平成20年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇22番(高橋雪文君) 自由民主クラブ高橋雪文でございます。
 今期初、そして6回目の一般質問をさせていただきたいと思います。先輩・同僚議員に感謝しつつ、以下、質問をさせていただきます。
 私が考える岩手県の最大の問題は、人口減少にあると改めて申し上げます。
 昨年、日本の国内の人口減少は、およそ1万6、000人の自然減であります。一方、平成19年1月から12月の本県の人口減少は、自然減が4、388人、他県への人口流出は7、046人になり、合計1万1、434人の減少となり、言うなれば、日本の人口減少の7割以上を岩手県が吸収していると言えます。
 平成20年1月1日現在の本県の推計人口は136万2、152人、近年では、毎年1万人規模の人口減少が進んでおります。恐らく、ことしの4月には、135万人台に突入するのではないでしょうか。人口減少と若年者を中心とする他県への流出による影響は、県税収の減少のみならず、経済活動の停滞、将来への不安、さらには急速な高齢化をもたらしております。本県はさまざまな問題が蓄積しておりますが、緊急課題として、特に全県一丸となって取り組まなければならない命題は、ここにあるのではないでしょうか。人口減少に歯どめがかからない限り、危機を希望には変えられない、この問題について知事はどのように考え、どのような姿勢で将来に希望をもたらすというのでしょうか。
 以下、この問題を念頭に置きながら、関連して質問させていただきます。
 まずは、平成20年度県予算並びに総合計画について質問をいたします。
 今予算では、3年ぶりにプライマリーバランスが赤字見通しとなりました。達増知事のマニフェストでは、プライマリーバランスの均衡を図ると明示し、県民に財政の収支均衡を図ることを約束されております。初めての予算編成で、その理念を容易に崩さなければならなかった理由をまずお知らせください。
 知事は、3年間の中期財政見通しの中で均衡をとったと述べ、2010年度までの黒字化が見込まれると明言しております。しかし、人口減少が予想以上に著しく、税収の伸びが期待できない中で、まして典型的な三割自治体とされ、政府の政治状況に左右されかねない交付金や国庫支出金の依存度が高い本県の実情では、その根拠を担保することは難しいと言わざるを得ません。中期財政見通しの解説を見ましても、見通しが立ったと表現するにとどまり、外的要因で責任回避できる表現にもなっております。自立を強調し、自立を県民に発信する一方で、中央の政府を批判し責任を回避してきた増田県政運営と同様の手法ではないでしょうか。
 そこでお聞きいたしますが、どのような根拠で見通しが立ったのか。さらには、外的要因、特に今国会のように道路特定財源の暫定税率の廃止など、地方自治の運営状況を考えない決断がなされた場合に、どのように対応して3年後の均衡を堅持するのでしょうか。 私は、現在の置かれた県政の中では、単年度ごとでプライマリーバランスを堅持する努力が大切だと思います。県債残高を減少する総合的な政策が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 また、基金を切り崩し、3年後に基金の残高を51億円を確保すると説明がありましたが、過去積み立てた基金を大きく切り崩し、一般財源に利用する手法も増田県政の悪い特徴でした。危機を危機として職員や県民に伝えることこそ、本当の勇気あるリーダーの責務だと思いますが、今回の予算編成では、増田県政時代とその手法は何も変わっておりません。今後も、基金を切り崩しながら財源対策を推し進めるつもりなのでしょうか、質問をいたします。
 主要3基金でも底をつく基金がありますが、その影響はどのように考えておられるのか、お聞きいたします。
 次に、ゼロ予算事業について質問をいたします。
 知事が強調する新地域主義戦略の主体となっている地域振興部予算で、ゼロ予算という事業が目立ってあります。私はそもそも、この予算ゼロという事業が事業として予算に計上できる事業なのかと、率直に疑問を感じます。行政執行の理念を根底から改革することなのかと前向きにも考えましたが、さまざまな問題を包含していると言えます。まずは、その実務者の人件費はどうなっているのか、その推進経費はどうなっているのでしょうか。
 また、その事業内容が日常業務の延長線のようなものが多く、責任の所在もなく、やったのかやらなかったのか、わからないものだと感じております。もし、仮に事業としての位置づけならば、どのように県民や議会に報告するのかをお尋ねいたします。
 また、事業ですから、指標設定や行政評価基準の総合的見直しなども必要だと思いますが、どのようにされるのでしょか。現行の仕事を持っている職員に過剰な負担を強いるだけで、実態効果の上がらないものになるのではないかと危惧しております。
 また、ゼロ予算が認められるならば、市町村からの企画や県民からの企画は予算がないなどとは言わずに、すべて事業として認めればいかがでしょうか、質問をいたします。
 次に、総合計画について質問をいたします。
 人口動態や所得推計などの増田県政下の予想と現状は明らかに違います。総合計画では、平成22年には137万人から140万人の人口になると見込み、老年人口は24.5%から25.3%の予測でありますが、平成19年度時点で大きく乖離しているのは、総合計画自体が時代の変化に対応していない、もしくは、岩手の問題に対して行政の取り組みが合っていないと言えます。早急に見直しをかける必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 知事は、今年度から立案に取り組むとしておりますが、予想が大きくずれているものをあと3年もそのままにしておくことは、岩手の衰退を見過ごすことになりかねません。民間企業ならば倒産に至るような事態であり、新知事になっても行政運営はスピード感に乏しく、遅々として改善されず、知事の評価を下げるシンボルになると心配しておりますが、いかがでしょうか。
 次に、人口減少社会における定住・交流人口拡大について質問をいたします。
 岩手県のピーク時は平成10年、141万8、000人、現在は136万人と、人口減少が著しいことはさきに述べたとおりであります。自然減に対応するよりも、人口流出を減少させるための政策に重点を絞ることが必要であります。非常にハードルが高い問題であり、財政困窮県である今、その政策推進には、国の連携が不可欠であるとまず申し上げたいと思います。
 本県の人口減少は特に若年層の流出が際立っており、その対策が急務であります。大学や短大、専門学校などを卒業しても雇用機会が与えられないことで、他県で就業してしまう数が非常に多くあります。せっかく県民の税金と地域力で立派な教育を施しても、地域の人材として生かせないことが岩手の最大の課題でございます。U・J・Iターンを推進しておりますが、実績は県や市町村などを通じてのIターンで29名など、効果は余りない現状です。
 そこで質問をいたしますが、第一線を退いた先輩方に定住してもらうことも大切でしょうが、若手を岩手に呼び戻す総合的な対策をもっと強化すべきではないでしょうか。
 そこで、定住人口拡大策のその基本的な考えをお示しください。また、若年者のUターンに対してどのような取り組みをしておられるのか、今後どのような施策を考えていらっしゃるのか、お知らせください。
 緊急課題に対応するためには総合的な取り組みが不可欠であり、目標とするものづくりによる産業育成分野の雇用拡大には時間がかかると言えます。その目標達成までに既存の産業を細かく指導し、そして支援することと交流人口をふやすことが重要であります。交流人口はソフト事業で効果が上がる分野であり、チャンスが広がる分野であります。しかしながら、一例を申し上げますと、南部杜氏という優秀なつくり手を輩出している岩手県でありながら、岩手の地酒が首都圏で余り知られていないということが長らくあります。よいものなのに伝わらない、情報発信の分野で大きくおくれをとっているのが本県の課題ではないでしょうか。その分野にどう取り組んでいくのでしょうか、お知らせください。
 知事は、マレーシアの物産拡大に非常に熱心なようでございますけれども、韓国、台湾、香港、上海などの比較的裕福層が集中するところへ、観光商品や宣伝に対策を練られた方がより現実的なのではないでしょうか、お知らせください。
 いずれ、市町村、国と連携し合いながら総合的にもっと力を入れるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、交流人口に関連しながら、平泉の世界文化遺産登録の取り組みと観光施策について質問をいたします。
 平泉のユネスコ世界文化遺産登録に大きな期待を寄せている県民は、非常に多いはずです。その点で、知事は非常に恵まれていると感じております。そのチャンスを生かし切るかが、知事に与えられている使命だと私は感じております。しかしながら、その取り組みは宮城県に大きくおくれをとっていると言わざるを得ません。
 魅力的な観光地を有する岩手県平泉町、宮城県仙台市、気仙沼市、松島町の2市2町などで組織している観光連携プロジェクト実行委員会から依頼があり、平成18年から東北産業活性化センターが調査を開始して、仙台を起点にする観光政策を推進し、現在その政策が着実に実行されております。
 仙台観光コンベンション協会には、仙台から足を延ばして東北探訪という提案がかなり以前から出されており、昨年3月には、仙台空港からJR東北本線へのアクセス鉄道も開通し、国内外から平泉に至る利便性の高い観光ルートは、仙台市を起点にほぼでき上がっていると言えます。10月からは、宮城県の仙台・宮城デスティネーションキャンペーンがあり、平泉の資産は伊達の資産だと言わんばかりに、有効活用する施策が見えております。
 一方の岩手県はどうなのでしょうか。本年、集中的に関連事業に投資するようでございますが、情報発信競争は既におくれをとっていると言えます。そして、交通インフラでも、花巻空港新ターミナルビル建設費にようやく7億円を計上し工事を着手する段階にあり、さらには、一番力を入れなければならない平泉を目指して来県する観光客を、県央、盛岡、そして県北・沿岸地域に回遊し、宿泊をしていただく取り組みがまだまだ見えません。このおくれをどのように取り戻すのでしょうか。どのような施策で県内交流人口を拡大されようとするのか、質問をいたします。
 仙台を起点にする平泉への接近は、仙台商工会議所の取り組みが大きいとお聞きいたしました。もっと商工団体や民間企業から、アイデアと具体的な取り組み、さらには、県民が平泉の財産を総出で生かす統一的な取り組みが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
 危機を希望に変えるという難しい命題よりも、チャンスを生かす取り組みが求められていますが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、平成28年岩手国体に向けたスポーツ振興についてお聞きいたします。
 国体へ向けた取り組みが始まりました。しばらく県民の一丸となれるような目標がなかっただけに、この目標に向けて県民の活力を集中させることは、重要なことだと思います。これに関連し、今回、県都盛岡にある県営運動公園の陸上競技場の改修が見送られたことについて不安を感じている関係者が多く、県の対応に疑問を投げかけている方もいらっしゃいます。特に、2巡目国体の主会場を見きわめた上で整備をしても遅くないとのコメントが新聞にありましたが、陸上競技を初め、県のスポーツ向上のシンボルとなっていた競技場が、第1種競技場として認定されないままになること自体が、関係者の期待を裏切ることになっております。まずは、この趣旨についてお聞かせいただきたいと思います。
 まして、その認定の時期は2年後の平成22年3月までで、国体を視野に入れた競技場へ対応していくことも想定される中で、通常の設計、建設にかかる時間などを考えると、十分とは言えない時期でございます。
 そこでお尋ねいたしますが、国体の主会場となる陸上競技場はゼロから新しくつくることはないのか、確認をさせていただきます。そして、既存の県営運動競技場は、国体の開催によらず、1種競技に対応させるおつもりなのでしょうか。国体に対応させるためには、改修の見積もり17億円だけではなく、新たな取り組みが必要と考えますが、県はどのように考えておられるのでしょうか。来年になれば、ことし計上できなかった予算は計上できる準備があるかも、あわせてお聞きいたします。
 また、盛岡商業高校のサッカー全国制覇を果たしたように、サッカー競技の人口拡大や、プロを目指すチームも複数でき、盛り上がりを見せている中で、大きな大会を開催する主会場も求められております。国立競技場などでは、国際的なサッカーやラグビー競技を開催するなど、複合的な競技に対応できるように設計されておりますが、県営陸上競技場のピッチは国際規格からも横幅が5メートルも短く、時代に対応し切れなくなっております。県が所有する競技場が規格に合わないものしかないことは問題であります。このことに対し県はどのように考えておられるのか、お示しいただきたいと思います。
 次に、生命尊重を理念とする基盤整備について質問をいたします。
 だれもが、安心・安全に生活をしたい、それは県民の願いであります。西和賀町がテーマとなった映画いのちの作法。そこには、生命を第一に考える生命尊重の理念に取り組む行政と町民の姿がありました。県の保健福祉の理念はまさしく、県民が平等に生命を尊重し、生命を守ることが原則だと言えます。その実現に向けて、医療を県民が平等に享受できる体制が求められております。しかし、現実には、直接的な治療の提供には、どうしても地域的な差が生じるのだと感じております。県行政がまずできることは、安心感を平等に県民に与えることだと私は思います。
 医師の確保が難しい中で、本県の地理的状況は最大の障害と言えます。その障害を取り払う意味で、産科の周産期医療ネットワークの取り組みは加速されるべきであり、さらには、将来の医療提供の先駆けになると感じております。しかし、本当に必要な地域では、情報通信インフラ整備のおくれが目立ち、その対応が求められております。このことに関連し、ソフト開発と僻地のインフラ整備をどのように推進するのか、また、将来的な医療サービスの公平化にどのように取り組むか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、ドクターヘリの導入は、昨年6月に、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法が国会で成立した今、早急に取り組みを実施する段階だと言えます。面積は四国分、山間地が多い県土、50キロ圏を15分で飛び、初期治療と運搬能力に威力を発揮するドクターヘリは、岩手でこそ求められるものであります。医師がいない過疎地域でも、県民に平等に安心感を与えるものだと言えます。消防防災ヘリ、救急車、ドクターカーなどの複合的な施策を連携させることによって、地域医療へ果たす役割は非常に高いと言えます。宮城県沖地震などの防災対策の一環としても、総合的な取り組みに着手しながらドクターヘリの導入を精査すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、財政が厳しい中ならば、特に要望が強い市町村に負担を一部願うなり、民間で後援会組織を整備するなどして盛り立ててはいかがでしょうか。
 次に、県民に求められる県立大学の取り組みについて質問をいたします。
 法人化後の平成17年度の交付金からおよそ3億円が減額されて、平成20年度当初予算額が約43億7、000万円になった県立大学交付金でありますが、改めて岩手県の大学であるという、その存在意義を見直す時期にあるのではないでしょうか。
 県立大学は岩手県の人材育成の拠点であり、研究機関であることは間違いありません。その知識を各種、県や市町村の審議会などに、政策アドバイザーとして教授陣などを採用し生かしておりますが、もっと県政課題と直結した連携が相互に必要なのではないでしょうか。
 先日、燃料電池を学びに訪問した際、大学が国の委託事業とともに、最先端の技術を委託研究している姿がございました。四日市市では、土なべの生産が時代に合わず経営が困難になっていることから、次世代の産業を見据えてセラミックスによる燃料電池の開発を手がけ、それを産業化させて既存の産業を再活性させようと、産学官の共同の取り組みが行われております。
 これからの県立大学に求められているのは、所属する教授陣を初めとする知的財産を十分に生かし、県のシンクタンクとしての役割を明確化することだと私は考えます。具体的な県の政策テーマを県立大学に依頼し、問題解決の一手を真剣に考えてもらう、そういう機会を与えるべきではないでしょうか。
 例えば、政策評価で最も点数が低かった環境問題の分野で、どうすればCO2─二酸化炭素のマイナス8%を達成できるのか、その政策立案と削減根拠の計算を依頼するとか、今日の危機的な人口減少にどのように歯どめをかけるのかなど、学生にも現実の課題のテーマを与え、そして有用であればそれを生かすようにする、そういう活用が県立大学に求められているのではないでしょうか。
 政策立案分野で優秀なアイデアや研究を示した学生には、県庁職員としての採用を優先的にすることも、県大や学生のモチベーションを高めることに必要ではないでしょうか。
 また、県民に開かれた、地域に貢献することも求められております。NPOなどのマンパワーを生かす取り組みを県政では推進してまいりましたが、まさに教授一人一人がNPOなどを設立し、社会に積極的にかかわる取り組みが必要だと言えますが、いかがでしょうか。
 教授陣が多忙なのは理解をしております。しかしながら、基本的な方向として自身の研究には3割、学生の指導に3割、そして県からの課題に3割、そして社会活動のアドバイザーとして1割程度の力を配分していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 県立大学の求める人材育成像、経営像、地域貢献像について、今一度お示しいただきたいと思います。
 最後に、教育基本法の理念を教育現場に反映することについて質問をいたします。
 今回改正された教育基本法の理念は、知・徳・体の調和がとれ、生涯にわたって自己実現を目指す自立した人間形成、二つ、公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的に参画する国民の育成、三つ、我が国の伝統と文化を基盤として、国際社会を生きる日本人の育成を目指すと解説されております。教育委員会委員長の所信の中でも、その理念を包括する内容もありましたが、これらの内容をどのように学校現場、行政に反映していこうとするのか、まず教育長にお聞きいたします。
 所信の中には、学校や教師の自由度を高めとありました。私は、学校に対する自由度を高めることには大賛成でありますが、教職員個人に対する自由の拡大は一抹の不安を覚えるものであります。自由ということは多様性のよさもありますが、職員の資質向上、レイマンコントロールと言われる民間感覚が導入され、さらには、信頼の上でなければ、本来の目的とする自由度の教育効果は達成できないことだと思います。
 皆さん方も御存じのとおり、長らく教育界では、冷戦構造の中にあって、イデオロギー的な活動を盛んにされている教職員が多い時代がございました。今日でもそのような偏った活動をされている方もいると御認識されている教育関係者もおられるようでございます。本県では、いわて型コミュニュティ・スクールに力点を置いておられますが、閉鎖性が非常に強い教育現場に、どのような取り組みでレイマンコントロールの要素を組み入れるかが、今後重要なのではないでしょうか。基本的な考え、その取り組みについてまずお聞かせいただきたいと思います。
 また、新しい教育基本法の理念を反映した新学習指導要領が平成21年度、小・中学校での導入を皮切りに、段階的に完全実施される運びとなります。原則変わらないというものの、その基準を柱に地域事情に合わせた対応ができることになっております。その対応をどのように指導・育成していかれるのでしょうか。また、教職員への指導、学校現場の経営サイクルとその関係についてもお聞かせいただきたいと思います。
 以上をもちまして私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋雪文議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、人口減少問題についてでありますが、人口減少社会においては、労働力人口や消費人口の減少による地域経済規模の縮小、高齢化に伴う社会保障面での負担の増加に加え、中山間地域を中心として地域コミュニティの維持に困難が生じることなど、負の影響が懸念されるところであります。
 本県においては、主に地域経済の低迷による若年層を中心とした社会減が拡大している状況にかんがみ、いわて希望創造プランにおいては、人口転出への歯どめを重要な課題の一つと位置づけたところであります。
 したがいまして、ものづくり産業の集積促進や観光産業、農林水産業などの産業振興による雇用の場の確保、医師確保や子育て環境の整備などセーフティネットの充実、首都圏等に在住する団塊世代などの方々の県内への定住と交流の促進に向けた取り組みなどを強力に進めていく考えであります。
 次に、平成20年度予算でプライマリーバランスが赤字の見込みとなっている点についてでありますが、その最大の理由は、平成20年度の地方財政対策において、地方の声を踏まえて、まだ不十分ではありますが、4、000億円の特別枠が措置されることとなった際に、地方税の偏在是正効果が生じるまでのつなぎ措置として、都道府県の臨時財政対策債の増額という形での財源手当てとされたことに伴う県債発行の増加であります。
 プライマリーバランスは、県債残高の増減を管理していく上での目標であり、中長期的観点での適切な管理が重要と考えておりまして、また同時に、地方債の発行により各年度で必要となる事業を的確に実施していくことも、地域経営を間違いなく行っていく上で重要なものと認識しております。
 こうした点を総合的に考えながら、3年間の中期的見通しを示しつつ予算を編成したところでありまして、3年間の合計額ではプライマリーバランス均衡を保つ方針としていることは、私がマニフェストやこれまでの県政運営の方針の中でお示ししてまいりましたプライマリーバランスの均衡という考え方に沿った対応であると御理解いただきたいと思います。
 また、国の政策判断と本県のプライマリーバランスの関係については、過去数年の大幅な地方交付税の削減が地方の疲弊や財政危機の大きな要因となってまいりましたように、本県の財政は、国の政策判断の影響を大きく受ける構造となっていることは事実であります。
 国においても、地域間の財政格差や地方財政の困窮を無視できず、地方の財源確保に向けた動きが出始めておりますが、今後も、道路財源に限らず地方の財源が安定的に充実確保されるよう、地方税や地方交付税に係る制度の改善を国に働きかけ、プライマリーバランス均衡を初めとする本県の財政運営に支障が生じないよう取り組んでまいりたいと思います。
 なお、先ほど申し上げましたように、必要な事業を実施していくための地方債の活用は必要なことであり、後年度の返済の100%が交付税算入される臨時財政対策債が国の政策によって増加することとなった場合や、仮に今後、国債や地方債を活用して資金手当てを行いつつ経済対策を実施しなければならなくなった場合などにおいては、各年度のプライマリーバランスに必要以上にこだわって無理に事業費を抑制することは、必ずしも適当でない場合もあり得ます。
 いずれにいたしましても、中期的にプライマリーバランスの均衡を保ちながら、将来にわたる県債残高を適切に管理していくことを基本としながら、各年度における状況に的確に対応し、財政運営の一層の健全化を図っていく所存であります。
 次に、県債残高を減少させる総合的な政策についてでありますが、県債残高は、当該年度に行う元金償還の規模と新たな県債の発行規模によって増減するものであり、基本的には、新規発行を抑制していくこと以外に、特別な方策を見出すことは難しいものであります。
 この点についてのわかりやすい指標としてプライマリーバランスの均衡や黒字化を掲げているところでありまして、国においては、現在も大幅な赤字が続いておりますが、本県においては、年度ごとにさまざまな事情はありますものの、中長期的な観点から、プライマリーバランスを適切に管理し、県債残高の将来に向けた減少トレンドを描いていくよう、今後も努力してまいりたいと思います。
 次に、基金の取り崩しについてでありますが、今回の予算編成においては、危機的な財政状況を直視し、正面から取り組んで、3年間の収支均衡見通しを得るべく、職員の皆さんの協力も得ながら、歳入歳出全般にわたる対応策を講じることとしたところであり、その結果として、中期見通しにおいては、取り崩し額をできるだけ小さく抑えながら、計画的に基金の活用を図ることとしつつ、収支均衡の見通しを得ることができたところであります。
 これにより、平成22年度末には、主要3基金残高は51億円程度に減少する見通しでありますが、取り崩し額をさらに抑制し、できるだけ残高を維持するためにも、集中改革プログラムに基づく行財政改革の取り組みを強力に推し進めていく所存であります。
 基金が枯渇していますのは、本県に限らず各県に共通して見られる現象であり、その最大の要因は、地方交付税などの地方の財源が十分に確保されず、地方で対応できる範囲を超えて削減されてきたことによるものでありますことから、今後の地方財政対策等において、地方の財政危機がさらに深刻化し、さらなる収支の悪化や基金の取り崩しに追い込まれることがないよう、国に責任ある対応を求めてまいりたいと思います。
 次に、基金が底をつく影響についてでありますが、今回の中期見通しでは、主要3基金のうち、県債管理基金と公共施設等整備基金の残高がなくなり、財政調整基金の残高51億円のみとなる見込みであります。
 残高がゼロとなる二つの基金は、いずれも実質的に財源調整用の基金として活用してきたものであり、これによって、個別の事務事業等の執行に影響が生じるようなことはありませんが、いわば、県としての貯金が51億円規模となる見込みでありますことから、これまで以上に慎重な対応を心がけ、中長期的な見通しに常に留意しながら、県財政を運営していく必要があると考えております。
 なお、災害時の不測の事態に対しては、できる限り基金残高を確保するよう努めつつ、さまざまな制度をフルに活用して対応していくとともに、平成28年度に予定されている岩手国体について新たな基金を創設する方針とするなど、将来の財政負担を想定しつつ、計画的な財政運営を進めていく考えであります。
 次に、ゼロ予算事業の位置づけ等についてでありますが、いわゆるこのゼロ予算事業は、現下の厳しい行財政状況にあっても、県民本位に立ったより質の高い県民サービスを提供していくための一方策として、予算事業としての特段の組み立てを行わずに、職員のマンパワーや県有施設、人的ネットワークなどを有効に活用することにより、行政サービスの提供、県民生活の向上などを図る取り組みを総称したものでございます。
 したがいまして、このゼロ予算事業は、厳密には予算上の事業には位置づけているものではありませんが、予算として計上している共通的な人件費、施設の維持管理費などを有効に活用し、計上している予算事業の推進や補完などを行う取り組みであり、議員御指摘の地域振興部の予算については、草の根地域の維持・再生に向けて、事業予算として計上した草の根コミュニティ再生支援事業とあわせ、職員の工夫や情報発信などにより、地域コミュニティの強化を図っていく取り組みをゼロ予算事業として公表したところであります。
 今後、いわて希望創造プランを着実に推進し、本県の危機を希望に変えていくためには、事務事業の総点検などを通じた施策の選択と集中に努めながら、計上した予算事業と相まって、職員の有するナレッジを十分に活用した創意工夫を初め、県民との情報共有や内外への情報発信、官民協働など、既存の物的・人的資源を有効に活用しながら、厳しい財政状況の中でも最大の効果を上げていく取り組みを積極的に進めていきたいと考えているところであります。
 次に、総合計画の見直しについてでありますが、議員御指摘のとおり、本県の人口減少、少子・高齢化が、総合計画策定時の予測を上回るスピードで進行しているところでありますが、この総合計画自体が、初めて日本の総人口が減少に転じ、これまでに経験したことのない本格的な少子・高齢社会を迎えることを前提として策定されたものであり、その方向性や時代認識は、計画策定時と同じ方向にあると認識しているところであります。
 また、自立、参画、創造による持続的な地域づくりとするこの計画の基本理念は、公正と自立そして共生という私の政策理念とも重なり合うものでございます。
 したがって、人口の社会減を初めとする本県が直面する諸課題を早急に解決していくために、総合計画の後期実施計画として、いわて希望創造プランを策定したところでありまして、本県が直面する諸課題の解決に向け、この計画を着実に推進してまいりたいと思います。
 なお、知事演述でも申し上げましたとおり、あわせて次期総合計画の策定にも早急に着手してまいりたいと考えております。
 次に、行政運営のスピード感についてでありますが、私は、今般策定したいわて希望創造プランにおいて、県民所得を平成12年度の水準まで引き上げることや、地域の活力の低下をもたらす人口の社会減に歯どめをかけることなどを重点目標に位置づけ、総合計画策定時の見通しと現状との乖離の縮小を目指すこととしたものであります。
 このため、平成20年度当初予算において、自動車関連産業への新たな参入や取引拡大を目指す企業の育成支援、安全・安心な農林水産物などの戦略的な輸出の促進など、県民所得を向上するための産業振興に向けた取り組みの強化を図るとともに、県北・沿岸圏域を中心とした雇用の場の創出や、仕事と子育ての両立支援を初めとする子育て環境の整備など、特にも若年層で割合が高くなっている人口の社会減に歯どめをかけるための取り組みを強化し、これらの重点目標の達成に向け、迅速かつ着実に対応することとしたものであります。
 もとより、岩手の衰退を見過ごす危険性については、私も強く危機意識を感じており、今般、危機を直視することから希望を目指していく、いわて希望創造プランを総合計画の後期実施計画として策定したところでありまして、危機意識と確かな希望を県民の皆様と共有した上で、諸課題の解決にスピーディーに取り組んでまいりたいと考えているところであります。
 次に、海外への観光商品や宣伝対策についてでありますが、まず、マレーシアの岩手フェアについては、日本の地域ブランドがまだ確立されていないマレーシアにおいて、ステータス性の高いイオンマレーシアと協力し、日本イコール岩手というブランドの定着を目指そうとしたものでありまして、今回の催事を通じ、岩手の物産品や観光など、総体的な岩手のPRにつながったものと考えております。
 本県の外国人観光客の誘客については、これまで東アジア圏の国々を中心に、旅行者ニーズの多様化を踏まえ、例えば、韓国の旅行エージェントに対しては、ゴルフ、スキー、スノーボードなどの愛好者向けの商品造成を提案するなど、きめ細かな観光情報を提供し誘客に努めてきたところであり、本県を訪れた外国人観光客は、2006年に初めて10万人回を突破したところであります。
 今後も、台湾、韓国など東アジア圏からの誘客が見込めますことから、引き続き誘客を進めるとともに、物産の販売拡大にも努め、観光と物産販売の相乗効果をねらいながら、東アジア市場での展開を図っていく考えであります。
 次に、平泉の文化遺産の世界遺産登録を契機とした取り組みについてでありますが、私は、平泉の文化遺産の世界遺産登録は、本県のあらゆる分野に波及効果をもたらす千載一遇のチャンスであると認識しており、登録後の1年間をいわて平泉年として、私自身、先頭に立って、平泉の文化遺産が持つ価値を内外に広く発信してまいりたいと考えております。
 特にも、観光産業の分野については、観光客の皆さんに、世界遺産エリアはもちろん県内全域に足を運んでいただけるよう、本県の豊富な観光資源を活用して、着地型旅行商品の開発を進めるとともに、ホームページのリニューアルや携帯サイトの充実を初めとする情報発信の強化、また、いわて観光おもてなしマイスターや通訳ガイドの育成による受け入れ態勢の整備などにしっかり取り組み、このチャンスを生かしてまいりたいと思います。
 次に、県立大学に期待する役割についてでありますが、県立大学は、地域の進学需要への対応と本県のあすを担う人材の育成という設立の趣旨から、地域社会の諸課題に対応できる優秀な人材の確保・育成を目的とした質の高い教育・研究を行い、これらを通じて地域に貢献していくことを目指す姿としております。
 県立大学では、こうした目指す姿を踏まえ、本県が抱える地域課題の解決に向けた取り組みを進めているところであり、例えば平成18年度からは、県内の自治体やNPO、企業等から、直接、研究課題を募集し、大学の多様な専門分野の研究者が共同で研究する公募型地域課題研究を創設しており、県が応募した研究テーマも採択されているところであります。
 これからの県政は、地域経営の考え方を基本として運営していきたいと考えており、県立大学においても、質の高い学生への教育を行いながら、その保有する人材や研究成果などの資源を最大限に活用し、地域課題に貢献する岩手の知の拠点としても、大きな役割を果たしていただきたいと考えております。
 次に、県立大学の学生の優先的な採用についてでありますが、県では、多様な人材確保の一環として、一般行政に二つの試験区分を設けております。
 一つは、一般行政Aであり、これは、行政の業務遂行上、一般的に必要とされる法律や経済等の知識や行政事務に必要な能力等を有しているかを重視する試験区分で、従前の上級試験の一般行政に当たるものであります。
 もう一つは、一般行政Bでありまして、これは、さまざまな知識・経験を県政に生かしたいという強い意欲を持った方に、プレゼンテーション等を行ってもらい、課題発見能力や意欲・積極性をより重視する試験区分でありまして、平成15年度に新たに設けたものであります。
 御指摘のあったような学生は、この仕組みを活用して採用することが可能と考えておりまして、県立大学では、既に一般行政Bに2名の合格者を出しておりますが、今後も、県立大学においては、学生が有する能力を一層伸ばし、優秀で意欲ある学生を県庁にも送り出していただきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 定住人口拡大策の基本的な考えについてでありますが、少子・高齢化、人口流出が進む本県におきましては、定住人口の拡大は、活力ある地域社会の原動力となるものと考えております。このため、岩手ファンの拡大と担い手として活躍できる場づくりを重要な視点として、平成18年度から10年間で1万人の定住を目標に取り組んでいるところであり、また、買うなら岩手のもの、雇うなら岩手の人、来るなら岩手の地の定評を確立させるなど、県外者の方々のあらゆるニーズにこたえ得るよう、事業を展開しているところであります。
 県といたしましては、他県との激しい競争に勝ち抜き、定住交流人口を拡大するために、一昨年に設置いたしました県、全市町村、NPO、大学、関係団体等で構成いたします、いわて定住交流促進連絡協議会などによる官民連携の協力体制のもと、三つの取り組みでございますが、一つには、伝統文化、歴史、産業、自然など、本県が持つさまざまな資源を活用しながら、他県と差別化した効果的な情報発信、二つには、観光・旅行についても、狭い枠組みにとらわれず、移住や2地域居住などを視野に入れた健康いやし型滞在観光などの商品開発や多様な体験メニューの提供、三つには、観光などをきっかけとした交流から定住につなげるため、雇用機会の確保や住宅の提供など、行動段階に即した支援や受け皿の整備などに取り組んでいるところでございます。
 なお、特に若年者につきましては、県出身の県外学生への就職相談や情報提供、県内大学進学者の地元定着のため、雇用機会の確保のほか、県外からの小・中学校の教育旅行誘致に力を入れまして、岩手の魅力に子供のころから親しみ、中長期的には、県内大学への進学や県内企業に就職する取り組みを推進してきているところであります。
 さらには、企業誘致は、県外からの若者定住の新たな受け皿にもなりますことから、今般の東芝の新工場誘致など、今後とも、受け入れの主体となる市町村と一体となり、全庁的・総合的に取り組んでまいる考えであります。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) まず、若年者のUターンに対する取り組みについてであります。
 県では、県外事務所に岩手県Uターンセンターを設置して、U・Iターン希望者への相談・職業紹介を実施してきたほか、ふるさといわて定住財団等と共催して、県内企業が参加する岩手県U・Iターンフェアを首都圏で開催してきたところであり、これらにより、県内への就業とともに、U・Iターン希望登録者は本年1月末で227名となっております。
 県内におきましては、Uターン技術者のニーズも高まっており、今後におきましては、登録者等に対するインターネットによる求人情報の提供を行うとともに、首都圏の大学に対する広報を強化し、U・Iターン登録の対象に学生も加えるほか、就業支援員による県内企業の訪問や県内ものづくりネットワークとの連携により求人を拡大し、U・Iターン希望者に対して、これらの情報を速やかに提供するなど、若年者のUターンが促進されるよう努めてまいる考えであります。
 次に、交流人口をふやすための情報発信についてであります。
 県ではこれまで、いわて銀河プラザ等のアンテナショップの活用、物産展・商談会の開催、観光資源の旅行エージェント等への売り込み等を通じまして情報発信に努めてきたところであります。平成20年度におきましては、これらの取り組みに加えまして、東京事務所の職員を、いわゆる営業担当職員として増員し、企業、旅行エージェント、マスコミ等に対して集中的に岩手を宣伝、PRするなど、本県の情報発信に係る取り組みを強化してまいる考えであります。
 また、ホームページ等を活用した情報発信につきましては、今年度、観光情報に関するホームページの全面的な見直しを行い、提供情報の充実とともに、携帯電話からのアクセスも可能となるような取り組みを進めており、観光客等の視点に立った情報発信に努めていくこととしております。
 次に、観光商品や宣伝に係る市町村・国との連携についてでありますが、市町村とは現在、物産展や商談会の開催、観光情報の発信等において、また国とは、外国人観光客の誘致拡大や東北広域での観光情報発信等に連携して取り組んでいるところであり、今後とも、引き続きこのような連携に取り組むとともに、県の観光情報に関するホームページ上におきましては、市町村がリアルタイムで更新できるようにするなど、さまざまな場面を通じて、より連携を密にした形で情報の発信に取り組んでまいる考えであります。
 次に、平泉の世界文化遺産登録を契機とした県内交流人口の拡大策についてでありますが、現在、平泉の観光客集客効果を全県下に波及させるため、旅行商品の開発、情報発信、受け入れ態勢の整備を柱として取り組んでいるところであり、既に、旅行会社と協議を進めてきた平泉と県内各地とを組み合わせた旅行商品につきましては、店頭で販売が開始されているところであります。
 また、情報発信につきましては、これまで首都圏等の旅行会社に対する官民一体となったプロモーションを実施するとともに、観光情報のホームページのリニューアルに取り組み、3月から試験的に、4月からは本格的に稼働の予定であります。
 さらに、交通事業者との協議を進め、県内を周遊できる二次交通の確保につきましても、順次4月から運行予定であります。
 今後は、特に世界遺産登録による誘客効果と昨年の北東北大型観光キャンペーンで培ったノウハウを生かし、7月から9月までの3カ月間を、JR東日本との共同によるいわて平泉・観光キャンペーンとして展開を予定しており、強力に岩手全県の情報発信を図りながら、観光客の集客・県内周遊を図ってまいりたいと考えております。
 次に、商工団体や民間企業など官民一体となった取り組みについてでありますが、昨年5月に県内の行政や経済団体などが一体となって、平泉効果の全県波及を目的として、いわて世界遺産観光推進会議を立ち上げ、県全体としての受け入れ態勢や効果的な情報発信等について取り組んでいるところであります。
 また、県内では、平泉町商工会が土産品の開発に取り組んでいるほか、複数のボランティアガイドの会が平泉の文化遺産について合同で研修会を、NPO法人が平泉で景観フォーラムを開催するなど、さまざまな取り組みが行われているところであります。
 さらに、民間企業におきましても、平泉文化遺産のロゴマークや観光情報を製品に印刷し、情報発信する取り組みも進められているところであり、今後におきましても、こうした商工団体や民間の取り組みとの連携を図りながら、県内全体の盛り上がりを図ってまいりたい、このように考えております。
   〔総合政策室長勝部修君登壇〕
〇総合政策室長(勝部修君) 国民体育大会の主会場となる陸上競技場の新設についてでありますが、国体の施設については、日本体育協会が定めた国民体育大会開催基準要項の細則というものがございまして、そこで、既存施設の活用に努め、施設の新設・改修は最小限度にとどめるとしているところであり、さらには、本県が県民を対象として行いました国体に関するアンケート調査結果がございまして、国体の施設整備について、既存施設の活用を望む県民の意向が強いこと、あるいは厳しい財政状況等も踏まえまして検討されていくものと考えております。
 本年1月15日に国体の岩手県準備委員会が設立され、同日に開催されました第1回総会において、第71回国民体育大会開催方針が議決されたところでありますが、それによれば、競技施設は、県内の既存施設を最大限活用することとされたところであり、この方針により取り進めることになります。
 なお、本年3月末に準備委員会の中に設置される常任委員会を開催する予定でございますが、そこで設置される専門委員会での検討をもとに、国体準備委員会の常任委員会において十分審議され、決定されるものと考えております。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 医療分野におけるソフト開発と辺地のインフラ整備ということでございますが、本県の地理的制約や医療資源の地域格差を解消するといった観点で、医療分野のIT化は極めて有効と考えております。
 医療分野におけるソフト開発につきましては、例えば妊婦健診におけるモバイルCTG─胎児心拍検出装置など、国が先導的に開発しておりますシステムを有効活用しながら、本県に求められるIT化に取り組んでいきたいと考えております。
 情報通信インフラの整備につきましては、県としては、地域での利活用の方向など適時適切に民間事業者にお示しし、その投資を促進するとともに、市町村・企業・NPO等との適切な役割分担のもとで、市町村が推進する情報通信基盤整備計画の策定などに必要な情報の提供や人的・財政的支援に取り組んでいるところでございます。
 医療サービスの公平化についてでございますが、本県では、先ほど申しましたようなインターネット経由で胎児の心拍数データなどを担当医の携帯電話に送信する妊婦遠隔健診システム、いわて情報ハイウェイを活用して岩手医科大学と県立病院等をテレビ会議システム等で結ぶいわて医療情報ネットワーク、それから、小児救急遠隔医療システムなどの運営を行いまして、遠隔医療に取り組んでいるところでございます。今後、これらの各種医療情報ネットワークの取り組みをさらに推進し、地域医療サービスの公平化に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、ドクターヘリについてでございますが、ドクターヘリの導入につきましては、これまでも、ヘリポートの立地条件や医療スタッフを含めた運航体制の構築など、想定される課題につきまして部内で検討してきたところでございます。さらに、検討を進めるためには、これまでの検討結果に基づきまして課題を精査する必要があると考えておりまして、具体的には、ヘリポート候補地の選定や運航に必要な医療スタッフ数の確認、及び病院が負担することとなる運航経費の精査などが想定されるところでございます。
 今後の検討におきましては、ドクターヘリが救命救急センターへの整備が要件とされておりますことから、現在、センターを運営しております岩手医科大学を含む有識者の方々からの具体的な御意見も踏まえまして、引き続き、その実現可能性を確認してまいりたいと考えております。
 財政負担につきましては、現在の国庫補助制度に加えまして、国において、民間団体による助成制度の具体化が検討されているというふうに伺っておりまして、その動向について、今後とも注視してまいりたいと考えております。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 県立大学の教員の社会への積極的なかかわりについてでございますが、県立大学では、開学以来、実学実践重視の教育研究と地域社会への貢献を基本方向としておりまして、また、法人化に当たりましても、県が定めた中期目標においてこの方向を明記しておりますので、県といたしましても、教員の社会への積極的なかかわりを期待しているところでございます。
 これまでにも、県立大学においては、地域づくりや福祉の分野での社会活動を進めるNPO法人の設立運営、また、教員の研究成果を実用化するためのベンチャー企業の設立など、地域社会で活動する主体を形成する取り組みのほか、学生によるボランティアサークルやNPO法人の設立運営の支援、また、研究者の相互交流や地域の情報交換の場を提供するための研究会等の構築・運営などの形で、地域社会にかかわっていく取り組みについても進めてきたところでございます。
 県立大学の教員は、それぞれの分野での第一線の教育研究を行っており、地域のさまざまな課題に貢献できる重要な資源であると認識しておりますので、県としては、御指摘のあったNPOの設立なども含めまして、研究内容の特性等に応じ、さまざまな形で大学の教員の社会への関与が一層進みますよう、大学との連携をさらに深め、ともに努力してまいりたいと存じます。
 次に、県立大学に求められる人材育成像、経営像、地域貢献像についてでございますが、人材面では、県立大学は教育研究のみならず、地域への貢献を大学の基本方向としておりますので、その教員は、こうした大学の方向性に合致した柔軟な対応ができる優秀な人材が必要であると考えております。
 また、県立大学の学生につきましては、明確な目的意識と高い資質を有する学生を確保し、地域社会への積極的な関与や卒業後の進路を展望したキャリア意識を醸成する教育等を行い、本県のあすを担う人材へと育てていくことが求められております。
 次に、経営面では、大学をめぐる環境が厳しくなる中、こうした人材育成に向けまして、より質の高い教育研究を提供していくため法人化のメリットを最大限に生かしていただき、迅速な意思決定による教育内容の見直しや地域課題に対応した研究の展開などを通じまして、教育研究活動を活性化するとともに、中長期的な視点による予算配分や積極的な外部研究資金の活用、また、官庁会計の制約を受けないことを生かした経営効率化などを図っていただき、経営基盤を強化していくことが必要と考えております。
 地域貢献の面では、開学以来、この10年間で培った基盤をさらに生かし、出前授業や小・中・高校教諭との相互交流など、地域の初等中等教育への貢献、地域の企業ニーズに合致した研究の推進、県内自治体への政策提言やアドバイザーとしての活動、地元企業、医療機関、福祉施設等への優秀な人材の輩出などを進めていただきたいと考えております。
 県としては、以上のような期待をいたしておりますが、県立大学におきましては、こうした取り組みを実践・実行していただくとともに、県内の児童生徒や産業界、経済界、そしてその他広く県民の皆様方から、その実践内容や成果について広く認識をされ、また、評価されるような形で大学運営を進めていただきたいと考えているところでございます。
   〔教育長相澤徹君登壇〕
〇教育長(相澤徹君) 県営陸上競技場関連のお尋ねにつきまして、まとめた形でお答えを申し上げたいと思います。
 まず、教育委員会の基本的な考え方として、現在の県営陸上競技場は、引き続き第1種公認の競技場として維持をしていきたいと考えております。現在の県営陸上競技場の第1種としての公認期間は平成22年4月22日まででありますが、平成19年4月に陸上競技場の公認規程が改正をされ、今後、第1種陸上競技場として公認を更新するためには、メイン競技場の現在8レーンの走路を9レーン化をする、走り幅跳びの助走路及び砂場を増設する、さらには、補助競技場の現在1周300メートルのトラックを400メートル化するなどの改修が必要となります。
 これらの改修等を進めるに当たり、課題として2点あると考えております。一つは、改修におよそ17億円程度の経費が見込まれますが、厳しい財政状況下にあり、この財源の捻出をどうするかということであります。二つ目は、国体の主会場等に関して、その動向を見ていく必要があるということであります。国体の主会場ということになれば、スタンド改修等の検討も加えた形で必要となると考えております。教育委員会として、この2点の課題を踏まえつつ、平成21年度予算も含めて、引き続き検討を継続してまいりたいと考えております。
 県が所有する陸上競技場やサッカー場などにおいては、整備後40年以上経過をしていることもあり、競技規則の改正等に対応し切れない状況にあります。しかし、一方では、平成11年の岩手インターハイの開催を契機に、盛岡市の盛岡南公園球技場などが整備されていることから、大きな大会などについては、当面、このような施設を県内全体で有効に活用していくと、そういう考え方が必要だというふうに考えております。
 次に、改正教育基本法関連でありますけれども、この改正教育基本法の内容を教育現場に反映することについてであります。
 今日、教育を取り巻く環境は大きく変化をしており、特にも、大量消費社会への移行や核家族化の進展のもとで家庭や地域の教育力低下が顕著になり、また、近年では、ネット社会の影響なども大きなものとなっております。このような背景のもと、人間関係を取り結ぶ能力が低下をする、あるいは規範意識が希薄化をする、忍耐力・継続力が低下をする、さらには学習意欲の低下など、子供たちの心身が大きく変化をしてきております。
 こういった認識を踏まえた場合、教育基本法の改正を私どもの視点でとらえ直しますと、社会に通用する自立した人間を育てるという教育の目的を改めて確認することの大切さを痛感いたします。また、そうした社会に通用する自立した人間形成こそが、国家・社会の構成員たる国民の育成そのものであり、国際社会に通用する日本人を育てていくことであると考えております。
 このような考え方を踏まえて、これからの岩手の教育をどのように考えていくかについて、県、市町村、学校、すべての教員の認識の共有化のために、現在、岩手の教育を方向づけるための検討案の作成作業を行っております。この検討案の整理を年度内に終え、新年度には校長研修講座、あるいは市町村教育長会議などあらゆる場で検討を深め、改正教育基本法及びその理念にのっとった岩手の教育の方向づけといったものについて議論を深めて浸透させてまいります。
 レイマンコントロールの要素の取り入れについてでありますが、今申し上げましたような、子供たちを社会に通用する人間として育てる人間形成という教育目的の達成が難しさを増している今日、それを打開していくためには、教育に携わる学校そして教師の力、創意工夫を十分に発揮する仕組みが必要であり、その意味で学校や教師の自由度を高め、同時に責任も持たせるという体制づくりが必要であります。
 一方、学校教育は、地域に支えられ、保護者や家庭との信頼関係のもとで成果が上がるものであり、学校は絶えず情報を公開し、家庭や地域の意見を十分に取り込んで信頼関係を構築することが大切であると考えます。
 具体的には、目標を明確にした学校経営の計画を立て、実行に移し、その成果の検証については、学校や教師の自己評価のみならず、家庭や地域の方々の率直な意見を絶えず聞き、改善をしていくという取り組みを強化してまいります。このことをいわて型コミュニティスクールとして取り組んでいるところであり、御指摘のようなレイマンコントロールの要素を取り入れた開かれた学校づくりを推進してまいります。
 新学習指導要領の地域事情に合わせた対応についてでありますが、今般の学習指導要領の改訂に伴って、その基準性やねらいを十分踏まえた上で、各学校が各教科の年間授業時間数を確保した上で学習内容をさらに加えて実施することや、創意工夫を生かした時間割の編成など、各学校が地域や児童生徒の実態に即した教育課程の編成を行い、さらにその取り組みと連動した教材・教具の工夫や製作を進めることができるようにしたいと考えております。
 このような考え方に立って、岩手県全体の教育課程編成のガイドラインであります学校教育指導指針において、各学校の裁量で取り組むことが可能な内容を明記し、教育事務所ごとに開催する地区別教育課程説明会や各種研修会において、学校や教師に徹底をしてまいります。また、このような考え方を踏まえて、各学校においては、独自性の高い教育課程編成を学校経営の中核に据えて、日常的に成果を検証して改善に取り組んでいくことができるよう、市町村教育委員会と連携をして、一つ一つの学校を支援してまいります。
〇22番(高橋雪文君) ありがとうございました。
 知事の答弁などもお聞きしまして、概要としては賛同するというか、理念的には賛同するところは多でありました。しかしながら、やはり私が危惧するのは、その理念はよしとするにしても、では、具体的にどうなんだということだと思います。
 例えば知事のマニフェストでは、今回県民所得を240万円から260万円ということで明確な設定をしているわけであります。しかしながら、この人口減少の問題については、実は知事はマニフェストの中にも書かれておりまして、にもかかわらず、一昨年、平成18年よりも昨年の方が減少率が高いということであります。要は、このままでいけば、政策はやっています、しかし人口はその後減り続けますと、そういうふうになりかねないと、それを私は一番危惧をしているものであります。
 また、知事が明確にマニフェストで掲げております県民所得でございますけれども、この内容を見ると、企業所得、財産所得、雇用者報酬ということで、三つの報酬がある、所得の分類があるわけでございますけれども、岩手県にとって一番如実に低くなっているのは雇用者の報酬なんだと、雇用者の報酬がどんどん減って、人口も減少して、トータルの分野で低くなっている。ここが非常に問題なんだというふうに思うんですね。ところが、実は企業所得、これは大型の工業、工場、関東自動車などがありますから当然ふえていきます。東芝なんかも、フラッシュメモリーなど工場をやればふえてきます。トータルで県民所得が上がりましたというのは、僕はやっぱり方向が違うんじゃないかというふうに思うんです。ここで私たちが真剣になって考えなければならないのは、どうやって県民の活性化を維持していくか、そこに目をつけないとならないのではないか。その一つの指標は、やっぱりここの岩手県の人口を維持することだというふうに思うんです。
 知事の答弁の中で私が非常に気になったのは、知事演述の中で140万県民にという言葉を残しているんです。私は、その認識がちょっと違うんではないか。今、136万人という、そこから4万人も減少している。そして、若い人たちがどんどん1万人規模でこの県内からいなくなっている。当然、盛岡とか県南広域とか、こういう活力がまだあるところは比較的いいですけれども、そのほかの周辺のところは非常に低い。そして、若い人からこの岩手県に人がいなくなっていると、ここをどうやって解決するか、それをぜひお示しをいただきたいというふうに思います。ぜひ、私は知事からしっかりとした答えをいただきたいと思います。
 二つ目は、プライマリーバランスの問題でありますけれども、知事は明確に、要は累積債務を減らすためには今のプライマリーバランス、いわゆるバランスを堅持することが減らす方法だと、しっかりとおっしゃられたわけであります。しかしながら、今回の予算、国がどうのこうのと言っていますけれども、77億円累積債務が上がるということで、そこはやっぱり言葉の矛盾だというふうに思うんです。では、国が税制を変えて削減していったら、どんどん県債というのは上がる一方で下がることはない。そうすれば当然、次世代の人たちに大きな負担を残すということであります。そこを真剣に考えていただかないとならないと思う。
 実は国のある調査で、全国で交付金や補助金など削減されているんです。ところが、岩手県は全国の中で一番その削減割合が高いところなんですよ。それはなぜかというと、僕は、やっぱり国との連携がしっかりできていなかった、これは増田知事の反省でもありますし、私が一番知事に対して危惧するところはそこだと思うんです。私たちの岩手県は、申しわけないですけれども3割自治、7割は国の予算を使わせていただいているんですよ。そういうところにあって、ただただ国の批判をして、そして本当に我々が必要な予算を獲得できない。各大臣とか、そういうところにも行けないような─行っているとは言いますけれども、タイミングで行っているだけであって、本当に必要な予算を獲得するための活動はやれていないと、私ははっきり申し上げたいと思います。そういった意味で、やっぱり県民本位の知事であるならば、こういうプライマリーバランスもマニフェストで明示されたように、しっかりと堅持をしていくと、堅持をしながらこの財政運営を考えて、そして、できれば基金だってそのまま残すように努力を重ねていくと、こういう姿勢が今回の予算編成で私は必要だったんではないかというふうに思います。
 三つ目であります。ゼロ予算に関してであります。
 多分、このゼロ予算が県で行われるとすると、横並びに各市町村、こういう自治体もゼロ予算という形でやると思います。そうすると、私は非常に混乱も大きくなっていくのではないかということを非常に危惧するわけであります。今まで私たちは、その事業に対して、計画を立てて予算をかけて人員を配置して、そして事業として認めて取り組んできた。でも、もし仮にアイデアだけで事業を事業として成立するならば、私は今までも十分できたんじゃないか。それは今までの職員が能力がなかったのか。私はそうは思わないんです。そうすると、ここの考え方は、ゼロ予算という格好いいことではなくて、それは内部的にできることはどんどん改革をして、我々ができるところはこの予算でここまでなんだということも、しっかり明示するのも私は勇気ではないか。そういった意味で、非常にあいまいさを残したのがこのゼロ予算という考え方ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 最後に、総務部長にお聞きしますが、県立大学のあり方であります。
 私は今回の件で、県も当然県民のためのシンクタンクだという思いが非常に強くあると思います。それはぜひ今後ともお願いしたいわけでございますけれども、せっかく多くの知的財産があるこの県立大学を、もっと有効にそして我々のブレーンとして迎えるという姿勢が必要なのではないか。特に緊急的な政策について、行政マンより以上に時間の幅があるのが実は県立大学の方々です。そして、県立大学も地域にもっと貢献したいと、そういう思いを持っているんです。でも、それは各大学教授のそれぞれのテーマで社会貢献をしているだけであって、県から要請されたテーマで、それを一丸となって取り組んでいるということは、今まであり得ないわけであります。私はそこを一番お聞きしたい。それは県がしっかりとした認識のもとで、県立大学のほうに申し出なければその改革もできないわけでありますし、我々も県立大学がどうやって地域に貢献していくかわからないということであります。もっとしっかり我々の政策テーマを県立大学に与えて、そして県民のための、県のための県立大学としての位置づけとして考えていくべきではないか。
 国際化を今回新しい学長になって掲げていますけれども、本当に国際化が県立大学で今まで求められてきた像なのかというのは、まだ疑問に思うんです。それが本当に県民が求めた県立大学の姿だと。私は非常に学長もすばらしい方だと思いますし、今努力されていることもよくわかりますけれども、そうではなくて、やっぱりこの地域に根差した大学として、そういう生まれ変わる時期にあるのではないかというのが強い主張であります。ぜひもう一度お聞かせいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず人口減少対策に関してでありますけれども、140万人県民という言葉は私も意図的に使っておりまして、願望を込めて使っております。140万人に戻ることもあり得ないことではないし、むしろそういう方向に向かっていくのが望ましいと。そのときに応じて139、138、137とカウントダウン的に言っていくと、何か岩手全体として、ああ人口はもう減っていくのだな、しようがないのだなという、そういうムードになる危険性というのを感じておりまして、一種、これはもう気合いでありますけれども、140万人県民という感じでいきたいと思っております。
 人口減少については、こういう施策をやれば人口が絶対ふえるということについてはいろんな研究や試みがあるんですけれども、なかなかこうすれば絶対成功するという政策というのは難しいと思いますが、一方で、こういうことをやればふえるんだろうというような政策はいろんなやり方があるんだと思います。それで所得向上の経済政策でありますとか、セーフティネットの整備、また、子育て支援のような、結局やれることは何でもやるということだと思っておりまして、そういったことを一つ一つ具体的にやっていく。ミクロ的に見ますと、人口が減る減らないというのは、結局、県民一人一人がどういう人生を選択するか、どこに住むか、どこで働くか、また、どういう家族、つまり、結婚するかとか、子供をどうするかとか、一人一人の決断にかかっているというところがありますので、そういう県民一人一人の決断を促すような、心に訴えていくような政策というのを、どんどんやっていくということが重要だと考えております。
 次に、プライマリーバランスと、あとは国の政策との関係でありますけれども、臨時財政対策債─いわゆる臨財債のように、国から地方へのお金の流れを県債の形でやれというふうに言われますと、どうしてもプライマリーバランスは悪化してしまいます。一方で、地方交付税が削減されればそれは悪化するわけでありまして、私はそうしたときに、それに合わせて県の事業を減らして無理にプライマリーバランスを均衡させることで、かえって県民所得が低下したり、それが人口減少につながるようであっては本末転倒だと思っておりまして、県の財政の信頼性を損なわないようにという点で、中期的なプライマリーバランスの均衡ということをしっかり目指しているという県の財政の信頼が確保されれば、その時々、柔軟に県民本位の、生活本位の政策をしていくことが基本だというふうに思っております。そのことがかえって県民経済の活性化、所得の向上から税収の増ということになっていけば、プライマリーバランスの改善にも資することでありまして、それを基本に取り組んでいきたいと考えております。
 また、国から地方へのお金がどんどん減らされていることについては、岩手県にまさるとも劣らぬ島根県のような県も、かなり公共事業等が減っているわけでありまして、今の政府といいますか、ここ数年の政府は、その県のリーダーやあるいは県内の政治情勢を見て、政治的な理由で予算を調製しているということではないと私は思っております。
 島根にせよ岩手にせよ、特に地方の困っているようなところ、そういったところに特に重点的に予算がついた小渕内閣時代に、非常に国から地方へのお金がふえたその反動ということが、岩手や島根に共通する課題として今起きているのだと思いますので、そういう点については、むしろ今こそ、そういう地方に対して予算を厚くする、お金の流れをふやしていくような施策を国に求めていきたいと思っております。
 第3に、ゼロ予算についてであります。
 これは、私は行政の発展段階というものがあり、行政というものは最初の段階は強制力、取り締まりというのが行政の主な手段、第2段階にあっては、お金が行政の主な手段、そして第3段階としては、情報というものが行政の主な手段になっていくという、そういう発展段階というのがあるのではないかと考えておりまして、特に高度成長の時期でありますとかお金が物を言う時代、お金が潤沢であった時代には、そうしたお金を国から地方へ、また、地方の中で動かすことで事業を行って効果を上げてきたわけでありますけれども、情報化社会が発達することによりまして、県が持っている情報を市町村と共有する、民間と共有する、個人と共有する、そういったことで、そこに新しいビジネスの種が育ったり地域の振興が行われたりすることで、所得の上昇も起きるということができる世の中になっていると思いますので、県政としても、そういった可能性に積極的に挑んでいくことが重要だというふうに思っております。
 私は記者会見の場で、県職員に対して、10倍、100倍の力を発揮してほしいということを言ったんですけれども、それは、今までの普通の事業であれば、予算の額がそのまま事業の効果として直接あらわれるということだったと思うのですが、今は本当に出張旅費とか会議の費用程度で、そこから新しい会社やビジネスが起きたりすれば、それこそ投下した予算の10倍、100倍の成果というのが県民経済や県民生活に出てくる、そうした仕事をどんどんやってほしいという意味で言っておりまして、そうした方針は今後も進めていきたいと思っております。
 以上です。
〇総務部長(川窪俊広君) 県立大学は、実学実践そして地域貢献ということを目指しまして、設立の趣旨としては、地域の進学需要への対応と本県のあすを担う人材の育成ということで、まず、こういう学生の教育ということについてきっちり対応していくということ、これを大前提といたしまして、また、その教育のテーマとして地域課題に取り組んでいくということを含めまして、県立大学においては、地域貢献を進めていくということについては非常に強い思いがあり、また努力しているところと県としても理解、認識しております。
 そのための県との連携につきましても、これをさらに強めていこうという方向にございまして、県政、また行政という意味での県政課題のみでなく、市町村との関係、さらに地域の企業の皆様方のニーズにしっかりこたえていこうというような形でさまざまな取り組みを進めつつあり、また、さらに深めていこう、拡大していこうという流れにございます。
 こういった動きをしっかり県庁といたしましても連携・コーディネートいたしまして、大きな流れとしての県立大学の地域課題対応というものがさらに前向きに進みまして、県立大学の大きな仕事なんだという形で定着し充実いたしまして、県民からそのような評価がされるように、県としてもしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
〇22番(高橋雪文君) 繰り返しお聞きしますけれども、まず、知事が考える人口減少をどれぐらい食いとめようとするのか。今、話を聞くと140万人という数値しか出てこないんですが、それを指標にして取り組むのかなと。そうではないと思うんですよね。現実問題として、やはりどれぐらいの人を削減する、その指標をどういうふうに設定するかが私は求められているんだと思うんです。その具体的数値、決まっていなければ決まっていないで、これから考えていただければ結構ですけれども、具体的な数値をやっぱり掲げて県政課題に取り組んでいく、それが必要だと思うんです。
 だから、そういった意味では、総合計画は、計画として目標数値がもう全然違うのだということなんです。理念は合っているかもしれないけれども、目標数値が違うんだ、現状が違うんだということなんです。そこをきちんと認識しながら目標設定しなければ、私は、何をやっているのかわからないという、結局そういう県政になるのではないかと危惧する一人でございます。
 ゼロ予算の事業、これ、答えが私は全然わからないので、ぜひもう一度わかる方、教えていただきたいんですけれども、このゼロ予算、各市町村に対して奨励をするとは言いませんけれども、各市町村がやり始めて、それは認めていくということなんでしょうか。
 そして、県立大学のあり方、僕が聞いているのは、県がどういう連携をとるかなんですよ。地域貢献は、当然やってもらっているんです。県としてどういうふうにやりながら、46億円というお金を投資しているわけですから、その投資に見合った分の我々に対しての恩恵をきちんと示してくれというところが、このシンクタンクの発想なんです。だから、しっかりとした今の県政、大きな課題がたくさんあるわけですよ。そういうものをきちんと伝えていく、そして、それのもとに研究をしてもらう、こういうことが求められているのではないかという質問なんです。だから、答えが違いますので、もう一度お願いいたします。
〇知事(達増拓也君) 人口がどれだけふえるか、ふやせるかというのは、先ほども申し上げましたけれども、つまるところは、県民一人一人の人生の選択にかかわることでありまして、行政がそこに対してどれだけグリップをきかせられるかということについては、さすがに100%、1人何人とか、そういう出生率のコントロールでありますとか、あるいは県外に引っ越すことについて規制をかけるとか、そういうことはできないと思っております。
 一方、出生率に関しては、これ以上下げないというところをいわて希望創造プランの数値目標としておりますし、また社会減については、これは、間接的に県民所得を260万円、平成12年、西暦2000年の水準に戻すということで、そのころの県外への人口流出というのは1、000人とか2、000人とかその程度の規模でありますから、論理的には、そのくらいにまで県民所得が回復すれば縮小するということだと思いますが、ただ、岩手県以外の地域がどの程度の経済情勢になっているか、それがどの程度の魅力あるいは引力を持って岩手の若い人を引きつけるかということにもよりますので、ここは機械的・事務的に数値にこだわって人口減少対策をやっていくよりは、むしろ県民一人一人の心に訴えていくような対策と、あとは経済関係の政策を着実に進めていくことが肝要と考えております。
 ゼロ予算事業については、私がゼロ予算事業という言葉を初めて知ったのは、田中康夫前長野県知事が「日本を」という本を出した、その中で、長野県ではこういうゼロ予算事業をどんどんふやして、予算を使わないで多くの産業振興・地域振興効果を上げているという、いろいろな具体例を挙げて書いてあったのを読んだのが初めでありまして、全国各地の地方公共団体でいろいろ試みられているようであります。
 これは、本当にそれぞれの地方公共団体の主体性の中で創意工夫に基づいて行われればよいと考えておりまして、県として、特にゼロ予算事業をやれとか、あるいはゼロ予算事業を認める、認めないとかということについては考えておりません。
〇総務部長(川窪俊広君) 大学との関係で、さまざまなテーマをお願いしてという部分でございますけれども、既存の仕組みといたしましては、大学のほうで仕組みがございます公募型課題研究のほうに、県としてもやってほしいテーマを出してやっていただいているというようなこともございます。
 また、そういった既存の仕組みに乗った形でのテーマを依頼することのほかにも、大学と県庁との間で意見交換会ですとか、それから各種打ち合わせ会をさまざまやってございますが、そういった中で、大学のほうの研究のこれまでの蓄積でありますとか教員の皆さん方の問題意識などをこちらも知ると同時に、また県のほうで対応したい、または県政課題として考えていることにどんなものがあり、どのような対応ができるか、お願いできるかというようなことについて打ち合わせていく、意見交換をやっているわけでございます。
 そういった取り組みについては、御指摘を踏まえまして、さらにしっかりと新年度以降、また回数をふやしながら、頑張って取り組んでまいりたいと考えております。
〇副議長(佐々木大和君) この際、暫時休憩します。
   午後4時23分 休 憩
出席議員(46名)
1番  木 村 幸 弘 君
2番  久 保 孝 喜 君
3番  小 西 和 子 君
4番  工 藤 勝 博 君
5番  岩 渕   誠 君
6番  郷右近   浩 君
7番  高 橋   元 君
8番  喜 多 正 敏 君
9番  高 橋 昌 造 君
10番  菅 原 一 敏 君
11番  小野寺 有 一 君
12番  熊 谷   泉 君
14番  高 橋 博 之 君
15番  亀卦川 富 夫 君
16番  中 平   均 君
17番  五日市   王 君
18番  関 根 敏 伸 君
19番  三 浦 陽 子 君
20番  小田島 峰 雄 君
21番  高 橋 比奈子 君
22番  高 橋 雪 文 君
23番  嵯 峨 壱 朗 君
25番  飯 澤   匡 君
26番  田 村   誠 君
27番  大 宮 惇 幸 君
28番  千 葉 康一郎 君
29番  新居田 弘 文 君
30番  工 藤 大 輔 君
31番  佐々木 順 一 君
32番  佐々木   博 君
33番  工 藤 勝 子 君
34番  平 沼   健 君
35番  樋 下 正 信 君
36番  柳 村 岩 見 君
37番  阿 部 富 雄 君
38番  斉 藤   信 君
39番  吉 田 洋 治 君
40番  及 川 幸 子 君
41番  佐々木 一 榮 君
42番  伊 藤 勢 至 君
43番  渡 辺 幸 貫 君
44番  小野寺 研 一 君
45番  千 葉   伝 君
46番  佐々木 大 和 君
47番  菊 池   勲 君
48番  小野寺   好 君
欠席議員(1名)
24番  及 川 あつし 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時39分 再開
〇議長(渡辺幸貫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇議長(渡辺幸貫君) 日程第1、一般質問を継続いたします。関根敏伸君。
   〔18番関根敏伸君登壇〕(拍手)

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