平成19年12月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇14番(高橋博之君) 政和・社民クラブの高橋博之でございます。
 一般質問の機会をいただき、先輩・同僚議員に感謝を申し上げます。
 初めに、持続可能な財政の再構築という観点から、今後のあるべき財政運営のあり方について質問いたします。
 地方自治の基盤とも言うべき県財政は、今や抜き差しならない危機的状況に瀕しています。2006年度末の県債発行残高は約1兆4、000億円に達し、2010年までの向こう3年間、可能な限りの借金をしても200億円から300億円の財政不足に陥る見通しとなっております。本県財政は将来、ひいては将来の住民、すなわち納税者に重大な影響を及ぼしかねない状況となっております。なぜ、県財政はかくも危機的な状況に陥ってしまったのでしょうか。地方自治体は地方交付税の上乗せを見込んで歳出を膨張させ、政府もそうした仕組みをつくって地方自治体を借金体質に追い込んできたのですから、双方とも節度に欠ける行動をとってきたと言えます。この点について、知事はどのように考えておられるでしょうか。
 本来、歳出予算の規模をどの程度とするかは、歳出予算の項目を承認することによって、必然的に生じる税負担の増加を納税者が受け入れられるかどうかにかかっております。税負担をふやしてもいいからその事業を実施するべきだ、あるいはその事業をとりやめれば税負担を減らすことができるという判断が予算の限界点を形成することになります。
 一方、本県のみならず我が国の地方自治の現場では、そのような選択をする機会はほとんどありませんでした。税負担は既に決められていて、それを所与のものとし、またはそれを前提にして歳出が決められてきました。したがって、税ではなく補助金、地方債、特別交付税などの他の財源の有無または多寡が事業実施の可否を決め、結果的に予算規模を決定してきました。そこには、現在または将来の税負担をふやしてまでそんな事業をする必要はないという選択の契機はなく、むしろ、事業を行う必要はないかもしれないが、金をくれるのならやらない手はないという安易な判断に陥り、結果として財政を悪化させてきたものと考えますが、この点についてどのような御認識をお持ちでしょうか。
 現在、本県における財政運営は、歳入に見合った規模となるよう歳出の見直しを図っていくことを基本としておりますが、出るをはかって入るを制すという財政の基本原則に立ち返り、歳出が決まれば、それに応じて税の負担も決まるという本来の財政のあり方を検討し始めるべきときに来ているのではないでしょうか。税に対する納税者の負担感あるいは重税感をブレーキにしながら、必要に応じてむだのない仕事の量を決め、決められた仕事の量に応じて税負担も連動するという過程を財政運営の中に取り入れることによって、初めて納税者と財政との間に適切な緊張関係が生まれ、身の丈に合った財政の規模に近づいていくものと考えます。
 確かに、現時点でこうした仕組みを作動させることは容易なことではありません。我が国の地方財政は、税以外に国庫補助負担金、地方交付税交付金などで構成されているのみならず、税体系自体も複雑です。しかも、市町村の場合には固定資産税と住民税が中心なので、まだ連動を考えやすいのですが、都道府県は個人住民税の割合が低く、逆に法人事業税の割合が非常に高い税体系になっているので、こうした連動を仕組むことは困難であります。それでも、現時点において、ささやかでもよいから何らかの形で主要税目の税率と行政サービス水準とが連動する仕組みができないか、真剣に考えてみる必要があるのではないでしょうか。総務部長の御見解をお伺いいたします。
 仕事がふえれば税負担もふえるという当たり前の仕掛けが作動することによって、歳出に対する適切でかつ厳しい評価が加えられ、ひいては財政の膨張、悪化に歯どめをかけることになります。同様に、自治体の仕事量が減れば税負担も減るという仕掛けがあれば、市町村合併をさらに進める動機づけになるのではないでしょうか。これまでは、仮に合併で規模の利益が働き、歳出を大幅に削減したとしても、税率を地方税法で定められた標準税率より下げることは事実上不可能でした。これでは、将来的な財政の健全化にはつながっても、当面の納税者の税負担の軽減に直接つながることはありません。ですから、合併は住民にとっては、市役所まで遠くなった、あるいは行政サービスのきめ細かさが失われたなどのありがたくないことばかりで、納税者にとってもほとんど魅力のない選択とならざるを得ず、どうしても合併に消極的になってしまいます。
 実際、合併に及び腰の市町村から聞こえてくる声は、住民の理解が得られないというものです。幸い、地方財政法の改正により、条件つきではありますが、自治体が税率を標準税率より引き下げることも可能になりました。県は、市町村財政の健全化をサポートする立場から、さらなる合併を促していくとしていますが、当該市町村の理解を得られるには至っておりません。
 そこで、こうした税負担軽減という連動の仕掛けを組み入れるよう市町村に働きかけをしていくことで、合併へのインセンティブを与えていくことも、局面を打開していく一つの手だてになり得ると考えますが、いかがでしょうか。
 私は、去る9月定例県議会の決算特別委員会において、病院新税の導入について提案をさせていただきましたが、この提案も、以上述べてきたような財政運営のあり方を基本とするものであります。毎年度、一般会計から180億円という多額の繰り入れをしている現在の県立病院の姿は、危機的な県財政の状況から見て、果たして身の丈に合っていると言えるのでしょうか。全国最多の23病院、6診療所を抱える本県の県立病院は、現在進行している県立病院改革プランで、平成20年4月には、県立病院は22、診療所7まで統廃合が進みます。似たような経済規模の他の東北の県立病院数を見ると、青森県2、秋田県2となっています。ちなみに、一般会計からの繰り入れは、青森県38億円、秋田県35億円となっております。もちろん、本県の県立病院は、もともと厚生農業協同組合連合会系の病院と国保連合会系の病院を母体にしてスタートしたことから病院数が多かったこと、青森県では市町村立病院が多いなど、これまでの歴史的経緯が異なるので単純に比較できるものではありませんが、それを考慮しても、今後、県立病院が県財政の大きな足かせになるのは避けられない状況になりつつあります。
 既に一般会計全体の財政状況が厳しさを増す中で、他の分野の事業費を抑制せざるを得ない要因になっており、毎年度、交付税措置分を差し引いても、100億円規模での県民負担が生じている事実については、総務部長も私の提案に対する答弁で認めております。現在の県立病院改革プランが完了する平成20年度以降、総務省が示す自治体病院改革ガイドラインをにらみながら次なる改革のステージに移っていくことになるわけですが、さらなる病院再編、リストラは避けられない情勢にあると考えます。その際、あわせて県立病院等事業全体について、県民を巻き込んだ議論を始めなくてはならないと思います。今後の県立病院のあり方、果たすべき役割、適正な規模、さらなる病院再編の見通しはいかがでしょうか。
 広大な面積を有している本県において、過疎地では自治体病院が地域医療の中核を担っており、県立病院のさらなる統廃合は住民生活に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。そこで、県民の皆さんから広く御負担をいただき、さらなる統廃合を避ける。つまりはその時点での県立病院の行政サービス水準を維持するという選択肢も用意しておく必要があると考えます。もちろん、その前提に、交付税措置の充実など国の支援を働きかける、あるいはさらなる県立病院経営の効率化、県の行財政改革があるのは言うまでもありません。しかし、それでもにっちもさっちもいかないほどに超高齢化を伴う人口減少社会の到来という時代の変化によって、結果として、県財政の中で県立病院のウエートが大きくなる状況は回避できないものと考えます。
 税の公平性は保たれているか、あるいはさらなる負担に対する理解を県民から得られるかなど、課題はあります。さらなる統廃合もだめ、新税もだめとなると、残る道は、県政全体の中で他の分野の事業費、例えば教育費や建設事業費などをさらに抑制するということになります。そう考えれば、どこに住んでいようとも、これはすべての県民にかかわる問題だということになります。
 新税導入については、決算特別委員会における総務部長の御答弁は、現時点ではまだ新税導入を図ることが必要かどうかについて考え方がまとまっている状況ではないが、今回の提案をきっかけに関係部局ともよく相談し、考えていきたいというものでしたが、この点について改めて総務部長の御見解をお尋ねいたします。
 次に、障害者福祉についてお聞きします。
 ことし7月、花巻市内のクリーニング会社で知的障害者の従業員に長期間賃金が支払われていないという事実が新聞報道によって明らかになりました。7月25日付朝日新聞によれば、このクリーニング店では、二十数人の従業員のうち9人が23歳から46歳の知的障害者で、このうち女性6人が会社の寮に入寮し、男性3人が自宅から通っていました。賃金の未払いは、確認できただけで、知的障害者計3人の賃金が5カ月から1年8カ月分未払いとなっております。花巻市に住む成人男性の場合、2005年10月分の給料7万4、646円が、1年後の2006年10月に支払われた後、2005年11月分からことし6月まで1年8カ月分の支払いが途絶えています。この間、仕事は午前8時半から、途中に1時間の昼休みを挟んで午後11時ごろまで続き、未払い賃金は、時間外を除いた分だけで計約140万円に上っているということです。
 県や花巻市、花巻労働基準監督署は1年半ほど前にこの情報をキャッチしていたと聞いております。にもかかわらず、関係機関が手をこまねいている間に、この男性は過労とストレスで6月末に退職に追い込まれました。今回のケースは典型的な人権侵害です。行政は、人身保護の立場から一刻も早く障害者をクリーニング店から保護し、再就職先の確保に全力を挙げるべきだったと考えますが、花巻市は、事態が表ざたになり、万が一、会社が倒産するようなことになれば、障害者が路頭に迷うことになるという風評被害をおそれ、積極的な介入は行わず、事実上事態を放置してきたと言っている関係者もいます。
 県は、今回の事態が発覚した後、弱い立場の障害者の権利を守るためと、同じ会社で働く別の知的障害者5人を保護し、社会福祉施設に移しました。当然の対応と言えますが、遅きに失した感は否めません。もっと早期に対策に乗り出すべきだったと思いますが、いかがでしょうか。この間の経緯も含めてお聞きします。
 あわせてお聞きします。年金の使い込みについても疑われますが、どうでしょうか。また、県は、賃金確保など関係機関と連携して支援していくとしていましたが、その後の支援はどうなっているでしょうか。本県では、2年前、旧水沢市の鋳物会社で知的障害者の従業員9人の障害者年金などの預金が流用されるという問題がありました。このときの教訓は今回生かされたのでしょうか、お聞きいたします。
 今回のケースは、障害者の雇用環境の厳しさを改めて浮き彫りにしたと言えます。障害者の就労支援などを柱にした障害者自立支援法が施行され、地域の一般企業で働く障害者も、少しずつではありますが、ふえてきています。しかし、厳しい経済状況の中で、ともすればしわ寄せは障害者に向かいます。会社側に悪意はなかったにせよ、結果として物言わぬ障害者の人権を侵害してしまったというところに、今回の問題の本質が見えます。障害者を地域に出していくことはもちろん大切ですが、受け手の側の社会が成熟していない、障害者の権利擁護に対する意識が浅い現状では、犠牲になるのは障害者自身です。差別や人権侵害と思っても、言えないつらさが障害者の側にはあります。これは、地域の一般企業で働く障害者の共通の心情ではないでしょうか。その意味で、今回のケースは氷山の一角だと言えます。実際、新聞報道がなければ、今回の事態も明るみに出ていなかったでしょう。まずは地域の一般企業で就労する障害者の生活の状況がどこかで見守られ、障害者の権利が奪われそうになった際には、素早く対応できる仕組みづくりが必要です。今回の事件を契機に、県は、障害者の生活にかかわりのある市町村や、就労にかかわる国の労働局など関係する行政機関と連携して、障害者が地域で安全・安心に暮らすことができる仕組みづくりをしていくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。御所見をお伺いいたします。
 また、就労支援やその後のアフターケアを行っている障害者職業センターのジョブコーチの増員をすべきだと思いますが、見通しはいかがでしょうか。あるいは成年後見制度のさらなる活用なども必要になると思いますが、現状と課題、今後の展望についてお知らせください。
 本県は、高齢化を伴う人口減少社会に入りました。人口減少率は年々大きくなり、近い将来、問題になってくるのが労働力不足です。そうした社会では、障害者も貴重な労働力になります。だからこそ、障害のある人とない人の間にある壁を取り払い、互いの違いを認め、役割を分かち合い、地域の中でともに働き、ともに生きる連帯型社会を早急につくっていかなければなりません。この点について、知事はどのように将来像を描いておられるでしょうか。
 私は、連帯型社会をつくる基本は、障害のある子供もない子供もともに学ぶインクルーシブ教育にあると考えており、この点については6月定例会の一般質問で取り上げました。その際知事は、県としても、希望する子供や保護者が通常学級での教育を受けられるよう環境整備に努めていくとの大変前向きな姿勢を示しました。その言葉どおり、県教育委員会は、インクルージョンフォーラムの開催や有識者による特別支援教育のあり方の検討を開始するなど、矢継ぎ早に取り組みを始めました。来年度は、初任者研修や教職経験者研修のすべての講座にインクルーシブ教育の研修を取り入れるなどの教職員の意識改革への取り組みや小・中学校への支援員の配置見直し、新たに高校への支援員の配置を検討するなど、インクルーシブ教育の実現に向けてスピード感を持って取り組まれていることを評価したいと思います。
 しかし一方で、現場の市町村からは、この急激な変化に戸惑う声も聞こえてきています。県が導入を進めるインクルーシブ教育に対するこれまでの市町村の反応をどのように受けとめておられるでしょうか。また、市町村の理解を得るためにどのような支援を講じていくのか、お聞きします。
 特別支援教育へとかじを切った国は、約250億円の財政措置を講じて支援員の配置を後押ししました。この財政措置は1校当たり84万円ですが、使途が定められたひもつきの補助金ではなく、自治体が一般財源として自由に使える地方交付税に加算されたため、財政難に陥っている市町村では名目どおりに使われていない現状になっています。例えば、10校の小・中学校に9人の支援員を配置している一戸町に対し、一関市では60校の小・中学校に対し13人しか配置できていません。このような市町村間での支援員格差の要因には、各自治体の財政状況もさることながら、首長や教育長のインクルーシブ教育への理解の温度差があるものと考えられます。
 そこで、例えば各市町村の支援員の配置状況を公表してみてはいかがでしょうか。それによりインクルーシブ教育への機運が住民サイドから醸成され、首長や教育長への理解を促すことにもつながっていくものと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 最後に、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場についてお尋ねいたします。
 2006年3月から始まった再処理工場のアクティブ試験も最終段階を迎え、いよいよ来年3月の本格稼動が迫ってまいりました。去る11月5日、本県の住民団体、消費者団体、漁民、全国のサーファーが中心となって集めた9万2、387人もの署名が国に提出されました。この海に、空に、放射能を流さないことを求める署名は、再処理工場の本格稼動に伴う放射能の放出抑止を求める内容となっています。国や日本原燃は、これまで安全性に問題はないとの説明を繰り返してきましたが、現場では十分な理解が得られているとは言いがたい状態であります。今回、国に提出した署名とは別に、現在、三陸の6漁協と全国七つの消費者団体も署名運動を展開しています。このような一連の署名運動は、県民の中に再処理工場は不安だという声があることを示しております。知事は、このような県民の不安の声をどのように受けとめておられるでしょうか。
 また、この問題で、三陸の漁民が最も心配しているのが風評被害です。宮古市の重茂漁業協同組合は、消費者からは食の安全と健康への影響を心配する声が上がっており、特に安全性が確認されたとしても風評被害は免れず、重茂の漁業者にとっては死活問題であるとの決議を出しています。実際、1981年に敦賀原発で起きた放射能漏えい事故では環境安全上問題がないとされていましたが、この風評被害で140億円もの被害補償がなされました。また、ことし7月に発生した新潟県の中越沖地震でも、柏崎刈羽原発から放射能が漏れたというだけで風評被害は1、000億円から2、000億円に達しました。幾ら国や日本原燃が巨額の広告費を投じ六ヶ所村再処理工場は安全だとアピールしても、消費者の行動まで指図できるものではありません。原燃は、青森県や六ヶ所村などの6市町村と確認書を締結し、工場の運転に起因する風評で農林水産物の価格低下などを招いた場合は補償などを行うとしています。本県は原燃と安全協定を締結していませんが、万一風評被害が起きたとき、県は具体的にこの被害補償にどのように対応されるのでしょうか、補償制度の内容についてお聞きします。
 再処理工場から放出される放射性廃棄物の安全性について、科学者の間でも見方が分かれております。放射性物質は拡散して希釈するので問題がないとする推進派に対し、慎重派は、微量でも時間をかけて蓄積、濃縮するので問題だとしています。専門家の間で真っ向から対立するこの相反する主張をどう考えたらいいのでしょうか。
 六ヶ所村再処理工場が技術提供を受けたフランスのラ・アーグ再処理工場では、周辺10キロ範囲で小児白血病の発生率が通常の2.8倍にふえたとする報告があります。これについても推進派は、再処理工場が原因で白血病がふえたという証拠はないとするのに対し、慎重派は、証拠がないということが白血病がふえていないという証明にはならないとしています。つまりは、再処理工場から放出された放射性物質が白血病増加の原因になっているかどうか、確かなことは科学的にも定かではない、白とも黒とも言えないということになります。フランス政府も、工場周辺に白血病発生が集中していることを認めながらも、工場が原因という証拠は認められないとしています。
 思い起こすのは水俣病であります。1959年、熊本大学医学部研究班は、水俣病の原因物質は水俣湾周辺の魚介類中に含まれる有機水銀と結論づけました。しかし国は、1968年にチッソ水俣工場廃液中のメチル水銀と断定するまで規制を行わず、チッソは水銀の入った工場排水を流し続け、その間に被害は拡大しました。私たちは、水俣病という一大公害の教訓から一体何を学び取るのかということだと思います。県民の生命、安全を守るのが県の最大の責務であるわけですが、そこで、改めてお聞きします。六ヶ所村の再処理工場の安全性について、県としてどのように認識されているのでしょうか。
 危機管理についてもお尋ねいたします。過去最大の被害を出した旧ソビエトで起こったチェルノブイリ原発の事故では多量の放射性廃棄物が放出され、周辺では甲状腺がんの患者が多数発生しました。国内の原発、再処理工場は頑丈な格納容器に納まっており、このような事態にはならないと考えられていますが、気体として漏れ出す放射性沃素の危険は想定されております。空気中に放出された放射性沃素は人体に入ると甲状腺にたまり、子供や若い世代では将来甲状腺がんを招くおそれがあります。原発がある県では放射性沃素の影響を最小限に抑える薬を備蓄しており、事故の際には避難所となる小・中学校などに置き、避難者に配布できる体制をとっています。また、放射性物質は風下に広がる特性もあることから、気象条件などから放射性物質の広がりを予測するシステムもあります。
 ことし7月、原燃の再処理工場をめぐり住民らが国の事業許可取り消しを求めた訴訟の控訴審で、六ヶ所村の再処理工場周辺には、割れ目が多く、崩れやすい地盤が存在することが明らかになりました。近い将来、宮城県沖地震が高い確率で発生するとされているわけですが、再処理工場の事故という万が一の事態に備え、県は、県民の生命、安全を守るためにどのような危機管理体制を考えておられるでしょうか。
 再処理工場は、大変大きな問題を私たちに突きつけております。それは、我が国の電力需要のおよそ3分の1を賄う原発から出る年間1、000トンもの使用済み核燃料の処理の仕方という問題です。処理の方法は二つ、全部地中に埋めて地層処分する直接処分という方法と、再処理してプルトニウムを取り出し燃料にする再処理という方法です。直接処分の方法をとっているのがアメリカ、ドイツ、フィンランドといった国々で、再処理の方法をとっているのがイギリス、フランスなどです。二者択一の選択で、我が国は再処理を選ぼうとしているわけですが、その理由に私は合理性を感じることができません。
 日本は既に海外での再処理などで約40トンものプルトニウムを保有しておりますが、その使い道だった高速増殖炉計画は「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故や情報隠しで頓挫し、それにかわるプルサーマル計画も原発などの相次ぐトラブルや不祥事で計画より大きくおくれ、見通しすら立っていない状態です。今あるプルトニウムの利用すら不透明なのに、なぜさらにプルトニウムを生産しなければならないのでしょうか。
 国の公式な計算によると、再処理は直接処分よりコストが1.8倍になることがわかりました。さらに、再処理工場の運営には40年間で18.8兆円かかると試算されています。こうしたコストは最終的に電気料金に上乗せされ、国民負担となります。また、ウランの価格は、1978年に単価42ドルだったものが2004年には19ドルと半値以下になってしまい、プルトニウムを取り出すほうがよほどコストがかかることになります。つまり、コストや安定供給の面からは核燃料サイクルの必要性はなくなったと言えます。
 このように、再処理を前提とする核燃料サイクル事業については安全性や採算性の面で種々の疑問がある中で、隣県である青森県六ヶ所村において使用済み核燃料再処理工場が本格稼動しようとしております。
 そこで伺いますが、知事は、我が国の核燃料サイクル事業をどのように考えておられるでしょうか。これは、影響が遠い将来の世代にも及ぶかもしれないという点で政治家としての哲学の問題にもなると思いますが、御所見をお伺いいたします。
 環境問題や人口減少が我々に突きつけているのは、経済社会システムや価値観を根っこから変えるということです。ところが、これまでの経済成長や人口増加を前提にした経済社会システムから受け取っていたものが多い人ほど変化にはためらいが生じます。いわば既得権を放棄しなければならないからであります。しかしそれは、子供たちへの負担の転嫁、つまりは子供たちに泣いてくれということにほかなりません。かつてジョン・F・ケネディは、大統領就任直前にまとめた演説集の中で次のように述べております。屋根を修理するのは太陽の照っているときであり、健全で長期の農場計画を立てるのは今である。だれが次世代、次々世代の代弁者となり、勇気を持って行動できるか、これはまさに政治家の役割であると私は思います。
 以上をもって一般質問を終わります。なお、答弁によっては再質問させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋博之議員の質問にお答えいたします。
 まず、危機的財政状況に陥った要因と国の政策誘導についての認識についてでありますが、バブル経済の崩壊に伴う累次の経済対策においては、各自治体において、それぞれの地域における社会資本の整備の必要性を踏まえながら国の動きに呼応して積極的に事業が行われたわけでありますが、これにより、住民生活の向上や将来の発展の基礎となる社会資本の整備が進んだ一方で、多くの自治体が多額の公債残高を抱える結果になったことも事実であり、国、地方とも反省すべき点があったものと認識しております。
 また、現在の地方の危機的な財政難は、ここ数年、国の財政再建を優先する形で地方交付税の大幅な削減が続けられたことも大きな原因となっており、この点については、地域間格差の是正や地方の財政基盤の確立につながるよう必要な制度改正を早急に実現することがぜひとも必要であり、この点を今後とも国に強く働きかけてまいりたいと思います。
 次に、障害者もともに生きる連帯型社会の形成についてでありますが、障害がある人もない人も互いに支え合って生活するともに生きる岩手の実現は県政の最重要課題の一つであり、現在策定中の新しい地域経営の計画の6本の柱の基本方向の一つとして掲げております。
 具体的な主な取り組みといたしましては、相談支援体制、居住の場の確保、権利擁護なども含めて、各種サービスがいつでも、だれでも、どこでも身近な地域で利用可能となるような支援の仕組みの構築、住民の参加と協働による障害のある人などへの地域支援ネットワークの形成、学校におけるインクルーシブ教育などを通じた、障害のある人もない人もともに暮らすことが当たり前であるという県民意識の一層の醸成、さらには、職場実習先のあっせん、就職先の開拓、職場定着支援など、意欲ある障害者が働くことのできる環境づくり、こうしたことが必要と考えておりまして、こうした取り組みをさらに進め、障害のある人が地域で安心して暮らし、就労等を通じてその能力を十分に発揮できる社会を形成してまいりたいと考えております。
 次に、使用済み核燃料再処理工場についてでありますが、再処理工場から放出される放射能の環境への影響については、法令に基づき原子力政策に一元的な責任を担っている国と事業者としての責任を有する日本原燃が施設の安全確保に万全を期すとともに、モニタリング調査を通じて影響の有無を科学的に検証した上でその安全性について十分な説明責任を果たし、県民の理解と信頼を得ることが重要であります。しかしながら、市民団体からの国に対する署名の提出や漁協による署名運動、県政提言等がなされている現状を考えると、十分に理解されているとは言いがたい状況にあるものと受けとめております。このため、国と日本原燃に対して、より一層の説明責任を果たすよう機会あるごとに働きかけていく考えであります。
 次に、核燃料サイクル事業に関する所見についてでありますが、これまでの経済発展は、科学技術の進歩とともに化石燃料の大量消費によってもたらされてきましたが、その一方で、地球温暖化を防止する取り組みや、今後とも増大が見込まれるエネルギー需要への対応が国際的な課題となっています。このため、これまでのエネルギー多消費型社会からの転換を図り、省エネルギーの推進や新エネルギーの技術開発と普及を進めるなど、エネルギーの安定供給と地球環境保全との調和を図っていく必要があります。
 このような中にあって、原子力は、エネルギー資源の安定確保、地球温暖化防止の観点から重要なエネルギーでありますが、核燃料サイクルを含め、原子力政策は、将来の世代に影響を及ぼさないよう、技術的な面からの安全性と安定性、そして信頼性の確立に努めるとともに、国民の理解と信頼を得ながら推進されなければならないと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 歳出予算の規模と税負担の関係についてでございますが、過去の経済対策の場面などでは、国に主導権のある財源のあり方が地方の歳出の増加の一因となった面が否定できませんが、最近は地方財源が大幅に縮小していることもあり、国の誘導によって地方歳出が拡大するというケースは少なく、地方で判断できる歳出については、おのおのの地域における事業の効果や必要性、緊急性などに応じて、限られた財源の範囲内で予算の内容を組み立てていくという形になってきていると思われます。
 現在の地方財政の状況を踏まえますと、当面は、必要な地方財源の確保が最優先課題であり、地方交付税の復元などに取り組む必要がありますが、将来的には、住民が受益と負担を主体的に選択する形で、各地域で自立的な財政運営が行えるよう、地方税の偏在を制度面から是正しつつ、地方の歳入に占める地方税の割合を高めていくことが分権を推進する上での課題であり、国から地方への税源移譲などの地方税財政改革をさらに進めていく必要があると認識しております。
 次に、税負担と行政サービス水準が連動する仕組みの可能性についてでありますが、確かに地方自治の理念型としての受益と負担の関係といたしましては、主権者である住民がその地域で必要と考える行政サービスの水準を決定し、同時に、それに必要となる財源を住民が税として負担するという関係が選挙による代表制によって担保される形が民主的な地方自治における本質的な政府と住民の関係と言えると考えます。外国に見られる学校の設置、運営だけを行政事務とする地方自治体といったようなものであればこうした受益と負担の原則論に沿った主権者の判断が生かしやすいと考えられますけれども、日本の地方自治の場合は、御指摘のあった国への依存財源の大きさや地方税制度の複雑さなどのほか、地方の行政事務とそれに伴う財政需要の大半が国の法令で義務づけられているということ、さらには、地方が社会資本整備や国土保全などを担当していて、いまだその整備は途上段階で、整備水準にも大きな地域格差があり、過去の整備の借金も各地方自治体の残高となっていることなどの条件下に置かれておりますことから、日本の現在の地方自治体では、受益と負担原則に基づいて住民に選択をお願いすることよりも、地方が担当しなければならない事務の財源を国との関係でどのように制度的に確保するかということがより重要な課題とならざるを得ない状況にあると認識しております。
 また、近年の国における議論を見ますと、こうした制度的、歴史的な条件を度外視して受益と負担を殊さらに強調し、無理な自給自足へと地方を追い込もうという危険な発想も散見されますことから、地方の財源を正しく確保することの必要性を地方の側からもしっかりと訴えていかねばならないと感じております。
 今後のあり方論といたしましては、一層の地方分権を図り、地方自治の本来の機能のさらなる発揮を進めていくため、御指摘のような地方自治のあり方を順次取り入れ、実現していくことが必要となってくると考えております。今申し上げましたような状況を考えますと、本格的に各自治体の行政全体につきましてそのような受益と負担の選択が行えるようになるためには、社会資本整備や国土保全がその借金の返済を含めておおむね終了し、地方行政が対人サービス中心の役割となるといった大きな環境の変化が生じる時代を待つ必要があるのかもしれませんけれども、個々の行政サービスや特定の分野に特化した話といたしましては、順次、税とサービス水準とが連動するような仕組みの導入を検討していくことは有益なことと認識しております。既に、法定外目的税や超過課税の仕組みを活用いたしまして本県における森林づくり県民税のような仕組みを導入し始めている地方自治体もふえてきており、こうした試みは、今後とも各自治体の実情に応じて検討が進んでいくものと考えております。
 最後に、病院新税の御提案についてでございますが、県立病院は本県の地域の医療を支える中核的役割を果たしている存在であり、そのあり方が県民生活に与える影響も重大であり、同時に、その維持のために繰り出している金額も多額でありますことから、にわかにこの分野の今後のあり方として新税の導入を検討すべきとは考えておりませんが、地方の厳しい財政環境や医師不足等の問題の中で、どのような形で県立病院ネットワークや市町村等の医療機関を含めた公的医療体制、さらには民間病院も含めた県民医療の提供体制を維持していくことができるか、真剣な検討が求められているものと認識しております。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 市町村税の標準税率の引き下げによる合併促進についてでありますが、標準税率の引き下げにつきましては、地方分権一括法による地方財政法の改正が行われ、標準税率を引き下げた場合は地方債の発行が禁止された従来の取り扱いから、引き下げても、許可を得れば地方債の発行が可能であることに改められたところでございます。本県における合併旧法下での合併協議におきましては、標準税率の引き下げが俎上にのったことはないものと承知いたしておりますが、合併効果による歳出削減で生み出された財源につきましては、少子化対策など新たな行政サービスに振り向けることや、それぞれの行政サービス水準と負担水準の調整に関しては議論が活発に行われたところでございます。
 御提言のあった標準税率の引き下げにつきましては、今後、合併協議会が設置された場合において、将来のまちづくりに向けた議論の中で各種行政サービスの水準と負担のあり方、各種施策や事務事業の方向性、それらに必要な財源確保の見通しなど、総合的な観点から検討されるべきものと考えておるところでございます。
 県としては、現在、岩手県市町村合併推進審議会におきまして合併の効果や課題とその対応策について議論されておりますことから、標準税率の引き下げを含め、それらの情報がそれぞれの地域の新たなまちづくりの方向性を議論するための材料として生かされるよう、県民、市町村に対し適切に周知してまいりたいと考えております。
   〔医療局長法貴敬君登壇〕
〇医療局長(法貴敬君) 今後の県立病院のあり方、さらなる再編等についてでありますが、現在進めております県立病院改革は平成16年度から平成20年度までの計画であり、着実に推進しているところでありますが、平成15年度の計画策定時点の想定以上に患者数が減少し、加えて診療報酬のマイナス改定が続き、医業収益の大幅な減少や空き病床の増加につながっているほか、医師の絶対数の不足や地域別、診療科別の偏在が顕著となってきており、病院によっては一部の診療科で診療体制の維持が困難となっております。
 このような中で、今後とも良質な医療を持続的に提供していくためには、発症から在宅復帰までを通した地域ごとの医療連携体制の確立や、医療・介護・福祉分野での役割分担と連携、あるいは救急搬送体制の整備などを視野に入れて、患者の視点に立った新しい医療計画の策定や、今後、総務省から詳細が示される公立病院改革ガイドラインへの対応の論議を通じて、県立病院の果たしていくべき役割や一般会計負担金の考え方を明確にし、県全体の医療提供体制のもとで県立病院のあり方の再構築を検討する必要があると考えております。
 議員御案内の県立病院の再編については、こうした県立病院のあり方の論議を踏まえ、さらには各病院の機能や特色を一層明確にしながら、平成21年度以降の新しい経営計画の策定を通じて明らかにしてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 知的障害者に対する賃金不払い事件についてでございます。
 まず、事件の経緯と対応についてでございますが、県では、平成18年9月に花巻市内のクリーニング会社が賃金不払いにより労働基準監督署の指導を受けているようだとの情報を得たところでございまして、以後、地元の振興局を中心に関係機関による情報交換等を行い、実態把握に努めてきたところでございます。
 その過程で、9人の障害者が同社で雇用されていた事実があり、賃金不払いのほか、夜遅くまでの長時間労働、超過勤務手当の不払い、社員寮で生活している障害者の一部の方の年金を雇用主が管理している等の情報が寄せられたところでございます。県では、これらの情報などから、地元花巻市と連携して、本人の意思と保護者の了解に基づき、本年7月、社員寮で生活している知的障害者5人を障害者施設へと生活の場を移したところでございます。花巻労働基準監督署は、本年10月、賃金不払いにより、クリーニング会社社長を労働基準法違反の疑いで地方検察庁に書類送検しているところでございます。
 この事件につきましては、当初から、賃金不払いに加え、年金の問題など生活面での権利侵害をも念頭に置き、早期に支援に取り組むべきであったと認識しております。結果として現在でも事態の十分な解決につながる対応ができていないものであり、残念な事態と考えております。関係行政機関が早期に十分な連携をしていれば、より早い対応は当然可能であったと考えております。
 次に、年金に関してでございますが、雇用主が管理を行っていたと思われる知的障害者3人の年金については現在も調査中でございます。御本人たちからは、通帳や印鑑を雇用主に預けていた、自分の知らない出金がある等のお話がございまして、こうしたことにつきましては、本人、保護者の同意のもと、雇用主に対する確認を行うなどの調査を継続する必要があると考えております。
 その後の支援状況についてでございますが、まず、不払い賃金の回復につきましては、地元振興局や花巻市、本人たちが生活している障害者施設等が連携し、保護者との連絡や雇用主との話し合いの場を設定するなどの支援を行っておりますが、まだ解決するまでには至っていないところでございます。
 保護した施設や関係機関の支援により、施設に入所した5人の方のうち4人は10月からグループホームに移行しており、市内の企業での実習や就労移行支援事業所で再就職に向けた訓練を行っております。施設入所以外の4人の方も2人が就労を開始し、1人が職場実習中でございます。今後とも、未払い金の返済や再就職、生活支援などを継続してまいりたいと考えております。
 過去に発生した障害者年金流用事件の教訓についてでございますが、知的障害者に対する長時間労働や賃金不払いといった基本的な権利侵害を防げず再発したことは、過去に起きた事件の教訓を生かせず、残念な結果になってしまっていると認識しております。障害者自立支援法により、本来、市町村の責務として虐待防止と早期発見のための連絡調整等を行う必要があると考えておりますが、今回の事案からも、まだまだ市町村における権利擁護等の援助ノウハウが十分でないと感じているところでございます。しかしながら、社員寮で生活していた方々の生活支援という点で、施設関係者が市町村とも連携し、でき得る限りの介入と保護を行っていただいたことは確かと考えておりまして、現場で支援に当たった人たちは、過去の事件を教訓として対応していただいたと考えております。
 次に、関係行政機関との連携についてでございますが、今回の事案からも、関係機関の連携による対応が大変重要であると認識しているところでございます。障害者自立支援法では市町村が障害者を支援する主体として位置づけられておりまして、まずは市町村に関係機関の連携による権利擁護を含む相談支援の仕組みをつくっていただくことが必要と考えております。そのため、市町村が運営する地域自立支援協議会において、そうした仕組みづくりについて関係機関の参画により協議していただくよう市町村を支援してまいりたいと考えております。
 県といたしましても、県の自立支援協議会を活用し、関係機関との連携強化による支援の仕組みづくりを進めてまいりたいと考えております。また、一般就労する障害者の職場定着や全般的な生活状況の把握、相談支援等を行う障害者就業・生活支援センターの一層の活用を図り、障害者が安全・安心に暮らすことができるよう、地域における権利擁護体制づくりに取り組んでまいりたいと考えております。さらに、障害者自身が権利侵害などに気づき、社会に対して訴える力を強めることも大変重要なことであると考えております。岩手県手をつなぐ育成会等の障害者団体が取り組んでいる本人活動やピアカウンセリングの活動などについて、県としても市町村や関係機関と連携し、支援してまいりたいと考えております。
 次に、成年後見制度の活用についてでございますが、盛岡家庭裁判所の資料によりますと、本県の成年後見に係る新規受け付け件数は、平成17年度136件であったものが、平成18年度には323件と2.5倍に急増してございます。
 本県におきましても、知的障害者や認知症の方など判断能力が必ずしも十分とは言えない方々への権利侵害事件が発生しておりまして、成年後見制度はこうした方々にとって重要な制度と考えております。このため、昨年度から県の単独事業といたしまして、障害者及び高齢者のあんしんネット形成支援事業を実施しており、基礎知識の習得に向けた研修や各地域において成年後見を担っていただく団体の育成など、本県独自の取り組みを進めているところでございます。今後とも、障害者や認知症の方などの権利侵害の未然防止に向け、県としてもこの制度の一層の普及と活用に努めてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) 障害者職業センターのジョブコーチについてでありますが、ジョブコーチは、障害者が円滑に職場に適応できるよう、事業所を訪問し、障害者本人や事業主に対して作業指導や必要な助言などの専門的支援を行っているところであり、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構岩手障害者職業センターに5人が配置されているほか、県内各地の障害者就業・生活支援センターを運営する社会福祉法人などが同機構の助成金を得て6人配置しており、県内では合わせて11人が活動し、障害者の職場定着に向けて活動しているところであります。
 障害者の一般雇用への要請が強まる中でジョブコーチの果たす役割はますます重要となっており、このような中、同機構におきましては、障害者就業・生活支援センターの増設見込みと合わせてジョブコーチの増員が検討されていると聞いております。県といたしましても、これらジョブコーチの増員について、同機構に対し強く要請をしてまいる考えであります。
   〔環境生活部長菊池秀一君登壇〕
〇環境生活部長(菊池秀一君) 使用済み核燃料再処理工場についてでありますが、まず、被害補償制度につきましては、これまでに風評被害の補償が行われた事例として把握しているものは、原子力損害の賠償に関する法律に基づく原子力損害賠償制度が適用された茨城県東海村のJCO臨界事故があったと聞いております。
 また、青森県においては、県と六ヶ所村、事業者との確認書に基づき、六ヶ所村内の風評被害に対してはむつ小川原地域・産業振興財団を通じて補償することとされております。この制度では、六ヶ所村以外の地域を対象とするか否かについては明文化されていないため事案によって判断されるものと思われますが、この確認書は再処理工場立地の基本協定に基づいて青森県が締結したものでありますことから、本県の場合には、茨城県の前例にあるような原子力損害賠償法に基づく制度の適用を基本として、事故や被害等の状況に応じて判断されるものと考えております。
 次に、再処理工場の安全性についてでありますが、再処理工場は、国が原子炉等規制法に基づき、科学的、専門的な知見と責任のもとに施設の安全性を審査し、認可したものであり、また、関係法令に基づく一般公衆への放射線の健康影響評価基準に対して十分に低いと評価され、安全性が十分に担保されているという判断のもとに認可されたものと承知しております。さらに、再処理工場から放出される放射能の環境への影響を確認するため、大気、農畜産物、海洋等の環境モニタリング調査を実施し、科学的な面から安全性についての検証をあわせて行っているものでございます。
 これまでのアクティブ試験の各段階においては所定の性能を十分に満たすことを確認したほか、放出管理目標を遵守した運転がなされているとともに、環境モニタリング調査の結果においても大きな変動は見られず、十分に安全が確保されているものと受けとめております。県としては、今後ともアクティブ試験の状況や環境モニタリング調査の結果を注視してまいりたいと考えております。
 次に、事故等に備えた危機管理についてでありますが、原子力災害が発生した場合は、国は、原子力災害対策特別措置法に基づきまして青森県と六ヶ所村の救援活動等を支援することとされておりまして、具体的な災害対策につきましては、青森県が定める地域防災計画によって行われることとされております。この中では、再処理工場において火災等による放射性物質の漏えいや臨界事故が発生した場合は、再処理工場を中心とした半径5キロメートル以内を対象として、被曝の低減のための屋内退避や避難等の対策を講ずることとしております。また、六ヶ所村に隣接する5市町村に対しては、こうした対策ではなく、必要に応じて情報連絡、住民広報の体制等を整備しておくものとされております。半径5キロメートル以内を対象地域としておりますのは、国の原子力安全委員会が定めた防災指針に基づく防災対策を充実すべき地域の範囲を基準としているものであります。
 また、地震対策については、国の耐震設計審査指針の改正や中越沖地震の教訓を踏まえて、現在、再処理工場においても見直し、点検が行われるものと聞いております。
 県といたしましては、万が一にも青森県におきまして災害対策本部が設置されるような事態が発生した場合には、県民の不安が想定されますことから、情報連絡や広報等の体制整備などの措置を講ずる考えでございます。
   〔教育長相澤徹君登壇〕
〇教育長(相澤徹君) インクルーシブ教育についてお答え申し上げます。
 まず、インクルーシブ教育に対する市町村の反応といいますか、受けとめ方についてでありますけれども、おおむね次の2点というように考えております。
 その第1点は、障害のある子供と障害のない子供が地域の学校・学級でともに学び、育ち合うことが、真に双方の子供にとって意義があり、将来の望ましい共生社会の形成に有意義であるという認識について、市町村によっては温度差があるということではないかと考えております。したがって、市町村との認識の共有化を十分に図っていく必要があると考えておりまして、そのためには、何よりも具体的な実践を広めることが重要と考えております。地域の小・中学校内への特別支援学校の分教室を設置すること。さらには、認定就学者制度の活用などを通じて地域の学校でともに学ぶという実践事例をふやしていくこと。そして、その成果をフォーラムなどを通じて広く県内に発信する取り組みを強化してまいりたいと考えております。
 第2点は、障害のある子供の教育のきめ細かさを損なわず、同時に、障害のない子供の教育の内容を低下させないための体制づくりが可能かという懸念を持っていることが挙げられると思います。したがって、具体的な導入に当たっては、これらの懸念を払拭していくことが必要と考えており、県内のすべての教員を対象としたインクルーシブ教育に関する研修のほか、市町村の特別支援教育支援員の増員、特別支援学級の増設、特別支援学校による地域の小・中学校への支援の強化などを計画的に進めながら、市町村及びすべての保護者が納得してインクルーシブ教育に参加できるような体制整備に取り組んでまいります。
 次に、市町村の特別支援教育支援員の配置状況を公表してはどうかというお尋ねについてでありますが、本年度から開始された市町村の特別支援教育支援員の配置に関する地方交付税措置では、全小・中学校数の7割に支援員を配置することが可能な人件費が各市町村に措置されたところであり、本県の場合は、全体で435名の配置が可能となるものであります。11月1日現在の配置状況は27市町村で170名と約4割程度にとどまっており、十分な状況とは言えませんが、市町村の理解は徐々に広まっていると認識しております。7月に調査した時点と比べますと、44名増加しているところであります。したがいまして、当面は来年度の当初予算による増員に向けて市町村への働きかけを強化していきたいと考えております。
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇14番(高橋博之君) 御答弁いただきまして、ありがとうございました。
 まず、財政運営について、2点お尋ねいたします。
 1点目は医療局長にお尋ねいたします。
 今後の県立病院の議論をしていく中で、再編のあり方についてお尋ねしたんですが、現在、国のほうでガイドラインの策定をやっております。この間、出てきたものを見ますと、あれに当てはめると、今現在、県立病院で診療所化に当てはまるのがまだ二つか三つあるものと私は認識しておりますが、さらなる再編が必要になるのかどうか、改めてお聞きしたいと思います。
 それから、総務部長にお尋ねいたします。
 病院新税についてでありますが、先日の決算特別委員会の際にいただいた御答弁よりもトーンダウンしたように聞こえたのでありますが、先ほど、あり方は総合的に検討していかなければならないだろうと。ネットワークあるいは民間との連携という話もありましたが、その中の選択肢の一つとして病院新税というものも検討していくことがあるのでしょうか、その点についてお尋ねいたします。
 次に、障害者福祉についてお尋ねいたします。これは保健福祉部長にお尋ねいたします。
 先ほど、さまざま反省しなければならないことがあるけれども、基本的にはでき得る限りの対応をしてきたという御答弁がありましたが、私も、まさにそうだと思うんです。市も、県も、あのときでき得る対応をしたんだろうと私は思うんですが、しかし、やはり早期に連携するべきところで連携できなかった。今、実際、既に自立支援協議会だとかさまざま機関があるのでありますが、これが果たして機能しているのかどうかというところが問題なのだろうと私は思います。例えば今回の問題が発覚したときに、地域自立支援相談センターにはコーディネーターがいらっしゃるんですが、そこの就労先に問題がある、新しい就労先を見つけたいということであれば、水沢の職業支援センターにジョブコーチもおります。そこを紹介して新しい職場の可能性を探るとか、あるいは地域の自立支援協議会にはさまざまな立場の方が入っておられます。中には警察が入っておるということもあるようでありますが、そこに、実はこういう賃金未払いの問題があるんだというようなお話をされた場合、その問題が得意な方がこの自立支援協議会の中に入っておることもあると思うんです。今の状況を聞きますと、単なる意見交換で終わってしまっているので、これを、本当に問題が起きたときに問題解決型の機関に変えていかなければならないと思います。
 いずれ、今、障害者がどんどん地域に出ておるんですが、さまざまトラブルを起こしています。私は、トラブルがあるということは決して悪いことじゃないと思います。我々だって地域社会で生きていればさまざまなトラブルがあるわけであって、施設の中で生活をしていればトラブルがないわけです。トラブルがあるということは、自由に生きているということです。しかし、自由には自己責任、判断が伴うわけですが、その点、障害者の皆さんは判断力に欠けるところがある方も実際いらっしゃるわけです。ですから、今、丸裸の状態で、まさにむき出しの資本主義の中にほうり込まれているような状況があるんですが、やはりそこを地域で支えていくためには、私は孤立させてはいけないんだと思います。その孤立をさせないためには、やはり単独の機関でそれをカバーするというのはもう不可能だと思うので、既にあるさまざまの機関が連携して機能させていくということが必要なのでしょうけれども、機能させていくために県としてやれることがあると思うんです。そこをぜひ、どのようなやり方で機能させていくのか、ここについてちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。
 それから、相談に来る人はまだいいと思うんです。相談に来ない人や、相談に来れない人もいると思うんです。その方々をどうするかという問題なのでありますが、その法律のはざまにおられる方々というのでしょうか、実際、今、民生委員じゃなくて相談員という方が各地域におるんですが、本来はこの方々が自分の受け持っている地域をしっかり見て、そういう障害者がいるのであれば、しっかりウオッチしていくということが必要なのでしょうけれども、いかんせん、この相談員も高齢化が進んでなかなか機能していないという話も聞いておりますが、この相談に来れない方で困っている方に地域としてどうフォローしていくのか、この仕組みをどう構築していくのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
 最後に、六ヶ所村の問題であります。こういう御答弁になってしまうのでしょうけれども、残念な御答弁が大変に多かったわけです。
 まず一つ、安全性の問題についてでありますが、今、予防原則という考え方が世界的に大変注目されております。予防原則というのは、今現在、科学的に因果関係が証明されていなくても、その結果が将来引き起こす事態が大変大きいと想定される場合は予防して規制していく。まさにこれは地球温暖化の問題に適用されております。我々人間の排出するCO2が地球温暖化の原因だということは、まだ科学的には正式に証明されておりませんが、そのことが将来引き起こす結果が大変だということで、世界各国で対応に乗り出しているわけです。
 私は、毎日あの六ヶ所村から排出される放射性廃棄物の問題についても、同じように予防原則の考え方を適用していくべきだろうと考えるわけであります。先ほども質問の中で申し上げましたが、科学者の間でも真っ二つに分かれているわけです。全く問題ないかもしれないし、問題があるかもしれない。今現在、確かなことは何もわからないわけです。ですから、予防原則という立場に立てば、やはり私はこの問題をこのまま黙ってやらせるということにならないのだろうと思います。いずれ、国に対して、放射性物質の放出管理について、その低減措置を導入するなど安全対策の見直しも含めて、県として国に言うべきことは言っていかなければならないと私は思います。その点について環境生活部長に改めてお尋ねいたします。
 それから、風評被害についてでありますが、さまざま風評被害のこれまでの例を挙げていただいたんですけれども、今現在、法律でカバーしているものがあるというお話でありました。原子力損害の賠償に関する法律に基づいて損害賠償がなされるということでありましたが、この法律は、実際に原子炉の運転等によって原子力損害が生じた場合に損害補償をするという内容となっております。私が心配しているのは、実際に法令以下の基準で正常に運転しているにもかかわらず、実際には再処理工場から微量の放射性廃棄物が海に放出されております。そのことによって風評被害が起きた場合、三陸の皆さんはこれが経済基盤であります。今まで海をしっかり守ってこられた。ワカメの煮汁や貝殻も海に投げ込まない、洗剤も吟味して使用するなど、そうやって海を守って、三陸というブランドを守ってきたわけでありますが、もし、そういう風評被害が起きた場合は、一体どのように対応されるのでしょうか、その点についてお尋ねいたします。これも環境生活部長にお願いします。
 もう一点、環境生活部長に、先ほどの危機管理の問題でありますが、放射能に境界線はありません。半径5キロで放射能がとまるということはありません。これはチェルノブイリでも見ればわかると思います。青森の話を聞いたのではなくて、私は岩手の話を聞いたんです。岩手と青森は県境を接しているわけでありますが、風向きによっては県北の方々にも影響が出ないとは言い切れないと思います。実際事故が起きた場合は、正確な情報を迅速に伝えて避難につなげることも大変重要になってきます。先ほど、情報連絡の体制を整えていくということもお話がありましたが、改めて、青森県としてではなくて、岩手県として、先ほどの薬の備蓄も含めて、真剣にこの危機管理の問題に対応していく必要があるのだろうと私は思いますが、その点についてお尋ねいたします。
 最後に、知事にお尋ねいたします。
 先ほど私は哲学をお伺いしたつもりでありましたが、温暖化の対策あるいはエネルギーの安定供給、そういった面で大変に重要だろうというお話でございました。しかしながら、私は原発は必要だと思っています。再処理はなくても原発はできるんです。実際、先ほど申し上げたようなアメリカやあるいはドイツといった国では、直接処分という方法で原発を動かしております。
 私がお伺いしたいのは、再処理という方法はどうしても放射性廃棄物を海や空に出してしまう。それがプルトニウムといった物質の場合は2万4、000年、日本の歴史の何倍もの長きにわたって将来影響を及ぼす可能性があるということは、私は大変重要な問題ではないだろうかと思うんですが、ぜひ、知事の哲学についてお尋ねしたいと改めて思います。お願いします。
〇知事(達増拓也君) 原子力政策の問題については、先ごろ盛岡で行われました北海道東北知事会でもテーマの一つにございまして、その中で、どのぐらい国の関与、いざというときに国が迅速な体制がとれるように国に強く求めていくかということで、いろいろ意見が分かれたりもしたのでありますけれども、原子力発電所など原子力関係施設を抱える県のほうでは、その県として原子力専門家の職員を採用するとか、あるいは原子力専門家の国の職員を常駐させるとか、そういったことが必要であるというような話でありました。
 岩手県といたしましては、やはり原子力政策そのものについて判断できるような体制にはございませんので、六ヶ所村の再処理施設についても、国や事業者に対して、岩手県はその民意をとらえて、そしてその民意を実現するために必要ないろんな措置を行う体制はございますので、岩手県民の不安でありますとか、要望でありますとか、そうしたことをきちっととらえて、そして国や事業者に対しては強く言っていく、そういうことをやっていかなければならないと考えております。
 哲学については、原子力政策、特に再処理、核燃料サイクルについては、高速増殖炉というものがどれだけ可能性があるかということにもよると思います。また、原子力についても、コンパクトでより安全性の高い次世代型原発の開発というのも行われていると聞いておりますし、トリウム溶融塩というウランにかわる原発をつくることによって、安全性が飛躍的に高まるという話も聞いたことがございますが、いずれにせよ、知事として、その政策判断をすることは今できないと思っておりまして、ソクラテスでありましたか、わからないことをわからないとすることが重要ということも哲学と思っておりますので、そういうことでございます。
〇医療局長(法貴敬君) 公立病院ガイドラインはまだ明らかにはされていませんけれども、恐らく病床利用率が70%を切る病院はということだと思いますが、確かにそういう病院は今あるんですけれども、その要因としては、医師の不足により診療体制が整っていないとか、そもそも医療資源が希薄な地域で、なかなか患者数が伸びないというところであります。ただ、そういうところであっても、今後、先ほども申し上げましたけれども、地域医療連携推進会議などの場を通じて、その病院がその地域の中でどういう役割を果たしていくべきなのかという議論を十分していただきまして、その十分な議論を踏まえながら、平成20年度あるいは平成21年度の地域経営の計画策定を通じて、そういう再編、あるいは再編しなくてもいいのかということについても明らかにしていきたいと思っております。
〇総務部長(川窪俊広君) 病院新税関係でございますが、先ほどの御質問の中で御指摘いただいた次のような点、毎年度、100億円規模での県民負担が既に生じている状況だという点でありますとか、また、対応方策を財政的に見ていけば、今後の県立病院の体制の見直しがどう検討されるか、あるいはまたそこをどう効率化していくのか、また、国の措置の働きかけが必要であるという点、そして最後に、やむを得ざる県負担については県民の追加負担になるのか、他の事業を抑制することに行き着くのかといったような問題の流れにつきましては、そのとおりかと考えておりますけれども、現在は、まず、医師不足等の状況の中で、どのような形で県民医療の提供体制を整え、また維持していくのかというようなことを議論し、まとめなければいけないという状況でございまして、そういった段階であるということを考えますと、これからやるべき検討というものの中に病院新税の検討が含まれるのかどうかということについて、見込みを申し上げられる時期、段階でないという状況であるということにつき、御理解をいただければと存じます。
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 障害者自立支援法ができまして、それまでの施設で保護するという形態から地域で生活していくという方向に変わったわけでございまして、先ほど御質問にありましたように、リスクのある社会で生活していただくという形になったわけでございます。そうした中で、障害のある方々が社会で生活していく上でのセーフティネットをどう築いていくかという視点に立って考えていかなければならないと思っております。
 今回の事案などにつきましても、被害を受けてから支援するという形になってしまったのは非常に残念だと思っておりまして、こうした被害を受ける前から対応できるような、いわばブランコから落ちたから助けるというセーフティネットではなくて、落ちないように支えるようなセーフティネットというイメージをつくっていくことが必要ではないかと思っております。
 そうした意味で、先ほど御質問にありましたように、地域自立支援協議会というのは非常に大きな役割を果たすのではないかと思っております。ただ、この協議会につきましては、昨年の10月から、県として立ち上げを各地域に行っていただくようにお願いして進めてきているものでございまして、まだ一部の地域で未設置となっているような状況もございます。
 一方では、市町村が主体となって協議会をつくりながら民間の事業者がネットワークをつくり、市町村の協議会のもとに部会をつくって、非常に活発に取り組みを始めているところもございます。そうした活発な取り組みをしていただいている地域におきましては、実務担当者が顔の見える関係でよく話し合いができる、そして、先ほどお話がありましたような全く知らない分野の人とも連携して支援を得たり、助言を得たりするような関係ができてきていると感じております。例えば宮古地区では、相談支援部会とか、権利擁護部会とか、精神保健部会とか、それぞれの部会をつくったレインボーネットといったものをつくり出してきております。こうした取り組みを一つのモデルとして、やはり各地域にお示ししていきたいと考えております。
 それから、こうした自立支援協議会の運営の中心となるような実務担当者の顔の見える関係をコーディネートするような人を県として養成していきたいと思っておりまして、地域移行支援員の推進でありますとか、県内の専門家3人の方に地域生活移行アドバイザーといったものを委嘱しておりまして、県立大学の先生でありますとか、精神障害者の地域移行支援を長い間行ってきた方に委嘱しておりますが、そういった方を派遣して、自立支援協議会の活動の活発化に努めていきたいと思っております。
 相談になかなか来ない方をどうやって支援していくかということも非常に難しいことでございますが、先ほど申し上げましたような顔の見える関係ができてくると、いわゆる出かけていく、あるいは話を聞いてくる、安否を確認してくるといったような取り組みが自然にできてくるのではないかと考えております。やはり自立支援協議会が顔の見える実務者の中で自主的な活動ができるように、県としても早期にそうした活動ができるように支援していきたいと考えております。
〇環境生活部長(菊池秀一君) 六ヶ所村再処理工場の関係でございます。
 まず1問目、国に対して県としても言うべきことを言う必要があるのではないかというお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたとおり、原子力政策は国が一元的な責任と役割を担っております。そういうことで国が専管事項として推進しておりますし、あるいは大変高度な科学的、専門的な判断を要するものであり、国際的な研究連携などを進めながら取り組んでいるものでございます。そうした中で、県として、そういった科学的、専門的な根拠なしに言うべきことを言うという立場にはないものと考えております。
 次に、風評被害について、正常な運転で起きた場合にはどうなるのかという話がございました。これにつきましては、先ほど、現時点で把握できることということで原賠法の話をさせていただきましたけれども、原賠法の中では民法の特別法という位置づけになっていまして、議員御指摘のように、そういう直接的な被害があった場合に対応するような感じでございますけれども、結局、事業者としてどういった責任を果たすかということに収れんされていくのかと思います。そういったことで、これまでの例というのがなかなか把握できない、あるいは実例を見つけかねておりますけれども、個別の被害に応じて、その時々で判断されていくべきもの、それは、いかに事業者が対応していくかということが前提となった上で検討されていくべきものと考えております。
 それから、3問目で、半径5キロ以内ということは青森県の例であって、岩手県としてどうするのかというお尋ねでございます。先ほども申し上げましたとおり、半径5キロというのは青森県の判断ということではございませんで、国の原子力安全委員会が定めた指針に基づく地域でございます。これによりますと、再処理工場については5キロ、原子力発電所については10キロという考え方が示されてございます。そういったことで、再処理工場の場合にはそれだけ安全性に対する、何といいますか、設計上、安全性が高いという評価がされているものと思っております。したがいまして、青森県の5キロ範囲内での災害対策というのが基本となっている中で、本県のように60キロ以上離れている、県境のところも離れてございます。そうした場合の影響というのは相当程度の違いが出ると思っておりますので、先ほど申し上げましたように、青森県の場合においても、六ヶ所村に隣接する市町村であっても、必要に応じて情報連絡、住民広報の体制を整備するというような規定になっていることでございますので、本県としても、できるものとするのはそういったことかと考えております。
〇14番(高橋博之君) 御答弁ありがとうございました。再々質問をさせていただきます。
 まず、保健福祉部長にでありますが、先ほど私は地域の相談員の話をしたのでありますが、高齢化が大変著しくなってきたので、私は、やはり後見制度をもっともっと活用していくべきだろうと思います。例えば世田谷区では、世田谷区が成年後見支援センターというものを設けて、自治体みずから後見人の養成に乗り出しました。あるいはドイツでは世話人と呼ばれる市民の後見人が多数おって、100万人を超える高齢者、障害者を彼らが支えているという話も聞いております。ですから、そういう形で県民、住民の皆さんが後見人として、そういう弱い立場の方々を支えられるようなことも考えていったほうがよいのではないのかと思うんですが、このことについて御所見をお伺いします。
 それから、環境生活部長にお願いします。
 やはり今まで岩手には原子力はなかったので、これまで考える機会がなかったんだと思います。そういう担当の課もありませんし、知識もないと思います。ですから、今、急にどうだこうだ言われても答えられる立場にないというのもわかるんですが、ただ、やはり事は140万県民の生命・安全にかかわる問題であります。当然、原発を抱えているそれぞれの都道府県の首長も含めて、哲学を持って、プルサーマルにしても、原発にしても、受け入れる、受け入れないという判断をしております。幸い岩手にはありませんが、しかし、隣県の青森でそういう再処理工場が本格的に稼働するということであります。ですから、先ほど、科学的な根拠がないので言うべき立場にはないと。まさにそうなんですが、では、科学的根拠をしっかり県として、国がどうだからじゃなくて、140万人県民の生命・安全を守るのが県の最大の責務であります。ですから、科学的な根拠を、県として、これは問題ないと自信を持って言えるようにするためにも、私は、そういう機関というものを設置して検討していくべきではないかと考えるのでありますが、そのことについてお尋ねいたします。
 それから、風評被害について。
 風評被害についても、私は、やはり原燃と安全協定というものを、時間はありませんが、考えていくべきではないだろうかと思います。実際、今、青森県の六ヶ所村で、ある農家が、年間契約の消費者に、再処理工場でウラン試験が開始したと告げたそうです。そうしたら、アンケートを行ったら、契約者2人から、安全面の不安を理由に契約を打ち切られたといったようなことも起きております。ですから、そうした事態に対応するためにも安全協定を結ぶということが必要になってくると私は思いますが、その点についてお伺いします。
 最後に、知事にお尋ねいたします。
 先ほど、わからないことはわからないと言うのも哲学だという話を聞いて、私は大変驚きました。140万人県民の生命・安全を預かる県の最高責任者の言葉かと、私は本当に言葉を失いました。改めてお聞きいたしたいと思いますが、この再処理工場の安全性について問題がないと言い切れるのでしょうか。我々の子々孫々に答えるつもりで御答弁いただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 無知の知によって得られる最初の利点は注意深さであります。わかってないことを自覚する以上、あらゆることに注意深く対応しなければならないと思っておりまして、何かあったときの対応、また、そうしたことが起こらないようにするために何ができるのかということについては、常に考え続けて対応していきたいと思います。
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 成年後見制度を市民の立場で取り組んでいただくような仕組みができないかというお尋ねでございますが、確かに、成年後見制度の中で後見人に法曹界の人をお願いしようとすると、岩手県の場合には人的な資源がなかなかないといったこともあります。費用の面もあります。そうした意味で、そういった後見を担っていただくような団体ができていくことが非常に大事だと考えております。
 最初の答弁でも申し上げましたように、県独自の取り組みといたしまして、障害者及び高齢者のあんしんネット形成支援事業というものを昨年度から実施しておりまして、その中で、こうした成年後見を担っていただくような団体の育成も進めていきたいと考えてございます。
 今、私どもが想定しておりますのは、一つは、市町村の社会福祉協議会がそうした役割を担っていただけないかと。従来は地域福祉権利擁護事業と呼ばれていた事業が、日常生活自立支援事業といったもので言われております。これは日常の金銭管理等を支援する事業でございますが、そうしたものから成年後見まで一貫した支援ができるのではないかとか、あるいは先ほど御紹介いたしました宮古市のレインボーネットのような、各関係団体の連携組織がNPOのようなものを取って支援するような仕組みができないかとか、あるいは従来あるNPOが、これは公務員のОBとか教員のОBの方々がこれからやりたいといったような意欲もお示しになっておりますけれども、そうした方々がリタイアした後の社会貢献としてやっていきたいといったような意向も示されております。そうした取り組みを、各関係者とも意見交換しながら県として支援し、できれば団体後見みたいなものを岩手の中に根づかせていきたいと考えております。
〇環境生活部長(菊池秀一君) 六ヶ所村の関係でございますが、まず1点目、県として担当するような機関を設置してはどうかというお尋ねでございます。先ほど来申し上げているとおり、やはりこれは国が一元的に責任と役割を担うものでございます。また、青森県の場合には担当する課がございます。ただ、青森県は、やはり県の判断として再処理施設の立地を受け入れた、そして施設が所在する県でございます。また、先ほど言いました半径5キロ以内という原子力安全委員会が定めた防災を講ずべき地域が所在しているということで、防災対策を講ずる責任がございます。また、原燃との間で安全協定を結んでいるということで、原燃との関係でのさまざまな対応が生じる。そういったことでの青森県の対応でございまして、本県とは事情が異なると考えておりまして、県として、現時点では今のような体制で対応できるものと考えております。
 それから、二つ目の風評被害に関連して、安全協定を結ぶ必要があるのではないかというお尋ねでございますが、現在、アクティブ試験に関連して安全協定が結ばれておりますのは、県と六ヶ所村と原燃というのが1本ございます。それから、県と六ヶ所村に隣接する5市町村がございます。そことの協定ということになっております。したがいまして、それから外れる青森県内の市町村もあるわけでございます。例えば八戸とか、階上町とか、こういったところはそういった協定からも外れている。そうした中で、岩手県が安全協定を結ぶということは難しいのではないかと考えております。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
〇議長(渡辺幸貫君) 小野寺有一君。

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