平成18年6月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇30番(佐々木順一君) 民主・県民会議の佐々木順一でございます。
 私は、所属会派を代表し、ただいま議題となっております発議案第1号県議会議員の定数等に関する条例の一部を改正する条例に対し、賛成の立場から討論を行うものでありますが、討論全般に先立ち、昨年6月の議員定数等調査特別委員会設置以来、21回にわたり、総定数の問題点を含む7項目について精力的かつ慎重、丁寧な調査・検討のもとに、最終報告書を取りまとめられました高橋賢輔委員長を初め委員各位の御努力に、心から敬意を表するものであります。
 一方、本県議会では、議員の定数問題等については一般政策と性質を異にした、いわば議会の品位と議員の品格にかかわる問題であることから、先人、諸先輩の方々は、見直しのたびに県民の批判を招かないよう、細心の注意を払いながらぎりぎりの議論を積み重ね、結果として、良識と知恵を発揮し全会一致で意見を取りまとめ、もって、県民の負託にこたえてまいりました。しかしながら、このような県議会の財産とも言える慣例が今回は顧みられず、やがて採決によって決着させなければならない事態を迎えていることは、まことに残念なことであります。
 さて、最終報告書に基づく本条例案の最大の争点は、総定数を48人にすることに合意したにもかかわらず、選挙区ごとの定数配分の問題、いわゆる公職選挙法第15条第8項の適用解釈に埋めようのない意見の相違点が生じたことが、委員会の議論を混迷させた最大の要因であります。具体的には、原則どおり人口に比例した配分によることとし、ただし書きの規定は適用しないとの大方の意見と、ただし書きを適用する意見、すなわち、県北・沿岸振興に配慮してこの地域の定数は削減せず、盛岡、奥州、一関の各選挙区の定数を1削減すべきとの意見の対立であります。
 そもそも、公職選挙法第15条関係では、郡市と人口比例を原則とすることを明記しております。言うまでもなく、これは義務規定であります。その後、昭和44年の法改正により、15条8項に、いわゆるただし書きの規定が導入されたわけでありますが、この特例を適用する場合でも、おおむね人口を基準とすることを前提に、特別な事情がある場合に限って適用されるべきもので、その場合でも、当該地域における従来の沿革などを十分考慮の上、地域間の実質的均衡を図るための最小限度の範囲内にとどめるべきであるという解釈が、通例かつ一般的となっております。したがいまして、ただし書き規定の取り扱いに関しては、拡大解釈による乱用を戒めていることは明らかであり、適用を検討する場合でも、極めて抑制的に対応すべきものであることは論を待たないところであります。
 さらに、条文が定めることができるという表現を用いていることから任意規定であり、常識的には義務規定が任意規定にまさることになります。加えて、市町村合併や全国的な行財政改革の進展という新たな要因により、地方公共団体を取り巻く情勢は激しく変化しており、この変化は、今後とも当分の間続く見通しにあることから、一連の地方分権改革が一定作業を終え安定期を迎えるまでは、難しい課題については極力原点に立ち戻って考える姿勢を保つべきと考えます。特にも、現在進行形にある県内の市町村合併がどのように収束するか予想不可能な中にあっては、議員の裁量が伴うただし書き適用についてはさらに慎重になるべきであり、議会としてもなおさら原点回帰を心がけるべきものと思います。
 もちろん、私自身も、指摘されている格差の解消という政策テーマは、本県においてはまさに古くて新しい県政課題であり、特にも、だれが今日の全国を覆うような格差社会を蔓延させたかはともかくとして、格差社会の是正が国政の最重要課題になりつつある今日、県北・沿岸振興については、議会としても最優先で取り組まなければならない性質のものと認識しております。しかしながら、格差解消を議員定数で補うとの考え方は、政策判断としては次元を異にする発想であり適当ではなく、むしろ、この問題は県政運営に関する一般政策の展開を初め、施策の導入や財政出動などで処理すべきであり、これを集中的に行うことによって対応すべきものと考えます。
 なお、一部識者などの中には、客観性を持たせるために、国の衆議院議員選挙区確定審議会の例に倣い、第三者機関の設置の必要性を説く方々がおります。個人的には私も歓迎するところでありますが、現在の地方自治法では、地方議会には附属機関を設置することが認められていないことから、現実的には不可能であることをこの際明確にさせていただきますけれども、この件につきましては、議会としても法律改正も含め検討すべきものであることを強調させていただきたいと思います。
 以上、公職選挙法第15条の解釈を中心に、格差対策は一般政策で処理すべきことなどさまざま申し上げましたが、県民に信頼される議会の責任を果たすためにも、特別委員会の最終報告書を踏まえた本条例案は、原案どおり可決すべきものと考えます。
 議員各位の御理解と御賛同を賜りますよう、心からお願いを申し上げますとともに、できれば満場一致で可決されることを心から御期待を申し上げまして、賛成討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(伊藤勢至君) 次に、斉藤信君。
   〔26番斉藤信君登壇〕

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