平成7年6月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇5番(佐々木博君) 新進党の佐々木博でございます。
 質問に先立ち、このたび急逝されました片方盛議員に対し謹んで哀悼の意を表し、心から御冥福をお祈り申し上げます。
 さて、改選後初の定例議会におきまして、一般質問の機会を与えていただきましたことに、心から感謝申し上げるものであります。また、さきの知事選におきまして、増田知事におかれましては圧倒的な勝利により知事に御就任されましたこと、心からお喜びを申し上げます。県民は、知事の若さと清新さと行動力に大いに期待いたしております。県民の先頭に立って縦横無尽の御活躍をいただき、夢県土岩手の実現に大いに手腕を発揮されますよう、心から御期待申し上げるものであります。
 それでは、通告に従い順次質問をいたしますが、前段者と多少重複する点もあろうかと思います。あらかじめ御了承を賜りたいと存じます。
 最初に、地方分権についてお伺いします。
 さきの国会において、地方分権推進法が成立しました。地方分権の推進については、地方6団体を初め、多くの地方団体関係者が長年にわたり要望してきたところであり、推進法の成立を見たことは、いよいよ地方分権の推進が具体化に向けて動き出したことを実感させるものであります。また、その第4条において、国と地方公共団体との役割分担について触れ、国は国際社会における国家の存在にかかわる事務など、国が本来果たすべき役割を担うこととし、地方公共団体は住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理するとの観点から、地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うべきと明記した点は、我が国が今後進むべき基本的方向を示したものとして高く評価するものであります。しかしながら、この地方分権推進法が制定されるまでの経過を振り返りますと、これで確実に地方分権が推進されるとの確信を持てないのも事実であります。昨年の暮れ、政府は、地方分権の推進に関する大綱方針を閣議決定しましたが、その内容が、全国知事会など地方6団体や地方制度調査会がまとめた提言や答申から後退していたため、地方分権を強く求める住民や経済界から厳しく批判が相次いで寄せられました。そこで、大綱の方針にはなかった勧告や監視の役割を、地方分権推進委員会の権限として法案に盛り込むなどして国会に提出されたものであり、この過程では、中央省庁の強い抵抗があったとも報ぜられております。また、焦点の1つとなっていた機関委任事務の扱いについては、整理合理化する方向は打ち出しているものの、地方制度調査会などが求めた廃止までは踏み込めませんでした。これら一連の経過を見ますと、地方分権の確立にはまだまだ幾多の障害があると思わざるを得ませんが、7人の推進委員会委員も決まったところであり、地方分権推進法第2条に規定するとおり、地方公共団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るため、分権が大いに前進するよう願うものであります。
 ところで、5月21日付の朝日新聞に、地方分権について47都道府県知事にアンケートした結果が掲載されております。地方分権推進法の成立で、地方分権がかなり進むとした知事は18人、残る29人は少しは進むと答え、進まないなどと否定的に見る知事はいませんでした。増田知事は、このアンケートでは少しは進むと答えられているようですが、推進法の成立を受けてどのような御所見をお持ちかお伺いします。
 また、このアンケートでも、分権の障害になるものとして財源措置が明らかでない22名、権限を失う官僚の抵抗20名、機関委任事務の廃止が明記されなかった18名との3点に集中しているようですが、私は本県の場合、とりわけ財源の保障が分権の大きなキーポイントと考えるものであります。そこで、税源配分の見直しが必要であり、税収の安定性があり地域的偏在の少ない税源を国から地方自治体に移譲することが必要不可欠と考えるものであります。また、国から地方自治体に移譲してほしい権限としては、私は地域の特性に合った地域づくり、まちづくりなどを推進する観点から、都市計画、農地関係等の権限が国から移譲されればより好ましいと考えるものであります。
 次に、県と市町村との関係についてでありますが、本年の2月、民間政治臨調は、地方分権基本法の制定に関する緊急提言を行っておりますが、その内容は、今回成立した地方分権推進法より一歩踏み込んだものであり、私は非常に高く評価すべきものと考えております。緊急提言では、都道府県と市町村の関係につき、地方自治体が分担する事務は市町村が分担することを基本とし、都道府県の事務は広域的自治体として、市町村の区域を越える広域的かつ総合的な政策、調整に関する事務、市町村が分担するには著しく非効率な事務、高度な専門性を有する事務、市町村行政の補完、支援に関する事務に限定するとされております。私は、地方分権は住民自治実現のために推進すべきものと考えますが、その観点から言うと、民間政治臨調の提言のとおり、分権の主体はあくまで市町村を基本とすべきものと考えております。
 そこで、これまで地方分権について私なりに所見を申し上げましたが、県としての地方分権推進についての基本的な考え方についてお伺いいたします。
 ところで、地方分権を推進するためには、中央ばかりでなく地方もまた変革しなければなりません。私は、分権の主体は市町村であるべきだと申し上げましたが、例えば、市町村が分担する事務のうち、市町村の規模、能力、地域の実情などから、単独での処理が困難なものについては、広域連合制度や一部事務組合などの市町村間の共同の取り組みによる市町村の主体的な問題解決を基本としなければならなくなります。すなわち、市町村は今まで以上の広域行政を展開しなければならなくなり、それは最終的には市町村の広域合併に通ずるものと考えるものであります。言葉を変えれば、地方分権の主体となる市町村は、広域合併をすることによって、分権の主体となる能力を備えることになると考えるものであります。そういった意味では、さきの国会において、市町村長に対し合併協議会の設置を直接請求できる住民発議制度の創設を含む市町村合併特例法の改正がなされたことはまことにタイムリーであり、地方分権の推進に向けても非常に意義深いことと考えております。もちろん、合併は市町村の住民の意向を最大限尊重しなければならないのは当然ですが、知事は、今後、市町村合併に積極的にかかわっていく御意思がおありか、この際御所見をお伺いいたします。
 次に、行政改革についてお尋ねいたします。
 本県では、昭和59年2月に行政改革大綱を策定し、他県に先駆けて行政改革に取り組んでまいりました。行政機構の簡素効率化の一環として、本庁機構及び出先機関の再編整備や試験研究機関の再編整備に着手したのを初め、事務事業の改善や職員管理の適正化、さらには県単独補助金の見直しなど行財政改革に積極的に取り組み、着実に成果を上げてきたことを高く評価するものであります。しかしながら、今後、いよいよ到来する高齢化社会を迎え、それに対応するための福祉、保健、医療行政のあり方など、社会経済情勢の変化に伴って新たな行政課題、行政需要が生じてまいりますし、もちろん、県勢の一層の発展のためにも、3県総に盛り込まれた諸事業は着実に実行していかなければなりません。一方、行財政環境はどうかと申しますと、不景気、低成長のもと、依然として大変厳しいものがあります。こうした状況をあわせ考えますと、今までも行政改革には積極的に取り組んできたものの、なお一層積極的に推進する必要があります。
 さて、県では昭和62年から行政改革推進本部並びに行政改革推進懇談会を再設置し、行政改革の推進に継続して取り組んできておりますが、来年の1月をめどに新しい行政改革大綱を決定する方針とお聞きしております。この決定に至るまでの今後のスケジュールをお示し願います。
 次に、行政改革に関する報告書に、行財政運営の課題として指摘されている事項の幾つかについてお伺いします。
 まず、行政機構のうちの保健、医療、福祉の連携についてでありますが、今後、急速に高齢化が進展するに伴い、複雑多様化する保健、医療、福祉のニーズに対応したきめ細かいサービスを一元的かつ効率的に提供するため、今後、保健・医療部門と福祉部門との密接な連携が不可欠と予測されるところであります。ついては、保健や福祉に係る住民への直接的なサービスは市町村が中心となって実施する方向にあり、市町村における担当部署の一元化が進んでいる現在、それらに対応すべく、県として担当部署の体制整備をどのように進めていかれるのかお考えをお聞かせ願いたいと思います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、出資法人の適正化についてでありますが、新たな行政需要に対応するための法人の設立や新規の出資を行うケースが増大しており、出資法人の数が県内法人だけでも平成6年度末現在で76団体に上っている状況にあります。また、出資額も全体で258億円余になっております。これらの法人に対する出資については、もちろん、出資を決定する時点では県行政との関連性や出資の妥当性について慎重に検討されているわけですが、問題は、出資後において、出資の継続の必要性の有無が十分に再検討されているか否かにあり、現状ではその見直しは不十分ではないかと危惧するものでありますが、この点はいかがなものでしょうか。
 また、新たな行政需要の増大に対応するため、今後も出資法人の増加が予測されるところではありますが、出資法人の増加は県行政の範囲を不明確にするおそれもあります。したがって、今後は出資法人の数は原則としてふやさない、1つふやす場合には既に出資している法人を徹底的に見直し、1つ減らすぐらいの覚悟で厳格に対応すべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 また、現在、我が国はかつて経験したことのない低金利の時代を迎えており、高齢者など金利に依存している方々には大変厳しい状況になっております。そして、このことは諸施策推進上設立した法人、特にも財団法人についても当てはまるところであり、このような低金利のもとでは多くの運用益が望めず、運営に支障を生じている法人もあるのではないかと心配するものでありますが、その実態についてお伺いします。
 また、今後も低金利が長期的に続くと予測されるところであり、業務効率の面でスケールメリットを生かすという観点からも、類似目的を持つ法人については積極的に統合を図る必要もあろうかと考えるものですが、御所見をお伺いします。
 次に、事務事業の見直しのうち、民間委託と人事交流についてお尋ねします。
 まず、民間委託についてでありますが、増大かつ多様化する行政需要に的確に対応し、行政運営の簡素効率化を図るためには、民間部門にゆだねることが適切なものは、極力、民間に委託することが適当であると考えるものであり、県では、今までも事務事業の改善の一環として事務事業の民間委託を進めていたところでありますが、その成果はどのようになっているのか具体的にお知らせください。また、今後、民間委託が可能な事業としてどのようなものが想定されるのか、あわせてお伺いします。
 人事交流につきましては、国あるいは市町村との相互理解を深め、かつ、密接な連携を図るためにもその必要性は十分認識するところでありますが、現在まで国または市町村との人事交流がどの程度なされてきたのか、その実績についてお伺いします。また、人事交流をするに際し何か問題点があったとすれば、それらについてもお聞かせください。私は、人事交流については、地方分権の観点から、今後、市町村との人事交流の一層の活発化を願うものであります。
 なお、県の出資法人にあっても、組織の活発化を図り効率的な運営を行うためには、何よりもまず職員の資質の向上が必要不可欠なことと思われますので、人事交流や研修会の開催など、県の積極的な取り組みを強く要望するものであります。
 次に、教育問題に関連して幾つかの質問をいたします。
 人づくりは、国づくり、地域づくりの基本であります。工藤前知事は、活力と希望にあふれた地域社会を築くためには、人間性豊かな人づくりを進めることが重要であり、その実現のためには、教育の担う役割は非常に大きいとの認識のもと教育立県を標榜され、教育の諸課題に積極的に取り組んでこられたところであります。また、教育立県とは、学校教育、社会教育にとどまるものでなく、産業の振興、担い手の育成、研究普及の活動など、さまざまな産業育成の分野までを包含する幅広い分野を考えておられたようであります。私は、人はだれでも、年齢を問わず、また、いかなる環境にあっても、新しいことを知り、発見することに喜びと感動を覚えるものであり、その気持ちを持ち続ける限り、人は何歳になっても成長を続けるものと考えるものであります。3県総においては、教育の振興を県政の重要施策に位置づけられており、生涯学習センターや美術館、歴史、文化に関する研究機関、スポーツ研修センターの整備に取り組むなど、生涯学習社会の構築に向けて諸施策の展開がなされているところでありますが、知事には、工藤前知事が標榜された教育立県構想をぜひ引き続き継承、発展させていただきたいと願うものでありますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、学校適応の指導の推進についてお伺いいたします。
 まず、いじめの問題についてでありますが、本県におけるいじめの発生件数は、調査を開始した昭和60年度には1、674件だったものが次第に減少し、平成4年度には108件でしたが、平成5年度は増加して141件だったとのことであり、再び増加する傾向が見られるのではないかと危惧するところでありますが、平成6年度の発生件数はいかがだったでしょうか。小中高別の発生件数をお伺いいたします。
 いじめの要因や背景には、核家族化や少子化、就労女性の増加など、家庭を取り巻く環境の変化から、家庭における教育機能が低下していることも大きくかかわっているものと思われますが、知力に偏重しがちの学校教育にもまた大きく起因しているのではないかと言われております。
 ところで、本年の3月、文部省からいじめの問題の解決のために当面とるべき方策についてと題し、いじめ対策緊急会議の報告がなされておりますが、その報告の内容と本県の取り組みにつきましてお伺いいたします。
 さて、私は、いじめが発生した後の対策ももちろん大切ですが、いじめが発生しないようにすること、すなわち、いじめを起こすような人間をつくらない教育を目指すことが、より重要だと考えております。そういった観点から、学校教育において知識を教える教育、体を鍛える体育とともに、思いやりや正義感など、人として当然身につけなければならない道徳を教える教育の必要性を痛感するものであります。
 第7次岩手県教育振興基本計画によりますと、たくましく心豊かな人間の育成を図る施策として、1、児童生徒1人1人に確実に道徳性が身につくよう、発達段階に応じた指導内容の重点化に努める。2、学校の教育活動全体を通じた一貫した道徳教育の充実を図るため、各教科において道徳教育の全体計画を作成するとともに、各教科の特質に応じた内容の充実を図る。3、道徳教育研究指定校や道徳教育推進モデル地区の設置などが掲げられておりますが、これら道徳教育の現状がどのようになっているのかお伺いします。
 また、いじめ問題以外にも、登校拒否や中途退学など学校不適応の問題がありますが、これらの問題がなお増加する傾向にあるのか、また、その対策はどのように進められているのかあわせてお伺いします。
 次に、県立の中高一貫校についてお伺いします。
 昨年、宮崎県に都道府県立としては全国初の中高一貫校が誕生したとお聞きしております。公立の中高一貫校はこれまでも繰り返し提案され、そのたびに議論を呼んできたところであります。1971年の中央教育審議会が出した答申では、6・3・3制を改めるための先導的な試行として提案され、85年の臨時教育審議会の答申でも6年制中等学校構想が示され、エリート校づくりにつながる懸念があるとの反対意見を含め、賛否両論が出されました。本年4月、4年ぶりに再開された中央教育審議会でも、学校間の接続の改善という表現で中高一貫校が検討項目に入っております。中高一貫校では教師が中高兼務であることから、中学校と高校で授業内容が重複することが避けられるなど、効率のよさが強調されるほか、種々のメリットがある一方、エリート教育につながるとか税金で賄う以上、施設や教師数などの面で均質な教育をするのが原則だなどの反対意見もあるようであります。
 そこで、県は、中高一貫校についてどのような御所見をお持ちかお伺いします。
 最後に、盛岡駅西口開発についてお尋ねいたします。
 北東北の拠点都市を目指す盛岡市の盛岡駅西口開発は、平成3年度に新都市拠点整備事業が採択され、また、平成5年度には土地区画整理事業の事業計画の決定を見て、道路工事にも着手しているところであります。同地区は、北東北の拠点都市盛岡の玄関として、また、将来都市構造の基礎となる都市軸のかなめとして、21世紀を展望した都市形成を図るべく整備が進められるものであり、地区の中心施設であるインテリジェント・ビル──地域交流センターの建設工事が開始されたことは、いよいよ西口開発が始動したなとの実感を持たせるとともに、地域交流センターが併設する市民文化ホールとともに西口開発の先導的役割を果たし、地域の発展に大いに貢献するものと心から期待するものであります。しかしながら、地域交流センターとともに西口開発の先導的役割を大きく担うと期待されていた企業局会館は、その当初構想の見直しが表明された後、何らそれにかわる構想が聞こえてこない状況にあります。企業局が会館建設予定地として取得した土地は、現在建設中の地域交流センターとは盛岡駅本宮線を挟んだ隣接地で、西口地区の中心に位置するところにあります。また、清算事業団から用地を取得した際、平成9年4月から供用開始するとの条件つきで土地の売買契約をした経緯があります。西口開発の先導的役割を担っていただきたいとの期待を込めて、会館建設予定地の構想の見直しがどのように進められているのかお伺いします。
 また、西口地区は雫石川を挟んだ盛南地区と、将来、軸状都心を形成していくことになりますが、盛南大橋と中央大橋の2橋は、西口地区と盛南地区の連結のかなめとし、両地区の開発にとって大変重要な役割を果たす橋であります。このうち、盛南大橋については、現在工事が進行中であり、2車線の暫定ではあるものの、平成9年度から供用開始の見込みと伺っておりますが、仄聞するに、中央大橋については近接する盛南大橋、中央大橋の2橋を国庫補助として同時に架橋することは困難であると伺っております。しかしながら、私は中央大橋は前述のとおり、両地区の開発誘導や交通渋滞など、両地区のまちづくりを推進する上から県道に昇格するなどして早期整備を図ることが極めて重要と考えるものであります。
 そこでお尋ねいたしますが、県として、今後本事業をどのように取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
 以上をもって私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐々木博議員の御質問にお答えいたします。
 まず、地方分権推進法の成立に対する所感についてでありますが、私は、今日すべての県民がゆとりと豊かさを実感できる個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を求めているものと存じております。このため、地方公共団体においても、自主性、自立性を高め、地域の実情に沿った個性あふれる行政を展開できるよう、権限や財源等地方公共団体に移譲し、地方分権を推進していくことが必要であります。このような背景のもとに、地方分権推進法がさきの国会において成立をし、7月3日に施行される運びとなりましたことは、地方分権の推進を早期に、かつ実効あるものとする上で、前進であり、喜ばしいことであると存じております。
 本法律は、地方分権推進に関する総論部分について定めており、個別の権限移譲や地方税財源確保の具体的方法などにつきましては、今後政府が策定する地方分権推進計画において定められるものと考えております。
 県といたしましても、来るべき地方分権の時代の新しい役割に応じて、組織機構の整備、職員の政策立案能力の向上など、みずからの力で対応が可能な受け皿の整備に努めてまいる考えでありますが、国におきましても、このような地方の動向を的確にとらえ、十分な財源的保障を伴った権限の移譲等、本県にとって最も好ましい形で地方分権が実現されるよう、今後とも強く要望してまいる所存であります。
 次に、市町村の合併についての取り組みについてでありますが、地方分権を推進する上で、住民に最も身近なところで行政を担っている市町村の果たす役割が重要であり、今後増大する広域行政需要に適切に対処していく上で、市町村の合併も有力な選択肢の1つではないかと考えております。先般、改正がなされた、いわゆる市町村合併特例法におきまして、市町村の合併について合併協議会の設置に関する住民からの直接請求制度の創設が盛り込まれるなど、従前に比べ積極的な内容となっております。
 もとより、市町村の合併につきましては、住民の間で論議が深められ、合併の機運が高まっていくことが肝要でありますが、県といたしましては、法の改正の趣旨も踏まえ、市町村の意向やその取り組み状況に応じ、積極的に対応してまいりたいと存じております。
 次に、教育の振興についてでありますが、私は、21世紀に向け、岩手の個性、独自性を十分発揮しながら、活力に満ちた夢あふれる県土づくりを進めるには、豊かな自然、風土の中で、心温かい人間性豊かな人づくりと社会の変化に主体的、かつ柔軟に対応できる人材の育成を図ることが重要であると考えております。このため、県政の運営に当たりましては、明日のいわてを担う人材の育成を主要な施策の1つとして位置づけ、諸施策を積極的に推進してまいりたい旨、本定例会の冒頭において申し上げたところであります。
 私は、このような基本認識に立ち、施策の方向として、思いやりの心や1人1人の自由な発想を大切にし、多様な個性と能力を伸ばす学校教育を推進するとともに、文化、スポーツの振興を図るなど、県民が学びたいことを学びたいときに、みずからに適した方法で学ぶことができる生涯学習社会の構築に向けて積極的に取り組んでまいる所存であり、工藤前知事が提唱された教育立県構想に基づく諸施策につきましても、引き続きこれを推進していく考えであります。
 また、私は、さらなる教育の振興を図るため、新たな課題や本県を取り巻く情勢の変化などをも踏まえながら、第三次岩手県総合発展計画の後期実施計画の中で、将来を見据えた諸施策を展開してまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長に答弁させますので御了承願います。
   〔総務部長上田紘士君登壇〕
〇総務部長(上田紘士君) まず、地方分権推進に関する基本的な考え方についてでありますが、地方分権の推進に当たりましては、まず、国においては、外交、防衛など国際社会における国家としての事務、あるいは金融、各種製品の企画など、全国的に統一して定めることが望ましい事務など、国が本来果たす役割を重点的に担うべきものと考えております。
 また、地方公共団体におきましては、住民に身近な行政を処理するとの観点から地域における行政の自主的、かつ総合的な実施の役割を広く担うことを基本として、国と地方公共団体の役割分担がなされるものと認識しております。このような基本的認識に立ちまして、今後、政府における地方分権推進計画の策定におきましては、住民に身近な行政サービスの提供に関する権限と、それに係る十分な財源について国から移譲を受け、各地方公共団体が自主性、自立性を高め、地域の実情に沿った個性あふれる地域づくりを展開できるようにすることが肝要であると考えております。
 また、地方分権の推進に当たっての県と市町村の関係につきましては、今後、住民に最も身近なところで行政を担っている市町村の果たす役割がますます重要となってくるものと考えておりまして、県は広域的、総合的な行政を行う立場から、市町村の活動を後押ししてまいるべきものと存じております。
 次に、県の行政改革の今後のスケジュールでありますけれども、本年3月に民間の有識者及び各界各層の代表者などで構成します行政改革推進懇談会に県の方で取りまとめました行財政運営の課題等に関する行政改革に関する報告書というものがございますが、これを提出、御説明したところでございます。これを受けまして、本年8月をめどに、県として取り組むべき行政改革の基本的方向等につきまして、この懇談会において中間取りまとめをしていただくこととしたいと考えております。また、行政改革には、県民の皆様方の御意見をできるだけ反映させることが適当でありますので、県民アンケート調査、一応、今年の8月から10月ごろを予定しておりますが、こういった調査の実施など、県民の皆様の御意見を伺うこととしたいと考えております。
 その後、行政改革推進懇談会において、行政改革の課題の具体化方策などについて多面的な検討をお願いしまして、本年12月までに最終の意見書の取りまとめをしていただく予定でございまして、県としては、これを受けて平成8年、来年でありますが、1月をめどに新たな行政改革大綱を策定いたしたいと考えております。
 次に、保健医療・福祉の連携についてでありますが、御案内のとおり、本県におきましても急速な人口の高齢化が進行しておりまして、県民の保健、福祉に対するニーズはますます増大しております。県といたしましては、これまで昭和61年7月に、知事を会長とする岩手県高齢化対策推進会議を設置しましたほか、62年11月には、高齢者サービス総合調整推進会議を本庁及び地方振興局の所管区域ごとに設置しまして、高齢者のニーズに対応した保健、医療、福祉サービスを提供するための体制の整備を図ったところであります。
 さらに、平成5年4月には、生活福祉部に高齢福祉課、環境保健部に健康推進課を設置しまして、高齢者福祉施策や健康づくり施策の推進のための執行体制を整備いたしますとともに、人事の面でも保健部門と福祉部門の交流の活発化を図るなど、連携を強化しながら長寿社会に対応した体制づくりを進めてきたところであります。今後におきましても、平成9年4月の地域保健法の全面施行などの国の動向を踏まえますとともに、行政改革推進懇談会の御意見等を総合的に勘案しながら、市町村や県民のニーズに十分対応できるよう、保健、医療、福祉の連携のあり方について、積極的に検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、出資法人の適正化についてでありますが、出資継続の必要性の見直しということにつきましては、県は昭和59年6月、行政改革推進本部決定の出資法人の整理合理化実施要綱というものに基づきまして、出資法人の整理縮小の一貫として取り組んできたところであります。一例を挙げますならば、旅客部門を廃止しました岩手開発鉄道株式会社に対する出資を平成5年7月に引き揚げた、こういう例がございます。
 出資法人の新設につきましては、庁内に出資等適正化調査委員会というものを設置いたしまして、出資の必要性について慎重に検討を行って対処してきておりますが、近年の高齢化、国際化などの社会経済情勢の変化に対応するために、民間の活力を生かしながら、住民福祉の向上を図るための手段として県の出資が必要とされることもございまして、結果として出資法人数がふえているというのは事実でございます。
 また、財団法人の低金利下での運営の実態につきましては、御指摘のように、主として基本財産等の運用益によって事業運営を行っている法人におきましては、かなり厳しい環境におかれているものと存じますけれども、初期の事業の運営が不可能になっているというような事例はないものと承知しております。いずれにいたしましても、出資法人がその設置目的を達成するために、法人として創意工夫を講じながら努力をしていただきたいと考えておりますし、県といたしましても、必要な指導等を行ってまいる考えでございます。
 また、類似目的の法人の統合という問題につきましては、御案内のことと存じますけれども、昭和60年3月に財団法人岩手県民会館、それから財団法人岩手県埋蔵文化財センター及び財団法人岩手県文化振興基金、この3法人を統合いたしまして、財団法人岩手県文化振興事業団を設立したような経緯がございます。今後におきましても、出資法人の適正化のため、出資の継続の必要性、出資法人の新設への対応、類似法人の統合について、これまでの基本的な考え方をもとに、行政改革推進懇談会の御意見等も伺いながら検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、事務事業の民間委託についてでありますが、昭和59年2月の行政改革大綱におきましては、行政責任や行政サービスの確保等に配慮しながら、積極的にこれを推進することとしておりまして、昭和59年以降、県営運動公園など各種施設の管理運営、あるいは道路補修業務など、118件を民間委託したところであります。この結果、民間のノウハウが活用されることなどによりまして、事務の軽減や迅速化などが図られたと考えております。今後、事務事業を具体的に見直すに当たりましては、引き続き民間のノウハウの活用、事務事業の効率化、経済的効果などの観点から、民間委託の可能性を積極的に検討してまいりたいと考えております。
 次に、国または市町村との人事交流の状況についてでありますけれども、昭和59年度以降について、その概要を申し上げますと、国から県への課長級以上の割愛職員につきましては、6年度末までに80名となっております。また、県職員の能力開発と資質の向上を図る観点から、中央省庁への研修派遣等を実施しておりますけれども、同じく昭和59年度から平成6年度までをとりますと、この間に47名が行政実務を通じて国の制度等を習得し、県行政の推進に大いに寄与していると認識しております。
 一方、市町村との人事交流についてでありますが、県から市町村に対しましては、昭和59年度以降57名を派遣しております。また、市町村職員の県に対する派遣研修といたしましては、これは毎年度20名前後を受け入れておるわけでありますが、同じく昭和59年度から6年度までをとりますと、合計229名となっております。
 なお、人事交流をする際に問題点があるかとのことでありますけれども、こうした交流を通じまして、異なる経験や視点を持つ職員が相互に触発され、双方の職員にとって、その資質の向上につながるとともに、国、県及び市町村間の相互理解の進展、情報交流の円滑化等により一層の連携強化が図られるなど、有意義なものとなっているものと考えているところであります。
   〔企業局長千葉克君登壇〕
〇企業局長(千葉克君) 企業局会館構想見直しの状況についてでございますが、企業局所有地に係ります当初の建設構想は、採算性あるいは周辺施設との競合などの面から、全面的に見直しをすることとし、県政課題を含め全庁的な見地から、新たな構想を策定することとしたものであります。
 新たな構想の策定に当たりましては、盛岡駅西口地区が盛岡の玄関口として交通の利便性が高く、また将来、都市構造の基礎となる都市軸の要としての役割が期待されていることから、このような立地条件を最大限に生かすことが肝要であると考えております。このため、長期的な視野に立ち、地域の特性が十分に発揮されるような施設であること、また、当該地区の開発コンセプトである遊び心、ふれあいのまちにふさわしい内容を持ち、県民に広く利用され親しまれる施設であること、さらには、周辺施設との調和にも配慮することなど基本とし、現在、幾つかの素案をもとに、内々関係部局の意向をも聞きながら検討を重ねているところであります。
 特に、本年度は3県総後期実施計画が策定される年でもありますので、引き続き関係部局との連携を図りながら、さらには、今後国鉄清算事業団との変更協議が必要とされますので、それが円滑に行うことができますように、できるだけ早い時期に成案を得るべく鋭意検討を進めてまいる考えであります。
   〔土木部長帷子幸彦君登壇〕
〇土木部長(帷子幸彦君) 中央大橋の整備についてでありますが、御案内のとおり、盛岡市は、都市整備上の課題となっております現在の都市構造を転換し、既存の都心から盛岡駅西口地区を経由して、盛南地区へと都心の中心機能を軸上に展開し、21世紀に対応する新しいまちづくりを進めているところであります。この都市整備構想の中心的役割を果たす道路といたしまして、市道盛岡駅本宮線などが位置づけられております。この道路は、旭橋からフェザンの横を通り、さらに中央大橋を経て、本宮地区の国道46号西回りバイパスに連絡するもので、盛岡駅西口と盛南地区の一体的整備を図る上でも極めて重要であると認識しているところであります。この道路の整備につきましては、雫石川にかかる中央大橋と中央公園の区間以外は土地区画整理事業の中で整備することとしており、現在、盛岡駅西口については、盛岡市が鋭意その整備に努めているところであります。
 お尋ねの中央大橋は、盛岡駅西口地区及び盛南地区への土地区画整理事業の進捗にあわせて整備を行う必要がありますが、取りつけ高架部等を含め延長が920メートル余にもなり、その事業費も相当の規模となることから、両地区の土地区画整理事業、あるいは現在整備中の盛南大橋を含む市道開運橋飯岡線の進捗状況を見きわめながら、できるだけ早期に着工できますよう、盛岡市や関係機関と調整を図ってまいりたいと考えております。
   〔教育長橋田純一君登壇〕
〇教育長(橋田純一君) 学校適応指導の推進、並びに中高一貫校についてお答えいたします。
 まず、学校適応指導の推進についてでありますが、いじめの発生件数については、平成6年4月から12月までの間、本県において、いじめがあったと報告された件数は182件であります。その内訳は、小学校91件、中学校62件、高等学校28件、特殊教育諸学校1件であります。なお、平成6年度全体の発生件数につきましては、この182件を含め、現在詳細な調査を実施中であります。
 次に、いじめ対策緊急会議の報告内容についてでありますが、その概要は、いじめの問題への対応に当たっては、その基本認識として、いじめは人間として絶対許されないという強い認識に立つこと、いじめられている子供の立場に立って親身な指導をすることなどが挙げられており、さらに、学校、教育委員会、家庭がそれぞれの役割を十分に果たすべきであるとし、その具体的な取り組み、指針が示されているものであります。
 次に、県の取り組みについてでありますが、本報告を直ちに市町村教育委員会に通知し、市町村における指導体制の見直しなどについて指導を行うとともに、県教育委員会に設置している学校不適応対策推進本部会議を招集し、学校適応指導の強化について協議を行ったところであります。これら一連の取り組みの結果についてでありますが、いじめ防止パンフレット、これを25万部作成し、各学校を通じて県下全児童生徒に配布し、いじめ問題の解決策の一助としたところであります。また、いじめなどの発生状況が複雑化していることから、専門家からなる学校適応指導支援チームを設置し、事例の解決策について種々の情報を提供するなど、学校における指導の支援体制の強化を図ったところであります。さらに、本年度新たに高度専門的な知識と経験を有するスクールカウンセラーを小、中、高各1校に配置し、先導的な調査、研究をすることとしているところであります。
 次に、道徳教育の現状についてでありますが、県下の各小中学校においては、学習指導要領に基づき週1時間、年間35時間の道徳の時間を中心として、全教科、特別活動など学校の教育活動全体を通じて、生命を尊重する心や感謝する心など、児童生徒の道徳性の涵養に努めているところであります。また、高等学校におきましては、特に、道徳の時間を設定しておりませんが、主として倫理などを学習する公民科を中心に、学校の教育活動全体を通じて、人間としてのあり方や生き方の指導を行っているところであります。
 次に、登校拒否については、平成5年度の出現率によれば、総じて全国平均を下回っており、高等学校の中途退学についても同様の状況にあります。しかしながら、なお相当数の学校不適応の児童生徒がいることから、県教育委員会といたしましては、学校生活や友人関係などの悩みに応ずるふれあい電話の開設、学校復帰を目指す移動適応指導教室の実施、さらには、中高連携による進路指導の徹底など、学校適応指導の充実に努めているところであります。
 次に、中高一貫校についてでありますが、公立の中学校と高等学校をあわせた6年間の一貫教育を行う学校としては、平成6年度に開校した宮崎県立五ケ瀬中学校・高等学校があり、現在、文部省指定の研究開発校として教育活動が進められているところであります。いわゆるこの6年制中等学校につきましては、さきの臨時教育審議会の答申において、中学校教育と高等学校教育の接続を円滑にし、落ちついた安定的な学校生活を過ごすことができることなどの長所がある一方、中学校教育から高等学校教育への節目がなくなり、変化を持たせにくく中だるみが生じやすいこと、十分な判断力を持ち得ないまま進路選択の決定をするおそれがあることなど、留意すべき点もあると報告がなされております。
 県教育委員会といたしましては、6年制中等学校における実践研究が開始されてまだ日が浅く、臨時教育審議会が指摘している事項等について、結論を出すまでには至っていない状況でもあることから、現在進められております第15期中央教育審議会の審議の動向を注目してまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時52分 散 会

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