平成19年9月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇17番(関根敏伸君) 民主・県民会議の関根敏伸です。
 ただいま総務委員長より報告のありました発議案第12号テロ対策特別措置法の事実上の延長に反対し並びにイラク特別措置法の廃止により自衛隊の撤退を求める意見書につきまして、これに賛成の立場から討論を行います。
 政府・与党は、さきの参議院選挙での敗北や安倍前総理大臣の突然の辞任による混乱によって、審議時間の確保などが極めて難しくなったことなどから、来月1日で期限の切れるいわゆるテロ対策特別措置法の延長を断念しています。しかし、実態的には、インド洋上での海上自衛隊による他国籍船舶への給油等の活動を可能にする新法の制定を目指し、現在、衆議院に法案を提出し、審議中であります。新法というものの、これは実質的にはテロ特措法の延長でありますが、この法律は、我が国の憲法に照らして重大な違反行為と言える部分を含んでいることを指摘いたします。
 政府は、海上給油はアフガニスタンでの活動の後方支援であり、戦争行為とは一線を画すものとしておりますが、古来より戦争行為において兵たんなど後方支援活動がその趨勢を大きく左右してきたのであり、戦争行為と一体のものであることは自明の理であります。つまり、我が国の憲法に照らして、集団的自衛権の行使の観点から、憲法違反の疑義も生じていると言わざるを得ないのであります。
 また、この海上自衛隊による他国籍艦船への給油は、イラク戦争への転用疑惑が指摘されております。政府においては、給油先の他国籍船舶の活動実態について徹底的な情報公開を行うべきと思いますが、いまだその説明は極めて不十分です。外務省は、米国国務省のコメントを引用して、転用はないとしておりますが、報道によれば、外務省が引用したアメリカ政府の文章では転用の否定を断言する内容とはなっておらず、ビリーブ、つまり信じるとの表現が使われているのであります。これをもって疑惑は解消されたとする政府の姿勢は不誠実のきわみであります。また、この海上給油については、1日当たりの給油量について政府答弁に誤りがあったことを知りつつ、国会での指摘などに対しては、ごく最近までこれを放置するなど、政府のこの問題に対する隠ぺい体質が証明されています。さらに、この新法では、旧法に盛り込まれていた国会の承認が姿を消すなど、文民統制いわゆるシビリアンコントロールの観点からも極めて重大な疑義を持たざるを得ません。
 ところで、国連は、アフガニスタンでのテロ対策における北大西洋条約機構の指導力並びに不朽の自由作戦連合に対する多くの国の貢献に謝意を表明することなどを盛り込んだ安保理決議を採択しております。政府・与党は、これを根拠に、インド洋上での自衛隊による給油活動に対し、継続すべしとの論陣を張っております。確かに、国連での謝意は謝意として受けとめるべきものでありますが、この謝意を表明されたことと、我が国が行うべきことをどうするかということは、本来別の問題であります。そもそもこれは日本を名指しで謝意を表明した決議ではなく、また、一部報道によれば、この決議は日本が給油継続に向けて国連に強く働きかけたもので、外務省幹部は実質的に民主党対策だと発言したとされております。
 本来、自国の歩むべきことを、自国民で徹底的に議論すべきことを、政治的な外圧により、なし崩し的に進めようとするやり方は、我が国の民主主義を冒するものであります。無論、我々は国際社会が一致団結して国際テロの撲滅に取り組むことは重要なことであると認識しております。しかしながら、現在のテロ特措法に基づく海上自衛隊の活動については、その活動状況や具体的成果についての説明が不十分で、テロ根絶とアフガニスタンの安定復興のために、この取り組みによって事態が改善されているのかどうかの検証もままならない状況です。むしろ、アフガニスタンの治安は悪化の一途をたどり、テロ特措法に基づく6年間の海上阻止活動が、アフガニスタンの復興にどのように寄与し、テロの根絶に向けてどの程度貢献したか、詳細に総括、検証する必要があると考えます。一方で、イラク特措法に基づく自衛隊の活動についてもテロ特措法と同様に、イラクの和平の実現と復興にどの程度貢献しているのか、徹底した情報公開に基づく総括、検証が必要であると言わざるを得ません。
 改めて申し上げますが、我々はテロとの戦いは進めなければならないと思っております。しかし、その対決の過程において、国際社会との協調の過程において、平和憲法を持つ我が国ならではのやり方で世界から尊敬される地位を占めるべきだと思います。テロはなぜ起きるのでしょうか。その背景に何があるのでしょうか。二戸市にあるみちのくの名刹天台寺の住職を務めた瀬戸内寂聴氏は、2001年9月11日以降の国際社会について、恨みの連鎖だと諭しております。このテロとの対決を、武力のみをもって制圧することが不可能になっていることを、我々はもう一度見詰め直すことが必要ではないでしょうか。今こそ我々は、我が国が参加するテロとの戦いの枠組みを、米国中心の活動から国連活動に転換する視点を持つべきだと考えます。
 こうした活動に加えて、我が国が行うべき活動の一つは、テロが生まれる理由の一つでもある貧困との戦いに手を差し伸べることではないでしょうか。他国籍艦船に水と油を与えることよりも、貧困にあえぐ子供たちに水と食べ物を与える活動への転換が、日本にふさわしい地位と尊敬を国際社会からもたらされることになるのではないでしょうか。それにより、テロとの戦いにおいては、一つの根源的な勝利への道だと思うのであります。
 なお、この意見書案は、請願者の願意を踏まえ、その実現には論点の補強が必要との委員会質疑の結果、もたらされたものでありますが、これは、法令上も、先例上も認められているものであり、かつ議会に与えられた権能そのものであると考えます。
 以上、これまで申し上げてまいりましたが、いずれにせよ、日本国憲法の理念に照らしたとき、政府が十分な説明を果たせず、また、国民理解も十二分にないままのテロ特措法の事実上の延長は、我が国民、我が県民をむしろテロの脅威にさらす点なども考慮し、この際、我が国の歩むべき国際社会での道を見詰め直す機会とするためにも、私はこの意見書に賛成するものであります。
 議員各位の御賛同をいただけますようお願いを申し上げ、賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、斉藤信君。
   〔38番斉藤信君登壇〕

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