平成20年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(喜多正敏君) 民主・県民会議の喜多正敏でございます。
 今議会において質問の機会をちょうだいいたしまして、先輩・同僚議員の御配慮に深く感謝申し上げます。
 去る6月14日に発生しました岩手・宮城内陸地震により不幸にも亡くなられた方、また、被災されました皆様に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 達増知事には、陣頭指揮をとられ、また、県や国、地元市町、関係者の皆様が迅速かつ懸命に復旧、御支援に当たられましたことに深く感謝申し上げますとともに、一日も早い復旧を願っております。
 さきに質問された内容と重複する部分がありますが、お許しをいただき、私からもそのまま質問いたしますので、前向きな御答弁をお願いいたします。
 最初に、平泉の世界遺産登録についてお伺いいたします。
 平泉の世界遺産登録は、残念ながら先般のイコモスの勧告では登録延期となりましたが、達増知事は、平泉の価値が否定されたわけではないとして、関係団体と協力し、外務省、文化庁やユネスコ近藤大使の御意見を伺いながら積極的に登録に取り組まれてこられました。敬意を表し、大いに期待をしているところであります。
 私も、逆転登録となった石見銀山、島根県庁、地元の大田市役所を視察・訪問し、近藤大使と緊密に連携をしながら、各国委員の関心に合わせた説明や補充資料を提供されたと伺ってまいりました。石見銀山では、銀山の遺跡や町並みなどが残っているとともに、銀山の採掘や精錬が、森林破壊や河川、大気の汚染もなく、自然と共生、調和を図りながら営まれていたことに委員の関心が持たれ、これらを強調し、評価されたとのことでした。
 そこでお伺いしますが、外務省や文化庁との連携の状況、また、各国大使館にどのような補充の説明や追加資料を提供されましたか、また、その結果にどのような感触を持たれておられるかお伺いします。
 島根県では、石見銀山来訪者受け入れ準備のため、観光客入り込み客数調査等を実施し、残っている町並みから採掘現場の坑道、間歩まで道路も狭く、距離もありますことから、パーク・アンド・ライドとしてシャトルバスを1日延べ150本往復させたものの、乗車できない観光客や、余りにも往復頻度が高いため住民から苦情が出され、町の外側を通行するように改めたなど、予想外のこともあったとのことであります。観光客は平成19年には前年の2.3倍の71万人に増加しましたが、数年のうちには落ち着くであろうと推測し、駐車場などの施設計画を立てておりました。駐車場や観光案内所とボランティアガイドの詰所が1カ所に設置され、ガイドが説明をしながら観光客を案内しており、要所要所には距離や方向を示す観光案内看板、無料休憩所、トイレなどが設置されておりました。
 本県平泉では、観光客入り込み数をどのように予測し、二次交通や駐車場、トイレ、休憩施設、ベンチなどについてどのように整備、対策をとられているかお伺いいたします。
 平泉を訪れますと、無量光院など礎石しか残っていないものもあります。文化財との関係もありますが、長期的なプロジェクトとしてこうした遺構の復元整備に取り組むことが、現代の我々がさらに平泉の価値を強力に再発信することになると思いますが、御所見をお伺いします。
 五月雨の降残してや光堂と詠んだ俳聖松尾芭蕉が江戸深川を出発したのが1689年5月16日であります。岩手県観光協会ではこの日を観光の日として定めており、来年は320年目の節目の年に当たります。俳句人口は今や1、000万人とも言われる中、岩手は四季がはっきりし、自然や歴史が豊かで、まさに吟行最適の地であります。平泉は、芭蕉の奥の細道北端の地であり、出発の地、東京江東区や山形県の芭蕉記念館、奥の細道結びの地である岐阜県大垣市など全行程1、800キロメートルに及ぶ芭蕉ゆかりの地や記念館、俳句団体などと連携して、来年度、芭蕉にちなんだ観光振興事業やPR、エージェントへの旅行商品造成などを働きかけてはどうかと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 宮城県では、各市町村や観光、産業団体による組織をつくり、デスティネーションキャンペーンを昨年はプレ、今年、本番と2年間にわたり展開しようとしております。観光企画を構成団体から募集し、プロのエージェントが参加して選定し、観光商品や催事に事業化する方式をとっており、昨年は約800件、ことしは1、100件を超えるアイデアが出され、観光に対する盛り上がり、意識向上や人材養成にも効果があったと宮城県観光課、仙台や松島町の観光団体から伺ってまいりました。
 本県においても、全市町村や観光・産業・文化・県民団体を巻き込んだ事業実施や資金拠出体制を構築するとともに、アイデア募集をすることが効果的であると思いますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、並行在来線についてお伺いいたします。
 平成22年度に見込まれている東北新幹線八戸―新青森間の開業に伴う新たな指令システムの構築については、これまで県においてJR貨物や国に応分の負担を求めてきたところであり、政府・与党の整備新幹線検討委員会において、貨物線路使用料、すなわち調整金制度の見直しについて検討されていると聞いております。
 そこで知事にお伺いいたします。貨物線路使用料制度―調整金制度の見直しについて、国における検討の状況と今後の見通しについてお伺いいたします。
 また、東北新幹線八戸―青森間の開業まで3年を切りましたが、指令システム構築の事業費、進捗状況についてお伺いいたします。
 去る6月4日に三陸鉄道とIGRの連携に関する基本協定が締結されました。私は、両者の連携によって、効率的な経営に向けたコスト削減はもとより、観光客や地元利用客の増加につながるような具体的な連携を期待しております。両者の具体の連携についてどのように進めていくのか、また、連携内容についてどのようなものを考えているのかお伺いいたします。
 また、鉄道を活用した観光客の増加については、盛岡、八幡平国立公園などの内陸と陸中海岸国立公園などの沿岸を結ぶJR山田線も含めた周遊型の列車運行も考えられるところであり、JRも含めた3者の連携は観光振興上大きな効果が期待できると思います。3者の連携による観光客の誘客に向けた取り組みについて御所見をお伺いいたします。
 次に、後期高齢者医療制度についてお伺いいたします。
 今年度から世界にも例を見ない後期高齢者医療制度が始まり、75歳以上の高齢者や65歳以上の障害のある方から大変な不安や不満の声が多く聞かれます。後期高齢者医療制度の保険料は2年に1度見直すことになっております。今後、本県の75歳以上の高齢者の増加や医療費の増加が見込まれておりますが、後期高齢者の保険料が今後どのように推移していくか、また、どのようにしていかなければならないと考えておられるか、まずお伺いいたします。
 後期高齢者の医療費が増加した場合、後期高齢者医療制度の保険料の据え置きや抑制をすれば、医療費総額をカバーするため、給付される医療や投薬内容が制約、切り下げられることが懸念されます。複数の病気や罹患率の高い高齢者に給付される医療内容や投薬が制限されれば、助かる病気が助からない、あるいは長引いて苦しむことにつながると思います。こうしたことについてどのようにお考えでしょうか、お伺いします。
 国の医療制度改革に基づき、平成20年度から平成24年度までの5年間を期間とする岩手県医療費適正化計画が策定されました。平成18年度から24年度までの医療費が推計されております。この医療費推計に対応する過去の実績値、または参考とする額があればお伺いいたします。
 計画されている健康保持の推進、効率的な医療の推進などの取り組みが効果的に実施され目標が達成された場合、70歳以上の医療費は、平成24年度においては、取り組みがなされない場合の医療費1、944億円が1、844億円と100億円の削減、75歳以上だけを見れば、1、494億円の医療費が1、413億円に削減されると予想しております。平成25年度には、厚生労働大臣は、都道府県から提出された目標の達成状況等の報告、県の意見、地域の実情等を踏まえ、一定の範囲内において他の都道府県の診療報酬と異なる定めをすることができるとされています。もし、この目標といいますか予想額を実際の医療費が上回った場合、どのようなことが考えられるか、後期高齢者医療制度への影響も含めてお伺いいたします。
 高齢者の皆さんからは、この制度についてよくわからないという声や、広域連合に議員や職員を派遣していない自治体からは、運営状況や被保険者の声、情報が伝わってこないという声も聞かれます。県としても、減免制度や新たな軽減措置を含め、わかりやすい説明や資料の提供、市町村と広域連合、県との情報交換や意思疎通の場を定期的に行う必要があると思いますが、いかがでしょうか、現状を含めてお伺いいたします。
 欠陥の多い制度でありますが、当面この制度を県民やお年寄りの立場に立った運営を行うことが重要であります。県としても、連合に保険医療のわかる職員を派遣し、日ごろから現場の実情を把握し、必要な支援を行うべきであると思いますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
 大変な苦労をして戦前、戦中、戦後を生き抜いてこられ、あるいは障害を持った高齢者の皆様に安心して暮らしていただくために、県としても制度や運営の改善をすべき点は主体的に取り組み、国に対しても積極的に提言、要望していくことが欠かせないと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 岩手県地域ケア体制整備構想が策定されました。この構想によりますと、高齢化により、要介護・要支援認定者数は、平成17年の5万6、000人から平成37年には8万2、000人に増加すると見込まれ、一方、医療療養病床は、平成19年4月の2、586床から平成23年度末には2、402床に184床減少、介護療養病床は876床からゼロに、合計1、060床の減少とされております。また、医療療養病床及び介護療養病床から介護老人保健施設、有料老人ホームに528床が転換する計画であり、また、転換意向はあるものの、転換先未確定は569床となっております。
 そこでお伺いします。介護老人保健施設への転換助成措置について、本構想実現のため現時点で県の予算負担をどのように考えておられるのかお伺いいたします。
 介護老人福祉施設、いわゆる特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、認知症対応型共同生活介護、いわゆる認知症グループホーム、特定施設入居者生活介護の利用状況、また、特定養護老人ホームの入所待機者がどのようになっているかお伺いいたします。
 医療の必要性が低いと想定されている医療区分1の中において、1日8回未満の喀たん吸引、胃ろう管理や経鼻経管栄養、脳梗塞や徘回などによる認知症などの患者について2006年7月に診療報酬が30%以上も引き下げられ、病院の経営採算の面からも課題とされております。日本医師会の2006年10月の調査報告では、医療区分1の中で、これらの症例の方のうち、在宅や施設の受け入れ態勢が整っていない方が4割を占めるという報告がなされております。本県の患者さんの実態や病院の対応について把握しているでしょうか。県としての対応策についてもお伺いします。
 入院が困難となれば介護施設での対応が考えられますが、本県の介護施設で、こうした患者さんに対応できる医師やスタッフ、設備器具などを備えた介護施設とベッド数はどの程度あるでしょうか、お伺いいたします。
 この構想を策定するに当たり、対象となる入院患者や介護保険施設利用者、その家族の声をどのように把握し、反映されたかお伺いします。
 こうした構想や計画は、県民に十分理解をしていただくことが不可欠であります。高齢者のみの世帯や家族と離れた独居高齢者がふえ、在宅介護が困難さを増している中、今のままだとこうなるという実態について県民に周知を図り、意見を集め、協働で対応することが重要と思いますが、今後どのように対処するのかお伺いします。
 次に、燃油価格高騰対策についてお伺いします。
 現下の未曾有の燃油高騰は県民生活を直撃し、本県産業界においても大きな影響を及ぼしております。各方面の事業所や滝沢村で開催しました農政懇談会の出席者からは、価格転嫁も難しく、採算割れで経営の継続が困難であるという実に切実な声が聞かれました。県の支援、対策を強く求めるものでありますが、こうした燃油価格の高騰に対する農業、水産業などの第1次産業、トラック、バスなどの輸送業界や中小企業に対する影響をそれぞれどのように把握されているか、また、県ではどのような対策、支援を行おうとしておられるかお伺いいたします。
 特に酪農家は、飼料や資材価格の高騰などにより大変厳しい状況にあります。その対策と支援についてもお伺いいたします。
 流通拡大のため産直施設が各地で運営されておりますが、このような折、盛岡でことし10月に県内関係団体も参加し、第13回全国朝市サミット2008inもりおかが開催されますが、県の評価と支援についてお伺いいたします。
 次に、産業振興についてお伺いいたします。
 本県は、多様な自然、地勢、長い歴史、かつ広大な県土を擁しており、こうした地域ごとの産業構造の相違などによる構造的な要因を背景として地域間格差の問題が生じていると思われます。しかし、地域間格差の是正には、まずはそれぞれの地域資源や地域特有の強みを生かすことが欠かせないところであります。このためには、各地域の多様な技術やシステムの革新、イノベーションによる新事業、新産業を創出する戦略を策定することが必要であります。この戦略のもと、各機関がそれぞれの組織の壁を超え、オール岩手として、本県ならではの産業振興、技術振興に取り組む仕組みをつくり上げることが有効であると存じますが、御所見をお伺いいたします。
 こうした戦略は、先端産業分野のみならず、酒造、みそ、しょうゆ、漆産業、鉄鋼金属、木材産業や建設業などの地場産業振興などについても重要であります。かつて本県においても業界診断や産地診断、構造改善診断などが行われ、業界ごとの総合的な振興が図られておりました。また、大学や公設試験研究機関にはこうした地場産業などに関する技術シーズも多いと認識しております。技術振興や活用を基軸としながら、業種別の総合的な振興戦略を策定すべきであると思いますが、御所見をお伺いいたします。
 本県には、秀衡塗、浄法寺塗、岩谷堂箪笥、南部鉄器など、国の指定を受けた四つの伝統工芸品があります。これらは、本県で産する原材料をもとに、長い歴史の中で磨かれた技術により受け継がれてまいりましたが、生活様式の変化や後継者不足などから、生産額も低下するなど深刻な課題を抱えております。
 県では、漆をいわて漆ブランドとして振興を目指しており、日光社寺の文化財復元で大幅な需要も見込まれております。漆の原木育成や漆かき職人の養成、さらに付加価値を高めるためには、原材料を原材料として移出するだけではなく、漆器、岩谷堂箪笥、南部鉄器などの最終製品の振興が欠かせないところであります。県では、こうした伝統工芸品産業の現状をどのように意識され、どう位置づけしているのかお伺いいたします。
 私は、商工文教委員会において伝統工芸産業の振興計画策定の提言を行った経緯がありますが、その後どのように取り組まれておられるか、あわせてお伺いいたします。
 次に、本県地場産業を支える技能者の能力開発についてお伺いいたします。
 技能者の技術・技能は、県民生活に密接した建築や電気設備などの住宅関連産業を初め、溶接や金型などの製造関連産業など地場産業の発展を支えるものであります。技能者の職業訓練については、県内14地区に地域の事業主が集まって、国の認定のもとに助成を受けて行う認定職業訓練校がございます。この認定職業訓練校においても、近年の少子化や多様な進路選択の結果もあり技能職種への就業者が減少しており、補助対象となる新採用などの訓練生数は、平成10年度の700人台から平成19年度の140人台へと大幅に減少し、国の補助基準である訓練科ごとの訓練生5人以上を満たすことが困難な状況になっており、入校時に5人要件を満たしても、その後訓練生の退校などで5人未満になった場合は予定した補助金を受け取ることができなくなるため、訓練に要した教材費や講師謝金などの訓練校の費用負担が多くなり、規模の大きくない当該訓練団体に過大な負担となり、訓練校の運営自体にも影響を及ぼしております。
 技術・技能はものづくり産業振興の基礎であり、高齢化や就業者の減少が進行している中で、ものづくりを主体とする地場産業の担い手である若い技能者の養成がこのような状況では本県産業の行く末が心配されます。こうしたことについて、訓練協会や関連業界、地元市町村などと連携を図りながら、県の力強い指導、支援が必要と思われますし、国に補助基準の見直しを積極的に働きかけるべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 建築用木材のプレカット事業を目的に、地域林業経営確立林業構造改善事業により設立されました盛岡中央プレカット事業協同組合が事業中止となったと報道されました。地域森林資源の活用、流通拡大のためこの事業が実施されたわけでありますが、事業中止に至った事情についてお伺いいたします。
 また、この事業へ国、県などの補助金が交付されておりますが、今後、県としての対応についてお伺いします。
 工場や設備はそれぞれ固有に設計、設置されているものであり、転用は極めて困難、無駄であります。この工場は承継されることが望ましく、プレカットや乾燥などの再活用の方策が考えられないかお伺いいたします。
 森林は、治山治水、地球温暖化防止などにおいても重要な機能を果たしておりますが、内外の木材価格差や林業従事者の高齢化など困難な経営環境にあります。これにめげずに、林業家や森林組合、製材や設計、建設業界などの関連業界や団体と連携を深め、品質や生産性の向上、コスト管理に努められ、県産材の活用、需要拡大などに今後とも積極的に努められるよう期待したいと存じますが、いかがでしょうか。
 最後に、ふるさと納税制度についてお伺いいたします。
 本県を含む地方財政は大変厳しい状況の中、この4月30日に、地方税法の改正によりふるさと納税制度が発足しました。このふるさと納税制度についての見解と取り組み、現在までのふるさと納税の実績についてお伺いいたします。
 所管は税務課とのことですが、ふるさと納税制度を通じ、歳入確保のみならず、本県の情報発信を行い、いろいろな面で岩手県を応援していただく仕組みづくりが重要であります。そうした観点から、担当部署は横断的に考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 納税された寄附金の使い道について、本県のホームページでは、ふるさと岩手応援寄付金を、豊かな自然、魅力ある文化、快適な暮らしを守り、我が県の未来をよりよいものにするために活用しますとし、次のページで、国体事業や自由選択も含め6項目6行で記載されております。現下の地震災害復旧なども含め、もう少し詳しく、応援していただこうとする熱意が伝わるような表現に工夫してはどうかと思いますが、いかがでしょうか。
 京都府では、ふるさと納税制度の寄附金を活用する文化財を守り伝える京都府基金を創設し、奈良県では、県外在住者が5、000円以上寄附した場合は、大和茶など県産品から1品、5万円以上の場合は県の推奨する黒米カレーセットなど奈良のうまいものがもらえるとのことであります。他県におけるこうした工夫、取り組みについてどのような見解をお持ちであるかお伺いします。
 これで私の一般質問を終わります。答弁内容によりましては再質問をさせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 喜多正敏議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、平泉の世界遺産登録におけるイコモス勧告後の県の活動等についてでありますが、イコモスの勧告後、速やかに外務省、文化庁等と指摘内容の分析と今後の対応について協議をしたほか、パリのユネスコ日本政府代表部に文化庁、県及び関係市町から職員を派遣し、近藤大使とともに委員国への説明に当たっての論点を整理しながら説明資料を作成したところであり、推薦国として一体となって取り組んでいるところであります。
 また、近藤大使との協議においては、大使に十分な情報提供ができたものと思っているところでありますが、特に大使は、ことし3月に平泉を視察されて以来、平泉について熱心に学ばれており、現在行われている委員国への説明に当たって非常に心強く感じております。
 さらに、私と副知事が世界遺産委員会の委員国の関係大使館などを訪問し、平泉のパンフレットを用いながら、平泉の現状や、また地元の思いなどを説明してきたところでありますが、各国大使らの好意的な反応もあり、平泉への理解が少しずつ広がっていると感じております。
 次に、松尾芭蕉を活用した観光振興についてでありますが、松尾芭蕉が元禄2年、平泉を訪れ、二つの俳句を詠んでいることは広く知られており、芭蕉と本県とのかかわりに着目した観光振興は、重要であると考えます。
 これまで、県では、全国規模の旅行雑誌に働きかけ、芭蕉と平泉の特集記事を掲載いただいたほか、東北観光推進機構との連携のもとに、奥の細道ゆかりの地をテーマにしたモデルコースの商品化を提案してまいりました。このほか、新・奥の細道として42コースの自然歩道を整備するなど、松尾芭蕉、そして奥の細道を活用した観光振興に取り組んできたところであります。
 来年は、松尾芭蕉が奥の細道に出発して320周年ということで、新たな旅行商品の造成や県外の芭蕉ゆかりの地と連携した情報発信などについて検討を進めてまいります。
 次に、貨物線路使用料制度、調整金制度の見直しについてでありますが、昨年12月、政府・与党整備新幹線検討委員会が設置され、その中で本県が求める貨物線路使用料制度の見直しも含む並行在来線の諸問題についても検討されてきたところでありますが、当初予定していた昨年度末までには結論が出されなかったところであります。
 県としては、早期かつ適切な見直しを実現するため、改めて4月以降、政府・与党関係機関等に対し、繰り返し要請を重ねてきたところであります。
 こうした中、先月初め、与党の整備新幹線建設促進プロジェクトチームによる会議が再開され、引き続く6月19日の会議では、来年度の政府予算編成に向け、並行在来線の財源や運行のあり方についても検討を進めるとの方針が決定されたところであります。
 この検討におきまして、本県が求める貨物線路使用料制度の見直し、すなわち、指令システム構築経費を含む資本費の貨物線路使用料への早期かつ適切な算入が実現されるよう、即刻、県は、関係市町村とともに政府・与党関係機関等に要請したところであります。
 県としては、8月の政府予算概算要求までが見直しの山場ととらえており、今月中旬に並行在来線関係12道県による合同要請を計画しておりますほか、8月上旬には、整備新幹線関係18都道府県期成同盟会による要請を実施することとしており、今後あらゆる機会をとらえて政府・与党関係機関等に強力に働きかけを行ってまいりたいと思います。
 次に、後期高齢者医療制度の制度や運営に関する所見についてでありますが、後期高齢者医療制度については、地方自治体として、制度施行以来、法令に基づく取り組みを進めているところでありますが、一方で、制度のわかりにくさや保険料の負担のあり方等に関するさまざまな意見が寄せられたところであり、こうした国民の声に真摯に耳を傾け、まずは、社会保障の制度設計に責務を有する国において、適切に対応することが求められていると考えております。
 県としては、国に対し、後期高齢者医療制度の安定的な運営を確保する観点から、必要な財政支援の着実な実施などについて要望してきたほか、今般、政府・与党が新たな負担軽減策を打ち出すに当たっては、全国知事会を通じて、政府・与党に対し、地方に財政負担を転嫁しないこと、今まで以上に制度の周知徹底や理解を図り、迅速に制度の定着を図ることなどの申し入れを行ってきたところであります。
 今後とも、一層の制度の適切な運営を確保する観点から、県や広域連合、市町村に寄せられた県民からの御意見や広域連合、市町村から示される制度運営における課題や要望を十分踏まえ、県民の立場に立って、国に対して引き続き要望を行ってまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、平泉の二次交通や駐車場対策などについてでありますが、平泉は、年間200万人が訪れる観光地であり、これまで春の藤原まつりなど、短期間に延べ20万人が訪れる観光客のピークの状況などを踏まえ、平泉の文化遺産活用推進アクションプランに基づき、県及び関係市町が中心となって、駐車場や休憩施設、二次交通などの整備を進めているところであります。
 これまでに、観光案内板を12基、ユニバーサルデザインに対応したトイレを12カ所整備したほか、一ノ関駅から中尊寺への直通バスを1日2便開設、平泉町内の巡回バスを11便から21便に増便、駐車場への誘導・分散を図るための案内看板を10カ所設置するなど、二次交通や駐車場対策も講じてきたところであります。
 世界遺産登録を機に、今後、奥州市、一関市を含めた世界遺産エリアへの来訪者が増大することが想定されることから、引き続き、地元関係市町と連携しながら、来訪者の受け入れ態勢の整備・充実に努めてまいります。
 次に、全市町村や産業、観光、文化、県民団体を巻き込んだ事業体制についてでありますが、県では昨年5月に、いわて世界遺産観光推進会議を設け、県や市町村、商工団体や観光関係団体のほか、旅行会社や報道機関など53団体が一体となって、全県への観光客の誘致拡大に向けた方策を検討してきたところであります。
 また、昨年の北東北デスティネーションキャンペーンなどで培った経験を生かし、本年3月には、県、市町村、観光関係団体に加え、商工団体やJR東日本など112団体による実行委員会を立ち上げ、昨日から、いわて・平泉観光キャンペーンを展開しているところであり、祭りや食など地域ならではの情報発信、のぼりやおもてなしシールなどを掲げて受け入れ態勢の整備などに取り組んでおります。
 今後におきましても、県内外の先進事例について情報収集を行い、本県の観光施策に反映させ、地域が一体となった観光振興を進めてまいります。
 次に、JR、三陸鉄道、IGR3者の連携によります観光客誘致に向けた取り組みについてでありますが、県内では現在、盛岡―久慈間の三陸トレイン北山崎号や仙台-八戸間のリアスシーライナー等、JRと三陸鉄道の相互乗り入れなどが進められており、昨年の北東北デスティネーション・キャンペーンなどの効果も相まって、三陸鉄道の観光利用収入が前年比約50%も増加したことから、今回のいわて・平泉観光キャンぺーンにおきましても、JR、IGR、三陸鉄道との連携に期待しているところであります。
 今後は、東日本エリア全体に販売網を持つJRを中心に、県央地域及び県北地域とのネットワークを有するIGR、及び沿岸地域の観光開発や車内イベントに実績を持つ三陸鉄道の3者それぞれの強みを生かした方策をともに検討し、沿線市町村との連携を図りながら、情報発信力の強化や周遊列車の運行など、実現可能な取り組みを促進してまいりたいと考えております。
 次に、トラック、バス等の輸送業界や中小企業に対する影響と燃油価格高騰に対する対策と支援についてでありますが、県においては、先月、岩手県中小企業団体中央会を通じて、運輸、燃料小売を初めとする14業種の組合を対象とした、原油価格の上昇による中小企業への影響についての調査を実施したところであります。
 この調査によりますと、前回の2月調査時点と比較して原材料がさらに上昇と回答した業種は13業種、価格転嫁は困難と回答した業種は13業種、企業収益が減少と回答した業種は14業種、企業経営への影響が深刻な状況と回答した業種は13業種となっており、前回調査時点と同様、ほとんどの業種で厳しい状況が続いております。
 また、トラック、バスなどの輸送業界、特にも企業規模が小さいトラック事業においては、軽油価格上昇により経営に相当影響が出ているものと考えられますが、今回の調査においては、燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建て運賃として設定する燃料サーチャージ制を導入する動きも見られます。
 県におきましては、昨年12月17日から原油高に伴う特別相談窓口を設置し、経営相談や金融相談に応じるとともに、また、県単融資制度の中小企業の経営安定資金に原油高対策に係る別枠を設け利用促進を図るなど、原油価格高騰の影響を受けている中小企業者の支援に努めているところであります。
 今後におきましても、中小企業者のニーズを的確に把握しながら、さらなる対策の必要性について検討するとともに、国に対しても、燃油価格高騰について対策を講ずるよう要望してまいります。
 次に、新事業、新産業を創出する戦略の策定についてでありますが、県では、平成12年に新岩手県科学技術振興指針を策定し、新産業創出と産業の高付加価値化に向けて、おおむね10年先を見据えた科学技術振興の推進方向を明らかにし、さまざまな取り組みを進めてきたところであります。
 策定から8年を経過したことから、社会経済情勢や環境の変化に対応した見直しを今後進めていくこととしておりますが、見直しに当たりましては、これまでの取り組みや成果を的確に評価するとともに、産学官の幅広い英知を結集して、地域イノベーション創出に向けた戦略を策定する必要があると認識しております。
 今後、見直しを進めるに当たり、趣旨を踏まえてまいりたいと考えております。
 次に、地場産業の各業種別の振興戦略策定についてでありますが、本年1月に策定したいわて希望創造プランにおける柱の一つとして、地域に根差し世界に挑む産業の振興を掲げ、地域の産業支援機関や研究機関の連携を強化し、企業ニーズに対応した体系的な支援体制を構築することとしております。
 具体的には、四つの各広域振興圏ごとに、地場産業の振興やものづくり産業の集積が位置づけられており、平成22年までの目標値や工程表を定め、大学や試験研究機関、企業、市町村等と役割分担を明らかにして取り組んでいるところであります。
 次に、本県の伝統工芸産業の現状認識についてでありますが、本県の伝統的工芸品産業は、それぞれ地域資源を活用したものづくり産業のみならず、文化や伝統を受け継ぐ産業として、今後ともその振興を図る必要があると認識しております。
 しかしながら、消費者ニーズの変化に伴う需要の伸び悩みや技能者の高齢化等による担い手の減少など、伝統的工芸品産業は厳しい状況下にあります。
 こうした中、南部鉄器など欧米からの需要が増加している品目もありますことから、今後は、生活様式の変化や消費者ニーズに対応し、デザインや機能性に工夫を凝らした新商品の開発や東アジアを初めとする新たな市場開拓が重要と認識しております。
 次に、伝統的工芸品産業に関する振興計画の策定についてでありますが、伝統的工芸品につきましては、各広域振興圏単位で振興を図ることとしており、特にも、県南広域振興局においては、平成18年12月に岩谷堂箪笥、南部鉄器、秀衡塗を対象とした伝統的地場産業振興戦略を策定しましたほか、平成19年2月に、二戸地方振興局が中心となり、浄法寺漆振興戦略を策定しているところであります。
 今後とも、当該振興戦略に掲げた目標の実現に向け、本庁と関係振興局を初め、工業技術センターなど関係機関が連携を図りながら総合的な支援を行い、本県の伝統的工芸品産業の振興に取り組んでまいる考えであります。
 次に、技能者の養成についてでありますが、県では、これまでもたびたび国に対し制度の改正を働きかけてきたところでありますが、国からは、費用対効果の観点から、さらなる基準緩和は困難との見解を示されております。
 しかしながら、技能者の養成は重要な課題でありますことから、今後とも引き続き、国に対する補助要件緩和の要望等を行っていきますほか、職業能力開発協会を初め、地元市町村との連携を図りながら、会員業種の拡大等の運営指導を行うなど、訓練強化への支援に取り組んでまいる考えであります。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) IGRの指令システム構築についてでありますが、この指令システムというのは、列車集中制御装置、自動進路制御装置、あるいは電力指令システムなどから成りますけれども、目下IGRにおきまして、JR貨物との協議のもと、事業内容及び事業費の精査も進めておりまして、総事業費は、現時点では約21億7、000万円余と見込んでいるところでありますが、今後、列車の安全運行確保を最優先に、可能な限り既存機器の移設をすることなどの対応によって、事業費を圧縮できるよう努めていくことといたしております。
 このうち、本年度の事業費につきましては、当初約10億円弱と見込んでおりましたけれども、工事工程を精査いたしました結果、一部工事を後年度に繰り延べたことなどから、約5億6、000万円と見込んでいるところであります。
 現在は、通信ケーブル等の改修工事の設計に着手しており、今後、順次、列車集中制御システム等の指令システム本体の詳細設計を実施するなど、本格的な機器製作に着手する予定となっております。
 県といたしましては、平成22年度中の完成に向け、計画どおりに工事が進むようIGRを支援してまいりたいと存じます。
 次に、三陸鉄道とIGRの連携についてでありますが、三陸鉄道とIGRは、ともに厳しい経営環境の中にありまして、今後も地域の交通手段としての役割を果たし続けるためには、互いの強みをそれぞれの経営に生かし、より効率的かつ効果的な経営を図ることが必要であるとの共通認識に立ちまして、去る6月4日に、知事の立ち会いのもと、連携協定を締結したところであります。
 早速、同日、三陸鉄道、IGR、それに県も加わった研究会を立ち上げまして、これまで3回開催されまして、具体的な検討を行っているところであります。
 研究テーマといたしましては、設備、運転規制、技術継承等の社員研修の合同実施のほか、それぞれの地域の祭りやイベントの相互紹介、周遊型旅行商品や企画乗車券の共同開発等が挙げられたところでございまして、今後、テーマ別に分科会による検討を進め、可能なものから着手することとなったところであります。
 研究会では、両社から積極的な提案や意見が出されたところでございまして、連携による経営改善に向けた両社の強い意気込みが感じられたところであります。
 県といたしましては、三陸鉄道、IGR両社の検討がまさしく軌道に乗りつつありますことから、両社の主体的な取り組みにゆだねつつ、より効率的かつ効果的な経営を図るという所期の目的が達成されますよう、必要に応じて助言を行ってまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長岩渕良昭君登壇〕
〇保健福祉部長(岩渕良昭君) まず、後期高齢者医療制度の保険料の今後の推移についてでありますが、保険料は、医療費をベースに算定するものでありますが、この医療費が中長期的にどの程度の規模になるかは単純に推計できないことから、保険料の推移につきましても、一律に推計することは難しいと考えております。こうした制限はありますが、過去5年間の1人当たり老人医療給付費の伸び率などに基づき粗く推計しますと、医療費は増加し、これに連動し保険料も増加することが予測されるところであります。
 しかしながら、医療保険制度を持続可能なものにするためには、保険料を適正な水準に設定する必要があり、中長期的には、メタボリックシンドロームに重点化した生活習慣病対策の推進に取り組むとともに、短期的には、医療機関の機能分担と連携体制の構築、療養病床から老人保健施設への転換などを進め、医療費の伸びが適切になるよう取り組んでいく必要があると考えております。
 次に、給付される医療内容や投薬の制限についてでありますが、後期高齢者医療制度において提供される医療内容等については、75歳以上と74歳以下で受けられる医療は基本的には違いはなく、議員が懸念されているように、高齢者に給付される医療内容や投薬が制限されることはないと聞いております。
 次に、医療費推計に対応する過去の実績値についてでありますが、3年に1回公表されている県民医療費の近年の状況を見ますと、平成14年度の3、580億円に対し、17年度は3、631億円と増加の傾向にあります。また、国民健康保険の療養の給付状況を見ますと、平成14年度の1、907億円に対し、18年度は2、045億円と7.2%増加しております。
 次に、実際の医療費が医療費の予想額を上回った場合についてでありますが、医療費適正化計画を定めている高齢者の医療の確保に関する法律におきまして、国は、医療の効率的な提供の推進に関する目標等の実績評価を踏まえ、都道府県と協議の上、診療報酬について特例を設定することができるとされております。
 しかし、現時点では、実際の医療費が予想額を上回ったことをもって特例が設定されるものかどうかや、特例の適用基準や評価の具体的手法について明らかにされていないところであります。したがいまして、後期高齢者医療制度への影響についても、現時点では不明でありますが、今後、中間評価―平成22年度ですが―の状況を踏まえ、国が示すこととしている適用基準の動向を注視していきたいと考えております。
 次に、制度の説明や資料の提供等についてでありますが、後期高齢者医療制度については、広域連合と市町村が中心となって、制度の周知や広報に取り組んできたところであります。
 県におきましても、こうした取り組みに加え、必要な制度の周知に努めるとともに、広域連合と共同で各種研修会や説明会を開催し、市町村職員の理解の促進に努めてきたところであります。
 一方、今般、後期高齢者医療制度については、新たに制度の見直しが行われ、所得の低い方への配慮として、さらなる保険料の軽減や保険料を支払えない事情のある方については、個別の減免を含めたきめ細やかな相談体制の充実などが示されたところであり、こうした取り組みが着実に運用されるよう、広域連合及び市町村との一層の連携体制の確保に努めてまいります。
 次に、広域連合への職員の派遣についてでありますが、県におきましては、これまで、運営の主体となる広域連合の設置に向け、その前段階の組織である設立準備委員会の組織や運営の方針などについて、市町村との合意形成に取り組むなど、積極的な支援を行ってきたところでありますが、今般、新たに制度の見直しが行われるなど、対応すべき課題が生じており、県としては、国と広域連合、市町村とのパイプ役を担う役割の重要性が高まっており、広域連合との連携体制をさらに深めていく必要があると考えていることから、職員の派遣の必要性について、広域連合の考えを伺いながら、適切に検討してまいりたいと考えております。
 次に、療養病床から介護老人保健施設等への転換に伴う県の予算負担についてでありますが、医療療養病床から介護老人保健施設等に転換する場合には、国、県、医療保険者の負担により補助する制度があります。今年度は、医療療養病床から転換予定がないことから、県は、予算措置していないところであります。
 現在の転換計画では、転換先を未定とする医療機関も多く、転換に要する県の財政負担総額を示すことは難しいのですが、今後、本年5月に実施した最新の医療機関に対する意向調査結果を踏まえ、市町村との調整後の転換計画ができた段階で、県負担総額の概要が明らかになることから、必要な予算措置を講じて転換を支援してまいりたいと考えております。
 なお、介護療養病床から介護老人保健施設等に転換する場合には、市町村が助成するとなっております。
 次に、特別養護老人ホームなどの利用状況及び入所待機者についてでありますが、特別養護老人ホームや認知症対応型グループホームの利用状況はおおむね100%、介護老人保健施設や特定施設入居者生活介護、これは、介護保険を適用している有料老人ホーム等でございますが、その利用状況は約90%となっております。
 また、平成19年3月末における特別養護老人ホームへの入所待機者は6、492人であり、うち在宅の要介護3以上の方は1、302人であります。
 次に、療養病床に入院している医療区分1の実態や病院の今後の対応についてでありますが、本年5月時点で県が実施した調査によれば、医療療養病床に入院している患者1、817人中、医療区分1の方は668人、36.8%となっております。
 なお、平成18年10月の日本医師会の調査の県別内訳は公表されておりませんが、同年10月に県が実施した医療療養病床及び介護療養病床に入院している方の3分の1抽出調査によりますと、自宅での介護者の有無について、日中、夜間とも介護ができる人がいないと答えた人が874人中480人、55%でありました。
 一方、医療機関においては、このような入院患者の状態に対応し、医療療養病床として存続するか、介護老人保健施設等に転換するかなどについて、今後の運営の方向について検討している状況にあります。
 県といたしましては、本年5月に実施した最新の医療機関に対する意向調査結果を精査し、市町村との調整を経て、入院している方が不安を抱くことのないよう、受け皿となる介護老人保健施設等への円滑な転換を促進していくなど、介護サービス基盤の整備に努めてまいります。
 次に、介護施設のベッド数についてでありますが、常勤の医師を配置し、医学的管理のもとで介護サービスを提供できる介護老人保健施設は、平成20年6月末現在で60施設、5、366床となっております。
 なお、新たに制度化された介護療養型老人保健施設においては、従来の介護老人保健施設に比べて医療機能が強化されていることから、夜間の看護など、医療ニーズの高い要介護高齢者の受け皿になるものと考えております。
 次に、本構想策定に当たっての意見の把握及び反映状況についてでありますが、構想策定に当たりましては、入院患者の実情を把握している医師や、介護サービス利用者やその家族の状況を最も把握している介護支援専門員など、地域の実態を知る方々に検討していただいたところであります。
 また、県内8カ所で地域説明会を開催し、構想の内容の周知を図るとともに、パブリックコメントを実施し、広く意見をいただいたところであります。
 例えば、医療や介護や暮らしを総合的に支える仕組みをきちんと整備してほしい、療養病床の転換計画では地域の実情を考慮してほしいといった御意見をいただきましたが、これらについては構想に反映できたものと考えております。
 次に、岩手県地域ケア体制整備構想の周知についてでありますが、本構想は、介護、医療、福祉が連携した地域ケアの望ましい将来像などについて定めたものであり、具体的な施策や必要なサービス見込み量につきましては、介護保険事業支援計画に反映させていくこととなります。
 このため、今年度、策定予定の第4期介護保険事業支援計画の地域説明会においても、構想の内容について改めて説明し、県民の方々に一層の理解と協力を求めていきたいと考えております。このほか、県が開催する市町村の担当者会議や介護支援専門員などの各種研修会などを通じながら、関係者に対する意識啓発も行っていくこととしております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、燃油価格高騰による第1次産業への影響とその対応策についてでございますが、県内の燃油価格は、この1年間でA重油及び灯油が1.5倍、軽油が1.3倍に上昇し、これに伴う生産コストも、施設園芸や林業の素材生産部門において前年比5%から10%、漁船漁業におきましては約30%上昇しており、本県の農林漁業経営に大きな影響を及ぼしていると認識いたしております。
 このため県は、本年1月に、農業、林業、水産業の分野ごとに関係機関・団体と連携した対策会議を設置し、施設園芸における省エネ生産技術の普及や林業における軽油引取税の免税制度の周知徹底、漁船漁業における省エネ操業のための技術情報の提供等を実施するとともに、本年5月と6月には、国に対して原油価格高騰対策の充実強化等を提案したところでございます。
 今後におきましては、先般決定した国の対策を積極的に活用するとともに、本年度から実施しておりますいわて希望農業担い手応援事業や農業改良資金などを活用した省エネ施設等の導入支援、さらには木質バイオマスの産業利用の促進等により、燃油価格の高騰による本県農林漁業経営への影響の緩和に努めてまいります。
 次に、酪農家に対する経営支援策についてでございますが、酪農経営は飼料価格等の高騰により厳しい状況にありますことから、国におきましては、本年2月と6月に酪農家支援のための緊急対策を講じたところでございます。また、乳価につきましても、本年4月からキロ当たり3円、約4%引き上げられたところでございます。
 今回講じられた緊急対策は、飼料価格高騰の影響を最小限に抑制するため、自給飼料基盤を強化し、生産性向上に取り組む酪農家に対して搾乳牛1頭当たり2万5、500円の奨励金を交付するものでございまして、県といたしましては、多くの酪農家がこの対策を利用できるよう、国が示した要件を本県の実情に即して緩和し、実施することとしたところでございます。
 また、飼養管理技術の改善による生産性の向上や自給飼料基盤の活用などを積極的に支援するとともに、酪農家の所得向上を図るため、本年度から新たに、本県独自に開発した受精卵移植技術を活用した和牛受精卵移植の普及を推進しているところでございます。
 今後とも、こうした対策を総合的に講じることにより酪農家の経営を支援してまいります。
 次に、全国朝市サミットの評価、支援についてでございますが、朝市は、産直施設とともに地産地消推進の拠点として、また、地域住民の交流の場や観光資源としても大切に守り育てる必要があると考えております。
 今回の朝市サミットは、平成14年に全国で初めて本県で開催した地産地消全国の集い・いわて大会以来の全国規模の地産地消運動の関連イベントであり、本県の安全・安心で高品質な農林水産物を広く全国にPRする絶好の機会ととらえているところでございます。現在、盛岡市が中心となって実行委員会を設立し開催の準備を進めているところであり、県といたしましても、盛岡地方振興局がこの委員会に参画するとともに、県内各地の産直施設などへの参加の呼びかけや県の広報媒体を活用した情報発信などを通じ、イベントの成功に向けて支援してまいりたいと考えております。
 次に、盛岡中央プレカット事業協同組合についてのお尋ねでございます。
 まず、この組合が事業中止に至った事情でございますが、この組合は平成14年の操業開始以来厳しい経営状況が続いておりましたが、昨年の改正建築基準法の施行等による住宅着工戸数の大幅な減少や取引業者の倒産等の影響を受け、事業中止に至ったものと聞いております。
 次に、国及び県の補助金の取り扱いについてでございますが、事業の中止に際し、県は債権保全の手続を行い、できる限り補助金を回収するよう努めているところでございます。今後、破産手続の結果、補助金の回収が不可能となった場合には、過去に国庫補助金相当額の返納を免除されている類似事例がありますことから、国に対し補助金返納の免除申請を行いたいと考えております。
 なお、県補助金につきましては、国庫補助金の取り扱いを踏まえ、さらに検討してまいりたいと考えております。
 次に、工場の活用についてでございますが、県といたしましても、本県林業振興の観点からこの施設が有効に活用されることが望ましいと考えておりまして、先般、主たる債権者である農林漁業金融公庫等に対して協力を要請したところでございます。
 次に、今後の林業振興についてでございますが、森林所有者から木材加工業者、建築関係者まで川上、川下が連携し、低コストで安定的に県産材を供給するとともに、消費者ニーズに対応した製品の提供や販路拡大を図ることが重要であると考えております。
 このため、森林所有者にかわって地域単位の森林経営を担う地域けん引型経営体の育成、高性能林業機械の導入支援等による低コスト素材生産の促進や木材加工施設の整備等を支援するとともに、地域の団体等で組織する木材需給協議会の開催による大口需要者への原木の安定供給や県内外での商談会の開催や新商品の開発・販売促進活動による新たな販路の拡大などに取り組み、県産材の需要拡大に努め、本県の林業振興を図ってまいります。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) ふるさと納税についてでございますが、この制度につきましては、創設に至る間さまざまな意見があったものと承知しておりますが、法律上の制度として成立いたしましたことから、本県といたしましても、岩手を応援していただく仕組みといたしまして、できるだけ活用できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 これまでの取り組みと実績につきましては、ホームページへの掲載やパンフレットの作成、県人会を初めとするさまざまな会議、イベント等でのPRなどに取り組んでおりまして、これまで5件、22万5、000円の寄附をいただいているところでございます。
 次に、この制度の担当課についてでありますが、この制度は、国民の皆様からは税の一部をふるさとへ納めるものという受けとめ方もされておりまして、また、実際に寄附する方にとりましては、寄附をした額に相当する税の軽減を確実に受けられることが重要でありますことから、問い合わせや税額控除手続などの窓口としての役割も正確に果たすことができるセクションを担当課とすることが適当と考えまして、税務課を窓口としているものでございます。
 なお、県の情報発信や応援団の拡大への取り組みにつきましては、税務課の職員もしっかり取り組んでいるところではございますが、県外事務所はもとより、総合政策部、地域振興部など各部局の協力もいただきながら、より効果が上がるよう、全庁的な取り組みとしてPRを進めてまいりたいと存じます。
 次に、ふるさと納税のホームページについてでありますが、ふるさと納税のPRにつきましては、その名称から寄附金の募集であることが伝わりにくいということもございまして、この制度を利用した寄附につきましては、ふるさと岩手応援寄付という名称を設けてPRすることとしているところであります。
 さまざまな情報を提供いたします県のホームページにおきまして、そのトップページからダイレクトにアクセスできるように専用のバナーを設けましたほか、寄附金の使い道、寄附の手続、制度の解説など、テーマごとに別ページにいたしまして、アクセス性や見やすさを心がけて作成しているところであります。
 なお、今回の地震についての個人の方々からの寄附につきましては、被災者の方々に配分されることとなります日赤や共同募金会への寄附をできるだけお願いするという方針で対応しておりまして、県の収入となるふるさと岩手応援寄付につきましては、災害対応を前面に出してPRすることは今のところ行っておりませんけれども、今後とも利用者の視点に立ちまして、見やすくわかりやすいホームページの作成に心がけてまいりたいと存じます。
 次に、他県の取り組みに関してでありますが、基金の創設につきましては、本県の場合、いわて国体に対する寄附がいただけました場合には、ことし3月に設置いたしました岩手県国民体育大会運営基金へ充当することも想定されますけれども、その他の使途を希望しておられる寄附金につきましては、基金を設けることが適当かどうか、今後検討してまいりたいと存じます。
 また、特産品贈呈に関しましては、本県といたしましては、厳しい本県の財政状況への応援の意味も含めて寄附をいただくということもございまして、特別に別途予算を必要とするような特産品等の贈呈は当面考えておりませんけれども、寄附していただいた方に対しましては、まず、さまざまな形で本県の県政情報やふるさと岩手応援寄付の活用状況をお知らせすることなどを中心といたしまして、ふるさと岩手を思い起こしていただけるような取り組みを検討してまいりたいと存じます。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 平泉の遺構の復元整備についてでありますが、世界遺産条約は、世界遺産に登録することによって遺産を適切に保存管理していくことを目的としており、この観点から見た場合、平泉についても内容確認調査や復元整備を進めていくことが求められているところであります。
 その遺構の復元整備については、国においても史跡等の保存と活用を推進する観点から、国庫補助制度による財政的な支援措置を講じているところであり、柳之御所遺跡については県で、また、それ以外の史跡については関係市町で、それぞれ整備活用計画を定めて計画的に整備しているところであります。
 平泉の価値をさらに強力に発信するためにも、引き続き詳細な調査研究のもとに史跡の価値を明らかにし、その成果を踏まえつつ、その物証を一つ一つ明らかにしながら精度の高い復元整備を目指して取り組んでまいります。
〇8番(喜多正敏君) 丁寧な御答弁ありがとうございました。
 何点か再質問いたします。
 まず、わかりやすいほうからまいりますけれども、ホームページにふるさと納税制度について掲載をしているということでありましたが、私はもう少し工夫をしたほうがいいのではないかということを質問したわけでありまして、そのことについてのお答えがなかったように記憶いたしておりますので、もう一回答弁をお願いしたいと思います。
 それから、平泉の世界遺産登録でありますけれども、もとより登録になりまして観光や地域振興について大いに活用されることが望ましいわけでありますが、私は、知事も再三お話しされているとおり、平泉が平和と環境、県に直せば、県民がお互いの多様な考え方や能力を認め合い、不幸にしてハンディがある方や、また、世代や地域を超えて認め合って、持続可能な営みを可能にするような自然や環境を大事にする、そうした意識を共有してこのふるさとをつくっていくというところにあるのではないかというふうに思っておりまして、達増知事にはそういう思いで取り組みを位置づけされて、これを生かして県政に当たっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 平泉の世界遺産登録の取り組みを契機とした今後の県政への取り組みということでありますけれども、議員御指摘のとおり、平泉は、人と人、人と自然とが一体となって、あらゆる生命をとうとび、ともに生きる平和と環境の理念のもと、京都中心の中央集権の時代にありながら独自の自立と共生の国づくりを進めていたというふうに考えております。
 私は、この自立と共生こそ地方自治の本旨であると考えておりまして、平泉の理念は、今に生きる私たちが、この平泉の文化遺産、形のある文化遺産とともに、黄金の心とでも言うべき、形はない、しかし立派な遺産としてこれからも継承し、守り続けていかなければならないものだと考えております。
 今後の県政運営に当たりましても、県民がともに手を携え、ともに力を合わせる地域経営の考え方を基本とし、先人がはぐくんできた心、黄金の心、あるいは岩手の心、これを県民の皆様と共有して守り伝えるとともに、広く世界にも発信しながら、自立と共生の理念に立った地域主権型の社会づくりに向けて取り組んでまいりたいと考えます。
〇総務部長(川窪俊広君) 失礼いたしました。
 ふるさと納税のホームページに関しましては、御指摘のように、よりわかりやすく順次工夫してまいりたいと考えておりまして、制度自身が恒久的仕組みということでございますので、これから長い期間PRもずっと続けていかなければならないと考えております。
 庁内でもいろいろこういうPRをしたほうがいいのではないかというような御意見もしっかりいただいて、また、活用策の示し方を含めまして、寄附をしていただいた方、あるいはホームページをごらんになっている皆さんの反応なども教えていただきながら、よりわかりやすくしていく工夫をこれからもやってまいりたいと考えております。
〇8番(喜多正敏君) 後期高齢者の保険料については推計が難しいというお話でありましたが、制度が発足した以上は、これはある程度継続を前提にして考えていくわけでありますけれども、そうした組織あるいは保険制度を維持していく上では、片一方で岩手県医療費適正化計画も立てて医療費の推計をしているわけであります。したがいまして、そうした中でこれからどういうような趨勢になっていくか、例えば実績をもとにしながら、30年先を見通せというわけではなくてこの2年、3年先、10年先を考えるわけでありますから、そうしたことにおいてわからないということはちょっと問題があるのではないか。
 それから、これは切り分けられた75歳以上の保険制度でありますから、全体の中でやっていくということであれば医療費の抑制ということはちょっと考えられないわけでありますけれども、一つの組織の中で運営していくわけですから、当然その中で独立採算でやるということでありますから、そういう意味で、そうした抑制について懸念されるのではないか。そういうことで、もう少し、市町村民であるとともに県民であるわけでありますから、もうちょっと具体的にわかるようなそういうことを検討していくべきではないかと思いますので、再度お答えをお伺いしたいと思います。
〇副議長(佐々木大和君) 喜多正敏君に申し上げます。
 議会運営委員会の申し合わせによりまして、2回目の再質問は1回目の再質問に対する答弁にかかわるものに限るものとされており、ただいまの質問については執行部の答弁を求めないことにさせていただきますので、御了解ください。
〇副議長(佐々木大和君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時44分 休憩
出席議員(47名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
17  番 五日市   王 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 比奈子 君
22  番 高 橋 雪 文 君
23  番 嵯 峨 壱 朗 君
24  番 及 川 あつし 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時59分 再開
〇議長(渡辺幸貫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。郷右近浩君。
   〔6番郷右近浩君登壇〕(拍手)

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