平成19年12月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(嵯峨壱朗君) 自由民主クラブの嵯峨壱朗でございます。
 私は、自由民主クラブを代表し、陳情請願受理番号第15号2008年4月実施の「後期高齢者医療制度」の凍結・見直しを求める請願に対し、以下の理由により、反対の立場から討論いたします。
 第1に、本請願では、後期高齢者医療制度が差別医療を強いると述べていますが、本制度は、複数の慢性疾患を有する後期高齢者について、外来医療や在宅医療を受けている診療内容や患者の意向を踏まえた診療が入院先の医療機関においても引き続き提供されるようにする、外来医療について、複数の疾患を抱える患者を総合的に診る取り組みを推進する、在宅医療において、医療、介護、福祉の関係者が情報共有と連携を行い、後期高齢者と家族が安心、納得できる医療を提供する取り組みや24時間連絡体制の整った訪問看護を推進するなど、後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療の体系を構築しようとするものであり、差別医療を強いるとの指摘は事実誤認であると考えます。
 第2に、本請願には、我々高齢者は、早く死ねということでしょうか、年寄りいじめ、病気をしたらあきらめなさい、早く死んでくださいなどという過激な表現が含まれております。しかしながら、本制度の制度設計に携わってきた多くの方々は、厳しい財政的制約の中で、世界に誇れる国民皆保険制度を持続可能なものにするために、また、後期高齢者の心身の特性によりふさわしい医療の体系を構築するために、真摯に取り組んできたはずであります。こうした多くの人々の努力を踏みにじる過激かつ不穏当の表現は、品位ある当岩手県議会において採択されるべき請願として不適当なものと思わざるを得ません。
 第3に、現在の我が国の社会保障費は、毎年、特に何もしなければ、岩手県の一般会計の予算規模を超える8、000億円ずつ伸びていくものであります。少子・高齢化により、現役世代2人で1人の高齢者を支えなければならない社会の到来を目前に控え、我が国の社会保障制度を持続可能なものにするためには、この8、000億円の伸びを5、000億円に抑制しなければならないという現実があります。こうした中で、社会保障の特定の分野を厚くすることは、それ以外の分野の給付を減らすということにほかならないのであります。医療制度に限らず、社会のセーフティネットは厚いほうがいいに決まっておりますが、それを厚くし過ぎることによって、医師確保や少子化対策など、緊急かつ将来へ向けての大切な財政資源が失われるということに、我々は、政治に携わる者として特に真剣に向き合わなければなりません。
 我が国では、老人医療、介護など、高齢者向け施策と少子化対策に振り向けられる政府支出の比率が30対1であると言われております。日本の高齢者は、世界一の平均寿命を誇り、個別にはさまざまな事情があるかもしれませんが、世界で一番幸せなお年寄りであるとも言われるゆえんでもあります。
 本制度においては、凍結・軽減措置後の平成21年4月から、年額200万円程度の厚生年金を受給する比較的恵まれた方々には、月額6、000円程度、国民年金のみで生活する方には、月額900円に満たない保険料の負担をお願いする制度であります。しかも、来年4月からの半年間はその徴収を凍結、その先10月からの半年間は、その保険料の1割のみを徴収するというものであり、前述の方々は、それぞれ月額600円、90円程度の負担が生じるという制度であります。
 世界的に見れば、比較的恵まれている日本の高齢者に、みずからの健康を維持するためにこの程度の負担を求めるということは、現在の国、地方の財政状況の中では、いたし方ない面があると思わざるを得ません。これを否定することは、世代間の公平という観点から公平感を著しく損なうことになり、日本の社会に深刻な亀裂を生じることになります。
 第4に、本請願は、後期高齢者医療制度について、当分の間、凍結・見直しをすることを求めておりますが、去る10月30日、与党高齢者医療制度に関するプロジェクトチームにおいて、後期高齢者医療制度で新たに保険料を負担することとなる者の保険料は、前述のとおり、国の負担により、平成20年4月から9月までの6カ月間これを凍結し、さらに同年10月から21年3月までの6カ月間、9割削減することが決定されております。本請願の訴えの趣旨は、その大半が既に同見直し案の中で酌み取られており、現時点での本請願の採択は、現行制度にかわる対案を持たない無責任な政治的パフォーマンスのそしりを免れないと言わざるを得ません。
 以上の理由から、私は、議員各位に対して本請願を不採択とすることを求め、私の反対討論といたします。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、中平均君。
   〔16番中平均君登壇〕(拍手)

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