令和5年6月定例会 第26回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇2番(小林正信君) 公明党の小林正信です。質問の機会をいただいたことに感謝申し上げ、これまでの皆様の御質問と重複する部分もございますが、通告に従って質問をいたします。
 まずは、東日本大震災津波からの復興についてお伺いします。
 本年3月11日で東日本大震災津波から12年がたちました。この間、被災地の皆様は、さまざまな思いを抱えながら、復興に向けた前進を続けてこられたものと思います。
 我々公明党といたしましても、人間の復興、心の復興の完遂を目指し、被災地の今の課題を探るべく、3.11を前に被災者の皆様を対象としたアンケート活動を実施いたしました。319名の方から回答をいただき、特に、少子高齢化による地域の衰退、物価高騰に対する不安の声が多く聞かれたところであります。震災から12年が経過し、住環境やインフラの整備が進んだとはいえ、アンケートを通じて、いまだ復興は道半ばであると感じた次第です。
 県は、いわて県民計画(2019〜2028)第2期復興推進プランの中で24点にわたる具体的、網羅的な取り組み項目を示しておりますが、推進期間内に十分な成果が得られるかを考えたとき、岩手県としての本気度が問われるものと思います。
 人口の流出、産業の衰退、地域コミュニティーの希薄化など、沿岸被災地の抱える課題はまさに待ったなしの状況であると考えます。
 県は現在、人口問題対策本部会議等において人口減少対策について議論を進めておりますが、沿岸被災地においては、産業振興や子育て支援など、あらゆる施策を充実させ、特段の人口減少対策を講じるべきと考えます。
 沿岸被災地の人口減少の現状と課題をどう把握し、どのように沿岸振興を進めていくお考えか、知事の御所見をお伺いします。
 コロナ禍、そして物価高の影響は、沿岸被災地においても深刻であり、復興の大きなブレーキとなっている印象があります。災害援護資金の償還も始まり、さまざまな課題が二重三重と重なり、被災者の生活を圧迫している状況です。
 これまでも幾度か取り上げてまいりました、いわて被災者支援センターの取り組みは、どのような相談であっても受けとめ、丁寧に対応するもので、相談が多様化、複雑化する中、一人一人に寄り添った支援を被災地において展開しております。
 コロナ禍や物価高を受け、県としても、いわて被災者支援センターの取り組みを継続、継承しつつ、被災地における生活困窮者、困難を抱える被災者に対する相談体制の一層の強化を図るべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 いわて被災者支援センターの取り組みは、被災者を誰ひとり取り残さない相談支援であり、前回の一般質問でも取り上げた災害ケースマネジメントの手法に通ずる先進的なものであると考えております。東日本大震災津波を経験した岩手県としても、災害時、速やかに被災者に寄り添った支援が展開できるよう準備を進めておく必要があると考えます。
 先般、内閣府より各地の先進事例をおさめた災害ケースマネジメント実施の手引きが示されました。前回の質問において、知事より、災害ケースマネジメントの手引書などを参考にしながら、被災者が抱える多様な課題に対応できる総合的な支援体制について検討を進めるとの答弁をいただきました。
 岩手県における災害ケースマネジメントの具体的な体制整備の進め方について、県のお考えをお伺いします。
 関連して、災害時、迅速な応急仮設住宅の整備が期待されるムービングハウスの活用について、お伺いします。
 以前、県としても、東日本大震災津波における応急仮設住宅のさまざまな課題を踏まえた上で、ムービングハウスの活用は有効と考えているとの答弁をいただきました。しかしながら、実際の活用においてはさまざまな課題があるものと思います。
 青森県、宮城県においては、災害時における迅速な展開を期して、一般社団法人日本ムービングハウス協会との連携協定を結んだと承知しております。岩手県としても、民間団体等と連携しつつ、災害時におけるムービングハウスの活用を検討すべきと考えますが、課題も含め、御所見をお伺いします。
 続いて、相談支援についてお伺いします。
 慶應義塾大学の井出英策教授が提唱するベーシックサービスは、現在進められている全世代型社会保障制度の考え方をさらに推し進め、医療、教育、介護など、人間が生きていく上で不可欠なサービスを無償化することで、弱者を助ける制度から弱者を生まない社会へと福祉の裾野を広げる考え方として注目を集めております。
 一方、ベーシックサービスを実現しても残る課題、地域において困難を抱え孤立している方々をどう支援するのかといった課題に対処するため、井出教授は、ソーシャルワークの重要性を指摘しております。
 ソーシャルワークは、暮らしの課題に取り組み、健康や幸福といったウエルビーイングを高めるべく、人々やさまざまな構造に働きかける取り組みと定義され、行政や有資格者だけでなく、地域や民間団体、あらゆる主体が連携して、困難を抱える当事者、また家族の置かれている環境を、環境ごと変えていく取り組みとされています。
 達増知事は2月定例会の菅野ひろのり議員の質問に対し、相談支援について取り上げられ、専門性や広域性が求められる場合、多様な主体との連携、協働のもと相談支援体制を構築していくのは、広域自治体である県の使命と考えていると答弁されました。そして、いわて県民エンパワー予算において、相談支援体制の強化を盛り込んだと述べられております。
 いわて県民計画(2019〜2028)にもある社会的包摂の理念を実現する上で重要な答弁と感じておりますが、相談支援の強化といっても、医療、介護、障がい、教育、地域など、その分野は多岐にわたり、各分野における人材の育成など、時間をかけた取り組みが必要であり、特に、社会福祉分野において、複雑化、複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築することも重要です。
 今後、県として社会福祉分野におけるソーシャルワークを強化する取り組み、また、社会福祉士等のソーシャルワーカーの育成などの人材確保、体制整備等を含めた社会福祉行政における相談機能、相談支援の強化について、どのように進めていくお考えなのか、知事にお伺いします。
 また、県は、岩手県福祉総合相談センターにおいて、複雑化、多様化するさまざまな相談に対し、援助を必要とする方たちの支援を行っているところです。以前、福祉総合相談センターを視察させていただいたことがございましたが、建物の老朽化が目立ち、県民が安心して訪れ、相談できる環境の整備が必要と感じました。
 福祉にかかわる問題が複雑化し、困難を抱える方がふえる中、相談支援の拠点としての福祉総合相談センターの役割は重要性を増しており、県としても、福祉総合相談センターの建てかえについて検討を始めたところと認識しております。
 さらなる相談支援体制の強化を図るためにも、早急に福祉総合相談センターの建てかえの方向性、計画を定め、機能強化についても検討すべきと考えます。県のお考えをお伺いします。
 福祉総合相談センター内には精神保健福祉センターが設置されており、県民の心の健康の増進や精神障がい者の社会復帰の支援などを行っております。また、精神保健福祉センターでは、自殺予防、ひきこもり支援、依存症の相談対応等も行い、特に自殺対策については、関係する皆様の御努力により、令和3年においては自殺死亡率16.2と全国平均の16.5を下回りましたが、令和4年においては、確定値ではありませんが、概数で21.3と、再び深刻な結果が出ております。
 県では、令和3年度から、国の事業と連携しSNS相談による自殺相談体制を整備しておりますが、相談数は増加しているところであり、これまで取り組んできた自殺対策に加え、こうした新たな取り組みにも力を入れていくべきと考えます。
 SNS相談による自殺相談体制のさらなる周知、充実について、県のお考えをお伺いします。
 関連して、精神疾患及び精神障がいへの支援についてお伺いします。
 コロナ禍による精神疾患の患者数の増加が懸念されております。岩手県の精神障害者保健福祉手帳の交付者数を見てみますと、平成29年には1万35人だったものが、令和3年には1万3、332人と3、000人以上増加しております。近年、岩手県において、精神科医療、心療内科の初診の予約がとりにくいという現状については、これまでも議論があったところであり、診療体制も含めて、精神保健の充実が急務であります。
 県では、精神障がいにも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進し、モデルとなる取り組みを進めていると伺っております。一方、精神障がい、精神疾患の当事者、また、その家族のため、一元的な情報提供を行い、居場所を提供する相談支援拠点の必要性については、これまでも取り上げてまいったところです。
 精神保健福祉センターとして、当事者や家族団体とも意見交換を行いながら、今現在、精神障がい、精神疾患を持つ方々にとって最も必要とする取り組みを実施する必要があると考えますが、今後の県の取り組みについて、お考えをお伺いします。
 続いて、不登校対策についてお伺いします。
 これまでも議論があったとおり、不登校児童生徒の増加は、岩手県においても深刻です。盛岡市を例に、不登校児童生徒の人数を見てみますと、令和4年度は、小学生194人、中学生297人、そのうち教育支援センターに通っている児童生徒が20人、フリースクールに通う児童生徒が20人という状況であり、教育支援センターやフリースクールに通っていない児童生徒への支援が必要であります。しかしながら、教職員の多忙化や専門人材の不足等により、支援はまだ十分に行き届いていない現状があると思います。
 県は、不登校対策として、教育支援センター未設置の市町村に開設を促し、教育支援センターに通うことが困難な児童生徒に対しても、アウトリーチ型支援を行い、相談支援体制の強化を図っていくお考えと伺っておりますが、県として、このアウトリーチによる支援の具体的な内容について、どのように考えておられるのかお伺いします。
 不登校児童生徒の増加に伴い、フリースクールの重要性は増しているものと考えます。盛岡市内のフリースクールに現状と課題を伺ったところ、フリースクールに通いたくても経済的な理由で通うことができない、また、フリースクール側の人員が不足し、受け入れることが困難な状況があるとのことでした。
 不登校児童生徒にとって最後のとりでとも言えるフリースクールにさえ通えない、そうした子供たちが多くいるという現状を鑑み、県における不登校対策として、教育支援センターの整備、機能の充実と並行して、県内のフリースクールに対するさらなる支援の充実も必要と考えますが、御所見をお伺いします。
 中学校から不登校になり、高校に入れない生徒や、高校には入れたが不登校になってしまった生徒は、通うべき居場所が少なく、そうした意味で、県議会でも取り上げられ、文教委員会でも視察した星北高等学園の取り組みは重要であり、県のさらなる支援を強く望むものであります。
 令和4年度の岩手県における高校生の不登校生徒数は591名と、前年度より75名ふえ、1、000人当たりの不登校生徒数も19.8人と、全国の16.9人を大きく上回っております。
 高校生世代の不登校生徒への支援として、教育委員会と子ども・若者総合相談センターとの連携や民間の取り組みへの支援、また、連携が重要になると考えますが、高校生の不登校対策について、県のお考えをお伺いします。
 子育て支援、少子化対策についてお伺いします。
 本年6月、政府の少子化対策や財源等の考え方を示した、こども未来戦略方針が決定されました。
 私ども公明党は、こうした国の動きに先立ち、子供政策を政治の柱に据えた社会の実現と少子化、人口減少を克服するための具体策を示した子育て応援トータルプランを昨年11月に発表いたしました。同プランの基本的な方向性として大きく五つの柱を掲げ、それらの方向性に沿って、ライフステージに応じた具体的な政策を示しており、こども未来戦略方針にもプランの示した内容が反映されているところです。
 また、プランにおいては、政府に対し子育て関連予算の倍増を求め、政府のこども未来戦略方針では、少子化対策の加速化プランにおいて、3兆円台半ばの予算規模を示しております。これについては、既存予算の活用や徹底した歳出改革により捻出するとしており、こども家庭庁発足前の水準を基準として、2030年度初頭までに倍増を目指すと掲げております。
 今後、国が進める施策に合わせて岩手県においても取り組みを進めていくことになると思いますが、全国平均に比べ合計特殊出生率が低い岩手県としては、国に先駆けた子育て支援の充実が必要であり、そのために必要な財源の確保については、これまで本会議や委員会等において、基金の造成や寄附の受け付けなども含め、さまざまな議論がございました。
 子育て施策における財源確保について、現時点で知事はどのようなお考えをお持ちなのかお伺いします。
 ある民間の調査では、就労状況を初めとするさまざまな理由で、保育所や幼稚園、認定こども園に通えない、いわゆる無園児の保護者は、定期的に園を利用している保護者よりも孤独を感じる割合が高いという結果が出たそうであります。
 政府のこども未来戦略方針において示された、こども誰でも通園制度は、こうした親子の孤立を防ぐ点で有効なものと考えます。
 以前にも取り上げましたが、石川県では、妊娠期から、身近な保育所をかかりつけ園として、相談支援などを行うマイ保育園制度を県が中心となって進めていると伺っております。また、県内の自治体でも、保育所の空き定員等を活用し未就園児の預かりを行う国のモデル事業を実施していると伺っております。しかしながら、園における負担の増大も懸念されるため、制度を進めると同時に、保育士の処遇改善や保育環境の整備も必要となります。
 京都大学の柴田悠教授は、保育士賃金を全産業平均まで引き上げ、保育士配置基準も先進国並みに改善し、1歳から2歳児全員を保育所等で受け入れると、約0.13の出生率向上が見込まれると試算しております。
 岩手県としても、国の制度に先んじて保育環境の大胆な整備、保育士の処遇改善に取り組むべきと考えますが、御所見をお伺いします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 国立社会保障・人口問題研究所の鎌田健司氏は、少子化の主要因を、男女ともに結婚する割合が減ったこと、未婚化であるとし、結婚意欲を高めることが重要と指摘しております。その上で、少子化対策に関する内閣府の意識調査から、結婚がかないやすくなる支援として、非正規雇用の正規雇用化、収入、雇用の安定、また、住宅費の軽減等が、男女ともに必要としている施策であると紹介しております。
 若者の賃上げ、働き方改革、雇用安定等は、長期的な課題であり、時間をかけた取り組みが必要です。県としても、今後、着実にこうした長期的な取り組みを実施しながら総合的な少子化対策を進めていかれるものと思います。その上で、若者の生きにくさを生きやすさに変え、若者が未来に希望を持てるような支援をする取り組みも未婚化の対策として有効と考えます。
 令和4年度、県では、コロナ禍の長期化により、さまざまな困難に直面する若者、女性への一層の支援を検討するため、若者女性サポート・活躍推進緊急タスクフォースを設置、タスクフォースにおける検討を経て、令和5年度は、デジタル分野での女性の所得向上に向けた就業促進セミナー等を実施するなど、新たな事業に取り組まれる予定と伺っております。
 このタスクフォースは、緊急ということで令和4年度のみの設置と伺っておりますが、部局横断で議論を深めたという点で、意義のある取り組みであったと思います。今後、タスクフォースの成果を踏まえつつ、女性も含めた困難を抱える若者に対する支援のさらなる充実を図るべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 次に、健康増進施策についてお伺いします。
 政府は、ことし3月、今後6年間のがん対策の方向性を示した第4期がん対策推進基本計画を閣議決定しました。計画では、誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指すとしており、ポイントとして、がんの予防に今まで以上に力点が置かれております。
 がんから命を守るために欠かせないのは早期発見、早期治療であり、そのためには、がん検診受診率の向上が重要です。計画では、国の指針に基づく胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの五つの検診受診率について、従来の目標より10%引き上げた60%を目指すとしております。その上で、胃がん、肺がん、大腸がんでは、全体のおよそ6割、子宮頸がん、乳がんではおよそ4割が、勤め先、職場での検診、職域検診を受診しており、職域検診の普及は検診受診率向上に欠かせないものと考えます。しかしながら、職域検診は、明確な根拠法がないため、予算措置や行政の支援が十分と言えず、政府は、企業などの取り組みを後押しするため、法的な位置づけについて検討する考えを示しております。
 厚生労働省は、2009年から職場のがん対策を啓発するがん対策推進企業アクションを進めており、岩手県としても、職域検診の促進を図るなど、がん検診受診率向上のための取り組みをさらに充実させるべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 2001年に国内で本格運航が開始されたドクターヘリは、現在、全国47都道府県において運用され、岩手県においては、2012年5月より運用が開始、広い県土を有する本県において、救命率の向上や後遺症の軽減等に大きな効果を発揮しているものと考えます。
 ドクターヘリの課題として、悪天候により出動が困難な場合があるという点、また、夜間等の空白時間をどうカバーするのかという点が挙げられます。
 こうした課題に対応すべく、医師を乗せて救急現場に駆けつけるドクターカーを配備する自治体がふえております。現在、東北地方においては、本県と山形県を除く4県でドクターカーが運用されております。ドクターカーの車両や運行形態はさまざまで、厚生労働省は、現在、ドクターカーの実態を調査し、地域に適した効率的な活用を促す運行マニュアルを作成する予定と伺っております。
 ドクターヘリの課題を補完する役割として、ドクターカーの導入は有効と考えます。人員確保の点という部分からも課題は多いと思いますけれども、岩手県における導入について、県のお考えをお伺いいたします。
 次に、産業振興についてお伺いします。
 先般、ヘルステック・イノベーション・ハブの開設3周年を記念して、入居企業が参画する医療機器関連の産学官クラスターTOLICによる第27回のカンファレンスが開催されました。達増知事も来賓として挨拶を述べられ、TOLICとしての新たな取り組みの発表など、医療機器関連産業の新たな展開を予感させる会合となりました。
 会合では、新たなステージにおける取り組みとして、株式会社の立ち上げ、スタートアップのためのファンドの創設、そして、スタートアップ受け入れのための新施設の建設を目指すとの発表がありました。
 県もこれまで、医療機器関連産業イノベーション創出戦略を策定し、令和5年度からは、新産業事業化促進事業、起業・スタートアップ推進事業を創設、県内における新たな産業の振興を後押ししております。
 岩手県における起業、創業の推進、医療機器関連産業の振興において、TOLICのような組織との連携は今後ますます重要になると考えますが、新施設の建設も含めた医療機器関連産業の振興について、県のお考えをお伺いいたします。
 また、このカンファレンスにおいて、先ほど木村幸弘議員からもお話がございましたが、盛岡市の医療機器関連企業5社が、唾液によりがんの簡易検査を可能とするサービスの開発に取り組むとの発表がありました。AIを活用し、唾液から最大13種類のがんの痕跡を探す仕組みで、実証実験を経て、2024年度から実用化、国内外への普及を目指すとしております。
 先ほど、がん検診の受診率向上について取り上げさせていただきましたが、今後、こうしたサービスが確立され、普及すれば、がんの早期発見や患者の身体的、経済的負担の軽減につながることが期待されます。
 県としても、今後、実証実験の進捗、その先の実用化を見据えながら、岩手発の医療機器関連企業の先進的な事例として、情報発信、連携を図っていくべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 デジタル田園都市国家構想は、デジタル技術の活用によって地域を活性化し、その地域の個性や強みを生かしてさらなる発展を目指すものであり、自治体、地域においては、IoTやAIなどの先端技術を活用し、生活やサービスの質を向上させる、いわゆるスマートシティの取り組みが進められています。
 これまでも取り上げたことがありましたけれども、福島県の会津若松市では、市と会津大学、スマートシティに関心のある企業群で形成されるコンソーシアムの3者が連携し、観光、食と農、決済、ヘルスケア、防災、行政等の分野において、データ連携や市民向けデジタルサービスが実装され、今後さらなる高度化に取り組むとしております。
 岩手県においても、令和2年度にはスマートもりおかプロジェクト事業、令和3年度からは、みらいもりおかプロジェクト事業等により、地域におけるさまざまな分野でのデジタル化の推進に取り組んでいるところと思います。
 地域住民の生活の質を上げるため、さきに挙げたような幅広い分野におけるデジタル活用が急務であり、IT産業の振興、人材の育成が、今後ますます重要になってくるものと思います。
 さまざまな分野におけるデジタル活用の推進を目指しIT産業を振興していく中で、IT産業と他産業との連携促進も重要と考えますが、県のお考えをお伺いします。
 最後に観光振興についてお伺いします。
 本年3月、政府は観光立国日本の復活に向けて、第4次となる観光立国推進計画を閣議決定しました。計画では、持続可能な観光地域づくり、インバウンドの回復、国内交流の拡大の3点について戦略的に取り組み、全国に観光の恩恵が行き渡ることを目指すとしております。
 コロナ禍後の観光においては、計画にもあるように、持続可能な観光地域づくりとデジタル化が必須であると言われております。持続可能な観光とは、各地域における自然環境、文化、歴史、伝統産業など、観光資源として保全、活用し、同時に、経済、社会、環境を正しく循環させ、地域の持続可能性や価値を高める取り組みとされております。
 インバウンド再開の中、オーバーツーリズム予防の観点からも、観光庁では、地域や観光関係者が一体となって取り組むべき喫緊の課題としており、日本版持続可能な観光ガイドラインを活用し、持続可能な観光の普及、啓発を図るとしております。
 豊富な観光資源に恵まれた本県においても、その資源の磨き上げ、また保全、活用は重要と考えます。県として、観光立国推進基本計画にもあるような持続可能な観光地域づくりに今後どのように取り組んでいくお考えか、お伺いします。
 盛岡市が、ニューヨークタイムズ紙において、本年訪れるべき52の都市の一つに選ばれたことは、岩手県の観光にとって重要なことと思います。また、世界経済フォーラムによる世界旅行・観光開発指数2021では、世界117カ国、地域において、日本は総合評価1位になったとのことです。
 しかしながら、国際観光客の分散化という点においては、日本は評価が低く、2019年の日本政府観光局の都道府県別の訪問率ランキングにおいては、東京都が訪問率47.2%とほぼ半分を占めております。岩手県は、山形県、愛媛県と並んで訪問率0.4%と下位に位置しており、2019年の調査ではありますが、訪日客へのさらなるアピールが必要と考えます。
 県としても市町村と連携した観光プロモーションを展開しておりますが、東北全体を考えたとき、インバウンドで東北地方が占めるシェアは少なく、宿泊日数等も他エリアに比べると少ない状況と伺っております。
 過去にも、東北観光プロモーション会議、6県知事がそろってのプロモーション、発信などが行われてきたところであり、岩手県、盛岡市が注目されている機会を生かし、東北地方全体での連携、発信を図るべく岩手県としても力を入れるべきと考えますが、知事の御所見をお伺いします。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   
〇議長(五日市王君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小林正信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、沿岸被災地の振興についてでありますが、沿岸被災地においては、婚姻件数、出生数とも全県平均を上回る減少率で推移しており、他県や県内他圏域への転出も顕著となっています。また、主要魚種の不漁や物価高騰等の課題が復興の進展に影響を与えており、厳しい状況が続いています。
 このような中、沿岸地域の地域おこし協力隊員などが、漁業への従事を初め、空き家を活用したU・Iターンの促進や地域産品の開発に参画するなど、地域に根差し、地域の課題に積極的に取り組む動きも見られるところです。
 沿岸被災地においては、復興の推進が人口減少対策でもあるとの考えのもと、いわて県民計画(2019〜2028)第2期復興推進プランにおいて、あらゆる世代が希望を持っていきいきと暮らし、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指すこととしており、サケ、マス類の海面養殖やウニの蓄養など、新たな漁業、養殖業の取り組みの推進、若者を初めとする起業者や後継者の育成による経営人材の確保、新たな交通ネットワークを生かした企業誘致や物流体制の構築などに取り組むこととしております。
 今後も、第2期アクションプランに掲げる自然減、社会減対策に係る施策を推進するとともに、ニューヨークタイムズ紙掲載を契機とした国内外の誘客の取り組みを強化し、さらなる交流人口の拡大を図るなど、地域の特性を踏まえながら、沿岸地域の振興を強力に進めてまいります。
 次に、社会福祉行政における相談支援の強化についてでありますが、個人の価値観や生き方が多様化し、また、生活困窮などの悩みや不安が複雑化する中で、住民福祉を増進するためには、より住民に寄り添った行政が求められるようになっており、住民の身近な相談窓口である市町村と専門的、広域的な機能を担う県が、多様な主体との連携、協働のもと、相談支援体制を構築していくことが重要であります。
 具体的には、生活上の課題に幅広く対応し、介護や子育て、生活困窮などの属性や世代を問わない支援を一体的に実施するためには、市町村が重層的支援体制を整備していくことが有効と考えられることから、県では、重層的支援体制整備事業の実施市町村の拡大に向け、研修会の開催やアドバイザー派遣などにより、市町村の取り組みを支援しているところです。
 また、県においては、児童虐待相談等に迅速かつ的確に対応するため、児童相談所職員を計画的に増員してきたほか、多様化、複雑化する相談ニーズに対応する人材を育成するため、大学や福祉関係機関、団体との役割分担のもと、社会福祉研修事業を実施し、福祉職員全体のスキルアップを図っています。
 今後においても、社会的包摂の視点に立って、市町村や関係団体など多様な主体との連携、協働のもと、相談支援体制を強化し、県民一人一人がエンパワーされるよう取り組んでまいります。
 次に、子育て施策における財源確保についてでありますが、県では、人口減少対策に最優先で取り組むため、令和5年度当初予算において、国の施策を待たずに県独自で財源を確保し、第2子以降の3歳未満児に係る保育料の無償化や在宅育児支援金の創設などの新規事業を盛り込み、全国トップレベルの子供子育て環境の実現に向けた施策を打ち出したところです。
 一方で、こうした施策の効果が十分に発現されるには、総合的で息の長い取り組みが必要となることから、継続的かつ安定的な財源の確保が重要であります。
 先月公表された国のこども未来戦略方針においては、少子化のトレンドを反転させるべく、今後3年間を集中取り組み期間と位置づけ、年間3兆円半ばの予算を確保し、加速化プランを推進することとされており、これに伴う地方財源についても、今後検討が進められるものと承知しております。
 県としては、国の加速化プランの地方財源に係る検討状況を注視するとともに、引き続き、あらゆる選択肢から検討を行い、継続的かつ安定的な財源の確保に努めてまいります。
 次に、東北地方全体が連携した観光プロモーションについてでありますが、外国人観光客の誘客拡大を図っていくためには、本県のみならず、東北各地の四季折々の自然や景観、豊かな食、地域に根づく生活文化などの観光資源を一体的にプロモーションしていくことも効果的であります。
 このような考え方のもと、東北観光推進機構が中心となって、台湾や香港、中国、タイにおいて、東北6県や関係機関によるトップセールスのほか、国際旅行博への出展やPRイベント、さらにはウエブサイトやSNSによる情報発信などを行ってきたところです。
 また、今年度から新たに、東北地方における外国人観光客の訪問や消費の履歴に関するデータを多角的に分析する東北観光DMP―データ・マネジメント・プラットフォームを導入、活用することとしております。
 水際対策の終了により、東北観光推進機構による海外でのセールスも再開されており、今般、ニューヨークタイムズ紙で盛岡市が紹介されたことに加え、八幡平エリアが、国のインバウンド観光地づくりモデル地域の全国11カ所に東北地方で唯一選ばれており、東北地方が一体となったプロモーションや情報発信の中で、こうした要素を最大限に生かし、本県への外国人観光客の誘客拡大を図ってまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) まず、福祉総合相談センターの機能強化についてでありますが、福祉総合相談センターは、現在の施設を整備してから50年が経過し、老朽化が進行しているほか、一時保護所の面積や相談室の不足などの課題が生じております。
 こうした課題を解決するとともに、相談機能の充実を図っていくため、庁内関係者による移転整備に向けた検討を進めているところであります。
 福祉総合相談センターの具体的な機能や整備スケジュールについては調整中でありますが、社会情勢を踏まえ、複雑化、多様化する県民からの相談に柔軟かつ的確に対応することができる施設や体制の構築に向けて、できるだけ早期に計画を取りまとめることができるよう取り進めていく考えであります。
 次に、SNSを活用した自殺相談体制についてでありますが、本県では、国のSNS相談事業を活用して、NPO法人ライフリンクと令和3年度に連携協定を締結し、岩手県民を対象としたSNS相談を実施しており、令和3年度は168件、令和4年度は273件、令和5年度は5月までの2カ月間で65件と、相談件数は増加しているところであります。
 令和4年度実績では、女性が7割以上を占め、年代別では20歳未満が最も多く、若年女性を中心に活用されております。
 県では、SNS相談窓口の周知のため、これまで、県ホームページ及び自殺対策特設ウエブサイト、こころに寄り添いいのちを守るいわてへの掲載、SNS広告による相談窓口の告知、自殺リスクの高い方から優先的に相談を受け付けるための専用窓口カードの配布などを行ってきたところであります。
 SNS相談については、特に、若い世代にとって活用しやすい方法でありますことから、児童生徒向けに周知を行うほか、9月の自殺防止月間にあわせ、いわてグラフにQRコードを掲載するなど、SNS相談のさらなる周知に努めてまいります。
 次に、今後の精神障がい等への支援についてでありますが、メンタルヘルスの不調や精神疾患が誰もが経験し得る身近な疾患となっている中、精神障がい者とその御家族が、地域で安心して生活ができるよう、支援体制を構築していくことが重要と考えております。
 令和4年12月に改正されました精神保健福祉法では、市町村を中心とした相談支援体制を構築することとされ、精神保健福祉センター及び保健所が、市町村に対して技術的援助などを担うとされたところであります。
 現在、県では、令和6年度の改正法施行に向けて市町村担当者会議を開催しているほか、三つの障がい保健福祉圏域をモデルとして、関係機関、団体等による協議の場を設置しながら、地域の支援機関が重層的に参画、連携する、精神障がいにも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進しているところであります。
 こうしたモデル地域での取り組みなどを踏まえ、家族団体の御意見も伺いながら、市町村における相談支援体制の構築を支援し、身近な地域において相談を受け、適切な支援につなぐことができる体制を整備していく考えであります。
 次に、保育環境の整備と保育士の処遇改善についてでありますが、小林正信議員御紹介のマイ保育園制度については、石川県が市町村と連携して実施していると承知しておりますが、本年度、県内で2市が、国のモデル事業により、保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かり事業を予定しております。また、国のこども未来戦略方針では、就労要件を問わず柔軟に利用できる、新たなこども誰でも通園制度の創設が盛り込まれたところであります。
 県では、保育環境の整備等に向けて、これまで、市町村が保育補助者等を配置する場合の支援や保育士等の処遇改善加算への対応、保育士修学資金貸付や保育士・保育所支援センターによるマッチング支援などに取り組んできたところであります。
 国の戦略方針では、こども誰でも通園制度の具体的な設計に当たっては、基盤整備を進めつつ段階的に実施することとしているほか、保育士の配置基準改善とさらなる処遇改善が盛り込まれたことから、県としては、まずは国の動向を注視するとともに、県内のモデル事業の実施状況も検証しながら、保育環境の整備に努めてまいります。
 次に、がん検診受診率向上のための取り組みについてでありますが、国立がん研究センターによると、がん患者の約3人に1人は、20歳から64歳の就労可能年齢で罹患していると報告されているほか、国民生活基礎調査では、例えば、胃がん検診を受けた方の約50%が職域で検診を受けているとされていることから、職域におけるがん検診は、働き盛り世代の方に受診機会を提供するという意味で重要な役割を担っていると認識しております。
 県では、企業と連携した取り組みとして、岩手県がん検診受診率向上プロジェクト協定を18企業等と締結し、県民に対するがん検診受診勧奨リーフレットの共同配布を行うなど、官民一体となり、県民のがん検診への理解促進に努めてまいりました。
 また、企業等における健康経営を推進するため、連携協定を締結する4団体等と連携し、健康経営に取り組む事業所の認定や支援を行っていますが、こうした事業所の中には、職場でのがん検診や検診費用の補助などに取り組んでいる事業所もあることから、引き続き、企業と連携した職域におけるがん検診受診率向上に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、ドクターカーの導入についてでありますが、県内には、ドクターカーとして患者搬送に対応できる救急車型車両が、岩手医科大学の高度救命救急センター等に配備されており、他病院への転院搬送に活用されております。
 現場救急へのドクターカーの導入については、ドクターヘリが運航できない場合における代替手段として有効であると考えられる一方で、出動できる範囲が限られているほか、医療機関においては、ドクターカーに同乗する医師の確保や、医師が出動している間の救急患者の受け入れ体制の確保などに課題があると考えております。
 現在、厚生労働省においてドクターカーの運用事例等の調査を実施していることから、その調査結果を踏まえ、医療、消防等の関係者の意見を伺いながら検討を進めてまいります。
   〔復興防災部長佐藤隆浩君登壇〕
〇復興防災部長(佐藤隆浩君) まず、被災地における相談体制の強化についてでありますが、いわて被災者支援センターでは、弁護士やファイナンシャルプランナーなどの専門家や市町村及び社会福祉協議会等と連携し、恒久住宅へ移行後のローン返済や家賃負担など、経済面、生活設計の面で複雑かつ多様な課題を抱える被災者への伴走型の相談支援を行っています。
 また、発災後に、それまで居住していた市町村から県内外の市町村に避難した方々に対しては、帰郷に関する情報提供などの支援も行っています。
 今年度は、相談体制の充実を図るため、避難者に対する帰郷意思等の確認調査を県が直接行うこととし、いわて被災者支援センターの業務を相談支援により特化した内容に見直すとともに、相談支援に対応する職員の人件費を増額したところです。
 今後も、いわて被災者支援センターの特徴を十分に生かし、被災者一人一人に寄り添ったきめ細かな支援ができるよう、弁護士会等の関係機関や市町村、社会福祉協議会などと連携を図りながら、相談体制の強化に努めてまいります。
 次に、災害ケースマネジメントの推進についてでありますが、ことし3月に国から示された災害ケースマネジメント実施の手引きでは、災害ケースマネジメントの基本的な考え方や、その運用に係る全国の自治体の取り組み事例等が紹介されており、まずは、この手引きをもとに、県、市町村を初め、連携が想定される関係機関等が、災害ケースマネジメントへの理解を深める必要があると考えています。
 このため、今年度は、県と市町村、社会福祉協議会等の担当者を対象として、国の手引き作成に携わった有識者を講師に招き、災害ケースマネジメントに関する研修会の開催を予定しているところです。
 災害ケースマネジメントの体制整備に当たっては、県、市町村及び関係団体が、本県における取り組みの方向性を共有し、役割分担の明確化を図った上で、地域防災計画に位置づけていくことが必要と考えており、今後、関係機関や民間団体との連携体制や被災者一人一人が抱える課題を把握し、必要な支援につなげられる人材の育成など、さまざまな課題について検討を進めていくこととしています。
   〔県土整備部長加藤智博君登壇〕
〇県土整備部長(加藤智博君) ムービングハウスの活用についてですが、一定の居住性能が確保され、電気設備等が整っているコンテナ型の移動式の住宅であるムービングハウスは、移動や設置が容易であり、応急仮設住宅としての活用も有効であると考えております。
 県では、災害時における速やかな応急仮設住宅の供給のために、複数の民間団体と連携することは有効であると考え、現在、4団体と協定を締結するとともに、令和4年3月に改定しました岩手県住宅マスタープランにおいて、多様な供給主体との協定締結による迅速な整備体制の維持を位置づけているところでございます。
 ムービングハウスの活用につきましては、引き続き、コスト面や維持管理上の課題などを整理し、また、他県等の状況も踏まえながら、協定締結を視野に入れて検討を進めてまいります。
   〔環境生活部長福田直君登壇〕
〇環境生活部長(福田直君) 困難を抱える若者や女性への支援についてでありますが、困難を抱える女性からの相談については、金銭面に起因するものも少なくないところでありまして、御指摘いただいた女性デジタル人材の育成に向けたセミナーは、成長分野であるデジタル分野で女性の皆さんにスキルを身につけていただき、多様な働き方の実現と所得の向上を図っていただくことを目指すものであります。
 具体的には、ことしの夏ごろにセミナーを開催する方向で調整しておりますが、入り口部分として、ひとり親を含む幅広い皆さんに呼びかけるとともに、出口部分として、さらなるスキルアップや県内企業とのマッチングにつなげていきたいと考えております。
 また、困難を抱える若者からの相談に関しては、子ども・若者総合相談センターという法定の支援拠点がありまして、本県は、これを青少年なやみ相談室として設置しておりますが、東北6県でこのような形で設置しているのは本県を含む2県のみとなっております。
 青少年なやみ相談室への相談件数は近年増加傾向にあると伺っておりますので、今後、その相談内容の分析を強化することで、困難を抱える若者に対する支援を含め、本県の政策に反映することができないか検討を図ってまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、医療機器関連産業の振興についてでありますが、県では、医療機器関連産業を自動車、半導体に続くものづくり産業の第3の柱と位置づけ、令和3年3月に策定した岩手県医療機器等関連産業イノベーション創出戦略に基づき、さまざまな取り組みを進めているところでございます。
 この戦略の中心となるのがヘルステック・イノベーション・ハブを核としたイノベーションの創出であり、その中核を担う東北ライフサイエンス・インスツルメンツ・クラスター、いわゆるTOLICの会員企業群による最先端のライフサイエンス機器創出の取り組みが円滑、効果的に進められるよう、県としては、定期的な情報交換、競争的資金導入への協力や情報発信など、連携を密にしているところでございます。
 現在、ヘルステック・イノベーション・ハブでは、研究ラボが満室となり、複数のベンチャー企業が創出されるなど、着実に取り組みが進捗してきております。
 また、TOLICでは、新たにファンドの設立を構想しており、これが実現すれば、県内のスタートアップ支援の取り組みがさらに厚みを増していくと考えられます。
 今後も、戦略に掲げる目標の達成に向けて、TOLICには引き続き主導的な役割を担うことが期待されるところであり、新施設など拠点の拡大についても、TOLIC側のニーズをしっかり把握しながら、国、盛岡市などの関係自治体や関係機関等と検討を行い、本県医療機器関連産業のさらなる発展につなげてまいります。
 次に、医療機器関連企業との連携についてでありますが、TOLICカンファレンスで発表があったがん簡易検査サービス開発は、リキッドバイオプシーの技術を活用し、唾液に含まれるがん細胞に由来する遺伝子を解析するものであり、TOLIC会員企業各社が持つものづくり技術を組み合わせて、自動化技術により、高精度かつ低コストを可能にする検査システム構築を目指すものと聞いており、ヘルステック・イノベーション・ハブの入居企業を中心とした活発な企業連携による取り組みの一つであると受けとめております。
 また、この取り組みを構成する技術の一部は、産学官連携による研究開発を支援する、令和4年度いわて戦略的研究開発推進事業により県が支援してきたところであり、今般、その発展プロジェクトとして、国の開発支援事業に採択されたものでございます。
 この開発プロジェクトが、岩手発のイノベーションの先進的な事例として医療機器関連産業の着実な成長につながるよう、県としては、引き続き、TOLICや関係機関と連携し、効果的な情報発信を含めた支援の充実強化に努めてまいります。
 次に、IT産業と他産業との連携促進についてでありますが、県では、令和3年3月に策定した、いわてIT産業成長戦略に基づく基本戦略の一つに、産学行政の連携による取引拡大・新製品開発の推進を掲げており、その推進方策として、県内IT企業とものづくり企業等との取引の促進や地域課題の解決に向けたプロジェクト、実証事業等の創出に取り組むこととしております。
 これまで、その一環として、例えば県南地域の半導体や医療機器関連の誘致企業と県内IT企業との取引マッチング会の開催、県央地域の農家と県内IT企業の連携による、収穫したリンゴを搬送する自動走行ロボットの導入実験などの事業を進めてきたところでございます。
 人口減少社会が進展する中、生産性や付加価値の向上を図るため、デジタル技術の活用が強く期待されるところであり、中小企業や地域のさまざまな主体が、IT人材の確保を初めとしたさまざまな課題解決に取り組んでいくためにも、IT産業の活用が極めて重要でございます。
 県としては、引き続き、ニーズの高まるIT人材の確保、育成にも取り組みながら、他産業との連携促進も含めIT産業の振興に取り組んでまいります。
 次に、持続可能な観光地域づくりについてでありますが、観光産業をさらに発展させ、本県経済の持続的な発展に結びつけていくためには、市町村やDMO等を中心に、地域が主体となって観光地域づくりを進めていくことが重要であり、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、地域住民の生活環境との調和を図る持続可能な観光地域づくりを促進することを盛り込み、現在、取り組みを進めているところでございます。
 このような中、釜石市と地域DMOである株式会社釜石DMCにおける取り組み、具体的には、既存の漁師が、手のあく時間帯を利用して漁船を活用した観光船クルーズとして運航し、その運航中に、さらに海洋中のマイクロプラスチックを観察するといった取り組みが、世界持続可能観光協議会から認証を受けるなど、持続可能な観光地域づくりが進められております。
 こうした先進的な取り組みを全県に普及拡大するため、昨年度から、岩手県観光協会に観光地域づくり支援チームを設置して、観光地域づくりの専門人材を配置し、地域の観光戦略や新たな地域DMOの立ち上げ支援を行うなど、観光地域づくりを推進する体制の強化を図っているところでございます。
 さらに、現在策定を進めているみちのく岩手観光立県第4期基本計画において、新たに、持続可能な観光地域づくりを盛り込み、各地域における取り組みの支援を強化してまいります。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) まず、アウトリーチによる支援についてでありますが、不登校児童生徒の中には、学校内外の教育相談等につながっていない者が一定数おり、教育委員会、教育支援センター、関係団体等が連携して、アウトリーチ型支援を積極的に進めていくことが重要であると認識しております。
 このため、従前から教育事務所に配置していたアウトリーチ型支援の核となるスクールソーシャルワーカーについて、配置や勤務形態を見直し、本年度、新たに教育事務所管内を統括するエリア型スクールソーシャルワーカーを配置したことにより、県全体のスクールソーシャルワーカーの配置時間を令和4年度の7、560時間から、本年度は9、240時間に大幅にふやしたところであります。
 これにより、学校や家庭への訪問支援、関係機関との連携、指導主事、カウンセラーとの情報共有などを進め、支援が必要な児童生徒一人一人の状況に応じたきめ細かな支援に努めているところです。
 また、市町村の教育支援センターでは、支援員を児童生徒、保護者の要望に応じた場所に派遣しての教育相談、1人1台端末を活用しての授業配信等による学習支援などを行っております。
 県教育委員会では、本年度、市町村が行う教育支援センターの設置に要する経費に対する補助を新たに創設し、相談支援体制の強化を図っているところであります。
 次に、フリースクールに対する支援についてでありますが、不登校児童生徒への支援については、フリースクール等民間団体やNPO等においてもさまざまな取り組みがなされており、日ごろから情報交換や連携に努めていく必要があると考えております。
 これまで、各教育事務所に配置している指導主事や在学青少年指導員がフリースクールを訪問し、そこでの学習状況や活動内容について確認し、在籍校との情報共有に努めてきたところです。
 県教育委員会では、令和3年度にフリースクール等民間団体との情報共有の場として、岩手県不登校児童生徒支援連絡会議を設置し、これまで、不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保に向けて、不登校児童生徒への支援や学校との連携のあり方、ICTを活用した学習支援の取り組み等について議論を行ってきたところでございます。
 本年度からは、フリースクール等を含むさまざまな団体や機関の連携を進める国の教育支援体制整備事業費補助金を活用しまして、会議の開催方法を見直し、参加メンバーを拡充するなど、内容の充実を図ることとしております。
 フリースクール等民間団体への支援のあり方について、引き続き、国や他県の動向などさまざまな情報を収集しながら検討してまいります。
 次に、高校生の不登校対策についてでありますが、本県高等学校における不登校生徒数は、コロナ禍の影響もあり、ここ数年増加傾向にあります。
 県教育委員会では、不登校生徒一人一人への適切な援助や支援に向けて、これまで、県内全ての県立高校へのスクールカウンセラーの配置や総合教育センターへの相談窓口の設置などにより、不登校生徒本人や保護者、学校の教職員等が相談できる体制を整備してきたところです。
 さらに、今年度、新たに1人1台端末等を利用したこころの相談室を開設し、生徒が相談しやすい仕組みを構築したところであり、5月末現在で約30件の相談が寄せられております。
 また、不登校等の悩み相談に応じる子ども・若者総合相談センターとは、24時間子供SOSダイヤルに係る事業等を通じて連携を図ってきております。
 高校生の不登校対策については、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、社会的に自立することを目指していけるよう、引き続き、民間団体や関係機関と連携を図りながら支援してまいります。
〇2番(小林正信君) では、再質問させていただきます。相談支援の強化についてであります。
 知事は、この相談支援の強化をいわて県民エンパワー予算に盛り込んだと答弁されておりますけれども、例えば、いわて被災者支援センターについては、相談員の処遇改善等を行っていただいていることについては評価いたします。あとは、知事がおっしゃっていた重層的支援体制整備事業については、これを後方的に支援する県の予算については減額となっています。また、いわて青少年育成支援事業は、子ども・若者総合相談センター事業も含めてだと思うのですけれども、これも微減しています。また、若年無業者の自立支援を行う若者ステップアップ支援事業も微減しているということで、最もエンパワーされる必要がある方たちに対して、事業が強化されていない部分があるのではないかと、この事業だけを見てなのですけれども、感じております。
 知事としても、困難を抱える方たちを誰ひとり取り残さないというような思いでいわて県民エンパワー予算と名づけられたとは思うのですけれども、その思いが事業に十分に反映されていないのではないかという感じもしております。この事業の充実強化について、知事に御所見をお伺いしたいと思います。
 関連して、保健福祉部長にお伺いしたいのは、先ほど重層的支援体制整備事業、これは市町村の事業ですけれども、県内では、33市町村のうち、まだ四つの市町しか事業化していない。四つの市町しかと言うべきなのか、結構、四つまでやっていると言うのか、この数が実際に多いのか少ないのかわからないですけれども、私は、できるだけ多くの市町村で、断らない相談支援である重層的支援体制整備事業が実施されることが、知事のおっしゃる岩手県における相談支援の強化、生きにくさを生きやすさに変える取り組みだと思っております。
 この重層的支援体制整備事業について、県はどのように考えておられるのか、その重要性をどう捉えていらっしゃるのか、そのあたりのお考えをお伺いしたいということ。
 そして、子育て支援施策の財源確保については、本年の予算特別委員会において、郷右近浩議員から基金の創設について質疑があって、山田財政課総括課長から基金のメリット等が語られました。複数年度にわたる柔軟かつ大胆な政策ができる、また、その効果検証にも資するということで非常に有効な手段だということ、そして、基金を初めとするあらゆる財源確保策について、検証を尽くし、実現可能なものから実施に移すと答弁されております。
 このときは答弁を受けて、財政課としても、子育て基金の創設という点に前向きなのかと思った次第でありますけれども、県の財政課がこのように答弁したことについて、知事はどのようにお考えなのか。基金の創設についても、財源確保策の一つとして有効なのかどうか、そのあたりのことを知事はどうお考えなのかお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 相談支援事業の充実強化についてでありますが、先ほど御答弁申し上げたような相談支援を支える人材の質の向上、自殺相談体制の充実など継続的な取り組み、そして、福祉総合相談センターの機能強化と移転整備に向けた検討、精神障がいにも対応した地域包括ケアシステムの構築などの新たな課題への取り組みなど、今年度は、こうした取り組みを着実に推進していくことが重要と考えております。
 相談支援は、東日本大震災津波と復興への取り組み、新型コロナウイルス感染症対策の取り組みを通じて、県や市町村の力が高まってきていると感じておりまして、予算上の効率性にも工夫をしつつ、体制整備や必要な事業の実施に取り組んでまいります。
 そして、子育て支援、少子化対策における財源確保について、基金ということでありますけれども、基金のメリットは、年度を越えて使っていくことがやりやすくなるということかと思いますが、そういった会計技術上のメリットがあるような予算のつけ方というのは、工夫していかなければならないと思います。
 子育て支援、少子化対策の財源に関しては、今、国でも非常に議論があり、そのために負担をふやすのかということです。特に子育て世代に負担増があれば、かえって人口減少を促してしまうのではないかという意見もありますし、また、岩手県の場合、子育て世代以外の世代の負担が上がった場合、今、物価高騰やさまざまな困難に直面している消費の力が低下するわけでありまして、なかなか直ちに岩手県において、全国、他のところよりも負担を多くするというのは、かなりの検討を要するかと考えております。
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 重層的支援体制整備事業に対する県の所感について御質問をいただきました。
 小林正信議員から御紹介いただいた慶應大学の井出教授のソーシャルワークのコメントで、ソーシャルワークの本質は、困難を抱える当事者と家族が置かれている環境ごとに変えていくこと。そのために、地域の中で、一人一人が周りの人をケアし、困り事があれば、解決のためにさまざまな支援を導入すると言及されておられます。
 行政側のアプローチとして、まさに、この重層的相談支援事業というのが、こうしたソーシャルワークのアプローチになるのだろうと我々も認識しております。県の第2期アクションプランにおいて、市町村における本事業の取り組みの促進を盛り込みまして、実施市町村の拡大に向けた支援に取り組んでいくこととしております。
 現在、四つの市町で事業が実施されまして、一つの市において移行準備事業が進められているところでありますが、市町村における事業の実施等に当たりましては、既存の相談事業からの移行手続、地域における連携体制の構築や具体的な運用方法等のノウハウの不足に加えて、専門人材の育成、確保などが課題となっていると捉えております。
 県では、本事業が創設された令和3年度から都道府県後方支援事業を実施しているところでありますが、引き続き、市町村職員等を対象とした研修会の開催やアドバイザーの派遣によりまして、地域の実情を踏まえながら、市町村の取り組みの充実を図っていきたいと考えております。
〇2番(小林正信君) 御答弁ありがとうございます。知事、やはり全国トップレベルの子育て施策を提示されるということで、令和5年度当初予算では、まず、さまざまな事業が新たに盛り込まれたところですけれども、さらにこの事業をするには財源が必要になります。
 ここで打ちどめというつもりはないと思うのです。これからもさらなる取り組みを進めていかれることを期待しているわけですけれども、そのためのさまざまな財源の確保策、例えば、基金を創設して、そこにさまざまなところから寄附を募るとか、困っている人から取るのではなくて、企業とか富裕層から基金を集めるとか、そういう考え方もあると思います。それも含めて、ぜひとも、財源の部分に関しては取り組みを進めて、基金の創設も含めて考えていっていただきたいと思う次第です。
 いわて県民エンパワー予算ということで、予算特別委員会ではないので予算のことばかり話してもあれですけれども、このいわて県民エンパワー予算の中で一番力を入れていかなければならないのは、不登校対策なのではないかと思っております。最もエンパワーを必要としているのは、不登校児童生徒であると思うからであります。
 しかしながら、本会議でも質疑があったとおり、不登校対策が、いわて県民エンパワー予算と言う割には不十分なのではないか。
 昨日の千葉秀幸議員への教育長の答弁では、民間の力をかりながら対応していくという答弁もありました。しかしながら、私も先ほど取り上げましたけれども、民間のフリースクールについては、多くのフリースクールは、使命感を持って立ち上げても、資金面が大変で途中でやめていくフリースクールが大半だというようなお話も伺いました。教育長は民間の力をかりるとおっしゃいましたけれども、その力をかりる先の民間が、もう力をかせないぐらい大変な状況にあると思っております。
 そうしたことから、茨城県では、フリースクール連携推進事業を立ち上げて、一つの施設当たり年間上限100万円の補助で、児童生徒1人当たり、一月、上限1万5、000円の補助を行っています。私は、ここまでやればいわて県民エンパワーの予算だと言えると思います。
 また、教育支援センターの取り組みということでしたけれども、数をふやすことも大事ですが、今ある支援センターの充実も必要なのではないかと思います。盛岡市の教育支援センターは2カ所で20名という状況を聞きましたけれども、青山のセンターでは、常に通ってくる方が3名で、時々通う方も含めて10名前後ということで、本来であれば、教育支援センターがもっと機能を発揮していれば、児童生徒の居場所になっていれば、フリースクールは必要ないものと思います。
 私が把握しているのは盛岡市の教育支援センターの状況だけですけれども、こうした教育支援センターの充実をまず図ることが、数をふやす前にするべきことではないのかと思います。
 先ほどアウトリーチの話もありましたけれども、教育支援センターがアウトリーチするというような段階に至っていないことも、盛岡市ではあると伺っております。
 このアウトリーチということに関しては、佐藤博前教育長は、不登校支援対策としてアウトリーチに取り組むと方向性を示されて、これは本当に重要な視点だったと思います。児童生徒の訪問支援、アウトリーチは、スクールソーシャルワーカーと教職員が実施するものと思いますけれども、いわて県民エンパワー予算では、スクールソーシャルワーカーの増員、待遇改善―待遇改善は、先ほどおっしゃったように、少し図られたようでありますけれども、増員は図られていなかったのではないでしょうか。
 スクールソーシャルワーカーの皆さんは、児童生徒の、また、その家族に対してソーシャルワークを展開する。まさに、生きにくさを生きやすさに変えている取り組みをしていただいています。そうした部門の強化なくして、果たして本当にいわて県民エンパワー予算と言えるのかというところに疑問があります。
 星北高等学園の件でもそうですけれども、知事のおっしゃる、生きにくさを生きやすさに、またエンパワーという考え方、これが県教育委員会にしっかり伝わっていないのではないかと思ってしまうほど、事業も予算も不十分だと私は感じるところです。高校生に対するアウトリーチも、今の御答弁からはできていない状況だと思います。学校に通えていない高校生を今どうするのか。その高校生がそのままひきこもりになってしまって、そのまま、つまずいたまま生涯を送ってしまうことになっていいのか、本当に喫緊の課題だと思います。
 今、私が述べたこのフリースクールに対する支援、また、教育支援センターの充実、そして、高校生に対するアウトリーチができるくらいのスクールソーシャルワーカーの増員、充実について、教育長にお伺いしたいと思います。
〇教育長(佐藤一男君) ただいま、小林正信議員から不登校対策に対する課題をさまざま御指摘いただいたとおり、まさに課題はさまざまございます。その中で一つ一つ、教育事務所に配置しているスクールソーシャルワーカーのあり方を見直し、子供たちのそばにアウトリーチの形で、寄り添った形で訪問し、援助できるという形にまず近づけていくということで、今年度こういう取り組みをさせていただきましたし、従前から、フリースクールの方々も入っている会議に、国費を投入して、今後、まず、そこにフリースクールの代表の方が参加しやすいような仕組みをつくっている、そういうところも手をつけました。
 それから、教育委員会は学校設置者でありますので、まずは、学校現場で教員、教職員、ケースワーカー、ソーシャルワーカーが渾身の努力をして、何とか高校に通っていただきたいと。それが厳しければ、昨日も申し上げたとおり、民間の力もかりながらというのは、まさに連携しながら、そういう地域資源というか社会資源と連携しながら、最も望ましい形で、子供が学校に戻るだけが目標ではない、自立が目標であるということを実現するためには、教育委員会、学校だけではなかなか対応できないところがあるのは事実であろうと思います。そこは民間の方々の力もかりて、連携することはそのとおりでございますし、国あるいは他の自治体との連携、情報共有、先進自治体の情報をいただきながら、今後取り組んでいくことは必要であります。
 そういった意味では、一度に全部を解決するのはなかなか厳しい状況だとは思いますが、着実に取り組んでまいりたいと考えております。
〇総務部長(千葉幸也君) 子ども子育て支援策の財源の問題でありますが、まず前提として、子ども子育て支援施策は、国が全国一律で行う施策と地方がその実情に応じてきめ細かに行う地方単独事業が組み合わさることで効果的なものになるため、国が全国一律で行う施策については、その充実に伴い生じる地方負担の財源について、国において確実に確保するとともに、地方の実情に応じてきめ細かに行うサービスの提供や施設整備などについては、地方自治体の創意工夫が生かされるよう、地方が独自に活用できる財源の確保、充実を図ることが必要だと思いますので、これは、全国知事会などを通じて、国に要望していく必要があると考えております。
 基金造成につきましては、小林正信議員御紹介のとおり、メリットがあることはそのとおりでございます。例えばでありますが、決算剰余金でどれだけ積めるかといったような課題はあると思うのですけれども、有効な考え方の一つと捉えております。
 一方で、今年度の予算編成などにおきましては、今回もですが、毎年度の予算編成の中で、一定の事業が執行できるというか組めているということでありますので、これについては、もう少し時間をいただいて、研究してまいりたいと思っております。
 それで、財源の確保につきましては、例えば、電気事業会計から一般会計への繰り出しのほか、今回議論になりましたグリーン/ブルーボンドの発行、そういったものであらゆる歳入確保策を講じているところでありまして、今後とも、歳出の見直し、ふるさと納税の活用といったこともありますので、そうした財源確保策をしっかり行ってまいりたいと考えております。
〇2番(小林正信君) もう何点かお伺いさせていただきたいのは、自殺対策についてですけれども、SNSが効果を発揮するのは、若い世代に対するものだと思っております。専用の窓口カードを配布しているという御答弁でしたけれども、各学校に、1校20枚程度の配布となっていると伺っておりまして、これについては、困っている児童生徒に対して配っているのだろうと思うのですけれども、いつ児童生徒が困難な状況に陥るかわからない、また、児童生徒自身がゲートキーパーの役割を果たすことがあるかもしれないことを考えると、やはり全児童生徒に、SNSによる自殺対策をやっているよという専用窓口カードを配布するのは必要なのではないか。教育委員会とも連携してやっていただきたいと思うのですけれども、保健福祉部長に、この点をお伺いしたいと思います。
 また、若者、女性支援のための緊急タスクフォースについては、緊急ということで令和4年度のみの取り組みだったのですけれども、私は、いわて県民エンパワー予算においては、緊急というものがとれて、常設のタスクフォースになるのではないかと思っていたのです。タスクフォースの成果も、女性デジタル人材の育成に向けたセミナーが新たに実施されるということで、タスクフォースと言う割には、少し寂しいものもあるかと思っております。
 知事は、生きにくさを生きやすさに変えないと人口減少は解決しないと述べられましたが、このタスクフォースの取り組みは、人口減少対策や生きにくさを生きやすさに変える取り組みの最たるものだったのではないかと考えております。
 タスクフォースの取り組みを踏まえつつ、岩手県の若者の生きにくさを生きやすさに変える政策を進める部局横断の取り組みが、引き続き必要なのではないかと思うのですけれども、そのあたりを、改めて環境生活部長にお伺いしたいと思います。
 そして、最後に知事にお伺いしたいのですけれども、知事が常々おっしゃっている、生きにくさを生きやすさに変える、この考え方は非常にすばらしいものであって、これは目指すべきものなのだろうと思うのですけれども、先ほど私が話したように細かいところを見ていくと、せっかく知事が生きにくさを生きやすさにとおっしゃっているのに、それがいわて県民エンパワー予算に十分に反映されていないと感じております。
 先ほどの不登校対策についてもそうですけれども、生きにくさを抱える方々に、このいわて県民エンパワー予算がアプローチできていないのではないかと思っております。一体誰が生きにくさを抱えているのか、誰が支援を必要としているのか、それを十分に把握した上で、取り組みを進めていく必要があるのではないかと思います。
 今回のいわて県民エンパワー予算は、相談支援という点から見ると、今までの予算と大きな変化はないような気もしますし、生きにくさを生きやすさに変える予算になっていないのではないかと思います。
 知事には、生きにくさを生きやすさに変える事業になっているのか、そうした事業を行っているのかという事業の細かい部分に目配りを行っていただいて、ぜひとも、相談支援の充実もそうですし、事業の充実を行っていただきたいと思いますけれども、御所見をお伺いして、終わりたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 予算の額としては大きくふえていないとか、あるいは減額になっているとか、そういったところを御指摘いただいておりますけれども、生きにくさを生きやすさに変えていくエンパワー、特に、一人一人に寄り添いながらの相談支援、そこは、どのような行政サービスが現場で行われているかということで、そして、具体的に問題が解決されていっているかということでありますので、生きにくさに直面している県民が接する行政サービスの部分では、かなり向上が図られている予算と考えております。そういう意味で、いわて県民エンパワー予算とも呼んでいるわけであります。
 確かに、予算額の増加はマンパワーの増加にも直接つながるわけではありますが、限られた予算と限られたマンパワーの中で、相談の質を高め、そして、県民が受ける行政サービスの質を高めていくよう努めてまいりたいと思います。
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 自殺対策でのSNS相談については、先ほど御答弁申し上げたとおり、やはり若い方からの御相談が圧倒的に多いことも踏まえまして、児童生徒向けに周知を行っていきたいと考えております。
 小林正信議員から御紹介いただいた自殺相談の専用窓口カードについては、ニーズの高い方に直接、まずは最初に当たる、対応する警察や消防、保健所といった行政機関に、最初手厚く配布させていただいたところでございます。
 ことしは小学生にも追加で配布を予定しているのですが、これは、必要な枚数はもうどこにでも配りたいと思っておりますので、教育委員会と連携しながら、必要な方に行き渡るように活用を進めてまいりたいと考えております。
〇環境生活部長(福田直君) 若者支援に向けた取り組みについてお答えいたします。
 現在の若者世代は、これまでの世代とは異なる価値観を持つと言われておりまして、ことし1月に開催した岩手県青少年問題協議会においても、デジタルネーティブであったり、タイムパフォーマンス重視であったり、ジョブ型志向であったりという特徴があるのではないかという議論を行っております。
 このことは、本県が人口減少対策を進めていく上でも重要なことでありまして、このような特徴を持った若者が生きやすい、住みやすい、つまりは転出抑制にもつながる地域社会とは、どのようなものかを考えていく必要があると思っております。
 この点は、ことしのいわてネクストジェネレーションフォーラムのテーマに据えることも考えておりまして、既に今年度当初予算にも、若者にとって快適な職場づくりや若者の創業支援などに関する事業を盛り込んでおりますが、全庁的な岩手県人口問題対策本部会議やそのワーキンググループでも、議論を深めてまいります。
〇議長(五日市王君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   
   日程第2 議案第1号令和5年度岩手県一般会計補正予算(第2号)から日程第20 議案第19いわて男女共同参画プランの変更に関し議決を求めることについてまで
〇議長(五日市王君) この際、日程第2、議案第1号から日程第20、議案第19号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

前へ 次へ