措置が必要です。県、国が一体となって財政措置を含む妊婦健診の充実に取り組む必要があると考えますが、御所見をお伺いいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 政策評価報告書では、子育てと仕事の両立に向けた職場環境の整備や、男女がともに家事や育児に取り組む環境づくりなどが進んでいないことから、ややおくれている状況とあります。いわて子どもプランでは、男女がともに家庭や子育てに夢を持ち、次代を担う子供たちが健やかに育つ環境づくりを基本方針に掲げて、市町村や関係団体、企業等の理解と協力を得ながら、男女がともに子育てをする意識の醸成や子育てにやさしい職場環境づくりを推進することとあります。
 携帯電話からアクセスできるホームページや漫画を活用した情報誌、パパ子育て手帳の配布や、父親の子育て講座の実施などについて、その評価と県民から寄せられた声をお示しください。
 岩手県の次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定状況をお示しください。また、計画の策定に向けて、各企業に対しどのように支援していくのか、お伺いいたします。
 あわせて、県及び県教育委員会で策定した特定事業主行動計画は実効あるものになっているでしょうか、お伺いいたします。
 近年、虐待により子供の命が失われるなど、重大な事件が依然として後を絶たない状況であり、虐待問題は社会全体で早急に解決すべき課題となっています。
 岩手県における3児童相談所が受けた平成21年度の虐待相談対応件数は293件で、前年に比べて20件増加していますが、市町村が受け付けた虐待相談は457件で、前年に比べ26件減少しており、県全体では依然として高い水準で推移しています。心身ともに健やかに生まれ育つことはすべての子供たちの権利であり、社会全体の責務です。現場からは、相談件数の増加に対応が追いつかず、根絶は大変困難であるという声がありますが、相談体制の状況と課題についてお伺いいたします。
 2010年3月に、国会で高校授業料無償化法が成立しました。公立高校の授業料を無償化し、家庭の教育費負担を軽減するという法の趣旨は、高校生に学ぶことへの意欲と将来への希望をはぐくみ、その保護者に教育と社会に対する信頼をもたらす画期的なものです。
 その法に基づき改正した県の条例では、高等学校等に在学した期間として、規則で定めるところにより、算定した期間が通算して36月を超える者は授業料を納入しなければならないとしました。これにより、県の条例施行後に授業料を納入しなければならなくなった高校生は、県内で96人に上りました。
 さきの6月県議会ではこの問題が議論され、病気に伴う欠席期間にかかわる運用の検討などが示され、高校授業料無償化法の趣旨に沿う運用により、36人が無償の対象となりました。しかしながら、依然として60人の生徒が授業料の納付対象者となっています。2月現在では、66人と報告されています。納付対象者は、あなたはだめな人間とレッテルを張られているみたいでつらいと言っています。
 岩手では、年間500人を超す不登校の高校生がおり、授業料納付対象者は今後増加することも予想され、経済的理由から復学をあきらめたり、退学を余儀なくされたりする高校生も危惧されるところです。全国的に見ても、半数近くの地方公共団体が、入学前の学習歴を問わず完全無償化しております。岩手においても、すべての生徒の授業料無償化を実現し、学ぶ高校生の希望を失わせず、家庭の経済的負担をなくすことが必要と思います。
 そこで知事にお伺いいたしますが、高校授業料無償化法の趣旨をどのようにとらえているのでしょうか。また、他県より授業料の納付対象者が多い理由をどのように分析しているのか、お伺いいたします。
 すべての子供が未来の社会の担い手です。今、必要なことは、子供一人一人に行き届いた教育を保障することです。そのためには、現行の学級定員を大幅に減らすことが必要です。
 ことし、文部科学省の概算要求の中で、10年ぶりに定数改善計画を見直し、今後8年計画で低学年を35人学級から30人学級へと、小学校3年生以上35人学級を目指すことを提案しました。この間、岩手においても、小学校1、2年の35人学級実施と、中学校1年生の35人学級の試行が進められ、子供に個別指導ができたり、触れ合う時間の確保ができたりと、充実してきていることは実証済みです。また、高校の定数の見直しは、一人一人の個性と能力を生かす豊かな教育の保障と、地域の高校教育の維持のためには重要な課題でもあります。既に他県では、高校において少人数学級を実施しているところもあります。
 そこでお伺いいたしますが、少人数学級の有効性についてどのように分析しているのか、お伺いいたします。あわせて、東北各県の小・中・高等学校の少人数学級の取り組みと効果についてお伺いいたします。
 昨年4月から、児童自立支援施設である県立杜陵学園に、長年の課題であった学校教育法による学校教育が導入され、盛岡市教育委員会の協力を得て、盛岡市立黒石野中学校北杜分校、盛岡市立緑が丘小学校北杜分教室が開設されたと聞いております。これは、平成10年4月の児童福祉法の一部改正により、それまで学校教育に準ずる教育が実施されていたものが、施設長に対し、入所児童に学校教育法による学校教育を受けさせる義務が課されたことによるものですが、長年の課題を克服して学校開設に努力された関係者の皆様に敬意を表するものです。さまざまな事情を抱え、自立支援を目的に、学園で生活する児童生徒の教育が一層充実するためにという観点でお伺いいたします。
 まず、昨年4月の開設時と現在の入所児童生徒の小中学校の学年ごとの人数をお伺いいたします。そのうち、入所前の前籍校で、特別支援教育の必要性を認定された児童生徒数をお伺いいたします。
 現在、北杜分校には特別支援学級が設置されておらず、特別支援教育を専門に行う教員も配置されていないと聞きます。現在、特別支援教育が必要とされる児童生徒にどのような対応がされているのか、お伺いいたします。
 杜陵学園は児童の自立支援を目的とした施設であり、いわば子供たちの成長過程における通過点です。その目的が達せられれば、児童生徒個々の教育的環境に配慮しながら、本来の学区である前籍の学校に戻るよう、関係者の調整がなされることが必要であります。間違っても、受験に関して、本人の不利益になることがあってはならないと考えます。学校教育法による学校教育の必要によって開設された学校において、その趣旨に合わない運用がなされることがあってはならないと考えます。入所する児童生徒は全県を対象範囲とし、さまざまな課題を抱えていることから、運用上の課題に対して、県教育委員会が盛岡市教育委員会及び関係機関との協議を積極的かつ丁寧に行い、真摯に課題の解決に当たるべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 ことしは、女子差別撤廃条約を日本が批准してから25年に、また、実質的な男女平等を確保するために、男女共同参画社会基本法が制定されて11年目に当たります。その間に法の整備が進み、国や地方自治体などでさまざまな取り組みがなされてきました。それにもかかわらず、2010年ジェンダーギャップ指数によると、日本の順位は134カ国中94位と、極めて低い水準にとどまっています。
 ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラムが、各国内の男女間の格差を数値化しランクづけたものです。経済分野、教育分野、政治分野及び保健分野のデータから算出したものです。また、県民意識調査で、岩手県の男女の地位の平等感を問うと、約7割が社会全体として男性が優遇されていると回答しています。
 男女共同参画とは、単に女性の地位向上のみではなく、性別にかかわりなく居心地のよい社会をつくり、だれもが安全で安心な生活を営む権利を確保する人権保障の問題であると考えます。男女が互いに尊重し合い、ともに参画する社会を目標とした新しいいわて男女共同参画プランのもと、県民意識調査で、社会全体が平等と回答する割合をふやすための取り組みについてお伺いいたします。
 近年、配偶者からの暴力が大きな社会問題となっており、人権の擁護と男女平等の実現にとって大きな妨げとなっています。平成21年度の県内配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は1、262件、うち、もりおか女性センター607件と、平成20年度に比べほぼ倍増しています。
 DV被害者の支援について、被害者の安全確保を最優先に、被害者の置かれた状況に即した的確な支援のため、全県的なDV対策ネットワークとして、岩手県DV防止対策連絡協議会を設置したとのことですが、被害者支援に向けての課題と取り組みについてお伺いいたします。
 DVは配偶者間だけでなく、若い人たちの間でも多く起こっていることが明らかになってきています。DVの背景には、男性が主、女性が従といった、性別に対する偏った考え方があります。児童生徒の名簿を、あいうえお順等に並べる性別で分けない名簿を使用し、性別にかかわらず、平等に扱われることは人権の観点からも大切なことであると考えますが、御所見をお伺いいたします。全国に比べて、性別で分けない名簿の実施率が岩手県が大変低い理由をお示しください。
 近ごろ、5人の女性林業職の県職員が森のあねっこというユニットを結成し、岩手の林業に関するさまざまな情報を発信し始めました。岩手県は全国有数の森林、林業県であり、県内各地にある製材工場や製紙工場が県産材を使って多様な木材製品をつくっています。また、森林は地球温暖化防止に貢献するなど、環境面においても重要な機能を果たしています。しかしながら、森林は県民にとって身近なものかと言えば、決してそうではありません。例えば、平成23年度以降も制度の継続が決まったいわての森林づくり県民税の認知度も4割を切っている状況にあります。こうした中で、どちらかというと男性が多く働く場というイメージが強い林業を女性職員がPRするということは全国でも初めての取り組みであり、大変注目しています。ぜひとも、森のあねっこの皆さんが活躍して、岩手の森林の大切さや森林、林業の現場を、県民はもとより、全国に紹介していただき、県民が森林、林業に対する理解を深めるとともに、こうした情報発信が森林、林業の振興につながり、地域が元気になればと考えます。
 そこでお伺いしますが、女性林業職員の森のあねっこはどのような活動をしているのか、また、今後、どのような活動を展開する予定か、お伺いいたします。
 菅首相は、11月9日、例外なき関税撤廃を原則とする環太平洋パートナーシップ協定への参加について、関係国との協議を始めるとの方針を決定しました。
 TPPは、2006年に、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国による経済連携協定として発効しました。その後、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加を表明しています。参加国は、原則として2015年までに100%関税を撤廃することになっています。
 TPP交渉に参加することは、貿易自由化、つまり、例外なき関税撤廃への列車に乗り込むことになります。アメリカ、オーストラリアを含む貿易自由化となれば、日本農業は壊滅に向かうと言われています。農業生産額は8兆5、000億円から4兆1、000億円減少し、食料自給率は40%から14%になると農林水産省は試算しています。これ以上、海外に食料を依存すると私たちの食生活は世界の食料生産に大きく左右され、非常に不安定になります。食の安全を守るため定められているアメリカ産牛肉や遺伝子組み換え作物の輸入制限、輸入食品の残留農薬基準、食品添加物、食品表示などの緩和を迫られる可能性があります。
 農林水産業は食品を供給するだけでなく、良質な水や空気を生み出し、自然環境、国土や美しい海を守るなどの多面的な機能を持ち、その恩恵を私たちは受けています。多面的機能が失われてしまうと、土砂崩れや洪水が頻発し、海の荒廃など多くの被害を招くおそれがあります。
 農林水産物や工業製品の関税撤廃にとどまらず、サービスの自由化や国内制度の規制緩和、撤廃なども交渉対象となり、労働、金融、保険、医療、建設工事などのあらゆる分野に関する我が国の仕組み、基準の変更によって、国のかたちが一変してしまう可能性があります。
 昨年3月に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画では、意欲あるすべての農家が農業を続けられる環境を整備し、10年後までに食料自給率50%を目指すとしています。TPP参加は、この基本計画とは両立しません。TPP参加は、本県の基幹産業である1次産業の衰退を招くほか、多方面に影響があると考えられますが、現段階で影響をどのようにとらえているか、お伺いいたします。また、岩手県として、TPPに向けた行動を起こす予定があるのか、知事にお伺いいたします。
 介護の社会化を目指してスタートした介護保険制度が、ことし11年目を迎えます。10年を経て介護現場からは、さまざまな疑問や不安の声が上がっています。在宅介護で疲れ切っている家族、負担が重く制度を利用できない低所得の老夫婦、施設に空きがなく入所できない人、親の介護のために職場を退職せざるを得ない人、勤務条件や低賃金に悩む介護職員など、多くの課題が目につくようになりました。
 県民意識調査によると、高齢者や障がい者に安心な地域づくりは重要度2位、ニーズ度2位と、県民の関心が高い反面、満足度は39位と低くなっています。特に、高齢期をこれから迎える50歳代で、将来の安心な暮らしに対する不安が高いと考えられます。
 岩手県の高齢化率は27.1%で、施設利用者の待機者は約6、000人ですが、同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取り扱いについてさまざまな不満の声が聞かれます。岩手県ではどのような取り扱いをしているのか、お伺いいたします。
 訪問介護員、介護職員の離職率が高いことが問題となっています。介護報酬の見直しや処遇改善交付金事業が実施されましたが、引き上げは保険料の値上げと利用自粛を生じています。訪問介護員、介護職員の離職に歯どめをかけるため、何が必要か伺います。
 介護保険法は、在宅介護の充実を念頭に、在宅での安心したケアが受けられるような理念でスタートしましたが、現実は、少子高齢社会の中、老老介護など高齢者が共倒れするような状況です。また、介護者が自殺する事件が起きています。一方、放置や虐待も生じています。介護者が定期的に介護から解放される環境が必要です。今後、さらに独居高齢者世帯が急増することが予想され、制度自体の方針の見直しが必要と考えます。人権が尊重され、安心して老後を過ごすために、新しい時代にふさわしい仕組みづくりをしていかなければならないと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小西和子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、将来の収支ギャップについてでありますが、平成23年度当初予算編成に当たり、県民の負担を過度に増加させないよう、さまざまな財源の活用等による歳入の確保を図るとともに、既存の歳出事業を厳しく見直した上で、地域経済、雇用や、県民生活を守るための予算を適切に計上するよう努めたところであります。その結果、財源対策的な基金の取り崩しを行わず予算を編成したところであり、将来の収支ギャップは拡大していないと考えております。
 本県の財政運営は、今後、これまでにも増して厳しい局面を迎えることが見込まれますので、さらなる地方財源の充実強化に向けた国への提言を行うことに加えまして、県有資産の有効活用や収入未済額の縮減などの歳入確保の取り組みを一層強化するとともに、建設事業の財源とする県債発行額の抑制や歳出予算のゼロベースでの見直しなど、歳入歳出全般にわたる行財政改革の取り組みが、より一層重要になるものと考えております。
 また、厳しい県財政の状況等について積極的な情報提供を行い、県民の皆さんとの認識の共有を進めることによって、魅力的で住みよい地域づくりを進めるための取り組みを行政とともに担っていただくなど、限られた財源の中でも、地域社会を構築するさまざまな主体の総力を結集して、ともに地域課題の解決を図ることが必要と考えております。
 次に、若者の就職支援についてでありますが、今春の高校卒業予定者については、早い段階から個別企業を訪問して採用要請をするなどの取り組みを進めたこともあり、県内企業からは、早期に求人票を提出していただいたところであります。その結果、12月末の内定率は全体で84.4%と前年同期を上回っており、県内就職希望者の内定率も高くなっている状況です。大学生については、1月末でおおむね70%から80%が内定しており、ほぼ昨年並みに近づきつつあると聞いています。
 当面、未内定者が年度内に内定を獲得できるよう手だてを尽くしていく必要があると考えております。
 このため、今般、国が新卒者の雇用を促進するための奨励金制度を創設したことから、その周知に努めていくとともに、高校生については、11月以降、就職内定応援ガイダンスを県内3地域で新たに開催しましたほか、学校と就業支援員等が連携して個別に支援しているところであります。大学生については、新卒者を対象とした面接会を2回追加開催するとともに、大学と国の就職ジョブサポーターが連携して、引き続き個別支援に努めてまいります。
 4月以降は、未就職のまま卒業された方に対して、盛岡新卒応援ハローワークやジョブカフェ等の就職支援施設において継続的な支援を行っていくこととしております。また、新たに、企業現場において実践的な知識、技能を習得することにより早期の就職を促進する若年者地域人材育成事業を実施するなど、新規学卒者の就職支援に全力で取り組んでいくこととしております。
 次に、県内の出産環境の現状等についてでありますが、本県の産婦人科、産科医師数は若干増加傾向にありますものの、依然として厳しく、地域別にも偏在が生じている状況が続いているほか、近年はハイリスク分娩等に対する医療の需要が一層高まってきています。
 このような状況を踏まえ、限られた医療資源のもとで医療機関の機能分担や連携の一層の強化を図り、患者のリスクに応じて全県単位で対応していく体制の強化などを進めていくため、その取り組みの基本方向をまとめた県周産期医療体制整備計画を今年度新たに策定いたしました。この計画に基づいて平成23年度から新たに3病院を地域周産期母子医療センターに追加認定することとしていますほか、ハイリスク分娩等に対応する総合周産期母子医療センターである岩手医大に救急搬送コーディネーターを配置し、各圏域の地域センターとの連携強化による円滑な搬送体制を確保することとしているところであります。
 次に、高校授業料無償化法の趣旨等についてでありますが、教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とし、授業料を徴収しないこととされています。
 また一方では、授業料を徴収しないことが、教育に要する経費に係る生徒間の負担の公平の観点から、相当でないと認められる特別な事由がある場合は授業料を徴収できることとされ、その判断が地方公共団体にゆだねられていることから、本県においては、法の趣旨にのっとり納付対象者を定めているところであります。
 なお、その取り扱いが地方公共団体によってまちまちとなっていることは承知しているところであります。
 2月1日現在における本県の納付対象者は66名となっていますが、本県を含め、既卒者及び標準修業年限を超えた生徒を納付対象としている東北4県─青森県、岩手県、秋田県、宮城県においては、各県とも同程度の納付対象者数─平均66.5名になっていると聞いているところであります。
 次に、環太平洋パートナーシップ協定についてでありますが、一般的には、関税撤廃によって、自動車、半導体産業といった製造業など輸出型産業分野において一定の効果がある一方で、農林水産業、食産業など、地域の特性や資源を最大限に生かした産業の振興、さらには農林漁業と関連した文化、伝統が残る地域コミュニティ等への影響が懸念されます。
 現時点では、環太平洋パートナーシップ協定の具体的な内容等が明らかになっていないため、本県における具体的な影響の把握は困難でありますが、環太平洋パートナーシップ協定については、協定の内容そのものに関する根本的な検討を前提とし、さらに地域の声も反映した国民の合意が得られるまで、十分な時間をかけて慎重に検討することが必要と考えています。
 こうした考えのもと、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農林水産業、農山漁村の振興などを損なうことのないように、北海道、東北6県合同で国に要請しております。今後とも、国の検討状況等を注視しながら、必要に応じ、国に対する提言などを行っていく必要があると考えております。
 次に、新しい時代にふさわしい介護保険制度の仕組みづくりについてでありますが、本県は全国を上回って高齢化が進んでおり、介護保険サービスを利用する高齢者も年々増加しております。また、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯が増加しており、今後も増加が見込まれますことから、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らすことができるよう、地域包括支援センターを中核として、医療、介護、福祉等のサービスが包括的に提供される地域包括ケア体制の構築を進めてきたところであります。
 このため県としては、これまで国に対し、必要な介護サービスを必要に応じて利用できるよう、介護サービス基盤の整備の推進や介護サービスの利用促進のための基準緩和、低所得者対策の充実など、介護保険制度の改善について要望を行ってきました。
 現在、国においては、日常生活圏域ごとの地域ニーズ等を踏まえた市町村介護保険事業計画の策定促進や、24時間対応の定期巡回・随時対応型サービスの創設、介護保険料の軽減のための財政安定化基金の取り崩しなど、第5期介護保険事業計画に向けた制度の見直しが進められているところであります。
 今後とも、県民が介護に不安を持たず、住みなれた地域で安心して生活ができるよう、国の見直しの動向を注視しながら、引き続き提言、要望を行い、地域包括ケアの推進を図ってまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔商工労働観光部長齋藤淳夫君登壇〕
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) まず、子育て中の女性に対する就職支援についてでありますが、現在、ハローワーク盛岡にマザーズサロン、ハローワーク水沢、宮古にそれぞれマザーズコーナーが設置されており、京都のマザーズジョブカフェと同様に子供連れでも来所しやすい環境が整備され、一人一人のニーズに応じた相談や職業紹介、保育施設の情報提供など総合的な就職支援を行っているところです。
 さらに、岩手労働局においては、県、関係市町村、団体から成る岩手子育て女性の就職支援協議会を設置し、情報共有を図りながらマザーズサロンなどの運営に反映させております。
 県といたしましては、引き続きマザーズサロンなどにおいてきめ細かなサービスの提供が行われるよう、職業訓練や各種講習会などの情報提供とともに、マザーズサロンの周知にも努めてまいります。
 次に、障がい者の雇用改善に向けた対応策についてでありますが、県といたしましても、障がい者の雇用環境の改善に向けて、企業に対する意識啓発と障がい者への就労支援を推進することが重要と考えております。このため、企業に対しましては、岩手労働局とも連携し、雇用の維持、拡大に関する要請を実施しているほか、障がい者雇用の優良事業所に対する県知事表彰やリーフレットによる優良事例の紹介を行うなど、一人でも多くの障がい者を雇用していただくよう理解と協力を求めております。
 障がい者に対する個別の支援といたしましては、民間企業や教育訓練機関等に委託してクリーニングや部品組み立てなどの職業訓練機会を提供しているほか、来年度は、雇用対策基金を活用して、県内九つの保健福祉圏域に整備した障害者・就業生活支援センターに地域障がい者就労支援員を配置し、通勤の介助や職場定着の支援を行うこととしております。
 今後とも、こうした取り組みにより、障がい者の方々のさらなる雇用の促進と職業の安定が図られるよう努めてまいります。
   〔保健福祉部長千葉茂樹君登壇〕
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、産科医等の定着と勤務環境向上に向けた対策の成果と課題についてでありますが、産科医に対する分娩手当の支給を行う産科医等確保支援事業については、本年度、県立8病院を初め、県内の11病院において実施しております。また、新生児を担当する医師に対する手当を支給いたします新生児医療担当医確保支援事業についても、診療報酬の対象となるNICUを有しております1病院において今年度から実施しております。これらの事業の実施によりまして、特に厳しい状況にあります周産期医療を担う病院勤務医の処遇改善が図られており、その定着にも一定の効果があるものと考えております。
 なお、当該手当の支給に当たりましては、病院内におけます他の診療科医師の待遇とのバランスを考慮する必要があるといった課題も有しておりますが、特にも産科医、小児科医等が不足している現状を踏まえまして、今後とも当該事業の実施などにより、その処遇改善を通じて周産期医療担当医の確保、定着を図っていきたいと考えております。
 次に、周産期医療システムなどによる医療確保の状況についてでありますが、現在、リスクのある妊娠、出産に対する医療につきましては、関係医療機関で機能分担を行いながら、個々の患者のリスクに応じて適切な医療が受けられる医療機関に搬送が行われており、例えば、岩手医大の総合周産期母子医療センターには平成22年の1年間に121件の母体搬送、30件の新生児搬送が行われるなど、全県で対応する体制の確保が図られているところでございます。
 また、周産期医療情報ネットワークシステムにつきましては、母体搬送の際にインターネットを介しての医療機関相互の円滑な診療情報等の共有が図られておりますほか、医療機関と市町村との情報共有により、退院後、速やかに市町村保健師が訪問指導するなどの取り組みも始まっているところでございます。
 今後、医療機関のさらなる機能と連携の強化を図っていくため、今年度、策定いたしました県周産期医療体制整備計画に基づきますセンター機能の充実支援とネットワークシステムの拡充などを推進するため、平成23年度当初予算案に関係事業費を盛り込んでいるところでございます。
 次に、院内助産院等の設置状況についてでありますが、産科医のいる医療機関において助産師が正常分娩の助産を行う、いわゆる院内助産所につきましては、現在、県立の3病院が行っており、これを利用した分娩件数は、平成21年度379件、全分娩件数の49.2%となっているところであります。
 また、助産師が医師との役割分担のもと妊婦健診や保健指導を行う助産師外来につきましては、平成23年1月から新たに1病院が加わり、現在、12の医療機関で設置されており、その利用実績は、平成21年度延べ1、936人と、前年度に比較いたしまして247人増加しております。
 また、モバイル遠隔妊婦健診につきましては、現在、遠野市が取り組んでおりますが、遠野市助産院ねっと・ゆりかごでは、県内12医療機関と連携して妊婦健診を実施しており、平成21年度における受診者数は77人となっているところでございます。
 次に、妊婦健診の充実についてでありますが、妊婦健康診査臨時特例基金を活用した公費負担の拡充により、妊婦健診の実施回数は、平成21年度から県内の全市町村におきまして、出産までに望ましいとされている14回に拡大されているところでございます。
 妊婦健診は、母体や胎児の健康の保持に重要な役割を果たしておりますことから、県としても14回の妊婦健診が継続して実施されることが望ましいと考えておりまして、これまで国に対して制度の恒久化を要望してきたところでございます。こうした要望等を踏まえ、国では、平成22年度までとされておりました妊婦健診の公費負担を平成23年度まで継続したところでございます。
 この妊婦健診につきましては、現在、国において検討が進められております子ども・子育て新システムの対象とすることとされておりまして、国では、この新システムについては、法案の早期提出に向け検討を急ぐものとしているところでございますので、県といたしましても、平成24年度以降の継続実施につきまして、国の動向を注視しながら、全国知事会等を通じ、必要に応じて国に要望を行っていきたいと考えているところでございます。
 次に、子育て支援の取り組みについての評価等についてでありますが、まず、ホームページにつきましては昨年10月に暫定オープンしたところでございますが、県民の方からは、子供の急病の際にホームページで調べることができ便利になったという声も寄せられているところでございます。また、昨年12月に発行いたしました子育て漫画情報誌につきましては、こども救急相談電話を開設しております県医師会から、漫画を見て電話をしたといった相談も多くなってきたという御意見をちょうだいしております。パパ子育て手帳につきましては昨年3月に改訂版を発行し、各市町村において妊娠届け出時に母子健康手帳とともに配付いたしておりますが、父親になる準備として、わかりやすく参考になるという声もちょうだいしているところでございます。また、今年度から新たに取り組んでおります父親向けのお父さん応援講座につきましては、参加者から、父親の役割等を考えるよい機会であり、有意義であったという感想もちょうだいしております。
 以上のことから、これらの子育て支援の取り組みにつきましては、いずれも当事者あるいは関係者の方々から一定の評価をちょうだいしているものと考えているところでございます。
 次に、一般事業主行動計画の策定状況についてでありますが、岩手労働局によりますと、平成23年1月末現在、策定が義務づけられております常用雇用労働者数301人以上の企業については109社すべてが策定し、届け出を行っているところでございます。また、策定が努力義務とされております労働者数300人以下の中小企業にあっては425社と、平成22年3月末より169社の増となっております。
 この結果、中小企業の一般事業主行動計画策定率は、いわて県民計画アクションプランを策定する際に想定しておりました814社中425社と1月末時点で52.2%となっており、目標の50%に到達したところでございます。
 県では、これまで国と連携して、広域振興局等の職員が企業を訪問し、策定の要請を行ってまいりましたが、昨年度からは県長寿社会振興財団に専任職員2名を配置するなど、計画の策定支援の強化を図ってきているところでございます。
 また、県長寿社会振興財団におきましては、いわて子ども希望基金を活用しまして、育児・介護休業法の規定を超えます育児休業制度等を定めた中小企業に対する助成制度を昨年7月に創設し、これまで8企業に対する助成を行ったところでございます。
 今後、さらに本助成制度の活用を働きかけるなど、計画策定の取り組みを一層促進してまいりたいと考えております。
 次に、児童虐待への相談体制の状況と課題についてでありますが、本県におけます児童虐待相談件数は、児童相談所への通告が増加した一方、市町村では若干減少しており、県全体ではほぼ横ばいで推移している状況にございます。
 しかしながら、児童相談所におけます相談内容は、家庭環境が複雑でさまざまな問題を抱えている困難な事例が多くなっておりまして、一層迅速かつ専門的な指導、援助が求められているものと考えております。
 このような状況を踏まえ、これまで、児童福祉司の増員とあわせまして、全児童相談所に設置しております虐待対応専門チームにより通告から48時間以内の安全確認を徹底しておりますほか、今年度、児童相談所の児童福祉司を1名増員し、県北広域振興局駐在を複数配置にすることで県北地域の相談対応の充実を図ったところでございます。
 今後におきましては、現在、児童福祉司には平成2年度に採用を再開いたしました上級・福祉職職員の登用を順次進めているところでありますが、引き続き重点的に配置していくこととしており、組織の専門性の一層の向上を図りますほか、専門研修への派遣などにより職員の資質の向上を図りながら、困難事例に対する専門的な対応や市町村への相談支援に適切に対応していきたいと考えております。
 次に、訪問介護サービス等の生活援助の取り扱いについてでありますが、訪問介護サービス等においては、要介護者がひとり暮らしである場合はもとより、同居家族等がやむを得ない事情により調理や洗濯、清掃等の家事を行うことが困難な場合には生活援助サービスが提供されることとなっております。
 しかしながら、同居家族等の有無のみにより生活援助サービスの提供が判断されているという指摘があるなど、サービスの提供に混乱が生じていることを受けまして、国におきましては、同居家族等がいることをもって一律に保険給付の対象としないのではなく、例えば、同居家族が高齢で、筋力の低下により家事が困難な場合など、具体的に同居家族がいてもサービス提供が認められる事例を示しまして、適切なケアプランに基づき、個々の利用者の状況に応じて具体的な判断をするよう、平成19年12月以来、3回にわたって通知を発出しております。
 県におきましても、その都度市町村等に周知しているところでございますが、今後とも国の通知の趣旨が市町村や介護の現場に浸透しますよう周知を図っていきたいと考えております。
 次に、訪問介護員、介護職員の離職対策についてでありますが、財団法人介護労働安定センターが行っております抽出調査によりますと、平成20年10月から平成21年9月までの1年間におけます全国の介護職員の離職率は17.0%となっているのに対しまして、県内の介護職員の離職率は10.3%で、全国に比べて低い状況にございます。
 しかしながら、高齢化の進展に伴って介護サービス需要は増加していくことが見込まれておりますことから、これに対応する人材を確保し、その定着を図る必要があります。そのためには、賃金などの面においての処遇改善が重要であると認識しているところでございます。
 国におきましては、保険料に影響を及ぼさない交付金による介護職員の処遇改善を行うこととし、これを受けまして、県におきましては、当該交付金を原資とした基金を創設し、平成21年10月から介護職員の賃金改善等の処遇改善に取り組む事業所への助成を行ってきたところでありまして、平成22年度では県内のおおむね9割の事業所において活用されているところでございます。
 しかしながら、この事業は3年間の限定されたものでございますので、県といたしましては、これまでも介護に直接従事する職員のみならず、介護関係職員全体の処遇につきまして恒久的な制度改善を国に提言しているところでございまして、引き続き提言してまいりたいと考えております。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 県の特定事業主計画についてでありますが、平成17年度から平成21年度までの前期計画によりまして、各種両立支援制度の整備、拡充に加え、子の出生時に休暇を取得した男性職員の割合が12.5ポイント増加するなど、職員の子育て参加意識が高まり、徐々に子育てしやすい職場環境の整備が進んでいるものと考えております。
 引き続き、平成22年3月に策定いたしました後期計画に基づき、職員向けハンドブックを作成し、各地で説明会を開催するなど、制度の周知と職場における育児支援意識の醸成を通じまして、特定事業主行動計画の一層の実効性確保に努めてまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長松川求君登壇〕
〇環境生活部長(松川求君) 男女の地位の平等感を高めるための取り組みについてでありますが、平成21年度の男女の地位の平等感に関する県民意識調査の結果を平成10年度の調査結果と比較しますと、平等と回答した割合は、家庭の場では29.5%で15.2ポイントの増加、職場では20.5%で9.2ポイント増加するなど一定の浸透が見られる一方、社会通念、慣習、しきたりでは9.2%で2.5ポイントの増加にとどまり、男性のほうが優遇されていると感じている割合が依然として7割を超えている状況にあります。
 こうしたことから、今後においても、意識啓発や地域での実践に関し粘り強い取り組みを進めていくこととし、新しいいわて男女共同参画プランでは、幅広く男女に浸透する意識啓発を進めるとともに、市町村や、これまで養成してきた男女共同参画サポーターと連携し、社会通念や慣習など男女の不平等感の要因となっている課題を分析しながら、家庭、地域、職場における共同参画の推進に取り組んでいくこととしております。
 次に、被害者支援に向けての課題と今後の取り組みについてでありますが、DV被害者の支援に向けての課題としては、DVに関する県民の理解は十分と言えず、一層の広報、啓発が必要であること、将来のDV被害者、加害者をつくらないため、若年層への教育、啓発が必要であること、相談件数が増加し、内容も複雑化していることから、相談員の資質向上が必要であること、被害者支援に関する施策が多岐にわたりますことから、関係機関の連携した取り組みが重要であることなどがあると考えております。
 このため、新しいいわて男女共同参画プランにおいて、DVに関する認識度と相談体制の周知度に係る指標を掲げ、県民への広報、啓発を推進していくほか、デートDVの予防啓発など若年層への教育、啓発、被害者への適切な相談対応を行うための相談員の資質向上、市町村等の関係機関と連携した自立支援などの取り組みを進めていくことといたしております。
   〔農林水産部長小田島智弥君登壇〕
〇農林水産部長(小田島智弥君) 森のあねっこの活動についてでありますが、森のあねっこは、林業担当の女性職員が自発的に結成したものであり、これまで、いわての森林づくりフォーラム等のイベントやテレビの県政番組への出演、ブログを活用した本県林業の紹介など、県内外に岩手の森林、林業に関する情報発信を行っております。今後とも、こういった取り組みを中心に、森のあねっこ自身による企画の充実や他県の林業女性職員との交流など創意工夫しながら、女性ならではの活動を行うこととしております。
 こうした活動を通じて、多くの県民の皆様に岩手の森林、林業について理解を深めていただければ、本県の森林、林業にとって力強い応援になるものと期待しております。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 特定事業主行動計画についてでありますが、平成16年10月に策定した5年間の前期計画の実績によれば、例えば、育児支援のために何らかの休暇制度を取得した父親である教職員の割合が、平成16年度には38.2%であったものが平成21年度には55.9%に増加するなど、一定の成果が上がっております。
 平成22年3月に策定した後期計画についても、さらに計画の実効性が上がるよう、引き続き子育て支援に係る各種制度の周知率の向上や、育児休業等が取得しやすい職場の雰囲気づくりなどを進め、子育てと仕事を両立できる職場環境の整備を目指し、教職員とともに取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、少人数学級の有効性についてでありますが、35人学級を全面実施している小学校1、2年生においては、児童の健康、安全面における管理や学級集団のまとまりを築くこと、基本的生活習慣の定着に効果が認められているということ、それから、市町村教委の選択により実施している中学校1年生においては、小学校と同様の成果に加えて、中1ギャップの緩和や、不登校や問題行動の抑止が挙げられております。
 東北各県の取り組みと効果についてでありますが、まず、小中学校については、本県と同様に、小学校1、2年生と中学校1年生において小人数学級を実施しているのは、青森県、秋田県、宮城県、福島県であり、山形県においては、小学校1年生から中学校2年生まで、33人以下学級を実施しております。その効果については、本県同様に、健康安全面の管理や基本的生活習慣の確立など、安定した学校生活の確保と、中1ギャップや不登校、いじめの早期発見に効果があるとされております。
 なお、高等学校については、青森県、秋田県、福島県の一部地域、一部学科で35人学級を実施しておりますが、その学習面上の効果については承知しておりませんけれども、本県では、学習集団としての単位は、選択授業や習熟度学習の実施によって少人数指導を実施し、きめ細かな指導を行っているところであります。
 次に、杜陵学園における入所児童生徒数でありますが、保健福祉部の資料によりますと、昨年4月1日現在の開設時の人数は、小学6年1人、中学2年1人、中学3年4人であり、ことしの2月1日現在の人数は、小学6年2人、中学1年生1人、中学2年6人、中学3年7人となっています。このうち、前籍校で特別支援学級に在籍または障がいの診断を受けている児童生徒数は、ことしの2月1日現在で7人となっております。
 次に、特別支援教育を必要とする児童生徒への対応についてでありますが、学校の授業や行事等において教員以外に児童生徒への支援を必要とする場合には、杜陵学園の職員と連携を図りながら対応をしているところであります。
 また、昨年9月には、県教育委員会、盛岡教育事務所及び盛岡市教育委員会の特別支援教育担当の指導主事が学校訪問し、授業の参観や関係者との懇談を行ったところでは、少人数学級により授業が行われており、授業が困難な状況ではないものの、特別な支援が必要な児童生徒に対する教員の接し方や指導の仕方を一層身につける必要性が確認されたところであることから、特別支援教育エリアコーディネーターなどによる訪問指導や相談支援が行われているところであります。
 このような状況を踏まえて、今後の支援体制につきましては、盛岡市教育委員会とも協議しながら、検討してまいりたいと考えております。
 児童生徒の学籍について、議員から御指摘のあったような学校教育法の運用上の問題はないものと認識しておりますけれども、児童生徒はさまざまな事情を抱えていることもあり、問題が生ずることも予測されますので、問題が生じた場合には、盛岡市教育委員会及び関係機関とも十分連携を図りながら、真摯に課題の解決に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 次に、性別で分けない名簿の使用についてでありますが、学校において、性別にかかわらず男女平等の意識を高める指導を行うことは、授業や行事などの教育活動全体を通じて、男女共同参画の意識を醸成する観点から重要であると考えております。小学校、中学校においては、学習指導要領に基づき、家庭科─中学校では技術・家庭科ですが─などの教科や道徳を中心とした学習の中で、男女の平等意識の醸成やお互いの立場を思いやる態度の育成に努めています。また、高等学校においては、主として、公民科、家庭科、特別活動などにおいて、男女の平等や相互の理解と協力の重要性について指導しております。
 性別で分けない名簿の全国的な状況については調査がないため承知しておりませんが、各学校で使用される児童生徒の名簿は県内一律に定めるものではなく、現場である各学校が教育的な効果、用途及び利便性などを考慮しながら、主体的に判断して作成されるべきものと認識しております。
〇12番(小西和子君) 丁寧な御答弁ありがとうございました。
 では、2点お伺いいたします。
 1点目は、豊かな教育の実現についての高校授業料無償化のことでございますが、先ほど知事から、趣旨についての御回答がございました。私のほうでは、家庭の状況にかかわらず、すべての意思ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、公立高校の授業料等を不徴収として、家庭の教育費負担を軽減するというふうに押さえております。納付対象者が、あなたはだめな人間とレッテルを張られるみたいでつらいというようなことを言っておりましたけれども、この法の趣旨に照らし合わせまして、納付対象者の言葉を知事はどのように受けとめていらっしゃるのでしょうか、まず1点お伺いいたします。
 2点目ですけれども、安心して子供を産み育てられる環境の整備について、先ほど教育長のほうからは、さまざまな権利の取得がふえているというような御答弁がありましたが、教職員の日常業務を量的、質的にどのようにとらえていらっしゃるのか。労働環境改善の取り組みを今後どのように進めていこうと思っているのか、お示し願いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 高校授業料無償化法のもとでの特別な事由がある場合の授業料の徴収については、あくまでこれは負担の公平の観点から決められていくことであって、その生徒の能力であるとか人柄であるとか、そういったこととは無関係に決まることでありますので、ぜひ、そういう御指摘のような認識は持たないようにというふうに思います。
〇教育長(法貴敬君) 教職員の労働環境がどうなってきているかということにつきましては、多忙化の問題などがよくお話しされているところであります。それに加えて、現行では、内容が変わらないというか勤務形態が変わらないにもかかわらず、給与が3年連続でカットされるみたいな形で、それが教職員に対するモチベーションが若干下がってきているということも私は認識しておりますが、そういうものに対して現場では、やはり人をふやしてあげたいという気持ちを強く持っておりまして、ここ数年で加配教員を少しふやした、あるいは学校生活サポート事業の人数をふやしたとか、あるいは組織力の強化のために主幹教諭を少しふやして、その給与の待遇をよくしているみたいな形の取り組みを進めております。
 さまざまなことが課題として現場にはあるわけですけれども、教職員の方々とよく意見交換をしながら、職場環境の改善に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
〇12番(小西和子君) 高校授業料の無償化のことですけれども、他県が岩手県と比べて少ないのは、教育的配慮が行われているからだというような情報も私はいただいております。
 知事は、2007年の所信表明演述で、政策6本柱の第1に、県民総参加の教育立県を基本理念として、自立した岩手を担う人材育成のための教育に取り組み、ふるさとづくりを、その基本である人づくりから始めるというふうに述べていらっしゃいまして、大変御期待申し上げたところでございました。ですけれども、実際は、少人数教育は、先ほど実施している検討の状況については話されましたけれども、一番遅くスタートしたものでございます。
 それから、高校授業料無償化の先ほどの答弁では、東北の他県と差はないということでございます。私がつかんでいる情報とはちょっと違うなと思っております。
 子供たちは、岩手を担う、将来を担う宝だと思うんですね。岩手に生まれたために十分な教育が受けられなかったなということではなくて、岩手に生まれてよかったと、充実した教育が、豊かな教育が受けられたというような教育政策を望みます。
 また、教職員の業務の負担の軽減でございますけれども、やはり子供たちと向き合う時間を確保するためには、業務の負担ということの縮減を図っていかなければならないと考えます。心も体も健康でなければ、子供たちに夢や希望を語ることは本当に難しいことではないかなと思います。
 2007年の知事の所信表明演述で述べた教育立県岩手の実現を望みます。以上でございます。
〇副議長(小野寺研一君) 要望でよろしゅうございますね。
〇12番(小西和子君) はい。終わります。
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時44分 休 憩
出席議員(46名)
1  番 吉 田 敬 子 君
2  番 工 藤 勝 博 君
3  番 高 橋 但 馬 君
4  番 小 野   共 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 岩 崎 友 一 君
10  番 木 村 幸 弘 君
11  番 久 保 孝 喜 君
12  番 小 西 和 子 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 及 川 あつし 君
16  番 亀卦川 富 夫 君
17  番 高 橋 昌 造 君
18  番 中 平   均 君
19  番 五日市   王 君
20  番 関 根 敏 伸 君
21  番 三 浦 陽 子 君
22  番 小田島 峰 雄 君
23  番 熊 谷   泉 君
24  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 大 宮 惇 幸 君
27  番 千 葉 康一郎 君
28  番 新居田 弘 文 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 佐々木 順 一 君
31  番 佐々木   博 君
32  番 田 村   誠 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 及 川 幸 子 君
40  番 佐々木 一 榮 君
42  番 渡 辺 幸 貫 君
43  番 吉 田 洋 治 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
41  番 伊 藤 勢 至 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時3分 再開
〇副議長(小野寺研一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。佐々木順一君。
   〔30番佐々木順一君登壇〕(拍手)

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