平成7年6月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇25番(千葉浩君) 千葉浩でございます。
 26日急逝されました片方盛議員に対し、心から哀悼の誠を捧げ、御冥福をお祈りいたします。
 去る4月9日の統一地方選挙において当選いたしました議員5名をもって無所属クラブを結成いたしました。私は、同会派を代表いたしまして、知事の所信表明演述及び県政の諸課題について質問いたします。
 本県は、今、全国平均を上回る高齢化の進展、県内における所得格差を初めとした地域間格差の存在、農林水産業の後継者確保の問題あるいは環境保全への要請の高まりなどの多くの課題を抱えております。このようなときに、さきの統一地方選挙において、県民多数の支持を受け増田知事が誕生したのであります。このことは、とりもなおさずすべての県民の英知と創造力を結集しながら、21世紀の岩手づくりに向け、あらゆることに大胆にチャレンジするという基本姿勢、そして、知事の若さと行動力に多くの県民が共感を覚え、期待した結果であると受けとめております。私ども無所属クラブとしても、県民の幸せを第一義として、県民の意見、要望を尊重しながら増田知事とともに山積する諸課題に対応した施策を強力に推進し、県勢の発展に尽くす所存でありますが、ここで改めて知事の21世紀に向けての県政に取り組まれる決意のほどをお伺いしたいと思います。
 まず、今議会に提案されております平成7年度の一般会計補正予算案についてお伺いをいたします。
 増田知事就任後初の予算案でありますが、6月補正額としては過去最高の571億6、700万円を計上し、高齢者・障害者対策、防災対策、ウルグァイ・ラウンド農業合意対策、円高対策など、限られた財源の中で健全財政を維持しながら、県民の要望に最大限にこたえたものであると認識しております。知事は、今回の補正予算案の編成に当たって、どのような情勢判断のもとに、また、どのような点に意を用いながら増田カラーとしての政策を打ち出されたのかお伺いをいたします。
 次に、県内の景気動向についてお伺いをいたします。
 政府は、我が国の景気動向に関しては月例経済報告などで緩やかながら回復基調をたどっているとの立場をとっておりますが、先般行われました新聞社の全国世論調査によりますと、雇用環境や収入の先行きに不安を感じる人が65・8%に達し、約90%の人が景気が上向いているとの実感はないと考えているとの結果が出ております。このような状況の中で、本県における最近の景気動向についてどのように認識されておりますか、お伺いをいたします。
 次に、関連いたしまして、最近の円高に対応した中小企業対策についてお伺いをいたします。
 昨年6月末に1ドル100円を切った円相場が4月19日には1ドル79円75銭の最高値を記録するなど、最近の急激な円高は、中小企業はもとより、大企業においても輸出採算割れになるなど、我が国産業に大きな影響を与えております。特に中小企業においては、円高の影響があるとした企業が75%に上るとの中小企業庁の調査結果が出ております。このような状況の中で、国は中小企業の経営基盤の強化や構造改革の支援を図るため、資金供給のさらなる円滑化、新分野への進出等の一層の支援、円高の影響を受ける中小企業を対象とした緊急相談等を内容とする中小企業円高対策を実施していると聞いております。本県においても、地域の振興を図る観点から、国の緊急円高・経済対策に対応した円高・中小企業対策を講ずることが肝要であると考えるのでありますが、どのように対処されようとしているのか、御所見をお伺いをいたします。
 次に、3次救急医療施設の整備についてお伺いをいたします。
 本県における救急医療体制は、開業医等による初期救急、病院群輪番制方式による2次救急、そして盛岡市にある岩手県高次救急センターが対応する3次救急と、一応のシステム化がなされ、それぞれの機能を分担しながら救急医療に対処しているものと聞いております。しかしながら、近年、車社会の進展に伴う交通事故による重症患者や、人口の高齢化に伴う心疾患等の患者が増加し、これらに対応する高度な救急医療への期待が一層高まってきておりますが、本県は面積が広大で、かつ山間部を多く抱えていることから、盛岡市内に設置している高次救急センター1つでは患者搬送に時間を要し、全県をカバーすることはますます困難になってきているものと認識しております。このため、他地域への3次救急医療施設の整備については、県において救急医療体制のあり方について総合的な検討を行っているものとのことでありますが、私としても県民医療の一層の向上のため早急な整備を望むものであります。この件についての知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、農業問題についてお伺いいたします。
 私が改めて申し上げるまでもなく、我が国農業はこれまで幾度となく大きな変革に遭遇してまいりました。戦後農政の最初の変革は、農地改革でありました。これにより農村構造は一変し、以後、自作農が農業の担い手となって食料の増産が行われてまいりました。それも30年代に入り、食料の安全生産体制ができるやいなや、農業基本法のもとに選択的拡大の時代に入りました。これが第2の変革であったと考えるのであります。そしてさらにきわめつけが、第3の変革と言われる昭和45年から実施された水田転作、すなわち減反政策であります。その問題が今も尾を引いている状況にあり、まさに農政が転換される都度農家にはさまざまな打撃を与え、厳しい状況に追いやってきたところであります。これが猫の目農政と言われたり、今では余りにも変わり目が早いのでまばたき農政と言うそうでありますが、農家の心情は察するに余りあるものがあります。しかし、農家はあらゆる場面において歯を食いしばって頑張ってまいりました。こうした農家の努力をしり目に、ウルグァイ・ラウンド合意の受け入れという新たな課題に直面することになりました。既にこの4月から我が国農業はかつて経験したことのない総自由化時代に突入したところであります。その結果、好むと好まざるとにかかわらず、本県農業も世界の中に何の防備もなく、しかも全く先の見えない荒波の中に投げ出されることになったのであります。
 知事は、農業がこうした大きな変革のときに県政のかじ取りをされることになったわけでありますが、農政の基本姿勢とその決意について御所見を承りたいと思います。
 次に、農業の個別問題についてお伺いをいたします。
 私は、これからの農業を活力あるものにしていくためには、大きくは農業構造の改善、そして技術革新の2点に絞られるのではないかと考えております。まず、農業構造の改善についてでありますが、ただいま申し上げましたように、新たな農業環境のもとで、本県の農業を地盤沈下させることなく発展させていくためには、いかにしてしっかりした農家を育てていくか、そして、それぞれの地域においてこうした農家をどう位置づけ、地域農業全体の仕組みをつくっていくかということに尽きるのではないかと思っております。
 こうした観点に立って申し上げますが、国は平成4年、今後の我が国農業の基本とも言うべき新政策を公表いたしました。これによりますと、例えば稲作では10から20ヘクタールの経営体を育成するとしております。確かに我が水沢管内においても既にそういった規模の農家が数戸ではありますができてきておりますし、現在進めている圃場整備が完了すれば条件的には大規模稲作経営の育成は可能であり、また、これからの時代を考えますとぜひ進めなければならないことであると考えております。しかし、こうなればごく一部の農家で間に合うことになり、規模が小さくともまだまだ農業で頑張りたいと思っている農家をどうするかという問題が残ることになります。
 そこでお伺いいたしますが、新たな国際環境に対応し将来を考えた場合、農家の育成をどのように考えていくのか、そして、農業全体の仕組みはどうあればいいのか、言うなれば農業構造の改善方向についてお伺いをいたします。
 2つ目の問題でありますが、技術革新にどう取り組んでいくかということであります。
 今般のウルグァイ・ラウンド農業合意の実施により、本県農業農村においては21世紀に向けた新たな国際環境への対応が大変重要になってくると思うのでありますが、そうした中にあって、本県の立地特性を高度に利用し、永続的な展開を可能とする本県農業を構築するためには、時代を先取りした国内外の先端をいく研究開発がますます重要となると考えております。そういった観点から、新たに整備される研究センターでの研究の成果に大きな期待を寄せております。知事演述の中でも農業研究センターの整備を進めると述べられておりますが、この整備に当たっては、研究運営のあり方を十分検討し、進めることが重要であると思うのであります。新たな研究センターにおけるこうした研究の取り組みのあり方など、基本的な考え方について知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、こうした問題とあわせて重要なことは、作目の振興をどう図っていくかということであります。時間の制約がありますのでここでは米についてお伺いしますが、ぜひ園芸、畜産についても積極的な振興策を講じられますようお願いする次第であります。
 申し上げるまでもなく、稲作は本県農業の基幹部門であり、また、その豊凶は、農家経済はもとより、県経済に少なからぬ影響を及ぼしてきており、県民ひとしくその動向に高い関心を持つところであります。今、米をめぐっては、半世紀に及ぶ食糧管理法から、この11月には規制緩和等を主眼とするいわゆる新食糧法へと移行すると聞いております。この新食糧法では、生産者のつくる自由、売る自由が認められ、また、流通業者の新規参入も容易になるとのことであります。既に消費地の流通業界では水面下での動きがあるやに聞いております。このことからも、米の世界では生産、流通、そして消費に至るまで大きく変貌し、厳しい競争の時代が到来するのではないかと言われております。しかもミニマムアクセスによる外国産米の輸入が始まるなど、国際化が考えられ、加えて米の在庫水準は大幅な過剰を抱えているとのことであり、米の入札価格がどうなるのか、生産調整はどのような規模になるのか、全く予断を許さない状況にあります。岩手の米生産をどうするか、そして、どう販売していくのか、安閑としてはいられないのであります。今こそ内を固め、外に打って出るという確固たる姿勢が求められていると考えるのであります。
 そこで知事は、稲作の基本方向をどのように考えておられるのか、御所見をお伺いいたします。
 農業問題の最後に1つ要望しておきますが、国が6兆100億円を投じてウルグァイ・ラウンド対策を講ずるということは大変結構でありますが、市町村では財政負担ができなくて大変困っており、なかなか事業消化が難しいのではないかと考えております。この市町村負担について、さらに軽減されるよう国に要請していただくとともに、県でも対策を措置していただきますよう強く要望しておきます。
 最後の質問になりますが、地方振興局の機能の充実、強化についてお伺いいたします。
 昭和61年の4月、県内12カ所に設置された地方振興局は、市町村と緊密な連携を図りながら、地域特性を生かした振興施策を総合的に推進する拠点機関として、創設以来10年目を迎えております。この間、地域活性化事業調整費の活用による地域活性化施策の誘導促進や独自の地域課題への取り組みなど、拠点としての機能の発揮に努めてきたことは御案内のとおりであります。しかしながら、地域の特性に応じた個性ある地域づくりや住民福祉の増進を図るためには、地域住民の意向やニーズを今まで以上に的確に反映し、一層地域に密着した行政を行うことが強く求められていると考えております。このためには、例えばより一層の権限委譲を行う、あるいは他の出先機関を統合するなど、市町村と一体となって施策を推進する地方振興局の機能の充実、強化について検討する時期に来ているのではないかと考えております。発足10年という歳月を経、いわゆる地域における総合行政の担い手である地方振興局に対する知事の御所見をお伺いをいたします。
 最後に、増田知事におかれましては、常に県民の先頭に立ち、渾身の力を込めて県勢の発展と県民生活の向上に取り組まれることを県民とともに御期待を申し上げ、私の質問を終わります。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 千葉浩議員の御質問にお答えします。
 まず、県政に取り組む決意についてでありますが、本県は、今まさに21世紀に橋渡しをする重要な時期を迎えておりますことから、県民の皆様の負託にこたえ、ふるさと岩手の創造のため、柔軟な発想と情熱、信念を持ってあらゆる困難に立ち向かう決意であります。
 次に、平成7年度一般会計補正予算案についてでありますが、私は、県勢は着実に発展してきているものの、なお県民1人1人が安全で、かつ豊かさを実感できる生活の実現に向けた取り組みが必要であると認識いたしております。今回の予算編成に当たりましては、このような考え方のもとに、健全財政の確保に配慮しながら、緊急度の高いものや経済社会情勢の変化に対応したものについて、県民の要請にこたえ得るよう最大限の努力を払ったところであります。特に、高齢者や障害者などの方々が暮らしやすい社会づくりを進めるため、新たに条例を整備するとともに、この趣旨に沿い、民間事業者がスロープやエレベーターなどの整備を行う場合の資金貸し付けや在宅の要援護老人や重度障害者に対応したトイレ、浴室の改善等に対して補助するなど、種々の福祉施策を積極的に進めることといたしております。
 また、安全な県民生活を確保するため、緊急防災対策として50億円を超える公共事業を実施するほか、県単独でも県警本部のヘリコプターにテレビ中継システムを導入するなど、その対策を鋭意推進することとしております。
 さらに、円高対策、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策など、各般にわたり積極的な諸施策を展開し、活力に満ちた夢あふれる県土づくりに全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 次に、最近の景気動向についてでありますが、議員御指摘のとおり、国内の景気動向につきましては、経済企画庁の見解によれば、個人消費や住宅建設、雇用情勢などに弱い動きが見られるものの、設備投資は総じて下げどまりの動きが見られるほか、鉱工業生産は基調としては緩やかな増加傾向にあることなどから、全体としては一部に弱い動きが見られるものの、企業設備等の調整が進展する中で、我が国経済は緩やかながら回復基調をたどっている。ただし、円高の悪影響が一部に見られるとしているところであります。このような中で、本県の景気動向について申し上げますと、個人消費については、大型小売店販売は前年水準を下回り伸び悩んでおりますが、乗用車販売は前年水準を上回って推移しております。建設投資については、高い水準を維持してきた住宅建設はこのところ前年水準を下回っており、公共工事も前年を下回っております。雇用面については、有効求人倍率は低下してきておりますが、全国よりも高い水準にあります。生産活動については、鉱工業生産は、基調としては前年水準を上回って推移をしております。
 以上のことから、総合判断といたしましては、県内景気はこのところ一部に伸び悩みの傾向が見られるものの、全体として見ると、国内景気と同様に、基調としては緩やかながら回復の方向に向かっているものと認識しております。
 なお、円高の影響につきましては、引き続き注視していく必要があるものと考えております。
 次に、国の緊急円高・経済対策に対応した県の円高・中小企業対策についてでありますが、本県中小企業は、最近の急激な円高による親企業の海外シフト、海外製品との競合、さらには国内市場の成熟化など、円高を背景とした構造変化に起因するさまざまな課題に直面し、事業の再構築など、新たな活路を求めた厳しい選択を余儀なくされております。このような中で、本県の活力を維持、向上させ、豊かな県民生活の実現を図る上で、その先導的役割を担っている中小企業の振興は重要と考えているところであります。そのため私は、中小企業の自助努力を基本とし、果敢な企業家精神を発揮し、柔軟に対応できるよう、新技術や新商品の研究開発に対する支援を初め、独自の技術や市場性を持った自立型企業の育成、新たな時代を開く創業者に対する支援など、本県産業構造の高度化と、多彩で創造性と活力にあふれる中小企業の育成に努めてまいる所存であります。
 このような観点から、国の緊急円高・経済対策を踏まえ、中小企業の経営基盤の安定を図るため、中小企業経営安定資金や緊急経営支援資金などの県単融資制度の融資枠の拡充、強化を行うとともに、中小企業の新規事業分野の開拓を支援するため、新技術の研究開発に対して助成するほか、県単独事業として、創業者が県内に定着できる基盤を形成するため、いわて型インキュベータ推進事業を実施するなど、構造対策を推進することとしております。
 また、さきの政府予算統一要望においても、本県の中小企業が環境変化に適応し、新規創業や研究開発が円滑に推進されるよう、諸施策の拡充、強化について要望したところであり、今後とも国の諸施策と連携を図りながら、総合的な中小企業振興策を講じてまいる所存であります。
 次に、3次救急医療施設の整備についてでありますが、救急医療は人のとうとい命を守るという医療の原点とも言うべきもので、その体制の整備は大変重要な課題であると認識しております。御案内のとおり、近年、車社会の進展に伴う交通事故の増加、さらには人口の高齢化に伴う心疾患等の患者が増加し、これらに対応する高度な救急医療への期待が一層高まってきております。このため、現在、岩手県救急医療検討会において、第3次救急医療施設の整備はもちろんのこと、これらを支える初期及び2次救急医療施設の整備あるいは道路整備を含む患者搬送体制の整備、救急医療に対する県民の理解と協力など、本県における救急医療体制のあり方について総合的に検討を行っていただいているところであります。
 本年3月、同検討会から、当面、早急に取り組むべき事項として、3次救急医療体制の整備及び患者搬送体制等の充実についての中間報告が行われたところでありますが、この提言によると、3次救急医療施設の整備について、岩手県高次救急センターから地理的にも時間的にも遠い地域にあり、かつ救急医療資源も希薄な沿岸北部及び沿岸南部には早急に救命救急センターを設置することが望ましいとのことなどでありました。私といたしましては、この検討結果を踏まえ、県民がどこに住んでいても速やかに高度な救急医療が受けられるよう、3次救急医療施設の拡充について早急に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、農政の基本姿勢についてでありますが、農業は、食料の安定的な供給や県土の保全、潤いのある居住空間の形成など、県民生活にとって重要な役割を果たしているほか、本県経済の基幹をなす重要な産業であることから、このたびのウルグァイ・ラウンド合意の実施という変革の中においてもいささかも揺るぐことがあってはならないと存じております。また、世界における食料需給は、急激な人口増加や気象変動、農地の荒廃などにより全体としては逼迫することも予測されており、このような状況をも視野に置いて今後とも農業を守り育てていかなければならないと考えております。私は、このような認識のもとに、本県農業の発展方向をしっかり見据えて、農業に携わる方々の意欲の喚起に努めながら、農業が魅力ある産業として選択され、他産業と遜色ない所得が得られるような経営体の育成を図るとともに、地域の農地、労働力等の農業資源を十分に活用した効率の高い地域ぐるみ農業の形成を一層促進してまいる考えであります。
 また、中長期的な営農方向に対応した農業生産基盤の整備を加速的に推進するとともに、中山間地域における多彩な農業の展開や内発的な地域づくり活動に対する支援などの活性化対策を強化してまいる考えであります。こうした体質の強い農業の構築に向けた取り組みを強力に展開し、地域経済の基幹をなす産業として21世紀に引き継いでいけるよう、最大限の努力を傾注してまいる決意であります。
 次に、農業構造の改善方向についてでありますが、近年、農業労働力の減少や高齢化が進む中で、本県農業の発展を図るためには、地域農業を中心となって担う農家を育成、確保することが緊要な課題であると存じております。このため、それぞれの地域において、将来にわたり意欲的に農業に取り組もうとする主業型農家につきましては、農地規模の拡大や集約部門の導入など、営農条件の整備を進め、農業所得で生計が営めるよう重点的に育成してまいる考えであります。
 また、世代交代を考慮に入れますと、今から手おくれにならないように、新規学卒者、Uターン青年などの農業後継者を確保していくことが極めて重要であると存じております。同時に、こうした経営体の育成とあわせて、地域の話し合いを進め、合意形成を図りながら、兼業を志向する複業型農家や自給型農家についても野菜、花卉などの収益性の高い部門の導入など、それぞれの営農志向に応じて双方が利益を享受できるような、全体として効率の高い地域ぐるみ農業の形成を加速化していかなければならないものと存じております。
 こうした考えのもとに、農業構造の改善につきましては、先般策定した岩手県ウルグァイ・ラウンド合意関連対策推進方針におきましても重要な柱として位置づけたところであり、今後とも農業者を初め、関係機関、団体の総力を挙げて、これからの時代に対応できる足腰の強い農業構造を構築してまいりたいと考えております。
 次に、農業研究センター、これは仮称でございますが、この農業研究センターにおける研究推進の基本的な考え方についてでありますが、私は、21世紀に向けて、足腰の強い農業への再編を推進するためには、農業技術の革新を図っていくことが不可欠であり、その先導的役割を担う研究の取り組みを積極的に推進していくことが極めて重要であると認識しております。このため、新たに整備する農業研究センターにおきましては、バイオテクノロジーを積極的に活用した独自品種の開発や大区画圃場における超省力、超低コスト生産技術の確立など、時代を先取りした新たな研究課題の効果的な設定とその推進体制の整備が必要であると考えております。
 また、重要かつ緊急な課題につきましては、横断的なプロジェクト研究により早期に課題解決を図るほか、大学や国の研究機関との共同研究、先端技術の研修、研究環境の充実など、効率的な試験研究が推進できる体制を確立することが肝要であると考えております。
 さらに、新たに開発された技術につきましては、農業情報システムの整備による迅速な情報提供や先端技術の展示を行うとともに、地域農業改良普及センターとの連携のもとに現地実証試験地を設置するなど、研究成果の農家への早期普及、定着を図るための体制づくりが重要であると存じております。このような考え方のもとに、平成9年度の開所を目指し、現在その具体的な研究体制等につきまして鋭意検討を進めているところであります。
 次に、本県稲作の基本方向についてでありますが、稲作は本県農業の基幹作目であり、地域経済を支える重要な部門でありますことから、この秋に予定されている新たな米管理システムに適切に対応し、県産米の評価を高め、他産地との競争に打ちかっていくことが喫緊の課題と存じております。したがいまして、私は、本県産米の特徴である有機質の施用量が多く、農薬の使用量が少ないことなどの安全性や、新品種ゆめさんさ、かけはしを本県産米の顔として、独自性を強調した積極的な販売活動を展開し、消費者や流通業界からの引き合いを強め、安定的な販売先を確保していくことが重要と考えております。同時に、このような販売の取り組みにあわせ、食味分析等の科学的根拠に基づいた品種の配置や、栽培法をより徹底し、高品質米の低コスト、安定生産に努めるとともに、食味にすぐれた主食用米はもちろんのこと、値ごろ感のある業務用米、醸造用米、モチ米など、多様な需要に的確に対応できる生産体制を早急に確立することが肝要であり、こうした考えのもとに鋭意努力してまいる所存であります。
 なお、ウルグァイ・ラウンド対策に伴う市町村負担の軽減につきましては、引き続き事業の効率的な実施による事業費の抑制、国への地方財政措置の一層の拡充要望など、その軽減に努めてまいりたいと考えております。
 次に、地方振興局の機能の充実、強化についてでありますが、御案内のとおり、地方振興局は、個性ある地域振興施策を総合的に推進する拠点として設置したものであり、その円滑な運営に資するため、これまでも可能な限り現地処理になじむ事務は現地で処理するという考え方のもとに権限の委譲を行うとともに、企画振興主査等を設置するなど、内部体制の強化を図り、地域のニーズや情勢の変化に対応して、随時見直しを行いながら機能の充実に努めてきたところであります。
 また、創意工夫を凝らした地域振興策を展開するための地域活性化事業調整費の効果的な活用により、地域の特性を生かした個性ある事業を積極的に展開してきたほか、市町村の垣根を越えて、広域的な地域課題への取り組みを通じた、例えば胆江地域のアテルイの里構想などに見られるような広域圏としての連帯感の醸成や広域行政の推進に大きな役割を果たすなど、地方振興局は着実に成果を上げてきていると考えております。
 今後における地方振興局の機能の充実、強化につきましては、ただいまの御提言の趣旨も踏まえ、また、行政改革推進懇談会の意見等をも総合的に勘案しながら、権限委譲を初めとする諸施策を積極的に講じてまいる所存であります。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時 散 会

前へ 次へ