平成18年9月定例会 第21回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(斉藤信君) 富山県内の高校で、必修とされる世界史の授業をしていなかったことが発覚した問題で、残念ながら、本日、県内の複数の高校でも同様の問題があることが明らかになりました。極めて重大で、残念な事態であります。
 それで、私はまず第1に、知事に、今回の事態をどう受けとめ、教育長に対してどういう指示を行ったのか、このことをお聞きいたします。
 第2に、実態について、教育長は、3時までに各高校から報告を求め、5時ごろをめどに発表すると言っております。しかし、3時から県議会が開会している中で、県議会に、こうした明らかになっている実態さえも報告しないという態度は、私は極めて重大だと思うのであります。3時までの報告なら、少なくとも、どれだけの県立高校でこうした事態があったのかは明らかではないでしょうか。この実態について、この開会中の本会議で明らかにするように、私は強く求めたいと思うのであります。
 三つ目に、今回の事態について、今、必要な履修科目についての議論がありました。私からも質問します。
 必要な履修科目について、生徒にどう説明されていたのでしょうか。また、必修科目とはどういう意味を持つのでしょうか。学習指導要領との関係で、このことを示していただきたい。
 卒業の条件として、今、必修科目と卒業単位の問題が議論になっておりますけれども、例えば大学の場合であれば、必修科目を取らなければ進級も卒業もできません。私は、必要な単位数の中にこの必修科目というのは入るのではないかと、このように考えます。世界史が必修で、もう1科目、地理、歴史の科目の履修が必要だというのが学習指導要領の定めですから、世界史の必修というのは、世界史の必修というのは、必ず受けなければならない卒業の条件になるのではないでしょうか。
 四つ目に、私が一番心配をするのは、卒業生の問題であります。いわば、履修をしないで校長先生が卒業と認定した卒業生、これは卒業生には全く責任がありません。この卒業生も卒業の資格に疑義が出るとしたら、まさに人権問題であります。私は、こうした卒業生に、決して新たな問題が起きてはならないと考えるものでありますけれども、教育長の見解をただしたいと思います。
 在校生については、これから必要な授業が履修されることになると思いますけれども、先ほど伊沢議員も質問したように、レポートの提出などの努力で、この50分、70回という必要時間数というのはかなりの程度、いわばみなし効果というものがあるものかどうか、改めてお聞きをします。
 五つ目に、今回の事件の背景に、新聞報道によれば、入試対策のためだった、受験対策のためだったと、校長先生の言葉が紹介をされています。入試対策のためなら、受験対策のためなら、学習指導要領を踏みにじってもいいと、教育委員会に対する虚偽の報告をしてもいいということに私は絶対にならないと思うのであります。
 今、県の教育委員会はコンプライアンス──横文字というのはわかりにくいんですけれども、いわば法を遵守する、このことを言っている最中に、学校の責任者がみずから虚偽報告をするというのは、私は本当に許しがたい事態だと思います。しかし、もっと問われなければならないのは、受験競争の激化、競争主義に私は最大の根本問題があると考えるものであります。この受験競争、競争主義から決別をすることこそ、今、岩手の教育、日本の教育に求められている課題ではないかと考えるものであります。
 最後でありますけれども、この競争主義とのかかわりで、教育の目的と学力の向上対策についてもお聞きをしたいと思います。
 教育の目的は、教育基本法の第1条で、教育は人格の完成を目指すと明記をされています。これ以外にはないのであります。教育の目的というのは、人格の完成を目指す、私はここが揺らいでいるから、当面の目標のためには遵守しなくてもよい、虚偽報告をしてもよいということになると思うのであります。教育基本法、この教育の目的をしっかりと据えることが、今、極めて重要だと思います。
 学力の向上対策について、私は、今、一番模範にすべきは、世界一の学力だと言われているフィンランドの経験を学ぶことであります。フィンランドは、どのようにして世界一の学力を身につけたのか、三つの教訓があります。一つは、競争主義を教育から一掃したこと。そして二つ目には、学校と教師の自由と自立性を尊重していること。三つ目には、少人数学級など、行政が本来なすべき分野で責任を果たしていることであります。
 このフィンランドでは、他人と比較するテストなどありません。私は、本当に学力向上と言うなら、競争主義ではなく、こうした世界一の学力を獲得したフィンランドの教育をしっかりと学ぶべきではないでしょうか。そしてこのフィンランドの教育制度は、日本の教育基本法を学んだと言われているのであります。9年制の義務教育制度もそのとおりであります。とりわけ、人格の完成を教育の目的にするという点も、フィンランドでこそ実施をされているのであります。この点については、私は知事にもこの見解を伺いたいと思います。
 壇上では、以上、質問を終わります。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 斉藤信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事は今回の件について、教育長にどのような指示をしたのかという御質問でございますが、御承知のとおり、知事が教育内容について、教育委員会に指示・命令する立場にございませんので、その点は十分わきまえなければならないと思っておりますが、まず、先ほども控え室の方で教育委員会と少し打ち合わせいたしましたけれども、実態を早急に把握していただきたいということと、それから、やはりどういう原因でこうした問題が起こったのか早急によく調査をして、原因を究明して、そして適切に対処していただきたいと、こう考えております。
 授業時間の不足などは恐らく全国共通の問題ではないかとも思うものですから、何か本県固有の、何か特別な事情があってこういうふうなことになったのか、あるいは、もっと全国広くこうした事態が行われているのか、そういったことも含めて、県民の皆さん方に明らかにする必要があるんではないかと、このように思っております。
 それからあと、フィンランドのお話などを含めて、教育の目的などのお話が、議員のお考えなどの披瀝もございましたけれども、私も教育の目的、まさに人格の完成を目指すということで、今教育委員会、努力をしてくれているものというふうに思いますので、まず、今回の問題、県民にとりましても非常に心配な出来事だと思いますので、早くその原因を明らかにしていただきたいと、このように考えております。
   〔教育長照井崇君登壇〕
〇教育長(照井崇君) 何点か御質問がございました。まず、実態ですが、いずれ、今鋭意その状況を、この時間ですと取りまとめて精査をしていることかと思います。いずれ、その状況につきましてはこれから取りまとめの上、公表したいというふうに考えております。
 それから、卒業単位数と必履修科目との関係、これらについて生徒の関係とか、生徒にどう説明するかということでございますが、いずれ、この関係等しっかりと──今盛岡一高、具体にありましたけれども、生徒、保護者にきちんとそこは説明するように指導してまいりますし、それから次の卒業生、これについては卒業生には何も責任がありませんので、これは卒業生に影響が出ないように、この辺はきちんと説明し、また、大学とか企業等に説明をしていきたいと思います。
 それから、次にレポート等で代替といいますか、かわりがきかないかどうかについては、これについても学校と、その辺しっかり聞いてそれで対応することができるのかどうか、この辺も考えていきたいと思います。
 それから、次に学習指導要領の関係でしたけれども、先ほども申し上げましたように、やはり学習指導要領、法的拘束力がございますので、いかなる事情があるにしてもこの学習指導要領に沿って、きちんと各学校においては教育指導計画を立てて教育活動を推進していかなければならないと考えております。今後、こうしたことのないよう、指導してまいります。
 それから、教育の目的というようなことでございますが、議員御指摘のように、いずれ教育の目的は人格の完成でございますけれども、さらに子供たちが将来しっかり自立していけるように、そのためには、やはり確かな学力、豊かな心とか健全な心身、そういったものを備えるように、バランスよく備えるように指導をしていきますが、特に学力というものは自立していく上で最も基本となるものでございますので、いずれ、この学力をしっかり身につけるよう、今後さらに指導を徹底してまいりたいと考えております。
〇26番(斉藤信君) 私、実態を明らかにしてほしいと求めました。これ、議長にもお願いしたい。この本会議開会中に、わかる範囲でこうですよと、県議会に明らかにするというのは私は最低限の責任だと思いますよ。誠実さが問われますよ。それをぜひ本会議中に、閉会するまでにわかる範囲で報告をすると、それが最低の責任だと思いますが、議長にそういう計らいをしていただきたい。
 二つ目に、私は虚偽報告というのは二つあったんではないか思うんですけれども、教育課程編成表、いわゆるカリキュラムの提出ですね。そして指導要録、これどれだけの単位を履修したかという、私は二重の意味で虚偽報告があったのではないか、これを確認いたします。
 三つ目に、私、一番心配しているのは卒業生の問題なんですが、必修科目をとっていなかった、もしくはもう1科目、2科目必要なものを1科目しかとっていなかったという卒業生が私はいるんだと思うんですね。しかし、これは既に学校長から卒業認定されているということであれば、この卒業資格には問題はないと思うんですが、そこをはっきり答えていただきたい。そうでなければ人権問題になりますよ。それはどうなるのか、はっきり示していただきたい。
 それと、四つ目ですけれども、私はこの根本に、校長先生が言っているように、入試対策のためだったとか受験対策のためだった、ここに受験競争のゆがみがあらわれているんですよ。受験のためだったら何やっても許されるという、こういう体質が根深くあるんではないか。私は現場の先生に聞きましたけれども、どこでもやっているんじゃないかという言葉ですよ。きょうの新聞にも、何年前からやっているかわからないと、こういう報道もありました。極めて私は深刻だと思うんですね。こういう受験競争のゆがみをただすということが、今求められているのではないか。
 もう一つ、学力の問題で間違っちゃならないのは、受験のための学力であってはならないということなんですよ。教育基本法には──教育長、よく読んでいないんだと思うけれども、人格の完成を目指すこの具体的な目標として、5項目ちゃんと明記されているのですよ。受験のための学力なんて全然書いていませんよ。私ね、そこをしっかり見定めて、本来の教育を取り戻す必要があるのではないか、このことを改めてお聞きをいたします。
〇教育長(照井崇君) まず、虚偽報告の件でございますが、カリキュラムの編成あるいは指導要録、これらについて虚偽の記載があったのではないかということですが、いずれ学校からの報告でも、必履修科目を履修しているように報告したとありますので、これは虚偽報告というふうに受けとめています。
 それから、卒業資格の関係ですが、これも何度も申し上げておりますが、いずれ、卒業までに必要な単位数は高校の場合は74単位以上とされております。各学校においては、この必要な単位数を修得した者について卒業の認定といいますか、卒業を認めているわけですが、それと必履修科目の履修との関係、これについて、いずれ学習指導要領の解説書では、必ず必履修科目の科目をこの単位の中に含めるべきこととはされていないとありますが、いずれここは確認します。
 それから、受験対策なら許されるのかということですが、それは幾ら受験対策であっても、学習指導要領に沿ってそういうカリキュラム等は編成していかなければなりません。今後、これについては指導してまいります。
 それから学力、これは先ほど申し上げましたが、いずれ、子供たちが将来自立、自分の頭で考え、行動、自立できる、そのために必要な学力というものはきちんと学校教育の中で修得させるよう、修得できるよう、今後引き続き努力してまいります。
〇26番(斉藤信君) 私、先ほど実態の報告については議長にも求めましたが、教育長もそういう立場をここで表明すれば、部下は持ってくるんですよ、ちゃんと資料を。最大限報告しますと答えてくださいよ。
〇教育長(照井崇君) いずれ、今ちょっと集計中ですので、その状況がわかりませんので、途中経過でも、もしわかるのであれば──ちょっと今大分混乱、こちらもそうですが、高校の方も混乱しているような、先ほどの昼の状況でしたので、果たして、3時を一応めどとしておりましたが、できているかどうか、そこは確認しないといけません。いずれ、そういう状況です。
〇議長(伊藤勢至君) 本会議終了までの間に新しい情報がありましたら、議会に開示をしてください。
 次に、小野寺好君。
   〔36番小野寺好君登壇〕

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