平成20年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(嵯峨壱朗君) 自由民主クラブの嵯峨壱朗でございます。
 私は、自由民主クラブを代表し、以下の理由により、発議案第13号道路特定財源の一般財源化及び道路関係諸税の暫定税率廃止を求める意見書に反対する立場から討論いたします。
 初めに、道路特定財源堅持意見書との矛盾について述べたいと思います。
 本発議案を提案した民主・県民会議の皆さんは、昨年12月12日の本会議において議決された道路整備の推進と道路特定財源の堅持を求める意見書に全員一致で賛同しております。同意見書では、道路特定財源については、その全額を道路財源に充当するよう強く要望するとされております。わずか3カ月の極めて短期間で、さきの県議会での議決と正反対の意見書を発議する態度は不見識と言わざるを得ず、本議会の権威を著しくおとしめるものと考えるところであります。
 第2に、地方自主財源の保障と暫定税率の廃止の矛盾についてでございます。
 本発議案では、地方に十分な自主財源を保障した上で、道路特定財源を一般財源化するとともに道路関係諸税の暫定税率を廃止するとしておりますが、その保障する財源はどこから出るのでしょうか。全国の道路整備は国と地方自治体双方の財源で行っており、地方の財源だけを確保しても、国の財源が大幅減となれば本県の道路整備の水準も著しく低下せざるを得ません。結局、国の税収減により直轄事業の財源が確保できず、本県でも、三陸縦貫自動車道など県民が望む道路ネットワーク整備が全面凍結となってしまいます。
 また、こうした事態を無理に回避しようとすれば、その他の歳出の大幅な削減、国債、県債の増発が不可避となり、私たちの子供や孫たちの世代に大きなしわ寄せが及ぶことになり、財政再建の流れにも逆行するものであります。聞こえのよい、つじつまの合わない政策ではなく、きちんと財源を明らかにし、真の本県の将来を考えていくべきと考えるところであります。
 第3に、暫定税率の廃止と道路整備のおくれについてでございます。
 暫定税率の廃止によって道路整備財源の税収が半分になれば、新しい道路の建設はもちろん、既に始めている事業の大幅なおくれ、中断や、問題となっている古い橋の修繕など安全対策にも全く手がつけられなくなってしまいます。多くの自治体は、道路特定財源を道路の維持・管理や除雪、さらには過去の借入金の返済や契約済みの工事の支払いに充当しております。また、ガードレールの設置など学童の通学路の安全確保、病院へ行くなど生活に必要な道路整備、維持等々弱い立場にある人の安心・安全を守ること、さらにバリアフリーの整備などもできなくなってしまいます。
 暫定税率の廃止、直轄負担金も廃止した上で補助金等を確保することは不可能であり、新規事業の凍結はもちろん、継続事業もすべてストップ、過去に契約した工事の支払いもできず、東北横断自動車道釜石道路を初めとする高規格幹線道路、国道106号など都市間を結ぶ地域高規格道路、都市部におけるバイパス等地域の課題に全く対応できなくなってしまいます。
 第4に、地方における道路以外の財政歳出の影響についてでございます。
 暫定税率を廃止すれば、本県の来年度収入には100億円以上の歳入欠陥が生じます。本発議案では、社会保障や教育などの重要性も飛躍的に増大したとしており、その認識については我々も共有するものでありますが、暫定税率の廃止によって、県内35自治体の予算にも歳入に大きな欠陥が生じ、既にぎりぎりの財政状況にある自治体では、財政再建団体に転落する可能性すら生じてまいります。特定財源を一般財源化しても、暫定税率を廃止すれば、現実に他の歳出に回す財源は全く生まれず、さらに、暫定税率の廃止は、本県でも、教育や福祉を初めとする必要不可欠な各種施策の遂行に壊滅的な打撃を与え、安心・安全な住民生活を保障できなくなってしまうものであります。
 また、道路特定財源は、高速道料金の引き下げ、地方への無利子貸し付け、まちづくり交付金等にも充当されており、暫定税率を廃止すれば、これら施策にも大きなマイナスの影響を与えることとなります。
 暫定税率がなくなることは、単に税収不足という問題ではなく、住民の日常生活や地域の活性化に重大な影響を与えることであり、こうした最悪の選択を許してはならないと思っております。
 第5に、燃料価格の高騰と暫定税率廃止についてであります。
 本発議案では、燃料価格を少しでも引き下げることは、これ以上の物価上昇を抑える上でも重要であるとしておりますが、今の原油高は投機的な原因が大きいと言われております。一時的な価格高騰に反応して、国と地方の財政を破綻させてはなりません。実際、EU諸国は、1990年代から10年間で道路特定財源をほとんど一般財源化しましたが、ガソリン価格はむしろ上昇しております。原油の高騰で苦しんでいる方々への支援は、別途、着実な政策をもって実施していくべきものであり、これこそが責任のある政治のあり方と考えるところであります。
 第6に、地域間格差の認識の違いについてであります。
 本発議案では、暫定税率の廃止は、都市と地方の格差を是正することにも寄与するとしておりますが、これまで交通量の多い都市部の道路整備を優先してきた結果、本県のような地方では、整備がおくれてしまったというのがその実情であります。道路は商工観光や農林水産業の振興、企業立地など、地域間格差の是正や地域活性化を図るための大前提と言える社会資本であり、もしも暫定税率が廃止されれば、今後、本県のような地方の道路建設は大きな制約を受けることとなり、道路整備の格差が固定化してしまうことになります。暫定税率の廃止は、地域間格差の是正ではなく、地域間格差の固定化を推し進める地方切り捨て政策そのものであると考えるところでございます。
 第7に、暫定税率の継続についてであります。
 本発議案では、暫定税率は34年継続されていることを問題視しておりますが、暫定税率とは、道路整備に必要な税率は恒久的なものではなく、数年ごとに見直していく制度であり、特例と呼ぶべき性質のものであります。道路特定財源制度が54年間、暫定税率が34年間継続されていることは、それだけ本県のような地方で道路整備がおくれており、地方に暮らす人々が道路整備を渇望していることのあかしであります。実際、EU諸国では、道路特定財源を一般財源化して道路投資をやめたかというと、逆にふやしております。地域活性化のためには、やはり道路投資が絶対に必要なのであります。
 最後に、先ほど平成20年度一般会計予算が賛成多数で可決されましたが、本予算は、道路特定財源及び道路関係諸税の暫定税率によって賄われている歳入を前提に編成されたものであります。先ほど民主・県民会議の皆さんは本予算案に賛成しましたが、もしも道路特定財源の一般財源化と道路関係諸税の暫定税率の廃止を掲げるのであれば、その歳入を見込む予算にも反対しなければ整合性はとれません。聞こえのよいガソリンの値下げだけを殊さらに主張し、それによって生じる重大な結果に目をつぶるという御都合主義の表決行動は、議会人として許されるべきものではありません。
 以上の理由から、議員各位に対して本議案を否決することを求め、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、岩渕誠君。
   〔5番岩渕誠君登壇〕

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