平成19年12月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇42番(伊藤勢至君) 民主・県民会議の伊藤勢至です。
 会派の皆様の御配慮により質問の機会を得ましたことに感謝申し上げながら、逐次質問してまいりますので、当局の積極的な答弁を期待いたします。
 達増知事、あなたは、本年4月の統一地方選挙におきまして、県民からの圧倒的な支持のもと、見事当選されました。改めて敬意を表するものであります。就任後、初めての6月議会での知事演述で、危機を希望に変える、希望王国岩手を目指すと訴えられたことに、若さと─(━━━━━━━)━━━━━ ─情熱の発露を見た思いがいたしました。まさに熱こそ命であります。
 かつて、アメリカのケネディ大統領が就任演説において、合衆国が何をしてくれるかではなく、我々が合衆国のために何ができるかをともに考えていこうと国民の愛国心に訴えたことを思い出し、本県の歴代の知事との政治的視点の違いをかいま見た思いがいたしました。県民の目線に立ってとか、県民とともにと言いながら、その立っている足元が永田町にあったり、県庁の奥の院にあったのでは、口先だけの言葉となります。達増知事は、草の根の活動を身をもって実践されてこられましたし、その延長線上に現在の地位があったとすれば、まさに民草の目線に立っての県政運営が期待されるものであります。
 本県の現状を考えるとき、議会も、そして議会を構成する我々個々議員もまた岩手のために何ができるかを真剣に考え、かつ行動することが今まで以上に求められていると考えます。執行者としての知事と、チェック機関である議会とは、立場は違いますが、岩手県民の最大幸福を願う目的は同じであります。
 そこで、知事として県民に期待すること、そして県民の代表である我々議会と議員に期待することがあれば、この際、お示しをいただきたいと思います。
 温故知新という言葉があります。古きを訪ねて新しきを知るということであります。現在、本県では平泉の世界遺産登録を目指して全力で取り組んでおりますが、今こそ、本県の名誉と誇りにかけて歴史認識を新たにするべきと思います。
 県民の深層心理の中に、岩手は中央に対して歴史上5連敗であるとの気持ちがあるように思われてなりません。大和朝廷の時代に坂上田村麻呂によってアテルイが敗れ、前九年・後三年の役で安倍一族が滅ぼされ、平泉三代の輝かしい平泉文化が源頼朝によって滅ぼされ、九戸政実が秀吉軍に滅ぼされ、おまけに戊辰戦争では朝敵の汚名まで着せられて、賊軍として敗れたと肩を落として話す人がおりますが、私は全く誤っていると思います。戦争という戦いである以上、優勝劣敗の帰趨はおのずから明らかになるものでありましょうが、そのことだけで精神的、文化的あるいは民族の誇りまでもが勝敗づけられるものではないと思うからであります。大和朝廷の時代に都のあった奈良、京都、いわゆる近畿地方から見た東北は蝦夷と言われ、まつろわぬ民が住んでいた。そして、この蝦夷は、まつろわぬばかりか、水稲稲作農業になじまないで、甚だ野蛮で、未開で、そのくせ傲慢で、容易に大和朝廷に服従しない甚だ厄介な人間たちであったということでありますが、これはあくまでも近畿地方から自分たちの物差しで東北を見た思いであって、そのことのみで一方的に優劣をつけられるいわれはないと思うのであります。大和朝廷は、たかだか約1、800年ほど前に大陸から渡来したとされる弥生人によって造営された日本の最初の朝廷であります。
 一方、我が東北の古代史は旧石器時代にさかのぼるわけでありますが、平成4年4月から調査が始まった青森県の三内丸山遺跡は、調査が明らかになるにつれ、日本の考古学史上、江戸末期の黒船来航以上のショックを与えております。4、500年前の縄文の時代に500人から800人の人々が村をつくり、1、500年も継続してこの地で繁栄したということ、そして何よりも人々を驚かせたことは、直径1メートルもの巨大な柱の一部が等間隔に6本も発見されたことでありまして、当時の縄文人の土木技術の、そして文化程度のすばらしさに目をみはったのであります。今日でも一般の日本人が抱いていた縄文人というイメージは、腰みのをつけた素足の人々が小さな集落をつくり、木の実や草の根を採取し、川や海の魚をとり、シカやイノシシやノウサギを狩猟し、細々と生活をしていたという程度のものだったと思いますが、三内丸山の縄文遺跡の発見は、これらのいわば常識的と言われる考え方をこっぱみじんに打ち砕くものでありました。
 本県においては、縄文時代草創期の1万年前の遺跡として軽米町の馬場野Ⅱ遺跡、旧浄法寺町のコアスカ遺跡等があり、4、500年前の遺跡として一戸町の御所野遺跡、宮古市の崎山貝塚、陸前高田市の中沢浜貝塚などがあります。
 宮城県出身の哲学者である梅原猛の著書「日本の深層─縄文・蝦夷文化を探る」の中で、日本の土器で最も古いのは、カーボン鑑定の結果、マイナス1万2、000年と鑑定され、世界の文明の発祥地とされるメソポタミア地方のマイナス8、000年よりも4、000年も古く、日本は土器文化が最も早くから発生し、最も豊かに発展した国の一つであるということができると書いてあります。東北は、決して文化果つるところなどではなく、むしろその内面に、かつての輝かしい文化の記憶を持っている。東北人のあの沈黙と、羞恥とそして誇り、それは恐らく東北人の心の中に潜んでいる過去の高い文化の無意識なる記憶が原因なのであろうか。そのように考えると、日本の文化、言ってみれば日本の深層を知るには縄文文化を知らねばならない。縄文文化を知るには東北の文化を知らねばならない。東北が日本人にとって最も多く故郷のイメージを持っているのは、あるいは日本人はどこかでおぼろげながら日本人の魂の秘密を知っているからではないであろうかと書いてありました。アテルイも、母礼も、安倍一族も、そして藤原三代のだれもが関東や関西まで攻め上ろうと思ったことは一切なく、この東北の地を桃源郷、イーハトーブの地にし、大自然とともにありたいと願ってきたのであります。
 本年は宮沢賢治生誕111周年でありますが、その生涯の中で決して人をののしることがなかった賢治が、唯一、源頼朝を大盗人とののしる詩を書いております。大盗人は、金色堂のすばらしい仏像の威光に押されて、舎利の小塔に手を触れず、焼き払うことをせずに、礼をして立ち去ったと。つまり頼朝が自分の覇のために平泉文化を滅ぼした大盗人と言っているのであります。たった5、000人で6万5、000人の秀吉軍に戦いを挑んだ九戸政実の大いなる反骨心は、今日までその意気を伝えております。戊辰戦争について、原敬は、戦いが終われば官軍も賊軍もない、意見が違っただけであると言っております。これらの歴史を県民が共有することで、東北人の、岩手の魂と誇りを再確認するべきと思います。
 県立博物館は平成22年に開館30周年を迎えます。岩手を発信すべき県立博物館の展示を見直し、次なる世代に申し送るべき心を伝えていくことが肝要と考えますが、いかがでしょうか、知事と教育長の所見を伺います。
 次に、東京ひとり勝ちと道州制について伺います。
 平成14年10月、当時の自由党県連の視察で東京の世田谷区を訪ね、世田谷区役所で区の概要などの説明を受けました。その中の財政についての説明の中で、世田谷区に地方消費税交付金79億円があり、おかしいなと思ったところであります。その後、東京都23区の予算の主な歳入科目を調べたところ、地方譲与税、地方消費税交付金、地方特例交付金などが交付されていることがわかりました。平成17年度は世田谷区に地方譲与税約44億円、地方消費税交付金79億円、地方特例交付金96億円の合計219億円が交付されています。この3項目の23区の合計は2、350億円になり、この10年間で2兆3、500億円が交付されております。東京都は、地方交付税の不交付団体と威張っていますが、23区には地方と名のつく交付金がしっかりと交付されているのです。東京が、あるいは東京23区が地方だと思う人はいるでしょうか。
 私は、3期目の後半、議長の職をいただき、東京での全国議長会に出席してまいりました。その際に、一つの充て職としての長をいただきました。それは財政基盤強化対策県議会議長会会長というものでした。事務局にどういう会ですかと聞きましたところ、数年前までは貧乏県議会議長会と言っていましたが、余り生々しいとのことで名称を変えましたとのことでした。大変名誉な会長職でありましたが、メンバーは、青森、秋田、岩手、山形、そして山陰地区、中国地区、九州、四国からの17県で、これを地図におろしますと、明治維新を仕掛けた薩長土肥と、これに抵抗した北東北という図になります。
 この会の仕事は、4班ぐらいに分けての各省への要望でありました。各県の議長さん方と、地方と名のつく交付金は我々にこそ交付されるべきであるとの意見形成ができたころ、これまでしばらく出席したことがないと言われる東京都議会の議長が全国議長会に出てまいりまして、発言を求め、東京都が裕福だという発言が多いようでありますが、決してそのようなことはありません云々と言うだけ言って帰ってしまいました。どうも、東京都知事にハッパをかけられてきたらしいということでありました。
 その石原都知事がまだ衆議院議員であったころまで首都機能移転構想が議論されていました。平成11年に国会等移転審議会が内閣総理大臣に移転先候補地を答申。栃木・福島地域、岐阜・愛知地域を移転先候補地に、三重・畿央地域は高速交通網などが整備されれば候補地となる可能性ということでした。
 ところが、同年に石原東京都知事が誕生し、平成13年に小泉内閣が誕生し、三位一体改革(地方いじめ改革)を推進し、地方分権論議が活発になり、首都機能移転の議論より道州制を進めることが先だとの機運が醸成され、いつの間にか道州制への議論のすりかえが行われてきたのであります。首都機能移転とは、すべての東京一極集中を改め、その機能を分散することによって、南北に長い日本を均衡ある発展に導こうとする議論であり、防災の面からも、環境の面からも、特に我々地方にとって夢のある希望の持てる天下国家のための議論であったと思います。しかし、ある意味で総理大臣よりも権力の集中している東京都知事に石原慎太郎が就任し、舌先三寸の言葉のペテン師と言われた小泉総理が誕生し、地方切り捨てを何とも思わない竹中平蔵の口車に乗って、さらなる東京一極集中を結果的に進めてきたこととなります。石原慎太郎は裕次郎の兄であります。石原裕次郎はよかった。裕次郎の勧善懲悪の映画は何度見ても元気を与えてくれました。私たちの時代のスーパースターでありました。しかし、兄の慎太郎はいけません。私には、平泉の文化をおのれの征服欲だけで攻め滅ぼした源頼朝とラップして見えます。
 東京都は2016年の第2回目となる東京オリンピック招致に手を挙げ、同じく手を挙げた福岡市とともに、昨年8月30日の国内立候補都市選定委員会の審議に付され、投票の結果、国内立候補都市として決定されました。東京都は平成18年度に1、000億円を積み立て、平成21年度までに4、000億円を積み立てる計画書を提出し、JОCから高い評価を得たということであります。一方、これに対し福岡市は平成18年度に準備金10億円の計上にとどまり、歯が立たなかったのであります。
 道州制と言えば聞こえはいいかもしれませんが、財政基盤の弱い青森、秋田、岩手、山形が組んだとしても、財政はどうなるものでもありません。数学ではマイナスとマイナスを掛ければプラスになるかもしれませんが、地方の財政はそうはいきません。北海道開発庁、沖縄開発庁はありますが、東北開発庁はないのであります。
 知事はかつて外務省に勤務され、その後、衆議院議員としてこの国のありようを見てこられました。その視点に立って、日本の、そして東北の中の岩手の来し方と行く末についての御所見をお示しください。
 次に、本県の財政再建、組織づくりについて伺います。
 今回の質問に当たり、当局から取り寄せた資料の中に、わざわざ黄色く塗った数字がありました。競馬基金設置関係を除いた場合と注がついており、277億5、000万円の繰出金なかりせばの無念の思いが強くにじむものでありました。今や岩手競馬の問題は、馬事振興としての農林水産部の案件を超えて、完全に財政の問題であります。延滞金の加算がクローズアップされてきた森のトレーの案件、各種繰出金の問題、そして何よりも大きく立ちはだかる予算規模の倍の普通会計県債残高1兆4、400億円余の問題があります。これらの問題は、財政再建に向けて喫緊の最重要課題であります。137万人乗り組みの岩手丸の船長たる知事でなければできないことがあります。
 釈迦に説法、越権行為と言われかねないことをあえて申し上げます。それは、県内最高の頭脳集団たる県職員が危機意識を共有し、目的意識を一つに絞り火の玉となること、すなわち人事にあると思います。現在が平常時とはだれも思っていません。非常事態であるとの認識は一致していると思います。組織力を上げて取り組むためには、トップから一兵卒に至るまで目的を理解し、行動することが肝要であります。勇将のもとに弱卒なしであります。新しい酒は新しい皮袋にということわざもあります。今後、来年度予算編成、そしてそれを実行するための人事へと移りますが、組織の常として自薦他薦の動きもありましょうが、そういうことに惑わされずに、人望があり、肝の据わった、是々非々をはっきりと物申す人材をこそ登用するべきであり、それを断行することが不可欠であります。財政再建、そしてこれをなす組織づくりについて、差し支えない範囲でお示しください。
 次に、本県の重要なインフラ整備についてでありますが、まず港湾整備について伺います。
 昭和35年のチリ地震津波で大きな被害を受けた四つの重要港湾を抱える市に、今後の防災対策として、湾口防波堤か湾内堤防のかさ上げを選ぶかの選択が、国、県から問われ、大船渡、釜石、久慈は湾口防波堤を、宮古は湾内堤防のかさ上げを選択いたしました。ここに来て湾口防の完成した大船渡港、釜石港、そしてこれから直轄事業費重点配分となる久慈港と、湾口防を有しない宮古港との利活用の展望が随分変わってきたと思います。
 平成15年9月に北海道釧路沖で発生したマグニチュード8.0の地震により、宮古湾に60センチの津波が襲来し、二、三日後に収穫を控えた養殖棚が複雑に絡み合い、全滅の被害を受けました。また、先般は、宮古工業高校機械科3年生諸君の宮古湾内の津波の状況という研究発表がなされ、全国大会で優秀賞、東北大会で最優秀賞を受賞いたしました。模型を使って宮古湾の津波が堤防を越えて木材と一緒に市街地まで浸入してくる様子は迫力があり、それを見た人々は、津波の恐ろしさを改めて認識しているようでした。県においては、鍬ヶ崎地区の堤防設置について動き出していただいたことに感謝を申し上げます。今後の取り組み状況について説明をいただきたいと思います。
 今さら湾口防波堤があればと言ってもせんなきことでありますが、かつて北上山系開発にあわせてのグレンセンター誘致に失敗し、中国木材誘致もならなかった宮古港を、今後どのように利活用していこうとしているのか、伺います。今後の世界的な食料危機を考え、この際、食料備蓄基地や自衛隊の補給基地、あるいは各種海洋調査船の補給基地誘致は荷役時間の少ないものとして可能と考えますが、当局の考え方を伺いたいと思います。
 あわせて、貿易構造のアジアシフトに伴う物流の変化、太平洋側の空洞化について伺います。
 これは、平成18年7月、青森県で開催されたフォーラム「東北は訴える」の基調講演を行った寺島実郎氏の資料によるものですが、2004年、世界港湾のコンテナ取扱量は、1位香港、2位シンガポール、3位上海、4位深川、5位釜山とあり、ちなみに東京20位、名古屋27位、横浜31位、神戸32位とあります。これは、目覚しい経済発展を続ける中国、韓国等のハブ港湾に物流が集中してきているあらわれであります。
 関連して、日本では太平洋側から日本海側へと物流のシフトが起こって、全国平均の伸び率4.6%に対し、日本海側11港は13.4%ということでありました。去る11月6日、7日の2日間、港湾議員連盟で山形県の酒田港と秋田県の秋田港を視察してまいりましたが、秋田港にあってはロシアを視野に入れているということで、アジアシフトの胎動を感じてきたところであります。
 さて、そうなると、取り急ぎ、宮古・盛岡・秋田横断道路がさらに重要性を増してくると思います。秋田の担当者も、岩手さんにも協力していただいてコンテナの集配に努めたいと言っておりました。私は、宮古・盛岡・秋田横断道路にいまいち秋田の乗りが悪いのは、戊辰戦争の遺恨が残っているため─秋田藩の死者460人、南部藩126人、文献によっては数が違いますが─と思っており、秋田、岩手の県境で合同慰霊祭を実施し、しかる後に交流をと提唱してきたところであります。先般の視察の際に、秋田の担当者に両県でまずやるべきことがありますねと聞きましたら、にやりと笑って、私もそう思いますと言っておりました。かつて県庁と市役所に資料を送ったことが今効いているのかなと思ったところであります。秋田県と真に友好関係を築くにはいい機会と思います。これは本県の得策と言えるのではないでしょうか、知事の考え方を伺います。
 次に、未利用の海洋資源の活用について伺います。
 日本の国土面積は世界195カ国の中で60位でありますが、排他的経済水域─EEZが施行されたことにより、200海里─1海里は1、852メートル─イコール370キロの範囲内の水産資源及び鉱物資源などの非生物資源の管理や海洋汚染防止の義務を負うこととなりました。そして、これにより領海EEZの広さでは世界第6位となっているのであります。我が国は漁業や海運などが盛んな海洋国家であり、貨物量の99.7%は海から出入りしているのであります。海について質問するには、当然水産漁業についてが基本でありますので、2点について伺います。
 まず、本県の主要魚種でありますサケについてであります。
 平成8年度の7万トンを頭に、9年度5万トン、10年度3万3、000トン、11年度、12年度が2万2、000トンと激減し、以来3万トンを切っている漁獲量が続きました。2年前の平成16年度は3万トンを超え上向くかと思ったところ、また3万トンを切って現在に至っています。かつて7万トンとれたサケがなぜ帰ってこないのか、なぜ半分以下まで落ち込んでいるのか、県はこれまでも当然調査を続けていると思いますので、漁民の方々がわかるような説明をいただきたいと思います。
 先般、富山湾で海洋深層水を使ってのマダラのふ化養殖の記事を見ました。本県沖にも海洋深層水が存在し、800メートルの深さから海水をくみ上げ、塩をつくっている会社があります。本県の目の前の海は大陸棚となっており、深さ300メートルくらいのところは格好のタラ類の生息地であります。本県もこのような養殖を考えてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、未利用の海洋資源の活用について伺います。
 今から10年前に、日経新聞で初めて燃料電池なる文字を目にし、これは将来おもしろくなると注目しておりました。その後、いろいろなメディアに取り上げられ、平成13年には国土交通省の初認定の燃料電池車が公道試験という記事が載り、ディーラー各社がCO2を全く排出しない次世代のクリーンカーとして開発を競い合うようになってきたのは御案内のとおりであります。
 携帯電話やコンピューターの電源に最適と言われるリチウム電池は岩手大学の熊谷教授の長年の研究の成果でありますが、宮崎県が通産省の支援を受けて海水からの採取に着手し、平成12年から松下電池工業が量産を開始しております。自動車の軽量化にはマグネシウムが注目されており、これも岩手大学の森教授の研究の成果であります。
 リチウムもマグネシウムもメタンハイドレートも海水、海底の資源であり、平成15年、政府は、大陸棚調査を抜本強化する方針を打ち出しました。数十兆円の資源が眠るこの調査にいち早く本県が手を挙げるべきだと提案し、平成13年と15年に国に対する要望書を出してもらいましたが、いずれも単発でありました。大体このような情報が新聞に載ってからでは遅いのでありまして、東京事務所の職員の情報収集をもっと積極的に行う必要があると考えます。三陸の海を活用して沿岸に新しい産業を創設できると考えますが、どのように取り組むつもりか伺います。
 終わりに、御当地ナンバーについて提案したいと思います。
 本県は世界に誇る平泉の文化遺産の世界遺産登録を目指しており、遺産登録後1年間をいわて平泉年としての各種施策を大々的に展開するとの報道を目にいたしたところであります。大いに賛同し、成功に向けて協力できることがあれば微力を尽くしたいと思います。
 そこで、車両の御当地ナンバーとして平泉ナンバーの取得を目指すことを提案いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 私はこれまで、三陸ナンバーを取得し、三陸沿岸が大同団結する意識の醸成を図ることは地域振興に必要なことと思いこれまでも提案してまいりましたが、諸般の事情により進展いたしておりません。しかし、平泉は中心に据えるシンボルであるのでありまして、私は、平泉ナンバー取得の暁には、平泉ナンバーの車両で鎌倉のまちを走りたいと思っているのであります。
 以上で質問を終わります。答弁によりましては再質問をいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 伊藤勢至議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、ケネディ大統領の演説を引用しながら、県民と県議会・議員に期待することについてお尋ねがありました。
 私は、これからの地域づくりは、県民一人一人がふるさと岩手のために何ができるのかを考え、みずからの判断と責任において行動し、多様性と創造性にあふれた地域づくりを進めていくことが重要と考えております。岩手という存在は、そのために何ができるか問うに値する存在であり、また、実際に行動するに値する存在であると私も確信しております。今、策定を進めている新しい地域経営の計画においても、県、市町村はもとより、県民、企業等の役割分担を明らかにしながら、県民の総力を結集し、地域資源を最大限に発揮していく地域経営の視点を重視したところでございます。
 岩手県においては、これまでも県内各地において地域の資源や魅力を生かしたさまざまな地域活動が展開され、また、本県経済は、公共投資の抑制などにより行政の財政規模が縮小する中で、近年、プラス成長を続けるなど、企業を中心として民間力が発揮されていると認識しております。今後においても、県民の皆様には、地域コミュニティの活性化や子育て支援、高齢者介護などさまざまな分野において地域活動を実践する役割を期待するとともに、企業等には、本県のすぐれた人的資源や質の高い農林水産物、多彩な観光資源などを活用しながら、雇用の拡大や県民所得の向上などに資する安定的かつ積極的な企業経営を期待するところでございます。
 また、岩手県議会は、政務調査費の透明性の確保や議員提案条例の制定など、全国的に最も積極的に改革に取り組んでいる議会であると承知しておりますが、二元代表制のもと、首長である知事とともに民意を代表する機関として、チェック・アンド・バランスを図りながら地域経営に関する責任を共同で果たしていくべきという観点に立てば、今後においても、互いに厳しくも協調しながら県民生活の向上に向けた政策的な議論を進め、県民の負託にしっかりとこたえていくことを期待するところでございます。
 次に、県立博物館の展示の見直しについてでありますが、岩手県の豊かな自然の恵みの中で、縄文時代から地域の風土に根差して築き上げてきた自然との共生の文化はアテルイや安倍氏に受け継がれ、さらには奥州藤原氏によって平泉文化として大きく花開きました。また、こうした精神風土は、近代においても、新渡戸稲造など思想、学問等の分野で多くのすぐれた人材を輩出してきております。このような本県の歴史や文化は県民に生きることの誇りと喜びをもたらし、人や地域の結びつきを強めるとともに、世界に通用する岩手のブランド力─ソフトパワーになるものと考えています。特に、平泉の文化遺産の世界遺産登録の実現は、縄文時代以来の岩手の誇るべき歴史や文化が世界に認められることであり、県民に大きな自信と誇りを与えるものであることから、登録に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。
 このような認識のもと、現在、岩手の歴史や文化を受け継ぎながら、新たな多様な文化、芸術を創造するとともに、次世代に継承するため文化芸術振興基本条例を制定しようとしているところでもございます。
 この条例の中で文化施設の充実についても検討を進めることとしておりますが、県立博物館については、今後、議員の御提言の趣旨も踏まえながら、本県の誇るべき歴史や文化を次世代に伝えていく観点から学芸員による調査研究の強化を図るとともに、その成果を生かした、県民にわかりやすい展示や解説の工夫、さらには全国への情報発信などについて一層充実する方向で検討してまいりたいと考えております。
 次に、東京ひとり勝ちと道州制についてでありますが、私は、東京への最近の一極集中は、内需拡大型の経済社会への転換を目的として行うべきであった構造改革が、国の財政の帳じり合わせを目的とする改革に変質した結果、所得の低下、雇用の悪化、人口の流出など地方が著しく疲弊したことによるものと認識しております。一方、成熟した社会と言われるヨーロッパ諸国では、地方に活力があり、人々が田舎において生き生きとしていて豊かな生活を送っていることなどから見ても、これから日本が進むべき方向は、一極集中ではなく各地方それぞれが豊かになることであり、そのための構造改革が本旨であると考えているところでございます。
 こうした観点から、私は、地方を豊かにするためには、真の分権改革を進め、現在、中央に集中している財源と権限を地方に移し、住民に近いところで地域のニーズに合った行政サービスを提供できる体制を整備するとともに、経済のグローバル化に対応し、県の枠を超えた広域的な連携も行い、力強い産業の振興を図っていく必要があると考えているところでございます。
 したがって、道州制の議論も、こうした広域的な経済連携やその基盤である社会資本整備を円滑に図る上で傾聴に値すべきものとも考えておりますが、一方で、東北という大きな地域を広域的自治体とした場合、そこに暮らす住民にとって、東北全体を把握した上での意思決定等の住民自治が可能であるかなど、真の地方分権となるための課題は多いと考えておりまして、より広範な議論が必要であると認識しております。このような視点に立って岩手を考えますと、現在の本県や地方の置かれている危機的状況をつくり出している原因は主として国の政策にあるものの、本来、岩手県には自立できる力があり、県民の総力を結集することで県民一人一人が確かな希望を抱く県土が実現できるものと確信しているところでございます。
 次に、本県の財政再建、組織づくりについてでありますが、御指摘いただいたような財政問題については将来に問題を残さないように適切な対応をしていきたいと考えておりますが、基本的には、地域経済の活性化により、雇用の創出や県民所得の向上、人口流出の抑制などを実現し、その効果を県財政にも波及させられるような地域の経営に全力を尽くしてまいりたいと考えます。そのためにも、現在策定中の新しい地域経営の計画に沿って、当面の収支不足についてあらゆる手だてを講じて対応しつつ、この計画に基づく積極的な施策展開を図り、希望王国岩手の実現に向け、県庁全体が一丸となって取り組んでいかなければならないと認識しております。
 お尋ねのあった県の人事に関しましては、私の県政推進の基本方針や、この新しい地域経営の計画に盛り込む地域経営の方針を知事と職員とがしっかりと共有しながらさまざまな県政課題に取り組んでいく力強い組織づくりを行っていくことが重要であり、具体的な人材の配置に当たっても、このような観点に立ちつつ、適材適所の人事配置を行ってまいりたいと考えます。
 次に、岩手-秋田間の道路整備についてでありますが、国道106号と国道46号から成る宮古・盛岡・秋田横断道路は、広域的な物流を支える高速交通ネットワークとして重要でありますことから、両国道を地域高規格道路に指定するとともに、現在、本県では国道106号において宮古西道路や簗川道路、都南川目道路、国道46号において盛岡西バイパス、秋田県では国道46号において角館バイパスを整備しているところでございます。
 県としては、今後とも国道106号と国道46号の一体的管理を目指して、国に対して国道106号の直轄指定区間編入を積極的に働きかけるとともに、これら路線の整備促進に一層力を入れてまいりたいと考えております。
 また、岩手、秋田両県の連携は、これまで、戊辰戦争などの困難な歴史を乗り越えて、先人たちが両県の発展を願いながら築き上げてきたものと理解しておりまして、平成13年度からは北東北3県で人事交流を行うとともに、NPO法人秋田・岩手横軸連携交流会の活動など、民間主体による連携の輪も着実に広がってきているところでございます。両県間の友好については、引き続き秋田県と情報交換を密にし、関連団体等の意見も聞きながら、より一層の発展に努めてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔県土整備部長西畑雅司君登壇〕
〇県土整備部長(西畑雅司君) 鍬ヶ崎地区の津波対策については、鍬ヶ崎地区の将来のまちづくりを踏まえた施設の検討が必要であり、計画策定段階から宮古市と緊密な連携を図りながら取り組んでいく必要があると考えてございます。また、鍬ヶ崎地区は、各種漁業活動や水産加工の利用が盛んな地域であることから、地域住民は無論のこと、漁業関係者との合意形成が最も重要な課題であり、県としてはこのことを最優先に取り組んでいきたいと考えております。
 今年度は、津波対策案の経済性や地域に与える影響をさらに検討するため地盤調査などを実施しているところであり、この調査結果を踏まえ、県の津波対策案を取りまとめた上で地域住民や漁業関係者などに説明を行い、合意形成に努めていくこととしております。県としては、今後とも、国、市、関係機関との調整を重ねながら事業化に向けて取り組みを進めてまいります。
 次に、宮古港の今後の利活用についてでございますが、まず、食料備蓄基地については、現在、本県港湾での食料備蓄は行われておりませんが、今後、備蓄の可能性について関係機関等からの情報収集に努めてまいりたいと考えております。
 自衛隊の補給基地につきましては、自衛艦隊はそれぞれの母港を有していることから補給のための自衛隊施設を誘致することは難しいところではございますが、水や食料などの補給の際、本県港湾を利用することが可能であり、PRに努めてまいりたいと考えております。
 また、海洋調査船の補給基地については、海洋研究開発機構によると、水などの補給の際、特定の港湾に寄港しているわけではなく、最寄りの港湾に寄港していると聞いており、本県港湾に寄港した実績もあることから、今後も寄港を働きかけてまいりたいと考えております。
 県では、現在、出崎地区において観光交流拠点にふさわしい魅力的な空間を創出するため、観光船埠頭の整備を進めているところでございます。また、本年10月から臨海部に水産加工業の工場が稼動を開始するなど、新たな雇用が創出され、さらに拡大が期待されているところでございます。
 今後におきましても、臨海部への企業誘致を含め取扱貨物量の拡充に努めるとともに、議員御提案の各種船舶の寄港などを通じて宮古港の利活用が図られるよう、地元と連携してポートセールスに取り組んでまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、サケの漁獲量の激減のお尋ねについてでございますが、本県におきましては、放流した稚魚の回帰率低下の要因の解明に向けまして、平成11年度以降、国の研究機関との連携を図りながら調査研究を行ってきたところでございます。
 この結果、稚魚の生残率は、放流時期である春先に親潮が沿岸域を南下し、えさとなるプランクトンの発生量が多い年や、北洋への稚魚の回遊ルート、いわゆるサーモンロードとなります表面水温が5度から13度までの海域の面積が広い年に高くなる傾向があることがわかってきているほか、県内のふ化場の実態調査の結果からは、過密飼育や放流適期前の放流が多いことが判明し、このことが回帰率低下の要因の一つになっているものと推測されております。
 また、当初指摘されておりました北洋でのサケの収容力がえさなどの関係から限界に達し、回帰率の低下につながっているとの想定につきましては、我が国の稚魚放流数の約55%を占め、本県同様に回帰率が低下した北海道で平成13年度以降回帰率が徐々に回復していることなどから、その関連性は薄いと考えられております。
 しかしながら、サケの生態にはいまだ不明な点が多く、回帰率の低下の要因について十分解明されていないことから、沿岸域の水温やプランクトンの発生量の調査のほか、平成13年度から行っております耳石温度標識放流により、稚魚の移動や成長、及び親魚、いわゆる成熟したサケの回帰状況の調査を引き続き実施いたしまして、その要因の解明を図りますとともに、当面、回帰率の向上対策として、各ふ化場に対して、飼育池ごとに水量を考慮した稚魚の生産計画を作成するなどのきめ細やかな飼育管理と適期、適サイズでの放流の徹底を指導しているところであり、今後とも、このような取り組みにより、秋サケの漁獲量の増大に努めてまいりたいと考えております。
 次に、マダラのふ化養殖についてでありますが、議員御指摘の富山湾の事例は、近年、日本海のマダラ資源が激減していることから、国の試験研究機関と富山県水産試験場が共同で平成7年度から海洋深層水を用いた種苗生産技術開発に取り組み、平成17年度に50万尾レベルの生産技術ができたものでございますが、現時点では、生残率が低いことなどから種苗生産単価が割高になるなど、その実用化に向けてはコスト面や放流効果の検証などの課題があると伺っております。
 マダラは高級魚でございまして、本県におきましても漁業者のニーズが高い魚種であり、その資源の持続的な利用が求められておりますが、水産技術センターの調査によれば、本県沖合のマダラ資源は、近年、高水準で推移いたしておりますことから、その漁獲量も過去に比べ増加傾向で推移しており、平成17年には過去最高の8、600トンが県内で水揚げされております。このようなことから、本県におきましては、まずはマダラ資源の保存と管理が重要な課題であると考えており、関係漁業者に対し、資源の適切な利用と管理を指導しているところであります。
 また、海洋深層水につきましては、本県におきましても民間企業が深層水を利用した氷を活用してサンマの鮮度保持や食品開発を行っている事例がございますが、県といたしましても、深層水の清浄性や低水温性などの特性を生かし、ウニなどの生鮮水産物の鮮度保持や生食用殻つきカキの滅菌処理などへの活用について検討してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) 未利用の海洋資源の活用についてでありますが、本県沿岸地域には、東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター、北里大学水産学部、岩手県水産技術センターなどの研究機関が立地し、それぞれが有する海洋研究ポテンシャルを生かした研究が進められており、県では、独自の公募型研究資金により海洋生物や海洋環境に関する研究開発を支援してきたところでございます。
 一方、議員から御質問の中にありましたマグネシウムやリチウムについては、海洋中に無尽蔵に含まれ、また、次世代の原材料資源として期待されているところでありますが、現在はそのほとんどが輸入に依存せざるを得ない状況にあり、こういった中、東京工業大学では太陽光励起レーザーを利用したマグネシウムの採取について実証試験を実施していることから、本県としても、この技術導入の可能性について検討するため、本年7月には大学を、また、10月には北海道千歳市の実証プラントを訪問し、今後の取り組み等について話を伺ったところでございます。
 これらの未利用海洋資源の活用につきましては、今後、本県の新エネルギー分野の発展や地域の産業活性化に向けて大いに期待されるところであり、国等の関係機関とも連携しながら、また、産学官連携による海洋資源活用に係る研究会の設置、立ち上げ等を通じ、本県での可能性に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
 また、海洋資源を利用した生命科学分野などの新たな産業群の発掘と育成につきましても、研究機関の誘致や関係機関の研究フィールドとしての活用に取り組みながら、本県沿岸地域での海洋関連産業の創出に努めてまいる考えであります。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) いわゆる御当地ナンバーについてでありますが、これを所管する国土交通省は、地域振興や観光振興との観点から、これまでの自動車検査登録事務所ごとの地域名表示にかかわらず新たな地域名表示も認める方針に転換し、地域からの要望を受け付けることとし、これに伴い平成18年度に関係する省令が改正され、仙台、会津など全国18地域においていわゆる御当地ナンバーが新たに導入されたところであります。
 その場合の主な導入の要件は、地域特性等について一定のまとまりのある複数の市町村の集合であること、登録されている自動車の数が10万台を超えていること、当該地域住民等の意向を踏まえていることなどとされておりました。御当地ナンバーは、県としても、地域の活性化、観光振興あるいは全国への知名度の向上という面では効果があるものと認識しております。
 平泉ナンバーに関して言えば、一関市、平泉町、奥州市だけでも、平成19年3月末現在で自動車登録台数は11万台を超える状況にあるものの、これまで導入に向けた具体的な動きは見られないところでございますが、いずれ、国が今後、御当地ナンバーの導入を決定する際には、地域の住民や自動車ユーザーの賛同が条件とされるものと思われますことから、これら地域の機運の盛り上がりが必要であると考えております。
 県としては、平泉の文化遺産の世界遺産登録を契機として、平成20年度をいわて平泉年と位置づけ、県民挙げてさまざまな事業を行うこととしておりますことから、御提言を一つの斬新なアイデアとして受けとめ、今後、その趣旨も含め、県として関係市町等へ話題提供してまいりたいと考えております。
   〔教育長相澤徹君登壇〕
〇教育長(相澤徹君) 県立博物館の展示についてお答え申し上げます。
 本県の自然や風土に培われた歴史や文化は、私ども県民がよって立つ基盤であり、これらを守り伝えていくことは私どもの責務であると考えております。こういう観点から、県立博物館の果たす役割は大きいものがあると考えております。したがって、博物館については、平成22年度の開館30周年も視野に入れながら、現在、今後の博物館の目指すべき姿と取り組みに関する中長期的なプランを策定中であり、この中で、議員の御提言も踏まえ、展示も含めた見直しに取り組み、特にも学校教育との連携を図りながら、次の世代を担う子供たちも含めて、本県の誇るべき歴史や文化の価値を十分に伝えるように取り組んでまいりたいと考えております。
〇42番(伊藤勢至君) 知事からはたっぷりと答弁をいただきましたので、商工労働観光部長と教育長に再質問をさせてもらいます。
 まず、商工労働観光部長、ただいまは、積極的にやるような、やらないような答弁でありましたが、私は、平成15年ごろにも、EEZが施行されたことにより、370キロの領海が広がった、本県の2.5倍ぐらいの海域が広がったということから、いろんな研究をするべきだということで提案をし、国への要望を出してもらってきた経緯があります。そういう中で、どうも、東大海洋研究所があるとか、あるいは北里大学水産学部があるとか、そういうことを言われますが、新しい観点での海水・海底の資源を捜索する、調査するというテーマを持った研究機関は今までないのでありまして、そういう大学に押しつけたような、それは消極的な答弁ではないかと思います。平成15年の県内紙に、先ほども言いましたが、大陸棚調査を抜本強化すると。それはEEZによって、自国領海を主張するためにも、そういう学術調査をやらなければならないということから起きてきたことでありまして、調査費だけで年間1、000億円ですよ。こういうものを三陸の海を使って先取りすることが、三陸沿岸の新しい産業を興すことにつながり得るという思いだったわけでありまして、岩手県の陸地の部分だけが岩手県であるという考えはお伏せをいただいて、370キロ沖までが岩手県だという考えでこれからも当たっていただきたいと思うのであります。
 そして、それを続けていくためには、やはり国策に乗っていくことが必要だと思います。そうなると東京事務所─東京事務所は総務部の管轄かもしれませんが、いずれ、情報収集の最先端に立つのは東京事務所ではないかと思います。東京事務所の職員の方々は、それぞれの担当省庁を持っていろいろ交流しているようでありますけれども、我々議会などが要望に行った際に、道先案内人みたいなお役目が主だと思っているのではないかと思う節がありますが、そういうことよりも、むしろ情報を先取りする、あるいは経済新聞等を読みながら、どういう省庁にはどういう計画があるか、その国策をいち早く探り出して、そこに乗っていくという積極性がなければ、いつも他県におくれをとるばかりではないかと、私はこのように思っております。そういう点で、全庁一丸となって情報先取りをするということだと思っていまして、先般、マグネシウムと太陽光を一緒にという部分も提案いたしましたが、そういうものを、ぜひ、県庁内が打てば響くような体制で当たっていただきたいと思うのであります。それについて、いま一度お聞かせいただきたいと思います。
 それから、教育長にお伺いしますが、私は実は、県立博物館に入って最初の兜跋毘沙門天をアイキャッチャーに据えるのはいかがなものかということをかつて言ってきたつもりであります。東和町の方々には申しわけないのでありますが、これは1、600年前の作品であって、一木づくり6メートルの平安時代の立派なものだとは思っております。しかし、この兜跋毘沙門天という仏像の性格は、北辺を守る、表鬼門を守る仏像だということでありまして、これまた関西の連中から見たときの、京都、奈良の連中から見たときの、我々北東北はまさに表鬼門に当たっているわけでありまして、そういうところに兜跋毘沙門天を据えたのだと思いますときに、兜跋毘沙門天のあった成島毘沙門天より北を何と思ってきたか、こういう背景も考えるべきだと思うのであります。仏像そのものは立派でありますけれども、県立博物館に入っての最初のアイキャッチャーは、やはりアテルイ像を置くべきだと私は思っております。
 今から35年ぐらい前に、東京の国立博物館にモナリザの像が、フランスのルーブル博物館から借り出して来たんですね。そのとき、10円玉を入れて、当時、1通話15秒か20秒でしょう、モナリザの声を聞くことができました。ボンジュール、ムッシュ何とかかんとかと言ったかわかりませんが、いずれ、モナリザの声が聞けたんです。つまり、モナリザの写真から骨相学的に声を今つくれるのだそうでありまして、その声を聞いた記憶がございます。したがいまして、アテルイの像を正面に据えて、アテルイの声をつくり出して、来た方々に、私がアテルイでというような声をやったほうが、ずうっと県立博物館が売れると思うのであります。
 そういうことを確かめようと思ってこの前も行ってきたのでありますが、アテルイに関しての記述がありませんでした。安倍一族もありませんでした。政実は一部ありましたけれども、原敬の、あるいは啄木の、賢治の、新渡戸稲造の、あるいは田中舘愛橘先生のコーナーが一つもない。これはちょっと不親切なのではないかと思ってきたところであります。岩手県に来た観光客を含めて、ある程度の時間があれば、県立博物館で岩手県全体を見たいという方はいらっしゃるのだと思いますけれども、来た方が、啄木のコーナーはどこですか、賢治のコーナーはどこですかと聞かれたときに、それは雫石にあります、花巻にありますというのはいかにも不親切ではないか、私はこのように思うわけでありまして、そういった意味では、県立博物館に、レプリカであってもいいから、岩手の偉人たちのコーナーは必ずあってしかるべきだと思います。
 このような質問を五、六年前にいたしましたところ、当時の教育長は、近々、県立美術館ができますので、そうなると美術品が移動しますから、そのあいたコーナーを使って展示を考えますということでありましたが、何ら変わっておりませんで、キツネ、タヌキのコーナーがふえただけでありました。これでは、岩手をキツネ、タヌキで発信するのはいかがなものかと、こう言わざるを得ないと思うのです。へそが曲がっていますから、覚悟して聞いてください。そういう中で、この際、もっと岩手のあるべき姿、そして反骨の精神でも何でもいいじゃないですか。かつて中央と戦ってきたという気持ちを、負けてたまるかという気持ちを展示して、次なる世代に送るべきだと私は思うのでありまして、それについてのお考えをお示しください。
〇商工労働観光部長(阿部健君) ただいまの海洋資源の関係についてでありますが、特に情報の先取り、情報を早く持ってくるという形で、一つには、体制的な問題、それから東京事務所の関係のお話がございました。
 この海洋資源の関係は、今まで要望等もいろいろやっているわけですが、やはりこちらのほうからアクションを的確にもっていかなければならないという形で、実はこの海洋関係につきまして、今、内部でやっておりますが、いろんな研究機関とか企業も含めまして、海洋資源の研究会をまず立ち上げて、ネットワークをつくって、そこの中でいろんな情報をつかみながら、いろんな情報を受けることもそうですけれども、こちらからのアクションと同時に情報とあわせながらいろんなものを持ってこようという形で、今、動こうとしておるところでございます。そういった努力をひとつやっていきたいと思っております。
 それから、東京事務所のお話がございました。東京事務所につきましては、これは、今、企業誘致とか何かでいろいろ動いているわけでございますが、まさに、やはりここの海洋関係、あるいはほかの大型のプロジェクトといったものにつきましては、営業の視点といいますか、地方間競争の中で持ってくるといった視点が大事だろうと思っております。これまでは、そういった意味では、一つにはやはり東京の職員といいますか、そこの職員がアンテナを高くして、それから人的なネットワークをつくって、地域の状況といったものをきちんとつかみながらやっていくというのが基本でありますが、本庁側、こちらのほうからも、やはり県の、地域の戦略をきちんと伝えながら、それが効果的に、あるいはきちんと物になるような連携をとりながらやっていくということだろうと思います。いずれ、東京事務所につきましては、現在、ほかの分野も含めまして来年度の体制も検討しているところでございますけれども、今のような視点はすぐできることでございますので、そういった早急な対応をしてまいりたいと考えます。
〇教育長(相澤徹君) 博物館の件でございますけれども、現在、岩手の偉人といいますか、先人につきましては、それぞれの市町村が、それぞれのまちの先人について個別的に展示をしたり、あるいは記念館をつくったりという取り組みになっておりますので、岩手全体をトータルに、どういう形になっているのか、特にアテルイから近代まで、いわば一貫した考え方で岩手が輩出した先人を展示する、偉人を展示するという意義は大きいのではないかと感じております。いろいろ前向きに検討したいと思っておりますが、先ほど申し上げました現在検討しているプランの中で、学芸員も含めまして十分に話し合ってアイデアを出してみたいと思っております。いろいろ展示スペースの問題、あるいは財政的な制約の問題等々もございますけれども、まずは十分な内部検討を行いたいと考えております。
〇副議長(佐々木大和君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時31分 休憩
出席議員(47名)
1 番 木 村 幸 弘 君
2 番 久 保 孝 喜 君
3 番 小 西 和 子 君
4 番 工 藤 勝 博 君
5 番 岩 渕   誠 君
6 番 郷右近   浩 君
7 番 高 橋   元 君
8 番 喜 多 正 敏 君
9 番 高 橋 昌 造 君
10 番 菅 原 一 敏 君
11 番 小野寺 有 一 君
12 番 熊 谷   泉 君
14 番 高 橋 博 之 君
15 番 亀卦川 富 夫 君
16 番 中 平   均 君
17 番 五日市   王 君
18 番 関 根 敏 伸 君
19 番 三 浦 陽 子 君
20 番 小田島 峰 雄 君
21 番 高 橋 比奈子 君
22 番 高 橋 雪 文 君
23 番 嵯 峨 壱 朗 君
24 番 及 川 あつし 君
25 番 飯 澤   匡 君
26 番 田 村   誠 君
27 番 大 宮 惇 幸 君
28 番 千 葉 康一郎 君
29 番 新居田 弘 文 君
30 番 工 藤 大 輔 君
31 番 佐々木 順 一 君
32 番 佐々木   博 君
33 番 工 藤 勝 子 君
34 番 平 沼   健 君
35 番 樋 下 正 信 君
36 番 柳 村 岩 見 君
37 番 阿 部 富 雄 君
38 番 斉 藤   信 君
39 番 吉 田 洋 治 君
40 番 及 川 幸 子 君
41 番 佐々木 一 榮 君
42 番 伊 藤 勢 至 君
43 番 渡 辺 幸 貫 君
44 番 小野寺 研 一 君
45 番 千 葉   伝 君
46 番 佐々木 大 和 君
47 番 菊 池   勲 君
48 番 小野寺   好 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時52分 再開
〇議長(渡辺幸貫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋博之君。
   〔14番高橋博之君登壇〕(拍手)

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