平成23年2月定例会 第20回岩手県議会定例会 会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第20回県議会定例会が開会されるに当たり、私の所信の一端を申し上げます。
 これに先立ちまして、昨年12月下旬から年末年始にかけて、本県を襲った暴風、波浪、大雪等により、被害を受けられた県民の方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。
 今回の災害によって、農林水産業を中心に、甚大な被害が生じました。県では、早期復旧を図るため、今議会に提案した各予算案の中で、漁業者への融資や農林水産業施設の整備支援などの対策を盛り込んでいるほか、国に対して激甚災害の指定や復旧に向けた緊急対策を要請しています。
 今後も、国や被災市町村と連携しながら、一日も早い復旧、復興を目指し、一層の努力を傾注してまいります。
 さて、平成19年4月、私は、岩手の危機を希望に変える理念と政策を希望王国マニフェストに掲げ、県民の皆様の信託をいただき、知事に当選いたしました。
 知事就任後は、積極的に地域に出向き、多くの県民との対話を行いながら、組織を挙げて、本県の置かれている現状や課題の把握に努めてまいりました。
 これらを踏まえ、県として、課題解決に向けた方向性を明らかにしながら、県民の仕事と暮らしを守ることを基本として、県政運営を行ってまいりました。
 特に、県民所得、雇用環境、人口減少、地域医療の直面する四つの危機に対応し、それぞれ目標を設定しながら、この4年間、重点的に取り組みました。
 さらに、岩手競馬の経営、森のトレー事案、県の不適切な経理処理、建設業の談合問題など、以前から懸案となっていた事項や、さまざまな構造的な問題について、しっかりと受けとめ、取り組んでまいりました。
 この間、県議会並びに県民の皆様から賜りました数々の御厚情と御支援に対しまして、心から感謝申し上げます。
 アメリカの金融危機に端を発した世界経済の悪化は、我が国、そして本県にも大きな影響を及ぼしました。最近の円高傾向や、依然として厳しい経済、雇用情勢の中で、県民生活は大きな打撃を受けております。
 また、本県の人口については、自然減に加え、若年層を中心に、転出者が転入者を上回る状況が続いており、こうした人口減少に歯どめをかけることが課題となっています。
 このようなことから、これまで、積極型の予算や切れ目のない補正予算を組みながら、喫緊の課題である雇用の維持、創出や、若年者の就業支援などを重点的に推進してきたほか、中長期的な視点に立ち、国際競争力の高いものづくり産業の集積を初め、地域資源を生かした産業の振興など、本県経済の活性化に取り組んでまいりました。
 こうした取り組みの結果、県民の底力の発揮と相まって、国民所得と県民所得の格差は縮小し、本県の人口の社会減にも一定の歯どめがかかったところであります。
 今後も、県民の仕事と暮らしを守るため、本県経済が活力を取り戻し、県民が希望を持って働き、安心して暮らすことができる地域社会を構築することが必要であります。
 この4年間を振り返りますと、世界的な景気の後退にとどまらず、2度の大きな地震による災害とその風評被害、さらに、世界遺産登録を目指していた平泉の文化遺産の登録延期と、本県は大きな逆風に見舞われました。
 震災からの復興を大きなうねりとするため、がんばろう!岩手運動を呼びかけたところ、県庁内の枠を超え、市町村や産業界も巻き込んだ県民総参加型の運動として、大きく盛り上がりました。
 この県民運動は、その後、買うなら岩手のもの運動、県民みんなで支える岩手の地域医療運動などへと続き、県民の総力を挙げて危機に立ち向かい、希望につなげる取り組みとして継承されています。
 また、平泉の世界遺産登録の再出発に向けて、官民一体となった活動を展開する中で、平泉の価値に加え、その背景となる岩手の歴史や文化についても、より広く浸透し、理解が深まったほか、観光客受け入れ態勢の一層の充実につながりました。
 このように、逆風に立ち向かう中で、県民一丸となって取り組む姿勢や機運が高まるなど、県民の底力に確かな手ごたえを感じることができました。
 昨年度、グローバル化の進展など、本県を取り巻く環境が大きく変化する中で、岩手の目指す姿を県民とともに描きながら、希望あふれる社会の実現を目指し、県民が一体となって行動していくためのいわて県民計画を策定しました。
 この計画は、県民一人一人が希望を持つことができるよう、仕事、暮らし、学び・こころのそれぞれの場で、将来の方向性を見出し、行動するための指針として策定したものであります。
 計画の推進に当たっても、県民一人一人が主役であるという考えのもと、地域社会を構成するあらゆる主体の総力を結集し、地域資源を最大限に活用しながら、地域の価値を高めていくという地域経営の考え方に基づき、希望郷いわての実現に向けた取り組みを進めてまいりました。
 政権交代後の新しい政府は、地域主権改革を重要政策に位置づけ、地域主権戦略大綱を閣議決定しました。
 地域主権型社会の主役は、言うまでもなく地域住民であり、地域住民の願いが、議会や行政を通じて実現されるときに、地域主権が実現していると言えます。
 本県では、国に先駆けて、新しい公共の考え方を地域経営として取り入れ、地域が主体的に考え、行動する取り組みを実践してまいりました。
 具体的には、住民に身近なところで物事が決定され、地域の自主性を高めていくために、4広域振興局体制を整備し、地域資源を生かした個性豊かな取り組みを進めています。これに加え、県北・沿岸圏域については、県北・沿岸振興本部を中心として、地域と一体となって、産業振興や社会資本の整備に重点的に取り組んでまいりました。
 また、昨年開催された上海万博では、本県と中国の自治体、企業の3者が共同で出展するなど、地方の独自のネットワークによる連携を推進し、国に頼らず、地方の主体的な取り組みにより、南部鉄器を初め、岩手の歴史、文化、自然など、本県の魅力を世界に向けて発信しました。
 さらに、地域住民や団体、市町村と積極的にネットワークを構築し、共通する課題に協働で取り組む岩手県I援隊運動により、官、民、地域の枠を超えた多くの活動が展開されております。
 真の地域主権型社会の実現に向けては、制度改革の推進とあわせて、こうした地域の主体的な実践を積み重ねていくことが重要であります。
 グローバル化の進展は、地方が国内外の競争の波に巻き込まれていく反面、地方が世界に直結していく大きな好機であります。
 こうした観点に立ち、中国を初めとする東アジア諸国の著しい成長を大きなチャンスととらえ、東アジア地域をターゲットとした海外市場の開拓や経済交流を積極的に進めてまいりました。
 また、岩手のイメージアップと岩手ブランドの構築を図るため、食やパワースポットなどの岩手が持つ地域資源を掘り起こし、県内外に黄金の國、いわてとして発信していく取り組みを展開してまいりました。
 さらに、いわてマンガプロジェクトを展開し、漫画を通して、新たな岩手ファンを開拓しながら、本県への関心を高める取り組みを進めております。
 県民が豊かな文化芸術とともに生きる地域社会の形成を目指し、岩手県文化芸術振興基本条例を制定し、岩手のソフトパワーである文化的魅力や道義的信頼を高める取り組みを進めてまいりました。
 そして、本年6月の平泉の世界遺産登録に向けて、県民の期待が高まっています。平泉が持つ自立と共生の理念は、今日の世界にとって大切な普遍的価値であり、県民はもとより、国内外に発信し、浸透させていくべきものです。このため、世界遺産登録後の1年間をいわて平泉年とし、県民一体となって、価値の発信を一層強化することとします。
 行財政を取り巻く厳しい環境の中で、県民の信頼にしっかりとこたえていくため、これまで、政策の選択と集中による行財政資源の適切な配分や、事務事業の徹底した見直しを行ってきたほか、岩手県職員憲章を策定するなど、質の高い、県民本位の行政サービスの提供に努めてきました。
 今後、厳しさを増す財政状況を踏まえ、あらゆる手法による歳入の確保や一層の歳出の見直しなど、行財政構造の簡素、効率化の取り組みをさらに進める必要があります。
 今回提案した平成23年度当初予算案は、本年4月に行われる統一地方選挙を控えていることから、義務的経費及び経常的に要する経費を中心とした、いわゆる骨格予算として編成したところですが、経済、雇用対策や地域保健医療体制の整備など、県民の仕事と暮らしを支えるため、早期に着手する必要がある事業については計上し、切れ目のない対応を図っていくこととしております。
 これまで、いわて県民計画に基づいて、さまざまな施策の推進を図ってまいりましたが、以下、岩手の未来をつくる七つの政策ごとに、主な取り組みと今後の施策の内容について申し上げます。
 まず、政策の第1は、産業創造県いわての実現であります。
 雇用対策については、これまで、雇用対策基金の活用や、産業振興施策による雇用創出に取り組んできたほか、離職者への職業訓練など、きめ細かな就業支援を進めてまいりました。
 この結果、本県の雇用情勢は緩やかに改善していますが、依然として低い水準にあることから、引き続き、雇用創出に取り組むほか、厳しい状況にある新規学卒者の就職支援を強力に進めます。
 また、安定した雇用の確保を図るため、中長期的な視点に立った足腰の強い経済基盤の構築が不可欠であることから、自動車、半導体関連産業に加え、医療機器関連産業をものづくり分野の中核産業と位置づけ、地場企業の育成と企業誘致、それらの基盤となるすぐれたものづくり人材の育成を戦略的に進めてまいりました。
 こうした取り組みにより、県外企業の設計開発部門の誘致や、生産拠点の新たな立地が進むとともに、地場企業の取引拡大や新規参入に向けた技術開発が活発化するなど、本県ものづくり産業の競争力の強化が着実に進展しております。
 今後も、自動車など3本柱による連峰型のものづくり産業集積の形成に向けた支援を引き続き推進し、産学官の連携による研究開発など、新たな産業の創出に向けた取り組みを強化します。
 また、本県経済の持続的な成長を目指し、ものづくり産業に加え、本県の豊富な農林水産物や観光資源などの地域資源を生かした産業振興を図ってまいりました。
 食産業では、いわて農商工連携ファンドを活用し、産業間の緊密な連携に対して支援を行ってきたほか、食産業支援のネットワークを構築するなど、高い付加価値を生む産業としての育成に取り組んでまいりました。
 観光産業については、みちのく岩手観光立県基本計画を策定し、県民一丸となって、観光振興施策を総合的に推進する基盤を整備しました。
 特に、来年のいわてデスティネーションキャンペーンの実施を見据え、オール岩手でキャンペーンに取り組む体制を構築し、国内外からの誘客を促進するほか、本年にはプレキャンペーンを実施し、平泉の世界遺産登録とあわせて、最大限の相乗効果が得られるよう取り組みます。
 政策の第2は、食と緑の創造県いわての実現であります。
 本県の農林水産業は、これまで、食料や木材の安定供給はもとより、地域経済を支える基幹産業として、大きな役割を担ってきました。
 しかしながら、農林水産業を取り巻く環境は、担い手の減少や高齢化の進行による生産構造の脆弱化、景気の低迷による生産物価格の下落など、厳しい状況が続いています。
 このような情勢の中で、経営の高度化や生産コストの低減、生産基盤の整備など、地域の核となる農林漁業経営体の体質強化に向けた取り組みのほか、新規就業者や農業参入企業への支援を進めるなど、担い手の確保、育成対策と雇用対策を一体的に推進してまいりました。
 また、安全・安心で高品質な農林水産物の生産拡大に取り組み、6次産業化や農商工連携の推進による農林水産物の高付加価値化、プレミアム商品の開発、海外市場を含めた販路の拡大などを進めてまいりました。
 今後は、本格実施となる農業者戸別所得補償制度を初めとした国の対策を十分に活用しながら、さらなる経営の高度化や法人化等の推進、災害に強く、生産コストを低減できる生産基盤の整備などを進め、認定農業者や集落営農組織、地域けん引型林業経営体、中核的な養殖漁業経営体など、本県の農林水産業を牽引し、高い所得を安定的に確保できる経営体の育成に重点的に取り組みます。
 また、農林水産物の安全性や、環境、生態系の保全に配慮した全国トップレベルの安全・安心産地を確立し、水稲、リンドウなどのオリジナル品種の開発や、高度な生産技術の開発、普及を進め、本県の地域特性を生かした、消費者から信頼される生産性、市場性の高い産地づくりを推進します。
 さらに、環太平洋パートナーシップ協定に関しては、国の動向を注視しながら、本県農林水産業の振興が損なわれることのないよう、対応してまいります。
 政策の第3は、共に生きるいわての実現であります。
 知事就任以来、医師不足を背景とした地域医療の危機的な状況の中で、県民が必要な医療を適切に受けられるよう、地域医療の確保を、経済、雇用対策と並ぶ重要課題と位置づけ、全力を傾注してまいりました。
 地域医療を取り巻く環境が厳しさを増す中、県民に良質な医療を持続的に提供するため、岩手県立病院等の新しい経営計画を策定し、県立病院、診療所体制の見直しを行ってまいりました。
 また、医師確保対策アクションプランに基づき、岩手医科大学の定員増に対応した奨学金制度の拡充、臨床研修医の受け入れ体制の充実や即戦力医師の招聘など、医師の養成、確保にも取り組んでまいりました。
 今後は、地域連携クリティカルパスの導入による医療機関の機能分担や連携の促進、がん診療連携拠点病院の整備、さらには、平成24年度のドクターヘリの本格運航に向けた取り組みなど、質の高い医療が受けられる体制の整備を一層進めます。
 一方、住民本位の地域医療の再構築に向けて、官民一体となった県民運動を展開し、県民一人一人が地域の医療を支える体制づくりに取り組みました。
 人口減少、少子高齢化に対応し、社会全体で子育てを支援する仕組みづくりや、安全・安心な出産環境の充実、仕事と子育ての両立支援を推進するため、地域子育て活動への支援や子育て応援情報の提供、企業と連携した子育て支援の取り組みを進め、周産期医療提供体制の整備や保育サービスの充実を図ってまいりました。
 また、高齢者や障がい者が、身近な地域社会で、安心して生活できる福祉コミュニティづくりを進めていくため、市町村や関係団体と連携しながら、住民参加による生活支援の仕組みづくりや介護サービス基盤の整備、障がい者の地域への移行などを推進しました。
 さらに、本県の自殺死亡率は、全国でも高位となっており、危機的な状況にあることから、市町村や関係団体との連携を一層強化しながら、自殺対策を推進します。
 政策の第4は、安心して、心豊かに暮らせるいわての実現であります。
 2度の大きな地震による災害や、チリ地震による津波災害を乗り越え、県民の防災意識の高揚を図り、自主防災組織の育成強化や実効性のある防災体制の構築に取り組んでまいりました。
 今後は、近い将来発生が予測される宮城県沖地震などに対する防災対策を着実に推進するため、県民が避難力と備えを身につけ、地域ぐるみの防災体制を確立できるよう、市町村、関係機関と一体となって、地域防災力の強化に取り組みます。
 また、消費生活相談体制の充実強化を図るため、市町村の相談体制の整備や県民生活センターの機能強化を進めてまいりました。
 食の安全・安心を脅かすさまざまな問題の発生を受け、県民の食に関する不安を払拭し、食の安全・安心の確保を総合的に推進するため、岩手県食の安全安心推進条例を制定しました。
 今議会に提案しております岩手県食の安全安心推進計画とあわせて、食の安全と信頼確保に向けた施策を展開します。
 地域コミュニティについては、これまで、市町村と連携しながら、元気なコミュニティ100選による先導的な事例の選定や情報発信によって、県民の理解と参加を促し、人材の育成に取り組み、地域づくり活動の一層の活性化を図ってまいりました。
 また、積極的な情報発信による岩手ファンの拡大や、総合的な相談窓口の開設などによって、県外からの定住、交流者を着実にふやし、移住された方々が地域の担い手として活躍できる環境づくりを推進しました。
 さらに、いわて希望塾を開催し、心豊かで意欲に満ちた青少年の育成を進めてきたほか、男女がともに社会へ参画し、活力ある地域社会の形成を図るため、家庭、地域、職場への意識啓発などに取り組んでまいりました。
 さまざまな地域課題を解決するためには、幅広い参画と協働による市民活動が行われていることが重要と考えており、NPOへの県による支援の強化や適切な指導を進めながら、今後も、多様な市民活動の一層の推進を図ります。
 政策の第5は、人材・文化芸術の宝庫いわての実現であります。
 本県では、これまで、岩手の風土やそこで培われた文化が土壌となり、豊かな感受性や忍耐強さを持った岩手のひとが育てられてきました。こうした岩手の将来を担うひとを育て、個々のひとの力を高めていくことが重要であります。
 学校教育においては、地域全体で子供たちの成長を支えていくという考えのもと、教育振興運動と連動させながら、学校、家庭、地域が目標を共有し、協働して学校経営を行う、いわて型コミュニティ・スクール構想を推進してまいりました。
 さらに、学校経営計画に基づき、学力や授業力の向上、家庭学習の充実などに取り組むほか、読書活動や児童生徒の発達段階に応じたキャリア教育を進め、知、徳、体を備え、調和のとれた人間形成を図り、社会に適応し、自立できる能力を持った人材を育成します。
 また、共に学び、共に育つ教育を推進するため、特別支援教育の充実強化を図るとともに、児童生徒の学校不適応の未然防止のため、相談支援体制の一層の充実を図ります。
 本年は、全国生涯学習ネットワークフォーラム岩手大会が開催されますが、このフォーラムを通じて、県民の学びの成果が、地域に生かされる環境づくりを進めます。
 また、北東北3県で開催される全国高等学校総合体育大会を、本県高校スポーツの飛躍の契機とし、平成28年の国民体育大会の開催に向け、中長期的な視点に立ち、素質のある児童生徒の早期発掘や育成を進めるほか、優秀な指導者を養成するなど、計画的な選手強化を図ります。
 政策の第6は、環境王国いわての実現であります。
 温暖化がもたらす深刻な影響が地球規模で明らかになってきている中で、岩手に古くから受け継がれてきた自然との共生という価値観を未来に引き継ぐとともに、環境王国の実現を目指していくため、いわて環境王国宣言を行いました。
 こうした理念を踏まえ、岩手県環境基本計画に基づき、持続的発展が可能な社会の構築に向けて、私たちの暮らし方や社会のあり方を、環境への負荷が少ないものに転換していくよう、県民や事業者との連携、協働を進めながら、施策の展開を図ります。
 低炭素社会の構築に向けては、温暖化防止いわて県民会議を中核として、県民一人一人の行動や、あらゆる主体の参画を促すための取り組みを推進するほか、脱化石燃料の取り組みを進めるいわて型エコライフの普及に努めます。
 さらに、いわて森林づくり県民税を活用し、森林環境の保全に取り組むほか、木質バイオマスエネルギーの利用拡大や、森林資源を活用した二酸化炭素排出量取引制度への参加を促進します。
 循環型地域社会の形成に向けて、廃棄物の発生抑制を第一とした、リデュース、リユース、リサイクルの3Rを初め、廃棄物の適正処理や資源の循環的利用の推進に取り組むとともに、平成24年度までの原状回復を目指し、青森、岩手県境の不法投棄産業廃棄物の撤去や汚染土壌の浄化を進めます。
 政策の第7は、いわてを支える基盤の実現であります。
 社会資本の整備については、本県の産業を支える高規格幹線道路を初めとした幹線道路ネットワークの構築や、いわて花巻空港の整備を計画的に進めてまいりました。
 また、地域医療を支える救急搬送時の道路環境の改善や、大規模な地震、津波、洪水に備えた、橋梁の耐震補強、木造住宅や県立学校施設の耐震化、防潮堤等の防災施設の整備など、県民の安全・安心な暮らしを支える社会資本の整備に取り組んでまいりました。
 さらに、岩手・宮城内陸地震により壊滅的な被害を受けた国道342号の須川・真湯間の開通や、崩落した祭畤大橋の新橋の完成など、震災からの復旧、復興を進めました。
 快適な居住環境づくりを目指し、岩手県景観計画の策定による良好な景観の保全と創造の推進や、県産材を使用した岩手型住宅の建設支援に取り組んでまいりました。
 今後は、必要な社会資本の整備や、施設の長寿命化修繕計画に基づく適切な維持管理を推進するほか、いわて花巻空港や港湾の利用促進に向けた取り組みを進めます。
 また、人口減少、少子高齢化が進行する中で、より一層重要性が増している、持続的な公共交通体系の構築や情報通信基盤の整備、情報通信技術の利活用の促進に取り組んでまいりました。
 その中で、長年の懸案事項であるIGRいわて銀河鉄道の貨物線路使用料制度の問題については、本県の要望を踏まえ、国が支援強化に向けた見直しを決定するなど、新たな前進が見られたところであります。
 今後も、関係事業者や市町村への支援を行い、県民の利用促進を図りながら、公共交通の維持、確保に向けた取り組みを進めます。
 以上、申し上げました岩手の未来をつくる七つの政策の着実な推進に加え、岩手の未来を切り拓く六つの構想についても、さらなる技術革新や社会経済環境の変化を踏まえつつ、県民の意見や提言なども幅広く伺いながら、取り組みの具体化を進めていくこととしております。
 私たちが暮らす岩手には、はるか縄文の時代から豊かな自然や風土の中で培われてきた岩手のこころがあります。
 そのこころは、長い歴史を経て、多くの先人や人々によって、今日まで受け継がれてきました。
 これまでの4年間を振り返りますと、仕事、暮らし、学びのそれぞれの場で、さまざまな困難に立ち向かい、不屈の意志を持って、前向きに取り組む多くの県民の姿があり、そして、岩手の未来を担う多くの若者が、全国や世界を舞台に活躍する姿がありました。
 岩手・宮城内陸地震では、県民の一丸となった懸命の努力により、短期間での復旧、復興を果たすと同時に、風評被害をはね返し、観光地に再び活気が戻るなど、大きな一歩を踏み出すことができました。
 また、記憶に新しい、一昨年の花巻東高等学校硬式野球部の活躍では、私たちは、最後まで決してあきらめない粘り強さや、ひたむきな姿を見ることができました。昨年も、スポーツや文化芸術など、さまざまな分野において、岩手の中学生や高校生が、国内外の大会で目覚ましい活躍を見せてくれました。
 私たちは、激動する世界の中で、受け継がれてきた岩手のこころを希望の芽として大切にはぐくみ、この岩手が黄金の國として、さらに輝きを増すふるさととなるよう、未来に引き継いでいかなければなりません。
 私は、岩手県民の、底力と可能性を改めて強く感じるときに、大きな希望がわいてくるのを感じます。
 そして、この希望を県民一人一人と共有し、一緒に行動しながら、希望郷いわての実現に向けて、力を尽くしていく決意であります。
 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と、さらなる御参加を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   教育委員会委員長の演述
〇議長(佐々木一榮君) この際、教育委員会委員長から発言を求められておりますので、発言を許します。八重樫教育委員会委員長。
   〔教育委員会委員長八重樫勝君登壇〕

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