平成20年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇28番(千葉康一郎君) 民主・県民会議の千葉康一郎です。
 さきに通告しておりました大きく6点について質問いたしますが、さきの吉田洋治議員の質問と重複する点もありますが、お許しをいただきまして、これから始めます。
 まず、質問に先立ち、今月14日発生した岩手・宮城内陸地震で被災されました多くの皆様に対して、心からお見舞いを申し上げますとともに、不幸にしてお亡くなりになられました方々に謹んでお悔やみを申し上げ、御冥福をお祈りいたします。また、不眠不休で、しかも身を挺して地域住民の救助や安全確保などに当たられた関係の皆様に対して、心から敬意と感謝を申し上げます。なお、県当局においては、被災地の一日も早い復興・復旧に向けて最大限の努力をされるよう強く要請いたします。
 それでは、通告に従い、順次質問いたします。
 初めに、岩手・宮城内陸地震について伺います。
 今月14日8時43分、本県では観測史上初の震度6強、マグニチュード7.2という激烈な直下型地震で、一関市を初め奥州市や宮城県栗原市を中心として、各地に想像を絶する大災害が発生しました。震源地は一関市厳美町で、私の住む千厩から西方約50キロの地点であります。刻々と報道されるテレビの映像を見ながら、昭和53年6月12日、今からちょうど30年前に発生した宮城県沖地震を思い出し、この大地震によって、発生の確率が最も高いとされている宮城県沖地震が誘発されるのではないかと一瞬思ったのであります。地震発生時刻は、多くの人は朝食を済ませ、くつろいでいる時間帯であり、また、土曜日とあって、通勤・通学者も少なく、さらに数多い温泉のある行楽地でありますが、登山客や行楽客の出足もこれからという時間帯であったことが幸いして、大きな人的被害を出さずに済んだものと思います。ただ、大被害に遭われた被災者の方々の筆舌に尽くせない恐怖や精神的、経済的打撃を思いますと言葉もなく、心からお見舞いと、一日も早い復興を願うのみであります。
 去る6月25日には、県議会派遣で災害の現地を視察してまいりました。崩れ落ちた橋梁や大規模に崩落してむき出しとなった山肌、路面に亀裂が走り、うねる道路、また、震源に近い岩手県南部と宮城県北部の多くの民家を初め土木施設や山林などは甚大な被害状況となっており、自然の猛威のすさまじさを改めて見せつけられた思いであります。そのような中、県を初め地元の市町や国の機関が迅速に災害対策体制を整え、警察、消防、自衛隊等と密接な連携のもとに、人命救助を最優先に、昼夜を問わない対応をされました。このことによって県民の安全・安心の確保の期待にこたえていただいたことに心から感謝申し上げます。
 そこで伺います。過日、知事は、宮城県知事や関係市長、町長とともに、激甚な災害に対処するための特別の財政援助や激甚法の指定等を国に強く求めたとのことでありますが、その指定等の見通しはいかがでしょうか。また、一関市、奥州市にどのような支援をお考えか、お聞かせ願います。特にも、現在も避難生活を余儀なくされておられる方々は、これから先の生活再建など、先行きが見えない不安を抱えながら過ごしておられることと思います。これに係る相談や生活支援をどう進めていくのか、伺います。
 この際、県内における耐震診断及び耐震改修の取り組みについて伺います。
 国の地震調査委員会が本年1月1日現在で公表した長期評価結果によりますと、宮城県沖を震源とするマグニチュード7.5前後の地震が、10年以内に60%、30年以内には99%の確率で起きるとされ、また、三陸沖南部海溝寄りと連動した場合は、マグニチュード8.0前後の地震が発生するとされています。
 そこで伺いますが、県内における木造住宅診断支援事業の進捗状況と調査結果、耐震改修が必要と判断された建物の改修取り組み状況はどうなっているのか、お知らせ願います。
 また、中国・四川大地震で多くの学校が倒壊したことから、我が国でも倒壊の危険性のある公立小・中学校の耐震化が進められておりますが、県内の公立学校の耐震化に関する教育委員会の対応について伺います。
 最後に、このたびの地震では想定外の新たな課題や反省点が出てきたのではないかと思います。この地震を教訓に、今後の防災に向けた緊急対応の一層の充実を図るべきと考えますが、知事の御所見をお聞きして、地震関係の質問を終わります。
 次に2点目、平泉の文化遺産の世界遺産登録について伺います。先ほども質問がありましたが、私も、平泉の文化遺産の世界遺産登録が実現するよう念じております。
 質問いたします。5月23日、平泉の文化遺産について、国際記念物遺跡会議―イコモスが世界遺産への登録を見送り、審査をやり直すといういわゆる登録延期をユネスコ世界遺産委員会に勧告したとの文化庁の報道発表を知り、登録に向けてこれまで頑張ってこられた多くの関係者に大きな衝撃を与えたところであります。登録に向けては、これまで、県当局を初め関係市町においては、世界遺産登録を目指して着々と準備を進めてこられ、特にも平成13年、平泉が世界遺産暫定リストに登載となった以降は、地元はもちろんのこと、県を挙げて本登録に向けてさまざまな活動を積極的に展開してこられたのであります。いよいよその機運が盛り上がり、県当局も本年度からいわて平泉年推進プロジェクトチームを立ち上げるとともに、世界遺産登録関連事業の実施を計画し、また、県議会としても、本年3月25日に、議長を除く全議員で構成する平泉世界文化遺産推進調査特別委員会を設置するなどして、いざ鎌倉というときに、御案内のとおりの厳しい勧告となりました。まことに残念至極であります。知事を先頭に関係各位のこれまでの御努力や、平泉の世界に誇れる文化遺産を思うとき、ユネスコ世界遺産委員会には、県民の願いと平泉の普遍的価値を十分理解していただきたいものであります。
 そこで、知事にお尋ねしますが、登録延期の勧告をどのように受けとめられたのでしょうか、御所感をお聞かせください。また、勧告以降、知事には、勧告内容の分析や登録の基準への精査を初め、知事の人脈をフルに生かされ、また、世界遺産委員会の委員国への理解を求めて、連日、精力的に活動されてこられました。これまで、地元の方々とともに万全の体制で最善の努力をされてこられましたが、ユネスコ世界遺産委員会の審査を目前にして、知事の登録へかける思いや現在の心境などをお聞きして、この件の質問を終わります。
 次に、3点目のいわて希望創造プランについて伺います。
 県では、いわて希望創造プランの中で、重点目標として県民所得の向上と雇用環境の改善を掲げ、これを実現するために、政策の6本の柱のうちの2本として、地域に根差し世界に挑む産業の育成及び産業の育成を支えるふるさとづくりを担う人材の育成を掲げています。これはまさに正鵠を得たものであり、ものづくり産業人材の育成など、企業からも高く評価されているところであります。私は、これに限らず産業成長戦略や県北・沿岸振興などの政策を一層推し進めていくためには、掲げる政策と組織構造や人材育成がより一体とならなければ、成果も限定されかねないと考えるものであります。
 以下、このような考え方を基本に、いわて希望創造プランの県集中改革プログラムの改革編に沿ってお伺いしてまいります。
 まず、プログラム改革編の3では組織パフォーマンスの向上を掲げ、組織力を最大限に発揮させる体制の整備をうたっています。その中で、まず、本庁の意思決定過程の迅速化・簡素化を掲げ、各会議等の整理統合として、平成19年度は公共事業調整会議を政策評価推進会議へ一本化し、平成20年度は行政改革推進会議などを政策会議に一本化したということを伺っております。しかしながら、名称が変わっただけで会議自体がなくなったというのではなく、そういう会議の名称の変更というようなものが、意思決定過程の迅速化・簡素化と呼べるものなのかという疑問を抱かざるを得ません。決裁に要する時間、手間、コストを下げるといったようなことに早急に取り組むべきと思うのですが、いかがでしょうか。特にも、広域振興局を目指している現在、今後の県内部における決裁権限の大胆な下位への委任について、どのように取り組まれるのか、お伺いいたします。
 次に、最適な組織体制の構築と人材の育成についてであります。今、県には、県民所得の向上や産業振興など、県民に希望を与えることが求められております。そういう県民の生活を向上させることについて、県という知識集団は大いに期待される存在なのであります。求められる行政課題等に対応していくためには、ものづくり産業人材の育成や農林水産業を担う人材、その技術指導を担う人材、さらには生産物の付加価値を高め、流通課題を解決するための人材の育成、これらと同時に課題解決のための最適な組織の構築が、今、求められているのであります。産業振興は農林水産部などの事業部で、人材育成は総務でといったばらばらな施策を進める時代ではありません。県の掲げる政策を実現するために、どういう人材を、どういう部門から捻出し、投入していくべきか、また、今後、どういう人材を採用し、育成していくべきなのか、一体としての取り組みが極めて重要と考えます。
 そこで、今後、産業振興などの政策目標に対して、人材育成目標をどのようにリンクさせ、取り組んでいくか、御所見を伺います。
 次に、プログラム改革編の4では、行財政構造の徹底した簡素・効率化を掲げ、透明性の高い財政運営の推進を図ることとしています。県債残高が1兆4、000億円に上り、年間総予算の倍にまでなっていますが、国の数次にわたる経済対策に従ったツケであることは言うまでもありません。さらに、国は、本来措置するとしていたはずの交付税をも減額するなど、この数年間、地方いじめに終始してきました。しかしながら、直接は国の政策に起因しているとはいえ、県民からすれば、いつの間にか県は随分と多くの借金を抱え込んだものだという印象は拭い切れません。このようなことを繰り返さないよう、県民にわかりやすく財政状況を公表し、県民の監視のもとに置くという手法をとることは適切な対処だと思うのであります。
 一昨年来、耳目を集めた競馬組合の財務問題においても、なぜ、繰り上げ充用が何年も繰り返されたか。財務状況が悪化しながら、経費の大幅削減など今日のような対策がなぜとれなかったのかという疑問を県民は持っています。その一つの要因として、私の地方自治体で働いた経験から言いますと、多くの自治体では、予算の審査は厳正に行い、財政規律には十分取り組んでいますが、一方では、財務管理については十分でなかった面があります。また、財務管理の専門家を育成してこなかったのも事実であります。
 以前、県では、県債残高の増嵩を踏まえ、行財政構造改革の推進のため、銀行など財務分野の民間出身者を社会人枠の中で採用し、財務管理の強化を目指してきたと伺っております。このような財務管理の強化が必要なことはもちろん、さらに、今、知事は、県民1人当たり所得を平成12年度の260万円にすべく、産業の振興を掲げて奮闘しておられます。今後の財務政策として、どのような産業分野にどの程度投資すれば、どの程度県内の総生産が上がり、県民所得がどのぐらい上がるか、そういうことを県民は知りたいと思っているのではないでしょうか。
 透明性の高い財政運営とは、法律で公表を義務づけられた指標を単に公表するということだけではなく、県債をどのような方法で、いつまでに幾ら減らしていくか、そういう過程、つまり債務改革の方向性を明らかにしていくことが、具体的な施策の策定だと考えます。それを策定する考えはあるのかどうか。また、策定するとしたら、いつまでに策定するのか、お考えをお伺いします。
 次に、第4点目の電子県庁の取り組みについて伺います。
 近年の情報通信技術の飛躍的な進歩により、大量の情報の処理が可能となったことを背景として、県は平成13年に岩手県行政情報化推進計画を策定しました。この情報化推進計画は、職員1人1台パソコンを土台に、行政事務を効率的かつ高度に処理して、県民満足度を向上させるということを目的に始められたものであります。いわゆる電子県庁の構築であります。
 この電子県庁への取り組みについては、電子申請・届出システムは、県に対する申請・届け出の各種行政手続をインターネットを通じて行えるようにすることであり、また、電子決裁を含む行政文書管理システムは、文書等の収受、起案、決裁、施行、保存、廃棄に至る一貫した事務の効率化、行政内部情報化を図ることにより、質の高い行政サービスの提供を図ることとして進められたものであります。このために要した費用は、これまでに1人1台パソコンの整備に10億7、700万円、それぞれのシステム構築、それに毎年度の維持管理運営費を合わせて3億2、200万円ほどを支出してきました。さらに、情報ハイウェイ整備などに合計で35億2、200万円もの巨額を投じてきました。しかしながら、その利用や稼働の状況はといいますと、平成17年から利用を開始した電子申請・届出システムについては、平成19年9月時点の利用率は何と0.63%と極めて低く、1%にも満たない、全く話にならない利用状況であります。また、行政文書管理システムは、同じく平成17年から試行されましたが、当初の目的を達成できないまま、一部機能を除き、平成19年6月をもって運用を停止しております。私は、本県は、少なくとも電子県庁の構築に他県に先駆けて取り組んだものと誇りにさえ思っておりましただけに、利用率の低さや運用の停止はまことに残念でなりません。このように多額の費用をかけたにもかかわらず、当初もくろんだ目標からはほど遠い実態となっているところであり、まず、このような状況に至った経緯を伺います。
 そもそも、電子県庁の構築に向けての当初の想定が甘かったのではないか。これらの制度設計に当たっては十分な、綿密な検討がなされたのかと疑わざるを得ません。また、事務事業の適正な実施のためには、成果について適切な指標を設定するなどして、事業実施後、その効果を検証しながら改善に努めることが重要でありますが、事業成果の把握と検証、さらに先進事例や民間企業に学ぶというようなことを鋭意努力されたのでしょうか、伺います。
 また、電子県庁を進めるために組織された行政情報化・業務革新プロジェクトチームも平成14年度をもって解散され、以降、それにかわる組織は設置されずじまいで、担当部任せであります。この取り組みには、全体の進捗管理や、さらに業務革新をどのように図っていくかなど、全庁を挙げてきめ細かな推進体制が必要ではなかったのかと思われますが、なぜ、そのような組織化を進めなかったのかについても伺います。
 ここで、代表監査委員にお伺いいたしますが、委員は、この電子県庁の取り組み状況について、平成19年9月から平成20年1月までの間に監査を実施されました。委員の監査後の御所見をお伺いいたします。
 最後に、知事にお伺いします。職員の、特に幹部職員のITに対する理解や活用能力を高めるための意識改革に早急に取り組む必要があると思うのですが、いかがでしょうか。また、厳しい財政状況の中で行財政改革が求められており、徹底した業務革新が必要であります。このように中途半端な形で終わらせては、県民の期待にこたえられません。いま一度、全面的に見直し、業務革新を徹底するよう、知事みずからが先頭に立って取り組むべきと思いますが、いかがでしょうか、御所見をお伺いします。
 次に5点目、障がい者への差別禁止について伺います。
 御案内のとおり、平成18年12月の第61回国連総会において、障がい者の権利保護等を目的とした障害のある人の権利に関する条約案が採択されました。我が国は、平成19年9月に高村外務大臣が国連本部で同条約に署名を行ったところであります。条約は、本年4月3日のエクアドルをもって批准国が20カ国に達し、その1カ月後の5月3日に発効したと伺っております。残念ながら、我が国はまだ批准に至っておりませんが、私も一国民として、一日も早く日本も条約を批准し、障がい者が安心して暮らすことができる環境が整備されることを願ってやみません。
 一方で、国内では、平成18年9月、千葉県において、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例を制定し、翌19年4月から施行され、さまざまな相談が寄せられていると伺っております。
 このような中、本県においても、昨年11月29日、岩手県議会に対し、障がい者への差別をなくすための岩手県条例の制定を進める会から、いわゆる障がい者への差別禁止条例の制定を求める請願書が提出されました。これについて、環境福祉常任委員会での3回の継続審査を経て、本年4月15日、当委員会においてこの請願が採択されたところであります。本県においては、本年3月末現在で、障害者手帳をお持ちの方々が、身体・知的・精神障害の3障害を合わせて7万人を超えるものと聞いております。また、請願書においても触れられておりましたが、平成19年の障がい者への賃金不払い事件を初めとして、近年、本県においても障がい者への権利侵害に係る事案が発生しております。
 そこでお伺いしますが、県はこれまで、障がい者への差別や権利侵害の未然防止あるいは解消に向けて、どのような取り組みを行ってきたのでしょうか、具体的にお聞かせ願います。
 いずれにしても、障がい者への差別や権利侵害に関する事案が後を絶たないでいる実態をかんがみれば、障がい者の方々はもちろん、障がいのない多くの県民の理解を深め、賛同を得ながら、障がい者への差別禁止に向けた条例の制定など、その取り組みを強化する必要があると考えますが、このことに関して、知事はどのような御認識をお持ちでしょうか、お伺いいたします。
 最後に6点目、県営建設工事に関するダンピング対策について伺います。
 建設産業の多くの企業は、良質な社会資本整備の提供を担うとともに、公共施設の維持管理や災害時における応急復旧活動など、さまざまな地域貢献活動を展開するなど、本県の基幹産業として大きな役割を果たしております。岩手・宮城両県に甚大な被害をもたらした今般の地震に際して、私の地元でもある岩手県建設業協会一関支部においては、地震発生直後から、地元建設業者が一体となり担当地域のパトロールを実施し、その結果を地元振興局土木部に報告するとともに、24時間いつでも連絡がとれるよう応急対策体制を整え、また、危険箇所へのバリアを設置するなど、緊急出動をしたのであります。また、土石流発生の危険が大きい一関市市野々原の土砂ダム現場に重機を搬入するための仮設道路の建設などは、地域の状況を十二分に把握し、二次災害防止に向けた応急の措置としてまことに機を得たものでありまして、地域に密着した建設業の皆様の行動に深く感謝を申し上げたいと存じます。
 近年、建設産業を取り巻く環境は、財政構造改革のもとに公共事業の縮減が続き、建設市場は需要と供給のバランスが崩れ、価格競争が激化し、厳しい経営環境に直面しており、殊にも、昨年から本県においては県営建設工事に条件つき一般競争入札を導入した結果、落札率の下降とあわせ低入札の発生が頻発している状況では、工事の品質への影響、下請業者へのしわ寄せ、緊急時の災害対策に与える影響など、非常に心配いたすところであります。
 知事は、このような建設産業を取り巻く現状を踏まえ、本県建設産業の振興についてどうお考えか、また、県勢発展のために建設産業に期待する思いをお伺いいたします。
 入札制度については、昨年7月1日から指名競争入札を原則廃止して、電子入札の全面導入を柱に、すべての県営建設工事に条件つき一般競争入札が導入されましたが、その成果と課題について伺います。
 また、予定価格の事前公表は、業者の見積もり努力を損ない、ダンピング受注を助長し、しかも、設計積算能力の向上施策に反して、技術と経営にすぐれた企業が伸びられる環境を阻害しているため、予定価格の事前公表を事後にすべきとの意見も多く聞かれますが、この点についての御所見をお伺いいたします。
 以上で私の一般質問を終わりますが、答弁によっては再質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 千葉康一郎議員の御質問にお答えいたします。
 初めに、岩手・宮城内陸地震についてでありますが、激甚災害の指定は、大きくは、公共土木施設等の被害、農地等の被害及び中小企業者等の被害に区分され、中央防災会議が定めている災害指定基準に従い、被害額に応じて指定されるものであります。
 今回の地震については、国に対して、激甚災害の指定に向けた作業を早急に進めていただくよう求めてきたところでありますが、本日の官房長官会見で、奥州市と一関市について、局地激甚災害に指定する方針が表明されたと聞いているところであります。現時点では詳細は不明であり、具体的な指定内容等は今後明らかになってくると思いますが、この激甚災害指定のみではなく、被害を受けた施設や地域の復旧・復興が速やかに進められるよう、国からさまざまな支援を得ながら、全力で取り組んでまいりたいと思います。
 また、関係市町への支援については速やかに災害救助法を適用し、避難所の運営を初めとする応急対応経費を国と県で負担する体制を整えるとともに、普通交付税の繰り上げ交付、特別交付税の増額などについて国の支援が得られるよう働きかけたところでありますが、今後も、さらに被災地域の復興や住民生活の安定に向けて必要な対策を迅速に講じていくよう、関係市町と十分に連携しながら取り組んでまいりたいと思います。
 次に、避難生活者への相談や生活支援についてでありますが、今般の震災で、やむを得ず避難されている方々についてはさまざまな悩みや不安を抱えていることから、医師、看護師等をチームで現地に派遣するなど、心のケアを含む健康管理を図っているところであります。
 被災された方々の生活再建等については、被災市町が社会福祉協議会等と連携し今後の生活の相談に応じているほか、県としては、その要望を踏まえて応急仮設住宅を整備し、今後生活する住宅の再建等に向けた対策を講じ、災害援護資金等の融資制度の活用について周知徹底を図るとともに、日赤の要請により設置した配分委員会を通じて義援金を適切に配分するなど、今後とも被災市町や関係団体等とも連携し、生活再建等の支援に努めていく考えであります。
 次に、今回の地震対応に関する反省点についてでありますが、今回の地震対応については、地震による土砂崩れにより孤立した方々をヘリコプターの大量投入により発災当日に大半を救出できたことや、河道閉塞によりできた土砂ダムからの排水対策等、全体としては比較的迅速に対応が図られ、一定の対応ができたのではないかと感じておりますが、一方で、今後の課題となる事項もあったと感じております。例えば、発災直後、防災連絡用に配備している携帯電話も含めて電話がつながらず、非常参集の状況が迅速に把握できなかったことや、休日における参集人員の確保の難しさ、緊急消防援助隊等の広域応援部隊を受け入れ調整する場所のセット、災害派遣医療チーム―DMATと災害対策本部との連携のあり方など、今後の災害対応に向けて検討を要する課題も明らかになってまいりましたので、今回の問題点等をよく検証し、今後の対策に生かしてまいりたいと思います。
 次に、平泉の文化遺産の世界遺産への登録延期の勧告についてでありますが、勧告当日の早朝に、ユネスコ日本代表部近藤大使に電話で結果を確認いたしましたが、登録という勧告を期待しておりましたので、率直に言って非常に残念に感じたところであります。しかしながら、平泉には世界が必要としている平和や環境の理念があると確信しており、平泉の価値そのものが否定されたわけではないと考えておりますので、平泉の価値を県民の皆様がきちんと理解し、対外的にもしっかりと伝えていくことが大切であるという決意を新たにしたところであります。
 次に、私の登録へかける思いについてでありますが、世界遺産の登録は、国が推薦し政府間の協議に基づき国際機関が決定するものであって、地方政府としてできることはおのずと限られてくるところであります。したがいまして、私は、県民の皆様の登録や保存管理にかける熱い思いを受けとめながら、これまで関係省庁への要望や委員国の在日大使館等への説明を行ってきたところであります。
 平泉は、世界遺産にふさわしい価値を持っていると信じており、現在、ユネスコ日本政府代表部の近藤大使による委員国への説明が続けられていることから、大使への最大限の協力・支援を行うとともに、岩手県民の心を一つにして、7月の世界遺産委員会では平泉が登録されるよう、引き続き努力してまいりたいと思います。
 次に、電子県庁の取り組みについてでありますが、このたびの行政監査については私自身重く受けとめているところであり、指摘を受けた直後の庁議において、行政情報化のより一層の推進について指示したところであります。現在、全庁を挙げて電子申請の利用促進に鋭意努めるとともに、この4月に設置した産学官民連携によるいわて情報通信基盤整備戦略会議において、より効果的な利用促進方策等について検討を進めているところであります。また、本県の行政情報化等の推進については、私を本部長といたします高度情報化いわて推進本部において、各部局長等が一丸となって取り組んできたところであります。
 情報通信技術―ICTは、今や県行政の日常業務において欠かせないものとなっております。例えば、いわて医療情報ネットワークシステムなど、県民サービスの向上につながる多様なシステム構築や、私自身、県のホームページにおいて直接県民にメッセージを発信するなど、情報通信技術を活用して、県民と一体となった行政運営に取り組んできているところであります。
 また、本庁と振興局等との間あるいは市町村やその他の外部機関とのやりとりにおいて、迅速なコミュニケーションとデータの共有により業務が極めて効率的に行われているところでありまして、例えば平成19年に実施した県と市町村による約3、700もの草の根コミュニティ調査においても、大きな効果を発揮したと考えております。
 私も、登庁した日はパソコンを立ち上げ、電子メールや掲示板を確認し、電子会議室などで職員とのコミュニケーションにも努めているところであります。さらには、著しい進展を見せる情報通信技術―ICTに対応するため、民間から専門技術者を県として採用するとともに、精通した職員をITサポーターとして配置するなど、電子県庁の実現に向けた体制の強化にも取り組んできたところであります。
 今後とも、情報通信技術―ICTを活用した県民サービスの向上や行政効率の向上を図るため、高度情報化いわて推進本部を通じ、業務革新の徹底に努めてまいりたいと思います。
 次に、障がい者への差別や権利侵害の未然防止あるいは解消に向けたこれまでの県の取り組みについてでありますが、昭和56年の国際障害者年を主な契機として、これまで障がいのある人もない人も、ともに地域で普通に生活することができるというノーマライゼーションやユニバーサルデザインの理念や取り組みが県民に浸透するよう、各般の施策を推進しております。
 具体的には、これらの考え方の普及啓発はもとより、障がいのある方々が地域で生活する中で受ける差別や権利侵害の防止などを目的に障がい者110番を設置し、専門の相談員や弁護士がさまざまな相談に応じているところであります。また、障がい者への保健福祉サービスを提供している事業者に、障がい者への虐待防止や差別をなくすための体制がとられ取り組まれているか等について、必要に応じ、助言・指導を行っています。さらには、認知症高齢者や知的障がい者などの方々に対する権利侵害の未然防止などを目的として、地域の社会福祉協議会の生活支援員が行う福祉サービスの利用手続援助や買い物等の金銭管理援助のための事業を県として支援しております。
 次に、差別禁止条例の制定など取り組み強化に関する私の認識についてでありますが、議員御指摘のとおり、障がい者への差別や権利侵害に関する事案が依然として後を絶たず、まことに憂慮すべき状態と考えます。私としても、一日も早く我が国が国連の権利条約を批准し、障がい者の差別禁止のため法整備がなされることを期待いたします。
 一方、県民を挙げての障がい者への差別禁止に向けた取り組みを初め、障がいに対する正しい理解の促進に向けたさまざまな方策が必要と認識しており、御指摘の差別禁止のための条例制定などもその有効な手段になり得ると考えております。
 このような認識を踏まえ、今議会に、県の組織名称における障害の害の字の平仮名表記のための条例案を提案しているところでもあります。
 今後とも、障がい者の方々が日ごろ感じておられる御不便や不自由に配慮しつつ、家庭や地域の中で、その人らしい安心のある生活ができるよう障がい者の方々の人権を守り、差別のない健康安心・福祉社会の実現に努めてまいりたいと思います。
 次に、建設産業の振興についてでありますが、今回の岩手・宮城内陸地震においては、地元の建設企業の皆様には、緊急対応や応急復旧などに献身的な御尽力をいただいたところであります。深く感謝申し上げるとともに、改めて、建設産業が地域において担う役割の大きさを強く認識したところであります。
 議員御指摘のとおり、県内建設企業は極めて厳しい経営状況にあり、建設産業の振興は重点的に取り組むべき課題の一つと考えています。県としては、経営基盤の強化や技術力の向上、経営多角化など、経営革新に向けた建設企業の取り組みを積極的に支援してきたところであります。
 建設産業は、県民の暮らしや産業活動を支える社会資本の整備、維持管理の直接の担い手であるとともに、地域における雇用の受け皿として地域経済を支える重要な役割も期待されています。県内建設産業が将来にわたってその役割を果たしていくことができるよう、技術と経営にすぐれた企業が成長できる環境の整備に、今後とも努めてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
   〔県土整備部長佐藤文夫君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤文夫君) 木造住宅耐震診断支援事業の取り組み状況でありますが、平成19年度まで耐震診断を行った木造住宅は2、040戸であり、今年度においては既に行っております大船渡市を除く34市町村において1、000戸を実施する予定であります。6月20日現在の応募状況は225戸となっております。
 耐震診断の結果でございますが、2、040戸のうち、倒壊の可能性がある住宅が19.6%、倒壊する可能性が高い住宅が76%という結果となっております。
 また、耐震改修の取り組みについてでありますが、県では、今年度に市町村が木造住宅の耐震改修への補助を行う場合に県が補助する木造住宅耐震改修支援事業を創設し、100戸分の予算を認めていただいているところであります。一方、市町村では、当初予算で9市町村が、6月補正予算において12市町村が、合わせて87戸分について予算措置しており、6月20日現在の応募状況は19戸となっております。
 県としましては、これまでも会議の場などを通じまして、事業主体となる市町村に事業に取り組むよう働きかけてきたほか、学校教育と連携し耐震対策の事業を行うなど、普及啓発にも努めてきたところでございます。今後とも、こうした取り組みを通じまして、耐震診断及び耐震改修の促進に努めてまいることとしております。
   〔総合政策部長菊池秀一君登壇〕
〇総合政策部長(菊池秀一君) 意思決定過程の迅速化に係る権限の委任に関する取り組みについてでありますが、会議等の整理統合につきましては、これまで、部局長を構成員とするさまざまな会議が設置され、それぞれ個別に開催されてきたところでありますが、その実効性をより高めるため見直しを行いまして、政策の展開とこれを支える行財政改革の取り組みを一体化させ、全体を関連づけながら、総合的な検討ができるよう会議の統廃合を行うなど体制の再構築をしたところであり、これにより、さまざまな課題への迅速、適切な対応につながるものと考えております。
 また、県内部の権限委譲につきましては、これまでも行財政改革の一環として取り組んできたところでありまして、例えば業務プロセスの簡素化の観点から、組織のフラット化による担当課長の配置や、少人数の係制を廃止してグループ制を導入するなど、意思決定と業務執行の迅速化を進めてきたところであります。
 今後におきましても、不断の見直しを進めるとともに、特に広域振興局体制への移行等を踏まえ、より現場に近いところで県民ニーズに迅速にこたえられるよう権限委譲を進めるなど、関係部と連携しながら、より一層組織力を発揮できる体制づくりに努めてまいりたいと考えております。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 政策目標に対応する人材育成についてでございますが、政策を実行し効果を十分に上げていくためには職員の能力の向上と適時適切な人事配置が重要であること、及び県職員のマンパワーに対して、経済界を初め、各地域から大きな期待が寄せられていることにつきましては、同様の認識を持っているところでございます。このために、これまでも職員の資質向上のための取り組みに加えまして、ものづくりや食産業、ITなどの分野における民間企業経験者の任用、アドバイザーなどの形での民間人材の活用等を通じまして、政策の実施に必要な人材を確保すると同時に、ともに働く県職員がそのノウハウを吸収し、組織能力の向上を図るよう努めているところでございます。
 また、県職員の人事配置や組織体制につきましても、組織定数全体は削減しつつも、部局の枠を超えて政策の成果を発揮できるよう、例えば食産業の振興に関し、商工労働観光部に農学職や水産職などの食に関する専門技術職員を配置するでありますとか、首都圏での県産品の販路拡大に向け、東京事務所企業立地観光部の体制を強化したり、振興局の農政部に農林水産物の加工・流通の促進を担当するポストを設置するなどの工夫を行っているところであります。
 先般策定した集中改革プログラムにおきまして、組織パフォーマンスの向上を改革の柱の一つとして位置づけたことを踏まえまして、政策実現につながる組織、人事配置と人材育成について、これまで以上に積極的に、かつ、スピード感を持って取り組んでまいりたいと存じます。
 次に、本県経済と財政に関する政策の方向性についてでございますが、県の予算の中で、どの分野にどのような投資をどの程度行うことが、県経済の動向や県民所得にどのように反映されるのかという点を明確に予測しながら財政運営を判断していくことは、なかなか容易なことではございませんが、県の財政が逼迫している中で県民所得の向上を実現していくためには、県の財政支出が実体経済にどのように影響するかを、これまで以上に入念に考え検証していくスタンスを持って財政運営を行うことが、ますます重要になっているものと認識しております。
 将来の県債残高の管理につきましても、そうした今後の財政政策の内容とあわせて検討していく必要があると考えておりますが、現時点で県債残高を長期的に金額で設定することにつきましては、災害関係の事業なども含め、将来にわたる建設事業の規模をあらかじめ設定することが難しいという面がございますことや、臨時財政対策債、財源対策債など、国の政策判断や財政運営により発行を余儀なくされる起債もございますので、今後の国の動向により発行額が大きく左右されるものがございますことなどから、具体的な数字で長期計画を立てるということには困難な面があるところであります。
 また、そもそも本県では、社会資本整備がなお不十分であり、当分の間、投資的経費の必要な事業規模を維持することを考えねばならないことから、県債残高を大幅に減少させるような目標を立てることは難しいという事情もございます。こうした事情がございますので、現在、県におきましては、3年から4年の中期的な将来見通しといたしましてプライマリーバランスの均衡、すなわち、県債残高を現状と同水準程度に保つことを債務管理の方針としているところでございまして、当面、この方針のもとで、毎年度の予算編成を通じて、適切な投資的経費の予算計上と県債発行を行うよう努めてまいりたいと存じます。
 次に、新しい入札制度の成果と課題についてでございますが、条件付一般競争入札の拡大・電子入札の全面運用等によりまして、公正性、透明性、競争性の確保を図りつつ入札参加機会を拡充するとともに、適切な地域要件の設定等による県内企業の育成に配慮し、また、設計図書のダウンロードや宅配方式などにより入札参加者の負担軽減を図りますほか、総合評価落札方式を拡充し、価格と品質にすぐれた調達を目指すといった観点で新しい入札制度を導入したところでございますが、これまでのところ、関係者の協力をいただいておおむね円滑に実施されているものと認識しているところでございます。
 価格のみの競争ではなく、工事の品質確保を重視していくという観点から、総合評価落札方式をさらに拡大することなどを検討したいと考えているところでございます。基本的には、現在の制度の円滑な運用を図り、安定的で入札参加者や県民から信頼される入札を進めていきたいと考えております。
 次に、入札参加者の見積もり努力の関係と事前公表についてでございますが、本県ではすべての入札参加者に対し、入札金額に係る数量、単価及び金額を明らかにした詳細な工事費内訳書の作成を義務づけておりまして、全入札参加者に主要項目を掲載した総括表の提出を求めますとともに、落札候補者に対しましては、詳細な工事費内訳書の提出を求め内容を確認することとしておりますので、入札参加者は、必要な積算を行った上で入札に参加していただいているものと認識しております。
 また、予定価格の事前公表につきましては、予定価格の漏えい等による不正行為の防止のほか、受発注者双方の入札手続の簡素化、また、入札手続の透明性の向上等のメリットがございますことから、本県を初め、多くの都道府県で実施をしているところでございまして、本県では、工事費内訳書の提出制度や条件付一般競争入札の実施などによりまして、事前公表の問題点への対応策も講じているということを考えますと、事前公表の仕組みを継続することが適当ではないかと考えているところでございます。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 電子県庁の現在の状況に至った経緯についてでありますが、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現するという国のe-Japan重点計画に呼応し、全国の地方公共団体とともに一斉にこれらシステムの構築に取り組むこととし、特にも、条件不利地域を多く抱える本県にありましては、通信事業者による情報通信基盤への投資意欲を誘発するため、県みずからが大口需要家として取り組む必要があったところであります。あわせて、各種サービスをインターネットを通じて提供するシステムを新たに整備することで、インターネットの利用者を開拓する必要があったのであります。このことから、平成12年度を初年度とする岩手県行政情報化推進計画を策定しまして、行政事務の多くを情報通信技術―ICTで効率的かつ高度に処理することを目指しまして、1人1台パソコンにより文書作成や表計算などの業務系ソフトの活用など、行政事務の効率化を推進いたしました。また、予算編成事務等支援システムや県営建設工事管理情報システムなどの業務システムの構築を進め、業務手続の効率化や業務改革に取り組んできた結果、現在100近くのシステムが稼動しているところであります。
 その効果につきましては、平成17年3月に取りまとめ公表した新しい行政情報化推進計画の実施状況における庁内省力化効果の概要によるところでありますが、行政事務効率化の面では、事務作業の迅速化・省力化や情報資産の共有による業務の高度化が図られ、電子掲示板や電子メールの利用による紙、コピー経費など事務費の削減などにより、年間32億8、000万円余の経費削減効果が見込まれ、17年度から19年度までの3カ年に限りますと、概算で98億5、000万円余の経費削減効果が発生したものと推計しております。
 一方で、住民の利便性、サービスの向上の面では、これは金額換算は難しいものでございますが、医療分野における電子カルテシステムや遠隔医療、農業振興分野におきましては、農産物の生産履歴が確認できるトレーサビリティーシステム、あるいは各種情報伝達分野におきましては、防災情報や光化学オキシダント情報を携帯で情報提供するいわてモバイルメールシステム、あるいは県の歳入金を電子的に収納する電子収納システム、こういった実現など、県民生活の向上に大きな役割を果たしてきているものと認識いたしております。しかしながら、電子県庁のうち、行政監査で指摘されました電子申請・届出システムにつきましては、平成22年度までに95%以上を電子化するという目標は18年度末までに達成し得たところではございましたが、その利用率は御指摘のとおり低迷している状況にございまして、本県のインターネット環境が全国最下位レベルにあることや、電子証明書やICカードリーダーを用意することが負担であることなどの事情もさることながら、県として、遺憾ながら、県民に利用を呼びかけるなどの利用促進のための努力が不足していたことも否定できない事実でございまして、率直に反省いたしておるところでございます。目下、全庁を挙げて、この電子申請の利用促進に向けた取り組みに努めているところでございまして、いわて情報通信基盤整備戦略会議におきましても、電子申請利用率のさらなる向上方策について検討を重ねているところでございます。
 また、行政文書管理システムにつきましては、平成17年度から試行運用を開始したところでございましたが、簡易な照会回答や供覧等にはなじむものの、別途文書や図面等の添付が必要な場合、あるいは口頭による説明を要する起案に比べまして事務効率の面でなお検討を要するということや、多く利用されておりました簡易決裁につきましては、平成19年度から別システムにその機能を移すということが可能であったことなどから、平成19年6月末をもって運用を停止したところでございます。
 次に、事業実施後の検証と改善の方法についてでありますが、これまでの電子県庁の取り組みに当たりましては、先進地に学ぶという視点に立って、他県の取り組み事例を収集したり、北海道・東北ブロック会議における情報交換を重ねてきたところでございます。また、日々進歩する情報通信技術を習得し活用するべく民間から専門技術者を採用したほか、先端技術のセミナーやシンポジウムへ積極的に参加するなど、より効果的ですぐれたものとなるよう努めてきたところでございます。
 現在、平成19年8月に策定いたしました岩手県高度情報化アクションプラン2010に掲げる目標の実現に向け適切な進捗を図るとともに、既に運用しているシステムについて、他県の優良事例を分析し、目標とするという、言うなればベンチマーキングといったものの活用などによりまして、全庁挙げて個別業務システムの最適化にも取り組んでいるところでございます。今後とも、最小の費用で最大の効果を上げるという原則に立ちまして、最も望ましい行政事務の効率化と住民の利便性・サービス向上を実現できる電子県庁の構築を目指し、検証と改善に努めてまいりたいと存じます。
 次に、全庁的な電子県庁の推進体制についてでありますが、この推進に当たりましては、議員御指摘のとおり、全庁的に取り組む必要がございます。そのため、現在、高度情報化いわて推進本部を設置しまして、先ほど申し上げましたアクションプランなど、全庁的な計画の策定、進捗管理、重要な業務システムの改善方策について審議してきているところでございます。この推進本部には部局横断的なワーキンググループを設置してございますし、また、このほか個別業務最適化の検討や、情報共有システムの高度利用検討などのためのワーキンググループを設置いたしまして、議員の質問の中にございましたプロジェクトチーム解散後、専担組織として設置されたIT推進課を中心といたしまして、行政サービスの質の向上や効率的な業務システムの実現に向けた業務改善なども含め、行政事務の情報化に係るさまざまな課題に対し、全庁的にきめ細かく取り組んでいるところでございます。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 公立小・中学校の耐震化についてでありますが、さきに文部科学省が公表した本年4月1日現在の公立学校施設の耐震改修状況調査結果によれば、県内小・中学校の建物1、883棟のうち、大規模な地震により倒壊等の危険性の高い建物は149棟と推計されております。公立学校施設は、児童生徒が一日の大半を過ごす活動の場であると同時に、非常災害時においては地域の防災拠点としても活用され、その安全性の確保は極めて重要であると考えております。国では、これらの建物について、原則3年程度を目標に耐震化を図るとしていることから、補助率のかさ上げを主な内容とする新たな制度にのっとり、これまで以上に耐震化を促進するとともに、岩手県耐震改修促進計画に基づき、着実に学校施設の安全化に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔代表監査委員菊池武利君登壇〕
〇代表監査委員(菊池武利君) 電子県庁の取り組みについて、監査後の所見をという御質問にお答えいたします。
 議員の御質問にありましたとおり、平成20年1月まで監査を行い、その監査結果については、2月15日に県報告示したところであります。監査に当たっては、あらゆる問題点を検証いたしました。その結果、特に幹部職員のITに対する理解・活用能力とリーダーシップの発揮、担当課や関係課の位置づけと責任の明確化などが必要であるという認識に立ち、電子県庁の構築に向けてさらなる努力が望まれるとした監査意見を述べたところであります。監査結果に対する措置について、まだ通知はいただいておりません。しかし、監査意見に沿った取り組みがなされ、IT化による業務革新等が進み、県民の利便性の向上と行政の効率化など、初期投資の効果が一層十分に発揮されるものと期待しております。
〇28番(千葉康一郎君) 御答弁、大変ありがとうございました。ただいまの答弁に対しまして、何点か再質問をさせていただきます。
 まず、1点目は、岩手・宮城内陸地震についてでありますけれども、一関市及び奥州市においては、今なお避難生活をされている方がかなり大勢おられます。一関地区におきましては、当初、避難場所が本寺小学校でありましたが、その後、いろいろな御配慮により対応されまして、山谷公民館を改造されて、今ここに入居されておるという状況でございますし、奥州市におきましても、先ほど知事から答弁がありましたとおり、今、仮設住宅の対応が着々と進んでおるという状況でございます。6月14日の震災からきょうでちょうど2週間―16日になりますか―を経過しておりますけれども、被災者の方々は、あれから見れば若干落ちつきは取り戻したということは聞きますけれども、やっぱり精神的あるいは肉体的な面の疲労というのは大変なものであるのではないかと心配いたしておるところでございます。
 震災の次の日、小沢民主党代表が災害現場を視察されましたし、それから、被災者の方々を激励されました。17日におきましては、民主党の岩手県連として現状を見てまいったところでございます。私はその後、ちょうど親戚の方もおりましたものですから、いろいろお話を聞きました。被災者の方にお話を聞いたわけですけれども、とにかく一日も早く我が家に戻りたいというのが最大の願いであるようでございます。ただ、戻るにしても、そのとおり、住居が大変壊れておりまして、これを修繕する、あるいは建てかえるといった場合には多額の負担が伴うわけでございます。したがって、経済面からも困っているという話も聞きました。
 先ほどの答弁でもいろいろと支援策があるようでございますけれども、今回の地震で、家屋というのは、全壊こそなかったんですけれども、ふだんのこれまでの生活に戻るためには、やっぱり相当の費用がかかるんですね。個人の財産だから、すべて被災者個人の問題で片づけなさいということで済まされるものではないのではないかとちょっと思うわけでございます。いわゆる先祖伝来の土地を守って、地域の中で助け合い、コミュニティをしっかりつくってきた方々でございます。その方々が、今、かつてない震災に遭いまして、この先の生活に不安を抱いております。コミュニティ崩壊の危機でもあります。ここを支援していくのも、また行政の役割ではないかと思います。これまでの先例では極めて難しい問題かもしれません。しかし、山間部の大規模な災害という特別なケースでもあります。地域コミュニティを守っていくという視点で、支援策を知事はどういうふうにお考えになりますかということをできれば聞きたいわけなんですが、いかがでしょうか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
 それから、被災者のいわゆる心のケアにつきましては、先ほど知事からも答弁がございました。いろいろと対応されておることに対しましては、大変感謝申し上げます。まず、震災関係ではこの辺をお伺いしたいと思います。
 それから、いわて希望創造プランの件でございますけれども、財政政策についてでございます。
 実は、これまで地方自治体は、財政によってどういう経済状況をつくり出すかという意識が全くなかったと言っても過言ではないと思います。これは、もちろん政府の仕事だと思っておりましたが、今、そういうことを言っておられない時代になったのではないかと。先ほど知事も地方政府という表現をされました。やはり自立するためには、いろんな意味で、これからはそういう経済政策というものも加味した県政運営でなければならないのではないかと思うわけでございます。さっきも申し上げましたように、どの分野に投資が必要なのか、幾ら投資をすれば県内総生産が上がるのか、そして、それが県民の所得にどうはね返ってくるかということを、これから県、地方政府としてはやっていかなければならない時代だと私は思います。そういう意味で、いわゆる財務管理といいますか、本質問でも申し上げましたけれども、ある民間から前にも採用されて、そして財務管理をしてこられたと聞いておりますけれども、やっぱりそれが今、何か、どこかで消えてしまったような気がいたします。これからは、そういう時代を見据えて、やはりそういう職員を育成もしくは採用して進めていかなければならないのではないかと思います。いずれ、財政による経済のコントロールが地方自治体にも求められておるのだということを私は申し上げたいわけなんですが、そういうことをどういうふうにお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
 それから、今、各部長、監査委員からもお答えをいただきました電子県庁の件でございますけれども、これはやっぱりもっともっと本当に真剣に取り組んでいくべきではなかったのかということを私は言いたかったのです。今後、これを、さっき言ったように、先に大きくプラスになる面があれば、今、ある程度投資してもやっぱりやるべきだと私は思うわけです。これから振興局も再編されていくようでございます。そういう意味で、電子決裁などというのは、当然、図面を県庁まで持っていかなければだめだとか、ペーパーでもって決裁をするということでなくて、システムさえ確立されれば、これは可能なんです。現に千葉県の千葉市では100%これをやっています。山梨県でもやっています。これは80%台となっているんですが、そういうことを先駆けてやっていかないと、やっぱり行政改革は進まない。きっちりそこを御認識いただいて進めていただきたいと思います。
 知事は、本部長ですから、先ほど、この問題については先頭を切ってやるという話もございました。ぜひ、これを強力に進めていただきたい。この決意を知事から聞きまして、再質問を終わります。答弁によっては、また質問をさせていただきます。
〇知事(達増拓也君) 岩手・宮城内陸地震の被害家屋の修理の支援についてでありますけれども、現在把握している被害状況では、全壊1世帯、半壊3世帯となっております。また、現在、被害家屋の状況については、被災市町において個別家屋ごとに迅速に調査を進めておりますが、いまだ具体的な調査に入れない地域もあるなど、被害の詳細は判明していないところであります。全壊した家屋などの再建等を支援内容とする被災者生活再建支援法の適用要件には現状では該当しないところでありますが、この法律に準じた県単独措置の創設について検討したいと考えております。また、現在、避難生活をされている方々の中には、国土交通省による土砂災害危険箇所緊急点検により自宅が土砂崩れの危険があると判定された地域にある方、応急危険度判定により家屋が危険であると判断された方などもおられ、今後も自宅に住めないことが想定されています。
 私は、今回の災害で被災した地域コミュニティが失われるようなことがあってはならないと考えておりまして、このコミュニティを守るためにも、支援を講じることができないか、検討を始めているところであります。
 また、心のケアについては、しっかり対応していきたいと思います。
 そして、電子県庁、行政のIT化については、効率化はもちろんでありますけれども、県民の行政参加、県政参加、さらには参画といったこともやりやすくなり、県組織と県民の一体感をより増す民主主義的な効果も高いと考えておりまして、21世紀もどんどん進んでおりますので、ぜひ、岩手県においても、行政の情報化、電子県庁を強力に進めてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
〇総務部長(川窪俊広君) 御指摘いただいたような意味での財政経済政策の重要性が増してきているということにつきましては、全く同感でございます。具体的にどのような方法で、そうした面での対応能力を県の組織として高めていくのかということにつきましては、なかなか難しい面もあるわけでございますが、そのためには、県行政や県が行う事務事業に関する仕組み、また内容をしっかり理解しながら、一方、同時に地域経済の動きについても的確な判断力というものが両面求められるということでございまして、単純に民間から適任者を探すということも簡単ではないと感じているところでございます。
 まず、現時点におきましては、県の財政運営に携わっている職員、また、各分野の事務事業を推進する立場にある職員が、常に実態経済との関係を念頭に置きながら業務をしっかりと進めまして、そうした能力を高めていく。こういうことを通じまして、組織全体としての、御指摘いただいたような意味での財政経済政策能力を高めていくことが重要と思っておりまして、あわせまして、民間からの人材の獲得が可能かどうかということにつきましても、検討してまいりたいと考えているところでございます。

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