令和5年6月定例会 第26回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(佐々木茂光君) 自由民主党の佐々木茂光でございます。令和5年6月定例会に当たり、登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げます。
 本日は、我が陸前高田市から、震災から12年ということもありまして、ともに苦労されてきた方々が傍聴に来ております。知事並びに関係部局長の皆様には、県民に向かい誠意ある御答弁を願い、そしてまた、期待するものであります。
 初めに、東日本大震災津波からの復興についてお伺いいたします。
 これまで県においては、令和元年度から、いわて県民計画(2019〜2028)の長期ビジョンで定めた復興の目指す姿を実現するため、第1期アクションプラン、復興推進プランに基づいた取り組みを進めてまいりました。
 ハード面では、被災した防潮堤など海岸保全施設の復旧、整備、復興道路や災害公営住宅などの整備、そして、ソフト面では、被災者の心のケアや新たなコミュニティー形成の支援などによる被災者の生活の再建、中小企業の事業再開に向けた支援などにより、なりわいの再生などの取り組みを進めてきたと認識しております。
 しかし、県が取りまとめた令和5年東日本大震災津波からの復興に関する意識調査の結果によると、震災からの復旧、復興の実感について、進んでいる、やや進んでいると回答した割合が県全体で61.1%と、昨年から増減がなかったのに比べ、沿岸部では67.0%と昨年から0.7ポイント減少し、過去10年で初めて減少に転じたところであります。
 知事はこの意識調査の結果をどのように分析し、今後、復興が進んでいると実感できる取り組みを進めていくお考えか、お伺いいたします。
 次に、東日本大震災津波の風化を防ぐ取り組みについてお伺いいたします。
 東日本大震災津波発災から12年を経過し、その後、全国各地で被害が大きい災害が多く発生しており、被災地以外では、東日本大震災津波の話を聞くことがめっきり少なくなってきたと感じております。
 また、岩手県の東日本大震災津波からの復興に関する意識調査の結果においても、東日本大震災津波の風化について、進んでいると感じる、やや進んでいると感じるとの回答の割合が県全体で52.3%に達し、そのように感じると回答した背景として、新聞やテレビなどの各種メディアでの東日本大震災津波の取り扱いと回答とした割合が高いとのことであります。
 残念なことではありますが、東日本大震災津波の発災からの時間の経過とともに、東日本大震災津波の風化や関心の低下が進んでしまっていると懸念しております。これまでも県は、東日本大震災津波の風化を防ぐ取り組みを進めてきたと考えますが、改めて、風化を防ぐ取り組みの意義とその内容について、知事にお伺いいたします。
 次に、被災地の人口減少対策についてお伺いいたします。
 これまで私の一般質問において、重ねて被災地の人口減少対策について取り上げてきたところであります。私は、地域や産業の振興も人がいてこそなし遂げられるものであり、被災地に人が戻ってくることができるようになって初めて復興が完遂したと言えるのではないかと考えております。
 県は、住宅や雇用の確保などの暮らしの再建、水産業、商工業などのなりわいの再生、三陸地域の多様な魅力を発信することにより、交流人口の拡大を図る取り組みなどを実施しているところであり、こうした取り組みは、引き続き推進していかなければならないと考えております。
 しかし、東日本大震災津波の発災から、時間の経過とともに人口の少子化、高齢化がより進み、人口の減少に歯どめがかからない状況から、何かもっととり得る方策がなかったのかと考えてしまいます。
 また、厚生労働省が今月公表した人口動態統計において、女性1人が生涯に産む子供の人数を示す合計特殊出生率が過去最低を記録するなど、ますます少子化が深刻になっております。
 人口減少対策は、復興の推進の成否にかかわるものと考えております。そこで、改めて被災地の人口減少対策について、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、第1次産業の振興についてでありますが、近年の海洋環境の変化などにより主要魚種の漁獲量が激減し、定置網漁業に依存している本県の漁業経営は非常に厳しい状況に置かれております。
 先日の自由民主党岩手県支部連合会政策懇談会において、関係者の皆様から、このような非常に厳しい状況を乗り越えるため、漁業者の収入安定対策や漁協の事業、経営基盤の強化に向けた対策などの御要望をいただいたところであります。
 このような非常に厳しい状況を一刻も早く乗り越えなければならないという考えから、漁業者、漁協の皆さんの声を踏まえ、第1次産業、水産業の振興について、何点か質問いたします。
 岩手県水産業リボーン宣言に基づく取り組みについてお伺いいたします。
 この岩手県水産業リボーン宣言は、昨年の3月に県と水産関係団体がサケなどの主要魚種の不漁に打ち勝ち、水産業を再生していくことの決意を表明したものと認識しております。
 昨年の私の一般質問でも、この宣言の取り組みについて質問しております。県は、サケ資源の回復に向けた大型で遊泳力の高い強靭な稚魚の生産、アワビなどの資源回復に向けた藻場の再生などの取り組みを通じて、活力ある浜で夢と希望を持って働くことのできる本県水産業の実現に向け、漁業関係団体などと一丸となって全力を挙げて取り組むと御答弁をいただいたところであります。
 しかし、県は岩手県水産業リボーン宣言をしたけれど、何か変化があったのかといった声が聞こえております。県が宣言を発した以上、新たな取り組みや、これまでより非常に注力した取り組みがあると考えますが、岩手県水産業リボーン宣言に基づく今年度の取り組みや、新たな取り組みなどについてお伺いいたします。
 次に、サケ、マス類の海面養殖についてお伺いいたします。
 近年の海洋環境の変化などにより秋サケの不漁が続く中、県は、秋サケの資源回復に向け、大型で遊泳力の高い強靭な稚魚を生産し、その稚魚の放流に取り組んでいるところであります。
 その一方、サケ、マス類の養殖に活路を見出し、県内各地でサケ、マス類の海面養殖に取り組んでおられ、生産量も増加し、ブランド化を目指した動きも見受けられる状況にあります。
 漁業者の安定的な漁業収入の確保に向けて、養殖サケ、マス類の生産量の拡大やブランド化の取り組みなど、サケ、マス類の海面養殖をさらに推進していくべきだと考えております。
 サケ、マス類の海面養殖について、これまでの取り組みの現状と今後の県の取り組みの方向性をお伺いいたします。
 次に、定置網漁業におけるクロマグロの漁獲についてお伺いいたします。
 県南部の一部の定置網漁業では、今年度、春先に体重100キログラムを超えるクロマグロが大漁だったものの、本県の漁獲可能量の関係で、その後は大型のクロマグロの水揚げができなかったという状況になっているとお聞きしました。
 定置網は、網に入った魚を簡単に逃がせる構造とはなっておらず、動きの俊敏なクロマグロ、特に体重100キログラムを超える大型魚の再放流は大変な労力が必要であると聞いております。
 さらに、定置網の主力であった秋サケが極端な不漁に陥っている現在、せっかく漁獲したクロマグロが水揚げできないことは、漁業経営や漁船乗組員の士気に影響するとの指摘もあります。
 そこで、今年度の本県におけるクロマグロの漁獲可能量と現在の漁獲量、それに対する県の対応についてお伺いいたします。
 次に、藻場の再生、造成についてお伺いいたします。
 藻場は、幼魚、稚魚の保護育成の場であり、魚類の生息する場で、そしてまた、餌場、魚の隠れ家としての豊かな生態系を育む機能を有するほか、光合成により海中に溶け込んだ二酸化炭素を吸収するなど、環境保全の場としても非常に重要な役割を有しているとされております。
 近年、冬季の海水温が例年より高めに推移したことでウニなどが活発に活動し、その時期に発芽した昆布、ワカメなどの大型海藻類の芽を食べ尽くしてしまうことにより、ワカメや昆布などの海藻が育たなくなり、アワビの成長やウニの身入りに悪影響を及ぼしております。
 そのため、県は、令和3年に策定した、岩手県藻場保全・創造方針に基づき、沿岸各地において、ウニ駆除やブロック投入などによる藻場造成を進めているところであります。
 今後、県や関係機関、団体による藻場の再生、造成の取り組みの成果が上がることを期待するものですが、これまでの取り組み状況と今後の進め方について、お伺いいたします。
 次に、漁港の有効活用についてお伺いいたします。
 東日本大震災津波から12年が経過し、沿岸地域では漁船、魚市場、養殖施設、漁港など生産基盤の復旧、復興は完了していますが、水産業を取り巻く環境は大変厳しい状況にあり、沿岸地域を元気づけるためにも、今後は漁港を利活用した地域振興を考えていくべきではないかと考えております。
 これまでも、漁港の有効活用について、たびたび伺ってまいりましたが、漁船の安全係留や水産物の効率的な陸揚げなどの本来の機能に加え、産直施設の立地や体験活動等の場に活用するなど、海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用して、所得機会の増大や交流人口の増加を図る取り組み、いわゆる海業の振興が必要ではないかと考えております。
 国では、令和4年3月に漁港漁場整備長期計画を策定し、三つの重点課題として、産地の生産力強化と輸出促進による水産業の成長産業化、海洋環境の変化や災害リスクへの対応力強化による持続可能な漁業生産の確保、海業振興と多様な人材の活躍による漁村の魅力と所得の向上に取り組むこととしております。
 さらに、ことし5月には全国的な水産物消費の大幅な減少や主要魚種の不漁などの重要な課題に対し、漁港における水産物の消費増進などのための取り組みの推進、漁港の機能強化の対応が必要として、漁港漁場整備法の一部を改正したところであります。
 国がこうした法改正などにより、制度面からも漁港の有効活用を後押ししようとしていることから、県においても、沿岸地域の水産振興や地域振興のため、さらなる漁港の有効活用を図るべきと考えますが、これまでの県の取り組みの状況と、今後どのように進めるお考えなのかお伺いいたします。
 次に、国土強靱化と道路ネットワークの整備についてお伺いいたします。
 近年、気候変動の影響により、気象災害は激甚化、頻発化する一方、高度成長期以降に整備されたインフラの老朽化が進んできております。令和3年度から始まった防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の取り組みも半ばに差しかかっておりますが、広大な県土を有する本県には、まだまだ改善をしなければならない危険な箇所が多くある状況であります。
 災害に強い道路ネットワークの構築のため、通行危険箇所や隘路の解消、橋梁の耐震補強、道路防災施設の整備や近年頻発している豪雨などへの備えのため、河川改修などの治水対策を着実に行い、その対策を急ぐ必要があります。
 その実現のためにも、国において公共事業費を十分に確保されなければならず、県による国への強い働きかけが今以上に必要であると考えます。
 国土強靱化のため、公共事業の計画的推進とその予算の確保について、県の方針をお伺いいたします。
 次に、国道343号笹ノ田地区の整備に向けた検討協議会についてお伺いいたします。
 県が令和3年6月に策定した岩手県新広域道路交通ビジョンにおいて、県は、高規格幹線道路などの整備は進んでいるものの、広大な面積を有する県土の横軸のネットワーク強化が課題となっており、特に、四つの重要港湾と内陸部を結ぶ道路の機能強化などが必要不可欠であるという認識を明らかにしております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 県土の横軸となる幹線道路については、港湾や工業団地等の物流拠点とのネットワークの整備などの観点から、早期の道路整備が必要と考えます。
 大船渡市と宮守インターチェンジ間の国道107号については、昨年度に白石峠区間改良整備が事業化されたことにより、早期の事業着工などを期待しております。
 また、国道343号については、ILC建設を見据え、新笹ノ田トンネル整備も含めた抜本改良の必要性を訴えてきたところですが、県はことし3月に、笹ノ田峠に新たなトンネルを整備する必要性などに関し、専門的見地から助言をいただく会議、国道343号笹ノ田地区技術課題等検討協議会を設置し、検討を始めたところであります。
 この協議会における検討について、その具体的な内容と検討に要する期間はどの程度を見込んでいるのかお伺いいたします。
 次に、港湾振興策についてお伺いいたします。
 港湾は県の産業の基盤となる重要な社会資本であり、港湾の利活用を促進することが県内の物流の活性化につながり、ひいては、沿岸地域の振興に資するものと考えております。
 県内港湾のコンテナ輸送は、新型コロナウイルス禍からの経済回復などを背景に復調してきているとのことですが、ことし3月に県が策定したいわて県民計画(2019〜2028)の第2期アクションプラン、政策推進プランで、港湾におけるコンテナ貨物取り扱い量が現状値である令和3年度の実績で8、709TEUですが、令和8年の目標が1万7、500TEUとされております。
 そこで、令和3年の現状値を見ると、釜石港が5、357TEU、大船渡港が3、352TEUとなっているところであります。令和8年の目標値の達成に向けて、大船渡港のコンテナ貨物量取り扱い量を拡大することが重要と考えます。この令和8年の目標値を達成するため、大船渡港のコンテナ貨物取り扱い量の拡大に向け、県はどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 また、目標の達成に向けては、港湾のさらなる機能強化が必要と考えますが、大船渡港を含めた県内港湾の整備の方向性について、あわせてお伺いいたします。
 次に、クルーズ船寄港の誘致についてお伺いいたします。
 港湾の利活用の促進という観点から、クルーズ船の寄港の拡大というのも欠かせないものと考えております。クルーズ船が寄港すると一度に多くの観光客が下船し、食事、観光などによる直接的な経済効果が見込めるほか、これらの観光消費に伴う関連産業の生産、雇用の発生などの波及効果が生まれることも期待されております。
 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行された後の観光地などへの人出の回復傾向を背景に、観光振興や地域振興の観点からも、県内港湾へのクルーズ船の寄港の拡大が期待されるところであります。
 県内港湾へのクルーズ船寄港の今年度の見込み回数とクルーズ船のさらなる寄港拡大への取り組みについてお伺いいたします。
 次に、鳥獣による農作物被害対策についてお伺いいたします。
 農山漁村地域において、鳥獣による農林水産業などに係る被害が深刻な状況にあり、国、県、市町村、地域が対策を講じられているところでありますが、なかなか被害がなくならない状況にあります。
 全国的な野生鳥獣による農作物被害は、農林水産省でまとめたところによると、令和3年度の被害額が155億円に上っているとのことであります。これでも平成22年度の被害額239億円に比べると、関係者の皆さんの対策により減少しているものの、被害額自体は非常に大きいものがあります。
 また、鳥獣による農作物被害は、農家の営農意欲の減退、耕作放棄、離農の増加、さらには森林の土壌流出などの被害ももたらすとされ、被害額として数字にあらわれる以上に農産漁村に深刻な影響を及ぼしていると考えられます。
 県内の野生鳥獣による農作物被害の状況と、県による被害対策の内容についてお伺いいたします。
 次に、捕獲鳥獣のジビエ利用の取り組みについてお伺いいたします。
 野生鳥獣による農作物被害対策として、野生鳥獣の捕獲などの強化が行われていると思いますが、捕獲された野生鳥獣をただ処分するのではなく、地域資源として捉え、野生鳥獣の肉、ジビエとして有効に活用する前向きな取り組みが全国的に広がっております。
 県内でも大槌町において、シカが多数生息し、農業被害も甚大であったことから、害獣として駆除、処分してきたものを町の財産として有効活用することにより、社会的、経済的価値を生み出し、ジビエを軸とした各種新規事業を生み出す取り組みが行われております。
 その一方、捕獲した鳥獣をジビエとして利用する場合、捕獲、処理加工、供給、消費の各段階において食用とすることが可能な方法での捕獲者による適切な衛生管理、良質なジビエの安定供給、ジビエ需要の開拓など、さまざまな課題を解決する必要があると聞いております。大槌町におけるジビエ利用の取り組みを県内各地に展開させる場合には、行政の支援が必要であると考えます。
 捕獲鳥獣のジビエ利用は、大槌町での取り組みにも見られるように、ジビエを軸とした各種新規事業を生み出す可能性を秘めており、県としても積極的に推進していくべきと考えますが、県の方向性についてお伺いいたします。
 次に、ツキノワグマ対策についてお伺いいたします。
 ツキノワグマについて、今年度は特に市街地や学校での出没が相次いでおり、人身被害もことし4月から6月25日までの間、12件13名に被害が発生している状況であります。
 今年度、県内でツキノワグマによる人身被害が多発していることから、県は5月26日、出没に対する注意喚起を強化し、被害の未然防止を図るため、県内全域にツキノワグマの出没に関する警報を発表し、山菜取りやレジャーなどで山林に入る際の対策、人里における対策、熊に遭遇した場合の対策を呼びかけていると承知しております。
 しかし、山林に立ち入った場合は、熊に遭遇するだけではなく、さきに述べたように、市街地や学校での出没が相次いでいる状況から、住民が市街地などで普通に生活している局面であっても熊と遭遇する危険性が高まっていると懸念しているところであります。
 ツキノワグマは個体群の維持に配慮が必要な動物とされていることは承知しておりますが、人身被害が多発し、かつ市街地での出没も頻発する状況の中では、より適切にツキノワグマの捕獲をしていく必要があると考えます。ツキノワグマについて、令和3年の捕獲上限数と実際の捕獲数、令和4年及び令和5年の捕獲上限数を踏まえた今後の取り組みの方向性をお伺いいたします。
 次に、ツキノワグマを人里に寄せつけない取り組みについてお伺いいたします。
 昨年の私の一般質問でこの課題を取り上げたところ、県は、里山を人と熊の緩衝帯として整備、維持することが重要で、やぶの刈り払いなどにより熊の移動経路の遮断や、廃棄野菜、生ごみなどの誘因物の管理などを進めることとしていると御答弁をいただいたところであります。
 また、このような取り組みは地域ぐるみで行うことが重要であり、盛岡市の猪去地区において、地域住民と大学、猟友会、行政が共同で被害防止対策に取り組んだ結果、被害が大幅に軽減しているという例も御紹介をいただいたところであります。
 御答弁いただきました取り組みを県内各地で実施していくことが、ツキノワグマの人里への出没件数の減少につながっていくものと考えますが、こうした取り組みを県内各地に展開していくため、県の取り組みについてお伺いいたします。
 以上で私の一般質問を終わらせていただきます。なお、答弁によっては再質問させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木茂光議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、東日本大震災津波からの復旧、復興の実感についてでありますが、令和5年の復興に関する意識調査では、復旧、復興が進んでいる、やや進んでいると感じる割合が、前回調査と比べ、県全体では横ばいであったものの、沿岸部では減少に転じたところであります。
 この要因について、沿岸部の居住者等を対象に実施している、いわて復興ウォッチャー調査結果を見ると、被災者の生活の回復及び災害に強い安全なまちづくりに対する実感は、調査開始以来上昇傾向にあるものの、地域経済の回復に対する実感は、令和2年1月の調査から下降傾向にあることから、主要魚種の不漁やコロナ禍、原油価格、物価高騰などが地域経済の回復に影を落としていることが大きく影響しているものと考えております。
 このため、県では、いわて県民計画(2019〜2028)第2期復興推進プランに基づき、不漁対策として、主要魚種の資源回復、増加している資源の有効利用、新たな漁業・養殖業の導入の三つを柱に、漁業者や関係団体と一体となった取り組みを進めるとともに、復興の取り組みにより新たに整備された交通ネットワーク等を生かした産業振興や魅力ある観光地づくり等を推進していくこととしております。
 また、原油価格、物価高騰問題に対しては、生活者及び事業者を支援するための対策を適時に講じているところであり、市町村による地域振興施策と連携を図りながら、あらゆる世代が希望を持って生き生きと暮らし、将来にわたって持続可能な新しい三陸の創造を目指してまいります。
 次に、東日本大震災津波の風化を防ぐ取り組みについてでありますが、震災の悲劇を二度と繰り返さないために、犠牲になられた方々の思いを引き継ぎ、よりよい地域を創造するとともに、東日本大震災津波を経験していない世代やこれから生まれてくる子供たちを初め、国内外に事実と教訓を風化させることなく伝承していくことが重要であります。
 このため、県では、いわて県民計画(2019〜2028)において、復興の柱に、未来のための伝承・発信を新たに掲げ、取り組みを進めてきたところであります。
 伝承、発信の中核を担う東日本大震災津波伝承館は、令和元年9月の開館以来、県内外の教育旅行を初め、国内外から約76万人の方々に来館いただき、第73回全国植樹祭に御臨席された天皇、皇后両陛下に御視察いただくなど、日本を代表する震災津波学習拠点として広く認識されているものと考えております。
 また、多様な主体が復興について幅広く学ぶ、いわて復興未来塾などのフォーラムの開催や、防災教育等で活用可能な約24万点の震災関連資料を閲覧できる、いわて震災津波アーカイブ・希望の整備などに取り組んできたところであります。
 さらに、東日本大震災津波を語り継ぐ日条例の趣旨にのっとり、毎年3月11日に追悼式を開催し、県民を挙げて犠牲になられた方々を慰霊、追悼し、復興に向けた決意を新たにしてきているところであります。
 今後とも、県内外で多様な主体に参画いただき、東日本大震災津波の事実と教訓を決して忘れることなく、次の世代に語り継ぐ取り組みを積極的に展開してまいります。
 次に、被災地の人口減少対策についてでありますが、県では、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、人口減少対策に最優先で取り組むこととし、自然減、社会減対策を進めるため、人口問題対策本部を中心に体制を強化するとともに、令和5年度当初予算は、結婚や子育てなどライフステージに応じた総合的な取り組みや、若年層の県内就職、U・Iターンの促進による移住、定住施策を強化する、いわて県民エンパワー予算として編成したところであります。
 特に、沿岸被災地においては、復興の推進が人口減少対策でもあるとの考えのもと、企業立地の推進や地域産業の振興、三陸ジオパークや三陸鉄道、豊かな食材、食文化など、三陸地域の多様な魅力の発信等に取り組んでまいりましたが、婚姻件数、出生数とも全県平均を上回る減少率で推移しており、他県や県内他圏域への転出も顕著となっております。また、主要魚種の不漁や物価高騰等の課題が復興の進展に影響を与えており、厳しい状況が続いていると認識しております。
 このような中、沿岸地域の地域おこし協力隊員などが漁業への従事を初め、空き家を活用したU・Iターンの促進や地域産品の開発に参画するなど、地域に根差し、地域の課題に積極的に取り組む動きも見られるところであります。
 今後もいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに掲げる自然減、社会減対策に係る施策を推進するとともに、ニューヨーク・タイムズ紙掲載を契機とした国内外の誘客の取り組みを強化し、さらなる交流人口の拡大を図るなど、沿岸地域の特性を踏まえながら、人口減少対策を強力に推し進めてまいります。
 次に、国土強靱化についてでありますが、近年、激甚化、頻発化する自然災害から県民の安全、安心な暮らしを守るためには、社会資本の整備や適切な維持管理が重要であります。県では、国の国土強靱化基本計画の策定を踏まえ、平成28年2月に速やかに岩手県国土強靱化地域計画を策定し、防災、減災対策や河川、道路等の老朽化対策について、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の予算を最大限活用して推進しているところであります。
 また、これまでに河道管理のための土砂撤去等に対する財政面の支援を要望し、平成30年度から国費による実施が可能となったことから、河道掘削や立ち木伐採などの取り組みも拡大し、推進しているところであります。
 これらの取り組みを着実に進めていくためには、国費の確保が重要であることから、今月14日に実施した令和6年度政府予算に関する提言、要望において、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策のさらなる推進を含む公共事業予算の安定的、持続的な確保などを要望したところであります。
 国土強靱化の推進は国の使命でもありますことから、その観点からも引き続き、国に対し、さまざまな機会を捉えて地域事情を説明し、施策を提案することなどにより公共事業予算の安定的、持続的な確保に努めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、岩手県水産業リボーン宣言の取り組みについてでありますが、県ではこれまで、関係機関、団体と連携しながら、主要魚種の資源回復として、大型で遊泳力の高い強靭なサケ稚魚の生産や、アワビ等の磯根資源の回復に向けた藻場の再生取り組んでおり、今年度は、サケ種卵の確保に向けた他道県への働きかけの強化や強靭なサケ稚魚の生産に向けた改良餌の活用などを引き続き進めていくこととしています。
 また、増加している資源の活用として、ウニ資源を有効活用する畜養、出荷に加え、今年度は、新たに、天候や海の状況に左右されず安定的なウニの出荷を可能とする畜養技術の開発や、水揚げ量が増加しているマイワシ、サワラ等の付加価値向上に向けた高鮮度での流通実証や販路開拓などを進めていくこととしています。
 新たな漁業、養殖業の導入については、サケ、マス類の海面養殖の生産拡大を進めており、今年度は、養殖用種苗の需要増加が見込まれるため、新たに内水面養殖業者と連携したギンザケやサクラマス種苗の安定的な供給に取り組むこととしています。
 今後とも、漁業者、関係団体と連携しながら、本県の水産業が持続的に発展していくよう取り組んでまいります。
 次に、サケ、マス類の海面養殖についてでありますが、県内では、久慈地区、宮古地区、大槌地区など6地区において、ギンザケやトラウトなどの海面養殖に取り組んでおり、今年度は昨年度の1.5倍となる約1、700トンの水揚げが計画されております。
 また、県産サーモンの消費拡大やブランド化に向け、県では、県内の量販店、飲食等と連携したPR活動や新メニュー、新商品の開発などを支援しております。
 県内では、これまで試験的に海面養殖に取り組んでいた2地区に加え、新たに2地区で本格的な海面養殖の実施を計画しており、来年度、県全体では8地区での本格的な海面養殖の実施が見込まれております。
 このため、県では、養殖規模の拡大に向けた国事業の導入を支援するとともに、内水面養殖業者と連携した種苗の安定供給や、サケふ化場の有効活用による種苗生産などを進めていくこととしており、県内でのサケ、マス類の海面養殖が拡大していくよう、関係者と一丸となって取り組んでまいります。
 次に、クロマグロについてでありますが、国際的な資源回復の取り組みが進められているクロマグロは、国際合意に基づいた国全体の漁獲可能量をもとに、毎年度、各都道府県に対し、30キログラム未満の小型魚と30キログラム以上の大型魚に分け、漁獲可能量が配分されています。
 今年度、本県には小型魚で約100トン、大型魚で約61トン配分され、現時点で小型魚で約30トン、大型魚で約52トンの水揚げ実績となっており、大型魚について、配分された漁獲可能量の超過が懸念されたことから、県では、定置網漁業者に対し水揚げの自粛を要請しているところです。
 漁業者からは、大型魚の漁獲を希望する声が寄せられており、県では、小型魚の配分量の一部を大型魚に振りかえするほか、国に対し、大型魚の漁獲可能量の追加配分や配分方法の見直しなどを要望しております。
 今後とも、クロマグロの漁獲可能量の拡大など、関係団体と連携しながら、漁業者が意欲を持って漁業経営ができるよう取り組んでまいります。
 次に、藻場の再生についてでありますが、県では、ウニの食害等により減少した藻場の再生に向け、ウニの間引きや昆布の養殖技術を応用した海中林の設置などのソフト対策と、ブロック等の投入による藻場造成のハード対策を一体的に進めております。
 これまで、陸前高田市など5地区において海中林の設置等を支援するとともに、大槌町など3地区において、地元漁業者と連携したウニの間引きやブロックの投入による藻場造成に取り組んできたところです。
 今年度は、こうした海中林の設置や藻場造成などに引き続き取り組むとともに、新たに大船渡市などでブロック等の投入に必要な海藻の生育状況や、ウニの生息密度、海底の状況など、漁場環境の調査を行うこととしています。
 また、藻場造成の取り組みをより一層拡大していくため、国に対し、必要となる事業予算を安定的かつ十分に措置するよう要望しており、引き続き、ソフト対策とハード対策を一体的に進めながら、藻場の再生が着実に図られるよう、関係機関、団体と一丸となって取り組んでまいります。
 次に、漁港の有効活用についてでありますが、漁港は漁業利用との調和を図りながら、漁港内の静穏水域の漁場利用や、漁港施設用地への直売所の設置など、漁村地域の活性化に向け、有効かつ積極的に活用していくことが重要です。
 県内では、漁港内の静穏水域を漁場利用するアワビの増殖やウニの畜養のほか、漁港施設を活用した観光船の発着所、児童、生徒等の漁業体験活動の場としての利用など、さまざまな取り組みが行われており、今年度は、大船渡市においてウニの畜養に向けた増殖場の整備や、陸前高田市において、大漁まつりなどの地域イベントへの活用が計画されています。
 今般、国において、漁港施設等活用事業制度の創設などが盛り込まれた漁港漁場整備法の改正が行われたところでありますが、制度の具体の内容を示す政令等は、今後定めるとされており、県としては、こうした政令等の情報把握に努めるとともに、今後とも、漁港を核とした新たな増養殖や交流人口の拡大に向けた取り組みが展開されるよう、関係機関、団体と連携を図りながら、地域ニーズに応じた漁港の有効活用を積極的に進めてまいります。
 次に、野生鳥獣による農作物被害についてでありますが、本県の野生鳥獣による農作物被害額は、最新の値となる令和3年度で約4億1、000万円となっており、被害額が最も多かった平成24年度に比べ約1億円減少しているものの、近年、横ばい傾向となっております。
 県では、農作物被害の防止に向け、有害鳥獣の捕獲とともに、侵入防止柵の設置や里山周辺の除間伐など、地域ぐるみの被害防止活動を推進しており、特に、有害鳥獣の捕獲については、被害の過半を占める二ホンジカで、令和3年度は捕獲目標の2万5、000頭を上回る約2万6、000頭の捕獲実績となっており、現在集計中の令和4年度にあっても、捕獲目標を上回る見込みとなっております。
 また、今年度は、これまで以上に市町村等と連携した対策を講じていくため、新たに鳥獣被害防止対策会議を設置したほか、侵入防止柵の効果的な設置などへの助言を行うアドバイザー派遣や、県内10地域に設置した現地対策チームによるICTを活用した効率的な捕獲技術の実証などを行うこととしています。
 さらに、県が主体となって、市町村を越えて移動する野生鳥獣の広域捕獲活動を実施することとしており、引き続き、関係機関、団体と連携しながら、野生鳥獣による被害が低減するよう取り組んでまいります。
 次に、ジビエ利用についてでありますが、捕獲した野生鳥獣を食肉として利用することは、野生鳥獣による被害防止対策のほか、地域資源の有効活用につながると考えております。
 本県の鹿肉等については、放射性物質の影響により、国から県全域を対象とした出荷制限を指示されており、鹿肉等の利用に当たっては、県が策定する放射性物質検査の実施等を定めた出荷・検査方針に基づき、鹿肉等の適切な管理や検査を行うなど、放射性物質の基準値を下回る野生鳥獣肉のみが流通する体制の整備が必要とされています。
 県ではこれまで、大槌町からの要望を受け、町内の食肉処理施設を対象とした出荷検査方針の策定や鹿肉の放射性物質検査、新たな食肉処理施設の整備を支援してきたほか、今年度は沿岸地域の市町村等を対象に、ジビエ利用の研修会や事業化に向けた相談会などを行っているところです。
 県としては、出荷制限の一部解除に向けた野生鳥獣肉の適切な管理、検査体制の整備や食肉処理施設の整備、販路開拓に活用可能な事業の導入を支援するなど、引き続き、ジビエ利用の取り組みを推進してまいります。
   
〇議長(五日市王君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
   〔県土整備部長加藤智博君登壇〕
〇県土整備部長(加藤智博君) まず、国道343号笹ノ田地区の整備に向けた検討協議会についてですが、協議会は、国道343号の最大の隘路となっている笹ノ田峠付近の現道課題について、専門的な見地から対策の必要性、効果及び技術的課題等の検討を行うことを目的として設置したものでございます。
 ことし3月に開催した第1回協議会では、県南地域と陸前高田市間の道路交通や笹ノ田地区の地形、地質の現状と課題を確認し、交通計画や法面防災の専門家から、航空レーザー測量データを活用した地形、地質状況の把握の有効性などの御意見をいただいたところであります。
 現在、いただいた御意見も踏まえて検討を進めているところでありますが、今後、対策の必要性や効果などについても検証する必要があり、現時点ではこれらに要する期間をお示しすることはできませんが、引き続き、着実に検討を進めてまいります。
 次に、港湾の整備と利活用についてですが、県では、大船渡港を初めとする県内港湾のコンテナ貨物取り扱い数の拡大を図るため、港湾所在市等と連携の上、首都圏に本社を有する荷主企業や物流事業者等に対し港湾利用を呼びかける、いわてポートフォーラムを実施するとともに、利用拡大に向けた企業訪問などを行ってきたところであります。
 現在、物流業界においては、2024年度からのトラックドライバーの時間外労働の上限規制などの働き方改革や、脱炭素化に向けた取り組みへの対応が求められているところであり、今後、陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトが進む可能性があるものと考えられています。
 県としましては、これを好機と捉え、目標の達成に向け、荷主企業等に対し、道路整備に伴う県内港湾へのアクセス性の向上をPRするとともに、CО2削減の社会的要請やトラックドライバーの時間外労働の上限規制などを踏まえた海上輸送への切りかえのメリット等についても説明し、県内港湾の利用促進について、積極的に働きかけてまいります。
 その上で、港湾のさらなる機能強化につきましては、港湾を取り巻く環境の変化や取り扱い貨物量の推移等を見極めながら、適切に対応してまいります。
 次に、クルーズ船寄港の誘致についてですが、今年度の県内港湾へのクルーズ船寄港計画については、現時点では、実績を含め外国船社は宮古港に7回、国内船社は大船渡港に2回、宮古港に1回の合計10回となっております。
 県ではこれまで、クルーズ船の寄港拡大に向け、港湾所在市等と連携し、クルーズ船社や旅行会社等に対し、道路整備に伴いオプショナルツアーの圏域が大幅に拡大したことや、県内の魅力ある観光資源等についてPRを行ってきたところであります。
 今年度においても、港湾所在市等と連携し、クルーズ船社等の訪問を初め、首都圏におけるいわてポートフォーラムの開催やクルーズ船社や旅行会社も参加するツーリズムEXPOジャパン2023への出展など、さまざまな機会を捉えポートセールスを行い、さらなる寄港拡大を図ってまいります。
   〔環境生活部長福田直君登壇〕
〇環境生活部長(福田直君) まず、ツキノワグマの捕獲状況等についてであります。
 本県のツキノワグマ管理計画では、個体数の削減に向けた方針を掲げており、令和3年度の捕獲実績は461頭となりましたが、捕獲上限数は、令和3年度の546頭から昨年度は626頭、今年度は686頭と段階的に引き上げており、令和2年度末に約3、700頭であった推定個体数を令和8年度末には約3、400頭にまで減少させることを目指しております。
 また、今年度はツキノワグマの出没に関する警報を出す中にあって、市や警察、猟友会などと合同での実動訓練も行ったところです。
 一方、捕獲作業は引き続き高齢の熟練狩猟者によって支えられている面もあるため、次世代の捕獲従事者の確保、育成に向けても取り組んでまいります。
 次に、地域ぐるみの被害防止対策についてでありますが、ツキノワグマの被害を軽減するためには、人と熊のすみ分けが重要であり、人の生活圏における熊の出没を抑制する対策の徹底が求められます。
 具体的には、集落内の見回りや電気柵の設置、草刈といった地域ぐるみの取り組みを行うことで熊の出没の抑制と被害の軽減につながるものであり、そのことは、御指摘の盛岡市猪去地区のケースでも実証されております。
 これまでも広域振興局単位でツキノワグマ地区管理協議会を設置して情報共有を図ってまいりましたが、今年度、これに加えて、県内10地区で農作物などの鳥獣被害の現地対策チームが新たに設置されましたので、そのような枠組みの中で、地域の実情に沿った被害防止対策が講じられるよう、関係機関等と連携を深めてまいります。
〇35番(佐々木茂光君) どうもありがとうございます。それでは、何点か再質問させていただきたいと思います。
 まず、復興にかかわる件なのですが、東日本大震災津波から、もう12年になったということから、心のケアを含めていわて被災者支援センターに寄せられる相談の内容が、大分復興から遠くなったという表現がいいか悪いかは別としても、少し変わりつつあるというお話も聞きます。今、復興ありきの中で取り組んできた中で、12年たって、ここに来て新型コロナウイルス感染症の影響が出たり、そして、続けて、ロシアのウクライナ侵攻の影響が出たりということで、これは岩手県のみ、被災地のみならず、世界中がそういう大きな大きな影響を受けているのが現状であると思います。
 当初の復興にかかわる支援のあり方を含めて、今、相談される方、支援員のあり方、相談する内容をどのように現場が受けとっているのかという所感をまず知事からお聞きしたいと思います。
 まさに状況は、当初の東日本大震災津波からの復興に向けた取り組みの状況と大分違ってきていると私は認識しております。そういった中で、復興をどのような形で完遂を目指すのかという、知事の今考えられている見解なり考え方なり、お示し願えればと思います。
 答弁をいただいた順番からお話ししますけれども、次は、先ほど港湾、それから道路を絡めた形で私は質問をしたのでありますけれども、内陸からの道路づけが、宮古市、釜石市となっています。気仙の地は最初からその計画の中に乗りはぐれてしまった経緯がありますが、今、大船渡港の荷の取り扱いの量が伸びているといろいろ聞いております。さらにそれを拡充していくための港湾の整備が必要であろうと思います。そしてまた、それにつなげたネットワーク、道路づけも急いでやっていかなければならないのではないかという捉え方の中で質問をさせていただきました。今後の大船渡港湾における道路づけの問題、それから、港湾の拡充の問題について、将来的にどのように考えられているのかというところをお聞きしたいと思います。
 それから、熊対策。鳥獣のひとくくりの中でなく、熊は以前より町の中に来る機会が多くなったのではないかと感じます。先ほど報告といいますか、13件の出没があって、そのうち12件が人がかかわっているような環境の中に来ているということを考えると、前にもお話をしているのですが、熊を押さえました、山の奥に連れていって放しましたということの繰り返しでは、一回そこに来た熊は、餌にしろ何にしろ必ず覚えていると思うのです。そういうところをしっかりと断たないと、減ることはなくふえる一方だと思うのです。追い払ってもそのとおり帰ってくるから、もう少し強力な体制で、追い払うのではなく、しっかりそこで落としてしまって、まさに熊の記憶をも断ち切るぐらいの勢いで抑え込まないと、これは減ることはないと思います。熊が人に本当に近づいてきているのが私は一番心配でありますので、その辺を含めた対策を考えなければならないのではないかと思うところであります。
 それからもう一点は、藻場の再生、マグロの話もそうなのですけれども、これはもっと早くやらないとだめです。何回も何回も、毎年機会があるたびにお話ししているのだけれども、私がなぜそれを急げ急げと言うのかというと、まず、主力のサケ、マスがとれなくなったということです。地先の人たちは、今までどおりでいえば、アワビとかウニ、そういう磯根の資源で暮らしているといいますか、かなりそちらに力をかけていたわけです。今、サケが来ない、何も来ない、来るのを待っているのではなく、地元に何か収入になるものがあるかということに力を入れて、その喜びというものを与えなければならないのではないかと思うのです。
 やるなら本気になってやっていかないと、今の浜の状況を見ると、待っている時間はないのです。全力でやる、全力でやると言って、みんな全力でやっているのだけれども、なかなかそれがかなわないということは、全力が全力でないのではないかと思ったりもするので、時を見極めながら、今、浜の人たちが何を望んでいるのかということを的確に捉えて、そういったところにももっと積極的に本気になってやっていただきたいと思います。
 藻場についての今後の取り組みを含めて、もう一度、農林水産部長からお話をいただきたいと思います。
 あとは、国土強靱化に向けた予算取りの件ですけれども、なぜ私はそういう話を持ってくるかというのは、一つは、復興、復興で来た公共的な事業が目減りして、目に見える形でどんどん減っていくわけです。それを押さえることが当然できない。そうなると、次なる仕事は何かというものをしっかり的確に捉えた中で、国土強靱化を図るためには、河川があったり、道路があったり、橋があったりといろんな分野が当然あるわけです。それらを全てこれから直さなければならない時期に来ているわけだから、役所のほうにすれば、予算がないからできないということが言葉の中に出てくるのだろうけれども、要するに、将来的なものをつかみながら、どんどん事業は事業として先行していただきたい。いつもそう思うのですが、予算は後からついてくるべと思います。当然、予算を取るための努力はしなければならないけれども、もっと先を見据えて、事業をどんどん出していくことが必要でないかということを思っています。予算の獲得を含めて、それらの取り組みがこれからどのように進められていくのかということをお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず、復興12年ということで、相談の内容についてでありますが、まず、数がそれほど減っていないということがあります。さまざまな課題がまだ被災の現場、復興の現場にはあるということであります。内容的には、複雑化、多様化していると認識しておりまして、それに対しては、法律やファイナンシャルプランナー、あるいは、精神も含めた医療などの専門家にきちんと必要に応じてつないでいくことが重要と考えております。
 完遂ということについてでありますけれども、県では、本格復興期間の最終年と記憶していますが、本格復興完遂年という呼び方をしたりしましたけれども、期間が3年なら3年と決まっている、また、そこで行われる計画や事業の内容が決まっている場合、それを完遂するということはあるのだと思うのですけれども、被災地、復興の場の状況によって、何が必要なのか、いつまで必要なのかということをあらかじめ確定できない場合、完遂というよりも、むしろ必要な限り、被災や復興に関し必要なことがあれば必要な事業を続けていくという感覚のほうが大事なのかと考えております。
 それから、国土強靱化に関して、予算の獲得ということを今おっしゃっておりますけれども、先ほども述べましたように、日本の国土を守り、そこに暮らす人たちの生活、産業、そして安全を守るというのは国の使命でもありますので、国土交通省、あるいは、財源をつかさどる財務省、それぞれが国の政策として、直接的には国会にきちんと賛成してもらえるような予算や事業を根拠を持って組み立てられるよう、岩手県内のさまざまな地域事情、必要性、そして、その事業の効果等々を情報提供し、そして、要望、提案をして、国民に認められ、国会で可決されるような事業を国ができるようにするということだと思っております。
〇県土整備部長(加藤智博君) ただいま御質問いただきました点についてでございますが、まず、港湾の整備に関してであります。新たな岸壁等の港湾整備につきましては、将来的な貨物の増加について確度が高まり、その必要性が見込まれる際に検討する必要があると考えております。このため、まずは港湾を取り巻く環境の変化を的確に把握するとともに、より一層の貨物集荷拡大に努めつつ、現在の港湾施設の利用状況、取り扱い貨物の推移や将来の見込み、企業立地の動向などを見極めながら、適切に対応してまいりたいと考えております。
 道路整備に関しましては、港湾と内陸部を結ぶ道路につきましては、産業振興を支えるため必要な整備を推進していくことは重要であると認識しております。このため、令和3年に策定した岩手県新広域道路交通計画では、内陸と重要港湾の連絡強化を図るための道路を高規格道路及び一般広域道路に、さらに、一般広域道路に重ねる形で二つの構想路線を位置づけております。
 特に、大船渡港に関連することと申しますと、気仙地区と宮守インターチェンジ間との連絡強化を図るため、国道107号の大船渡市─宮守インターチェンジ間を一般広域道路に、さらに、これに重ねる形で(仮称)大船渡内陸道路を構想路線に位置づけたところであります。この計画に基づき、現在、国道107号においては、昨年度、白石峠工区を事業化したところであります。
 今後も港湾のさらなる利用促進のため、交通隘路の解消や防災対策などに取り組みながら、物流の基盤となる道路整備に努めてまいりたいと思います。
〇環境生活部長(福田直君) 令和3年度に捕獲した461頭の熊のうち山に放ったのは8頭で、率にすると1から2%程度となっております。これは、里におりてきても餌に手をつけていないといった要件をクリアした場合に例外的に放たれるものでありますが、その場合でも、唐辛子スプレーなどでお仕置きをしてから山に返しますので、里におりてこなくする学習効果も期待できるものと考えております。いずれにしましても、捕獲した後に山に放つのはごく例外的なケースとなっております。
 また、先月26日に警報を出したこともあり、今週25日までの今年度の県内の人身被害の件数は12件で、これは前年同期と同じ件数になりますが、一昨年は一桁台であったことを踏まえると、非常に危機感を覚えております。
 実動訓練や現地対策チームなど新たな取り組みも始めておりますが、市町村や猟友会、警察など関係機関と連携を図りながら、さらなる対策を図ってまいります。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 藻場の再生について、早急に取り組むことというような御質問でございました。
 藻場の再生につきまして、県で過去に岩手県藻場保全・創造方針を作成しておりますが、平成27年、本県の藻場面積2、400ヘクタールが令和2年の調査の段階では1、400ヘクタールということで900ヘクタール減少していることが確認され、まずはこの900ヘクタールを回復させるといった目標を立てまして、今、そこに鋭意取り組んでいるところであります。
 現時点で、先ほど申し上げましたとおり、ウニの間引き、海中林の設置、ブロック投入、こういったようなソフト、ハードを組み合わせながら行っているところでございますが、こういった取り組みについては、一定程度の予算も必要なので、こういったことについて、まずは国に対して安定的な予算を十分に措置するようということも要望しておりますし、今後、こういった取り組みを行う地区が継続しながらさらにふえていくという形になりますので、そういった意味でもしっかり予算を取りながら対応していきたいと思います。
 また、さらに、先ほど申し上げました、海業の取り組みの中でも大槌町あたりでは、藻場の再生を組み入れましたスキューバダイビングといったような形で浜の再生も行うということもありますので、こういった地域独自の取り組みとも連携しながら、本県の藻場が早急に回復し、ウニやアワビ等が有効に活用できるように、積極的に取り組んでまいりたいと思います。
   〔「関連」と呼ぶ者あり〕
〇44番(岩崎友一君) 東日本大震災津波からの復興に関して、1点、関連で質問させていただきます。
 先ほど答弁でもありましたけれども、新聞を見ますと、県民意識調査の結果を受けて、知事はコメントで、コロナ禍に物価高騰が加わり、県民生活全般がかなり厳しい状況になり、復興に影を落としていると分析をして、県として必要な措置を年度途中にも随時行っていくと述べられております。先ほどの答弁からはこの辺が見えませんでしたので、改めて、知事が考える必要な措置とは何なのか、そしてまた、年度途中にも随時行っていくと述べておりますが、その措置を講じるのはいつなのか、御答弁をいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 先ほど、今年度に入ってからの4月の臨時会での補正予算でもということを答弁した記憶がありますが、いずれにせよ、4月28日に議決いただいた補正予算は、沿岸地域、被災や復興の現場の皆さんの直面する課題を経済的に乗り越えることにも大きく資するものでありますし、今定例会に提案している中小企業対策、そして、教育旅行支援につきましても、先ほど述べたような形での沿岸地域の振興につながる、目の前の課題を解決しながら、さらなる振興にもつながるものと考えております。
〇44番(岩崎友一君) やはりその程度では、なかなか実感というのは上がっていかないと思います。私も東日本大震災津波の関係では、経済復興という視点をしっかり持つことが大切で、3.11を軸とした大型イベント、2019年の三陸防災復興プロジェクトのような事業をやったらどうかという提案もさせていただきました。また、ことしの2月定例会の動議では、東日本大震災津波で複数ローンを抱えている事業者がたくさんいて、きょう、中平均議員の質問にもありましたけれども、コロナ禍が相まって、そこでまたゼロゼロ融資や、さまざまな融資を受けて、複数ローン、三重ローン等を抱えている事業者へさらなる支援を講じなければ、最終的に倒産してしまう。結果、地域の活力がどんどん失われていくということになってしまうという危機感を持っています。
 そういったことから、さまざまこの間、提案をしてまいりましたけれども、そういった部分が欠如しているというのが、私は達増県政16年の総括ではないか、復興に限らず、そうやってじり貧になっていっているのではないかと思います。そういった部分を、今の答弁からも聞きましたけれども、東日本大震災津波によって人口が著しく減少した被災地において、経済を立て直すというのは本当に難しい話だと思います。ですから、もっと本腰を入れてぜひやっていただきたいと思いますけれども、改めて知事の考えを聞いて、終わります。
〇知事(達増拓也君) 一人1復興と申しましょうか、沿岸地域で暮らしている方々、働いている方々がそれぞれ水産加工の分野で震災前よりも稼いでいらっしゃる方々、そして、震災前には沿岸地域にいなかったけれども、震災後、沿岸地域に入ってきて、そこでなりわいをきちんと構築し、働きながら生活をしている方々等々ありますので、そうした成功例を広げていければと思います。また、コロナ禍や物価高騰問題もあり、主要魚種の不漁問題もあって非常に困窮している、非常に危機的状況にある方々に関しては、先ほどから部長答弁などにもありましたような支援、そして、借金の問題も今、指摘されたかと思いますけれども、いわゆる融資、コロナ禍の3年間で特にお金をたくさん借りた人たちが、さあ、これから返すということがこれから起きるわけですけれども、これに関しては、きちんと状況を見ながら、特に今、それぞれの事業者と関係する団体と連携しながら、せっかくやる気と能力があるのに、お金の融通の手続的なことだけで破綻してしまうということがないように、県としてもきっちり対応してまいります。
   
〇議長(五日市王君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時23分 散 会

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