令和5年6月定例会 第26回岩手県議会定例会会議録

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〇43番(伊藤勢至君) 希望いわての伊藤勢至です。
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。これは皆様御案内の平家物語の巻頭の一節であります。
 それから800年の時を経た今、我が日本国の指導者たちは、また、その轍を踏みそうな状況になっていることに気づいていないのではないかと思います。原因は大局観の欠如と、選挙での当選だけを目指していること、そして、マスコミ、メディアの萎縮にあると思っております。
 2022年7月8日、第26回参議院議員選挙の最終盤、安倍晋三元総理大臣は奈良市大和西大寺駅前で選挙応援中に銃撃を受けて暗殺されました。戦前の五・一五事件―昭和7年、二・二六事件―昭和11年以来の総理大臣経験者の暗殺は国内外に大きな衝撃を与えております。暗殺された総理大臣経験者は、本県選出の原敬、齋藤實を含めて7人目となりました。
 以下、元参議院議員の有田芳生氏の著書、統一教会とは何かから重要な箇所を紹介します。
 容疑者の山上徹也は現行犯逮捕され、事件の背景に統一教会、韓鶴子総裁の信者である母親の1億円を超える献金などにより家庭崩壊した問題が浮上しました。恨みを募らせた山上は、韓鶴子総裁を2019年ごろから狙ったというが、コロナ禍で韓国からの訪日が見込めないため、ターゲットを安倍晋三に変更したという。
 容疑者は統一教会を日本に広げたのが岸信介元総理であり、安倍晋太郎元外相を経て、安倍晋三に連なると理解していたようだ。
 空白の30年の項には、統一教会の国際合同結婚式の問題が記されております。
 献金ノルマの問題の項には、山上容疑者の発言として、私と統一教会の因縁は約30年前にさかのぼります。母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産、この経過とともに私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は、私の一生をゆがませ続けたと言っても過言ではありませんとあります。
 統一教会と安倍ファミリーとの関係の項には、こうあります。統一教会と岸元総理とは、教団が日本で活動を始めた初期の時期から関係を深めていった。
 岸元総理の娘婿が安倍晋太郎元外相だ。1974年5月7日に帝国ホテルで行われた希望の日晩餐会、約1、700人には、当時の福田赳夫大蔵大臣たち、衆参国会議員40人が参加。そこには安倍晋太郎議員、元農林政務次官の姿もあった。演壇に立った福田は、アジアに偉大なる指導者あらわる。その名は文鮮明と絶賛した。文鮮明は統一教会の教祖であり、韓鶴子はその妻であります。
 統一教会の教義については、次のように紹介されています。
 統一教会の教義は、極端な韓国中心主義、日本は韓国に仕える国であり、いずれ世界の言語は韓国語に統一されるなどと教えております。さらに、文鮮明教祖は、我々の言うことを聞く総理大臣をつくろう。そのために国会に入って勢力を広げよと信者たちに常々語っており、現実に国会議員の秘書に教会信者を多数送り込んでもおります。
 統一教会は安倍晋太郎議員を総理にすべく応援した。しかし、中曽根裁定によって竹下登総理が誕生する。この間、安倍晋三は、晋太郎の秘書をしながら、父親の後継者として政治の細部を見ていた。安倍晋三は霊感商法などで悪評のついた統一教会とは距離を置きたい一方で、総理になってからは強力な選挙応援団体としての統一教会を捨てがたかったのだ。
 さらに、政治とのかかわりで言えば、信者が霊感商法を行ってきた統一教会は、文鮮明の指示で悪評がついた名称を変更しようと試みる。統一教会から世界平和統一家庭連合への変更だ。教団は1997年に文化庁に申し入れるが、教義などが変わるわけではないので認められなかった。ところが、第2次安倍政権時の2015年、下村博文文科大臣のときに名称変更が行われる。
 名称を変更した統一教会は、信者が引き続き霊感商法を行い、会員に多額の献金を求めてきた。さらには、空白の30年の間にフロント組織を利用して、国会議員や地方議員に深く浸透してきた。それらの問題が安倍元総理暗殺事件で一挙に噴出した。
 自民党の幹事長は、社会的に問題が指摘される団体との関係は、厳正かつ慎重であるべきだと注意を促したいと7月26日の記者会見で語った。ところが、8月10日に成立した第2次岸田内閣では、これまで旧統一教会と関係していたことを理由に7人の閣僚を交代させたが、新たに7人に旧統一教会と関係のあることが明らかになった。何も変わっていないのだ。副大臣、政務官を含めると30人。
 同書220ページ、資料8によれば、旧統一教会側との接点を認めた国会議員は、自由民主党82人、いわゆる野党から20人など合計106人となっており、このほかには衆議院議長のように、報道によれば明らかに関係ありと思われる議員がうやむやになってしまっている例もあるので、実際はもっと多いと思われます。
 一方、2022年7月19日付のNHKホームページの特集記事で、安倍元首相銃撃事件について、政治学者の御厨貴東京大学名誉教授が、政治が貧困になると発言しています。御厨氏は、今回の凶行が脅かしているのは、戦後日本が築き上げてきた民主主義そのものだと指摘しています。暴力に頼ることなく、言論の力で物事を解決していく。この議会制民主主義に対し、政治家へのテロは、ある意味で問答無用と相手の命を断ち切ることによって議論そのものを全部葬り去ってしまう。これは絶対にやってはいけないこと。そののりを越えないでこれまでやってきたというところに僕らの社会の油断もあったのかもしれない。今回は一線を越えちゃったなと、これがショックだったですよ。ついにそういう時代が来たんだ。そのようなやりとりがあったようであります。
 私はこれまでの間、諸先輩から、県議会議員でなければ知ることのできないいろいろなことを教えていただきました。その一つが、マスコミ、報道に対して理解を深めるための手段の一つでありました。世の中で起こるどんなことでも、原因があって、経過があり、結果につながっている。そして、報道が書きたくても書けないこともある。そこを理解するためにも斜め読みの習慣を持つことが大切だということでした。
 このインタビューでの御厨氏の発言は、まさにしゃくし定規の域を出ないもので、インタビューの終わりまで加害者の背後関係、なぜということについて、旧統一教会という見方が欠落しています。御厨氏は物事の本質をずばっと突く発言が持ち味の方ですが、その特徴が全く失せているのであります。御厨氏であれば、憲政史上、その背後関係がこれまでのテロ事件とは全く異次元のものであると言及したはず。しかも相当の覚悟を持って。私はそのように思っております。あるいは、編集の際にカットされたか。あれ以来、御厨氏をテレビで見る機会はなくなりました。
 ロシアがウクライナに攻め入ってから1年4カ月が経過しました。岸田総理大臣はいち早くウクライナへの人道的かつ軍事ではない支援を打ち出し、現在もその姿勢は変わっていません。このとき、北方四島の問題に今後どう対応していくのか、一切説明がありませんでした。
   〔議長退席、副議長着席〕
 我が国の国策推進上、重大問題になるのは必至であります。
 平成14年10月、当時の小泉純一郎総理大臣が北朝鮮に拉致されていた5人を連れ帰りました。あわせて、日本政府から食料25万トン、医療品等約1、000万ドル相当の人道支援を行うことが報じられました。食糧が米であれば当時の金額で約500億円、拉致被害者1人当たり100億円であります。この問題について、拓殖大学の教授を招いて開催した県議会の勉強会において、私が、同胞を連れ帰ってくれたことはよかったが、1人当たりの単価をつけてしまったことは、今後においてあしき前例となってしまうのではないですかと伺ったところ、そのとおりですとの答えをいただきました。
 防衛費の増額が急遽浮上してきました。防衛を語るとき徴兵制の議論は避けられないものでありますが、我が国のリーダーの皆さんは、何とお考えなのでしょうか。
 それでは、現実に戻りまして、初めに、全国植樹祭の成果について伺います。
 去る6月4日、高田松原津波復興記念公園において、本県で2回目となります第73回全国植樹祭が、天皇、皇后両陛下御臨席のもと盛大に挙行されました。達増知事、警備に当たられた高水警察本部長を初め、関係者の皆様の御努力に敬意を表します。また、当日、天候にも恵まれましたことは、関係各位の熱意の賜物であり、感謝を申し上げるものであります。
 大会宣言として、一つ、私たちは、伐って、使って、植えて、育てるという森林資源の循環利用を推進し、持続可能な森林管理を進めていきます。
 一つ、私たちは、森林が持つ多様な機能とSDGsやカーボンニュートラルに果たす役割について社会全体で共有し、木と親しみ、森林を育む取り組みを進めます。
 一つ、私たちは、森林・林業や木材産業に関する技術の研さんに励み、みどり輝くふるさとの未来を切り拓きますと、森林県岩手から高らかに発したのであります。
 現在の地球上に命をいただいている一人として、今ほど地球環境ということが真剣に取り上げられている時代はなかったのではないかと思います。奇跡の一本松に思いをいたし、大会宣言をそれぞれが肝に銘じ、次なる世代に引き継いでいくことが今回の全国植樹祭の意義と思います。これまで大会の成功に向けて努力してこられた関係者を代表して、第73回全国植樹祭が本県に残したものについて、知事に伺います。
 次に、津波防災対策について伺います。
 奇跡の一本松が伝える東日本大震災津波から早いもので13年目に入りました。あのときの知事の初動は、みずからの動きとともに、岩手県という組織の動かし方を含め、水際立った立派さでありました。
 知事は発災後、直ちに自衛隊や緊急消防援助隊に派遣要請を行い、翌日には自衛隊のヘリコプターに乗り込んで、上空から被災地を視察されました。陸前高田市、大船渡市、釜石市、大槌町、山田町、そして宮古市まで、灰じんが煙り、大小の船が住宅の上に乗り上げ、自動車が川や海に浮かんでいる異常な状況を見てとられ、宮古市から急ぎ県庁へ戻られました。その日の岩手県災害対策本部員会議において、人命救助と物資搬送の手配に全力を尽くすという強い決意を本部員に示したと伺っております。
 そして、岩手県として第1に、約135億円の緊急補正予算を専決処分で措置しました。これは被災12市町村への水、食料品、医薬品購入の費用などでありました。第2に、400億円の債務負担行為を行いました。これは応急仮設住宅の手当てでありました。
 各市町村には災害公営住宅の用地の確保について伝え、完成は野田村が一番手でありました。これは地籍調査が100%完了していたからであります。
 そして、何よりもよかったことは、県として復興に向けた基本方針を被災市町村よりも早く出していただいたことであります。この基本方針は、後に策定される安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生を柱とする復興基本計画につながるものですが、これによって日々もろもろの対応にとらわれていた市町村も、それぞれが復興計画の策定に取り組むこととなりました。多くの皆様の御努力のおかげで、インフラの復旧整備については、閉伊川河口の水門工事と普金海岸の防潮堤工事を残すのみとなりました。
 なんとなくやれやれ感があったときですが、令和4年3月、県は、本県最大クラスの津波浸水想定を公表しました。それによりますと、日本海溝・千島海港沿いにおいて、マグニチュード9クラスの地震が発生した場合、本県沿岸には最短で14分、最大で29.5メートルの津波が押し寄せるということでありました。宮古湾も山田湾も震源に向かって開口していますので、想定とはいえ無視することはできません。東日本大震災津波では、約6、000人という大きな犠牲を出しており、何としても二度と繰り返してはなりません。県としての対応について伺います。
 次に、グリーン/ブルーボンドについて伺います。
 先日の記者会見において、知事から、県が7月にも用途を環境的課題の解決に限定した環境債、グリーン/ブルーボンドを発行する旨の発表がありました。特に、水に着目し、水に関する自然環境の保全や生態系の保護等に必要な資金を調達するブルーボンドの発行は、全国の地方公共団体で本県が初めてとのことであります。
 本県は東西約122キロメートル、南北約189キロメートル、その広さは北海道に次ぐ面積であり、広大な森林から北上川、馬淵川、閉伊川など、多数の河川が源を発し、海へと流れ下っています。沿岸部は宮古市から北が典型的な隆起海岸で海食崖や海岸段丘が発達する一方、南側は北上高地の裾野が沈水してできた、日本における代表的なリアス式海岸で、対照的な景観を見せています。また、すぐれた漁港や港湾にも恵まれ、沖合は世界有数の漁場となっておりますが、近年は海洋環境の変化などによって水揚げされる魚種が入れかわりつつあり、対応が求められているところであります。
 豊かな森、川、海は岩手県の宝であり、将来世代にしっかりと引き継いでいかなければなりません。グリーン/ブルーボンドという形で必要な資金を投資家から調達して環境的課題の解決に取り組むことは大変画期的なことと思いますが、今後の取り組みに向けた知事の決意を伺います。
 グリーン/ブルーボンドが目的とする川や海の生態系の保護に関する大きな課題として、サケの不漁があります。平成8年には約7万3、000トンの水揚げを記録しており、これは先人が努力を積み重ね、人工ふ化放流の技術を向上させてきた一つの成果でありますが、平成9年以降は長期低落傾向が続いており、なかなか解決策が見出せない状況となっています。
 日本海有数のサケの町である新潟県村上市では、かつてサケの漁獲高が激減した時代、伝統漁法を引き継ぎながらも世界初の自然ふ化増殖を成功させました。停滞した状況においては、殻を破るような新たな取り組みが必要であります。本県においても、サケの自然ふ化増殖の可能性について調査研究し、人工ふ化放流とあわせて推進していくべきと考えますが、県の見解を伺います。
 私は、初当選以来これまで、地球の3分の2を占める海、目の前にある暖流と寒流が混じり合う海を、水産漁業とは別の観点から利活用に取り組むべきであると提案してまいりました。例えば、太陽が光り輝き、エネルギーを放射する核融合反応は、燃料のもととなるリチウム等が海水中に豊富に存在するため、資源の枯渇の恐れがないこと、発電の過程において、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生しないことなどの特徴があり、海を活用した究極のエネルギーということができます。
 環境的課題を解決しながら、長期的に安定供給可能な次世代エネルギーの研究開発は、グリーン/ブルーボンドの趣旨に合い、三陸沿岸に新しい産業立地の可能性を開く取り組みと考えますが、どのようにお考えか伺います。
 次に、国際リニアコライダー―ILCについて伺います。
 私は1期目の3年目、平成9年1月、各方面に働きかけて、日本物理学会東北支部によるニュートリノ関係のシンポジウムを本県沿岸初の物理学会として宮古市で開催してもらいました。これは宮古市議会議員のころから御厚誼をいただいておりました、当時の県の科学技術振興室の室長補佐、後の一関市長に、三陸沿岸にこれまで学会というものが来たことが一度もない。若者に刺激を与える意味で、どんな学会でもいいのでぜひとも誘致していただきたいとお願いをして実現したものであります。
 2泊3日の日程で全国の著名大学から数十名の若手研究者、教授、准教授の先生方に御来宮いただきました。3日目の1月10日には、県立宮古短期大学の階段教室を会場として、宮古市と東北インテリジェント・コスモス構想推進県協議会が主催するニュートリノに関する公開講演会が開催され、学生たちを含めて100名近くの市民の皆様にお集まりいただきました。
 当日はスライド等を使って御講演をいただいた後、質疑応答ということになりました。宮古市の人たちは、もともと奥ゆかしい人たちでありますので、誰も手を挙げません。これはと思い私が手を挙げ、御講演ありがとうございました。正直、素直に申し上げまして、実際よくわかりませんでした。先生方の研究は、私たちにとってどのような役に立つのでしょうかと伺いましたところ、よく聞いてくれました。ごく簡単に申し上げますと、現在の私たちの生活の中で一番速い通信手段は電気ですが、地球を貫いてくる素粒子を発見し、これを活用できれば電気よりも速い通信手段を得ることができるかもしれないと思って研究していますとのお答えをいただき、会場から拍手もいただきました。その先生とは、現在の岩手県立大学の鈴木厚人学長であります。
 その後、2002年には天体物理学、特に宇宙ニュートリノ検出のパイオニア的貢献により、小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞されました。鈴木先生は2016年、ノーベル賞の前哨戦とも言われる基礎物理学ブレークスルー賞を受賞されています。
 こうした中で、2013年8月17日、ILC立地評価会議において、世界最先端の素粒子研究施設であるILCの候補地が北上山地に決定されました。これは国際プロジェクトが岩手県に来るということであり、開闢以来の大慶事であります。
 県議会でも何かやるべきと考え、関根敏伸議員を団長に、超党派の議員10名で、北上山地に決定する3カ月前にスイスのセルンに4泊5日で視察に行ってきました。地下100メートルまでエレベーターで一気におりて、研究施設の心臓部と言われる直径30メートル以上と思われるトンネルの断面全てに大小の電線が無数に詰まっているのを目の当たりにして、息をのむ思いでありました。
 ILCを推進する国際組織の責任者であるリン・エバンス氏の御説明によると、セルンの施設は直径約8キロメートルで距離が短く、円形でアールがかかっているので、エネルギーを大幅にロスしてしまう。正確なデータをとるためには地下100メートルで30キロメートルの直線の施設を求めており、立地場所が近々決まるであろう。それが実現すれば、世界中の素粒子物理学者、関係者、その家族を含めて2万5、000人規模の都市が誕生するであろう。スイスでは首都ジュネーブの中心部からセルンまで路面電車を通したということでありました。
 日本の歴史学者の中には、東北地方は中央に対して5連敗であると言う方もいます。アテルイ、安倍一族、藤原三代、九戸政実、そして戊辰戦争では賊軍の汚名まで着せられて敗れてしまったと。ならば、この岩手県へのILCの誘致を勝ち取り、1勝5敗にして、次の代で2勝目、3勝目を目指してほしいと思いましたが、残念ながら、いまだかなっておりません。
 しかし、ラグビーで言うところのゴールポスト真下でマイボールのスクラムをもらうところまで来たと思います。この際、関係者が改めてがっちりとスクラムを組み、スクラムトライを目指してワンプッシュが必要であり、その先頭は達増知事であると思いますが、知事の覚悟のほどを伺います。
 また、すぐそこのゴールラインまで確実にスクラムを押し込むために、今後どのような取り組みを進めていくのか伺います。
 私はこれまで長き28年、皆様に大変お世話になってまいりました。達増知事を初め当局の皆様、五日市王議長、小野共副議長を初め議員の皆様、御礼を申し上げるものであります。今後も切磋琢磨の上、岩手県の限りない発展のため御尽瘁を賜りますよう御期待を申し上げます。
 老兵は死なず、消えゆくのみ。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 伊藤勢至議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、全国植樹祭についてでありますが、本県において49年ぶりの開催となる第73回全国植樹祭は、緑をつなごう 輝くイーハトーブの森からを大会テーマに、商工、観光、教育、環境など、さまざまな分野から参画を得て実行委員会を組織し、岩手県の豊かで多様な森林のすばらしさや、歴史、文化などのさまざまな魅力、東日本大震災津波において御支援をいただいた皆様への感謝の気持ちと復興に取り組んでいる本県の姿を国内外へ発信したいと考え、準備を進めてきました。
 また、開催機運の醸成に向け、大会で植樹する苗木を県内の緑の少年団や、小中学生が育成する苗木のスクールステイ、全国植樹祭のシンボルである木製地球儀の全市町村での巡回展示、カウントダウンイベント等を行うとともに、県内各地での関連植樹活動を初め、多くの企業、団体による協賛やボランティア活動、マスコミ各社による報道など、オール岩手での取り組みが積極的に行われてきました。
 大会には天皇、皇后両陛下に御臨席いただくとともに、陸前高田市の主会場と、県内3カ所のサテライト会場を合わせ、国内外から7、000人を超える方々に参加いただき、緑の少年団や中学生、高校生、林業に携わる若者などが岩手県の豊かで多様な森林、林業のすばらしさや復興支援に対する感謝の気持ち、緑豊かな森林を引き継いでいく決意を力強く発信するなど、本県ならではの特色ある有意義な大会となりました。
 また、天皇陛下からは、震災を乗り越えて、全国植樹祭が開催されることは、まことに意義深いこと。森林は木材や林産物だけではなく、水源の涵養や国土の保全など、さまざまな恩恵をもたらす人類共通の財産であり、未来を担う若い世代に健全な森林を引き継いでいくことは、私たちが果たすべき大切な使命とのお言葉をいただいたところであります。
 復興支援への感謝のメッセージと共生社会のビジョンを示した全国植樹祭の開催が岩手の地から全国へ、さらに未来に向けて、豊かな森林を守り、育み、次の世代を担う子供たちへと確実につないでいく契機となるとともに、本県においても、県民総参加による森林づくりと、森林資源の循環利用等による森林の公益的機能の増進、林業の持続的で健全な発展に向けた取り組みをこれまで以上にしっかりと進めてまいります。
 次に、日本海溝・千島海港沿いの巨大地震への対応についてでありますが、昨年9月に公表した、岩手県地震・津波被害想定調査報告書では、本県最大クラスの地震、津波による被害想定に加え、減災対策の基本的方向性として、県民一人一人の避難意識の向上や、迅速な避難などの自助の取り組みにより、人的被害を大幅に減らすことができることを示すとともに、犠牲者をゼロにするため、地域や企業、行政などが一体となった共助、公助の取り組みの方向性を示したところであります。
 本報告書を踏まえ、県では、昨年11月に沿岸12市町村と、岩手県地震・津波減災対策検討会議を立ち上げ、自動車による避難や避難行動要支援者の避難のあり方など、市町村に共通する課題について検討を進めています。
 また、市町村が津波避難ビルの指定に必要な調査や、住民の防災意識の向上、自主防災組織の活性化などに速やかに取り組むことができるよう、今年度、地震・津波対策緊急強化事業費補助金を創設し、市町村の取り組みを支援しています。
 さらに、市町村津波避難計画策定の手引きとなる津波避難計画策定指針や、広域防災拠点配置計画、災害備蓄指針、災害時受援応援計画についても、順次見直しを行っているところであります。
 こうした取り組みなどにより、自助、共助、公助による防災体制づくりを強化するとともに、再び津波による犠牲者を出さないという強い決意を県民や市町村、関係機関としっかり共有し、あらゆる主体と連携しながら、何としても命を守るための地震、津波防災対策に全力で取り組んでまいります。
 次に、グリーン/ブルーボンドを活用した今後の取り組みに向けた決意についてでありますが、県ではこれまで、持続的な発展が可能な社会を構築するため、県民やNPО、事業者、市町村など県内のあらゆる主体と協働し、私たちの暮らしや社会のあり方を、地球環境への負荷がより少なくなるよう変革するための施策を展開してまいりました。
 この間、世界においても、2015年にいわゆるパリ協定が採択され、気候変動に関する国際的な枠組みが合意されました。
 豊かな森林や河川、長い海岸線と世界有数の漁場である三陸の海などの自然の恵みを有し、また、東日本大震災津波という自然の脅威を経験している本県にとって、気候変動対策は重要な課題であり、海と大地とともに生きることは岩手県にとって重要なテーマであります。
 こうした考えのもと、気候変動の緩和、適応に資するグリーンプロジェクトに加えて、海洋資源、生態系の保全等に資するブループロジェクトも含めたグリーン/ブルーボンドを全国の地方公共団体で初めて発行することといたしました。
 本県の豊かな森、川、海を将来世代にしっかりと引き継いでいくことは、今を生きる我々の責務であり、今後ともグリーン/ブルーボンドを効果的に活用し、持続可能な開発目標、SDGsの達成や温室効果ガス排出量の2050年度実質ゼロを目指した取り組みを進めてまいります。
 次に、ILC―国際リニアコライダー誘致に向けた覚悟についてでありますが、ILCは知事直轄のプロジェクトとして工藤巌知事の代から代々引き継がれ、本県の安定した花崗岩盤帯が人類の知的な挑戦に貢献できることや、地域への大きな産業経済効果が見込まれることなどから、関係する情報の収集、研究者とのネットワーク構築や取り組みの支援等が進められてきました。
 平成25年8月、研究者により、北上サイトが最適として国内候補地が北上山地に一本化され、これを契機として研究者の取り組みが円滑に推進されるよう地質調査への協力など支援を本格化させるとともに、東北地方全体の創造的復興などのさまざまな意義について、県内産業界が中心の岩手県リニアコライダー推進協議会や産学官が連携して誘致に取り組む東北ILC推進協議会、本県や東北地方の市長会などと広く共有し、オール岩手、オール東北として国や全国団体への要望活動等を展開してまいりました。
 ここ数年は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、人が集まる講演会等が制限されたものの、実現に向けた研究者の取り組み成果は着実に蓄積されており、関係者による政府への働きかけは令和5年度ILC関連予算の倍増に結びついています。
 ILCの実現は岩手県の使命であります。政府に一日も早い誘致の決断をしていただけるよう、県内外の推進団体等と一層の連携を図り、オール岩手、オール東北で機運醸成の取り組みや関係省庁への働きかけを展開するなど、その実現に向け全力で取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) サケの自然ふ化による増殖についてでありますが、河川遡上によるサケの自然ふ化は、環境変化への適応力を高めるとされる生物の遺伝的多様性の確保に有効と言われています。
 一方、国の研究機関によれば、自然ふ化は、人工ふ化に比べ、卵から稚魚まで成長する割合は3割程度にとどまるとされており、本県に回帰するサケが大幅に減少する中にあって、まずは人工ふ化によりサケ資源の早期回復を図ることが重要と考え、県では、近年のサケ不漁要因と考えられる海洋環境の変化に伴う春先の海水温の上昇による影響を極力少なくするよう、稚魚の放流時期をこれまでの5月から4月へと約1カ月早めるとともに、生き残る割合である生残率が高いとされる大型で遊泳力の高い強靭な稚魚の生産を推進するなど、サケ資源の早期回復に向けて取り組んでおります。
 議員から御提案のあった、サケの自然ふ化による増殖について、県内では、田野畑村の松前川や宮古市の音部川などで毎年サケの遡上があり、自然ふ化が行われていることが国の調査で確認されています。
 また、国において、自然ふ化を活用したサケの増殖手法の研究なども進められております。県としては、こうした調査結果や研究状況を参考に、生物の遺伝的多様性の確保に有効とされる自然ふ化を取り入れた増殖について、どのような取り組みが可能か検討してまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 海を活用した次世代エネルギーの開発についてでありますが、海洋が持つエネルギーを利用して新産業の創出や地域振興を目指すことは重要と考えており、県は令和3年度に、第2期岩手県海洋エネルギー関連産業創出ビジョンを策定し、海洋エネルギー関連産業の創出に向けて取り組みを進めております。
 リチウム等を活用する次世代エネルギーについては、現在、日本、EU、米国などによる国際熱核融合実験炉、ITER計画が進められており、また、国においては、令和5年4月にフュージョンエネルギー・イノベーション戦略を策定し、実用の加速化に取り組んでいると承知しております。
 県としては、こうした最先端の研究開発の動向も注視しながら、次世代エネルギー開発に携わる産学官のネットワークを強化するとともに、国のグリーン成長戦略において重点分野として位置づけられている洋上風力発電について、久慈市沖での事業化に向けた調整を図るなど、議員御指摘の趣旨も踏まえながら、三陸の海の持つ多様な資源やエネルギーの活用による新たな産業創出や地域振興に向けて取り組んでまいります。
   〔ILC推進局長箱石知義君登壇〕
〇ILC推進局長(箱石知義君) ILCの誘致に向けた今後の取り組みについてでありますが、ILCにつきましては、現在、ICFA―国際将来加速器委員会のもとに設置されているIDT・ILC国際推進チームにより、国際協働による研究開発や政府間協議に向けた取り組みが進められております。
 ILCの実現には、こうした研究者の取り組みを加速し、実現に向けての国際的な合意形成を図るとともに、ILCの有するイノベーションの創出と産業の発展、新たな地方創生と震災からの復興などの多様な意義や価値を広く発信し、国民的な機運を盛り上げ、政府の誘致判断につなげていくことが必要であると考えております。
 そのため、県内外の推進団体等の関係者が一体となって、講演会等の国民的な理解を深める取り組みを展開し、日本誘致に向けた大きな流れをつくり出しながら、国に対し、研究者の取り組みを促進する予算措置や、国家プロジェクトとしての誘致促進、そして、日本政府が国際的な議論を主導することなどについて、強く働きかけてまいります。
   
〇副議長(小野共君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時40分 休 憩
   
出席議員(45名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 小 林 正 信 君
3  番 千 葉   盛 君
4  番 千 葉 秀 幸 君
5  番 岩 城   元 君
6  番 上 原 康 樹 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 高 橋 穏 至 君
10  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時3分再開
〇副議長(小野共君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。佐々木茂光君。
   〔35番佐々木茂光君登壇〕(拍手)

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