平成23年4月臨時会 第21回岩手県議会臨時会 会議録

前へ 次へ

〇34番(平沼健君) 自由民主クラブを代表して議案第3号平成23年度岩手県一般会計補正予算について質疑をさせていただきます。
 質疑の前に、今回の東日本大震災によってお亡くなりになられた皆様に心からお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 さて、平成23年度岩手県一般会計補正予算についてですが、未曾有の大災害となった東日本大震災は、26日現在でも、亡くなられた方が12都道府県で1万4、435人、県内で4、216人、行方不明の方が全国で1万1、601人、県内で3、479人であり、まだ捜索活動が続けられており、瓦れきの撤去も収束の時期も定まらない状況であります。
 まず、2、255億円に及ぶ補正予算の財源についてお尋ねいたします。
 その内訳は、国庫支出金、繰入金、諸収入及び一般財源となっておりますが、震災以前から厳しい財政運営を余儀なくされていた本県の財政運営で、今回の補正において、国の動向等を踏まえて岩手県の純粋な負担はいかほどになるのか、お示しいただきたい。
 次に、災害危険区域の指定についてお尋ねいたします。
 今回の災害を受けて、被災地の無秩序な復興を防止する建築制限をめぐり、本県と宮城県の対応が分かれていると言われております。どちらも建築基準法に基づく措置ですが、宮城県は、同法第84条に基づき、まちづくりを目的とした期限つき規制を選択したのに対し、岩手県は、同法第39条により、安全確保に主眼を置いた期限のない規制を採用したとされております。県では、規制について、被災住民や被災地域をよく知る市町村が行うことが妥当としておりますが、市町村により対応が異なるといった事態が想定され、混乱するのではと懸念するところであり、被災市町村の行政機能や実情を考えた場合、県こそが明確な方針を打ち出しリーダーシップをとって進めるべきと考えますが、知事の基本的な考え方をお聞かせください。
 3点目として、被災地域の雇用対策と産業の復興についてお伺いいたします。
 震災前まで、被災地では多くの地場企業が大方の雇用の場を提供してまいりました。その被災状況は深刻であり、東京商工リサーチの被災地の企業実態調査によれば、主要2、769社のうち1、857社、約67%の企業が被災されたとあります。中でも、大槌町の94%、陸前高田市の93%、下閉伊郡全体として85%となっております。こうした状況の中、県では、今回の補正を通じて積極的な短期の雇用対策を行おうとしております。そのこと自体は、短期的には大変有効な措置であろうと思われますが、中長期的に見た場合、壊滅的なダメージを受けた被災地の基幹産業である水産業、商業、工業などの復興を図り、せめて被災前のまちに戻すために再出発しようとする企業の設備投資に、できるだけ早期に融資の拡大、利子補給に加えて補助金を出すことが有効であり、絶対に必要なものと考えます。
 被災企業は、震災前の借り入れに加え、再投資の余力は皆無と言っていいと思われます。恒久的な雇用確保につながる地場企業の再生に向け国に働きかけ、思い切った補助を実施すべきと考えます。
 今回、製造業再建として総額約9億円を計上し、設備の再建支援2億2、000万円、投資額の10分の1の補助で5、000万円を限度とするようでありますが、この程度の措置では、製造業の再生はほとんど不可能ではないかと感じております。雇用継続確保のために、もっと大胆な補助金制度にすべきだと考えますが、知事の考えをお伺いいたします。
 4点目に、被災地の災害廃棄物の処理についてお伺いいたします。
 個人の貴重な財産を含めながらも、被災地におけるいわゆる瓦れきの処理についてですが、現在、被災地において、行方不明者の捜索をしながらの困難な瓦れきの撤去作業が、自衛隊を含め多くの皆さんによって懸命に行われております。自衛隊員を初めとする関係の皆さんに、被災地住民の一人として心より感謝する次第であります。
 被災地の廃棄物は、基本的には一般廃棄物となりますが、阪神・淡路大震災に見られるように、建築廃材を中心とするいわゆる産業廃棄物の要素を多く含んでいると言われております。撤去し、分別し、最終処理までの経路は、アスベスト、ダイオキシン、爆発物の処理等々多くの危険と困難を伴うとされております。復旧、復興の前提として、まず、その処理が最優先課題と考えます。しかるに、被災市町村においては、処理がなかなか進んでいないのが実態とされております。その大きな理由の一つに、ほとんどの被災地の廃棄物処理の事務受託をした岩手県の基本的な処理の方針がいまだ定まらないところにあると言われております。早期の復興に向け、被災地廃棄物の迅速な撤去のためにも、県は可能な限り早期に明確な方針を打ち出すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 5番目に、水産業の復興についてお尋ねします。
 水産業は、漁獲から加工、流通と、雇用の面でも、また地域経済においても今回の被災地の基幹産業であり、漁獲高が全国有数であることは今さら言うまでもありません。その水産業が、漁港、漁場、市場、漁獲から流通までのすべての分野で壊滅的な打撃を受け、ほぼ100%が機能不全となっております。
 県が先般公表した被害推計によりますと、農林水産関係被害額4、166億円のうち、水産、漁港関係の被害は、その4分の3にも及ぶ3、137億円となっております。こうした危機的状況において、今回の一般会計補正予算には、漁港災害復旧事業費や産地魚市場緊急支援事業費補助等を予算計上しております。そのこと自体は緊急性が高く一定の評価はしますが、今回の災害は、漁船、漁具といった最も基本的な手段と同時に、水揚げ後の処理、加工場の整備など、すべての段階で壊滅的な打撃を受けているため、関係するすべての手段、施設を同時並行的に整備していかなければ、業、なりわいとして成り立たないものと考えます。岩手の水産業の復興にどう取り組んでいくのか、知事の考え方をお聞かせ願います。
 最後に、三陸鉄道の復旧についてお尋ねいたします。
 三陸鉄道は、沿岸住民の悲願として26年前に全線開通し、震災前は沿岸住民の貴重な公共交通手段としてなくてはならないものでありました。それが今回の震災により、自力での復旧はもちろん、県、自治体の財政力を超えた被害の状況であり、100億円をも超えると言われております。
 JR東日本では、被災在来線の復旧を早期に打ち出し、沿線住民の不安感に一縷の明るさを与えてくれました。今回の被災地三陸沿岸復旧、復興のシンボルとも言える三陸鉄道の早期の安全な形での復旧を、沿線住民として切に願ってやみません。今回、甚大な被害を受けた三陸鉄道の今後の復旧について、将来を見据えどのように考えているのか、知事にお尋ねいたします。
〇知事(達増拓也君) 平沼健議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、災害危険区域の指定についてでありますが、本県の沿岸部は湾単位に都市が点在し、地理的条件によりそれぞれが特徴を有するとともに、被災状況も一様ではございません。また、今後の復興に当たりましては、まず、地域住民の安全を確保しながら、住民が主体となった地域づくりを進める必要があります。このため、災害危険区域の指定は、被災住民や被災地域のことを十分に理解している市町村が担うことが適切であると認識しております。
 県といたしましては、先日、建築制限の制度や考え方について市町村に情報提供したところでありますが、今後、高潮などによる浸水シミュレーションデータを提供するなど、災害危険区域の必要性やその指定範囲について、市町村とともに考えてまいりたいと思います。
 次に、国への働きかけについてでありますが、現在、国の1次補正においては、複数の中小企業等が共同で進める施設復旧、整備に対する支援や、商店街の施設復旧、修繕に対する支援のほか、中小企業基盤整備機構による仮設の貸し工場や貸し店舗の整備などが盛り込まれており、早期の成立を期待しております。また、4月22日、菅首相に対して、被災した企業への大型補助制度の創設等を直接要望するなど、さらに手厚い国の支援も要望しております。
 今後とも、必要な施策について、あらゆる機会をとらえて国に対し積極的に要望してまいりたいと思います。
 次に、水産業の復興についてでありますが、今般の災害は、県内の広範囲にわたり大きな打撃を与えており、特に沿岸地域では、漁船や養殖施設の大半が流失したほか、魚市場等の水産施設、漁港施設においても壊滅的な被害を受けております。本県の水産業は沿岸地域における重要かつ基幹となる産業であり、今般の災害により壊滅的な被害を受けた水産業の再生は、沿岸地域の復興に向けた礎となるものであります。
 このようなことから、国に対して、本県を初めとする三陸の水産業全体の復興に向け、国が総力を挙げ、国家プロジェクトとして取り組むよう強く要望しているところであり、本県の水産業について、復旧、復興を審議いただいている岩手県東日本大震災津波復興委員会で検討すべき事項として、漁業と流通、加工業の一体的な再構築に向け、1、漁業協同組合を核とした漁業、養殖業の構築、2、産地魚市場を核とした流通、加工体制の構築、3、漁業再開に必要な漁港、漁場、漁村機能の早期復旧、4、漁業者に対する生活支援、これらを示しており、復興委員会での議論や地域の水産業関係者の意向も踏まえ、意欲と希望を持てる水産業の復興に取り組んでまいります。
 次に、三陸鉄道の復旧についてでありますが、三陸鉄道は、昭和59年の開業以来、沿岸住民の通院、通学等の足として重要な役割を果たしてきたところであり、今後も交通条件の悪い沿岸地域の生活の足として、また、観光や地域振興の社会基盤として大きな役割を果たすことが期待されており、県としては、三陸鉄道を早期に復旧させたいと考えております。しかしながら、被害が余りにも甚大なことから、県や沿線市町村だけでは復旧に係る費用を負担することは困難であり、国の全面的な支援が不可欠であります。被害状況が判明して以降、国に対し、現行の国庫補助制度に係る補助率のかさ上げなど、既存制度を超えた財政的な支援を求めてきたところであり、先日も、来県した国土交通大臣に対し強く要望を行ったところであります。
 また、復旧、復興に当たっては、津波防災や新たなまちづくりなどを考慮した鉄道施設の整備が必要と考えており、今後、専門家の意見も聞きながら、沿線市町村と協議し、安全に、また、より多くの住民が生活の足として利用できるよう、整備してまいりたいと考えます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
〇総務部長(加藤主税君) 補正予算の財源についてでございますが、今回の補正予算は、現時点で見込まれます国庫の補助負担率や県債の充当率などを想定しつつ編成したところでありますが、その結果、県のいわゆる持ち出し分といたしましては、4月8日に交付されました特別交付税を財源とする一般財源分が約79億円、今後複数年かけて県が償還することとなります県債が約344億円となっているところでございます。
 今回計上いたしました救助費や災害復旧に要する経費に係る県債の償還に対しましては、後年度に95%が交付税措置される見込みでございますが、復旧工事のための事前調査に要する経費など、現行制度では交付税の措置率が低いものもございますことから、一定の財政負担が懸念されるところでございます。
 国におきましては、財政措置の内容が詳細に決まっていないため、現時点におきまして最終的な県の純粋な持ち出しの規模を示すことは困難でございますが、今後も多額の支出が想定されるところでございます。復旧、復興対策に円滑に取り組むために必要な財源を確実に確保できますよう、また、持ち出しをなるべく圧縮できますよう、国に対しまして強く働きかけてまいりたいと考えております。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 災害廃棄物の処理に係る県の方針についてでありますが、3月29日に開催いたしました第1回岩手県災害廃棄物処理対策協議会におきまして、市町村に対し災害廃棄物処理の基本的考え方を示したところであります。この中におきまして、災害廃棄物処理については本来市町村業務でありますが、量が膨大であることや被災市町村の現状を考慮し、市町村の要請に基づき、県を挙げて支援することとしているところであります。また、災害廃棄物を迅速かつ適切に処理するため、発生量とごみ質の把握、発生量に見合う仮置き場の確保、環境に配慮した処理方法の選択、広域的な処理先の確保について、対応方針を示しているところであります。
 現在、県におきましては、この方針に基づき、廃棄物の受け入れについて処理施設の設置者等と調整を行っているほか、分別を行う場所の確保についても市町村と協議を行い、撤去作業が順調に進んでいる市町村から、順次、分別、処理を進めることとしているところであります。
 また、今回の災害廃棄物の特徴といたしまして、海水による塩分の処理が大きな課題となっているところでございます。このため、国、大学等と連携をしながら多面的な検討を行い、適切な脱塩対策を講じることとしているところであります。
 これらを踏まえながら、なるべく早く具体的な処理方針につきまして市町村にお示しするとともに、8月中をめどといたしまして、県全体の災害廃棄物処理計画を策定いたし、3年ないし5年以内ですべての処理が完了するよう、市町村と一体となって取り組んでまいる考えであります。
〇34番(平沼健君) 時間もあれですので、知事に対して関連質問として一つだけお尋ねいたします。
 先ほど御答弁いただきました企業といいましょうか各製造業等への支援なんですけれども、けさの新聞で、養殖施設整備に全額負担という記事が載っていましたし、あと、漁船購入費で3分の2補助ということがうたわれております。本当にこれはすばらしいことだと思っておるわけでして、しかも定置の網なんかにも3分の2の補助ということが可能だということがうたわれております。本当にこういうことでやれば、漁民の方々も元気が出ると思います。
 そこで、同じようなというわけにいかないんですけれども、やはり雇用の維持のためには工場を含めた、水産工場を含めた、加工業を含めた、そういう製造業に対する設備の補助金というものを、補助というもの、これが今回の2億2、000万円─けたが違うんですね。やっぱりこれは初期投資が本当に大事だと思うんですよ。ですから、これは県だけでは何ともならないと思います。ぜひ、これは国に強烈に働きかけて、何とかその辺もお考えいただきたいと、このように要望申し上げながら御答弁をいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 平沼議員御指摘のとおり、企業への支援、水産業関係の支援、そして水産業関係の加工業への支援、また、製造業への支援、非常に重要と考えております。菅総理大臣への、被災した企業への大型補助制度の創設等の要望も既に行っているところではございますが、さらに手厚い国の支援を要請してまいりたいと思います。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、飯澤匡君。

前へ 次へ