平成20年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇29番(新居田弘文君) ただいまの郷右近議員の質疑のうち、地震災害対策について関連して質問いたします。
 現在、災害復旧に要する地方自治体への財政面からの国の支援制度は、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律によって、災害復旧国庫補助事業に、さらに国庫補助がかさ上げされる仕組みになっております。具体的には、先ほど来お話がありましたように、国の中央防災会議の意見を聞いて、本激とか、あるいは局激等に指定されることになっておりまして、先ほど知事からも答弁ありましたように、岩手県内におきましては、一関市の旧一関市、それから奥州市のうちの旧衣川村が、局激に指定される見通しであるという答弁をされたところでございます。
 そこで、この激甚災害法、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律についての問題点を指摘し、知事の御見解を伺いたいと思います。
 まず、1点目ですが、現行の激甚災害法は、伊勢湾台風襲来後の災害基本法を制定した後、国の財政面からの支援法として立法されたと承知しております。しかし、台風は、日本列島を縦断するとか、あるいは複数県に及ぶ広範囲な被害をもたらすことに比べまして、地震の場合は、局地的であるが甚大な被害を発生させるような、今回のようなケースが多いと思います。
 そこで、現在の法律では地震国日本の実態に合ったものではないとの指摘がございますが、この点についてどのように評価されておりますか、1点目にお伺いします。
 二つ目ですが、局激指定となる旧一関市、そして旧衣川村の当該市町村の復旧事業については、先ほどのかさ上げ対象となることがありますが、同地域内の県管理公共施設については、補助がかさ上げとならないようなことになりまして、同一災害にもかかわらず別扱いとなります。この仕組みに矛盾を感じておりますが、その見解をお伺いしたいと思います。
 三つ目、県は、復旧工事のため、財源の一部として災害復旧事業債を予定しており、岩手県の県債残高は増大することになります。この場合、平成20年度決算から適用される財政健全化法による財政指数にも影響が懸念されます。枠外扱いとなるべきと考えますが、その認識についてお伺いします。
 四つ目、今回の局激指定が予定されております旧一関市、旧衣川村については、新市合併5年以内であったということから、いよいよ特例を受けてその指定であると伺っておりますが、仮に今回、一関及び奥州市が合併5年を経過したとしたならば、局激指定にもなり得なかったのではないかと思っております。この指定制度にも矛盾を感じておりますが、その所見を伺います。
 五つ目、今議会に災害復旧に要する補正予算170億円余が追加提案されました。財源としては、国庫補助や地方債及び特別交付税を見込んだ内容であり、このうち災害復旧事業債は、後年度地方交付税で95%措置される旨の説明でありました。しかし、最近の地方交付税総額は減額の一途をたどり、特にも三位一体改革によって5兆円を超える地方交付税が削減され、地方財政の厳しさを加速させています。
 こういう状況の中で、後年度、国から財源措置が担保されるのか不安を払拭できないものでありますが、むしろ当該年度におきまして、国の補助金もしくは特別交付税の上積みを求めるべきと考えますが、いかが考えておりますか、お尋ねします。
 以上5点について指摘したところでありますが、これは、岩手、宮城にとどまらず全国的な共通課題でもあると思います。知事におかれましては、全国知事会を初め、地方6団体と密接な連携をとりながら、国に対して制度の見直し・充実を求めるべきと思いますが、所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 新居田弘文議員の質問にお答え申し上げます。
 激甚災害制度についてでありますが、激甚災害法のきっかけが伊勢湾台風であったことや、多数の大雨災害が激甚災害指定されてきたという経緯があることを承知しております。
 一方で、主要な地震災害に対しても、この激甚災害指定が適用されてきている例もあり、地震災害一般的に適合的ではないとは言い切れないところもあるとも感じておりますけれども、今回の地震については、被害の具体的な特徴との関係において、激甚災害制度との整合性に問題があるかどうかという観点から検討していくことが重要ではないかと考えております。
 次に、局地激甚災害の場合に、市町村の行う事業のみがかさ上げ対象となり、県が行う事業についての支援措置が適用されないという点についてでありますが、激甚災害制度は、事業実施主体となる地方公共団体の財政規模と当該団体が実施する災害復旧事業費の規模との相関関係に着目して、事業規模のウエートが大きくなる団体に対して国の補助率をかさ上げする仕組みであるため、そういうケースが生じるというような制度のつくりになっていると考えます。そういう意味で、激甚指定に限らず、県として行う災害対策については、国からさまざまな支援を得ながら、早急に実施していく所存でございます。
 次に、財政健全化指標への影響についてでありますが、今回の補正予算で、地方債を約56億円増発することとなっております。これらの地方債は、災害復旧事業債を初め、返済時には高い率の交付税算入が行われるもので、現時点では、平均しますと8割程度の金額が交付税措置されるものと見込んでおります。
 したがいまして、健全化指標のうち、地方債の発行が影響するものは、実質公債費比率と将来負担比率でありますが、いずれの指標も交付税算入分を控除して計算する仕組みとなっていますので、今回の我が県の補正予算における地方債の増発が、財政指標に大きな数字となってあらわれることはないのではないかと考えておりますけれども、これは、都道府県によっては、御指摘の懸念はあり得ると思います。
 次に、激甚災害指定に係る市町村合併の特例制度についてでありますが、激甚災害制度は、そもそも地方公共団体の財政規模と、当該団体が実施しなければならない災害復旧事業費の規模との相関関係に着目して国庫補助率をかさ上げする制度であるため、また、合併市町村は、合併後の一定期間内に財政基盤の確立に努めることが想定されているため、合併後の特例に一定の期限が設けられているということには理由があることと理解はしておりますが、合併市町村への特例措置は、他の合併特例措置との均衡を勘案するとともに、合併市町村の財政基盤の充実状況等を踏まえて設定されるべきものでありますので、5年の特例期間の、例えば満了直後に、財政基盤が脆弱な状況下で災害が生じた場合など、現実に問題となる事例が生じ得ると思います。その場合には、その被災の状況に見合った取り扱いが可能になるよう、制度や運用面での措置を国に求めていくケースもあり得ると考えます。
 次に、災害復旧に要する補正予算の財源についてでありますが、今回の補正予算編成に際しては、現行制度のもとで歳出予算の財源を確保するためには、災害復旧事業債などの約56億円の県債を増額することで賄うことが必要であり、その形で予算計上しております。
 近年、国の経済財政政策の影響等により、地方交付税総額が削減傾向にあるところでありますが、今回の災害復旧事業債などについては、後年度、確実に普通交付税の算定に盛り込まれるものと認識しております。とはいえ、今回の災害対応には多額の経費を要しますので、県内市町や宮城県とも連携しながら、関係府省等に対しても既に要望活動を行っているところでありますが、特に災害等の特別な財政需要を考慮して決定される特別交付税について、その十分な措置がなされることを本県も強く期待しているところであります。
 なお、地方団体の安定的な財政運営に必要となる地方交付税全体の増額確保について、これも非常に重要でありますので、全国知事会とも連携しながら、引き続き、強く国へ働きかけてまいりたいと思います。
 次に、激甚災害制度の見直しの必要性についてでありますが、県としても、今回の災害の実情を踏まえ、制度上の課題について検討したいと考えておりまして、改善すべき課題が整理できれば、被災地域の復旧・復興を進める上での財政的な支援とあわせて、制度面での改善についても国へ要望してまいりたいと思います。
 今回の地震による被害のより具体的な状況の把握、復旧事業の具体的な事業内容、そのための財政負担、二次災害防止のための事業の必要性やその具体的な内容、産業面・民生面で必要となる対策の具体的な内容など、制度的な課題を確認するポイントは多々あると考えておりますが、今回の災害は、内陸型地震であること、中山間地域の集落が被災していること、また、自然河川や沢、山腹などの崩壊という公共施設以外の被害が多数生じていることなど、特徴的な要素がございますので、これまでに現行法のもとで復旧対策が行われてきた他の地域との違いを合理的に説明できるような問題点を整理しながら、それを解決するための制度的な対応策を提案していくというようなことが重要になっていくのではないかと考えております。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
 日程第2 議案第1号岩手県県税条例の一部を改正する条例の専決処分に関し承認を求めることについてから日程第19 議案第19号平成20年度岩手県一般会計補正予算(第1号)まで
〇議長(渡辺幸貫君) この際、日程第2、議案第1号から日程第19、議案第19号までを一括議題といたします。
 議案第19号について、提出者の説明を求めます。川窪総務部長。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) ただいま議題とされました案件につきまして御説明申し上げます。
 議案第19号は、平成20年度岩手県一般会計補正予算であります。
 これは、去る6月14日に発生いたしました平成20年岩手・宮城内陸地震に伴う災害の復旧に要する経費等について、総額で170億8、100万円余を補正しようとするものであります。
 補正の主なものは、救助費8、300万円余、治山事業費17億2、200万余、中小企業災害復旧資金貸付金1億2、400万円余、災害関連緊急砂防事業費8億4、000万円、団体営農地等災害復旧事業費5億2、100万円余、河川等災害復旧事業費111億8、600万円余等でございます。
 次に、債務負担行為の補正は、岩手県信用保証協会が行う中小企業災害復旧資金についての信用保証契約の履行に伴う損失補償ほか2件について、新たに追加しようとするものであります。
 また、地方債の補正は、看護師等養成所施設整備ほか1件を新たに追加するとともに、災害援護資金貸付金ほか8件の限度額を変更しようとするものであります。
 以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
〇議長(渡辺幸貫君) これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。阿部富雄君。

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