令和5年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(大久保隆規君) 希望いわての日はまた昇る、大久保隆規です。一般質問の機会をいただきました先輩、同僚議員に感謝をいたしまして、通告に従って質問をいたします。
 まず、GX―グリーントランスフォーメーションについてお尋ねいたします。
 ことしの夏は記録的な猛暑で、とても暑い中での選挙を経験しました。世界規模で異常気象が発生し、大規模な自然災害が発生するなど、気候変動問題への対応は今や人類共通の課題となっております。
 我が国においても、自然災害を初め、自然生態系、健康、農林水産業、産業、経済活動など、さまざまな分野に影響が及んでおり、人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす気候危機とも言われる状況です。
 課題解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造変化に対してより強靱で持続可能なものに変革する新しい資本主義の観点から、また、炭素中立を目指す観点からも、まさに今、取り組みを加速することが必要なのであります。
 パリ協定の1.5度目標の達成を目指し、炭素中立型経済社会への移行を加速することは極めて重要であり、我が国は、2030年までの期間を勝負の10年と位置づけ、必要な取り組みを進め、2050年までのカーボンニュートラル及び2030年度温室効果ガス46%削減の実現を目指し、50%の高みに向けた挑戦を続けていくこととしております。
 このような中、令和4年2月にロシアによるウクライナ侵略が発生し、世界のエネルギー情勢は一変しました。我が国においても、電力需給逼迫やエネルギー価格の高騰が生じるなど、昭和48年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて切迫した事態に直面しています。
 安定的で安価なエネルギー供給は、国民生活、社会、経済活動の根幹であり、我が国の最優先課題であります。今後、脱炭素社会を目指す取り組みを通じて経済社会システムを変革させ、持続可能な成長を目指すグリーントランスフォーメーション―以下GX―を推進していく上でも、エネルギー安定供給の確保は大前提であると同時に、GXを推進することそのものが、エネルギー安定供給の確保につながります。
 また、ロシアによるウクライナ侵略を契機とし、欧米各国は脱炭素への取り組みをさらに加速させ、国家を挙げて脱炭素につながる投資を支援し、早期の脱炭素社会への移行に向けた取り組みを加速させるなど、GXに向けた脱炭素投資の成否が、企業、国家の競争力を左右する時代に突入しています。
 そのため、GXの実現を通して、我が国の企業が世界に誇る脱炭素技術の強みを生かして世界規模でのカーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、新たな市場、需要を創出し、我が国の産業競争力を強化することを通じて、経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用、所得の拡大につなげることが求められています。
 2021年4月の削減目標の引き上げに続き、カーボンニュートラル宣言の目標に向けた施策パッケージとして政府が発表したのが、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略です。戦略においては、地球温暖化への対策を経済成長の制約やコストとしてではなく、経済成長の機会と捉える時代に突入したと記載しています。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や経済、社会の変革をもたらし、次なる大きな成長につながるとして、そのような経済と環境の好循環を構築する産業政策こそが、グリーン成長を実現すると位置づけました。
 グリーン成長戦略においては、技術開発から実証、社会実践までを支援するための2兆円のグリーンイノベーション基金やカーボンニュートラルに向けた投資促進税制等の支援措置のほか、重要分野における実行計画が盛り込まれています。
 そうした中、再生可能エネルギーの最大限の導入に向けた取り組みが開始されました。そのうち洋上風力発電は、大量導入、安価な電力、大きな経済波及効果が期待されることから、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札として政府は期待を寄せています。
 こうした欧米各国及び日本の情勢に鑑みますとき、知事演述において、オール岩手で進める四つの重点項目の一つにGXの取り組みを位置づけられましたことを高く評価申し上げたいと思います。
 そこで、当局にお尋ねいたします。まず、GXに対して、主な取り組みと今後の方針についてお示し願います。
 次に、国のグリーン成長戦略を踏まえ、本県でもカーボンニュートラルに向けた変革を成長の機会と捉え、関連産業の誘致、育成や再生可能エネルギーによる製造工程の脱炭素化など、GXに対応した産業振興を推進すべきと考えますが、県の考えを伺います。
 また、洋上風力発電について、本県における状況をお知らせください。
 次に、東日本大震災津波から12年が経過した本県沿岸部の振興策についてお伺いいたします。
 震災から12年と半年余りが経過しました。この間、被災市町村は、国、県及び県内市町村並びに全国の都道府県及び市町村の支援をいただきながら復旧、復興に取り組み、ハード面での復興事業はおおむね完了しております。被災から今日までの達増知事の陣頭指揮による岩手県当局の取り組みは特筆すべきものであり、被災者の一人として心から御礼を申し上げる次第であります。
 しかし、一方で、沿岸12市町村の総人口は、震災前と比較して宮古市の人口に匹敵する5万人が減少している状況であります。この要因は震災にとどまるものではなく、既に平成26年5月には、前岩手県知事である増田寛也氏が座長を務める日本創生会議が、現状を放置すると2040年には全国の市町村の3割が1万人未満となり、消滅の可能性が高いと提言した、いわゆる増田リポートが全国の自治体に衝撃を与えております。
 このうち岩手県においては、盛岡市から北上市に至る内陸の一部を除き、沿岸市町村を含む27の市町村が消滅可能性都市とされ、うち沿岸部全ての町村を含む15町村は特に消滅する可能性が高いとされていることは、御案内のとおりであります。
 現在、やっとの思いで東日本大震災津波からの復興をなし遂げた沿岸市町村は、地球温暖化による海流の変化により、共通の基幹産業である水産業において水揚げの大幅な減少に見舞われております。さらに、いわゆるALPS処理水の海洋放出が、漁業のみならず、貴重な観光資源である三陸の美しい海に風評被害をもたらすことのないよう、将来への不安を抱えながら懸命の努力を続けております。
 県民の食卓を彩り本県食産業の基盤ともなる水産業はもとより、CO2削減や2024年問題への対応としてモーダルシフトが進む港湾物流、そして臨海型リゾートなど海を生かした観光の観点からも、沿岸部の振興は全県民の課題であり願いであります。
 そのためには、完成した縦横の高速道路網を生かした交流人口の増加に向けた政策の展開が、今こそ必要なのではないでしょうか。
 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行し、インバウンドが回復する中、本年1月にニューヨークタイムズ紙の2023年に行くべき52カ所の2番目に本県の盛岡市が選ばれた追い風を生かすためにも、県においては、三陸の豊かな資源を生かした広域的な観光誘客の取り組みを強化し、沿岸振興にもつなげていくべきと考えておりますが、県の取り組みをお伺いします。
 次に、観光誘客にとどまらない交流人口拡大策として、ここで私から一つの提案をさせていただきたいと思うのであります。
 岩手県と市町村の努力をもってしてもなお、厳しさを増す沿岸市町村の現状を打破し、改めて将来に向けて希望を膨らますために、反転攻勢ののろしとなるような大きな仕掛けを考えてはいかがでしょうか。それは、令和版三陸・海の博覧会の開催であります。
 全国的にバブル景気のピークであった三十数年前、岩手県は、新幹線、空港、高速道などが整備され、21世紀へ向けて一層の飛躍を図る絶好の機会を迎えておりました。
 三陸博は、地場産業の育成、観光の振興、海洋開発や国際交流など、岩手県の特性や活力を内外に紹介するため、釜石市を主会場に、共通会場を宮古市、山田町とし、海の歴史、文化、自然環境、科学、技術を体験する機会として開催し、あわせて岩手県の未来像を示した、光る海、輝く未来をテーマとした一大イベントであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 当時、主会場となった釜石市及び周辺市町村は、最盛期には本県最大の事業所であった一大企業の合理化の影響が広範に及び、まさに国、県を挙げての一大プロジェクトを展開してこの対応に当たっていた時期でもあったことは、御承知のとおりであります。
 そのような状況下で、高速交通体系の整備に沸く県内陸部のみならず、沿岸部に全国民の足を向けていただくために考案されたのが、三陸・海の博覧会であります。三陸博は、平成4年7月から9月にかけての74日間に、目標を大きく上回る200万人余りの来場者数を記録し、沿岸部住民がそれまで気づいていなかった三陸の海のポテンシャルに気づきを与え、その後につながる大きな経済活動を生み、地域住民の自信と誇りを育みました。
 あれから31年、沿岸部にも待望の高速道路網が整備され、震災から立ち直りつつある一方で、もはや人知を超えたと言える苦境にさいなまれ続け、それでも必死で前を向く沿岸部住民に、今こそ真の光る海、輝く未来を実感してもらう機会にもなると思うものであります。
 2025年大阪・関西万博が開催され、国内外に大きなインパクトを与えることになりましょう。そして、その次のステージとして、岩手、三陸に注目していただくのです。
 海がもたらす恵み、ごくごく時に訪れる災禍、地域に与える大きな可能性を再認識し、その全てを受け入れ全国に発信することで、内陸部の各都市より消滅可能性が高いとされる沿岸自治体が、持続可能性のある都市として再生するための起爆剤となる、沿岸部の交流人口、関係人口の増加へ向けた大きな礎になるでありましょう。
 令和版三陸・海の博覧会の開催構想について、率直に知事の所見をいただければ幸いです。
 次に、港湾振興について伺います。
 四方を海に囲まれた我が国におきましては、47都道府県中、海に面する39都道府県に必ず一つは確固たる流通港湾が存在し、それぞれの県勢発展に寄与しています。
 本県に焦点を当てますと、久慈港、宮古港、釜石港、大船渡港の4重要港湾に加え、八木港、小本港の2地方港湾、計六つの港湾が存在しますが、他県と競い合うほどの力を有する本格的な流通港湾は不在の状況です。このため、県内総生産―県産GDPは、他県の流通港湾によって支えられ、他県の流通港湾への投資とさらなる経済成長を促してきたものと推察されます。
 言うまでもなく、県民生活、県内の産業活動は物流によって支えられています。県産GDPをみすみす他県に流出させるのではなく、自県内港湾利用に回帰させることで、輸送コスト削減等による経済成長への伸び代と産業誘致インセンティブが生まれると考えます。
 裾野が広く、なおかつ隅々まで浸透、影響する物流の全容と県経済に与える影響を完全に掌握することは困難と思料されますが、既に流通港湾の利便性や恩恵を享受しつつ飽和状態にある他県と比べ、本県全体の経済の底上げと強靱化が期待されることから、物流基盤を生かした自県内港湾利用の促進は、めぐりめぐって本県人口減少問題克服への一助にもなっていくものと捉えています。
 来年1月開港90周年を迎える釜石港と背後圏は、震災からの復旧、復興事業によって劇的にインフラ整備が進み、平成29年9月、県下初となるガントリークレーンを県に整備いただいたことも奏功し、コンテナ物流を軸とした広域経済圏の流通港として堅調な成長を続けてきましたが、令和2年に顕在化したコロナ禍に伴う世界的な物流混乱と混乱収拾後も続く物流量の伸び悩みにより、釜石港のみならずコンテナを取り扱う東北地方の各港湾が、取扱量減少の波に襲われています。
 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの5類移行と前後して、社会経済を取り巻く情勢は、長引くロシア・ウクライナ紛争や昨年から定着化しつつある円安基調、さらには原油価格、物価高騰などの影響によって不安定化し、将来予測が困難な時代に突入しているものと認識しています。
 また、いわゆる物流の2024年問題が間近に迫っております。平成30年7月に公布された働き方改革関連法案が順次施行されている中で、令和6年4月から、トラックドライバーの労働時間に罰則つきで上限規制が適用されます。裾野が広い運送、物流業界では、物流企業の売り上げ、利益の減少やトラックドライバーの収入減少、離職、さらには荷主企業における輸送コストの増加といった影響を受けることが予想され、通称、物流の2024年問題と呼ばれ、来年4月の適用を控えた昨今、テレビや新聞で取り上げられる機会が以前に増して多くなっていると実感しています。
 一方、2024年問題の対処といった観点から、海運や鉄道利用といった輸送手段にもにわかに注目が集まっており、現在、関係各方面においてモーダルシフトに向けた検討が行われていると伺っています。
 令和2年9月、釜石港においてローロー船の試験寄港が実施されました。震災以降12年にわたり休止されたままの状態にある釜石港の完成自動車物流を担っていたのもローロー船でした。
 海運は、臨時寄港を行う一般貨物船とコンテナ船やフェリー、ローロー船などの海上定期便に大別されます。
 物流を支える岸壁整備や埠頭用地造成に際しては鶏が先か卵が先かという議論がありますが、一般貨物船とは違い、海上定期便を誘致する場合、航空定期便の誘致と同様、定期便を運航する会社にとって、就航を決定づける安心・安全なインフラ整備が肝要です。
 港湾整備には長い時間を要することからも、就航ニーズを逃すことのない対応が求められます。現在、釜石港では、完成自動車物流の再開はもとより、ローロー船を軸とした海上定期便の誘致に向けた取り組みを強化しており、2024年問題への対応に加え、県勢発展に欠かすことのできない流通港湾の形成上、特に重要な取り組みと捉えています。
 以上を踏まえ、まず、岩手県の港湾機能の将来の姿、基本となすべき方針をどのように捉えているのかについてお伺いします。
 次に、2024年問題への対応についてお尋ねします。
 国では、同問題への対応を強化するため、本年10月より、国土交通省内に物流・自動車局を発足させています。
 県においても、同問題に対応するため、港湾振興とモーダルシフトを一体的に推進していく体制の構築、関係機関との一層の連携強化が必要と考えますが、県のお考えについてお示し願います。
 続きまして、完成自動車物流の再開と2024年問題に対処したローロー船を軸とした海上定期便の誘致に向けて、釜石港公共埠頭を拡張する可能性はあるか御教示願います。
 続いて、ALPS処理水について伺います。
 東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水をめぐり、東京電力は令和5年10月5日、2回目となる海洋放出を始めました。海水で薄めた処理水中の放射性物質トリチウムの濃度が放出基準を満たしたことを踏まえ、初回と同じ約7、800トンを17日間程度かけて沖合1キロメートルから流すとされています。
 東京電力は、約1トンの処理水を海水約1、200トンで希釈して大型水槽にためた放出処理水のトリチウム濃度を測定した結果、1リットル当たり1、500ベクレル未満の放出基準を下回り、最大で87ベクレルだったことを確認、午前10時18分に放出を開始しました。放出は1日約460トンのペースで進めるとされ、東京電力の担当者は、問題なく終えられるよう緊張感を持って取り組むとコメントしています。
 初回の放出は令和5年8月24日に始まり、7、788トンを流して9月11日に完了しました。設備点検で問題は確認されず、国や東京電力、福島県などが周辺で採取した海水の魚のトリチウム濃度にも異常はなく、東京電力は、初回に続き2回目の海水分析を毎日実施することとしています。
 海洋放出は、風評被害を懸念する漁業者が反対し、中国が強硬に反発する中で開始されました。青森県では、中国に向けて輸出するナマコの漁を当面見送ることにし、青森県漁業協同組合連合会の二木春美会長は、とったとしても買い手がいないし値段がつかないと説明、11月以降は状況を見て判断すると言い、海洋放出はやってほしくない。終わるまで何十年もかかると不安を隠しません。
 県では、ALPS処理水の海洋放出に伴い、中国政府が日本産水産物の輸入を停止したこと等により、さまざまな影響を受ける漁業者や事業者の相談に対応するため、相談窓口をいち早く設置されました。
 まず、本県におけるALPS処理水の海洋放出関連の相談の状況についてお尋ねいたします。また、ALPS処理水の海洋放出に伴う中国の輸入停止措置等の影響について、本県における現在の状況をあわせてお知らせ願います。
 続いて、原油価格、物価高騰対策について伺います。
 達増知事は、5期目の当選を果たされたインタビューにおいて、最優先の課題として、人口減少問題とともに燃料費、物価高騰対策を真っ先に挙げられました。選挙期間中、多くの県民の声を聞いてとのことでしたが、これは私の率直な実感とまさに一致するところです。
 ロシアのウクライナ侵略に端を発した地政学的な要因による原油価格、物価高騰問題は、我が国の金融政策に伴う急激な円安とも相まって、国民、県民の生活に大きな影響を与えてきました。私も選挙期間中、本当にたくさんの声を耳にしました。
 昨年度来、県はさまざまな対策をとってこられたものと思いますが、この県民の危機とも言える状況に鑑み、これまで知事はどのようなお考え、思いのもと、対策に当たられたのか、初めにお聞かせください。
 次に、対策の財源について伺います。
 県が事業を実施するに当たって常に考えなければならないのが財源です。言うまでもなく、財源の担保なしでは、どのような事業であっても説得力を持ちません。
 地方が物価高騰対策を実施するための財源については、令和4年度以降、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の原油価格・物価高騰対応分として0.8兆円、電気・ガス・食料品等価格高騰重点支援交付金として1.8兆円が措置されています。国の審議会などでは、これを見直すべきといった声も一部あるようですが、地方の実情を反映しているとは到底言えません。
 そこで伺いますが、岩手県において、これらの交付金はどのような事業に活用されているのか、今後の活用見込みはどうなっているのかお示しください。
 さらなる対策の実施について伺います。
 原油価格、物価高騰は、今もなお県民の生活と仕事の現場を圧迫しており、なかなか出口が見える状況にありません。ガソリン料金など一部については、国において制度の暫定的な継続が決まったようですが、低所得の方、子育て中の方、そして、中小企業を初めとする各事業者におかれましては、まだまだ大変な状況にあり、今後も支援が必要なのではないでしょうか。
 知事がインタビューで語られていたように、私自身も緊急な対策が必要と考えるところですが、県民の生活と幸福を守るさらなる対策の実施について、知事の力強いお言葉をお聞かせください。
 続いて、地域医療について伺います。
 県が昨年9月に公表した持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会の報告書では、全国で最も多い20の県立病院が果たす公立病院としての機能、すなわち救急医療や僻地等における医療、小児、周産期医療等の提供を本県の強みとしており、また、さきの知事演述においても、全県的な医療提供体制と県立病院の体制等の一層の充実を図りますと述べられています。
 私は、そのためには、関係者で知恵を絞りながら、地域で安心して医療を受けられる体制の確保と医療の高度化、専門化への対応をあわせて進めていく必要があると考えます。
 現在、県では令和6年度からの6年間を計画期間とする次期岩手県保健医療計画の策定作業を進めていると聞いておりますが、地域医療の確保、特に医療圏域間の連携が求められる周産期医療の充実にどう取り組んでいくお考えか伺います。
 また、知事は、今回のマニフェストでリハビリテーションセンターについて、沿岸地域に既存の県立病院と連携したサテライト施設の整備を進めるとしました。沿岸部で特に高齢化が進行している中、限られた医療資源のもとで、回復期におけるリハビリテーション機能の充実が図られることに大きな期待を寄せるところでありますが、サテライト施設が果たす役割、整備に向けた具体的な検討の状況についてお伺いいたします。
 最後に、県立釜石病院の機能強化について伺います。
 県内の県立病院は、多くの病院で老朽化が進んでおり、計画的な整備計画の策定が求められています。中でも県立釜石病院は、各種施設の劣化が進んでおり、建てかえや大規模改修の必要性が議論されていると承知しています。
 先ほどの次期岩手県保健医療計画とも関連するかと思われますが、釜石圏域の基幹病院としての県立釜石病院の機能強化について、施設整備の検討状況とあわせてお示し願います。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 大久保隆規議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、令和版三陸・海の博覧会についてでありますが、平成4年度に開催した三陸・海の博覧会は、目標を上回る200万人余の入場者数を記録し、その際に生じた剰余金は、さんりく基金に引き継がれ、三陸地域の振興に今でも活用されています。
 当時は、東北新幹線や東北自動車道の整備が後押しとなり三陸博が開催されましたが、現在は、復興の成果として三陸沿岸道路の整備や全線163キロメートルの三陸鉄道リアス線の運行など、新たな時代にふさわしい基盤ができております。
 県では、令和元年度に、復興に力強く取り組む姿を発信するため、それまで培われてきた復興の成果を生かし、三陸防災復興プロジェクト2019を開催いたしました。その目指す姿や取り組みは、三陸防災復興ゾーンプロジェクトに継承され、震災の教訓の伝承と復興の姿の発信、三陸鉄道、三陸ジオパーク、三陸の豊かな食等の活用により、交流人口の拡大を図っているところです。
 議員御提案の三陸地域における新たな大型イベントの開催は、ゾーンプロジェクトの趣旨をさらに発展させるものであり、一定の収益を上げ活用できれば、将来の三陸地域の振興にも資するものであります。
 今回、初めて御提案いただいたアイデアですので、県民の皆様や関係機関等の御意見も伺いながら、三陸地域の将来について私も考えていきたいと思います。
 次に、原油価格、物価高騰対策についてでありますが、エネルギー、原材料、資材等の価格の上昇は、県民生活や地域経済に大きな影響を与えていることから、県ではこれまで、累次の補正予算により全国に先駆けて対策を講じてきており、生活困窮者や子育て世帯への生活者支援、中小企業者、農林漁業等への幅広い支援を実施してきたところであります。
 原油価格、物価高騰は、ロシアによるウクライナ侵攻に起因し、日本の円安構造が拍車をかけており、このようなときは、国を挙げて国民生活、国民経済を守らなければならないと考えます。
 また、今般の選挙中においても、県民の皆さんと直接触れ合いながら、さまざまな課題を伺い、特に原油価格、物価高騰については、低所得世帯や子育て世帯、中小企業者や運輸、交通事業者、介護、福祉、医療施設や農業者等から、継続的な対策を求める声を多くいただいたところであります。
 そのため、今定例会においても、追加対策として、三陸鉄道に対する運行支援や指定管理施設における光熱費等の負担軽減策などを盛り込んだ補正予算案を提案しているところであり、これらの施策を迅速かつ確実に実施し、県民一人一人の暮らしに寄り添った支援を行ってまいります。
 次に、さらなる対策の実施についてでありますが、原油価格、物価高騰対策は喫緊の課題であり、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてであるためには、県民生活や地域経済を力強く支える取り組みが、今まさに求められています。
 県として、全国知事会の枠組みも活用しながら、現在検討が進められている国の経済対策の実行を促し、これに呼応した補正予算案の編成を含め速やかに対応するなど、今後も、原油価格、物価高騰対策を強力に推し進めてまいります。
 次に、リハビリテーションセンターのサテライト施設についてでありますが、高齢化が進行する中、脳卒中患者などの予後の改善や社会復帰、在宅高齢者の自立支援等を図る上で、心身機能や日常生活活動等の向上に資するリハビリテーションは、一層その重要性を増しています。
 本県の急性期から回復期までのリハビリテーションを実施している医療機関は内陸部に集中しており、また、いわてリハビリテーションセンターの入院患者のうち内陸部の患者の割合は約7割、県北・沿岸地域の患者の割合は約3割となっています。私のところにも、沿岸部にサテライト施設があるとよいという声が届いています。
 リハビリテーションセンターのいわゆるサテライト施設については、こうした現状を踏まえ、人材、財源の確保や医療法上の課題もありますことから、県立病院を初めとして、県内の医療機関や関係団体と連携しながら検討を進めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 地域医療の確保と周産期医療の充実についてでありますが、現在策定を進めております次期岩手県保健医療計画では、人口減少に伴う患者数の減少、医療の高度、専門化などの環境の変化を踏まえ、地域において身近な医療を受けられる体制を確保するとともに、疾病、事業別の医療圏として、がんや脳卒中、心血管疾患などについて、二次保健医療圏とは別に、広域的な疾病、事業別の医療圏の設定を検討しているところであります。
 周産期医療については、四つの周産期医療圏を設定し、地域の産科診療所や周産期母子医療センターとの機能分担と連携のもと、分娩リスクに応じた医療提供体制の整備を進めてきたところであります。
 県では、妊婦健診や診療情報を医療機関や市町村と共有する周産期医療情報ネットワークいーはとーぶを運用しており、平時においては保健指導に活用しているほか、緊急時においては、ハイリスク妊産婦等への迅速な医療提供につなげているところであります。
 近年、出産年齢の上昇などを背景に、救急搬送を要するリスクを抱える妊婦の割合が増加していることから、救急隊員や医療従事者を対象に、妊婦や新生児の救急搬送に係る研修も実施しているところであります。
 また、妊産婦の通院等に対する支援について、今年度から全ての妊産婦を対象とするよう拡充したところであり、これらの取り組みにより、安心して妊娠、出産をすることができる周産期医療の充実に努めてまいります。
   〔環境生活部長福田直君登壇〕
〇環境生活部長(福田直君) GXの主な取り組みと今後の方針についてでありますが、本県では、県市町村GX推進会議などを基盤として、再生可能エネルギー電力の地産地消を初めとする地域脱炭素の取り組みを進めており、これまでに県内3市町が脱炭素先行地域に選定されたほか、さらに、現在、釜石市を含む別の3市町も手を上げており、地域脱炭素を経済活性化のチャンスと捉えて果敢に取り組もうという機運を県内各地に生んでおります。
 また、足元の県有施設の脱炭素化についても、昨日、基本方針を公表したところであり、新築建築物のZEB化や太陽光発電、LED照明の導入など、いずれも一定の投資利益率―ROIが見込めるものであることから、そのような効果も県内の市町村や企業等に広めてまいります。
 さらに、全国的なGXのための財源確保に目を向けますと、政府は、今後10年間で20兆円規模のGX経済移行債を発行しようとしておりますが、この財源を企業の投資への支援だけでなく、自治体による地域脱炭素の取り組みにも活用することが重要だと考えておりまして、この点は、全国知事会などを通して政府に提言を行っているところです。
 今後も、庁内各部局や政府、市町村、企業等との連携を強化する中で、地域脱炭素と経済活性化を同時に達成すべく積極的に取り組んでまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、GXに対応した産業振興についてでありますが、国が令和2年に策定した2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略においては、今後、産業として成長が期待される14の重要分野を設定し、企業のニーズ沿った大胆な投資を後押しするとされております。
 このうち、例えば、本県の自動車産業においては、いわて産業振興センターが、県内企業の電動車部品製造への参入に向けた地域支援拠点として、東北地方でいち早く国の選定を受け、既に取り組みを進めているところでございます。
 また、県内で生産される新型車の製造に早池峰発電所のグリーン電力が利用されることとなっているほか、半導体産業におきましては、工場に大規模自家消費型太陽光発電システムを導入するなどの取り組みも行われているところでございます。
 再生可能エネルギーのポテンシャルが高い本県にとりまして、グリーン成長戦略は、企業誘致等の大きなアドバンテージになるものであり、既に本県に関心を示している企業もあらわれてきております。
 さらに、すぐれた基盤技術を有する本県の地場中小企業にとっても、新たな事業分野への参入機会となることから、市町村や関係機関と連携し、GX関連企業も視野に入れた誘致活動や県内企業の成長分野への参入の取り組みを展開してまいります。
 次に、沿岸地域の交流人口の拡大についてでありますが、近年、欧米の外国人を中心に、歴史や自然、文化、アクティビティーなどを組み合わせた、いわゆるアドベンチャーツーリズムが人気となっており、三陸ジオパークやみちのく潮風トレイルなど、ニューヨークタイムズ紙効果を全県に波及していくに当たって、沿岸地域の観光資源は、高いポテンシャルを有していると捉えております。
 こうした好機を捉え、既に釜石DMCが取り組んでいる釜石ジオ弁当や漁船クルーズの運航などの取り組みとの連携、他の地域への普及拡大を進めながら、沿岸地域における広域周遊の拡大を図っていきたいと考えております。
 また、JR東日本の重点販売地域指定と連携した冬季観光キャンペーンを年明けの1月から開始することとしており、このキャンペーンのコンセプトに、内陸地域の温泉やスノーリゾート、三陸沿岸の冬の味覚や絶景を掲げまして、内陸部と沿岸部をつなぐさまざまな企画を展開することとしているところです。
 さらに、沿岸地域への入り込みが多い教育旅行につきまして、引き続き、県外からの誘致を積極的に進めていくとともに、この教育旅行の経験を将来的な移住、沿岸振興に結びつけていくような視点も大切であると考えており、今後、教育旅行のプログラムの提供のあり方についての検討も行っていきたいと考えております。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 洋上風力発電の状況についてでございますが、久慈市沖については、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律、いわゆる再エネ海域利用法に基づいて、令和3年9月に一定の準備段階に進んでいる区域に整理され、今年度も同様の整理となっているところです。
 現在、漁業者を初めとした関係者と調整中であり、引き続き、久慈市と連携し、洋上風力発電の実現に向け、次の段階である有望な区域や促進区域に指定されるよう取り組みを進めてまいります。
 また、久慈市に隣接する野田村沖から宮古市沖については、令和4年度から、洋上風力ウインドファーム形成について導入可能性調査を進めており、漁業者の操業状況等に配慮しながら検討しております。
 県としては、庁内関係部局等で構成する海洋再生可能エネルギーの導入推進に係る検討チームを設置し、引き続き、国や関係自治体等と連携を図りながら、洋上風力発電の導入推進に向け取り組みを進めてまいります。
   〔県土整備部長加藤智博君登壇〕
〇県土整備部長(加藤智博君) まず、岩手県の港湾機能の将来の姿、基本となすべき方針についてでありますが、本県には、四つの重要港湾と二つの地方港湾があり、人や物の交流、県民生活や産業活動を支える重要な社会基盤として、特に、港湾背後の企業活動に対応した機能を備え、その役割を果たしてきております。
 これらの港湾においては、将来、県内港湾を取り巻く環境が変化する中においても、重要な社会基盤としての役割を果たし、その機能を発揮し続ける必要があると考えております。
 このため、県内港湾の利用拡大や新規貨物の掘り起こし、企業誘致などによる物流、産業拠点の形成、港湾機能継続のための災害対応力の強化や港湾施設の維持管理などによる安全・安心な港湾の実現、クルーズ船誘致や港湾空間における脱炭素化などによるにぎわいの創出や豊かな環境の形成を目標とし、各種施策を推進していくこととしております。
 次に、2024年問題への対応についてでありますが、現在、物流業界においては、2024年度からのトラックドライバーの時間外労働の上限規制等への対応が求められており、今後、陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトが進む可能性があると考えております。
 県としては、これを好機と捉え、現在、関係部局や港湾所在市等と合同で企業訪問を実施し、海上輸送への切りかえのメリット等についてPRを行うとともに、関係部局や内陸の市町の企業誘致担当職員との意見交換の場等を通じて、2024年問題に対する企業の意向について共有を図っているところであります。
 今後も、2024年問題への企業の動向等を注視するとともに、関係部局、港湾所在市及び内陸の市町との情報共有や合同での企業訪問などにより、一層の連携の強化を図り、荷主企業等に対して県内港湾を利用した海上輸送へのモーダルシフトに向けた働きかけを行ってまいります。
 次に、釜石港公共埠頭の拡張についてでありますが、釜石港においては、これまで、ガントリークレーンやリーファーコンテナ電源などの整備や外貨定期コンテナ航路の開設、三陸沿岸道路を含めた道路ネットワークの構築により、港湾の利便性が向上しており、このような内容をPRしながら、現在、県では集貨拡大に向けたポートセールスを行っているところであります。
 新たな埠頭用地等の整備は、将来的な貨物の増加について確度が高まり、その必要性が見込まれる際に検討する必要があると考えております。
 引き続き、港湾を取り巻く環境の変化を的確に把握しつつ、釜石市と連携して集貨拡大に向けたポートセールスを行うとともに、港湾施設の利用状況、取扱貨物量の推移や将来の見込み、企業立地の動向等を見きわめながら適切に対応してまいります。
   〔復興防災部長佐藤隆浩君登壇〕
〇復興防災部長(佐藤隆浩君) まず、ALPS処理水の海洋放出に係る相談状況についてでありますが、県では、漁業関係者及び水産加工業者等からの相談に対応するため、本年9月13日に広域振興局等に相談窓口を設置したところであり、昨日10月16日時点の相談件数は、漁業関係者から1件、事業者から4件の計5件となっています。
 寄せられた相談の内容は、実際に風評被害が生じた場合の損害賠償請求について、中国に輸出ができなくなったことによる販路の確保や資金繰り等についてなどとなっています。
 次に、中国の輸入停止措置等による本県への影響についてでありますが、漁業関係団体等からの聞き取りによると、ホタテガイの入札価格に下落が見られたものの、現時点で中国の輸入停止措置による影響かが判断できておらず、また、他の水産物への影響は確認されていないところです。
 今後、これまで中国等に輸出してきたアワビ、ナマコの価格下落等が懸念されるとしており、引き続き、ホタテガイなども含め取引価格等の動向を注視していく必要があります。
 また、水産加工関係団体等からの聞き取りによると、一部の水産加工業者で、イナダやスケソウダラ等の輸出が困難となったことから、在庫が発生し、新たな販路の確保が必要となっているなどの影響が生じていると把握しています。
 県としては、引き続き、関係機関、団体等と連携しながら、ALPS処理水の海洋放出による影響の把握や漁業者等からの相談への丁寧な対応、さらには、国の支援策や損害賠償手続に関する説明会の開催の国への要請など、必要な対策を講じてまいります。
   〔総務部長千葉幸也君登壇〕
〇総務部長(千葉幸也君) 原油価格、物価高騰対策の財源についてでありますが、本県には、令和4年度以降、いわゆるコロナ交付金のうち、原油価格・物価高騰対応分として40億円余、重点支援交付金として113億円余、合わせて154億円余が配分されております。
 本県では、これらの財源を活用し、昨年5月、全国に先駆けて岩手県原油価格・物価高騰対策パッケージを取りまとめ、生活困窮者や子育て世帯への生活者支援、中小企業者等への幅広い事業者支援などを実施したのを皮切りに、累次の補正予算を編成してまいりました。
 これまでに配分された交付金の残額は6億円程度となっているところであり、今後の追加交付など国の経済対策の動向も見きわめながら、引き続き有効に活用してまいります。
   〔医療局長小原勝君登壇〕
〇医療局長(小原勝君) 県立釜石病院についてでありますが、現在策定が進められている次期岩手県保健医療計画における疾病・事業別医療圏や二次保健医療圏の設定状況等を踏まえ、医療局では、次期岩手県立病院等の経営計画を令和6年度に策定することとしており、この中では、県立釜石病院について、他の基幹病院や県立病院以外の医療機関、介護施設等との役割分担と連携のもと、必要となる機能について検討したいと考えております。
 また、施設整備については、老朽化が進んでいることから優先的に整備を進めることとし、将来的な医療需要を踏まえた病院の規模、機能や建てかえと既存施設を改修した場合の具体的な事業規模の比較、県立病院の経営に及ぼす影響などを考慮して検討を進めているところでございます。
 引き続き、釜石保健医療圏における地域医療構想調整会議を初め、地域の声も十分に踏まえながら、関係部局と検討を進めてまいります。
〇3番(大久保隆規君) では、幾つか再質問をさせていただきます。
 まず、GXについてお尋ねいたします。
 きのうの柳村一議員への御答弁でもございましたが、4本柱の一つとしてやっていくことが示されて、非常に意欲的な取り組みだということも評価いたします。何しろ、知事演述で4本柱の一つにGXを掲げたということは、私は非常にすばらしいことだったと思います。これは、地球環境を守るといういわば道徳的なことだけではなくて、グリーン成長戦略を我が県はしっかりと捉えて、これからの産業振興に、政策の柱の一つにしていくのだという知事の御決意だと思うのです。私は、それは本当に後押ししていきたいと思います。
 今回の質問の原稿をいろいろ考えているときに、先ほど御答弁にも触れられていましたけれども、岩手日報の10月6日付の1面で、トヨタ自動車株式会社のレクサスの新モデルの製造に早池峰水力発電所の電力が使われるという非常にすばらしいニュースを見まして、私は本当にうれしくなりました。さすがトヨタ自動車だなと思いました。
 トヨタ自動車は、2050年のカーボンニュートラルを15年前倒しして2035年までには仕上げると、世界のトヨタらしい非常に素早い動きを始めているわけです。それに呼応するような動きの一環だと思うのです。
 ですから、私は、こういった形で新規事業をこのグリーン成長戦略で岩手県に誘致する、あるいは既存産業の中でも新規事業を支援していくというこの取り組みが、まさにこれからの岩手県の経済の成長の鍵を握ると思うのです。このグリーン成長戦略をどうやってさらに前に進めていくかということが、これからより重要になってくると思います。やはり大切なことは情報でございますし、国の考え方や世界のトレンドをいち早く岩手県に取り入れると。
 宮沢賢治先生は、その御発言の中で、世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないという、いわばウエルビーイングの思想を打ち立てられました。これは、私は岩手県の魂の言葉だと思うのです。そして、この地球環境に貢献していくのだということが、宮沢先生の趣旨をさらに発展させて、私は岩手県の志にしていくべきではないのかと思うのです。
 47都道府県中、岩手県が一番この問題に関して非常に熱心にやっている。国よりも先に行っている。そして、岩手県の成功事例が国をも動かしていくと。そういった形で、日本が世界に対して地球環境に貢献している最先進国になっていくのだということで、我が国の経済もまた上昇局面へと持っていけるのではないかと思うのです。これからの日本が世界のために貢献できる道は、再軍備ではないわけですから。
 私は、そういう意味でも、その最先端の役割を私たちのこの岩手県で果たしていきたいと念じております。そういう中で、今回のこのレクサスの事業はとてもすばらしいことだとうれしく思っております。
 そこで、質問といたしましては、私としては、このグリーン成長戦略をより岩手県が取り入れていくためには、専門的な考え方、専門家の知見、識見も必要になってくるのではないかと思います。当局の一生懸命の研究、努力も重要ですが、やはり情報は重要です。
 そこで、これは私が、図書館で借りてきたのですけれども、不都合な真実というアル・ゴア元副大統領の書いた名著がございます。この中で、この翻訳をした枝廣淳子さんは、我が国における環境ジャーナリストとしての最先端の知見の持ち主だと思うのです。私は、我が県において、いろいろな形でこの方とのかかわりを今まで持ったことがあるのかないのかをまず一つお伺いしておきたいと思います。
 続きまして、港湾振興についてお伺いいたします。
 先ほどの2024年問題についての加藤県土整備部長の答弁の内容としては、特別な部局は設けず、今までの組織で総合的に取り組んで乗り越えていくということで、国のように専門部局までは設けないという趣旨だったと思います。
 ただ、この2024年問題は、思った以上に非常に大きな問題ですし、逆にまた、ピンチはチャンスでもあるのです。北海道経済連合会の会長は、国内の食料生産の7割は北海道であり、これがこれからどうなるのだと。例えば、モーダルシフトといって鉄道のJR貨物を利用しようとしても、今、北海道新幹線が始発から終電まで通っていますから、そういった意味で、私は、なかなかモーダルシフトというわけにはいかない。やはりトラックで、ローロー船が重要になってくると思うのです。
 ところが、釜石港においては、このローロー船をとめる場所がないのです。ですから、やはりこれは適切にという抽象的な御答弁だったのですけれども、令和6年4月からこの法律は始まりますから、岸壁は1カ月、2カ月じゃできないのです。ここに港湾事務所の港湾計画があるのですけれども、やはり資料として大きくしているここの黄色い部分の整備をしないとローロー船をとめる場所がないのです。今のコンテナ船はここでいっぱいなのです。水深は14メートルなのです。しかし、ここだけでいっぱいなのです。
 ローロー船というのはトラックを乗せるのですけれども、吃水そのものはそんなに水深を得ない。それでも10メートルは欲しいのです。それで、ローロー船の特徴は長さが160メートルと長いことです。160メートルのローロー船を着ける岸壁がないのです。2024年問題に対応するために、釜石港でこのローロー船を定期航路ということで誘致しても、このローロー船を着ける場所がないのです。
 いち早くこれに取り組まなかったら、2024年問題というのは2024年から始まる永遠の問題なのです。そのためには港湾整備を急がないと、やはりこのことは間に合わなくなる、追いつかなくなる。他県のほうにまた荷物をとられていくということにつながりかねないと思うのです。
 そういった意味で、この辺の状況を、ローロー船対策として、ここを埋める以外にローロー船をとめるスペースはないのです。そういうところをまずしっかり現状認識をしていただきたいと思いますので、県土整備部長、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
 ALPS処理水については、今のところ大きな被害にはなっていないということなのだと思いますが、逆に言いますと、やっぱりピンチをチャンスにかえて、これから岩手県のものは安心なのだということを売り込むチャンスでもあると思うのです。
 まして、昨日来の御答弁でもありましたけれども、岩手県も、例えばサーモンの養殖にも取り組み始めています。そういうものの売り込みも含めまして、この機会に、むしろ岩手県の水産物は安心なのですよということをまさに打って出る、そういう逆手にとった取り組みが今こそ必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 続きまして、三陸・海の博覧会についてでございますけれども、今後しっかりと御検討をお願いしたいと思う次第でございます。
 私は31年前に釜石市議会議員をやっていまして、まだ駆け出しだったのですけれども、その当時、県内、そして市も一丸となって皆さん取り組んで、すばらしい成功をおさめたと思うのです。でも、この成功の一番のポイントに何があったかというと、やはり70万人の目標に対して200万人だったのですけれども、これは、実に岩手県が手づくりで考えられたイベントだったのです。
 当時は全国博覧会ブームでした。有名な札幌食の何とかという博覧会があったのですが、あれは大手代理店に丸投げして、大失敗したのです。岩手県は、そういうことをしないで、岩手県の優秀な職員の方々が一生懸命考えて、これで行こうということでやって大成功したのです。今よりも道路のだめな時代です。本当にもう北上山地がつい立てになりまして、内陸部と沿岸部が遮断されて陸の孤島と言われたのです。それが今、この復興事業で縦横の高速交通網もできました。
 また、当時は平泉も、あるいはまた橋野鉄鉱山も、御所野遺跡も世界遺産ではないのです。ニューヨークタイムズ紙の報道もなかったのです。2025年に大阪で万博をやります。これは本当に大阪、関西人の魂で、ど根性で、私は大成功すると思うのです。その流れを翌年、岩手三陸に向けると。
 沿岸部でやる三陸・海の博覧会ですけれども、これは県内全体でやれるのではないかと思います。また、これも丸投げしないで、優秀な岩手県職員の皆さん方の英知を結集して、あれは手づくりでしたが、今回は、さらにこの大久保の浅知恵ごときではない、全県議会議員の御英知も結集していただいて、いわば両手づくりで最高のイベントをやることで、私は復興第2章、勢いを取り戻していくべきではないかと思うのです。
 そういった意味で、これまでの取り組みにおけるその当時のことを副知事も思い出していただきながら、この検討に向けてもう一言頂戴できればと思う次第でございます。
 GXについてですけれども、枝廣淳子さんとのかかわりについてお尋ねしたのですが、時間もないといけませんから、私はこういう方の知見、識見を岩手県の政策に反映するために、岩手県のアドバイザーとかコーディネーターとかという形でお招きすることは、非常にタイムリーではないかと思います。それもあわせて御検討をお願いできればと思いますので、もし答弁が可能であれば、よろしくお願いいたします。
〇知事(達増拓也君) 枝廣淳子さんには、私の1期目のときに、いわて環境王国展という名前だったと記憶していますが、県の環境に関する意識を高め県内に情報を広める行事において、講演、トークをやっていただき、そのとき、アル・ゴアさんの不都合な真実を翻訳された方ということで、アメリカの環境対策事情に非常に詳しく、特にカリフォルニア州が連邦政府よりはるかに環境対策が進んでいるというように、日本でも、地方の県が国よりも進んだ対策を進めるべきということで、非常にハッパをかけていただいたことを思い出します。
 その後もさまざまな形で県職員への助言や、また、県の行事での講演のような形、それから、幸福論にも最近発言の対象が広がってきている枝廣淳子さんでありますので、いわて幸福白書でもインタビューを行うなどしておりますので、実質的には、アドバイザーとしてかなり仕事をしていただいているところがあります。
 今後、GXという形で、この分野がさらに重要になっていきますので、さらにさまざま御協力いただく形について考えていきたいと思います。
 そのほかは、副知事等から答弁をさせていただきたいと思います。
〇副知事(八重樫幸治君) 県職員の能力の活用についてでありますが、人口減少対策など県の施策を推進していくためには、部局の枠を超え、県職員が総力を挙げて取り組んでいくことが重要です。
 平成4年の三陸・海の博覧会を初めとした4大イベントにおいては、議員御紹介のとおり、県職員を含めた県民総参加の取り組みが成功の要因であったと認識しています。
 現在、県では、県北・沿岸振興本部を中心として、三陸沿岸地域の持続的な発展に全庁を挙げて取り組んでいるところであり、今後におきましても、県職員一人一人の能力向上を図りながら、創意工夫を凝らし、一体体制で進めるとともに、市町村や関係団体との連携を強化し、オール岩手で取り組んでまいります。
〇県土整備部長(加藤智博君) 釜石港の公共埠頭の拡張についての再質問でございましたが、先ほど大久保隆規議員御指摘のローロー船に関しましては、現在の釜石港公共埠頭において、ローロー船が週1便程度寄港した場合の対応は可能と考えております。ただ、一方で、先ほど御指摘いただきましたとおり、近年の2024年問題の対応等について、物流の状況は大きく変わっていると認識しております。
 引き続き、そういった港湾を取り巻く環境の変化を的確に把握しつつ、釜石市と連携して集貨拡大に向けたポートセールスを行うとともに、港湾施設の利用状況等を見きわめながら、将来も含めた貨物の取り扱いに支障が生じないように、整備に要する期間も考慮した上で機能強化について検討してまいりたいと考えております。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 水産物の風評対策、PRについてでございますが、県では、県産水産物の風評被害の防止に向け、水産物の放射性物質のモニタリング検査を行い、その結果を県ホームページで公表するなど、安全性を発信しているところです。
 また、国内での消費拡大に向け、県内外の量販店での岩手フェアや、給食事業者と連携し社員食堂等での県産水産物を活用したメニュー提供を行うこととしています。
 さらに、海外での販路の開拓拡大に向け、在外公館と連携した現地の政府関係者や事業者へのPR、日系量販店等と連携した販売促進フェアなどに取り組んでいくこととしており、県産水産物の消費や販路、輸出がさらに拡大するよう取り組んでまいります。
〇3番(大久保隆規君) また港湾に関してですけれども、週1便程度は可能と言いましても、昨日の菅野ひろのり議員の質問にも関連してきますが、金ケ崎町と江刺工業団地の道路のアクセスをよくするという取り組みも多少の時間がかかります。そのときに、やはりトヨタ自動車の車を今、仙台港から出しているわけです。岩手県でつくった車を他県の港を使っているわけです。
 私は、せっかくですから、岩手県の港から出したほうが県産GNPが上がるという視点、ここも見逃せないと思うのです。実際に震災前はトヨタの積み出し港だったのです。あのときは、自動車を運搬するカーキャリア―1階部分に3台、2階部分に2台積めるのですが、その会社を釜石市に誘致して、雇用も生まれていました。また、その船が入ると、車を一斉に運搬船に積み込んで、またバスで戻ってきて、また積み込んでという作業で、そのスタッフの方々も採用されていました。そういう形での職員雇用はこれも人口減少問題の対応にもなるわけです。
 岩手県でつくった自動車の輸送で、いつまで仙台港を使うのですかということだと思うのです。やはりこれは早速やっていただかないと、ほかのローロー船も、北海道経済連合会の会長が、今後どうしようかと頭を痛めているのですから。我々は北東北に位置して、宮城県よりも北海道に近いところにあるわけです。しかも道路はよくなっているわけですから。
 そういった意味で、これは本当に積極的な取り組み、本当に今から、何しろ申し上げているのは、港湾管理者は地元自治体ではなくて岩手県なのです。岩手県が、よしやりましょう、すぐやりましょうという形でやって、年度内の、新年度の予算編成を財務省が行っていますね。これに盛り込んでいただいて―4月から早速工事をしたって、まだ間に合わないのですから。まだ完成しませんからね。しかし、2024年は始まっていくわけです。そういったところで、これこそ喫緊の課題だと思いますから、その辺のところのスピード感を持ったお取り組みをぜひお願いしたいと思います。
 そういうことで、こちらをまず聞いておきます。
 それとあわせて、私は、そこの港の整備を進めながら、もう一カ所、今度は道路ですけれども、両石インターチェンジのフル規格はできませんか。片側なのですよ。宮古市からおりてこられるけれども、大船渡市側から来ると、あるいは遠野市側から来るとおりられないのですよ。あそこのフル規格もやって、釜石港のこの道路と港湾が結節されて、今後、物流が、しっかりとした荷役ができるようになっていくことにつながっていくと思うのですけれども、いかがお考えでしょうか。
〇県土整備部長(加藤智博君) 釜石両石インターチェンジの件でございますが、まず、三陸沿岸道路の県内区間につきましては、ハーフインターチェンジとフルインターチェンジを合わせまして41カ所のインターチェンジが設置されておりまして、その間隔は約5キロメートルと、東北道の約10キロメートルと比べまして一定の利便性を有していると認識しているところでございます。
 ただ、一方で、三陸沿岸道路全線開通後の社会情勢ですとか利用状況の変化に対応したハーフインターチェンジのフルインターチェンジ化などの機能強化は、必要と考えているところでございます。
 こうした中で、本年6月に、釜石市も含みます三陸沿岸道路の沿線自治体で構成します三陸沿岸道路東松島・山田間機能強化連絡協議会が設立されまして、その中で主要なハーフインターチェンジのフルインターチェンジ化などの実現に向け、機能強化計画を策定するよう、国に要望していく方針が示されているところでございます。釜石市の考えも伺いながら、国と情報交換をしてまいりたいと考えております。
 先ほどのローロー船の関係でございますが、まず、完成自動車物流の再開に向けた流れの中でという質問と認識しております。
 まず、県では、完成自動車物流の再開に向けまして、釜石市と連携して、釜石港の現地視察や試験輸送の提案など、トヨタ自動車株式会社に働きかけを行ってきたところでございます。
 引き続き、トヨタ自動車株式会社の動向を注視しながら、釜石市と連携した取り組みを進めてまいりたいと思っております。
 そういった中で、新たな埠頭用地の整備につきましては、将来的な貨物の増加について確度が高まり、その必要性が見込まれる際に検討する必要があると考えておりますけれども、引き続き、やはり釜石市と連携して集貨拡大に向けたポートセールスを行いつつ、港湾施設の利用状況、取扱貨物量の推移や将来見込み、企業立地の動向等、あるいは港湾を取り巻く環境の変化を的確に把握しながら、将来も含めた貨物の取り扱いに支障が生じないよう、整備に要する期間も考慮した上で、機能強化について検討してまいりたいと考えております。
〇3番(大久保隆規君) この2024年問題は、ピンチをチャンスに変えていくということ、これも時代の大きな変化の局面ですから、我が岩手県は、ここにもしっかりとした取り組みをして、我々岩手県の経済成長をしっかりと物にしていくことに対する戦略的なお取り組みを何とぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 知事、今回選挙戦がございまして、今回の選挙戦は、必ずしも当初、楽な見通しはなかったのではないでしょうか。相手の候補の方もなかなか優秀な方で、今回の選挙戦を通じて、知事自身も相手候補のいろいろな主張などにも耳を傾ける機会もあって、このことはもっと自分もやるべきだったなといったところも、もしかしたらあったのではないかと拝察いたします。
 今回5期目のスタートに当たりまして、そういう相手候補の方の思いも知事御自身の我が思いとされ、すばらしい5期目の県政、すばらしい岩手県に導くよう、また、庁内の組織をフルスペックで、県の職員の方々の能力を組織的に生かして最高の岩手県政に取り組んでいただくよう御期待申し上げておりますので、エールを送って私の質問を結びたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(飯澤匡君) 以上をもって大久保隆規君の一般質問を終わります。
   
〇副議長(飯澤匡君) この際、暫時休憩いたします。
   午後4時6分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番田 中 辰 也君
2  番畠 山   茂君
3  番大久保 隆 規君
4  番千 葉 秀 幸君
5  番菅 原 亮 太君
6  番村 上 秀 紀君
7  番松 本 雄 士君
8  番鈴 木 あきこ君
9  番はぎの 幸 弘君
10  番高橋 こうすけ君
11  番村 上 貢 一君
12  番工 藤   剛君
13  番小 林 正 信君
14  番千 葉   盛君
15  番上 原 康 樹君
16  番菅野 ひろのり君
17  番柳 村   一君
18  番佐 藤 ケイ子君
19  番高 橋 穏 至君
20  番佐々木 宣 和君
21  番臼 澤   勉君
22  番福 井 せいじ君
23  番川 村 伸 浩君
24  番ハクセル美穂子君
25  番高 田 一 郎君
26  番木 村 幸 弘君
27  番佐々木 朋 和君
28  番吉 田 敬 子君
29  番高 橋 但 馬君
30  番岩 渕   誠君
31  番名須川   晋君
32  番軽 石 義 則君
33  番神 崎 浩 之君
34  番城 内 愛 彦君
35  番佐々木 茂 光君
36  番佐々木   努君
37  番斉 藤   信君
38  番中 平   均君
39  番工 藤 大 輔君
40  番郷右近   浩君
41  番小 西 和 子君
42  番高 橋 はじめ君
43  番五日市   王君
44  番関 根 敏 伸君
45  番佐々木 順 一君
46  番岩 崎 友 一君
47  番千 葉   伝君
48  番飯 澤   匡君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時27分 再開
〇副議長(飯澤匡君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   
〇副議長(飯澤匡君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇副議長(飯澤匡君) 日程第1、一般質問を継続いたします。松本雄士君。
   〔7番松本雄士君登壇〕(拍手)

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