平成23年6月臨時会 第22回岩手県議会臨時会 会議録

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〇14番(高橋博之君) 最初に、被災者の心のケア対策についてお聞きいたします。
 今回の補正予算におきまして、被災地こころのケア活動支援事業費が新規事業として盛り込まれておりますが、被災地においてPTSDの増加等が今後予想される中にありまして、地域医療確保策等と連携を図りつつ、具体的にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、雇用対策についてお聞きいたします。
 厚生労働省によりますと、大震災以降、岩手、宮城、福島3県で失業手当の受給手続をした失業者は5月26日までに計11万人を超えました。これは実に前年の同じ時期の2.3倍となっております。復旧事業もあって求人はふえているものの、職を求める人がそれを上回る規模で増加しています。しかも求人の多くが県外からで、地元志向が強い被災者の希望にかなわない状況です。
 仮設住宅にも一定のめどがついた今、被災者から聞かれる言葉は一にも二にも仕事です。被災地となった沿岸は、本県で最も高齢化、過疎化が進行していた地域でした。今回の大震災で、職を求め、被災地を離れる若者がふえております。このままでは、高齢化、過疎化に一層の拍車がかかり、ふるさと復興、地域再生の最大の担い手を失ってしまうことになりかねません。今、若者たちは、ふるさとにとどまるか、新天地に活路を見出すのか悩んでいます。これ以上若者が被災地を離れないようにするためにも、雇用確保が最大の課題です。
 被災地で雇用をつくるだけでなく、被災者がその職につけるよう、職業訓練を含め、きめ細かな対応を充実させていかなければなりません。また、官需による雇用は有期の緊急的措置であります。本格的な就職につなげるには、水産加工業者を含む被災企業の再建と新たな産業づくりが欠かせません。いわば被災地の着実な復旧、復興こそが最大の雇用対策であることは言うまでもありません。
 県は、緊急雇用創出事業費補助等の増額により、4月補正予算と合わせて1万人以上の雇用創出を図るとしておりますが、緊急雇用創出事業臨時特例基金や災害復旧、復興に対応した離職者等再就職訓練などを組み合わせ、どのように被災地における有効な雇用を確保していくつもりなのかお聞きいたします。
 次に、災害公営住宅整備事業費においては、被災者向けの公営住宅整備のため用地の地質調査等を行うと聞きましたが、用地の選定の基準等、及び被災市町村が策定するまちづくり計画との整合性はどうなっているのかお伺いいたします。
 また、応急仮設住宅団地内に併設する集会所の附属施設としてのベンチやプランター、遊具等の設置を通じ、どのように新たなコミュニティの確保、そして孤独を防いでいくのかお聞きいたします。
〇知事(達増拓也君) 高橋博之議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、被災者の心のケア対策についてでありますが、今回の未曾有の災害にあって、つらい経験をされた被災者の方々に対しては、被災直後から長期にわたる専門的なケアが必要であると考えております。このため、3月17日、県、精神保健福祉協会、岩手医科大学等関係機関が連携し、被災住民に対する心のケア活動を進めるためのこころのケア対策会議を設置し、国に対し、災害対策基本法に基づく県外からのこころのケアチームの派遣要請を行いました。
 これまで県内外から派遣いただいたこころのケアチームは、3月18日以降、延べ27チーム。避難所等の巡回などにより被災者と面接し、相談や診察等を行い、県としても心のケア活動に関係する職員の研修などを通じて人材育成に取り組んでまいりました。
 今後は、避難所から仮設住宅に移行した後の住民の心のケアに対応するため、被害が甚大であった沿岸7市町に相談や診察等を行う拠点を設置し、心の健康チェックや医療保健関係者の研修を通じて、心的外傷後ストレス障害─PTSDを初め、うつ病やアルコール依存症などの早期発見や早期治療に努めるとともに、専門的な医療を要する場合の地域医療機関との連携を図るなど、中長期的に心のケアの取り組みを積極的に推進してまいります。
 次に、雇用対策についてでありますが、今般の震災において、多くの企業が被災し甚大な被害を受けた結果、今後、雇用の回復には相当な時間を要すると見込まれますことから、緊急的な雇用対策を直ちに講じるとともに、あわせて中長期的な視点に立った産業復興施策を講じるなど、重層的な雇用対策の推進が必要であると認識しております。
 発災以来、ハローワークと連携しながら、雇用調整助成金や雇用保険の特例措置等の制度を最大限活用し、職を失った方々の当面の雇用や生活維持を図ってきたところであります。4月補正予算以降、低利な融資制度や助成制度を創設し、地域産業の速やかな復旧、復興を支援するとともに、今般の補正予算と合わせて緊急雇用創出事業により1万人の雇用の場の確保を図るなど、産業復興と雇用の両面からの施策に取り組んでおります。
 今後、被災地の復旧、復興が本格化する過程におきまして、建設機械の操作資格などさまざまな人材ニーズも見込まれますことから、職業訓練についてもこうしたニーズを先取りし、地域に必要な人材の育成と定着に努めていきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〇県土整備部長(若林治男君) 災害公営住宅の用地の選定基準についてでありますけれども、被災者の方々に入居いただく住宅でありますことから、被災地に近い場所で一定規模の面積が確保でき、今後の災害に対しても安全な用地を選定することとしております。
 また、建設候補地の決定に当たりましては、被災市町村が現在策定を進めておりますまちづくり計画などの検討状況も踏まえ、市町村の意向を反映したものといたします。
 応急仮設住宅内に整備を行うベンチ、プランター、遊具につきましては、被災などによりまして減少したコミュニティスペースをできる限り確保することを目的としております。遊具の設置によりまして児童などの遊び場を確保するとともに、ベンチやプランターは高齢者を含めた団地内の居住者相互の触れ合いの場を確保することを意図したものであり、団地内のコミュニティの形成に役立つものと考えております。
〇14番(高橋博之君) それでは、再質問いたします。
 まず初めに、知事に心のケアについてお尋ねいたしますが、先日、陸前高田市に行きまして、あるしにせ商店の店主─ここは雇用が大体35名ぐらいあったところなんですが─にお話を伺いましたら、会社も流された、商品も流された。社員2人は犠牲になったけれども人が残ったと。だから、当面の当社の経営理念は人を守ることである、暮らしを守ることである、こういうお話をされました。その社長が大変心配されておりましたのは、今後の心のケアの部分でありました。
 今、5月から6月にかけまして、全国から集まっていた医療チームが撤退していくというような報道がなされている中にありまして、その社長が、せめて盆まで何とか残ってもらえないのかと。陸前高田市については東京都と千葉県の医療チームが来ていたようでありますが、いずれ医療チームだけが心のケアを担うわけではございませんが、そうした医療チーム撤退という情報が被災地に入ってくる中にありまして、心のケア、せっかく助かった命が再び犠牲になるようなことがあってはならない、こういう強い思いを聞いてきたわけです。知事は震災後、いち早く復興の理念として人間本位の復興ということをお話しされておりましたが、ぜひ知事の口から被災者の皆さんに対して、全力でこの心のケアに取り組んでいくというメッセージをいただければと思います。決意のほどについてお聞かせいただきたいと思います。
 次に、商工労働観光部長にお尋ねいたします。
 雇用対策についてでありますが、これまでの4月時点の補正予算を踏まえての課題と対応についてお尋ねいたします。
 被災地でヒアリングをしていましたところ、市町村の直接委託であると、事業計画策定や、あるいは労務管理等の事務量が非常に多くて制度を十分に生かし切れていない、こういう声が聞こえてまいりました。名前は緊急雇用創出事業でありますが、運用がいわば平時のままになっていると。震災前の緊急雇用創出事業は、事業計画をその都度その都度つくって県の審査を仰ぐ、こういう方式でやっていたわけですけれども、なるべくこの基金を使って、できるだけ雇用につなげるためにも、やはり工夫が必要だと思うんです。もっと自由度を高めて弾力的な運用にするような努力をしているのか、その点についてお尋ねいたします。
 それからまた、事務的なフォローをぜひ県としてもお手伝いできないのか。振興局などを活用して、ぜひこの事務的なフォローも今後取り組んでもらいたいと思いますが、この辺についてはどのように考えておりますでしょうか。
 それから、市町村によって緊急雇用の枠を残しているところがあります。こういったところについては、未利用部分を集めて、要望があった市町村に再分配する、あるいは利用状況を見える化して、残っている市町村と活用したい市町村が共同で事業展開を行う。例えば、内陸の市町村の緊急雇用予算枠を沿岸市町村が活用するなどができる体制づくりを県が仲介あるいは主導して行えないのか、この点についても、今、そういう考えがあるのかどうかお聞きいたします。
 それと、この緊急雇用対策の委託先がなかなか見つからない。事業者がかなり被災しておりますので、委託先が見つからないという声もたくさん聞きました。内陸企業と沿岸企業のジョイントベンチャーの活用、あるいは被災地団体、企業で緊急雇用事業を受託できるように、内陸の団体、企業とのマッチングを積極的に県として支援できないのか、この点についてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
 もう一点、基金訓練についてお伺いいたしますが、先ほど知事のほうからも地域に必要な人材と育成に努めていくといったような御答弁がありました。もちろん、この訓練プログラムと地域に必要な雇用のニーズのマッチングが必要になってくると思うんですが、あわせて、今後、自然エネルギーなどを含めまして、新たな産業分野に対応した職業訓練も必要になってくると思いますが、その点についての方針があればお聞かせいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 私は、県の仕事は、岩手の人と大地と心を守ることだと考えております。大地というのは河川とか湖沼とか沿岸も入るわけでありますけれども、人と大地と心を守る、そういう意味で、心のケアというのは、人を守る基本である安全と健康、その健康は心と体の健康であります。そして、岩手の心を守るためにも、県民の心のケアということは大変重要なことだと考えております。
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) 5点お尋ねがありました。
 まず、第1点目、基金の自由度を高めて弾力的な運用はできないか、この点でございます。
 実は、沿岸市町村で、これができるところと、それからできていないところが実際にあるのは承知してございます。恐らくお尋ねについてはできないところというところでございますが、私ども、弾力的な運用、こうしてほしいという要望はお聞きして、これは国とも相談して進めたいと思いますが、基本的には、第2点のお尋ねでありました振興局がフォローできないか、あるいは県で直接お助けできないかというほうでできるだけカバーすることで何とかなるのではないかと思っております。もちろん制度要望は常にやっていかなければならないと思っておりますので、その点については要望を積極的に吸い上げてまいりたいと思っております。
 それから、第3点の余っている基金の融通はできないかという点でございますが、これは今までも基金が余っているものについては融通をやってございますので、執行状況を見ながら弾力的な対応はするつもりでおります。私どもの気持ちといたしましては、できるだけ被災地域でこれを有効に使っていただきたいということでございますので、その紹介につきましてもお手伝いするなど、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
 それから、第4点、委託先が見つからないので、内陸企業と沿岸のマッチングを行うということでございますが、これも全く御指摘のとおりでございまして、今考えておりますのは、沿岸市町村、例えば釜石市みたいなところは北上市がバックアップに入る、それから陸前高田市においては一関市がバックアップに入るということで、市町村間のマッチングが今、現実に動き出してございます。企業もその間に挟めておりますので、できればそのような御提案の趣旨に沿った形で対応してまいりたいと思っております。
 それから、第5点、基金訓練についてでございますが、できるだけ新しい状況に応じて訓練を行えということです。我々も、最低でも基金訓練は3カ月かかりますので、この訓練の実施に当たっては、最低でも3カ月先の需要を見ながら喫緊の準備をしたいと思っています。
 当面は、やはり復旧、復興事業が中心でございまして、重機、それから建設関連の人材が大変必要でございます。これは外部から入るというよりは、やはりできるだけ地元で調達してもらうというのが筋でございますので、こういったところに力を入れまして、できるだけ人が外に出ないような、そういう訓練体系を組んで対応してまいりたいと思いますし、それから、御提案のありました新しい産業につきましても、これは地元の市町村と相談しながら進めてまいりたいと思います。
〇14番(高橋博之君) ぜひ横軸の連携、地域防災計画などの観点に立って進めていただきたいと思います。
 最後に、知事にお尋ねいたしますが、先ほどの御答弁でしたけれども、今の御答弁では被災者の皆さんにメッセージは私は伝わらないと思います。知事は岩手県丸の船長であります。今、多くの被災者の皆さんが本当に不安な気持ちで被災地で生活されております。先ほどの、医師チームが全国に散っていく、撤退していく、本当にそういうニュースに不安になっておりますので、改めて、守るんだと、これ以上命を犠牲にしないという強いメッセージをいただきたいと思います。
 それからもう一点、危機を希望に変えるが知事の信条ですけれども、新たな産業づくりのビジョンこそが被災者にとっての新たな希望になる、若者にとっても希望になると思います。知事の明確な言葉で、この希望を被災者の皆さんに示していただきたいと思います。
 今、希望が見えない、これが若者が地域から出ていってしまっている要因にもなっておりますので、ぜひ知事の明確な御答弁をいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 避難所あるいは既に仮設住宅に移った方、あるいは御自宅にいらっしゃる方、被災地の皆さん、さまざまな形で、今、御自分の生活を必死に日々過ごしていらっしゃると思います。そういう中で、心や体にさまざま不安をお持ちの方は、まず、周りの人に相談をしてください。避難所であれば係の人、そして、既に避難所を出られている方であれば、電話等通信の手段を持っている方では電話でも結構です。そして、それは必ずあなたが必要としている心や体のケアをする専門家につながりますから、まず、早く周りの人に相談をしていただく、それが第一であります。
 それから、産業づくりに関してですけれども、岩手の沿岸地方は、本当にすばらしい地域資源に恵まれています。全国有数、世界にも誇れる、輸出も可能な海産物、そしてさまざまな農林産物や地下資源もございます。中生代、古生代から形成されてきた、この地球上でもまれに見る大地、海、そこに住む人が一生懸命力を合わせれば、必ず世界の中でも誇りを持って生活しやすい、そういうふるさとをつくることができます。
 若い皆さんは、ぜひそうしたこのふるさとのすばらしさを知っていただいて、そこで働いていくことに誇りと意欲を持っていただきたいと思います。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、小西和子さん。

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