平成7年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(村田柴太君) 新進党の村田柴太であります。
 質問に入るに先立ちまして、今般の阪神大震災によりとうとい命を落とされました多くの方々の御冥福をお祈り申し上げたいと思います。また、被災に遭われました皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、1日も早い復興を切に願う次第でございます。
 この震災は、今、私たちに安全な県民生活の確保という観点から数多くの課題を提起いたしておりまして、これまで同僚議員から活発な質問がなされておるところであります。 私は、かつて市町村行政の責任者を務めたことがございます。雨が長引けば町内河川のはんらんが気遣われますし、風が強ければ火災が心配となり、雪解け時期には雪崩にも心いたすなど、日々の業務とは異なった大きな緊張感の連続でありました。
 県は、このたびの震災を契機として地域防災計画の見直しを表明いたしております。この際、私からも郷土岩手の防災対策や危機管理に関しまして、以下、お尋ねしてまいりたいと存じます。
 まず、自然災害の防止についてであります。
 戦後、本県はカザリン、アイオンの2度にわたる台風によって一関、県南地方を中心に、大水害がもたらされ、あわせて502名にも上る死者、353名の行方不明者を見たことを県民各位は忘れてはなりません。この災害を機に、北上川水系には5大ダムが建設され、河川の改修が実施されるなど、本県の治水は大きく前進したところであります。しかし、今なお、中小河川による局地的な災害の危機箇所は数多く存するものと思われますし、北上川の治水事業の集大成とも言うべき一関遊水地の完工にはまだまだ期間を要するものと聞いておるのであります。もちろん予算上の制約からこれらの事業の急速な進捗は困難であることは承知いたしておりますが、県は、災害防止上必要な中小河川、準用河川の改修を要する箇所あるいは急傾斜地崩壊の危険箇所を何カ所あるかと把握しておるのでしょうか。また、これらの整備の進捗状況、そして完全な改修整備にはどの程度の期間を要する見込みであるのか、お聞かせ願います。
 もし完全改修には長期間を要するのであれば、万が一に備えて、かつての大災害の事実を風化させることなく、日ごろからこれらの地区に生活する県民にその危険性を周知しておくべきと考えますが、その取り組みはいかがでしょうか。
 さらに、一関遊水地については、その事業期間をどう見込んでおられるのでしょうか。今後も国に強くその促進を要望していくべきと思いますが、いかがでしょう。
 次に、沿岸部の津波の対策についてであります。
 本県はこれまで記録に残る大津波だけでも、貞観11年、西暦869年以来8回にわたってその被害をこうむっております。とりわけ、明治29年の大津波は、三陸町吉浜で最大波高24メートルを記録し、県内だけで1万2、565人の死者を記録しており、改めてその恐ろしさに思いをいたすものであります。県におきましても、この津波対策の重要性にかんがみ、これまで多額の事業費を投入し、防潮堤などの整備に努めているものと承知いたしておりますが、特に海岸保全施設の整備の状況はどのようになっておるのでしょう。代表的な土木部所管のものについて、計画に対する整備の進捗状況と今後の整備の見通しについてお答え願いたいと存じます。
 また、河川高潮対策事業につきましても、同様にお答えを願いたいと思います。
 次に、石油貯蔵施設やガスタンクなどの危険物の危機管理についてであります。
 県内には、久慈の地下石油備蓄基地を初め、各種の施設があり、そしてその多くが都市に存在しておるのであります。これらはそれぞれ関係法令に基づいて安全策を講じた上で設置されているものと思うのでありますが、阪神大震災の状況をかんがみるに、果たして万全の防災対策がとられているのか、気にかかるところであります。特にも、これらの施設に被害が生じた場合の住民の避難、あるいは石油やガスが流出した場合の対策について、防災計画で具体的な措置が計画されているのかどうかをお知らせ願いたいと存じます。 また、平素からこれらの事業者との間で、防災計画や危機管理についての意思疎通を十分に図っておくことも重要であろうと思うのですが、御所見はいかがでございましょう。 次に、災害救助の体制についてであります。
 阪神大震災では、災害救助の前提となる情報の伝達、集約をめぐってさまざまな問題点が明らかにされてきました。私には、大きな混乱の中で、自衛隊、警察、市町村、それぞれの独自の情報ルートが、災害対策本部に円滑に一元化なされていないように見えるのであります。もちろん予想だにしない災害により困難であったことは想像できるのでありますが、しかし、被災状況が的確に把握できない限り、自衛隊や警察の効果的な救助活動は不可能でありますし、把握が困難であったからこそ今後の防災対策におきましてはその轍を踏まぬよう対策を構ずべき課題でもあります。例えば、災害発生時には、県の災害対策本部に、自衛隊、警察から幕僚を迎え、本部においてこれらの独自通信や市町村の通信を直接モニターしながら、刻々と変化する状況をリアルタイムで把握し、的確な対策が講じられるようなシステム、施設設備を整備すべきと思いますが、御所見はいかがでしょう。国では、情報収集、伝達の一元化に取り組むようでありますが、私は、役所のこと、やたらその方法など事細かに規程をつくり、かえって自繩自縛、上部機関への情報伝達を目的とする新たな業務がふえ、危急を要する際に煩瑣なものとならないかを懸念を覚えるものであります。
 次に、災害対策本部の要員確保に関連してであります。
 阪神大震災では、災害発生後に神戸市役所に登庁できた職員は3割にも満たなかったとも伝えられております。災害復旧活動に当たるべき職員の多くが被災し、また、交通手段も途絶えるなど、やむを得ないものがあるとは存じますが、本県でもこのような大震災が発生した場合は、県庁の対策本部で各部の職員がその業務に従事するわけであります。私は、県庁の置かれている地勢に注意しておく必要があると指摘したいのであります。すなわち、県庁の所在する内丸は、北上川、中津川の自然の堀に囲まれており、もしこれにかかる橋梁が破壊した場合は、多くの職員の登庁に困難を極めることとなるのではないでしょうか。消防防災課の職員録を見ても、橋を渡らず登庁できる職員は、ほんのわずかではありませんか。こうして見ますと、災害対策のかなめとなる県庁の要員の確保はもちろんのことでありますが、住民の避難、緊急物資の輸送、負傷者の搬送ルートの確保の上からも、この際改めて強度のチェックと必要な補強、被災した場合の応急復旧対策など、橋梁の地震対策をまずもって考えるべきではないでしょうか。土木部長のお考えをお聞かせ願いたいと存じます。
 次には、災害に強い県土の形成に関してお尋ねいたします。
 国では、阪神大震災を契機に、危機の際にも対応できるよう、余裕や重複をもって各種機能を整備するなど、災害に強い国土づくりを次期5全総の柱として検討すると伝えております。平成7年度は、本県3県総の実施計画の改定時期に当たっております。この改定に当たっては、今次災害を教訓として、地震、津波、風水害などの被災防止施策の充実や災害時に備えた避難、備蓄施設の整備や救援、復旧のシステムづくりを計画するなど、この広大で自然豊かな本県に、さらに安全性を付加し、すぐれた定住環境を整え、これを全国にアピールできるよう安全な県土づくりの視点を取り入れるべきと思いますが、県当局のお考えをお示し願います。
 次に、地方分権についてお尋ねいたします。
 国では、この9日、かねてから進めていた地方分権について、その推進法案の素案をまとめ、関係省庁との協議に入ると報じられております。この素案では、国と地方公共団体との役割分担を初めとする4項目の基本方針や、その推進のかぎを握る地方分権推進委員会の設置などが掲げられており、特に推進委員会には、昨年12月に閣議決定された地方分権推進大綱から一歩踏み込んで、監視権限を付与するものと伝えられております。
 ところで、最近、地方分権に関して、宮城県の現職課長が、地方分権事始めという、地方公務員の目で見たこの問題を解説した本を出版し、話題となっております。百年の大計を進めるためにという副題のついたこの本は、私も早速取り寄せ拝読いたしましたが、これまでの行革の流れを総括し、第3次行革審答申の問題点や地方自治の現状などについて解説しております。地方分権は住民主導型でいく必要があることを力説しております。この本では、私が町長時代に実感した、補助制度や許認可で大きく拘束されている市町村行政の実態は、中央官庁から反発を受けた例もあることから差し控えたそうであり、報告されてはおりません。今必要なのは、財界主導の効率性一辺倒の地方分権でもなければ、先に地方分権ありきという錦の御旗方式の地方分権でもなく、地域住民がみずからの考えと行動のもとに進める住民主導型の地方分権であろう、という主張には私は大きな共感を覚えているのであります。私は、かねがね地方分権は、住民に最も身近な市町村がその推進のかなめであり、このためには、市町村職員の事務能力の一層の向上はもとより、何よりも、行政の目的は役所が与えるものではなく、住民がみずからつくり上げていくという住民意識の向上が不可欠であると考えております。
 また、町長時代は、職員の意識改革やコミュニティーでの議論が深まるよう努めてまいったと自負もいたしております。しかし、私の経験では、このような理想の状況を待つには、行政側、住民側いずれもまだまだ時間を要するものと思われるのであります。
 また、地方分権には、これを何とか骨抜きにしてしまおうという中央官庁の抵抗も予想されるのであります。真の分権とは異なったものとなるおそれがあり得るでしょう。したがいまして、私は、地方分権は急ぐことなく、まず地方が実現可能な事項に絞り込みながら、住民と一体となって徐々に進めていくべきであると考えるのであります。
 地方分権に向けて大きく踏み出された今、まず知事にお伺いいたしますが、このたびの地方分権推進法案についてどのような御所感をお持ちでしょうか。
 また、地方分権をめぐる事務、財源などについては、本県ではどのような課題があるものとお考えでしょうか。
 次に、この問題に関連いたしまして総務部長に伺います。
 地方分権推進のかなめである市町村については、中央官庁では、その事務能力に不信を持っていると言われております。組織の小さな市町村は、小人数で増大する行政需要や多様な住民ニーズに対応するのが精いっぱいであり、今こそ、地方分権に向けた意識の改革や事務能力の一層の向上が望まれるわけですが、県はいかが対応していかれるお考えでしょう。
 真の地方分権のためには、先ほど述べましたように住民の行政、とりわけ自治に対する意識の涵養、啓発が重要と考えますが、県においてもこれに積極的に取り組むお考えはございませんでしょうか。
 次には、首都機能の移転に関してお尋ねいたします。
 この問題につきましては、国は、先ほど申し述べた災害に強い国土づくりの1つとして、東京の被災を想定し、地方に首都機能を有した都市を建設するか、既存都市を整備して一時的に首都を移転し、政治、行政機能をバックアップする、いわゆる重都構想を検討するやに伝えられておるのであります。
 また、東北産業活性化センターでは、先月、東京直下型地震の発生を想定して、同時災害を受ける可能性の小さな東北へ首都機能を移転するため、東北の複数の都市に恒久的な施設を建設する東北輪都構想を発表いたしました。同様の構想は、昭和62年に東北経済連合会が打ち出した、岩手県南、山形内陸を含む仙台周辺に必要な施設を建設する重都構想があるわけですが、首都機能の移転について検討し、来春にもその報告がなされるという国の国会等移転調査会の論議は、阪神大震災をきっかけとして、一層拍車がかかるものと考えられるのであります。県は、この際、関係県と連携して、これらの構想を整理一本化し、本県の果たすべき役割を明確に位置づけて、国に対してその実現を働きかけていくべきときではないかと存じますが、知事のお考えはいかがでございましょうか。
 次に、雑穀の消費の拡大についてお尋ねいたします。
 ソバ、ヒエ、アワなどのいわゆる雑穀につきましては、本県は気象条件がその生育に適し、古くから栽培され、生産量は全国有数となっております。雑穀につきましては、かつて心ない人々に日本のチベットと称された当時の貧困の時代の岩手のイメージが強く持たれているようでありますが、今、自然食品、健康食品への国民の関心が高まっている中で、若い母親たちからは、増加するアトピー、アレルギー等の子供たちの食品として、また、食品添加物の危険を避けた安全な食品として、さらには、高血圧を初め各種の薬効を持つことなどから、大きく注目されてきておるのであります。そして今、動物性脂肪や蛋白質が多過ぎ、相対的に野菜、穀類が少ないことから成人病の多発が問題となっている欧米型の食生活に対する強い反省がなされておるのであります。また、多くの識者の間では、ぜいたく志向、レトルト食品など食事の手抜き、あるいは過度の外食など、食生活の変化が子供たちの将来の健康に影響を及ぼすものと懸念されておりますし、現に歯医者さんからは、そしゃく力の低下やあごの変形などが指摘もされております。私は、少子化が進む中で、未来を担う子供たちの健康の確保の観点からも、この雑穀の普及奨励を図っていくべきと思うのであります。そこで、まず環境保健部長に伺いますが、雑穀の食生活上の効用はどのようなものと認識されておられるでしょう。また、もし健康に有益なものであれば、その摂取を環境保健部として普及奨励してはいかがでしょうか。御所見をお聞かせください。
 さて、雑穀につきましては、6月議会で三河喜美男議員から県北の畑作振興の観点からもお尋ねのあったところであります。農政部長から積極的な答弁があったところであります。この際、私からも農政部長にお伺いいたします。
 雑穀は、味わえばその深みを感ずるのでありますが、決して美味とは言いがたいのであります。そこで、雑穀の新たな調理方法などを研究し、この普及を通じて消費拡大を図ってみてはいかがでしょうか。
 次に、中山間地域の活性化についてお尋ねいたします。
 各位御承知のとおり、中山間地域の活性化につきましては、国、県を挙げてこれに取り組まれているところであります。私は、最も緊急の課題は、この地域は定住地としての地域の機能が低下してきていることにこそあると考えております。すなわち、この地域はその地勢からして、市場原理に耐え得るような農林業経営が困難となっており、また、就業機会も少なく、さらには、上下水道、交通手段などの生活環境が十分に整っていないことから人口の流出が続き、地域内の生産活動はもちろんのこと、自治会、消防団など、地域活動も低下するなど、地域そのものが崩壊していく危機に置かれているのであります。このため、この対策に当たっては、単に農林業の生産の振興策にとどまらず、生活環境整備全般や住民の結束が図られるようなシステムの構築など、各般にわたる総合的な施策こそ必要であると認識いたしておるのであります。県は、今般、中山間地域、いわゆる特定農山村に指定された47市町村のうち、当面、37市町村の農林業等活性化整備計画を承認したところでありますが、私は、中山間地域の活性化に向けた、この総合的な計画の実施に大きな期待を寄せるものであります。しかし、計画の実施に当たっては、これが総合的なものであるがゆえに、県の強力な支援がなければその効果を十分に上げることはできないのではないかと思うのであります。そこで、この際、県はどのような方途でこの活性化整備計画の実現を図っていこうとしておられるのか、その具体的な支援策についてお示しを願いたいと存じます。
 また、中山間地域の問題は、これまでともすればマイナスの面が強調され、その地域の持つプラス面の特性についての認識が不足しているのではないかと思われるのであります。例えば、地域の持つ森林を初めとする豊かな自然は、土砂崩壊などの災害防止の機能を有し、県土の保全に大きく役立っているのみならず、生産、生活に欠かせぬ都市の水資源の確保の役割を担っておりますし、また、多様な食料を都市住民に提供してもおります。長い間その地域の風土にはぐくまれ継承されてきた歴史や文化は、全国にも注目される伝統芸能、祭り、食事として結実しております。
 さらには、自然志向やアウトドア・ライフの高まりなど、余暇活動の多様化に対応した都市住民の休養空間としての期待も高まっております。これまでの中山間地域活性化対策は、農山村定住者を対象とした施策が中心でありますが、今後は、多くのプラス面を持つこの地域の役割について、都市住民の一層の理解を求めながら、相互にその公益的な機能が十分に確保され、保全されるよう論議を高めていく必要があるのではないかと存じます。県は、今こそこのような中山間地域の公益的機能や伝統文化などについて、都市住民と相互に理解し合える施策もあわせて展開すべきと思いますが、御所見はいかがでしょうか。
 工藤知事におかれましては、この4年間本当に御苦労さまでございました。健康さえ保持できれば、との御心情は察するに余りがありますが、知事が御就任に当たって教育立県を標榜されつつ、大英断を下された県立大学からは、やがては21世紀のふるさと岩手を担う有為な青年が続々と輩出され、知事がまかれた施策の数々は、だれもが住みよいふるさと岩手となって大きく花咲くものと確信するのであります。
 最後に、知事が策定された3県総には多彩な施策が輝いておるのであります。行政マンとして、また国会議員として豊富な経験をお持ちで、そして卓越した識見と日の当たらぬ場所にも心配りを忘れぬ優しさを兼ね備えた知事にとって、もしもう1期ありせばぜひ御自分の手で推進し、成し遂げたいとお考えの施策はいかなるものであろうか、御心境をお尋ね申し上げ、私の質問を終わりとさせていただきます。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事工藤巌君登壇〕
〇知事(工藤巌君) 村田柴太議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地方分権についてでございますが、政府が今国会で制定を目指している地方分権推進法案は、まだ閣議決定に至っておらないようでありますが、基本的には第24次地方制度調査会の答申に沿って、勧告や監視の権限を持った地方分権推進委員会の設置や、5年間の時限立法とするなどの方向で進められていると聞いております。仮にこのような方向で法案が取りまとめられれば、地方分権の推進を早期に、かつ実効あるものとする上で評価し得るものと存じております。
 また、地方分権をめぐる本県の課題についてでございますが、事務事業については、本県の特性を生かした地域づくりを自主的に進めることができるよう、できる限り権限移譲等を図っていただきたいと存じております。
 あわせて、その裏づけとなる財源につきましては、地方税源や地方交付税制度を充実強化しながら、税財源の豊かな大都市圏とそうでない地域で格差の生ずることのないように、十分な財政措置をとっていただかなければならない、これが極めて大切なことであると存じております。
 次に、首都機能の移転についてでございますが、私は、首都機能の移転は、本来、東京一極集中の是正など、望ましい国土構造の実現を図るという、そういう視点を中心に議論されるべきものと存じておりますが、このたびの阪神・淡路大震災の惨状を前に、地震など、大規模災害からの安全性が極めて重要な視点であると改めて認識させられたところであります。御案内のとおり、昨年策定したほくとう銀河プランにおきましては、東北地方が、第1に、地震、火山による災害が少ないこと、第2に、水の安定供給が確保されていること、第3に、多極分散型国土の形成という基本的国土政策に適合することなど、移転先としての条件を満たしておりますことから、この地方への首都機能の移転を戦略プロジェクトとして掲げ、その推進に取り組んでいるところでございます。今後におきましても、このプランを推進する中で、本県の果たすべき役割についても十分検討を加えながら、北海道、東北が一体となって国に対し要望するなど、積極的に取り組むことが肝要であると存じております。
 次に、もう1期知事を務めるならばというお尋ねでございますが、私は、御案内のとおり、知事就任とともに、平成3年から平成12年までの見通しに加えて、21世紀をひらく主要構想を含めた第三次岩手県総合発展計画を策定し、約4年の間、県勢の発展と県民福祉の向上に努めてまいりました。この間、経済社会情勢の変化等にも対応し、県民各位の御意見にも耳を傾けながら、自分なりに広域的な、長期的な視点に立って、そのときそのときにベストを尽くしてきたつもりでございます。これもひとえに議員各位の御支援、御協力のたまものと、心から感謝いたしております。したがって、もう1期ありせばとのお尋ねにつきましては、もう1期就任したその時点になって初めて明らかになるものなのでございまして、既に引退を表明いたしました私にとりましては、お答え申し上げることは適当ではないと存じますので、御了承をお願い申し上げます。
 そのほかのお尋ねにつきましては関係部長より御答弁申し上げますので、御了承ください。
   〔土木部長白波瀬正道君登壇〕
〇土木部長(白波瀬正道君) まず、洪水及び急傾斜地災害の防止についてでございます。
 本県の治水事業は、カスリン、アイオン台風による未曾有の大水害以来、ダムの建設や遊水地を初めとする河川の改修に全力が注がれてきたところでございます。その結果、5大ダムが完成し、一関遊水地につきましても21世紀初頭に向けて周囲堤を概成すべく建設が進められ、現在、一関市街地を直接防御する第1遊水地の堤防がアイオン台風の洪水位に対応する高さまで整備されるなど、洪水に強い県土の形成が着実に進められてきているところでございます。しかし、治水事業は長い年月と膨大な費用を要する事業でもあり、依然として河川の整備現況は、北上川の国管理区間についても堤防を要する全延長に対して堤防が完成している延長は約35%の状況でもあり、御質問がございました県管理の中小河川につきましては、改修の必要な延長約1、400キロメートルに対して整備の完了した延長は約510キロメートル、率にして約36%、市町村管理の準用河川につきましては、改修の必要な延長約1、300キロメートルに対して改修済みが約130キロメートル、率にいたしまして約10%の状況でございます。
 また、対策の必要な急傾斜地崩壊危険箇所は734カ所に及び、これに対して整備済みが127カ所の状況でございます。
 しかし、洪水や急傾斜地災害から県民の生命、財産を守ることは、豊かな県民生活の実現のための最も基本的な前提であり、本県の発展を期する上で欠くことのできない極めて重要な課題でありますことから、一関遊水地の整備促進をさらに国に対して強く訴えていくことはもちろん、本県の河川並びに急傾斜地崩壊防止施設の整備につきましても、緊急度に配慮しつつ、その早期整備に向けて積極的に取り組んでまいる考えでございます。
 また、現状において洪水や急傾斜地の災害を最小限に抑えるためには、これら施設の整備が基本であるとはいえ、整備とあわせて避難を含む、より充実した水防体制等の確立が欠かせぬものとなっております。そのため、河川においては、洪水時における水防活動の強化を図るため、雨量、河川水位を初めとする情報伝達の迅速化のための河川情報システムの整備を進めるとともに、水害時における住民の安全で的確な避難行動に役立つ情報でありますところの洪水ハザードマップを市町村が作成することに対して、国、県一体となって積極的に協力することとしております。
 また、急傾斜地崩壊危険箇所につきましても、関係住民への周知に努力しているところであります。
 次に、津波対策施設の整備についてでございます。
 本県における津波対策施設につきましては、昭和35年のチリ地震津波以降本格的な整備に着手し、鋭意事業の推進に努めてきたところであります。これらの施設整備は、海岸高潮対策事業並びに河口部における三陸高潮対策事業等の事業が一体となって抜本的な津波対策が図られる計画となっております。一般海岸におきましては、整備が必要な31海岸のうち19海岸が完了し、現在6海岸の施設整備を鋭意進めているところであります。また、河口部におきましては、整備の急がれる16河川のうち5河川が完了、現在6河川について事業の進捗を図っているところであります。津波対策事業は、治水事業と同様、津波災害から沿岸住民の生命、財産を守り、沿岸地域の発展を期する上からも欠くことのできない極めて重要な事業でありますことから、今後ともさらにその推進に努力を傾注し、津波対策施設の早期整備に努めてまいる考えであります。
 次に、橋梁の地震対策についてでございます。
 本県の道路橋につきましては、従来から関東大震災や新潟地震等の経験を生かしながら、定められましたところの国の技術基準にのっとり、関東大地震クラスのまれに起こる大きな地震に対しても落橋が生じないことを目標に整備を行ってきたところであります。さらに、既設の橋梁につきましても、震災点検を実施し、橋脚からけたが外れて落橋することがないよう、けたとけたとを連結する落橋防止措置などの地震対策を順次実施してきたところであります。
 また、本県における近年の地震による橋梁の被害といたしましては、昭和53年6月の宮城県沖地震におきまして、県南部を中心に十数橋で支承部等の局部的な被害が発生したものの、平成6年12月28日の三陸はるか沖地震におきましては被害がなかったところであります。しかし、今回の阪神・淡路大震災では、高架橋が倒壊するなど、未曾有の被害が発生したところであります。そのため、建設省におきましては、耐震工学、橋梁工学の専門家から成る道路橋震災対策委員会を設置し、今後この委員会において被災原因の徹底的な究明を図り、必要な措置を講じることとしておりますことから、県といたしましても、国の動向等を見きわめながら適切に対応してまいる考えであります。
 また、橋梁が被災したときの対策としては、速やかな点検、補修を行うこととしているところでありますが、落橋等の甚大な被害が発生した場合においても、必要に応じ、被災橋の早期の復旧を図るため、応急組み立て橋の確保など、可能な対策の検討を行う必要があると考えているところであります。
   〔総務部長上田紘士君登壇〕
〇総務部長(上田紘士君) まず、石油貯蔵施設やガスタンクなどの危険物等施設の危機管理についてでありますが、県の地域防災計画におきましては、危険物保安計画とガス施設災害応急対策計画を定めておりまして、例えば危険物については、危険物施設に災害が生じ、危険物が流出するなど、被害が拡大するおそれがある場合には、県は、危険物等施設責任者や市町村長が実施する応急対策を的確かつ円滑に行えるよう、市町村相互応援の指示や連絡等、被害の拡大防止に必要な措置をとることとなっております。また、あわせて、市町村長の側では、災害の状況によっては付近住民に対し避難の指示や勧告の措置をとることなどとされております。
 また、危険物等の施設における自主保安体制の確立は極めて重要なことでございまして、県は、岩手県危険物安全協会連合会や岩手県高圧ガス保安協会などに、有事の際に迅速かつ円滑な応急対策が行えるように、県や市町村が主催する総合的かつ実践的な防災訓練に御参加をいただくなど、事業者との連携に努めているところでありますが、県と事業者とが一体となって対策に当たるということは大変重要なことでございますので、今後とも一層の連携を図ってまいりたいと考えております。
 なお、久慈市にあります国家石油備蓄基地は、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域に指定されており、県は、知事を本部長とする石油コンビナート等防災本部を平成5年4月1日に設置いたしますとともに、岩手県地域防災計画とは別個に、総合的な防災対策のための岩手県石油コンビナート等防災計画を策定しておるところでございます。基地の完成後は、毎年、県や海上保安部を初め、防災関係機関と合同で防災訓練を実施するなど防災対策に努めておりますが、今後におきましても、県と基地の協力体制の確立に努めてまいりたいと考えております。
 次に、被災状況を把握する施設設備等の整備についてでありますが、本県におきましては、災害対策本部に自衛隊及び警察の職員も出席していただくように要請して、それぞれの機関との連絡を密にしながら情報収集等の業務を行うこととしているところでありまして、さらに防災行政情報通信ネットワークの整備により情報通信網が充実強化されたことから、災害情報を総合的に把握できる体制をとることといたしているところであります。 また、災害現場の情報を迅速、正確に把握することが重要であることから、画像伝送装置を積載した衛星通信車、ぎんが号と申しておりますが、これを配備いたしまして、これを活用して災害現場の情報を県災害対策本部や、あるいは国等へ伝送するなどによりまして的確な応急対策が講じられるよう努力しているところでございます。今後におきましても、市町村及び関係機関との連携をさらに強化するとともに、災害対策本部の円滑な運営や防災行政情報通信ネットワークの有効な運用を図るなど、情報の収集体制に万全を期してまいりたいと考えております。
 次に、地方分権の推進についてでございます。
 本県の市町村の事務処理能力あるいは企画力、こういったものは年々向上してきているものと私は認識しております。そうでありますけれども、今後の行政需要の動向、特に地方分権の時代にふさわしい自主的、自律的な行政運営を市町村が責任を持って的確に執行していくためには、従来以上にやっぱり人材の育成、確保ということが重要になってくるというふうに考えております。県におきましても、これまで市町村研修職員の受け入れや技術系職員の派遣、市町村職員に対する専門研修等を行っているところでありますけれども、今後これらの一層の充実を図りますとともに、各種研修機関の活用や職員の人事交流の拡充などにより、市町村における地方分権あるいは地方自治に対する意識の高揚、それと事務処理能力等の向上を図るなど、さまざまな面から支援をいたしてまいりたいと存じております。
 また、住民の意識啓発についてでございますが、しばらく前に県政モニターを対象に調査を行った結果によりますと、地方分権の推進に関心のあるという方が77・7%、それから地方分権を推進すべきかどうかについて、推進すべきであるとする人が97・1%に上っております。地方分権に対する関心や意識が大変高いということをあらわしているものと受けとめております。今後、地方分権の推進に関する法律の制定などの動向に適切に対処していくためには、より広範な取り組みを進めることが重要でありますので、御指摘のとおり、住民の行政あるいは自治に対する意識の啓発に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔企画調整部長小野寺英二君登壇〕
〇企画調整部長(小野寺英二君) 災害に強い県土の形成についてでありますが、本県におきましては、これまでも県土や県民の生命、財産を災害から守りますために、地域防災計画に基づき、総合的な防災対策が講じられているところであり、また、長期的な観点に立って、治山、治水、砂防、海岸保全など、災害の未然防止対策の促進に努めてまいったところであります。しかし、このたびの阪神・淡路大震災は想像を超える大きな被害をもたらしたところであり、改めて県土保全の重要性が強く認識させられたところであります。したがいまして、3県総後期実施計画の策定に際しましては、従来にも増して災害に強い安全な県土づくりに十分に留意して取り組んでまいりたい、このように考えております。
   〔環境保健部長松本義幸君登壇〕
〇環境保健部長(松本義幸君) 雑穀の食生活上の効用と摂取の普及奨励についてお答えいたします。
 まず、雑穀の食生活上の効用についてでございますが、ソバ、ヒエ、アワなどの雑穀には発育期に必要なアミノ酸などを多く含む良質なたんぱく質やビタミンB1、B2などを多く含んでおりまして、さらには糖尿病、動脈硬化、大腸がんの予防に有効と言われている食物繊維が多く含まれているなど、栄養学的にすぐれた食品であると認められておりますが、他方、ソバアレルギーの問題など、配慮すべき点もございますし、これらの食品の効能を認識した活用が望まれるところでございます。国が示した健康づくりのための食生活指針によれば、1日に30食品を目標として、主食、主菜、副菜をそろえて多様な食品をバランスよくとることとなっております。したがいまして、地元の特産品である雑穀につきましても、それのみに偏るということではなく、多様な食品の1つとして活用していくことにおいては有効であると認識しております。
 次に、雑穀の摂取の普及啓発についてでございますが、県におきましては、栄養摂取の指導事業の一環といたしまして、保健所や市町村の栄養士などによる栄養改善相談や指導、地域の主婦等を対象とした食と健康教室の開催などを実施しておりますが、これらの事業を通じて雑穀の栄養素や栄養価についての正しい情報を県民に提供していくというほか、地域の特産品である雑穀を活用した調理方法のアドバイスなど、他の食品ともあわせて健康的なバランスのとれた食生活の普及啓発に努めてまいる考えでございます。
   〔農政部長高橋洋介君登壇〕
〇農政部長(高橋洋介君) まず、雑穀の新たな調理方法と普及についてのお尋ねでございますが、本県におけるソバ、ヒエ、アワ等の、私どもでは新穀類と称しておりますが、これの食材としての利用につきましては、一時期かなり減少したわけでございますが、近年、健康、さらには安全志向の高まる中でその効用が見直され、季節の伝統的な行事と結びついた、いわゆる晴れ食として伝承されてきたものが広く再評価される、また、一方では、現代風な料理の工夫が行われるというようなことで、新穀類活用の熱意が盛り上がっておりまして、需要はますます増大してきているところでございます。県では、昨年の10月にこれらの新穀類の生産振興と日常の食生活への活用の促進を目的といたしまして、新需要穀類利用料理コンクールというものを実施をしたところでございますが、キビを使った牛乳がゆ、ヒエを使ったピザ、さらにはアマランサスクッキーなど、県内の14市町村から42点に及ぶ和風から洋風までバラエティーに富んだ料理の応募があったわけでございまして、新穀類に対します人気の高さとか、日常の食生活への利用も進んできているというようなことを改めて確信した次第でございます。今後につきましても、中山間地域の貴重な特産品としてその生産拡大を図りますとともに、生活改善グループや料理研究家等の先駆的な取り組みを核といたしまして、若い人も巻き込んだ伝承活動や地元の食堂への常時の提供、さらには都市住民との交流機会を通ずることなどによりまして消費拡大に努めてまいりたい、そのように考えております。
 次に、農林業等活性化基盤整備計画の支援施策についてでございますが、この計画は、中山間地域の活性化を図るために、地域住民の意向を踏まえまして、農林業のみならず、商工、観光も一体となった地域活性化のための計画として策定されたものでございます。今後の計画の具体化に当たりましては、地方振興局段階に関係部署が一体となって実践活動を支援する体制を整備いたしますとともに、市町村段階におきましても、行政を初め、関係団体や業界、住民各層から成りますむらおこし実践チームのような推進体制づくりを指導してまいりたい。そういうことによりまして市町村段階での内発的、創造的な取り組みを誘導していきたい、そのように考えております。
 また、このような実践活動に対しましては、国がガット関連対策の一環として打ち出しました農山漁村ふるさと事業を初めといたしまして、今年度から実施しております中山間地域活性化推進事業、さらには、活力ある村づくり促進対策事業を効果的に配置いたしますほか、生産や生活基盤整備関連事業も優先採択をするなどいたしまして、関係機関、団体が一体となってソフト、ハードの両面から積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、中山間地域の公益的機能をどう都市の住民の方々に理解をさせていくかということでございますが、中山間地域が果たしております機能、役割について広く都市住民の理解を深めることは、農業、農村の振興を図る上からも極めて大切であり、このことは議員まさに御指摘のとおりであると存じております。もとより、このような公益的機能の理解の醸成につきましては、児童生徒に対する教育を初めといたしまして、都市、農村交流活動なり、また農業・農村を考えるフォーラムなど、幅広い活動を積み重ねていくことが肝要であると、そのように存じておるわけでございます。
 このような考えのもとに、県や市町村におきましては、これまでも学校への農業副読本の配布なり農業祭の開催、また、地域の特産品と結びついたふるさとオーナー制度、産直や宅配、農作業体験ツアー等の多彩な活動を行ってきたところでございます。今後とも農業、農村が果たしている自然環境の保全、水資源の涵養、美しい景観の形成など、多面的、公益的な機能、役割につきまして都市住民の理解が得られるよう、国の事業、制度も積極的に活用しながら幅広い活動を展開していく考えであります。
〇議長(佐々木俊夫君) 次に、三河喜美男君。
   〔6番三河喜美男君登壇〕(拍手)

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