平成22年6月定例会 第16回岩手県議会定例会 会議録

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〇8番(菅原一敏君) 民主党の菅原一敏でございます。
 このたび、4度目の一般質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げ、以下、順次質問をいたします。
 最初に、行財政改革についてお尋ねをいたします。
 知事の任期も残すところ1年を切りました。平成22年度は、1期目の任期の実質的な最終年度となりますが、知事は、昨年策定したいわて県民計画に基づいて、当面する厳しい雇用情勢や地域医療の問題などに対応しながら、前年度を大きく上回る積極的な予算編成を行い、希望郷いわての実現に向けての最初の確かな一歩を踏み出されました。しかしながら、人口の減少や地域経済の低迷など県民の仕事と暮らしを取り巻く環境は依然厳しく、県政課題は山積しております。
 このような状況を踏まえて、本県においては、集中改革プログラムに基づいて歳入の確保や歳出全般にわたる見直しと、本庁及び振興局体制のスリム化、効率的な業務執行体制を構築するための組織機構の見直しなどにこれまで取り組んできておりますが、知事は、集中改革プログラム、及びこれを引き継いだ形のアクションプラン改革編に基づいた、これまでの行財政改革の取り組みについてどのように評価をされているのか、そしてまた、同プランの最終年度である今年度末までに残されている課題についてどのように認識をされているのかお伺いをいたします。
 また、アクションプランにおいては、人件費の縮減も重要なテーマでありますが、人件費縮減を図るための職員数削減の取り組みについて、これまでの実績と今後の職員体制のスリム化に向けてどのように考えているのかお伺いいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 財政健全化に向けた取り組みについてお尋ねいたします。
 1兆4、000億円台まで増加した県債残高の償還が、今後、高い水準で続くことが本県の財政運営における大きな課題となっています。今後、元金償還が重い負担になるとともに、金利の動向によっては利払い費が増加し、県財政に重くのしかかってくることが懸念されます。公債費負担の軽減を図るための手段の一つとして、今年度の地方財政対策によって3年間の延長が決定した公的資金補償金免除繰上償還制度の活用が有効ではないかと思われますが、近年のこの制度の活用実績はどうなっているのか。また、これとは別に、元金の繰り上げ償還についても行う考えはないかお伺いをいたします。
 新しい県民計画は、県や市町村、企業や団体、NPOなど、地域社会を担うすべての県民の力を結集して、これからの岩手を実現していく羅針盤として、いっしょに育む希望郷いわてを標榜しておりますが、そのためには、その実現の手段となるべき予算についても、県民みんなのものであり、共有すべきものであると思います。こうした観点から、財政状況の厳しさを県民に広く訴えていく必要があると考えますが、御見解をお伺いいたします。
 また、予算編成において、事業の選択と重点化を一層進める必要があると思いますが、基本的な考え方についてお伺いをいたします。
 以上で、登壇しての質問を終わります。
   〔8番菅原一敏君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 菅原一敏議員の御質問にお答え申し上げます。
 行財政改革の評価と課題についてでありますが、昨年度策定したいわて県民計画アクションプラン改革編に基づいて、本庁や広域振興局体制の整備による組織パフォーマンスの向上、歳入確保の強化や総人件費の抑制による行財政構造の徹底した簡素、効率化、民間企業との協働拡大による公共サービス改革への着手、権限移譲など市町村の基盤強化推進など、自立した地域経営を支えるべき行財政改革の成果を上げていると認識しております。
 最終年度となる今年度においては、各地域における広域振興局体制の一層の定着や、地域とともに考え行動する人材の育成、官民協働の仕組みの整備などに一層注力したいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願いします。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) まず、職員体制のスリム化についてでありますが、平成22年4月の職員数は、公営企業を除く職員数で2万132人、平成19年対比で1、118人の減、うち知事部局が4、027人、同435人の減となっております。アクションプラン改革編に掲げました平成23年4月の職員数1万9、960人程度、うち知事部局4、000人弱の目標についてはおおむね達成できる目標でございます。
 今後におきましても、引き続き厳しい行財政環境が想定されますことから、組織、職員体制の一層の簡素、効率化を図ることが必要であると考えております。ただ、一方で、行財政構造改革プログラム初年度であります平成15年度当初に比較いたしますと、知事部局では7年間でおよそ2割の職員数を削減している実態もございます。こういった点も踏まえつつ、国の地域主権改革の動向等も留意しながら、いわて県民計画を着実に推進できるよう、適切な職員体制のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 次に、公債費負担の縮減についてであります。
 公的資金の補償金免除繰上償還制度は、公的資金の繰り上げ償還を行う際に生じます、将来支払うべき利息の総額に相当する補償金の支払いを免除するとともに、その繰り上げ償還のための財源として低利の借りかえを認めるものでございます。こういった非常に有利なものでございますので、本県におきましても、平成19年度から平成21年度までの3年間でこれを活用いたしまして、将来の利息4億4、000万円程度を縮減する効果が生じたと考えております。
 なお、通常の繰り上げ償還につきましては、元金に加えまして繰り上げ償還に係る清算金等を含めて支払いを行う必要がありますので、繰り上げ償還による公債費負担の軽減効果は限定的であるという問題もございます。また、現下の財政状況からしますと、繰り上げ償還のための財源を捻出することは難しく、実質的な元金の繰り上げ償還を行うことはなかなか難しい状況にございます。
 次に、財政状況の県民共有等についてであります。
 まず、本県の財政状況は、景気低迷等による県税収入の減少、三位一体改革により失われた地方交付税が完全な復元には至っていない、こういった中で、県債の償還など義務的な経費の支出割合が高い水準にあるなど、引き続き極めて厳しい財政環境にございます。こうした厳しい財政状況にあることを、県民の皆様に御理解をいただくことは極めて重要でございます。
 昨年9月に岩手県の今後の収支見込み等を公表いたしまして、これまでの行財政改革の取り組みは、平成23年度以降、毎年度数百億円規模の収支ギャップが生じることをお示ししたところでございますが、今後におきましても、本県の財政状況につきましてよりわかりやすくお伝えできるよう、その内容や手法等について、研究、工夫してまいりたいと考えております。
 また、予算編成におきましては、厳しい財政状況の中、限られた財源を有効に活用するためにも、議員御指摘のとおり、政策の一層の選択と集中の徹底を図る必要がございます。このため、県民、企業、市町村など多様な主体とのあるべき役割分担を踏まえた上で、事業の必要性、緊急性、有効性等の観点からの取捨選択を行うことにより、県民の仕事と暮らしを守るための事業を盛り込みつつ、持続可能な財政運営にも配慮した予算編成を行っていく必要があるものと考えております。
〇8番(菅原一敏君) 集中改革プログラム等に基づいて、行財政両面にわたる御努力をされていることに対しまして敬意を表したいと思います。いずれ、新しい県民計画の着実な推進を図るためには、その実現の手段である予算をしっかりと組まなければならないわけであります。そして、そのためには、またさらなる財政健全化に向けた取り組み、あるいは行政のスリム化に向けた取り組み、これが大切になってくると思っているところでございます。
 行財政改革を今後ともしっかりとなし遂げ、県政課題の解決に向けて、知事のもとに一致結束をして邁進をされるように御期待を申し上げたいと思います。
 次に、広域振興局体制についてお尋ねをいたします。
 本年4月1日から広域振興局体制がスタートいたしました。これまでの平成18年度以降の暫定的な姿から見れば、4広域振興局の本局で圏域全体の政策推進のための企画調整を行い、そして、その下の部門センターで環境生活、福祉相談、農林水産業の普及、指導などの現場業務を担当するという、全県統一された出先機関としての形態は一応整ったと言えると思います。しかしながら、4広域振興圏の設定の段階において、特にも県北・沿岸圏域においては、圏域としての形態や面積、あるいは内陸部との一体感などの面で市町村からの異論も多くあったことなどから、本庁との関係、市町村との協力体制、隣接する広域振興局との連携などに不安要素があり、この滑り出しが大いに注目をされていると思っているところでございます。
 知事は、新年度、移動県庁等で既に県北と沿岸の両広域振興局に出向かれ、講演をされたりあるいは産業関係者との懇談をされたり、そしてまた、職員との意見交換等も実施をされたとお聞きしておりますけれども、いわて県民計画の命運を握ると言ってもいい新たにスタートした広域振興局について、職員の士気や意欲、職場の雰囲気など、広域振興局の現状をどのように感じ、そして、これからの業務推進にどのような期待を持たれたのか、まず、この点についてお伺いをいたします。
〇知事(達増拓也君) 4月以降、移動県庁でありますとか、また、職員との意見交換会などで広域振興局に赴きまして、直接、職員の声を聞く機会を持ちました。それぞれ市町村を初め各種団体、機関、住民との連携をこれまで以上に図ろうとする意欲や雰囲気が感じられました。広域振興局体制の発足を契機として、広域振興圏全体を視野に入れた取り組みが一層浸透していることを非常に心強く感じたところであります。
 これまでの取り組みによって、地域資源の発掘と利活用もかなり進んできていますことから、今後はそれぞれ広域振興局長のもと、市町村や地域住民の皆さんの生の声をよく聞いて、共通認識を持ちながら、拡充した地域振興推進費の活用などによって、それぞれの圏域の目指す将来像の実現に向けて取り組むことを期待しております。
〇8番(菅原一敏君) 次に、本庁との役割分担、市町村との連携についてお尋ねをいたします。
 広域振興局は現場主義と市町村重視の考え方、そして広域振興局での業務の完結性の向上を目指すとしておりますけれども、それでは、全県的統一性を図るための本庁との役割分担をどのように考えているのかお伺いをいたします。
 また、市町村優先の行政システムの確立に向けて、県と市町村との役割分担と連携、このことについて今後どのように進められるのか、お考えをお示しいただきたいと思います。
 あわせて、連携に当たって必要となる職員あるいは予算の裏づけ等、こういうものについてはどのように調整をされるお考えなのかお伺いをいたします。
〇政策地域部長(加藤主税君) まず、本庁と広域振興局の役割分担についてでございますが、本庁は、全県的または県域を越える政策の立案、調整等の業務、専門性、効率性の確保が必要な業務などを担い、広域振興局におきましては、現場主義に立った部局横断的な総合力、機動力を生かした県民サービス業務などを担うことを基本にしております。こうした役割分担のもと、庁議や政策会議等の重要な政策形成過程への局長の参画や、本庁と広域振興局が密接に情報共有、連携を図ることを通じまして、県全体として実効性の高い施策を展開してまいりたいと考えております。
 次に、県と市町村の役割分担と連携についてでございます。
 いわゆる市町村優先の原則のもと、住民に身近な行政サービスは市町村が総合的に担い、県は、産業振興や基盤整備、市町村の支援など、広域的、専門的なサービスを担っていくべきものと認識しております。こうした役割分担を踏まえつつ、4月以降、広域振興局長が直接現地に赴きまして市町村長と意見交換を行うとともに、事務レベルの意見交換の場を設定するなど、これまで以上に市町村との情報共有、連携を図っているところでございます。
 また、広域振興局への移行に当たりましては、産業振興を担う体制を充実強化するとともに、地域振興推進を拡充するなど、必要な人員や予算の確保に努めてきたところでございまして、今後も地域の実情を十分に把握しながら、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
〇8番(菅原一敏君) それでは、企画理事にお伺いをいたします。
 平成18年度から県南広域振興局が先行的に奥州市に設置をされ、さまざまな取り組みを行ってまいりました。そして、このたび4振興局体制に移行したわけでございますが、この新たな4振興局体制への移行に当たって、県南広域振興局で先行してさまざま実施をされたそのことの成果は、どのように今回の新たな発足に生かされたのか。そしてまた、課題は何であったのかお伺いをしたいと思います。
〇企画理事(藤尾善一君) 4広域振興局体制移行に当たっての県南広域振興局の成果と課題についてでございますが、成果の第1は、産業分野別に10の広域ネットワークを形成し、新たなビジネスチャンスを創出したこと、成果の第2は、産業振興部門の集約化により、地域ニーズに応じた専門的な支援機能を強化したこと、成果の第3は、事務の権限移譲や職員派遣など、組織機能の集約により市町村への支援体制がこれまで以上に充実強化され、市町村優先の行政システムの構築が進展したことでございます。
 次に、課題についてでございますが、組織体制が本局と花巻、北上、一関総合支局、各行政センターと三層構造のため業務分担がわかりにくいことや、利便性の指摘があったところでございます。
 広域振興局体制への移行に当たりましては、このような成果と課題を踏まえながら、専門性や技術力を要する業務は本局に、身近なサービスは行政センターで提供することを基本とし、県南広域振興局のみに本庁から移管されていた業務を他の広域振興局にも拡大するなど、産業振興を中心に、機動的、効率的な施策展開ができるよう、体制整備がなされたものと考えているところでございます。
〇8番(菅原一敏君) それでは、次に広域振興局長の権限と、御本人を前にして恐縮でございますが、企画理事の配置についてお尋ねをしたいと思います。
 広域振興局長は、地域の声を県全体の施策に反映できるような役割を担うということになっておりますけれども、そのために、具体的にはどのような権限を与えられているのでしょうかお伺いをいたします。
 また、4広域振興局の中で、これまでの経緯があるにせよ、県南広域振興局のみに企画理事が配置されておりますけれども、それはなぜでしょうか。さらなる格差を生むことになるのではないかと懸念をいたしますが、いかがでしょうか。
〇政策地域部長(加藤主税君) 広域振興局長の権限についてでございます。
 広域振興局長は、圏域内の広域行政の責任者として、地域の声を県全体の施策に反映させるため、知事にかわって市町村等からの要望に対応するということ、それから、庁議など県の重要な政策決定や予算編成の過程に参画するという権限を有しております。このような役割を担う局長のもと、現場主義に立った総合力、機動力を発揮した地域経営を一層強化いたしまして、市町村や地域住民の皆さんと連携しながら、それぞれの圏域を目指す将来像の実現に向けて取り組んでいきたいと考えております。
 企画理事についてでございます。企画理事は庁議や議会などへの出席を通じ、県行政全般にわたる政策立案等に参画するものとして本庁に置かれている職でございます。現在、企画理事は1名ということでございまして、県南広域振興局長を兼任しているわけでございますが、広域振興局長の職は企画理事による兼任を前提とするものではなく、広域振興局長としての職責は4広域振興局とも同様でございます。人事配置の結果こうなっているということでございまして、了知願いたいと思いますし、これによりまして、ゆめゆめ格差を生むことにはつながらないと考えております。
〇8番(菅原一敏君) 広域振興局長の権限でございますが、知事にかわって要望に対応すると、これはわかります。そしてもう一つは、庁議や予算編成に参画するということでございますが、それでは、私、行政組織規則を見てまいりましたが、庁議のメンバーにはなっていないと。知事がその都度出席を求める、そういう立場の広域振興局長であるというふうに承知をしておりますけれども、そうであれば、なかなか実質的な参画は難しいのではないかなと考えますが、その点についての御確認をしたいと思いますし、予算編成に参画というお話でございますが、それでは、予算査定の場ではどういう立場で広域振興局長は参画をするのか、その点をお尋ねしたいと思います。
〇政策地域部長(加藤主税君) まず、庁議運営規程についてでございます。議員御指摘の内容につきましては、昨年度までの庁議運営規程かと存じます。今年度、新たに広域振興局体制をスタートしたことに伴いまして、その都度ということではなく、正式に広域振興局長という形で規定にも明記させていただいたところでございますので、さよう御了知願えればと考えております。
 また、広域振興局長の予算編成への参画ということでございます。先ほど、昨年出しました広域振興局体制整備の基本的な考え方に基づいて簡明なお答えをさせていただきました。実際には、さまざまなルート、機会を多層に設けまして、予算編成に際しまして、地域の実情や地域の声、ニーズをその編成の中で反映させることとしております。これは数年にわたるさまざまな議論も経て決定したものでございまして、まだ新体制に基づきました予算、これはこれから編成ということでございますので、まずは新しい体制、仕組みの中で、予算への地域の実情は地域の声、ニーズの十分な反映に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 基本的に、予算編成への参画ということは、広域振興局長は部長級ということでございますので、通常の部長と同様ということで理解しております。
〇8番(菅原一敏君) こだわるつもりはありませんが、庁議メンバーについては、私、夕べもホームページで岩手県の法規集から確認をしてまいりましたのでお話をしたんですが、間違っておりましたならば謝りたいと思います。
 もう一つお尋ねをしたいんですが、提言と言ってもいいかもしれませんけれども、私の心配は、四つの広域振興局が、あるいは広域振興局長が、同じ権限、同じ立場で、それでなくても県北・沿岸はおくれているわけでございますから、地方の声が、地域の声が県全体の施策に反映できるような、そういう仕組みがきちっと制度的にもできていてほしいと、そういうふうに思うからこだわっているわけでございますが、この問題の最後に、このひな壇の左側2列目にあきがあるんですが、せっかく部長級にしたわけですから、残る3名の広域振興局長も議会の場に、本会議に出席をさせて、議会の場で沿岸振興あるいは県北振興についても積極的な議論を闘わせてはいかがかと、私は個人的にそう思うんですが、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
〇総務部長(菅野洋樹君) 広域振興局長につきましては、それぞれの担当区域におきまして、防災や危機管理を初めとする当該地域の地域経営にまず専念させていただく、そういったことが非常に重要であろうという考え方から、現在の取り扱いとさせていただいたところでございます。やはり広域局のトップでございますので、現地においてこういう役割を十分発揮していただきたいと考えております。
〇8番(菅原一敏君) そうしますと、県南についてはそうでなくてもいいという理屈にもなるわけですが、いずれ、せっかく部長級の広域振興局長を目玉として配置したわけですから、私が思うに、どうせこの本会議の議論をテレビで見ていると思うんです、ほかの仕事をしないで。であれば、ここに出てもらってもいいのではないかと感じましたので、お話をさせていただきました。
 次に移りますけれども、4広域振興局がそれぞれ明確な顔を持ちながら、そして、県土の均衡ある発展を図るためには、これまで以上の県北・沿岸振興についての取り組みが必要だと思います。
 そこで、県北・沿岸振興本部長も兼ねておられます副知事から、今回の広域振興局体制への移行を踏まえて、県北・沿岸振興の今後の具体的な取り組みと目指すべき姿についてお伺いしたいと思います。
〇副知事(宮舘壽喜君) 県北・沿岸振興については、いわて県民計画の中で、県政の重要課題として重点的に取り組むことを一層明確にしたところでございます。また、アクションプランにおきましては、県北・沿岸圏域を対象とし、広域振興局を中心として取り組む具体的な内容を明らかにしております。特に今年度は、新たに体制を強化した県北、沿岸広域振興局に重点的に職員を配置し、予算につきましても、地域課題解決に向けた地域振興推進費を増額して配分するなど、手厚く措置したところでございます。このほか、沿岸広域振興局関係部等職員で構成いたします海洋チームを組織しまして、いわて三陸海洋産業振興指針に沿った施策を推進することとしております。
 県北・沿岸圏域における具体的な取り組みといたしましては、北上川流域との連携によるものづくり産業人材の育成、雑穀、ヤマブドウ、短角牛などの食産業クラスターの形成、東北新幹線新青森駅開業に伴う大型キャンペーンなどによる情報発信や、八戸・宮古・盛岡間の沿線地域の観光振興、雑穀、ナンブアカマツ、アワビなどの農林水産物のブランド化の推進、そして、内陸部と沿岸部の都市間や沿岸部の都市間を結びます幹線道路ネットワークの整備などに鋭意取り組んでいるところでございます。今後におきましても、県北・沿岸振興本部を中心といたしまして、本庁各部局や広域振興局との連携を図り、市町村や関係団体と協働しながら、県北・沿岸圏域の地域資源を最大限に活用し、地域の自立と活力を生み出す産業経済基盤の構築を目指して全力で取り組んでまいる考えであります。
〇8番(菅原一敏君) ありがとうございました。よろしくお願いしたいと思います。
 次に、過疎、準過疎対策についてお尋ねいたします。
 過疎地域の振興につきましては、これまでの4次にわたる過疎立法に基づく過疎対策によりまして、交通基盤や通信、情報基盤の整備、下水道等の生活環境の整備、医療、福祉、介護の向上、そして産業の振興等に一定の成果が上がっていると思っております。しかし、特に地理的、地形的条件の厳しい地域におきましては集落機能の維持が困難になる集落が発生し、地域コミュニティの機能低下や、あるいは耕作放棄地の増加といった深刻な状況が生じている地域もあるわけでございます。
 こうした中、過疎地域自立促進特別措置法、現行過疎法でございますが、本年3月末をもって失効することとなっていたため、過疎地域の置かれた厳しい現状を踏まえ、各地域からの強い要望にこたえて、同法の一部を改正する法律案が、去る3月10日、議員立法により可決、成立し、平成28年度まで同法の6年間の延長がなされたところでございます。
 まずお伺いしますが、これによりまして指定要件が緩和されました。本県におきましても七つの団体が新たに該当することになりましたけれども、県はこのことをどう評価し、今後の本県の過疎対策にどのように取り組むお考えなのかお伺いいたします。
〇政策地域部長(加藤主税君) 過疎対策についてでございますが、過疎法の改正によりまして、本県では新たに7市町村が対象に追加されたほか、ソフト事業への過疎債の充当が認められるなど、過疎対策を一層拡充できるものとなっておりまして、高く評価しております。議員の皆さん、関係市町村や県選出の国会議員とともに本県の実情を訴えた取り組みが反映されたものと認識しております。
 県におきましては、現在、市町村計画の大綱、基準となります過疎地域自立促進方針並びに過疎地域自立促進計画の策定作業を進めておりまして、8月末を目途に決定にこぎつけたいと考えております。
 いわて県民計画では、地域社会を構成するさまざまな主体がともに支え合い、総力を結集する地域経営の考え方を基本としておりまして、過疎対策にありましても、地域資源を最大限活用し、地域の個性や特色を生かした価値を高める取り組みを展開することによりまして、自立的な地域社会の構築を目指していくことが重要と考えております。こうした方向性を経営方針に盛り込んだ上で、法律の改正内容も踏まえまして、関係市町村と密接な連携を図りながら、引き続き過疎対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
〇8番(菅原一敏君) 次に、準過疎市町村への対応についてお伺いいたします。
 今回新たに自立促進のための特別措置が拡充されまして、過疎対策事業債の対象事業に、今、部長がおっしゃいましたように、ソフト事業も追加されましたことから、一層の過疎対策の充実に期待がかかるわけでございますが、一方で、過疎地域と同様の過疎化現象が見られるにもかかわらず、法の要件を満たすことができずに過疎法の適用を受けられない市町村に対する支援もまた必要であると考えます。これら準過疎市町村に対する県としての振興策についての基本的な考え方をお伺いいたします。
〇政策地域部長(加藤主税君) 準過疎市町村に対します県の振興策の基本的な考え方のお尋ねでございます。
 人口の減少が過疎の要件は満たさないものの、相当程度進行している市町村につきましては、生活基盤や生産基盤のおくれでございますとか人口減少など、過疎市町村と同様の課題を有しておりまして、特別の対策が必要であると認識しております。そのため、県におきましては独自に過疎地域に準ずる地域といたしまして昭和52年から準過疎地域の制度を設け、これまで対策を講じてきたわけでございます。今後におきましても、法令上の制約はございますが、準過疎市町村に対しましては、関係各部局とも連携しながら、過疎市町村に準じた対策を引き続き講じていく考えでございます。
〇8番(菅原一敏君) 今回新たに7団体が過疎指定を受けたことによりまして、岩手県におきましては、本当の意味で市町村全域がいわゆる準過疎市町村となるのは、残念ながら陸前高田市一つだけということになるわけでございまして、そうした意味で聞きづらい点もあるわけでございますが、準過疎市町村への支援の一つとして自治振興基金の活用があると思うのですが、今回、過疎債におきましてはソフト事業も対象とするという拡充措置がなされたことを受けまして、県におきましても、過疎市町村と同程度の支援措置が準過疎市町村においても受けられるように、この自治振興基金についてソフト事業への活用を考えられないか、お伺いしたいと思います。
〇政策地域部長(加藤主税君) 準過疎市町村のソフト事業に対します自治振興基金の貸し付けについてのお尋ねでございます。
 地方債の対象事業につきましては、地方財政法の第5条によりまして公共施設の整備などに限定されておりまして、ソフト事業については起債対象とされていないという規定がございます。しかしながら、過疎債につきましては、過疎地域の自立促進のため、今般の過疎法の改正によりまして、特別にソフト事業が起債対象とされたという経緯がございます。
 一方、自治振興基金によります市町村等への貸し付けにつきましては、通常の地方債と同様に地方財政法第5条の制限を受けることになりますので、過疎法のような特別な法律がないということでございますので、ソフト事業は貸し付け対象外とせざるを得ないものでございます。したがいまして、自治振興基金によります準過疎市町村への支援につきましては、市町村の意見を伺いながら、地方債制度の範囲内で有効なものとなるように努めてまいりたいと考えております。
〇8番(菅原一敏君) 新規に拡充されましたソフト事業というのは、地域医療の確保でありますとか、あるいは交通手段の確保、さらには集落の維持、活性化、非常に身近なソフト事業なんですね。これが過疎にならなかった準過疎市町村については活用の方途がないということで、非常に残念なわけですが、自治振興基金はなぜ起債ということの扱いになっているのか。条例を見ますと、市町村の行財政基盤の確立に資するための貸付金であると書いてあるんですが、これを起債として扱っていることの理由についてお尋ねしたいと思います。
〇政策地域部長(加藤主税君) 県の側から見れば市町村への貸し付けということになるかと思いますが、市町村の側から見ると、1年以上を超える長期の借り入れということでございますので、地方財政法の解釈上は市町村としての起債と考えざるを得ないというところでございます。
〇8番(菅原一敏君) わかりました。いずれ、可能な方法によりまして、今後とも一層の準過疎対策も忘れずに御配慮いただきますようにお願いしたいと思います。
 次に、先般のチリ地震津波被害からの復旧、復興の状況についてお尋ねしたいと思います。
 ことしは、本県沿岸が昭和35年5月24日に南米チリからの大地震に襲われ、大きな被害を受けてから50年目に当たりますけれども、奇しくもその50年目の本年2月に再びチリからの津波が襲来し、幸いにも人的被害はなかったものの、本県水産業に甚大な被害をもたらしたところでございます。
 本県の被害は、陸前高田市など沿岸6市町において、養殖施設、水産物及び水産施設を合わせて総額18億円を超える大災害となったところであります。特に、本県養殖業の主要種目でありますワカメ、カキ、ホタテ、これらに大きな被害が生じ、陸前高田市では、新しい養殖種目として注目されておりましたエゾイシカゲガイが壊滅的な被害を受けたところでございます。
 今回の津波被害は、水産の被害の中では過去3番目に大きな被害であり、多くの漁業者が被災いたしましたけれども、水産業の将来における発展のためには、今回の災害で漁業者の生産意欲が減退しないよう、養殖施設の整備支援など早急な津波被害対策を行うことが必要であるとの観点から、県におきましては、関係者の要請に真摯にこたえて、去る2月議会におきまして、平成22年度の補正予算として、津波被害緊急支援対策費約2億2、800万円を緊急的に措置されたところでございます。このことに対しては敬意を表する次第でございます。
 また、今回の被害は、本県のみならず、最も被害の大きかった隣の宮城県ほか全国的に被害があったことから、国は4月23日に激甚災害の指定を行ったところでございます。
 お伺いしますけれども、この災害の復旧に当たっては、漁業者、漁業協同組合はもちろん、関係市町及び県等における迅速、的確な対応によって復旧が進められているところであります。改めてお伺いしますが、県の復旧、復興における基本的な考え方はどのようなものであるのか、また、現在の復旧の状況、今後の復興の見通し等についてもあわせてお伺いしたいと思います。
 続けてお尋ねいたしますが、激甚災害指定を受けたわけでございますが、激甚災害は、御案内のとおり、耐用年数などの制約がありまして使いづらいとの声が一部漁業協同組合から聞こえているわけでありますが、県はこの実態をどのように把握し、今後どのように活用していくお考えなのかお伺いいたします。
〇農林水産部長(小田島智弥君) まず、チリ地震津波被害からの復旧、復興の基本的考え方と復旧状況についてでありますが、養殖業は本県沿岸漁業の中核をなすものでありますことから、2月28日の津波の発生以来、県としては、現状復旧にとどまらず災害に強い養殖施設の整備などを支援していくこと、被害を受けた漁業者の方々が生産意欲を失うことなく、安心して養殖生産活動を再開できることを基本といたしまして、災害に強い養殖施設の整備や被害資材等の廃棄処分、さらにはホタテガイ及びカキの養殖用種苗の購入に補助するなど、市町、関係団体等と協調しながら復旧、復興に取り組んできたところでございます。
 養殖施設につきましては、国の強い水産業づくり交付金や県単補助事業を活用し、現在整備が進められているところであり、おおむね9月末までにはすべての市町において完了する見込みであります。また、被害資材等の廃棄処分につきましては、被災した養殖生産物や資材の引き揚げが進み、一部市町で処分が完了したほか、残る市町でも順次処分が行われることとなっております。さらに、養殖用種苗につきましては、順次種苗の購入が始まっており、年内には完了するものと考えております。
 次に、激甚災害についてでありますが、激甚災害の復旧基準はその都度策定されることとなっており、今回の津波被害による復旧基準はまだ明らかになっておりませんが、昭和54年の暴風雨災害による激甚災害の復旧基準によれば、復旧支援の対象が滅失及び大破した施設に限定され、また、その施設の耐用年数により復旧事業費が減額されるとともに、漁業共済の支払い金額も復旧事業費から控除されるなどから、激甚災害に基づく制度は使いづらいとの声が出ているところであります。このため、県といたしましては、復旧支援の対象施設を中破、小破まで拡大すること、漁業共済の支払い金額を復旧事業費から控除しないことなどについて、国に基準の緩和を働きかけているところであります。今後、国から今回の激甚災害の復旧基準となる養殖施設災害復旧事業調査要領が示され次第、できるだけ被災された漁業者の方々がこの制度を活用できるよう速やかに調査を進めるとともに、関係者と連携し、生産活動の再開に向けて支援してまいります。
〇8番(菅原一敏君) ありがとうございました。取り組みの状況等についてよく理解をしたつもりでございます。いずれ、今後におきましては、激甚災害の適用範囲の拡大等に向けて、地元漁業者等の声をよくお聞きいただきながら、全力で今後とも取り組んでいただきますようにお願い申し上げたいと思います。
 次に、災害に強い地域社会づくりについてお尋ねいたします。
 県民が安心して心豊かに暮らせる岩手を実現するためには、多発する自然災害に対する防災力の強化が喫緊の課題であります。このため、近い将来、極めて高い確率で発生する宮城県沖地震などの大規模な災害に対し、県民が一体となって備えて、そして被害を最小限にとどめ、安全・安心な暮らしの確保を目指して、県は去る3月に岩手県地震・津波対策アクションプログラムを策定されました。
 このアクションプログラムの目標設定の考え方等についてまずお伺いいたしますが、宮城県沖地震は、今後10年以内に70%の確率で発生すると予測されております。このアクションプログラムにおきましては、平成29年度末までに達成すべき目標として、人的被害及び建物被害ともに、平成16年度に実施した被害想定を半減させるというところに目標を設定しているわけでございます。最初から半分にするということが目標では、被害を最小限に食いとめるというこのアクションプログラムの基本理念には遠く及ばないのではないかと思っているわけでございますが、目標設定の根拠及び考え方についてお伺いいたします。
〇総務部長(菅野洋樹君) 地域目標についてでございますが、これにつきましては、中央防災会議におきまして、日本海溝・千島海溝周辺型地震の地震防災戦略が決定されたところでございます。この決定を踏まえまして、地方公共団体に対しまして、その戦略の趣旨を踏まえ地域目標を策定するよう要請があったところでございます。この地震防災戦略におきましては、減災目標を平成29年度末で死者数を4割から5割減、経済被害を4分の1減させることとしたところでございます。人的被害、建物被害を100%なくすことは県民すべての願いでございますが、今回、県といたしましては、この国の地震防災戦略の減災目標を勘案しながら、ハード整備とソフト対策において取り組みが可能な方策を選定いたしまして、これらを着実に実施することにより、まずは平成29年度末までに人的被害、建物被害を半減させる、このような目標にしたところでございます。
〇8番(菅原一敏君) 国の中央防災会議の基準に従ったということであればやむを得ないのかなとも思います。
 もう一つお伺いしますが、このプログラムにおいて目標を実現するための基本方向というものを定めておられるわけですが、その一つに、地震、津波に強いまちづくりということが掲げられておるわけでございます。民間、公共を問わないすべての建築物の耐震化や津波防災施設の整備などが方向としてうたわれているわけでございますが、この施策の実現には、たとえ減災目標を50%に抑えたとしても、莫大な予算措置を伴うことになると思いますが、では、そのための予算の確保について、庁内でどのようなコンセンサスができているのでしょうかお伺いいたします。
 また、同様に市町村との連携も極めて大切であると思いますが、このアクションプログラムの策定に当たって、市町村とどのような事前調整あるいは意見交換を行ったのか、あわせてお伺いいたします。
〇総務部長(菅野洋樹君) アクションプログラムの策定に当たりましては、庁内各部局と十分に意見交換を行った上で、御指摘のとおり、厳しい財政状況も勘案しながら、取り組みが可能な対策を迅速かつ集中的に期間内に推進するということを前提に減災効果を図ろうとしたものでございます。したがいまして、庁内調整には十分意を用いたところでございます。
 また、市町村との調整を要するものもございます。これにつきましては、関係部局を通じて事前に市町村と調整を図らせていただきながら本プログラムを策定したところでございます。
〇8番(菅原一敏君) ありがとうございました。
 次に、津波防災システムのネットワーク化についてお尋ねいたします。
 三陸沿岸地域におきましては、これまで、防波堤や護岸などの施設整備あるいはGPS波浪計の設置、そして、沿岸関係自治体が独自に設置した津波観測システムなどによる津波防災対策が進んでいるところでございますが、設置した自治体がそれぞれ独自に運用しているという実態があるわけでございまして、これらの連携による早期の避難システムなど、人命の安全確保を基本とする防災体制の早期確立が必要であると思っておりますけれども、県は、この津波防災システムのネットワーク化についてどう取り組むお考えかお伺いいたします。
〇総務部長(菅野洋樹君) 市町村が設置いたしております潮位計、波高計等の津波観測機器のネットワーク化につきましては、東北地方整備局が主催いたしております東北における津波防災情報連絡協議会の場で種々検討させていただいたところでございます。しかしながら、機器整備や運営等の財政負担をどうするか、それから、御指摘がありましたとおり、設置機器の形式、情報処理方法等が異なっておりまして、こういった技術的課題をどのようにクリアするのかという多様な課題が提起されたところでございます。したがいまして、これを早期に行うことはなかなか難しいということでございまして、当面、災害時の情報の有効活用や情報共有を図るため、協議会において開発を進めてまいりました津波浸水マップ検索システムといったものがございまして、これらにつきまして、沿岸全市町村にシステムの普及を図ることがまず優先であろうということで、昨年度から、順次、沿岸市町村に対してのシステム構築と職員研修を国費を活用しながら実施し始めているところでございます。
〇8番(菅原一敏君) このネットワーク化ということにつきましては、毎年度、沿岸のそれぞれの市町村からの知事に対する要望等も出されているところでございますし、非常に手間暇、経費がかかるわけでございますので、県がリーダーシップをとりながら、早期のネットワーク化について取り組まれますように御期待を申し上げたいと思います。
 次に、知事からお伺いしたいと思いますが、今、県議会におきましては、自助、共助、公助の取り組みを基本理念といたします、仮称でございますけれども、防災条例の策定に各会派共同で取り組んでいるところでございます。今後、県民説明会やあるいはパブリックコメントなどを実施し、県民の意見を聞きながら9月議会への提案を目指しているところでございますが、知事は、この条例に限らず、議員提案の政策条例というものについてどのように認識され、あるいは評価をされ、そしてどのように対応しようとしておられるのか、その基本的なお考えについてお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 議員提案による政策条例は、議員の政策意図が明確となり、日ごろの活動を通じた多様な住民意見が反映されるなど、執行部提案の条例にはない独自の意義を有するものであります。地方議会に付与された権限、権能を発揮し、住民の負託にこたえるものであり、地域主権の時代にふさわしい取り組みと認識しております。岩手県議会では、これまでも数々の政策条例を制定してきており、意欲的な取り組みに敬意を表します。
 執行部としては、政策条例が立案される場合には、執行に当たる立場から必要な意見を申し述べていきたいと思います。また、成立した政策条例については、責任を持って適切な執行に努めてまいります。
〇8番(菅原一敏君) 政策条例に対する御理解をお示しいただきまして、大変ありがとうございました。
 次に、観光の振興についてお尋ねいたします。
 本県は、平泉を中心とした歴史的遺産、陸中海岸や十和田八幡平の二つの国立公園など、全国に誇れるすぐれた自然環境、日本の原風景である農山漁村の景観と、そこに根差した多くの伝統芸能などの豊富な観光資源に恵まれております。しかしながら、観光客の入り込み状況は、日帰りや通過型が多いために、宿泊者数は県内客、県外客ともに減少傾向にあるわけでございます。県外から本県を訪れる観光客は年間おおむね1、600万人台で、横ばいというような状況のようでございますけれども、本年3月に、これも議員提案の政策条例でありましたけれども、観光立県基本条例に基づきまして執行部が策定されました、みちのく岩手観光立県基本計画によりますと、県外から訪れる観光客を10年後には1、800万人台を目標とすると設定しているところでありまして、そのためには、岩手の持つ魅力を発見あるいは再発見し、そして情報として効果的に発信していかなければならないと思うところでございますが、そんな中、JRグループによるデスティネーションキャンペーンが平成24年に本県で開催されるということが決定されております。
 そこでお伺いいたしますけれども、JRグループ全6社によって国内最大規模で行われるこのキャンペーンに対する県としての取り組みの基本方針はどうなのかお伺いいたします。
 また、新幹線や空路で盛岡周辺に来県した観光客を、いかにしてそれ以外の地域、特にも沿岸部に誘引するかが大きな課題であると思いますけれども、そのための戦略をどのように描いておられるのかお伺いします。
 あわせて、平泉の文化遺産の世界遺産登録が実現すれば、本県観光にとってこの上ない大きなチャンスになるわけでございますが、これを三陸海岸と結びつけるなどの工夫をしながらどう生かしていくお考えなのか、これらの取り組み方針についてもお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) まず、デスティネーションキャンペーンについてでありますが、本年で3年目を迎えたいわて・平泉観光キャンペーン、平成23年度の世界遺産登録に加えまして、平成24年の本キャンペーンまで5年間、誘客促進に向けた取り組みの総仕上げとして位置づけております。このため、JRグループと共同で行う本キャンペーンにおきましては、市町村や観光関係者、地域住民の方々などの幅広い分野からの参画によりまして、それぞれの役割に応じた機能を効果的に発揮する推進組織を設立し、オール岩手でキャンペーンを進める体制づくりを行いたいと思っております。
 それから、JRグループと十分な連携を図りながら、多くのお客様を岩手に送っていただけるよう、魅力ある旅行商品が造成されるよう、地域と連携いたしまして、観光資源の掘り起こしや磨き上げ、受け入れ態勢の整備、情報発信の強化を行うこととしております。いずれにしましても、JR6社、これらとの共同の取り組みにつきまして、最大限の相乗効果が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、沿岸部への観光客の誘引についてでございますが、沿岸部への誘引につきましては、魅力ある旅行商品の造成や二次交通の整備、効果的な情報発信が重要であると認識しております。このため、魅力ある旅行商品の造成を図るため、北三陸サンライズレール観光振興会議や釜石線沿線活性化委員会などにおきまして、魅力的な旅行商品や観光ルートの構築に取り組んでいるほか、本県や宮城県、県際地域の関係市町で構成する岩手・宮城県際広域観光推進研究会、これを昨日設立いたしまして、平泉の文化遺産の世界遺産登録を見据えました平泉関連資源の収集やモデルコースの設定などに取り組むことにしております。
 また、平泉地域から沿岸部への二次交通といたしまして、平泉めぐり号や遠野・陸中海岸号などの運行支援を行い、情報発信につきましては、沿岸部観光素材集の作成や首都圏旅行会社担当者を対象としたモニターツアーを実施しているところでございます。
〇8番(菅原一敏君) 次に移ります。
 平成4年に三陸海岸で開催をされました三陸・海の博覧会から、間もなく20年が経過をすることになります。延べ200万人が来場し、大成功を博したところであります。そしてまた、平成9年には、天皇陛下をお迎えして全国豊かな海づくり大会が開催されておりますが、その後は、沿岸部において県が主体的にかかわった大きなイベント等が行われたという記憶はないわけでございます。平泉の世界遺産登録やデスティネーションキャンペーンの実施を機に、そしてまた、沿岸広域振興局がスタートしたこの記念としても、三陸海岸を舞台にした大きなイベントの開催が必要と思いますけれども、県は、関係市町村等と協議、連携しながら、こういったことに取り組むあるいは検討してみるお考えはないかお伺いをいたします。
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) 三陸海岸を舞台としたイベントの開催についてでございます。
 ただいま申し上げましたとおり、いわて・平泉観光キャンペーンから世界遺産登録、デスティネーションキャンペーンに続きます5年間の誘客促進への取り組みを最大限に生かすために、現在、観光資源の掘り起こしや磨き上げ、受け入れ態勢の整備を積極的に進めているところでございます。こうしたことから、当面、県といたしましては、総仕上げとなるデスティネーションキャンペーンに全力を傾注したいと考えておりまして、御提案のございました三陸博のような大規模な新しいイベントの実施については困難な状況にあります。ですが、今後、地域からのアイデアをいただきまして、キャンペーンの後は、研究を進めてまいりたいと考えております。
〇8番(菅原一敏君) 沿岸市町村におきましては、それぞれカキ祭り、ホタテ祭り、ウニ・アワビ祭り、あるいは大漁祭り、サンマ祭り、最近はカキ小屋、さまざまなそれぞれの特色を生かした取り組みをしているところでございますが、いずれ、こういうものを単発、散発に終わらせないためにも、県がリーダーシップを発揮しながら、統一的な規模の大きなこうした水産業でもいいですし、あるいは食にこだわったイベントでもいいですが、ぜひともデスティネーションキャンペーンの後ということでございますが、御検討いただきたいなと思う次第でございます。
 次に、陸中海岸国立公園の名称変更についてお尋ねをいたします。
 陸中海岸国立公園は、南の気仙沼から北は久慈市に至る南北180キロメートルに及ぶ海岸線に沿って、太平洋に面した繊細な海岸侵食景観と豪壮な海岸美を有し、毎年多くの観光客が訪れております。そして、この地域は三陸海岸、三陸縦貫自動車道、三陸鉄道などに代表されるように、地理的にも、産業、行政面においても、沿岸部一体を指す呼称として三陸が全国的にも定着しており、また、三陸地域が一体となった振興策を進める上からも、統一したイメージの確立が不可欠であると思っているところでございます。
 このような状況の中、関係市町村で構成をしております陸中海岸国立公園協会においては、平成5年度から、国立公園の名称を三陸海岸国立公園に変更することについて、各市町村間での合意形成を図りながら、その推進に向けての活動を行ってきているところでありますけれども、県は、陸中海岸国立公園の名称変更の取り組みについてどのように認識をされているのかお伺いをいたします。
〇環境生活部長(松川求君) 陸中海岸国立公園の名称変更についてでありますが、これまで、陸中海岸国立公園協会を中心として、合意形成に向けた議論や実現に向けた要望などの取り組みを積み重ねてこられていると承知いたしております。
 国立公園の名称変更について、環境省から、名称変更に十分な理由があること、地元を中心に名称変更に合意がとれていることなどが必要との見解が示されております。このことから、名称変更の取り組みを前進させるためには、こうした要件を満たしていく必要があると考えており、陸中海岸国立公園協会等、地元の合意形成に係る動向を注視したいと考えております。
〇8番(菅原一敏君) 陸中海岸国立公園協会におきましては、かつてアンケート調査等を行っているわけですが、住民を対象にしたアンケート調査では、おおむね名称変更に賛成と。関係団体99団体だったかと記憶をしておりますが、この団体からの同意書を取りつけるという活動もしているわけでございますが、15団体が提出をいたしませんでしたけれども、反対は8団体だけであったと。90%を超える関係団体からの同意の取りつけ率といいますか、そういう過去の経緯もあったわけでございますが、県としては、ただ推移を見守るだけではなくて、これは県のさまざまな施策にも三陸を活用しているわけですね。海洋振興推進指針でありますとか、あるいは三陸ブランドでありますとか、県自体も三陸ということにこだわった使い方をしているわけでございますから、当然、三陸がふさわしいと思っておられると推察をいたすわけでございますが、もう少しリーダーシップを発揮して、合意形成に向けた何らかのアクションを県自体としても起こす必要があるのではないか、そういう時期ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
〇環境生活部長(松川求君) 名称変更に県もリーダーシップをというお話でございます。ただ、国立公園の名称については、やはり地元がどういうふうに考えるかということが基本になるのではないかと考えております。県といたしましては、やはりそういった地元の合意、こういったものを踏まえまして、また、過去の国立公園の名称変更をいろいろお聞きいたしますと、編入の際に行われているというような実態があるようでございますが、そういった動向も考慮しつつ、県として判断していく必要があると考えているところでございます。
〇8番(菅原一敏君) 私が申し上げたかったのは、地元の合意、これはもちろん大前提でありましょうけれども、その合意形成に向けてもう一歩のところまで来ているわけですから、ちょっと県が前に出て、その合意形成のためにお手伝いをしていただけないかなという気持ちから申し上げたところでございますが、新たな編入の動きというお話がございました。
 八戸市におきましては、国指定の名勝、種差海岸、これを陸中海岸国立公園に編入しようと、こういう動きがありまして、国立公園協会としてもこれを支援するという決定をしているところでございます。今、お話がありましたけれども、新たな編入の動きがもう既にあるわけでございますが、これらを踏まえて再度お伺いいたしますが、県としての今後の対応をどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
〇環境生活部長(松川求君) 種差海岸といいますか、陸中海岸に編入のお話があるという報道がなされているということについては承知をいたしております。もし、そういったことが実現をいたしますと、国立公園の実態が、いわゆる三陸という名称に沿うものになると承知いたしておりまして、また、先ほど申し上げましたように、他の国立公園の例では、名称変更は編入した場合にのみ行われているということがあるようでございますので、地元の合意形成が図られた場合には、その名称変更の取り組みを前進させる、そういったきっかけになり得るのではないかと考えているところでございます。ただ、私どもは、名称については地域がどう考えるかということが基本になるだろうと思っておりまして、そういった地域の声を受けて県として判断していく、これが基本になるだろうと思っております。
〇8番(菅原一敏君) 地域の声、賛成もあれば反対もある、これは当然であると思いますが、私が申し上げたいのは、賛成が圧倒的に多いと、こういう現状を踏まえて県としてもっと積極的な取り組みを期待したいという趣旨でございます。お話がありましたように、編入を機に、ぜひともこの機会を逃さずに積極的な取り組みをしていただきますようにお願いして、この件は終わります。
 最後になりますけれども、海の県境問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
 岩手、宮城の県境海域をめぐる漁業の操業調整問題につきましては、長い間、両県漁業者間の懸案事項でありましたが、私は、平成20年12月の議会におきまして、漁業の操業海域は、磯は地つき、沖は入会という昔からの言い伝えのとおり、県境に近接する漁業者間で話し合い、そして昔のようにもう一度協力体制をつくり、これを両県全体の協調関係の構築にまで拡大していくことが重要であると指摘をさせていただいたところでございます。その後、県におきましては、本県漁業者はもとより、宮城県の行政あるいは漁業団体に働きかけを行い、漁業者間の話し合いを通じて、イサダ漁業においては、両県の漁業者が一緒に操業ができる共同操業海域を設定したところであり、漁業者からは、この件につきましてはトラブルなく操業できるようになったという声も聞いているところでございます。
 また、この3月には、両県漁業代表者による合意のもとで、両県で一つずつの漁業許可証から、宮城県では県境真東線を、本県では南東線をそれぞれ削除するなど、海の県境問題において一定の前進が見られたものと認識をしております。しかしながら、いまだに両県で一つずつの漁業許可においては境界線の表示が残っているなどまだまだ課題が多く、全面的な解決にはなお時間が必要ではないかと考えているところでございます。
 今回のイサダ漁業における共同操業海域の設定や、両県で一つずつの許可証から県境境界線を消去したことについて県ではどのように評価をされているのかお伺いをします。
 また、県として、相手方である宮城県当局に対しどのように対応してきたのかお伺いをいたします。
 また、今後、残る一つずつの漁業許可証からの境界線を削除し、完全にきれいにする、こういう見通しと今後の対応についてどのようにお考えなのか、時間内でひとつよろしくお願いを申し上げます。
〇農林水産部長(小田島智弥君) 海の県境問題についてでありますが、岩手、宮城の異なる県境境界線の主張によりまして漁業入会が途絶え、県境海域での操業に支障を来たしてきたところでありました。県といたしましては、問題の解決に当たり、両県漁業者がルールを守り、安全に操業ができる関係を築くことが重要との認識のもとに、本県漁業団体の意見を集約し宮城県と連携し、漁業関係者への働きかけを重ねてきたものでございます。
 イサダ漁業では、平成21年3月、気仙地区から唐桑地区の沖合海域に共同操業海域を設定し、漁船間の連絡体制を整備したことによりまして、両県漁業者の協調操業体制が構築されたところであります。
 また、両県で二つずつの漁業許可証に明記していた県境境界線につきましては、平成22年3月に、両県一つずつの許可証から消去したところであります。その結果、平成6年度から途絶えていた漁業の入会が再開され、関係漁業者は境界線を意識することなく、安全操業ができるようになったところでございます。
 なお、残る漁業許可証に明記されました境界線につきましては、早期に消去することで両県で合意をいたしておりまして、引き続き関係漁業者に対して、境界線の消去と入会再開に向けて調整を図ってまいります。
〇8番(菅原一敏君) それぞれの質問について丁寧な答弁をいただきました。気のせいか、前向きな答弁が少なかったようにも感じましたけれども、以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時21分 休 憩
出席議員(44名)
2  番 工 藤 勝 博 君
3  番 岩 渕   誠 君
4  番 郷右近   浩 君
5  番 高 橋   元 君
6  番 喜 多 正 敏 君
7  番 高 橋 昌 造 君
8  番 菅 原 一 敏 君
9  番 熊 谷   泉 君
10  番 木 村 幸 弘 君
11  番 久 保 孝 喜 君
12  番 小 西 和 子 君
13  番 高 橋 博 之 君
14  番 及 川 あつし 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
17  番 五日市   王 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 田 村   誠 君
26  番 飯 澤   匡 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時43分 再開
〇副議長(小野寺研一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋元君。
   〔5番高橋元君登壇〕(拍手)

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