平成17年12月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇28番(佐々木順一君) 藤原良信議員の質問中、広域生活圏と地方振興局の見直しについてお伺いいたします。
 きのうテレビを見ておりましたら、知事が出ておりまして、「岩手の未来ズバリ知事に聞きたい」というテーマでありましたから、私もずばり聞きますので、御答弁のほど、お願い申し上げたいと思います。
 さて、一連の県が打ち出す改革は、時代の要請と言ってしまえばそれまででありますけれども、矢継ぎ早の改革案に接するたびに、県民は翻弄され、右往左往を強いられており、いわば消化不良状態にあると思っております。
 先ほど必要性などを知事は強調されましたが、しかしながら、あえてこの時期に県が二つの改革見直しを打ち出したということは、県行政の将来に一種の危機感を抱いているからであると思わざるを得ないところもあります。
 ついては、振興局、生活圏とも現状のままで運営した場合、県民はどのような不都合、不利益、あるいは不便をこうむることになるのか。また、県行政はどの程度の衰退を余儀なくされるのでしょうか。知事の明快な将来予測に基づいた認識についてお伺いいたします。
 あわせて、参考までにお伺いいたします。
 私は、平成11年12月定例会の一般質問で、部局の再編整備に関し、振興局長を特別職的存在にすること、また、広域合併指針が公表された時期でもありましたので、生活圏、振興局、出先機関なども必然的に見直しを余儀なくされると思うので、一括で見直し案を県民に提示すべきではないかと知事にお尋ねいたしました。答弁は、見直しの必要性は認めつつも、一括で県民に示すことは、論点を広げ過ぎ、混乱を招来しかねない。よって、まだ機が熟していないといった趣旨の答弁でありました。
 あれから6年余りが過ぎようとしておりますが、今回の見直しを含め一連の改革は、実態的には一括見直しに近いものとなっております。結果としてこのような混乱を招いております。ついては、なぜこの時期にこのような政策的判断に至ったのか、知事の心の変遷について、お伺いいたします。
 加えて、数字合わせに終始した感のある三位一体改革、先ほども議論がありました。不満を残しながら決着いたしましたが、先ほどの答弁とは異なり、関連の新聞報道によると、意外にも知事は一定の評価をしております。この程度の内容が評価に値するかどうか、問題が残るところでありますが、それは別の機会にただすことにいたしまして、いずれにしろ、今後は早急に国と地方の両者で分権の理念を再確認し、それを共有することから出直す必要があると思っております。
 一方において、第28次地方制度調査会は、道州制のあり方、地方議会のあり方などについて、来年2月ごろに答申を提出する予定になっております。間違いなく分権論議は確実に加速してくるものと思っております。ついては、知事は、全国知事会では地方分権推進委員長などを務められておりますので、将来の地方の統治機構のあり方と知事が今回提案しております二つの見直し、これはどういう関係にあるのか、御見解をお示し願いたいと思います。
 以上、3点についてお願いいたします。

〇知事(増田寛也君) 佐々木順一議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、振興局の見直しの関係でございますが、仮に、今議員がお話になったような観点で見直しを行わないとした場合でございますけれども、今回の見直しの前提が、県と市町村との役割を大きく見直しをする、そして、市町村が行政のさまざまなサービスを提供する中心になる、こういう考え方に立って、これから大幅に市町村に権限移譲していこうという前提に立っているものですから、そうした県と市町村との役割を大きく見直ししていく、そして、その方向に進んでいくというその契機を先延ばししてしまうことになるのではないか。どこかでそれは一度やらなければいけないことでありまして、そういう見直しを行う契機を失する、あるいは先延ばしするということを恐れているものでございます。
 それから、この今回の見直しでございますけれども、もう一つの背景は、人口減少の問題がございます。人口減少が、国としても前倒しでこの減少圧力というものがより出てきておりますけれども、もう既に国全体としても、昨年末、あるいはことしの前半に人口減少の時期に入ったと言われておりますが、本県については、やはりその人口減少の圧力がより前倒しで出てきているわけでございます。そうした人口減少の結果もたらされる、いわば地域としての活力の低下を、しかし、生活を守るために、やはり産業をしっかりと振興していかなければならないというようなことがございます。
 この四つの広域圏を設定して県の仕事の役割の見直しがなされるわけですが、その中で最も県として今後全力を挙げて取り組まなければならない地域産業の強化という方向、あるいはそれに伴います雇用の問題ですとか県民所得の問題、そういうことについての県庁全体の、あるいは市町村一体となって、あるいは東北の地方整備局や経済産業局等の国の地方部局がございますが、そういったところと一体となって進めていこうという取り組みに、影響が出てくることを懸念しております。
 例えば、県南広域振興局、その場合の中心となります産業は、やはり自動車産業が当面は一番中心になると思っておりますし、これは恐らく、今後も未来永劫競争力のある分野だと信じているわけですが、そうしたことについて、より広域振興局が県内をまとめて、そして企業と一体となって機敏に産業振興の手を打っていく。そうした取り組みは、国の機関からも評価されるものになるわけですが、そうした機会を失することになるのではないかということでございます。
 県行政にとって、行政の効率化といったようなことも求められているわけでございまして、今、12の振興局に分けますと、その間の調整業務などが非常に多岐にわたりますので、そうした業務をまた四つに分けることによって、そうした調整業務を思い切って削減することができる。こういう行革的な観点からの意味合いもあるわけでございますが、そうしたことにも、やはり支障が出てくると思いました。
 4圏域に分け、それを四つの振興局で強力に進めていくという体制を早く構築することによって、県民生活にその成果を還元することができると考えているものでございます。
 前に佐々木議員から御質問がございました。私は、まだもう少し時期が早いのではないかという御答弁を申し上げたわけでございます。
 その後、実は平成12年4月に地方分権一括法が施行されまして、これは、財源の問題に触れずに権限だけの問題でございました。最後に残されておりました財源の問題について、三位一体改革が始まりました。まだまだ不十分ではありますけれども、税源移譲の動きが、今回3兆円という形で実現したわけでございます。
 そしてまた、この間、基礎自治体をより強化しようということでの市町村合併、これもまだ、県内でも十分に終わったわけではありませんが、一つの区切りとしての市町村合併が成立する。そして、それを受けた形で、今まさに権限の移譲が市町村に対してよりなされていこうとしている時期。
 それから、人口将来推計でございますけれども、先般発表されたことしの10月の国勢調査の速報などを踏まえますと、この将来推計が、より人口減少の前倒しの方向で動いてきていることによる地域産業の問題もございます。
 こうしたことから言いますと、県の役割もここで思い切って、将来に向けて本当に必要とされる分野に変えていかなければならないのではないか。
 そして、一方で、市町村がそういう強化の方向で動いてきている、その流れも見えてきておりますので、市町村とよくお話をした上で、この体制の見直しにつなげていくことが必要ではないか。そして、それは、今この時期から始めていくことがいいのではないか――県北はもう少し時間がかかりますけれども――という判断をいたしまして、前回の議員の御質問からちょうど6年ほど経過していると思いますが、この間の時代の流れといいますか、分権改革の大きな流れ、あるいは時代の流れを受けまして、こういった判断に至ったものでございます。
 それから、広域生活圏の見直しと将来の地方統治機構、地方制度調査会の関係も議論が進んでおりますが、その関係について申し上げますと、実は、基礎自治体である市町村を強化しようとするスタンスは、本県だけではなくて、そういった地方制度調査会などの議論でもとられているところでございまして、ねらっている方向は一緒であろうと思うわけです。
 この地方制度調査会の議論が完結しておりませんで、途中段階であるので、まだはっきりとしたことを申し上げられる段階ではないんですが、その中では、基礎的自治体を強化するとともに、やはり都道府県の役割が大きく変更するので、都道府県については、道州制の提案まで、最後はそこが結びつくかどうか、そこはよく見ていかなければならないんですが、広域自治体である県のあり方も、より広域性を強める方向で動いてきているということでありまして、それは、今回のこの県での広域圏の見直しなどの考え方とも同じような方向に立っていると私は思います。
 県の仕事の中で、市町村がやれるものについては、今後、できるだけ住民との距離の近い市町村がやっていくと同時に、県の仕事をより広域にとらえて組み直していくという方向性があると思いますので、県内もそういう方向で組み直すと同時に、県外、隣県にも向けて、そういう大きな産業振興の取り組みを、他県の圏域もとらえて、県北であれば八戸圏域の方も視野に、それから、県南であれば宮城の方、あるいは自動車産業であれば山形も視野に入れて、そういった産業振興の方向性をより強化することによって、そして、広域自治体である県の役割をより強く発揮できるようにしていく、これが恐らくこれからの地方自治制度の大きな流れであろうと思っております。地方制度調査会の議論は途中段階ですが、その最終の結論を見る必要がありますけれども、その大きな方向性に沿って、こうした制度も変化させていく必要があるのではないか。
 そして、今回の見直しは、たびたびこうした根幹のところを見直しするわけにはいきませんが、今後の大きな地方自治制度の変化の方向にも対応できる見直しであると考えているものでございます。

〇28番(佐々木順一君) いかに将来を見据えた計画なれども、やっぱり県民の共感と、あるいはこの共感に裏打ちされた理解がなければ、どんなすぐれた改革も早晩破綻を招くことは、これは過去の失敗例が示しているとおりであります。それで、これをなし遂げるためには、知事は、地方分権の進展の予測と並行して、岩手県の将来10年後、この振興局と広域生活圏の編成をにらんでいるわけでありますから、これを同時並行的に、その将来像を県民にかみ砕いて示す必要があると思います。
 これをさらに補うために、四つの広域振興圏でありますから、この中身を具体的に示す必要があるのではないかと思います。例えば、産業振興に基軸を置いているわけでありますから、農業生産高とか、例えば工業出荷高、それから、できれば経済成長率を四つぐらいに示してもいいと思います。あるいは県民所得、そういったものを数年後にはこの段階まで持っていくように努力するとか、必ず達成するという意味じゃなく、この数値に向けて努力していくというようなことを示すことが、県民の理解を得る一つの方法ではないかと思っております。
 それから、さらに権限移譲に関しましても、例えば市町村への権限移譲については、初年度、あるいは次年度においては、かくかくしかじか次のような権限を移譲する。そして、一定の条件が満たされた地方自治体には、追加的に、条件が整えばこのような権限を移譲するとか、いずれにしろ、そういった具体的なものを提示することによって県民との議論がさらに深まって、結果的に県民の理解を得ることになるのではないかと思っております。いわば、極力スケジュール化できるものはした方がいいのではないかという指摘であります。
 具体的には、今のところは県職員の削減計画ばかりが先行しているようなきらいもあります。これじゃ、県民はやっぱり後ろ向きになると思いますので、県民が希望の持てるような具体的なものを示すことによって、議論がさらに深まっていくものと思いますが、知事の御見解をお尋ねしたいと思います。

〇知事(増田寛也君) 県民の理解をできるだけ深める、この考え方は大変大事なことでございます。一つは、権限移譲の関係でございますけれども、やはりこれも、相手市町村とそうしたことについて十分な、具体的な例をもってお話をすることが必要なので、市町村長、市長会、それから町村会ですが、それぞれ分けて行いましたが、そのときに私もかなり突っ込んで市町村長に申し上げました。都市計画法の開発許可ですとか、農地転用許可ですとか、違反広告物の撤去ですとか、要は、今まで県が抱え込んでいて、市町村がぜひ欲しいといっても決して渡すことのなかったような権限も、今回は、真に必要なものについて市町村の方に移譲しますといったような類型を三つほど挙げまして、その話をいたしました。
 具体的に、さらに詳細については、地域ごとに研究会をつくって、今、具体的にそこを提示しておりますので、これについては市町村相手でございますけれども、権限移譲ですから、少し行政の専門家の皆さん方が議論する必要がございます。
 私の方もそういうお話をいたしましたところ、市町村の方でも大分、今までかけ声だけだったけれども、まさに、そういった権限が希望しているものだからということで、そのことに期待感を寄せられる首長さん方もおられまして、そういう研究会を設けてやっているところについては、理解が確実に進んでいると思います。今、そういう研究会をさらに他のところでも設置して、それで議論しようとしておりますから、こういう権限移譲について、今お話がございましたそういうところについては、地域の状況を勘案しながらも、具体論で進めていきたいと思います。
 あと、県民理解ということで、例えば4圏域の産業の姿、あらましそれぞれの圏域の産業の振興の方向で、例えば、県南は自動車ですとか、そういう今までの電気・機械を大事にしていかなければなりませんが、自動車などのものづくり、それから、県北などについては、前の工藤議員の御質問にもお答えしましたが、やはり食料産業を中心にするとか、そういうことは書いてございますが、今、議員がお話になったような経済成長率ですとか、具体的な数字まではまだ落としていないわけです。これは、実際は産業界の皆さん方と相当綿密に議論しないと、今までの県のいろいろな計画をつくるときも、各企業の一つ一つの状況を見ないと本当は数値には出てこないんですが、目標としてどういう方向を目指すかということは、議論していく中で共通理解をとっておく必要があるのではないか。
 経済界の皆さん方からも、個別にいろいろ話を担当のところで、総合政策室などでしに行っていまして、やはりそういう広域で圏域を区切って、そこで強力に産業を振興していくという方向性は、皆さん賛意を示しておりますし、その中で、こういう部門の経済活動が強化できるようにという話も、いろいろいただいているようです。
 まさに、これからそういう形で見直しをして、来年つくると言っている圏域ごとのビジョンなどについて話をしていく中で、今言ったような議員のお話をより綿密に、圏域内の企業をきちんと調査して、アンケートをしたりして、そこをサーベイしていく必要があると思いますから、そういうことをやって、本当に、真に共通認識に立ったビジョンづくりにしていきたい。
 まだ、今現在そういうところまでの具体的な数値など持ち合わせているわけではありませんが、もう作業を今、同時並行的にいろいろなことをやっておりますので、そういう中で、ぜひ今の御意見を生かしていきたいと考えております。
   

〇副議長(藤原泰次郎君) この際、暫時休憩いたします。
   午後4時35分 休 憩
   
出席議員(45名)
1  番 亀卦川 富 夫 君
2  番 三 浦 陽 子 君
3  番 中 平   均 君
4  番 ザ・グレート・サスケ 君
5  番 木戸口 英 司 君
6  番 関 根 敏 伸 君
7  番 野 田 武 則 君
8  番 高 橋 比奈子 君
9  番 高 橋 雪 文 君
10  番 嵯 峨 壱 朗 君
11  番 平   澄 芳 君
12  番 工 藤 勝 子 君
13  番 柳 村 典 秀 君
14  番 飯 澤   匡 君
15  番 田 村   誠 君
16  番 平 野 ユキ子 君
17  番 大 宮 惇 幸 君
18  番 千 葉 康一郎 君
19  番 新居田 弘 文 君
20  番 工 藤 大 輔 君
21  番 平 沼   健 君
22  番 樋 下 正 信 君
24  番 柳 村 岩 見 君
25  番 阿 部 富 雄 君
26  番 斉 藤   信 君
27  番 川 村 農 夫 君
28  番 佐々木 順 一 君
29  番 佐々木   博 君
30  番 及 川 幸 子 君
31  番 阿 部 敏 雄 君
32  番 吉 田 昭 彦 君
33  番 小野寺 研 一 君
34  番 千 葉   伝 君
35  番 小野寺   好 君
37  番 伊 沢 昌 弘 君
38  番 小 原 宣 良 君
39  番 佐々木 一 榮 君
40  番 伊 藤 勢 至 君
41  番 渡 辺 幸 貫 君
42  番 高 橋 賢 輔 君
43  番 藤 原 良 信 君
44  番 佐々木 大 和 君
45  番 藤 原 泰次郎 君
46  番 菊 池   勲 君
51  番 佐々木 俊 夫 君
欠席議員(3名)
23  番 照 井 昭 二 君
47  番 工 藤   篤 君
50  番 佐 藤 正 春 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
   午後4時54分 再 開

〇副議長(藤原泰次郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   

〇副議長(藤原泰次郎君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   

〇副議長(藤原泰次郎君) 日程第1、一般質問を継続いたします。阿部敏雄君。
   〔31番阿部敏雄君登壇〕(拍手)


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