平成17年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(伊沢昌弘君) 社会民主党の伊沢昌弘でございます。
 議案第25号、第30号、第34号に反対の討論をいたします。
 これらは、いずれも昨年9月17日に施行された武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律を受けた条例であります。
 そもそも、この国民保護法は、2003年6月に成立した武力攻撃事態法、安全保障会議措置法の一部改正、自衛隊法の一部改正のいわゆる有事関連三法を受けて措置されたものであります。
 有事関連三法は、日本が戦争を行う際の基本的な考えや手続を定めたものに対して、国民保護法は、他の6法、すなわち、特定公共施設利用法、外国軍用品海上輸送規制法、米軍支援措置法、自衛隊法一部改正法、捕虜取扱法、国際人道法違反行為処罰法とともに、国民の生活を保護するための措置、自衛隊並びに米軍の行動を円滑にするための措置として定められたものであります。
 国民保護法における最大の問題点は、同法第5条にあるとおり、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は、必要最小限のものに限られるとしている点にあります。まさに、権利の制限を前提にしているのであります。
 知事は、本会議において、知事の総合調整権が強化されるなど、法整備前に抱いていた懸念は解消されたと述べておりますが、認識の甘さを指摘せざるを得ません。
 また、特定公共施設利用法で言う特定公共施設は、港湾施設、飛行場施設、道路、空域、海域、電波を指すものであり、これらは、通常、地方自治体が管理しているものであります。しかし、有事に際しては内閣総理大臣の指揮のもとに置かれ、国が作成する各施設の利用に関する指針に基づいて運用されることになるものであります。その運用は、当然のことながら、自衛隊並びに米軍の活動の用に供することにもなるのであります。
 さらに、見逃してならない重要な点は、国際人道法違反処罰法であります。この法律は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法に規定する重大な違反行為を処罰することにより、刑法等による処罰と相まって、これらの国際人道の的確な実施の確保に資することを目的とするものであります。
 国際人道法は、かつては、戦争法または戦時国際法と呼ばれていたものであります。日本政府は、新憲法のもとで交戦権を行使しないとして、戦争犠牲者や文民保護を目的としたジュネーブ条約追加議定書を批准してきませんでした。しかし、政府は、この条約を批准し、ついに戦争のできる国家に転換したのであります。
 このように、戦後の外交、防衛上の一大転換をなす国民保護法など有事関連法は、国と地方公共団体の関係を縦糸とし、国内にとどまらない米軍への協力を横糸として、全体が密接に関係し合う戦時下の日本を想定、構築しているものであります。
 さて、提案されております岩手県国民保護協会条例は、国が定める国民の保護のための基本指針を受けて、県は、措置の実施主体として、計画を策定するための諮問機関として位置づけられております。これは、あくまで実施機関の性格は有しないとされていることから、避難や誘導といった措置の中身において、実施機関である県防災会議とはその性格を異にするものであります。
 総務部長は、予算特別委員会で、地震や津波を想定した避難誘導訓練と国民保護のための避難訓練は別々に行うこととなると答えておりましたが、当然のことであります。県民にとって、本当に必要とする自然災害を想定した避難誘導訓練の阻害要因となるものであります。
 また、岩手県国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部は、内閣総理大臣の指示または県の国民保護計画に基づく国への要請によって措置されるものであり、あくまで本県が武力攻撃を受けた時点、あるいは限りなくその危険が迫ったと確認された時点で設置されるものであります。これら武力攻撃を受けることのないように、近隣諸国との友好的外交の責務はかかって国にあります。願わくは、未来永劫、設置されないことを切に願うものであります。
 このように、県や市町村に求められている責務や措置は、具体的に詰めていけばいくほど、限りなくナショナリズムをあおり、近隣諸国への敵意を増幅させること以外の何ものでもないことを強く指摘しておきたいと思います。
 議案第34号のうち、武力攻撃災害等派遣手当の新設は、岩手県国民保護対策及び緊急対処事態対策本部設置後に国等の職員に支給をするものであり、これは反対をするものであります。
 また、予算特別委員会に付託をされておりました岩手県県税条例の一部を改正する条例には、武力攻撃災害もしくは緊急事態対処における災害を受けた者に係る事業税等を減免しようとするものが含まれております。空襲をも想定している中にあって、いかにも非現実的なものであり、何らの根拠もないことから反対するものであります。
 以上で、反対討論を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(藤原良信君) 次に、斉藤信君。
   〔26番斉藤信君登壇〕

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