平成7年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇29番(千葉英三君) 自由民主党の千葉英三でございます。
 私は、党を代表して、県政の諸課題について順次質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。
 質問に入ります前に、多数の死傷者が出るなど、関東大震災以来の未曾有の災害となった兵庫県南部地震に際して、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災されました方々に対して衷心からお見舞い申し上げ、また、一刻も早い復興を願うものであります。
 さて、我が国は、冷戦構造の終結によってイデオロギーの対立が終わり、平和と安定のために国際的な協力が求められる中で、国際社会の一員として、貧困に悩む途上国や市場経済への移行努力を続ける諸国への支援など、これまで以上に大きな責任と役割を果たすことが求められており、また、本格的な高齢・少子社会への対応、生活関連社会資本の整備、地域の振興など、国民生活の質的向上が今後の大きな政策課題となっております。このように、我が国を取り巻く環境が国際的にも、内政的にも激動の中にある中で、地方公共団体は地域の総合的行政主体として、豊かで活力のある地域社会を自主的に構築するため、山積する課題に果敢に取り組んでいくことが求められております。
 工藤知事は、このような情勢のもと、平成3年4月、県民の大きな支持を受け、知事に就任されましたが、就任後、直ちに県政推進の基本指針として第三次岩手県総合発展計画を策定し、豊かな自然の中に、活力と希望にあふれ、心の触れ合うふるさと岩手の創造を目指し、各般の施策を積極的に展開してこられました。この間、本県を取り巻く情勢は、一昨年の戦後最大の凶作など2度にわたる冷災害、さらにはバブルの崩壊を起因とする景気の低迷など、極めて厳しいものがありましたが、知事は、東北横断自動車道釜石秋田線や三陸縦貫自動車道などの高速交通幹線の整備の促進、あるいは交流ネットワーク道路や新幹線関連道路の整備など、総合的な交通網の整備を図るとともに、下水道の整備など快適な生活環境の整備や、生物工学研究所、林業技術センター、工業技術センターなど活力ある産業の展開に向けた基礎づくり、さらには少子・高齢化社会に対応した保健・医療・福祉体制の充実や、教育立県を目指した教育環境の充実など、生産、生活両面にわたる定住条件の整備に精力的に取り組んでこられました。特にも、全国健康福祉祭、三陸・海の博覧会、アルペンスキー世界選手権大会、国民文化祭と相次いで開催された4大イベント、昨年のファミリンピック、全国ボランティアフェスティバルについては、知事の強力なリーダーシップのたまものと認識しているのでありますが、県民挙げての取り組みにより、いずれも大成功をおさめ、県民に大きな自信と誇りを与えるとともに、本県の存在感を県内外に強くアピールしたのであります。21世紀はまさに指呼の間にありますが、このような3県総の着実な推進により、本県は新たな発展を図るための基盤が着々と整ってきており、また、国においては新しい全国総合開発計画の策定に着手するなど、新たな国土政策が展開されようとしております。
 そこで、知事に伺いますが、こうした状況を踏まえ、新たな時代に向けた本県の課題と発展方向をどのようにお考えなのか、その御所見をお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、高速交通体系の整備に関連して、東北新幹線盛岡以北問題についてお伺いします。
 東北新幹線盛岡以北のフル規格化については、昨年末の平成7年度政府予算編成の際、政府と連立与党との間で活発な論議が交わされた結果、ミニ新幹線規格で整備することとされていた盛岡-沼宮内間がフル規格で整備されることとなり、本県内は全線フル規格で整備されるという県民の夢がかなうこととなりましたことは、まことに喜ばしいことであります。しかしながら、盛岡-沼宮内間のフル規格化のいわば代償として、昨年12月19日の連立与党申し合わせによりまして、東北本線の盛岡-沼宮内間はJRの経営から分離することを認可前に確認することとされたところであります。県としては、来年度早々にも予定される盛岡-沼宮内間のフル規格による工事実施計画の認可前に、フル規格をとるか、在来線をとるかという、いわば二者択一の選択を改めて行わなければならない立場に置かれたわけであります。
 私は、東北新幹線は、これまでに企業誘致や観光振興を初めとする県経済全般に計り知れない効果をもたらし、県勢の発展に大きく寄与してきたと思うのであります。今度は、この効果を県北地域が享受することにより、県土の均衡ある発展が図られ、県勢の一層の発展につながっていくものであると考えます。したがいまして、フル規格化に伴って建設費が増加し、その分、地元負担が増加することになるという問題や、また、並行在来線についてJRから経営分離されることになるという問題など、新たな課題への対応も迫られることにはなりますが、これらの課題を克服し、東北新幹線はフル規格で整備されるべきであるというのが県民の悲願であると思うのであります。ここで改めて東北新幹線のフル規格化についての知事の決意のほどをお聞かせ願います。
 また、並行在来線の問題についてでありますが、JRの経営から分離されることとなる東北本線の盛岡以北は、通勤や通学など沿線住民の生活の足として不可欠な交通機関であり、沿線市町村にとって、その存否は極めて重要な問題であります。県においては、関係市町村との協議を行っていると伺っておりますが、私は、今後どのような形で地域の足が確保されるのかという沿線市町村の人々の不安を解消し、JRからの経営分離やむなしという沿線関係市町村の合意を得るためには、並行在来線の代替輸送についての知事の基本的な考えを示すことが必要であると思うのであります。知事の基本的なお考えとともに、並行在来線問題について今後どのように取り組むお考えなのか、お聞かせ願います。
 次に、財政問題についてお伺いします。
 自治省が策定した平成7年度地方財政計画を見ると、財政規模は総額82兆5、100億円で、前年度対比で約4・3%の伸びとなっておりますが、本定例会に提案されております本県の平成7年度の一般会計当初予算は7、161億2、600万円で、対前年度当初予算比較で6・5%の減となっております。もちろん、来年度の当初予算は、新規・政策的な予算を除外したいわゆる骨格予算として編成されたことでもあり、前年度対比で減となるものであろうことは承知しておりますが、当初予算編成の基本的な考え方はどうなっているのか、また、肉づけ予算となる6月補正予算の財源の見通しはどうなっているのか、まずお伺いします。
 また、先ごろ出された自治省財政課長内簡では、公共投資分野における地方の役割を重視し、国において平成6年10月に策定された公共投資基本計画等の考えに沿い、地方においても投資的経費の事業量の確保について配慮するよう求めております。国の7年度の公共事業関係費は、前年度に比して4・0%の増とされておりますが、地方財政計画における地方単独事業の伸びは5・0%増と国の伸びを上回っております。本県の当初予算における県単独普通建設事業は、前年度に比して18・5%の大幅な減を示しておりますが、当初予算の大幅な減についてどのような考えで予算編成をなされたのでしょうか。現状の伸びから推察しますとき、6月補正後において、本県の県単独普通建設事業の伸びが懸念されるのでありますが、地方財政計画の伸び率をどのように認識され、今後の予算編成を行っていくのか、基本的な考えをお示し願います。
 次に、財政問題と表裏一体をなす行政改革についてお伺いします。
 国、地方を問わず財政環境が一段と厳しさを増している中で、地方公共団体は、地方分権を推進し、新しい時代に即応した地域の振興、社会資本の整備、長寿社会への対応、環境の保全等の課題に的確に対応し、各種施策を自主的に展開することが求められております。このため、地方公共団体が地域の課題に迅速・機敏に、しかも自律的・総合的に対応し、魅力ある地域づくりに邁進できるような権能を備えた行財政システムの構築が必要であり、今まさに真剣に行政改革に取り組むべきだと思うのであります。県においては、このような情勢を背景にして、昨年12月、行政改革推進本部を設置し、今後の行政改革の推進について決定したと伺っておりますが、私は、行革は緊縮一辺倒にとらえることなく、新たな時代に即応する行政システムの構築にあると考えるのであります。県は、来年の1月に新たな行政改革大綱を策定するとのことでありますが、この行革に対する基本姿勢についてお伺いします。
 次に、冒頭申し上げた兵庫県南部地震に関連してお伺いします。
 我が県は地震常襲地帯であり、明治29年及び昭和8年の三陸津波やチリ地震津波により甚大な被害をこうむっており、このたびの災害が他人事とは思えないのであります。未曾有の震災が訪れたとき、国民の皆々が注視する中で、災害発生時の危機管理体制不備などが指摘されておりますが、私も、有事において真に動き得るシステムの構築が急務と考えることから、地域防災計画の見直しについてお伺いします。
 兵庫県南部地震は、高度に都市化した人口密集地の真下で発生したことから、鉄道や高速道路等の交通体系、電話、ガス、水道、電気など市民生活へ重大な影響をもたらすライフラインを寸断したことなどにより、被害がかつてない規模で発生し、また、大規模に発生した火災になすすべもなく、燃えるに任せるしかなかった事態に全国民が驚愕し、有事の防災体制のあり方について改めて認識を迫られたのであります。県では、この地震を機に地域防災計画の見直しを進めるとのことですが、どのような視点で見直しを行うのか、また、同時に市町村地域防災計画の見直し、さらには県民に対する防災教育も進める必要があると思うのでありますが、知事の御所見をお伺いします。
 また、このたびの大震災は、日本経済の中心的役割を果たしている阪神地方の災害であったために、経済に与える影響は、殊、阪神地方にかかわらず日本各地にその影響を及ぼしているとも言われております。私は、この大震災を教訓として、経済の危険分散を図る観点から、一極集中した生産機能を地方に分散する企業も出てくるのではないかと考えております。本県は、広い県土と水と空気に恵まれており、今後、企業誘致に当たっては、災害による危険分散を視点に入れた誘致方策を取り入れていくべきだと考えておりますが、知事の御所見をお伺いします。
 次に、救急医療対策についてお伺いします。
 近年、日本の医療は、平均寿命を世界水準に到達させるなど高水準にありますが、ODA、すなわち来院時心肺停止状態に対する対策など、救急医療面はまだ先進諸外国に及ばないと言われております。救急医療は、住民の生命に大きくかかわる医療であり、いつでも、どこでも、より早く、適切な対応が常に求められる分野であると思います。本県において、この救急医療は、在宅当番医制や休日夜間急患センターによる初期救急医療、病院群輪番制病院による2次救急医療、そして、岩手県高次救急センターによる3次救急医療というシステムにより対応されていると承知しております。しかしながら、近年における人口の高齢化や疾病構造の変化に伴い、救急医療も例外ではなく、対象とする疾病が、交通事故などによる外科系疾患から心疾患等の内科系疾患へと広がり、また、救急患者も増加傾向にあるなどから、質的、量的に変化しており、地域において、より高度な医療を迅速に提供でき得る体制を構築することが求められてきております。
 もとより、地域における高度救急医療システムの構築には、マンパワーの確保や医療施設の整備など解決しなければならない課題があるのでありますが、知事は、平成6年11月の定例本会議において、3次救急医療施設の整備については、設置する地域、医師等のマンパワーの確保や、施設整備の内容などの課題もあることから、早急に委員会を設置するなどして検討に入る旨、御答弁をされております。その後、設置する地域などについて種々御検討をされていると伺っておりますが、私は、県都盛岡市から地勢的にも遠い沿岸の北部と南部にはぜひとも必要であると考えるのでありますが、知事の御所見をお伺いします。
 次に、少子化対策に関連してお伺いします。
 国際的な人口増加の傾向とは裏腹に、日本では少子社会が到来しております。我が国の合計特殊出生率は、平成5年には、人口維持可能とされる2・08を大幅に下回る1・46に低下し、本県にあっても、国と同様に低下傾向にあり、昭和30年に3・01であったものが、平成5年には1・68まで低下しております。この少子化傾向による地域の活性化の沈滞に危機感を持つ各県においてはさまざまな施策が推進されており、隣県秋田県においては、結婚や出産を援助する結婚・出産・育児総合支援事業や5つ子等育児特別支援事業などを推進しております。埼玉県婦人問題会議が、同会議を構成している37団体の20歳から49歳の女性を対象に実施したアンケート調査によると、希望する子供の数3人以上は、30代では42・1%、20代では33%と年代とともに下がってきており、その主な理由として、子供を育てるのに金がかかる、精神的、肉体的負担が大きい、健康上の理由が挙げられ、また、未婚者の結婚したくない理由では、だれにも縛られたくない、仕事を続けたい、仕事の時間を減らしたくないなど、核家族化や女性の社会進出を背景にして少子化が一歩一歩進んでいるものと思われます。
 このような背景のもと、本県においては、21世紀を担うかけがえのない子供を健康に生み育てる環境が重要な課題であるとの観点から、乳児・妊産婦医療助成事業について導入されている所得制限の緩和をすることと、乳児医療助成事業における対象年齢の引き上げについて、当議会において、平成6年3月に請願を採択しているのであります。このたび、県においては、平成7年度の当初予算において、その見直しを図るということでありますが、この少子化対策に関連する県単独医療助成制度の見直しに当たっての基本的な姿勢、あるいは実施主体である市町村の動向についてお示し願います。
 次に、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策についてお伺いします。
 御案内のように、足かけ8年という長期にわたるいわゆるガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉が一昨年の暮れに合意され、我が国の農業・農村が今年度からまさに新しい国際的な枠組みの中に置かれることになったところであります。こうした国際的枠組みの大きく変化していく中で、今後、本県農業にどのように影響していくのか、そしてまた、どういった進路をたどって維持発展していかなければならないのか、農業者にとどまらず県民全体が最大の関心を持っているのであります。私は、そういった意味からも、ウルグアイ・ラウンド関連対策は、単に国際化の影響を食いとめるといった観点にとどまらず、我が国、あるいは国際的見地に立って、本県農業が置かれている位置づけ、将来方向をしっかりと見定め、将来にわたって活力ある農業と農村をつくっていくためのもろもろの条件を整備していくといった観点が何としても必要であろうと考えているのであります。そしてまた、こうした条件をしっかりと整備していくことによって、いわば農業の最も基本とするところの消費者に対する食料の安定的な供給、あるいは近年高まっている農村へのさまざまな期待にこたえていくものであると思うのであります。確かに、国においては、この6年間に総事業費6兆100億円と言われる財政措置を講じ、ウルグアイ・ラウンド関連対策を重点的に推進していくということになったところでありますが、私は、まさに新しい農政の本格実施の真価が問われるときであろうと思うのであります。
 そこで、県においても、既にガット対策委員会においてウルグアイ・ラウンド合意関連対策を検討していると伺っておりますが、今後どのような考えのもとにウルグアイ・ラウンド合意関連対策を展開していくべきであると考えておられるのか、お伺いします。
 次に、農業対策と同様に、後継者不足や200海里の経済水域による遠洋漁業の停滞、あるいは輸入水産物の増加など国際化の荒波に直面する水産業についてお伺いします。
 水産業を取り巻く情勢は、国際漁業規制の強化や輸入水産物の増加等に伴う魚価の低迷などに加えて、カレイやタラなどの近海漁業資源の悪化など厳しい環境に置かれております。このため、県においては第3次岩手県水産業基本計画を策定し、21世紀に向けて、周辺海域の特性を生かしたつくり育てる漁業の推進に積極的に取り組んでおられるところであります。この結果、ワカメやホタテ貝等の養殖のほか、サケ、アワビ、ウニの栽培が成果をおさめ、特に秋サケにつきましては、本県沿岸漁業生産高の3分の1を占めるまで成長いたしております。しかしながら、近年、輸入増により秋サケの価格が低迷していることから、秋サケに続く栽培漁業の推進が緊急の課題となっております。私は、サケに次ぐ新たな栽培漁業の取り組みとして、県におけるヒラメの種苗放流の試みが一応の成果があり、また、釜石市の冷水性高級魚養殖技術研究所においては、マツカワの種苗生産や養殖技術の開発に成功したと聞き及んでおり、本県の水産業の発展のために、他県に先駆けていち早くこれらの事業化を進めることが急務であると思うのであります。このように、県は、長年にわたりつくり育てる漁業を進めてこられたわけでありますが、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いします。
 また、つくり育てる漁業のより一層の推進を図るためには、全県的な機運の盛り上がりが大変大事であると考えております。幸い、平成9年に大槌漁港において第17回全国豊かな海づくり大会が開催されます。本大会が本県で開催されることは、つくり育てる漁業を推進する上で大変意義深く、本県沿岸漁業の振興と地域の活性化を図る千載一遇のチャンスとも考えられるのであります。県当局は、本大会の成功に向けて、精力的に準備を進めておられるとは存じますが、準備期間が短いなどの課題もあることから、準備体制は万全を期していただきたいと存じます。
 そこでお伺いしますが、県は、本大会を開催するに当たりどのような方針で臨み、また、どのように取り組んでいかれるのかお聞かせ願いたいと存じます。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事工藤巌君登壇〕
〇知事(工藤巌君) 千葉英三議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新たな時代に向けた本県の課題と発展方向についてでございますが、まず現状認識を申し上げますと、県民の皆様の英知と総力を結集したたゆまぬ努力とも相まって、また、議員各位を初め、県政にかかわる先輩の皆様方の御努力の成果もあって、生産、生活両面にわたる定住条件の整備が進むとともに、4大イベント等の大成功により、県民に新たな自信と誇りが生まれるなど、県勢は着実に発展してきているものと存じております。 さて、本県の今後における課題でございますが、私は、例えば、1人当たりの県民所得であるとかあるいは道路の舗装率、下水道の普及率など、全国との格差の存在するもの、これを是正をしていかなければならないと。もちろん、全国のレベルをはるかに上回って、例えば、子供を育てる環境では岩手が都道府県で第1位だとか、住む環境では7位だとか、そういう研究結果もありますし、教育とか福祉の面でも高い評価を得ているところもございます。しかしながら、なお全国の中に低位にある領域については、その格差を解消していかなければならないというのは、長いこと本県の課題であったわけでございます。現在もまたそうであります。そして同時に、県土の均衡ある発展という、このことが、本県の基本的な課題であると存じております。私どもは、こうした課題に取り組むと同時に、経済社会情勢の変化に伴って、新たに提起されてくる新しい課題に対しても、積極的に取り組んでいくことが肝要であると存じているところでございます。
 我が郷土岩手には、豊かな自然環境、ゆとりのある生活空間、歴史的、伝統的な文化、すぐれた人材をはぐくんだ風土、さらには温かい県民性など、限りない発展可能性があります。私は、県民の皆様1人1人がこのすぐれた地域特性を大事にしながら、それぞれの地域において主体的な活動を進め、そしてそれが結集され、快適で活力に満ちた個性豊かなまちづくり、むらづくりが展開されるならば、必ずやこの地に、3県総に述べてありますような目標、豊かな自然の中に活力と希望にあふれ、心のふれあうふるさと岩手が築き上げられるものと確信をする次第でございます。そしてまた、それを支援し実現していくことが、県政の基本的な発展方向であろうと存じているところでございます。
 次に、東北新幹線盛岡以北のフル規格化についてでございますが、昨年12月の連立与党申し合わせ及び関係大臣の申し合わせにおきまして、新たに盛岡-沼宮内間のフル規格化が決定されましたことは、東北新幹線が日本列島を縦貫する幹線としての機能を果たすことはもとより、本県の県北地域を含む北東北の振興に、そして県土の均衡ある発展に大きく寄与するものであり、まことに喜ばしいことと存じております。しかしながら、お話しのありましたように、開業時における並行在来線の経営分離の問題や財源問題等、今後解決すべき課題が多く残されております。したがいまして、今後ともこれらの課題の解決に努め、東北新幹線盛岡以北の全線フル規格化の早期実現に向けて、努力を重ねていかなければならないと考えております。
 次に、並行在来線問題についてでありますが、申すまでもなく、在来線は通勤、通学や通院など、沿線住民の日常生活の足として重要な役割を担うものであります。御案内のとおり、昨年末の申し合わせにより、東北新幹線盛岡-沼宮内間のフル規格化の決定に際し、工事実施計画認可前に、同区間をJRから経営分離することを確認することとされましたので、現在、沿線市町村長等と鋭意意見交換しているところであります。並行在来線の経営分離につきましては、住民の方々がこれまでよりも不便になったということが決してないように、万全の対策を講ずる必要があると存じております。したがいまして、今後におきましては、沿線市町村や青森県さらには整備5線関係道県とも十分に協議を重ね、国に要望すべきは要望するなど、最大の努力をしていく必要があると存じております。
 次に、平成7年度の当初予算の編成についてでありますが、御案内のように、国の予算は巨額の公債残高を抱え、税収動向も極めて厳しい状況の中で、従来にも増して歳出の洗い直しに取り組む方針で編成されており、また、地方団体の財政運営の指針となる地方財政計画も、おおむね国と同一基調で策定されているところであります。本県におきましても、県税や地方交付税に多くを期待し得ない一方、義務的経費が増高するとともに、多様な財政需要が見込まれることなどから、一段と厳しい財政環境下に置かれるものと考えているところであります。したがいまして、平成7年度の当初予算編成に当たりましては、国の予算編成方針及び地方財政計画等に留意しながら、財源の確保と徹底した経費の節減合理化に努め、各種社会資本の整備や国際化、長寿社会の進展など、社会経済情勢の変化に適切に対処する諸施策の推進を図ることを基調としながらも、諸般の事情を考慮し、原則として、新規または政策的経費を除いたいわゆる骨格予算を編成したところであります。
 次に、6月以降の補正予算の財源の見通しについてでございますが、現時点における一般財源留保額は、地方交付税など約300億円程度を見込んでいるところでございます。また、地方単独事業について前年度を大幅に下回ったのは、原則として新規施策については、6月以降の補正予算において措置することとしたことによるものであります。
 なお、地方財政計画における地方単独事業の伸びにつきましては、生活環境の整備、向上及び地域経済の振興等を図る観点から、所要の伸びを確保しているものと考えておりますが、今後、6月のいわゆる肉づけ予算におきましては、来るべき21世紀を展望した、個性豊かな地域づくりを進めるための予算が編成される運びになるものと存じております。 次に、行政改革についてでありますが、行政改革は簡素で効率的な行政運営を目指すものであります。そしてその推進に当たっては、新たな行政需要に的確に対応するため、事務事業の整理合理化によって生じる行財政上の余力を、真に必要な部門に振り向けながら行政を活性化させ、新しい時代に即応できる体制をつくっていくといった積極的な面を持つものであると考えております。県といたしましては、厳しい行財政環境のもとにあって、県勢発展に必要な施策のなお一層の推進を図るため、機動的かつ効率的な執行体制の整備に努めることが肝要であることから、県民の理解と協力を得ながら、引き続き行政改革に積極的に取り組んでまいる所存であります。
 次に、地域防災計画の見直しについてでありますが、このたびの兵庫県南部地震は、高度に都市機能が集中した大都市の直下で発生した大地震であったため、これまでに経験したことのないような大震災となりました。この災害では、地域防災計画に定められた災害応急対策の実施に当たって、多くの反省点が指摘されていることは御案内のとおりであります。
 本県の防災の基本となる地域防災計画につきましては、県防災会議において毎年協議し必要な見直し修正を行ってきておりますが、今回の阪神・淡路大震災を契機に、抜本的な計画の見直しについて御協議をお願いしたいと考えており、当面、まず現行計画の点検を行う中で見直しをかけられる部分について、早急に作業を進める必要があると考えております。特に、災害対策の中枢機能に重大な支障が生じた場合の対応、職員の動員配備体制、避難施設の確保、救援物資等の調達供給、災害弱者対策等について緊急の点検を行うとともに、市町村に対しても同様の視点で点検を行うよう、指導してまいる所存であります。また、災害から生命と財産を守るためには、県民1人1人が防災に関する意識を高め、災害に対する備えをしておく必要がありますことから、県としても市町村と連携しながら、防災訓練などを通じて防災教育の一層の充実を図ってまいりたいと存じております。
 次に、大震災を教訓とした企業誘致についてでありますが、御指摘のとおり、このたびの兵庫県南部地震を契機として、被災企業のみならず、多くの企業が工業集積地から地方への危険分散を検討するものと考えられます。従来、地方展開を目指す企業は交通の利便性や労働力など、経済的な効率性を強く求めてまいりましたが、最近接触した企業の中には、これらに加えて耐震性や風水害など、自然災害に対する安全性の確保をより重要視しているところもあります。幸い、本県は比較的地盤が安定していると言われており、加えて、広い県土に緑があふれ、清らかな水、澄んだ空気など、豊かな環境に恵まれております。今後におきましては、企業訪問や立地説明会等、あらゆる機会を通じ、本県の持つ総合的な企業立地環境や工場の危険分散の適地としての優位性をアピールし、優良企業の誘致に努めてまいりたいと存じております。
 次に、救急医療対策についてでありますが、私は、人命を守ることは何にも増して重要な施策であると考えております。このため、昨年の12月に、救急医療業務関係者による岩手県救急医療検討会を発足させ、本県における救急医療体制のあり方について、現在、総合的に検討を行っているところであります。検討会においては、岩手県高次救急センターのある盛岡市から地理的にも時間的にも遠い沿岸の北部や南部には、早急に3次救急医療の機能を担う医療施設を整備すべきであり、それ以外の比較的遠隔な地域についても、将来的には救急医療施設の充実が必要であるなど、さまざまな意見が出されたと聞いております。私といたしましては、その検討結果を踏まえ、県民がどこに住んでいても安心して医療が受けられるような救急医療体制の整備が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、少子化対策に関連する県単独医療費助成制度の見直しなどについてでありますが、本県では、乳児、妊産婦、重度心身障害者等に対して、県と市町村が一体となって助成する医療費給付制度を実施しておりますが、これまでこの事業の推進により、乳児死亡率の低下に資するなど、大きな成果を上げてきているものであります。しかしながら、近年は少子化傾向が続いており、本県においても、今後生まれてくる乳幼児が健やかに育つ環境の整備をより一層進める必要があることから、この助成制度の見直しを図り、現在の1歳未満を2歳未満まで対象を広げ、また、妊産婦を含めた所得制限を大幅に緩和しようとするものであります。
 なお、この見直しに当たっては、事前に県・市町村連絡会議など、あらゆる機会を通じて市町村と十分協議を重ねてまいったところであります。したがいまして、市町村においては、明年度からこの方向に沿って事業を実施するため、準備を進めているところであります。
 次に、ウルグアイ・ラウンド合意関連対策の展開についてでありますが、農業・農村は、食料の安定的な供給のほか、県土の保全や潤いのある農村空間の形成など、県民生活にとって重要な役割を果たしておりますことから、こうした役割が損なわれることのないよう、県民の理解を得ながら、新たな国際環境のもとにおいても、いささかも揺るぐことのない力強い農業、活力のある農村を構築し、21世紀に引き継いでいくべきものと考えております。したがいまして、関連対策につきましては、将来の地域農業を担う気概にあふれた農業者を育成し、こうした農業者を中心とした競争力のあるたくましい産地を各地に形成するとともに、地域の方々の主体的な取り組みにより、夢、ゆとり、豊かさに満ちた生き生きとした農村づくりを進めていくことを基本に据えて、できる限りの対策を緊急に展開し、本県農業・農村が将来にわたり、発展していくための礎を築き上げていくことが肝要であると存じております。
 次に、つくり育てる漁業の推進についてでありますが、本県の水産業を振興するため、つくり育てる漁業の推進に懸命に取り組んできた結果、ワカメ養殖は全国第1位、サケは全国第2位、アワビやウニは全国第3位の生産量を誇るまでに進展し、本県はつくり育てる漁業の先進県となっております。しかしながら、議員御指摘のとおり、近年、輸入量の増加に伴い、サケの価格が低落し、水揚高が伸び悩んでおりますことから、今後は、ヒラメやマツカワなど、サケに続く魚類栽培を積極的に推進していくことが極めて重要であると存じます。幸い、水産技術センターや冷水性高級魚養殖技術研究所による研究の結果、ヒラメ及びマツカワの栽培技術は確立いたしましたが、魚類栽培の推進に当たっては、種苗センターの建設や運営、種苗放流に要する経費負担など、解決しなければならない多くの課題がございますので、早急に専門家で構成する検討会を設置して助言いただくとともに、関係市町村や漁業関係者と十分に協議の上推進体制を整備し、つくり育てる漁業を積極的に推進してまいる所存でございます。
 次に、全国豊かな海づくり大会につきましては、平成9年の本県開催が決定した旨を、さきの12月定例会において御報告したところでありますが、その後、敷地面積や宿泊施設などを総合的に勘案し、会場を大槌漁港に決定したところであります。天皇・皇后両陛下が御臨席のもとに開催される本大会は、水産岩手を全国にアピールするとともに、栽培漁業を推進する絶好の機会でありますので、4月からは漁政課内に全国豊かな海づくり大会推進室を設置し、岩手の特色を生かした有意義な大会となるよう、準備に万全を期してまいりたいと存じます。
〇議長(佐々木俊夫君) 次に、伊藤孝君。
   〔46番伊藤孝君登壇〕(拍手)

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