平成7年9月定例会 第3回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇17番(佐藤一男君) さきの4月の統一地方選挙におきまして、3回目の挑戦で当選させていただきました遠野選挙区の佐藤一男でございます。
 このたび、先輩、同僚議員の皆様の御指導を賜りながら、一般質問の機会を与えていただきましたことに、心から感謝を申し上げる次第でございます。それでは、御了承を賜りまして、早速に質問に入らせていただきます。
 まず初めに、農業振興について質問させていただきます。
 御承知のとおり、本年からミニマムアクセスの米輸入が開始され、また11月からは、いわゆる新食糧法が施行されるなど、農業を取り巻く情勢はまさに大きく変化しております。こうした情勢の変化は、平成3年に県が策定した第三次新岩手農業確立計画の前期期間中において、とりわけ顕著になってきております。こうした中で、今後、産地間競争がますます激しくなっていくことが予想されますが、私は、我が国の農業を支えていくという大きな視点に立って、本県農業をどう展開していくかということが、確立計画の後期実施期間の最も重要な課題と考えておるところであります。知事御自身も市場視察会、あるいは岩手の花キャンペーン等に精力的に足を運ばれ、生産者や市場関係者、消費者などにじかに触れてきたと聞いておりますが、本県農業に対する認識も、また新たにされているのではないでしょうか。
 そこでお伺いしますが、知事は、去る7月に、農政審議会に対して確立計画の後期推進計画の策定について諮問されたところでありますが、策定に当たっての基本的な考えについて、率直なところをお聞かせをいただきたいと存じます。
 さて、今年11月1日から、食糧管理法にかわる新食糧法が執行されますが、このことに関しましてお尋ねをいたします。
 まず、生産調整についてでありますが、新法によれば、生産調整は生産者の自主性に委ねるとしておりますが、米の需給バランスを考慮するならば引き続き行政の指導が必要ではないかと考えます。また、生産者に減反の協力を願って、生産量の調整をする必要があると思いますが、いかがなものかお伺いをいたします。
 2点目は、計画流通についてでありますが、このことについて、新法では、農業団体及び民間団体に委ねるとしておりますが、混乱を防ぐために、国や県の責任でコントロールする機能が必要ではないでしょうか。また、売ることも買うことも自由でありますが、豊作や凶作のときは市場原理によって価格が大きく変わる心配があります。これらの点について、どのように考えておられるのかお伺いをいたします。
 3つ目は、備蓄米についてでありますが、不慮の災害、災難あるいは緊急時の対応策として、政府は年間150万トン程度の備蓄米を考えており、また、一部民間調整保管もあると聞いております。この民間調整保管にかかる金利、保管料、古米処理等の費用についてはどうなのか、また、政府米として買うのであれば問題はないのでありますが、豊作の年はどうなのか、お教えを願いたいと存じます。
 次に、中山間地域対策についてでありますが、水田が持つ環境維持の機能や景観等に果たす役割は、今さら申し上げるまでもないところであります。遠野地域では地域特有の傾斜地が多い中にあって、低農薬栽培という目的のもとに、有機質の導入、特色ある農業を実践しているところでありますが、耕地が狭く作業能率が悪いため、現状では抜本策がないのであります。しかも、基盤整備の立ちおくれは手の施しようがない状況であり、このままでは、さらに過疎化や耕作放棄が進むことが予想されます。こうした状況を防止するためにも、農業人口の維持や農村景観の保全等を目的とする所得保障制度、あるいは地域が自由な発想で取り組めるような地域活性化のための資金の設置が必要と思われますが、いかがなものかお伺いをいたします。
 次に、農業農村の基盤整備についてお尋ねをいたします。
 最近、国の景気対策やウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の実施に伴い、農業農村整備事業が急激に増加してきております。この事業は、本県にとっても、農業の体質強化や中山間地域の活性化を図る上で欠かせないものであり、今後とも積極的に推進する必要があると考えております。この事業の本県における状況を見ますと、平成6年度の事業費は690億円で、これは平成3年度に比べ、実に84%の伸びとなっております。また、私の地元である遠野地域では、現在、実施地区として6地区、本年度採択予定区が2地区あり、調査地区等、今後予定されているものを含めますと、所要面積で1、638ヘクタール、所要工事費で218億円に上る事業となります。こうした状況から、今後、平成12年までの事業量を勘案した場合、現在の執行体制で対応できるのか懸念されるところであり、特に、遠野地域では、今の振興局の体制では限界ではないかと憂慮されるところであります。ついては、今後の円滑な事業実施のために執行体制についてどのようにお考えなのか、お伺いをいたします。
 遠野地方では、国及び岩手県の大規模畜産基地建設を目的に北上山系開発が行われ、約152億円を投入し、肉用牛の生産振興を推進してきました。生産農家は、経営が苦しい中にあっても頑張り続けた結果、上閉伊地区は飼育頭数の減少しない地区として認知されております。しかしながら、廃業を余儀なくされた場合、借金だけが残るありさまで、畜産農家の置かれている現状は極めて憂慮にたえないところであります。このような状況の中で、県内で定期的に開催される5家畜市場、2つの市場に統合する計画は、北上山系開発に逆行する施策であり、さらに畜産農家を窮地に陥れる計画であります。これは購買者だけを考慮に入れた統合再編であり、増頭運動に賛同し取り組んできた生産者の意欲の減退にもつながるものであります。北上山系開発の拠点として位置づけられている遠野家畜市場の存続を強く願うものでありますが、御所見を賜りたいと存じます。
 次に、岩手県立遠野高校ビジネス校についてお伺いをいたします。
 知事は、県政に取り組む基本理念の1つとして、県勢の発展には、まず人材の育成が重要であるとのお考えを述べられておりますが、私もまさに同感であります。最近の教育は、子供に目的意識のないまま学校教育の補完として塾に通わせ、進学校に入学させ、さらに有名大学といわれる学校を卒業させ、一流企業に就職させることのみに没頭してきたのではないでしょうか。その結果、教育のひずみとして、落ちこぼれ、登校拒否、いじめ等々の問題が生じ、社会問題化しております。また、上級学校に入れるため、親は昼夜をいとわず、ただただ働き、その上、食費までも切り詰めて送金し続けてまいりました。また、子供の高学歴と引きかえに、これから楽になると思っている矢先、子供たちは経済の中心地である大都市圏に集中してしまい、その結果、県内の産業界等の高齢化が進み、後継者難に悩んでいるのが現実であります。私は、山深い1軒家に住んでおられる老夫婦やひとり暮らしの老人とよく話をする機会があり、子供や孫の自慢話をよく耳にしますが、その裏には一抹の寂しさを感じるものであります。現代の若い者の考え方には、高収入で休みが多く、汚れない仕事に就き、楽に過ごせること、それが価値ある人生であるという風潮が定着しているように思われますが、嘆かわしい次第であります。おのれが自分のために、家族のために、そして地域や社会のために何をなすべきか、何ができるかの目的を持って働くことに価値があるのではないでしょうか。今、地方の時代と言われるとき、我が岩手の教育は、中央のための教育ではなく、地方のための教育を行うべきであると考えるのであります。
 萩原茂裕先生が書かれた第4の教育という本を読み、私は鳥肌が立つ思いをしました。それは学校教育、家庭教育、社会教育に続く第4の教育として、ふるさと教育が必要だというものであり、ふるさとを愛する人間がその地域に何人いるかによって、その地域の活性化もまちづくりも決まるという内容であったと思います。先人が築き、守り育ててきた県土岩手を知り、その上で、自分が何をなすべきかの目的を持たせる教育を行うことが必要ではないでしょうか。均衡ある県土発展の基礎を築くために、今、投資することで10年後には若い芽が続出するものと確信をするものであります。
 先般、岩泉高校田野畑校が第19回全国高校総合文化祭・郷土芸能部門で最優秀賞の栄誉に輝き、国立劇場での東京公演に選ばれたことは高く評価するものであります。岩手日報の紙面で、参加者の1人が、一生の思い出となり、誇りに思う、みんなが1つの目標に向かって頑張ることができて楽しかったと紹介され、参加した28名の生徒はもちろんのこと、同窓生、同郷の人々にとって誇りであると思うものであります。文化祭に参加した生徒諸君は、どこで仕事をし、どこに住もうと、田野畑を一生忘れることはないと思います。
 さて、私の選挙区に岩手県立遠野高等学校情報ビジネス校があります。この高校は宮守村に設置されておりますが、今日まで村民挙げて独立校にすべく運動を繰り広げてまいりました。しかし、いまだにその願いが実現されていません。その理由の1つは、遠野宮守の児童・生徒数の減少により、定員確保の見通しが立たないからと聞き及んでおりますが、県内の高校入学数が減少傾向を示している今日、同校はここ数年定員を充足しており、予測でありますが、今後も現状で推移するものと思われます。その根拠としては、情報処理教育、国際理解教育等、特色ある学校として県内外から注目され、この間の卒業生は1、675名にも及び、地域の果たした役割ははかり知れないものがあります。学校運営も経営の一環としてとらえる必要があるものの、県立高校の場合は、経営面だけからの判断はいかがなものかと考えます。
 現在の県立遠野高校情報ビジネス校は、見るからに威風堂々とし、まさに独立校であるかのように整備されております。学校創立以来、48年の歳月に要した投資額は膨大な額になっていると思われますが、半世紀も分校として放置された経緯の本質を考えるとき、これでよかったものかと疑うものがあります。地元住民の半世紀にわたる悲願の心を心とし、平成2年の岩手県議会9月定例会における県立遠野高校情報ビジネス校、分校から独立校へという請願採択決定の結果を宮守村民はもとより、隣接市町村住民が期待を込めて見守ってきた心情などを踏まえ、県議会の権威を教育長はどのように受けとめているか、御所見をお聞かせ願いたいと存じます。
 次に、保健所の見直しについてお伺いいたします。
 この問題につきましては、さきに菅原温士議員が質問されたところでありますが、保健所の統廃合が関連するものであり、市町村や住民からその動向に強い関心が示されていることから、あえてお伺いをする次第でございます。
 保健所につきましては、公衆衛生行政の中核として、多大な役割を果たしてきたものと認識をいたしておるところであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 近年に至って、高齢化や出生率の低下、疾病構造の変化、あるいは食品の安全性やごみ処理等、生活環境への住民意識の高まりとともに、保健所に期待するところがますます大となっております。このため、県と市町村の役割を見直し、住民に身近で頻度の高い保健サービス等については、実施主体を市町村に移し、老人保健サービスと一体となった生涯の健康づくり体制を整備することが基本目的であり、昨年7月に保健所法が見直され、地域保健法が施行されたものと認識いたしております。
 この地域保健法によると、保健所の所管する地域は、老人保健法で規定する老人保健福祉圏とおおむね一致した地域が原則であるとされ、その施行は平成9年4月1日とされております。本県の場合、現在15の保健所が設置されておりますが、老人福祉圏とおおむね一致した地域に保健所の設置が見直された場合、おおむね9つの保健所ということになります。
 私の選挙区である遠野地域は、釜石老人保健福祉圏に含まれておりますが、現在は、釜石市と遠野市に保健所が設置されております。単純に、地域保健法に照らした場合、いずれかが統廃合されることになり、地域や自治体に大変大きな影響を及ぼすことが懸念されます。現在、平成9年4月1日の施行に向けて、保健所の見直しが検討されていると思われますが、現時点において、保健所の見直しの基本的方針をどのように考えておられるのか。また、見直しの最終の決定について、いつごろをめどとされているのかお伺いをいたします。
 次に、警察活動の基盤についてお伺いいたします。
 最近の我が国の犯罪情勢を見ますと、地下鉄サリン事件やけん銃使用の殺人事件等、国民の安全を脅かし、法秩序を破壊する事件が多発しております。また、来日外国人犯罪の凶悪化、さらには重要犯罪の広域化が顕著になるなど、治安に対する国民の不安感、危機感はかつてないほど増大しております。私は、さきの報道で県警察の力量を示す2つの記事を目にいたしました。1つは昨年、盛岡等、全国で発生した連続ゲーム喫茶事件の全容解明であります。いま1つは、本年8月現在における重要犯罪、重要窃盗犯の検挙率が全国第1位というものであります。ただ私は、この活躍を心強く思う反面、本県にも犯罪の広域化等の波が確実に押し寄せてきているものと不安感を抱くものでもあります。言うまでもなく、犯罪の抑止・検挙による法秩序の維持は、県民の安全を守るだけではなく、県勢発展の基盤とも言うべきものであります。こうした意味からも、県民の1人として県警察に対し、より一層の犯罪対策を望むものであります。しかしながら、県警察は、果たしてこれに対応し得る装備や体制を持っているのかという私なりの危惧もあります。例えば、銃器犯罪捜査や広域犯罪捜査に当たる警察官の装備や捜査資材・器材の整備は、一体どんな状況にあるのか、あるいは、一連のオウム真理教関連事件のような高度な科学知識を悪用した犯罪に対応するための装備状況はどうかということであります。もちろん、装備資材・器材の充実は予算を伴うものでありますが、議会資料等で県費に占める警察予算の構成比を見た場合、東北各県と比較して低いと言わざるを得ません。また、警察活動は、マンパワーを基本とするものであり、現在の厳しい犯罪情勢を見るとき、現有警察官の数を駆使した外部努力では限界があるのではないかと危惧を抱くものであります。
 そこで、県警察は現状の治安情勢に対処していく上で、物的、人的な警察活動の基盤についてどのように認識されているのかお伺いをいたします。
 最後に、岩手県の観光についてお伺いをいたします。
 最近、国民所得の向上と自由時間の増加によって、心豊かな生活を求める傾向が見られるようになっております。このような背景のもとに、岩手県は観光立県を標榜し観光の推進に努力されていることに心から敬意を表する次第であります。今さら申し上げるまでもなく、本県にはすぐれた自然景観、特色ある温泉、スキー場、伝統的な郷土芸能、歴史的な文化遺産など、他県に決して引けをとらない恵まれた観光資源があります。平成6年の本県の観光客入り込み数は、4、143万人回と公表されており、青森県の3、960万人回、秋田県の4、241万人回とほぼ同じレベルにあります。しかし、本県の交通の優位性や県土の広さ等から見た場合、若干の物足りなさを感じるものであります。岩手県が、東北3県の広域観光やニューカントリーライフの創造とリアス・リゾートの形成などに力を入れていることは承知をしておりますが、これまでにも増して、北東北3県の表玄関として、既存の観光資源の見直しと新しい観光資源の掘り起こしや開発を推し進め、新しいルートを設定することが重要ではないかと思うものであります。
 今まで本県の観光地は点と点が遠いと言われ続けてきましたが、これは平泉から十和田を結ぶ内陸部の縦軸と三陸リアス式海岸沿いの縦軸の2つの軸しかなく、両軸を結ぶ横軸がないからと言われます。岩手の観光の発展にとって、これからは横軸の開発こそ重要ではないでしょうか。観光地の点と点の結びつきがより強化され、入り込み数の増大はもとより、観光客の滞在時間も長くなるものと考えられます。岩手県のイメージアップとともに、経済的波及効果も期待され、また北東北3県の広域観光の振興のためにも、ぜひに早急な対応を願うものでありますが、知事の御所見を賜りたいと存じます。
 さて、横軸開発の1つとして、私は、早池峰・薬師岳を中心とした北上山地の観光開発を提案したいのであります。青森県八戸市から宮城県牡鹿半島南端に及ぶ北上山地の観光開発は、まさに広域観光開発と言えると思います。その主峰が早池峰山であります。早池峰山は、周辺の山々から浸食されがたい岩石でできており、しかも、島状に取り残された山で、3億3、000万年から1億1、000万年前にできたと言われております。植物は、地層、気候、林相の3要素によって植生が異なるとも言われ、早池峰山・薬師岳からは、固有種や隔離分布種が発見されており、その代表種がハヤチネウスユキソウでありますが、そのほかにも南限種のアオノツガザクラ、トチナイソウ、また北限種として、イチョウシダ、コモトマムシグサなど、2、000種にも及ぶ植物が分布しております。このため、植物学上貴重な山との折り紙がつけられております。この早池峰山の周辺には、早期完成が待たれる早池峰ダム、山口県秋吉台より壮大と言われる大洞地区のドリーネ、カルスト群、その麓からわき出る岩手県の名水である稲荷穴の名水があり、また雄大な寺沢、荒川、貞任、和山の各高原が連捻し、さらに付近には、又一の滝、東禅寺跡地、山岳信仰の原型がそのまま保たれている早池峰神社等々、数え切れないほどの観光資源があります。私は、こうした自然や観光資源を生かした、新たな観光拠点の創設が急務ではないかと考えておるのであります。そのことにより、新たな人の流れが創出され、整備が予定されている横断道の活用にもつながり、地域経済の波及効果とあわせて、沿岸部と県央部を結ぶ経済ルートとなり、広域的な地域の活性化にとっても重要な意義を持つものと確信をするものでありますが、御所見をお聞かせ願いたいと存じます。
 なお、遠野といえば民話のふるさととして大変に有名であります。自然の魅力に包まれた地域というイメージがすぐに脳裏に浮かぶとも言われております。私は、このようなすばらしい遠野の地に、さきに述べました自然や観光資源を背景として、日本一の自然大植物公園というものを創設してはどうかと考えておりますが、県御当局の意見、ぜひに御検討いただき、早急に着工していただきますように強く要望申し上げ、私の質問の一切を終わらせていただきます。
 長時間にわたりまして御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤一男議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、農業確立計画の後期推進計画策定に当たっての基本的な考えについてでありますが、先般、私は県内の園芸産地を見て回りましたが、そこで多くの意欲的な生産者にお会いをし、また、首都圏の市場関係者の方々から、いわゆる岩手ものの評価の高さを伺ったところでございます。後期推進計画の方向としましては、このような意欲のある生産者の経営の確立に向けた取り組みを重点的に支援をするとともに、次代を担う若い就農者の育成、確保を図るための条件整備を進めていくことが重要であると、このように認識をしているところでございます。また、園芸作物を今後の戦略的な部門として位置づけ、その生産拡大を図るとともに、米、畜産部門の効率的な生産体制を整備をして、全体として所得形成力が高く、また、環境にも配慮した持続的な農業を確立してまいりたいと、このように考えております。
 さらに、販売に当たりましては、消費者や市場、食品産業のニーズに的確に対応しながら、県産農産物の高品質、安全性を前面に打ち出したマーケティング活動を強化して、いわゆる産地間競争に打ちかつ販売戦略を展開することが肝要である、このように考えております。一方、農村生活の快適性の向上を図るために、集落排水施設など、おくれている生活環境の整備を加速的に進めることも重要でありまして、こうした考えのもとに後期推進計画を策定し、将来にわたり本県農業農村が発展していくための基礎を築き上げてまいりたい、このように考えております。
 次に、本県の観光についてでありますけれども、本県の観光振興は、内陸部と沿岸部を結ぶ横断的な魅力ある観光ルートを設定するとともに、滞在型の観光振興を図ることが重要な課題である、このように認識をしております。このため、従来、内陸部と沿岸部を結ぶ道路網の整備を図るとともに、北上山系地域に点在する高原、鍾乳洞群などの自然景観や民俗文化などのすぐれた観光資源の有効的な活用を図るなど、観光客の誘致拡大に努めてきたところでございます。今後におきましても、御提言の趣旨を踏まえまして、近年の観光ニーズに対応した北上山系地域の自然や歴史、民俗文化などとの触れ合いができる、いわゆる体験型観光などの新たな観光資源の掘り起こしに努め、隣県との連携なども視野に入れた魅力ある滞在型の広域観光ルートの設定を図るなど、観光岩手の創造に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔農政部長佐藤昭美君登壇〕
〇農政部長(佐藤昭美君) まず、新食糧法のもとでの生産調整についてのお尋ねにお答えいたします。
 新しい生産調整につきましては、生産者の自主的な判断を尊重することを基本としまして、現在、国におきまして、その仕組み、手続について検討していると伺っております。現在の米の需給状況は依然として潜在的に供給過剰の状態にありますことから、農業者の御理解のもとに、今後とも生産調整を円滑かつ適切に実施しまして、米価の大幅な下落を抑制することにより、農家経営の安定を図っていくことが重要であると考えております。殊にも新しい生産調整の推進に当たりましては、新食糧法下の米流通が民間による自主流通米を基本としますことから、生産者や生産者団体の主体的な取り組みにより、互助方式の導入など、全員参加の仕組みを地域、地域で構築していくことが肝要でありますので、県といたしましても、こうした取り組みに対し積極的な支援、指導に努めてまいりたいと考えております。このような観点から、本年度、水田利用調整円滑化促進対策事業を創設したところでありまして、これにより、先般、農協中央会に新しい生産調整の周知や生産者の意向調査、地域間調整の仕組みづくりなどを担う水田利用調整推進センターが設置されたところであります。今後におきましても、国の検討方向を踏まえ、農業団体や推進センターとも連携を深めながら、新しい生産調整への円滑な移行に向け適切に対処してまいりたいと存じております。
 次に、新食糧法のもとでの米の計画流通についてでありますが、御案内のとおり、新食糧法につきましては、民間流通による自主流通米と備蓄用としての政府米を計画流通米として位置づけております。この主流となります自主流通米の流通ルートにつきましては、農協や経済連が卸売業者との取引や米販売に新たに参入が見込まれる量販店、コンビニエンスストアなどとの直接取引ができることとされております。また、自主流通米の価格につきましては、自主流通米価格形成センターにおける入札取引により需給実勢を反映した価格とすることになっておりますが、その運用につきましては、これまでと同様、値幅制限を設け、急激な価格の変動を避ける仕組みとすることとし、さらに豊凶による変動に対しましては、備蓄及び調整保管米の運用により価格の安定を図ることとし、その詳細について検討していると伺っております。いずれにしましても、今後、米の産地間競争が一層激しくなることが予想されますので、県といたしましては、県産米を有利に販売していくため、入札市場における評価を高めることが重要でありますので、消費者ニーズに的確に対応した良質、良食味米の安定生産に努め、本県ならではのブランドを確立していくことが大切であると考えております。
 次に、米の備蓄についてでありますが、備蓄は、米の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量を在庫保有することとして新食糧法において明確に位置づけられ、備蓄の目標数量や備蓄の運営に関する事項につきましては、毎年、国が定めることとされております。また、全農など、自主流通法人においても、自主流通米の一部について備蓄及び調整保管を行うこととされており、こうした民間備蓄に係る経費につきましては、国において所要の助成を行うことを検討していると伺っております。
 次に、中山間地域対策についてでありますが、中山間地域は県土の大半を占め、農業生産はもとより、県民の生活や経済を支える重要な地域であります。しかしながら、近年、これら地域におきまして、人口の減少や高齢化の進行などによりまして地域活力の低下が懸念されているところであります。このような状況に対処するため、県におきましては、地域農業の基幹である園芸や畜産の振興を図る観点から、今年度、新たに中山間地域農業活性化特別対策事業を創設したところであります。もとより、中山間地域は、国土、自然環境の保全など、多面的かつ公益的な役割と機能を果たしており、国全体から見ましても重要な地域でありますので、定住人口の確保とあわせて、これら機能の一層の増進を図る上からも、我が国独自の所得補償制度の創設について国に強く要望しているところであります。
 また、地域活性化を図るための資金につきましては、地域住民の創意工夫を生かした活動を支援する中山間地域活性化推進基金の造成を平成6年度から3カ年の計画で進めているところであります。また、新規作物の導入を図るため、無利子の特定地域新部門導入資金が創設されたところでありますので、こうした事業、制度の積極的な活用を促進し、中山間地域の活性化を図ってまいりたいと存じております。
 次に、農業農村整備事業の執行体制についてでありますが、御指摘のとおり、ウルグァイ・ラウンド農業合意に関連しましての平成6年度からの農業農村整備緊急特別対策の実施により本県の農業農村整備事業の予算は大きく伸びており、今後においてもさらなる事業量の伸びが見込まれているところであります。本県の水田整備率は50%と東北地方の平均を下回っており、また、農業集落排水の整備率は4%と、県の下水道普及率23%に比べ大幅に立ちおくれている状況にありますので、こうした本県としましては、ウルグァイ・ラウンド関連の緊急対策の実施による公共事業の追加投資を好機としてとらえ、これを最大限に活用して、地元の合意形成を図りながら農業農村整備を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 遠野地方振興局管内の事業量につきましても、地元の要望にこたえて、今後、大きく伸びると想定されますが、県といたしましては、事業の実施に当たりまして、関係市町村と地元農家の一層の御支援と御協力を得るとともに、組織体制の整備、業務内容の見直し、また、設計コンサルタントの活用などを図りながら、より一層の業務の合理化、効率化に努め、農業農村整備事業の計画的な実施に支障が生じないよう万全を期してまいりたいと考えております。
 次に、遠野家畜市場の存続についてでありますが、現在、県内の黒毛和種の子牛市場は建設から既に15年以上も経過しておりまして、各施設とも老朽化が進むなど、家畜市場として十分な機能が発揮できない状況となっております。また、家畜市場の施設整備の立ちおくれや、市場の零細性が子牛の売買価格の低迷につながることが懸念されております。こうしたことから、市場の運営主体であります岩手県経済連では、遠野地方農協など、主要関係農協による検討を経まして、現在5カ所にある黒毛和種の子牛市場を、高速交通時代に対応し、肉牛の流通拠点として十分な機能を備えた施設2カ所に統合整備することとし、建設候補地を県南地区は江刺市、県央以北地区には雫石町を決定したところであります。県といたしましても、家畜市場の再編整備は、上場頭数の拡大による有利販売を促進するとともに、家畜の流通コストの低減及び流通合理化の促進を図る上で重要であると考えております。
 なお、この再編整備に当たりましては、共同出荷の促進や生産者が競りの状況を見るための施設の充実など、生産者の利便性の向上に十分配慮するよう、関係団体に対し指導してまいりたいと考えております。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) 保健所の見直しについてのお尋ねにお答えします。
 まず、保健所の見直しの基本的方針についてでありますが、このたびの地域保健に関する法制度の改正は、急速な高齢化の進展や疾病構造の変化などの保健医療を取り巻く環境の変化、生活環境問題への住民意識の高まりなどを背景として、まず、市町村は母子保健、老人保健などの身近な保健サービスを一元的に担うこととされ、一方、保健所は、精神保健、難病対策、食品衛生等の業務の推進や地域保健サービスについての企画及び調整機能の強化など、専門的、技術的、広域的な拠点としての機能を担うこととされ、所要の集約を図りながらその機能を強化することとされたところであります。県といたしましては、このような機能強化を図るためにも保健所のある程度の集約が必要と考えており、地域保健法の趣旨を基本とし、本県の特性をも勘案しながら、鋭意検討を進めているところであります。
 次に、見直しの最終決定の目途についてのお尋ねでありますが、現在、環境保健部内に検討組織を設けて、保健所の配置を含めた岩手県保健所機能強化計画の策定に向けて検討を進めており、年度内には国との協議をも終えたいと考えております。
 さらにまた、保健所の所管区域と設置場所につきましては、平成8年の秋ごろまでに岩手県保健所設置条例の一部改正案として取りまとめ、県議会にお諮りしてまいりたいと考えております。
   〔商工労働部長古館敏男君登壇〕
〇商工労働部長(古館敏男君) 早池峰・薬師岳を中心とした北上山地の自然や観光資源を生かした新たな観光拠点の創設についてでございますが、御指摘のとおり、早池峰山を中心とする早池峰国定公園は、豊かな高山植物が見られることで全国的に有名でありまして、また、その周辺地域には早池峰神社や早池峰神楽、そして遠野物語など、地域に根差した民俗文化の宝庫でありまして、シーズンになりますと多くの観光客が訪れ、本県観光の重要な資源の1つでございます。県といたしましては、平成3年度に広域観光ルート整備事業の一環として、この地域を早池峰・フルーツ・ワインルート、遠野・メルヘン・リアスルートと設定しまして観光宣伝に努めるとともに、さわやか岩手イメージアップ大作戦といたしまして、早池峰を含む遠野地域にさわやかトイレ等を設置し、観光基盤施設整備に努めているところでございます。今後におきましても、御提言のありました早池峰・薬師岳を中心とする北上山地の観光開発につきましては、内陸部と沿岸部を結ぶ重要な観光地点の1つであると認識してございますので、豊かな自然や北上山地に伝わる歴史、民俗文化などとの触れ合いができる体験型観光など、新たな観光資源の掘り起こしに努めるとともに、地元市町村とも協議しながら、魅力ある観光拠点となるよう整備を促進してまいりたいと考えております。
   〔教育長橋田純一君登壇〕
〇教育長(橋田純一君) 遠野高等学校情報ビジネス校についてお答えいたします。
 同校は、昭和63年4月、生徒の進路動向を踏まえて普通科から情報ビジネス科への学科転換を行い、さらに平成3年4月には、遠野高等学校宮守分校から遠野高等学校情報ビジネス校へと校名変更を図ったところであります。現在、同校においては情報処理を中心とした特色ある学校として安定的に教育を行っており、過去3年間の入学者数はいずれも80名を超え、1学年2学級の定員を充足しているところであります。
 同校の学区につきましては全県を1学区としているところでありますが、平成7年度における入学者を出身地別に見ますと、地元遠野、宮守地区出身者が83・9%、近隣の花巻市及び東和町を加えると、地元及びこの近隣市町村からの入学者が大部分を占めているところであり、今後、他の地域からの入学者の増加についても、全県的に生徒減少期を迎えていることから、多くを期待できない状況にあります。ちなみに、遠野、宮守地区の生徒数は今後さらに減少傾向が続き、平成20年には遠野、宮守地区の募集学級数は、遠野高校本校、情報ビジネス校、遠野緑峰高校の3校を合わせても、現時点の11学級から7学級にまで減少すると予測しているところであります。このようなことから、今後における同校のあり方につきましては、遠野、宮守地区全体の高校再編成の中で具体的に検討してまいらなければならないと考えているところであります。
   〔警察本部長石川正君登壇〕
〇警察本部長(石川正君) 県警察の装備、体制についての御質問でありますが、治安情勢は、議員御指摘のとおり、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などの事案に象徴されますように、これまでに警察が体験したことのない重大かつ特異な事案の発生が相次ぎ、社会の安全を基本から揺るがしております。こうした治安情勢の悪化は本県においても例外ではありませんで、本年8月末現在、殺人、強盗、放火などの重要犯罪や住民の安全を直接脅かす侵入窃盗犯が前年比較で増加するとともに、一段と広域化の傾向を強めております。さらに、けん銃の押収丁数が既に過去最高だった昨年と同数の10丁となり、予断を許さない情勢となっております。
 このように、これまでは良好であった本県の治安環境も確実に悪化の傾向にあり、県警察といたしましても、県民の安全に対する不安を真剣に受けとめ、限られた人員を駆使してこれまでに少年課の新設及び機動捜査隊の独立、銃器対策室及び国際室の設置等、体制を整備し、さらには組織、人員の効率的運用等を図り、変動する警察事象に的確に対応すべく努力してまいったところでございます。しかしながら、議員御指摘のとおり、内部努力による活動基盤の整備だけでは臨界点にきていることも事実でございます。こうした実情に対し、今般、ヘリコプターテレビ中継システムの導入を図り、災害時のみならず、重大事件、事故発生時における各種情報収集が飛躍的に向上することとなりました。また、警察事象への迅速な対応を図るため、汎用コンピューターの中型機への高規格化等を推進しているところであります。しかし一方では、近時の犯罪情勢を見るにつけ、日常的な事件対応、例えば銃器犯罪対策のための防弾チョッキ、金属探知機等の装備資機材整備あるいは新たな通信指令システムの導入等、捜査支援システムの整備充実についても喫緊の課題と考えております。また、地域住民の安全確保という視点からは、情報機器の導入による交番、駐在所の機能の充実あるいは防犯協会等の支援を図り、個々の地域の犯罪抑止機能を高めることも重要な課題となってきております。治安は1度悪化すると容易にはもとに戻らず、その回復には多大の困難を伴うものであります。治安は最大の福祉であるとの観点から、警察基盤の整備充実をさらに積極的に図ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時27分 散 会

前へ 次へ