平成20年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(嵯峨壱朗君) 自由民主クラブの嵯峨壱朗でございます。
 討論に先立ち、平成20年岩手・宮城内陸地震により被災されました県民の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 それでは、発議案第3号後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書に対し、以下の理由により、自由民主クラブを代表して反対の立場から討論いたします。
 第1に、本意見書は、後期高齢者医療制度を速やかに廃止することを求めておりますが、本制度は、国民皆保険制度を将来にわたり維持するため、世代間の負担関係が不明確、市町村によって保険料の格差が生じるなどというこれまでの老人保健制度の問題点を解決すべく、長年にわたって多くの関係者が議論を積み重ねた上で、高齢者の保険料と支え手である現役世代の負担を明確化し、ともに支え合う制度として設けられることとなったものであります。
 また、財政力の脆弱な市町村が多い本県においては、継続的な保険制度の維持のため、多くの自治体が新たな保険制度の創設を求めてきた結果でもあり、実際に市町村の負担を平準化することで全国的には69%の世帯が保険料の減少を見、本県においては82%の世帯の保険料が減額されると言われております。
 また、具体的な対案が示されないまま、ただもとの制度に戻せと言うのは、問題の多かった従来の高齢者医療制度に後戻りさせることにほかならず、保険料の地域格差が再び拡大するなど、結果として高齢者をさらに厳しい状況に置くものと考えるところでございます。本発議案が主張する医療制度の抜本改革を行うのならば何も現制度を廃止する必要はなく、制度のさらなる周知、改善を徹底しながら改革を行っていけばよいのではないでしょうか。
 第2に、本発議案は、原則として75歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収すること、低所得者が保険料を負担することそのものを問題視しておりますが、可能な限りの見直しは当然としても、本制度が保険制度である限り受益者の支払い能力に応じて一定の負担をお願いするものであり、必要以上に負担を減免することにより負担と給付のバランスが崩れ、高齢者間及び世代間の不公平感が増すとともに、国民皆保険制度崩壊の危機を招く可能性が生じてまいります。
 また、本意見書は、現役世代と後期高齢者の保険料負担が増加する可能性が高いことを問題視していますが、本制度は、高齢者の方の医療費の5割を税金、4割を現役世代の保険料から支援し、1割を高齢者御自身の保険料で御負担いただく仕組みでございます。保険料は2年ごとに見直され、医療費や各世代の人口が変われば高齢者の保険料は見直されることとなっております。これは、今後の世代間の負担のルールを明確にすることで現役世代の方々にも負担を納得してもらうためであって、高齢者の負担が大変だということになれば、将来、税制を見直すなどして負担を軽くすることは十分可能であります。
 さらに本意見書では、75歳以上の高齢者の健康診断の実施が努力義務となったことを懸念しておりますが、実際には本県を含めてすべての都道府県で実施されることとなっております。
 与党高齢者医療制度に関するプロジェクトチームでは、昨年10月の負担軽減策の策定に加えて、本年4月からの制度の施行状況を踏まえ、市町村広域連合などの意見も聞いて、高齢者の置かれている状況に十分配慮し、高齢者医療の円滑な運営のための負担の軽減などについてきめ細かな対応を行うべきとの結論を得て、政府はこれを踏まえた措置を早急に講ずるところであります。
 本意見書の指摘の趣旨はその大半が既に同見直し案の中で酌み取られており、現時点での本意見書の提出は、現行制度にかわる対案を持たない極めて無責任な対応と言わざるを得ません。
 そもそも本制度は、国会で民主、社民両党を含む与野党の賛成により、これまでの老人保健制度にかわる新しい高齢者医療制度を創設することが決議されたことを受けて実施された制度であります。同決議に賛同した方々がこれまでの制度に戻せと主張される態度は理解できません。さらに、みずからが国会に提出した後期高齢者医療制度廃止法案、この審議を拒否するに至っては、さらに理解に苦しむところでございます。
 我が国は、人口の実に1割以上が75歳以上の高齢者という世界に例のない高齢社会に突入しております。私たちは、その現実から目をそらすことはできません。
 また、無駄遣いさえなくせば財源は確保できるという声があります。言うまでもなく、無駄な財源のあり方については徹底的な見直しをしなければなりません。しかしながら、最も安定性が求められる医療費などの社会保障財源として、論理的に予算化することが不可能な無駄遣いを当てにすることの危うさを指摘せざるを得ません。
 高齢者の方々の医療費を国民全体で分かち合っていく仕組みは、高齢者の方々の医療を守っていくためにも必要であり、その円滑な運営を図るため、引き続き市町村関係者と十分連携しながら、制度の趣旨、必要性を丁寧に説明し、理解を得る努力をするとともに、改善すべきは速やかに改善していくことこそが必要であると考えるところでございます。
 以上の理由から、議員各位に本発議案を否決することを強く求め、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、及川幸子さん。
   〔40番及川幸子君登壇〕

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