令和5年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇7番(松本雄士君) 自由民主党の松本雄士です。このたび一般質問の機会をいただきました先輩、同僚議員の皆様方に心より感謝申し上げます。
 それでは、通告に従いまして、順次質問させていただきます。
 初めに、本県農業の振興についてお伺いいたします。
 本県の農業は、豊かな自然資源と広大で肥沃な県土を基盤に、本県の基幹産業として地域経済や地域振興に大きく寄与してきたものと認識しております。しかし、生産資材価格が高どまりしているほか、販売価格への適正な価格転嫁が思うように進まず、農業に携わる方々が、将来に希望を見出すことがとても厳しい状況にあります。
 他方、令和5年実施の県の施策に関する県民意識調査結果を見ますと、地域の農林水産業の担い手が確保されていることに対するニーズ度が調査57項目中3番目と高くなっていますが、消費者ニーズに対応した農林水産物の産地形成や本県の農林水産物が評価され販路が拡大していることに対する県民の満足度はとても低く、さらに昨年度に比して悪化しております。
 この調査結果は、本県の農業を初めとする第1次産業に対する県民の価値観や期待を端的にあらわすものであり、とても意義深いものであると考えます。
 岩手県の農業を魅力ある産業として次の世代に確実に引き継いでいくため、農業所得の確保、向上を目指し、構造改革を力強く進めていくことが必要です。そのためにも、岩手県の農業の目指す姿を明らかにし、農業者はもとより、広く県民と共有することができる中長期的な視点に立った新たな岩手県の農業のグランドデザインを示すいわて農業ビジョンを策定し、県のトップみずからが、明確かつ力強く県内外に発信していくことが必要不可欠なのではないでしょうか。
 岩手県の農業の目指すべき姿が県民一人一人にとってわかりやすく、同じ解釈ができる言葉で共有できれば、それが改革の強力なエネルギー源になると私は考えます。
 知事は、演述の中で、農業施策についてこれまで同様に触れられておりますが、10年後や30年後を見据えた岩手県の農業のグランドデザインをどのように思い描かれているのでしょうか。また、それをどのように県民に示していくのかお伺いいたします。
 続いて、地域農業経営強化促進計画の実効性確保に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 農業者の減少や高齢化により耕作放棄地が拡大し、地域の農地が適切に利用されなくなることが強く懸念されております。農地保全のみならず減少する担い手対策として、農地の集積、集約化と農業基盤整備を促進するとともに、あわせて農作業の省力化や負担軽減に向けたスマート農業技術が実装可能となるよう、環境整備を加速化していくことが肝要です。
 農地集積、集約化においては、令和7年3月末を目途に、地域での話し合いにより目指すべき将来の農地利用の姿を明確にする地域計画を定め、地域内外から農地の受け手を幅広く確保し、農地バンクを活用した取り組みを進めているところと認識しております。
 一方、本県における担い手への農地集積率は、令和4年度で54.9%と全国平均の59.5%を下回るほか、東北地方の中では2番目の低さとなっております。また、令和3年度の本県の水田整備率は、東北地方の中では最も低い53%程度となっており、生産性の高い農業の推進に向け、水田の大区画化、汎用化のための基盤整備と意欲ある生産者への農地集積、集約化は喫緊の課題であります。
 本県においては、地域農業マスタープランの実質化を425地区全てで完了しており、これら持続可能な地域農業のあり方に加え、目標地図を策定していくわけですが、計画策定が目的ではなく、地域計画が絵に描いた餅にならないように着実に実践していくことが何よりも重要です。
 ついては、地域農業経営基盤強化促進計画の実効性確保に向け、実践支援事業を含めどのように事業実施主体への支援を進めていくのかお伺いいたします。
 続いて、肥料価格高騰対策についてお伺いいたします。
 肥料価格がピーク時よりは下げてきているとはいえ、高騰前より40%高い状況と依然として高どまりにある中で、生産者が意欲を持って安定した営農を継続していくためには、十分な影響緩和策を継続的に講じていく必要があると考えます。
 令和4年秋肥、令和5年春肥については、国の対策事業にあわせ農業者に幅広く支援を行ってきておりますが、肥料価格高騰対策について、今後どのような対策を考えているのかお伺いいたします。
 続いて、農業共同利用施設の動力光熱費高騰対策についてお伺いいたします。
 農業協同組合や農業者の組織する団体が運営するカントリーエレベーターやライスセンター、園芸産地における集出荷及び選果施設等の農業共同利用施設は、農産物を協同で出荷し、規格等を統一することによって市場性を高めるとともに、諸経費と労力の節減を図るなど、農家所得の確保、向上に必要不可欠な施設となっております。
 近年、電気代の高騰により、かかる施設の収支悪化を招き、伴って農業者の利用料等の負担増加を招いております。
 他県では、電気代等の動力光熱費の高騰を受け、野菜、果樹の集出荷施設や米、麦、大豆の共同乾燥施設の管理者等に対し、高騰した動力光熱費を助成する集出荷施設等コスト高騰対策支援事業を実施しているところがあると聞いております。
 また、本県では、農業水利管理施設の運営に対して、ことし4月に岩手県一般会計補正予算第1号で緊急対策補助を措置したところであります。
 ついては、農業共同利用施設の動力光熱費の高騰について、どのような対策を考えているのかお伺いいたします。
 続いて、畜産、酪農経営支援に係る取り組みについてお伺いいたします。
 現状の農業経営において、特にもそのコスト構造や販売価格の低迷等により畜産農家の経営は厳しいものがあり、飼料価格の高騰、高どまりのみならず、牧草確保のための機械の燃料、整備代や肥料代などの負担増も畜産、酪農経営を圧迫しております。生産コストの上昇も大きな要因の一つとし、この5年間で乳用牛の飼養戸数は17%減少し、肉用牛の飼養戸数は21%減少している状況にあります。
 今後、畜産、酪農経営のコストの大半を占める飼料の自給策の重要度がさらに高まってくるほか、畜産経営体の規模拡大による生産性の向上を図るため、酪農ヘルパーやコントラクター等の外部支援組織の必要性がさらに高まってくるものと考えております。
 ついては、粗飼料基盤の確立、強化に向け、水田活用や定期的な草地更新を促進するため、県としてどのような支援策を具体的に考えているのかお伺いいたします。
 加えて、畜産、酪農経営の外部支援組織の育成、拡充、人材確保に向け、具体的にどのような取り組みを進めていくのかお伺いいたします。
 続いて、生産性、市場性の高い産地づくりに係る園芸振興についてお伺いいたします。
 全国で主食用米の需要量が年間10万トン程度減少しており、単純計算では、2年半で主産県である岩手県が生産する分の需要が消失することとなります。農業者の所得確保に向け、水田フル活用による麦、大豆、さらには野菜への作付転換を着実に進めていく必要があります。
 他方、社会構造、消費構造の変化に伴い、加工、業務用向けの需要は拡大傾向にあり、今後も、食の外部化や簡便化の傾向は続くと考えられます。
 県としても、加工、業務用野菜の作付拡大を進めており、まずは地域農業の中核となる経営体やトップモデルとなる経営体の育成が求められますが、あわせて実需ニーズに対応した品目生産体制や流通体制の構築が重要と考えます。
 ついては、本県として高収益作物への転換を進めていく中で、加工、業務用野菜等の供給調整機能を担う加工貯蔵施設等の広域的な施設整備について、どのように考えているのかお伺いいたします。
 続いて、岩手県の農林水産物の輸出拡大の取り組みについてお伺いいたします。
 県産農林水産物のクオリティーの高さや国内市場の縮小と海外市場の拡大を見据え、農林水産物の輸出は、これからの農業施策において必要不可欠な施策と考えます。
 また、県産米の東南アジア等におけるシェアは拡大してきており、カナダにおける日本産の和牛の関税が撤廃されたほか、為替の状況等、まさに輸出拡大に積極的に取り組むべき好機であると認識しております。
 いわて県民計画(2019〜2028)では、輸出拡大に向けて、県産農林水産物の輸出額を令和3年度の43億円から令和8年度に69億円とする目標を掲げておりますが、令和4年度には令和5年度目標を上回る約55億円の輸出実績となっております。
 ついては、輸出をより強力に進めていくため、目標の見直しについてどう考えるかお伺いいたします。
 また、輸出を拡大させていくためには、輸出先の国、地域の規制やニーズに対応したマーケットインの視点で促進していく必要がありますが、県としてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、中小企業、小規模事業者の賃上げ支援についてお伺いいたします。
 本県の企業数の99.8%を占め地域を支えている中小企業、小規模事業者の経営は、コロナ禍の長期化による消費スタイルの変化、燃料を初めとする資源価格の高騰等によるコスト増により非常に厳しい状況にあり、人口減少、高齢化等による需要減少、DXやGXへの対応等とあわせ課題が山積しております。
 加えて、この10月4日から本県の最低賃金が改定され893円となりました。893円は全国では最も低い賃金となっており、この水準では、労働者の生活は物価高騰に対応するには十分とは言えない状況にありますが、一方、雇用者側にとってみれば、さらなる人件費の上昇を招くほか、さらに労働者の確保が難しくなることも想定され、賃金の引き上げは、中小、小規模事業者の最重要課題となっております。
 かかる状況下にあって、中小、小規模事業者の経営基盤の強化がまずもって必要不可欠であることから、県としては、生産性向上支援を初め、DX促進、中小企業等賃上げ環境整備、資金繰りの円滑化や事業再構築、販路開拓支援に取り組んでいるところです。
 ついては、中小、小規模事業者の賃上げにつなげるために、経営基盤強化支援において最重点に取り組んでいくことについて、知事にお伺いいたします。
 続いて、事業承継支援について伺います。
 中小、小規模事業者の高齢化の進展と厳しい経営環境等を背景に、後継者不在による廃業等が多く見られる状況にあり、事業者の減少により、地域機能のさらなる衰退が強く懸念されます。
 県としては、諸支援に加え、岩手県事業承継・引継ぎ支援センターによるマッチング支援や事業承継推進事業を展開しているところですが、令和4年度は、新規相談件数が296件で、マッチング成約件数が27件、令和5年度は、9月までで新規相談件数129件、マッチング成約13件となっています。
 また、今年度の事業承継推進事業費補助は、予算額2、000万円に対して現時点の交付決定額は2割弱、現在、第二次公募を実施しているところであり、さらなる活用促進に向けた取り組みが必要と考えます。
 ついては、現状の事業承継支援体制や施策について、どう評価されているのか、また、今後、かかる体制や施策の見直し、拡充をどう考えているのかお伺いいたします。
 次に、子ども医療費助成について伺います。
 子供医療費助成事業については、子供の通院や入院に係る費用負担を軽減し、子供が治療を受けやすい環境をつくるとともに、子育て世帯の負担を減らす効果が期待され、子育て支援の大きな柱の一つとなっております。
 しかし、県内各市町村の受給者負担の状況を見ますと、入院や通院に係る負担額に市町村間に格差が見られる状況にあり、県内33市町村のうち、受給者負担のないところが22市町村、県基準により緩和しているところが9市町、県基準と同じところが2町となっております。
 また、所得制限についても市町村によって対応が異なっていることから、県内の子ども医療費助成の受給者負担と所得制限を全て撤廃した場合、県の補助額は19.9億円増加すると見込まれます。
 同じ岩手県に住み、同様の医療サービスを受けながら、地域によって助成に格差があることは好ましくなく、対策を講ずるべきと考えます。ついては、子ども医療費助成の市町村間の格差についての所見と今後どう対応していくのかお伺いいたします。
 続いて、放課後児童クラブの充実に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 放課後児童クラブは、共働き等により保護者が昼間家庭にいない世帯の小学生を預かり、その遊びと生活を支援し、子供の健全育成に大きな役割を果たしているところです。
 近年、県内において登録されている放課後児童クラブ数及び児童数は増加傾向にあり、令和4年度では381クラブ、児童数は1万6、515人となっております。一方、定員問題や支援員の人材不足、利用者ニーズとのミスマッチ等により、県内においても待機児童が発生している状況にあり、令和2年度をピークに改善傾向が見られるものの、令和4年5月では111人の待機児童数となっているところであります。
 また、放課後児童クラブの設置及び運営主体の形態により利用料の差が見られ、月額において負担のないところから1万5、000円以上の負担まで格差が見られます。最も多いのは5、000円から1万円の層で、約半数近くとなっております。
 提供しているサービスの違いによる価格差は当然に生じるものとして、同質のサービス提供であれば、保護者の負担額に格差が生じることは好ましくないほか、低所得世帯等への支援も求められるものと考えます。ついては、待機児童の解消について、今後どのように進めていくのかお伺いいたします。
 また、放課後児童クラブ利用に係る適正な負担額のあり方について、どのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、教育振興についてお伺いいたします。
 人口減少、少子化が加速度を増す一方、複雑に高度化していく現代社会において、多様な価値観を認め、さまざまな人と支え合い、助け合って地域社会を形成していくことのできる人材の育成が強く求められており、そのためには、他者を尊重し良好な人間関係を構築できる協調性や豊かな情操、自己肯定感の育成が特に重要と考えます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 いわて県民計画(2019〜2028)の教育分野におけるいわて幸福関連指標の、人が困っているときは進んで助けようと思う児童生徒の割合や自己肯定感を持つ児童生徒の割合のこの数値の持つ意味は大きく、これからの時代を強く生き抜き、まだ見ぬ世代にもこの岩手県や日本をつないでいくため、しっかりと育てていかなければならない要素であると考えております。
 一方、コロナ禍においては、人と人との接触が制限され、教育全体を通じて十分に豊かな心の育成に取り組めなかったことから、特に、小学生における先述のいわて幸福関連指標の自己肯定感の目標に届いておらず、コロナ禍による影響が大きな要因と推察いたします。
 また、先般公表された岩手県内小・中・高等学校でのいじめの認知は8、256件、前年度比で217件の増と、いじめ防止対策推進法が施行された2013年度以降最多となっており、いじめ防止においても道徳教育の充実が重要と考えます。
 ついては、新型コロナウイルス感染症5類移行後の道徳教育の充実において、多様な価値観を認め合い、協働していく人間性や社会性の育成にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、学校教育における学びの基盤づくりについて伺います。
 子供たちをめぐる環境が大きく変化しており、社会教育、家庭教育のあり方も大きく変容しています。社会状況の変化や保護者からの期待の高まり等を背景に教員に求められるものが増加する一方で、教員の大量退職や教員志願者数の減少などにより教員不足が懸念されています。
 教員の資質、能力の向上については、これまで現場の実践の中で取り組まれることも多かったものと思いますが、今後、より体系的、継続的な研修体系の構築が求められております。教育の資質能力の向上について、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 また、子供の人間性、社会性、確かな学力の育成において、教員の役割は極めて大きいものがあり、教員の質と量をしっかりと確保するとともに、子供たちに対してよりよい教育を行うためにも、学校における働き方改革など教員の負担軽減にしっかりと取り組む必要があります。
 本年9月8日には、中央教育審議会特別部会の緊急提言を踏まえ、教師を取り巻く環境整備等の取り組みの徹底が文部科学省から知事や教育長等に通知されており、教員業務の補助を行う教員業務支援員の配置等、具体的な取り組みが求められているものと認識しておりますが、本県では、教員の負担軽減についてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、特別支援教育における就労支援についてお伺いいたします。
 障がいのある人と障がいのない人が、互いに権利を尊重し合いながら、ともに学び、ともに生きる岩手をつくっていくことが、これからの多様性を尊重する時代においてとても重要であると認識しております。
 特別支援教育においては、いわて特別支援教育推進プランを踏まえ、就学から卒業、進路、就労支援に取り組んできているところでありますが、子供の特性を踏まえ就労の選択肢を可能な限り広げ、社会参画や社会とのつながりを確保していくためにも、さらなるキャリア教育及び保護者への情報提供等の充実を図っていくことが重要です。
 また、現在、民間企業の障がい者の法定雇用率は2.3%とされていますが、令和6年4月より2.5%、令和8年7月より2.7%へ段階的に引き上げられることとなり、伴って、障がい者雇用のための助成金の新設や拡充が決定されております。
 この機会に特別支援学校と企業との連携協議会への参加企業のさらなる拡大を図るとともに、就労サポーター制度の推進や技能認定会等の活動をもっと活性化させていく必要があると考えております。
 ついては、卒業後を見据えたキャリア教育をどのように充実させていくのか、また、特別支援学校と企業との連携協議会への参加促進について、どのように取り組んでいくのかお伺いします。
 次に、地域公共交通の維持確保対策についてお伺いいたします。
 人口減少やモータリーゼーションの進展により、輸送人員の減少に歯どめがかからず、地域交通を担う民間事業者の経営悪化の進行や乗務員の確保がとても難しくなってきております。
 地域公共交通に求められる役割は、運転のできない学生、生徒や高齢者、障がい者、妊婦等の生活のための交通手段の確保のみにとどまらず、観光旅客等の人々の交流を活性化させるほか、外出機会の増加によるまちのにぎわいの創出や、歩いて暮らせるまちづくりによる健康増進など幅広く期待されるものがあり、知事も演述の中でMaaSの積極的活用について言及されているところです。
 県内乗り合いバス事業者3者の広域バス路線の運行系統数は、令和2年からの2年間で33系統減少しており、不採算路線からの撤退や地域公共交通ネットワークの縮小など、地域住民の暮らしにとって必要不可欠な移動手段が今後なくなるかもしれないといった不安が大きく渦巻いております。さらに追い打ちをかけるように、燃料費の高騰が県内バス事業者の経営を圧迫しております。
 県としても、路線維持のためのバス運行対策費や運輸事業振興費等、県内バス事業者への財政支援を行っているところですが、県としても財政見通しが厳しい中、地域公共交通のあり方と財政支援について幅広く議論をしていくことが必要と考えます。
 滋賀県においては、令和4年の県税制審議会で、地域公共交通を支えるための税制の導入可能性についての答申を受け、いわゆる交通税に係る議論が行われていると聞いております。
 ついては、今後のバス事業者への財政支援とかかる財源確保について、どう考えているのかお伺いいたします。
 最後に、消防指令業務の共同運用についてお伺いいたします。
 自然災害の増加や高齢化の進展に伴い増大する救急需要や火災、地震、豪雨等災害の複雑化、多様化に適切かつ確実に対応するため、将来にわたり持続可能な消防体制の整備、確立が求められている一方、人口減少等により地方財政の硬直化が進んでおります。
 かかる状況下にあって、高機能な消防指令システムの導入による住民サービスの向上、直近指令やゼロ隊運用など災害対応力の強化、消防指令センターを共同で設置、運営することによる整備費や維持管理コストの削減等を目的に、一関地区と大船渡地区を除く県内全域において、令和8年4月からのいわて消防指令センターの共同運用開始に向けて、現在整備が進められております。
 当該システム導入に係る予算規模は設計段階にあり明らかになっておりませんが、数年前の他県の同規模の導入事例では80億円を超えており、現在の物価高騰等を勘案すれば、これから整備する本県では100億円程度に膨らむことも想定されます。
 消防組織法では、消防の管理者は市町村長とされ、市町村は、消防に要する費用を負担しなければならないとされていますが、近年の災害は、激甚化、大規模化する傾向にあり、1市町村では対応し切れない場合があります。
 また、県は、市町村の消防が十分に行われるよう、市町村相互間の連絡協調を図るほか、市町村の消防施設の拡充強化の指導及び助成に関する事務をつかさどるとともに、必要に応じて助言や指導、勧告を行うことができるとされております。
 ついては、今回のシステムは県内の大半の消防本部が導入するものであり、かかる事業の重要性等を鑑みて、県としての財政支援を含め、より積極的な関与が必要であると考えますが、県としての考えをお伺いいたします。
 以上、よろしくお願いいたします。答弁内容によりましては再質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 松本雄士議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、いわて農業振興ビジョンについてでありますが、本県の農業は、地域経済を支える基幹産業として、将来にわたり持続的に発展していくとともに、食料自給率が100%を超える本県は、我が国の食料供給基地としての役割をしっかり果たしていかなければならないと考えています。
 また、農業従事者の減少、高齢化、経済のグローバル化の進行に加え、今般の国際情勢の変化、生産資材価格の高騰、食料安全保障への意識の高まりなど、農業を取り巻く環境が大きく変化する中、喫緊の課題への対応とともに、担い手の確保、育成や農業の体質強化などが重要であります。
 県では、おおむね10年後を見据え策定したいわて県民計画(2019〜2028)の長期ビジョンにおいて、担い手の確保、育成や農業の体質強化に向け、意欲と能力のある経営体を育成すること、収益力の高い食料、木材供給基地をつくること、農産物の付加価値を高め、販路を開拓、拡大することなどを政策推進の基本方向として掲げています。
 また、本年3月に策定した第2期アクションプランに基づき、現下の生産資材価格の高騰に機動的に対応しながら、地域農業の核となる経営体の育成や次代を担う新規就農者の確保、育成、食料安全保障の強化や農業の体質強化に向けた生産性、市場性の高い産地づくり、高付加価値化などの取り組みを進めることとしています。
 長期ビジョンやアクションプランは、市町村、農業団体等と共通理解を図りながら具体的な施策を進めており、今後とも、いわて県民計画(2019〜2028)のもと、県、農業団体等がともに力を合わせ、生産者が意欲を持って生き生きと働き、暮らすことのできる農業の実現に向け、積極的に取り組んでまいります。
 次に、中小企業、小規模事業者の賃上げ支援についてでありますが、中小、小規模事業者が賃上げを実現していくためには、生産性向上によって賃上げ原資を確保するとともに、適切かつ円滑な価格転嫁による取引価格の適正化を図ることで経営基盤を強化していくことが重要であります。
 このため、6月補正予算において、中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助を措置し、経営革新計画に基づいて生産性の向上を図り、賃上げに取り組む事業者の設備投資等を支援することとしたところです。
 また、この補助事業の実施に当たっては、適切かつ円滑な価格転嫁を実現するためのパートナーシップ構築宣言を行うことを要件としたところであり、7月12日には、県内の経済団体、労働団体及び行政機関の連名で、価格転嫁の円滑化による地域経済の活性化に向けた共同宣言を行うなど、適切な価格転嫁に向けた環境整備を図っております。
 今後も、中小、小規模事業者の経営課題を的確に捉えつつ、適時適切に必要な施策を展開していくとともに、関係機関が連携し、オール岩手の力で中小、小規模事業者の経営基盤強化に向けた取り組みを支援してまいります。
 次に、地域公共交通についてでありますが、県においては、地域の暮らしを支える公共交通を守ることが重要と認識しており、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、持続可能な地域公共交通の維持、確保に取り組むこととしています。
 このため、国や市町村と連携しながらバス事業者に対する補助により路線の維持、確保に取り組んできたほか、代替交通やデマンド交通の運行を行う市町村に対して支援してきたところであり、引き続き、県民の移動手段の確保に取り組んでまいります。
 また、新型コロナウイルス感染症や燃料費高騰の影響下にあっても路線を維持できるよう、バス事業者に対して運行支援交付金を交付してきたところです。
 持続可能な地域公共交通の維持、確保に向けた取り組みを進めるに当たり、財源の確保が必要であることから、国庫補助を最大限活用するとともに、国庫補助の補助上限額の拡大や補助要件の緩和など、引き続き、国に対して必要な措置を求めてまいります。
 また、代替交通やデマンド交通により住民の移動手段の確保に取り組む市町村に対して特別交付税が交付されておりますが、引き続き、必要な財源が確保されるよう国に求めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) まず、子供の医療費助成についてでありますが、子供の医療費助成は、子育て支援施策の一つとして、各市町村がそれぞれの政策的判断により助成対象の拡充を図ってきた中で、その取り組みにばらつきが生じてきているものと認識しております。
 県におきましても、現物給付の範囲の拡大に当たりましては、医師会等関係団体との調整などにより全県での統一した制度拡充を図り、本年8月には、全ての市町村におきまして高校生等までを対象とした現物給付が実施されたところであります。
 対象者の拡大や所得制限の撤廃などを行うためには、議員御指摘のとおり、多額の財源の確保が必要となりますが、子ども医療費助成は、県内の自治体間のみならず、本来、全国どこの地域においても同等の水準で行われるべきであると考えており、これまでも国に対し、全国知事会として、全国一律の制度を創設するよう要望してきたところであり、今後も粘り強く国に働きかけてまいります。
 次に、放課後児童クラブの充実についてでありますが、本県における放課後児童クラブの状況は、クラブ数等の増加に伴い、待機児童数は年々減少しておりますが、特定の地域においては、クラブ登録児童数が増加していることなどから、依然として待機児童が生じている状況です。
 県ではこれまで、実施主体である市町村に対し、クラブの施設整備や運営費に係る補助を行ってきたほか、放課後児童支援員研修により人材養成を図るなど、利用児童数の拡充に向けた支援を行ってまいりました。
 また、利用料については、現状で多くの市町村が低所得世帯やひとり親世帯、兄弟姉妹での利用等に対し無料化や減免を行っている一方、相応の負担を求めているクラブもありますが、県では、クラブの実施場所や設備、提供する活動内容等に違いがあることから、クラブの設置、運営主体ごとにそれぞれ設定されるものと認識しております。
 県といたしましては、放課後児童クラブの充実に向けまして、国に対して要望していくとともに、引き続きクラブの実態把握に努めますほか、運営費や施設整備に係る補助などの実施により待機児童の解消に努め、放課後や学校休業日におけます児童の適切な遊びと生活の場の提供に取り組んでまいります。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、地域農業基盤整備促進計画についてでありますが、担い手の減少、高齢化が進む中、農地を有効に活用し、本県の農業生産を維持、拡大していくためには、将来の農地利用の姿を明らかにするとともに、担い手への農地の集積、集約化を進めていくことが重要であります。
 このため県では、市町村、農業委員会等と連携し、地域の話し合いに参画しながら、農地の受け手となる担い手への集積、集約化や高収益作物の導入など、将来の農地利用の姿を明確化した地域計画が策定されるよう支援しています。
 また、県内4カ所に地域農業基盤強化促進計画の策定を先行して進めるモデル地区を設定し、その取り組みや優良事例を学ぶ研修会を開催するなど、地域計画が、より実効性の高い内容となるよう支援しているところです。
 さらに、農地の受け手となる担い手の育成に向け、農地中間管理事業の活用による農地の集積、集約化、中小企業診断士等、専門家派遣による法人化、県独自の地域農業計画実践支援事業等の活用による機械、施設の整備、国交付金等の活用による野菜等の高収益作物の導入拡大などを進めています。
 今後とも、関係機関、団体と連携しながら、より実効性の高い地域農業基盤強化促進計画の策定とともに、担い手への農地集積など、地域において目指す農業が実現できるよう支援してまいります。
 次に、肥料価格高騰対策についてでありますが、県ではこれまで、農業経営の安定に向け、国に対し、肥料等生産資材の価格高騰対策の拡充などを要望するほか、肥料価格の上昇分を補填する国事業の活用を積極的に進めるとともに、県独自に肥料購入費への支援などを実施してきたところです。
 また、化学肥料の使用量低減に向け、土壌診断に基づく適正施肥や化学肥料に代用できる堆肥の活用を指導するとともに、化学肥料と堆肥を混合した低コストで生産者の取り扱いが容易な肥料の開発、堆肥の散布に必要な機械の導入などを支援してきたところです。
 肥料価格は、依然として高騰前の令和2年より高い状況にあることから、県としては、引き続き、化学肥料の使用量を低減する技術の普及を図るとともに、さらに必要となる対策について、現在、検討が進められている国の経済対策の動向も踏まえながら、農業経営が安定するよう機動的に対応してまいります。
 次に、農業共同利用施設についてでありますが、水稲の共同乾燥施設や野菜の集出荷施設等の農業共同利用施設は、生産者の調製作業の省力化に加え、共同選別による品質の均一化、共同出荷による市場性の向上などに重要な役割を果たしていると承知しています。
 生産資材等の価格高騰対策について、県では、全国知事会と連携しながら、国に対し、燃油や電気料金、生産資材等の価格高騰対策の拡充などを要望するとともに、地域等からの要望を踏まえつつ、農業経営に大きな影響を及ぼし、利用する生産者の多い肥料や飼料、農業水利施設の電気料金などを支援してきたところです。
 県内の農業共同利用施設においては、電気料金等の低減に向け、太陽光発電設備の導入や照明のLED化等に取り組んでいる事例もあり、県としては、こうした取り組みを広く周知し、取り組みを進めるとともに、現在、国において検討が進められている経済対策の動向も踏まえながら、どのような支援が可能か検討してまいります。
 次に、酪農、肉用牛経営の支援についてでありますが、飼料等の価格が高騰する中、酪農、肉用牛経営の安定に向けては、本県の強みである豊富な飼料基盤を活用し、自給飼料を生産拡大していくことが重要であります。
 また、牧草の収穫作業等を請け負うコントラクターや搾乳等の作業を請け負う酪農ヘルパー組合などの外部支援組織は、酪農、肉用牛経営の規模拡大や労働負担の軽減に重要な役割を担っており、人材の確保等が課題となっています。
 県では、自給飼料の生産拡大に向け、国の事業を活用した牧草地や飼料畑の整備、堆肥を有効活用した化学肥料を低減する牧草生産、水田を活用した稲ホールクロップサイレージや飼料用米、子実用トウモロコシの生産拡大などを進めており、引き続き、牧草地や飼料畑、水田を生かした自給飼料の生産が拡大するよう取り組んでいくこととしています。
 また、外部支援組織の人材確保に向け、県立農業大学校の学生を対象としたコントラクターの仕事を紹介する出前授業の開催や、酪農ヘルパーとの交流会への参加促進を図るほか、法人化に向けた研修会の開催、国の事業を活用した飼料生産機械等の導入支援などを進めており、引き続き、関係機関、団体と連携しながら、自給飼料の生産拡大や外部支援組織の人材確保など、酪農、肉用牛経営の安定が図られるよう取り組んでまいります。
 次に、加工貯蔵施設についてでありますが、ライフスタイルや食生活の変化に伴い、中食、外食向けの加工、業務用野菜への需要が増加する中、県内では、水田を活用したタマネギやネギ、バレイショ等の加工、業務用野菜の作付が拡大しています。
 野菜等の供給調整機能を担う加工貯蔵施設は、出荷期間の延長や品質の維持、需要に応じた供給を図る上で重要な役割を果たしており、また、こうした施設の広域的な整備は、産地としての保管コストの低減や食品加工業者等のニーズに対応可能なまとまった数量の供給に有効と考えています。
 本県では、米について、農業団体が県内2カ所に低温で貯蔵が可能な大規模集出荷施設を整備し、広域的な米の集荷を行い、1年を通じた品質管理や実需者への安定的な供給を行っています。
 県としては、引き続き、加工、業務用野菜の生産拡大を進めるとともに、生産者団体や実需者から加工貯蔵施設の整備希望がある場合には、活用可能な国事業の導入など施設整備に向けた取り組みを支援していくこととしています。
 次に、県産農林水産物の輸出拡大についてでありますが、県では、関係機関、団体等とともに、いわて農林水産物国際流通促進協議会を組織し、米、リンゴ、牛肉等を重点品目に位置づけ、アジアや北米地域をターゲットに県産農林水産物の輸出拡大に取り組んできたところです。
 県産農林水産物の令和4年の輸出額は約55億円と、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランの令和5年の目標値52億円を上回ったところですが、今年度は、第2期アクションプランの初年度であり、また、アクションプランの最終年度となる令和8年の目標値69億円に達していないことから、まずは、海外市場の動向や国際情勢の変化に的確に対応しながら、県産農林水産物の輸出が着実に拡大するよう取り組んでいくこととしています。
 また、県産農林水産物の輸出拡大に向けては、輸出先国等の消費者、実需者が求める品目や品質、輸入規制などの把握が重要であることから、県が委嘱している海外市場に精通した農林水産物輸出コーディネーターなどを活用し、現地のマーケット事情やニーズ等を情報収集するとともに、フェア開催やバイヤーの招聘等を行いながら、県産農林水産物の輸出がさらに拡大するよう積極的に取り組んでまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 事業承継についてでありますが、岩手県事業承継・引継ぎ支援センターは、平成27年に国が設置したものであり、後継者人材バンクの活用によるマッチングなどの支援を総合的に進めております。
 また、全国規模のマッチング網を有する日本政策金融公庫が、県内の関係機関との連携により広域的なマッチングを行う事業承継連携スキーム、つぐべ岩手によるマッチング支援も行っているところです。
 これらの取り組みによりまして、後継者不在の老舗精肉店を創業志望者が引き継ぐ例や、人気豚汁専門店を県外からUターンした方が引き継ぐ例など、第三者への承継事例も着実に増加し、一定の成果を上げているものと受けとめております。
 中小企業経営者の高齢化が進む中で、地域経済の活力維持や県内雇用の継続のほか、まちのにぎわい創出を図る観点などから、円滑な事業承継を進めることがますます重要になっていると捉えております。
 このため、県におきましても、今年度新たに岩手県事業承継補助金を創設したほか、市町村や商工指導団体を構成員とするいわてスタートアップ推進プラットフォームを立ち上げるなど、円滑な事業承継の促進に向けた取り組みを強化しているところであり、国や市町村の支援策とも連動しながら、より効果的な支援の実施に努めてまいります。
   〔復興防災部長佐藤隆浩君登壇〕
〇復興防災部長(佐藤隆浩君) 消防指令業務の共同運用についてでありますが、県内では、12消防本部のうち、盛岡地区、奥州金ケ崎地区及び北上地区の3消防本部で、平成28年6月から消防指令業務の共同運用が行われています。
 この共同運用の設備の更新時期と指令業務を単独で運用している各消防本部の設備の更新時期がほぼ同時期となることから、令和2年度に県全域での共同運用の議論が始められたところです。
 県は、この議論に参画し、各消防本部の意向確認のほか、運用面や技術的課題に係る調整を行ってきたところであり、議論を通じて、住民サービスの向上や消防力の効率的運用、設備整備費用等の節減などの効果が確認されたところです。
 このことから、一関市及び大船渡地区の2消防本部を除く10消防本部により、昨年4月に地方自治法に基づく法定協議会が設置され、令和8年度からの運用開始に向けた準備が進められています。
 国は、消防の広域化、連携、協力を推進する観点から、共同運用に係る設備の整備費用に対し、交付税措置が有利となる緊急防災・減災事業債を充当できるよう措置しているところであり、今回の共同運用設備の整備に当たっても、この有利な地方債を活用して整備を進める予定と承知しております。
 県としては、消防本部の管轄区域にとらわれず、現場に最も近い消防署が対応する際の運用方法など、共同運用の効果が最大限発揮され、計画どおり令和8年度から円滑に運用が開始されるよう、必要な助言を行ってまいります。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) まず、豊かな人間性と社会性の育成についてでありますが、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいては、児童生徒の豊かな人間性と社会性を育むため、自他の生命を大切にし、人権を尊重する心の育成や、学校、家庭、地域が連携した多様な体験活動の推進などを通じた豊かな心の育成などを掲げて、道徳教育や人権教育に取り組んでいるところです。
 具体的には、道徳を初めとした各教科等の授業のほか、集団宿泊活動や職場体験活動、ボランティア活動、自然体験活動などに取り組んでいるところであり、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの5類移行後についても、学校では、引き続き感染症対策を講じながら、こうした集団的な活動や体験活動を精選し、積極的に実施するよう努めているところです。
 今後も、多様な価値観の違いを超えて、他者の人権を尊重し、互いに思いやる豊かな心の育成に資するよう、学校現場において丁寧に指導を行うとともに、道徳性の涵養や人権意識の醸成に係る教員研修を充実させ、道徳教育や人権教育を一層推進してまいります。
 次に、教員の資質能力の向上についてでありますが、学校教育を取り巻く環境が変化する中、教員には、その変化に適切に対応し、新しい知識、技能等を効率的、効果的に学び続け、子供一人一人のよさや可能性を最大限に引き出す役割を果たすことが求められています。
 本県においては、こうした教員の姿を実現するため、昨年度、教員のキャリアライフステージごとに求められる資質を示した教員等育成指標を改定するとともに、教員免許更新制の発展的解消に伴い、新たな研修体系を構築し、今年度から運用しております。
 この研修体系に沿って、教員が自分の強みや弱み、今後伸ばすべき力や学校で果たすべき役割などを踏まえながら、必要な学びを主体的に行えるよう、各学校において、管理職による教員個々の研修履歴を活用した指導、助言が実施されています。
 県教育委員会としては、教員が生涯を通じて主体的に学び続けることができるよう、新たな研修体系の定着と研修機会や研修内容の充実を図りながら、教員の資質向上に取り組んでまいります。
 次に、教職員の負担軽減についてでありますが、教職員の負担軽減に向けては、学校における働き方改革の一層の推進が必要であり、そのためには、業務削減と人員配置をバランスよく推進していくことが重要であります。
 業務削減に向けて、県教育委員会では、岩手県教職員働き方改革プラン(2021〜2023)に基づき、県立学校におけるICT環境の整備や学校行事の見直しなどに取り組んできたところです。
 また、現在、市町村教育委員会と連携して統合型校務支援システムの導入を進めており、市町村立学校も含めた全県統一システムの利用により、教職員の作業的負担や精神的負担の軽減が図られるものと考えております。
 一方、人員配置において、教員業務支援員は、学習プリント等の準備、行事や式典等の準備補助などの業務を担い、教員が、教員でなければできない業務に集中できる体制を整備する観点で、教員の多忙化解消に重要な役割を担っていると認識しています。
 議員御紹介の文部科学省通知では、持続可能な勤務環境等の充実を図るため、教員業務支援員の配置充実に取り組むとしており、県教育委員会として、現在、こうした国の動向を踏まえ検討を重ねているところです。
 引き続き、県立学校や市町村教育委員会とも連携しながら、業務の効率化や教職員の負担軽減に資する取り組みを推進し、学校の働き方改革につなげていきます。
 次に、特別支援教育における就労支援についてであります。
 特別支援教育は、子供たちの自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立ち、子供一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難さを改善または克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものであり、共生社会形成の基礎となるものであります。
 特に、特別支援学校高等部においては、卒業後の自立や就労の実現に向け、人間関係の広がりを育むため、一定の集団での活動や作業学習を中心に生徒の働く意欲を培い、将来の職業生活や自立に必要な事柄を総合的に学習しているところです。
 また、特別支援学校と企業との連携協議会については、企業側の理解促進と生徒の実習や雇用機会の拡充を図ることを目的に、平成23年度に盛岡地区と久慈地区の2地区に立ち上げ、これを段階的に県内全域に広げ、現在、9地区で117企業の協力を得ながらさまざまな取り組み進めているところです。
 今後、より多くの企業の参画が得られるよう、特別支援学校と企業との連携協議会の取り組みの紹介や協力企業の募集等の案内に加え、商工労働観光部で実施している障がい者雇用促進セミナーなど企業が集まる機会を捉え、特別支援学校と企業との連携協議会への参加を募るなど、特別支援教育における就労支援の一層の充実に努めてまいります。
〇7番(松本雄士君) 何点か再質問させていただきます。
 まず1点目、知事に答弁いただいたいわて農業ビジョンについてでございますが、いわて県民計画(2019〜2028)に基づいて担い手経営体の育成、収益力の高い農業、販路といったあたりのお話がありました。それは、私もいわて県民計画(2019〜2028)を見て認識しているところであります。
 私が思ういわて農業ビジョンは、岩手県の人が、岩手県の農業といえばこれだよねという共通の認識のもとに、作物だけではなくて、岩手県の自然や風土を生かした農法のことであるかもしれない岩手ブランドの強みを一つつくって、それを県内外で強く発信していきたい。そういう一つの大きな目指す旗印みたいなものをつくり上げていきたい。それは生産者、関係団体、行政が一体となってつくり上げていきたいという強い思いがあります。
 そういうものの実現に向けて知事にお伺いしたいのですけれども、岩手県の農業の本当の強み、岩手県の農業といえば何かという知事の思いと、先ほどいわて県民計画(2019〜2028)にある長期ビジョンの中で出された各取り組みの中で、これまで以上にどういう取り組みのところにさらに注力して岩手県の農業を発展していってもらえるのか、そういうところを知事にお伺いしたいと思っております。
 次に、肥料価格等の資材高騰対策のことでありますけれども、肥料、飼料、また農業水利の関係でいろいろ手当てをしてきてもらった中で、共同利用施設についてもぜひとも検討していただきたいというのがあります。
 肥料価格高騰対策につきましては、価格高騰前に比してまだ4割程度高いという中で、農業者の現在の足元の最大の不安であります営農継続といったところをしっかり支えていくためにも、ここはぜひとも、国の動向も重要でありますが、県独自にいろいろ動いていただければと思っております。
 また、肥料価格高騰対策の中で、土づくりや化学肥料等の使用削減を一体的に進めるといった、いわゆる環境負荷低減の取り組みを進めていくということがあったと思うのですが、環境負荷低減の取り組みは、農業者として、手間であったり、収量であったり、農業経営につながっていくというところでなかなか難しい面があります。肥料価格高騰対策とあわせて環境負荷低減の取り組みの促進を図るために、県としてどのように取り組んでいくのかというあたりをお伺いしたいと思います。
 次に、園芸振興についてでありますが、やはり米です。日本、岩手県もお米の生産が非常に大きいのですけれども、どうしても生産量が年間10万トン減っている。岩手県は20万トン強の生産量でありますから、先ほども話したとおり、2年余りで岩手県の生産する需要が消えてしまう、そういった今の米の需給動向であります。
 そういった中で園芸振興が非常に重要であると思っておりますが、それは、当然、生産者のいろいろな理解であるとか農業経営のところをしっかりサポートしてということでありまして、ここの取り組みを進めるに当たって、いわて県民計画(2019〜2028)第1期アクションプランでは、野菜販売1億円団地の形成といったあたりで明確な目標を持って取り組んできたと認識しております。
 第2期アクションプランでは、そこがなくなって、加工、業務用野菜の出荷量というところに置きかわっております。ぜひとも、野菜販売1億円団地の新規育成というところはなくなったのですけれども、また、こういった意欲的な担い手生産者を支えるような施策があればいいなと思っていますので、何とぞお願いします。
 それでお尋ねしたいのは、先ほど施設整備について伺ったのですけれども、施設の活用が想定される加工、業務用野菜の生産者の中核となったりトップモデルとなるような育成のところです。先ほども野菜販売1億円団地をぜひやってもらいたいと話したのですが、そのような加工、業務用野菜の生産において、トップモデルとなるような経営体の育成をどのように進めていこうと考えているのか、お伺いしたいと思います。
 また、農業関係ばかり多いですけれども、輸出の関係で、実需ニーズを押さえるマーケットインというあたりを進めていくというところは非常に大切かと思います。そのためにコーディネーターを配置していくということでありましたが、現在のコーディネーターの数と、知事も輸出をどんどん伸ばしていくと発言されている中で、今後、コーディネーターの数をふやしていく予定はあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
 次に、中小企業の賃上げ支援のところでありますが、先ほどもいろいろな取り組み、事業を行っていくということで、現在、その辺の活用が大分進んでいるかと思うのですけれども、県が賃上げ環境整備支援事業等の支援を行った際、実際に賃上げにつながったかを後から確認したのか。実際に事業で補助するときに計画の承認をしていると思うのですけれども、その計画のフォローアップ、着実に賃上げにつながっているのか、経営改善になっているのか、そういったところをしっかり見ていくのが重要であると考えております。そういったところの取り組み、賃上げ支援の実効性確保に向けたフォローアップの取り組みのところは、どう取り組んでいくのかお伺いします。
 再質問の最後になりますけれども、特別支援教育における就労支援で、特別支援教育を受けている子供たちは、これは非常に手間も人手もかかることでありますが、それぞれの特性や可能性に応じた、きめ細かな支援が必要になると考えております。特別支援学校と企業との連携協議会の参加企業のことや、いろいろな場づくりも大切ですけれども、そういう特性や可能性に応じた支援には、そういうものをサポートするコーディネーターといいますか専門職員の配置等を含めた体制の充実も望まれるのですが、そういうところに対する県のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 岩手県の農業に関しまして、グランドデザイン、ビジョンを念頭に置きつつ、今後、特に力を入れるところについてでありますが、岩手県の農業は、やはり食料自給率が100%を超えている農業県ということで、日本の食料供給基地としての役割をしっかり果たしていくことが重要であると同時に、量のみならず質に関しましても、安全性、そして、おいしさなど、全国、さらには海外からも評価され、引き合いのあるところであります。この質、量ともに高く維持、発展させていくことが重要だと思います。
 そういうことから、今、目の前の生産資材等の価格高騰は、まずこれを乗り越えていかなければならず、農業者の皆さんの厳しい経営環境を、肥料、飼料購入費への支援を確実に実施しながら、さらに必要となる対策について対応していきたいと思います。
 また、GX、DXの推進により生産現場のイノベーションを進めていくことが重要で、地域農業の核となる経営体の育成や次代を担う意欲ある新規就農者の確保、育成、環境負荷を低減する農業生産の推進や地球温暖化に適応する品種の開発、そして、スマート技術を活用した生産性向上、電子商取引を活用した農産物の販路拡大に取り組んでいきたいと思います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 3点ほど御質問をいただきました。
 まず、肥料対策でございます。
 御指摘のとおり、肥料は依然として価格高騰前に比べて1.4倍という高い状況ということで、ただいま知事からも申し上げましたとおり、これまで措置した肥料支援対策などについて、迅速かつ確実に届くように対応してまいりたいと思いますし、また、先ほど申し上げましたとおり、使用量を低減する技術をさらに広めるように続けていくということであります。
 また、環境負荷低減の取り組みは非常に大事だと考えておりまして、県では、土づくりや化学肥料、化学農薬の使用量低減、環境負荷を低減する取り組みを促進するために、本年3月に、環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画を策定しております。
 この計画に基づきまして、農業改良普及センターが中心となって、水稲、麦、大豆、牧草といったものの化学肥料に代用できる堆肥活用の実証ですとか技術指導を行っていますし、また、県農業研究センターにおきまして、化学肥料の使用量を低減する技術等の試験研究を行っているところでございます。
 また、国の事業を活用しまして市町村等が取り組む有機農業の取り組み、あるいは天敵昆虫を使いまして、栽培体系のグリーン化と称しておりますが、こういった取り組みの支援を行っているところであります。引き続き、化学肥料や化学農薬の使用量低減など、環境負荷を低減するような取り組みを拡大していくよう取り組んでいくこととしております。
 また、2点目でございますが、加工、業務用野菜の担い手育成というようなお話でありました。県ではこれまで、加工、業務用野菜の生産拡大に向けまして、農業団体や民間企業と連携して、国の事業等を活用しながら花巻市や八幡平市、奥州市等の集落営農組織などのタマネギ、加工用トマト、バレイショなどの生産指導とともに、生産拡大に必要な高性能機械の導入、乾燥調製用施設の整備といったものを支援してきたところであります。
 こうした取り組みによりまして、県内では大規模な野菜経営体が着実にふえてきております。引き続き、実需者や関係機関、団体で構成します集中支援チームを組織して、こういったチームにおいて、水田を活用した加工、業務用野菜の生産指導、機械施設の導入支援を行いまして、地域の中核となる経営体が着実に育成されるよう、引き続き積極的に取り組んでいくこととしております。
 また、3点目、輸出コーディネーターをふやせないのかというようなお話がございました。答弁でも申し上げましたけれども、輸出コーディネーターは、今4名ほどお願いしております。その4名の方は、岩手県出身の方で、中国、東南アジアの食品流通に非常に詳しい方、東南アジアの中でもタイとかに詳しい方、米の流通に詳しい方、さらに水産の流通に詳しい方ということで、分野を切り分けながら4名の方をお願いしております。
 これについては、今の4名の方が、県の輸出拡大にとって非常にメリットのある情報を提供していただいておりますので、拡大するという形ではなくて、こういう方を通じて、さらに現地のきめ細かいニーズを把握して、現地での取引が拡大、あるいはアジア地域での新しい国を拡大するような取り組みを広げていくことにしているところであります。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 賃上げ支援の実効性の確保についてでございますけれども、中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助は、経営革新計画の承認を受け、その中で、計画事業期間の3年から5年の間に、給与支給総額を年率平均2%以上増加させる見込みであることを補助要件の一つとしております。
 その経営革新計画の承認を受けた事業者に対しましては、毎年度フォローアップ調査を行い、計画の進捗状況や付加価値額の伸び率などについて適切に把握しているところでございます。
 中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助の事業効果などにつきましても、この経営革新計画のフォローアップ調査の中で実施し、賃上げの状況についても把握していくこととしております。
〇教育長(佐藤一男君) 特別支援教育における支援体制の充実ということでの御質問を頂戴いたしました。
 生活や学習上の困難さを子供たちは抱えております。そのため、特別支援教育を専門に学んだ、まさに専門職である教員が多く配置されているわけで、子供たち一人一人の教育的なニーズを把握し、その子供たちの持てる力を高める、あるいは困難さを改善、克服していくことを目指しながら、将来的に子供たちの自立あるいは社会参加に向けた取り組みを進めることを教員が中心になって行っている実態があります。
 事就労支援に関して申し上げますと、進路指導担当者がおりますし、その進路指導担当者の会議も毎年複数回やるのですが、これも、例えば岩手労働局とか岩手障害者職業センターなど、関係機関の方々と一堂に会して、進路指導に係る課題とか協議、情報交換、研修などをして能力アップを図っています。
 それから、商工労働観光部所管になりますが、就業支援員という方がいらっしゃいます。これは広域振興局中心に配置になっていますが、この方々によって特別支援学校も支援をいただいているなど、学校が福祉あるいは労働機関、関係機関と連携しながら、さまざまな方々からの御支援をいただきながら就業の支援にも当たっているということでございます。
 これからも、そういう形で多くの方の支援をいただきながら進めてまいりたいと考えております。
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって松本雄士君の一般質問を終わります。
 これをもって一般質問を終結いたします。
   
   日程第2 認定第1号令和4年度岩手県一般会計歳入歳出決算から日程第39 議案第21号損害賠償請求事件に係る和解及びこれに伴う損害賠償の額を定めることに関し議決を求めることについてまで
〇議長(工藤大輔君) この際、日程第2、認定第1号から日程第39、議案第21号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。高田一郎君。

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