平成20年12月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇5番(岩渕誠君) ただいまの佐々木一榮議員の御質問のうち、県立病院の新しい経営計画について、関連してお伺いをしてまいりたいと思います。
 今の質疑の中にもありましたけれども、この計画をまとめるに至った原因として、県は、国の示した公立病院改革ガイドラインの対応、それから巨額の累積赤字、そして医師不足に起因する過剰労働の解消の3点を大きく取り上げております。
 お聞きしておりますと、医師不足に起因する問題というのが大きいのかなと思います。今もありましたけれども、県立医療機関に勤務する医師の平均残業時間は、1月当たり54時間を超えているという結果がありますが、100時間を超える残業を余儀なくされている医師というのも10人に1人以上いるということであります。限界を超えた過酷な労働環境に置かれているということだと思うんです。こうした環境を敬遠するということが一因だと思いますが、答弁あったように、4年間で採用者数を上回る140人が職場を去っていると。医療人材の枯渇が急速に進んでいるというのが実態だと思いまして、これ以上の労働環境の悪化というのは、マンパワーの面から、岩手の医療崩壊に直結する可能性が高いと言わざるを得ないと思っております。
 この医師不足と過剰労働の原発的な要因については、言うまでもなく、現場の実態を的確に把握することなく医師数の抑制策を続け、医師の偏在を増長させてきた政策であり、また、これに臨床研修医制度や医療費の削減も相まって、地方を中心とする公立病院の経営悪化と地域医療の崩壊の危機を招いた、いわば国の政策的、制度的欠陥によるものと言わざるを得ないと認識をしておりますが、知事はどうお考えでしょうか。
 とはいえ、私もこの計画には正直、戸惑いを覚えております。現場の医師の過酷な労働環境をこれ以上続けさせることは、医療資源の側面から医療崩壊を招くことは必定であるということを認識する一方で、取り残された地域住民の医療や福祉はどうなるのか。入院ベッドがなくなることで、いざというときはどうするのか。本人の負担や家族の不安は計り知れないと思います。そして、休日・夜間の救急医療はどうなるのか。さらには、福祉施設で病状が悪化したお年寄りはこれからどうなるのか。福祉施設側では、入院ベッドがなくなれば、今後の入居者を事実上制限せざるを得ないという声が出ておりまして、これは介護難民の増大にもつながるという指摘も出されています。
 こうした点を考えるとき、私も無床化の対象となった診療センターの地域に住む一人なんですが、その県民の一人として、私も正直不安に感じるものであります。ただ、今回問われているのは、地域医療を、だれが、どのような形で担って、それに行政がどういう形で携わっていくのか、あるいは支援をしていくのか。そして、住民はそれにどう参画していくのかということではないかと思っています。だとすれば、県立という形態での医療の提供を前提とした現在の計画と議論のありようは、いかにも限定的に行われているように思います。
 県議会では、これまでも、地域の医療はだれがどんな形で担うかについて議論がされてきたものと承知をしております。県立ネットワークを基本としつつも、可能な地域では県立施設を民間に開放する、あるいは運営を民間に委託する公設民営方式など、民間の力を借り、それを行政が支援していくべきではないかという議論もありました。これまでの県議会でのこうした先輩議員の提言もあったわけでありますが、県としては、今こそ、こういうことを真剣に受けとめて、今回の計画の新たな選択肢として検討すべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。
 また、現在の診療センターでは、病院からの転換によって既に遊休化している病床が存在します。地域では、今回の計画が提示される前から、遊休病床の福祉施設などへの活用を求める声が上がっています。現在の入院機能について、民間による維持の可能性を模索する中で、この遊休病床の福祉施設化など、現在の診療センターを医療・福祉一体型の施設へと誘導していくことは、地域の要望にもかなうこととなると考えます。県として、その可能性について検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。
 医療資源の枯渇の実態を踏まえて、どう地域医療を守っていくのか。県は、県立での直接経営にとらわれず、幅広く検討すべきではないでしょうか。その点から見ると、現在の計画は計画として、同時に、医療施設の民間開放と、これに伴う支援策の構築を進める必要があると思いますが、お考えをお聞かせいただければと思います。
〇知事(達増拓也君) 地域医療崩壊の危機を招いたのは国の失政によるものではないかとのお尋ねについてでありますが、本県の地域医療は医師不足により極めて深刻な状況にあり、こうした状況は、昭和57年から国による医師養成抑制策が続けられ、医師の需要と供給の均衡を失していることが大きな要因であると考えております。
 私は、知事就任以来、国に対し、医学部の定員抑制の方針転換を強く求めてきましたが、ことしの6月、骨太の方針2008において、ようやく国の医師養成抑制策は転換され、大幅に医学部定員が拡大されることとなったところであります。しかしながら、これによって地域医療に従事する医師が養成されるには、今後10年以上の期間を要することから、引き続き臨床研修医制度の見直しなど、実効性のある医師不足解消策を講ずるよう、国に求めていかなければならないと考えております。
 県としては、限られた医療資源の中で、地域に必要な医療を継続して確保していくために、県民の皆様にこうした状況を説明し御理解をいただき、地域の中核的な病院に医師を集約するなど、勤務環境改善をすることを含め、必要な改革を進めてまいりたいと思います。
〇保健福祉部長(岩渕良昭君) まず、地域診療センターの空き病床の活用についてでありますが、県立病院の空き病床を介護老人保健施設、ショートステイ、有料老人ホームなどの介護サービス施設などとして活用することは、医療と介護の連携が図られる意味で有効と考えております。現在、各市町村におきましては、平成21年度から23年度までの第4期介護保険事業計画を策定しているところでありまして、県といたしましては、県立病院の空き病床の活用も視野に入れて、介護サービス基盤の整備に当たっては、既存施設の活用に配慮するとの指針を市町村に示しているところであります。
 今後、具体的な活用策について市町村から相談があった場合には、医療局とも連携しながら、実現に向けて支援してまいりたいと考えております。
 次に、県立診療センターの施設の民間移管についてでありますけれども、医療法の観点から申し上げますと、県立診療センターが設置されている保健医療圏の既存病床数が、医療計画に定める基準病床数と比較して過剰であるか否か等によって取り扱いが異なるところであります。例えば、県立花泉地域診療センターを民間に移管するとした場合、同センターが設置されている両磐保健医療圏は、既存病床数が基準病床数を下回っている現状にありますことから、医療機関として必要な人員、構造、設備等を備えていれば新規に開設許可され、民間移管することは可能であります。具体的な計画があれば、協議の上、所要の手続をとることとなるものであります。
〇医療局長(田村均次君) 医療施設の民間開放とそれに伴う支援策ということでございますけれども、無床化に伴ってかなりの空きスペースが出るということは御指摘のとおりでございますので、地域の医療・福祉の確保という観点から、民間の医療・福祉関係の方々から、病床が確保され、あるいは福祉施設として活用されるような御提案があれば、地元市町村とも連携して、一定の支援措置ということも含めて、医療局としても前向きに検討してまいりたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) ありがとうございました。ただ、今、福祉福祉という話がありますけれども、あくまで、これは病床、入院の機能が維持をされないと、やはり福祉施設だけでやるということはだめであって、あくまで入院機能の維持というのは、これは形態は問わないにしても必要だということを御指摘申し上げておきます。
 実際に、地元の声を聞きますと、入院施設が維持され、遊休ベッドも有効活用できるのであれば、県立にはこだわらないという声も大きくなっています。確かに、現在の経営主体で維持されることが望ましいということは言うまでもありませんが、しかし、地域にとって大事なのは、県立の診療所が維持されることよりも、現在の地域の医療・福祉水準が維持されることなんです。県立での維持がどうしても不可能であれば、経営主体が民間となってもよいから維持してほしい、そういう声もありますし、それについて県は支援を早急に提示をしてほしい。平行線の議論をたどったままで最後の最後まで行って、やっぱりだめでしたということは、地域にとって一番困ることでありますので、幅広く案を提示していただきたいと思いますが、御所見があれば伺って終わります。
〇保健福祉部長(岩渕良昭君) 福祉の活用あるいは入院ベッドが必要だというお話もいろいろありますし、また、片一方では、計画では無床化ということもありますので、その辺、具体的なことについて個別に協議をした上で、どういう支援をできるのかということを検討してまいりたいと考えております。
〇副議長(佐々木大和君) この際、暫時休憩いたします。
   午後4時19分 休憩
出席議員(47名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
17  番 五日市   王 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 比奈子 君
22  番 高 橋 雪 文 君
23  番 嵯 峨 壱 朗 君
24  番 及 川 あつし 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時38分 再開
〇議長(渡辺幸貫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇議長(渡辺幸貫君) 日程第1、一般質問を継続いたします。飯澤匡君。
   〔25番飯澤匡君登壇〕(拍手)

前へ 次へ