平成8年2月定例会 第5回岩手県議会定例会 会議録

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〇17番(佐藤一男君) 新進党の佐藤一男でございます。
 質問に先立ちまして、県議会の大先輩であります千葉英三先生の御逝去に対し、衷心より哀悼の意を表します。
 それでは通告に従いまして、質問させていただきます。
 今日、我が国の状況を見ますと、戦後の我が国の発展を支えてきた経済構造を初めとして、政治構造、さらには社会構造がその意義を低下させ、また失い、大きく変化、変動しようとしております。現在、国会で論議されておりますいわゆる住専処理の問題は、その最たるものであります。この問題につきましては、さきに伊藤孝議員が質問を行ったところでありますが、議論や究明が不十分なままに、無理やり来年度予算を成立させようとする動きがあります。我が党は血税の投入は絶対反対であります。予算案からの削除を求めますが、今の状況を踏まえ、改めて知事の御所見を賜りたいと存じます。
 次に、行政改革についてお伺いをいたします。
 こうした状況にある今こそ、行政改革は、国政、地方自治体を問わず至上命題であると考えます。急速な高齢化・少子化、国際化、高度情報化等の進展、また、産業構造の変化など、社会経済情勢の大きな変動の中で、県民の行政ニーズが高度化、多様化しており、さらには地方分権への県民の期待も高まっております。これらの変化に適切に対応し、県民の信頼を高め最善の努力をすることは、県政として当然の責務であると考えております。
 ここで私は、行政改革の方策について、2つの視点から提案したいと思います。
 まず第1は、地方分権の視点からであります。
 地方分権という言葉は、戦後間もない昭和25年の地方行政調査委員会の勧告に使われております。以来、地方分権はたびたび議論されてきていますが、なかなか進んでいないのが実情であります。国は、明治以来営々と努力してきた中央集権化システムに未練があるのか、言葉は躍れど実はなしの感があります。国はともかく、本県は思い切って地方分権を視野に入れた行政改革に取り組むべきであると考えます。そのために、まず県の総合出先機関である地方振興局に対して、思い切った権限委譲をすべきであると思うのであります。今の地方振興局には形式的には多くの権限が与えられているようでありますが、重要な許認可権限が与えられていないので、地方の県民から見れば多くの重要なことは地方振興局で決まらず本庁に伺わなければなりません。まさに、行政の二重構造としか思われていないのであります。
 その原因は、地方振興局への権限委譲が軽易なものや処理方法が県下で統一的、均一的に明確に確定しているようなものしかなされず、真に地域にとって大事な独自の地域課題の解決に必要な決定権限がないことにあると思われます。地域の独自課題こそ、地方振興局で解決できることが重要ではないでしょうか。また、地域課題を十分把握するための公聴機能や、その解決のための企画立案機能の強化も不可欠ではないかと考えます。
 地方分権は、国政レベルだけのものではなく、県においても重要なものであります。県でも統一性や均一性にとらわれたり、国の受け皿論と同じような感覚を本庁自体が持っているのではないかと思われます。本県のように広い県土にあっては、おのおのの地域で事情が異なり、12の地方振興局がその地域と一緒になって、特性に応じた地域づくりを考え、進めることが大切と考えるものであります。上から与えられる行政から、下から積み上げる行政の改革が今求められているのではないでしょうか。県の英断を期待するものでありますが、知事の御所見を賜りたいと存じます。
 第2は、職員の人事の交流についてであります。
 県では、国や市町村との人事交流については、職員の視野や経験を広め、職員個人の能力開発や資質の向上に寄与するとともに、相互の理解と連携を深め、組織活性化への効果が大であることから、既に実施し、十分その成果があらわれているものと高く評価しているところであります。今後とも一層推進されることを念願するものであります。
 そこで、もう一歩進めて、行政に民間のノウハウやコスト意識を導入し活用させるために、行政と民間との人事交流、つまり職員を民間企業へ派遣するとか、また、県職員と民間人の共同研修を実施するなど、積極的に検討されることを提言するものであります。
 官公庁の職員は、新しいことへの挑戦よりも間違いないように前例どおりに処理しようとする傾向があります。そのために経済性や機能性、効率性、迅速性には関心を持たずに業務を行っているように民間企業人は見ております。民間企業人は、今申し上げました経済性などを最重点の課題として業務に専念しておりますが、そこに大きな違いがあります。
 知事は、これからの時代は、今までのように国からの指導による画一的な行政でなく、地方が新しいアイデアと企画力、実行力によって、逆に国を動かすような地方と地方が競争する時代であると訴えておられます。殊にも、近年民間企業は、バブルの崩壊、外圧による貿易自由化や価格破壊に対応するため、血を吐く思いで頑張っております。こうした民間の危機感を肌で感じ、また、行政が目指す方向を広く県民に理解してもらう上からも、ぜひ民間との人事交流を推進することが必要なことと思うのであります。県職員も企業感覚で業務に専念すべきではないかと願っているのは私だけでないと思います。
 県は、親方日の丸などと言われないように、職員1人1人が経営者になったつもりで民間企業の経営感覚を吸収し、行政に反映させて業務執行ができるならば、まさしくこれが行政改革の最大の成果であると確信し、提言するものでありますが、県当局のお考えをお伺いをいたします。
 次に、高齢者福祉対策についてお伺いをいたします。
 我が国は、世界に例を見ない速さで高齢化社会へ移行しつつあることは、御案内のとおりであります。国では、それに対応すべきゴールドプラン、新ゴールドプランなどを次々に発表し、また、新たに公的介護保険制度の導入を検討しております。一方、平成5年度には、すべての自治体が老人保健福祉計画を策定し、福祉サービスが自治体独自の考え方やその責任で実施されることになっております。
 これまで我が国は、福祉の先進国といわれるスウェーデンやデンマーク等北欧の福祉を目指してきました。しかし最近では、北欧の高福祉高負担の施策も財政負担が大きな問題になっております。また、日本のような家族同居の形態が評価されていると聞いております。こうした状況を踏まえながら質問させていただきます。
 平成5年度に策定されていた老人保健福祉計画により、市町村がそれぞれ独自の考え方と責任において福祉施策を実施しています。しかし、現状を見ますと、工夫をしながら独自色を出し、サービス内容も向上させ、民間やボランティアと一体となり着実に効果を上げている市町村もあれば、計画どおりには進んでいない市町村も見受けられます。当初から予想されたとはいえ、ますますサービスの格差が広がるのではないかと懸念されるところであります。
 私は、財源や施設、マンパワーの課題を抱えながらも、職員の工夫や住民の熱意と協力で、立派な施策を行っている自治体もあると聞いております。市町村間の格差を少しでもなくすには、そうした先進的な施策をほかにも普及させていくことが大切と思いますが、県は、市町村に対し、指導、助言する立場からどのようなお考えかをお伺いをいたします。
 次に、サービスを受ける立場からお伺いをいたします。
 寝たきりの老人にとっては、医療、保健、福祉といったそれぞれのサービスが連携を保ち、有効に実施されることが大切でありますが、市町村ではそのことが大きな課題となっております。しかし、現状では縦割り行政のもとでその連携がなかなか進まないということが全国的にも大きな課題になっております。県では、そのような市町村の実態をどのように把握されておられるのか、また、今後どのように市町村を指導されようとしておられるのかお伺いをいたします。
 本県における医療サービスについては、他県に比べ多くある県立病院の役割が大切であります。最近、地域の要望に積極的に対応しようとしている県立病院がふえてきていることは、まことに喜ばしい限りであります。しかし、地域に密着し、多くのマンパワーを要する県立病院が、もっと地域の老人の在宅ケア等にかかわる必要があると思うのでありますがいかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。
 第3点目でありますが、前段でも述べましたように、北欧でも財政負担の問題が浮き彫りにされておりますように、公的サービスのみでは、いずれ財政的破綻が生ずるのではないかと心配されます。そこで私は、民間活力とボランティアの役割が大切だと考えます。私の地元地域の方々からの要望は、もっと身近なところにデイサービスセンターがほしいということであります。遠野市には、公的なデイサービスセンターが3カ所、ボランティアによる施設が11カ所と他の市町村に比べても少なくないと思うのでありますが、それでも足りないと言われております。遠野市には百を越える集落の公民館がありますが、日中使用されていない実態にあります。こうしたことは、県内の市町村でも同様ではないかと思います。
 そこで私の提案でありますが、こうした施設を活用した方策として、集落の相互扶助によるミニデイサービスセンター方式を考えられてはいかがでしょうか。要介護老人をその家庭だけで面倒を見るのは大きな負担になりますが、集落の中で相互に助け合っていけばその負担も軽減されるものと思います。公的デイサービスセンターの整備が十分と言えない現状では、それを補完するものとして有効なものと考えられます。市町村においては、公的サービスの推進とともに、住民の相互協力による幅広く手厚い事業の展開が欠かせないのではないかと思います。独創性は、自由な発想から生まれると言われています。とかく行政は慣例や守備範囲を重視する余り、それに束縛され、発想も硬直化していると思われますが、3県総の後期実施計画の中で、県独自の事業として推し進める考えがないかお伺いをいたします。
 さて、高齢者福祉対策については、医療、保健、福祉といった分野の連携が大切であると申し上げましたが、県では、今次行政改革で保健医療、福祉の連携を確保するため、行政組織の整備を行うと伺っております。ぜひ市町村の模範となるような改善を行われるよう期待するものであります。
 次に、水稲品種かけはしの生産拡大対策についてお伺いをいたします。
 昨年の本県水稲の作柄は、低温や日照不足等の影響を受け、作況指数96のやや不良となりました。幸い、岩手県食糧事務所の米の検査においては、1等米が占める割合が昨年の84%を大幅に上回る90%と、これまでにない好成績になっております。しかしながら、品種ごとに見てみますと、ひとめぼれ、あきたこまち、ササニシキの3品種は95%前後、県の開発したゆめさんさも90%と高い水準になっているものの、同じ県の開発によるかけはしはわずか47%程度で、半分にも満たない憂慮すべき結果となっております。これは、いもち病の発生のために品質が低下したことが原因と思われますが、これではいかに耐冷性が強い、味がよいと言われても、生産者はしり込みせざるを得ません。
 申すまでもなく、ゆめさんさ、かけはしは、これまでの他県の開発品種に頼らざるを得なかった本県稲作農家にとって、初めての自前の品種、待望の品種であります。新しい品種については、生産者が慣れるまで時間を要することから指導、支援が欠かせないものであり、特に、かけはしの作付に当たっては、県の強力なてこ入れが必要と考えられるものであります。つきましては、県のかけはしに対する基本的考えと、今後の生産拡大に向けてどのような対策を講じていくのかお伺いをいたします。
 次に、木材供給基地の整備についてお伺いをいたします。
 本県は、県土の8割近くを占める118万ヘクタールもの森林を有し、人工林も50万ヘクタール余に及んでいることから、その資源内容は年々充実してきていると言えますが、木材価格の低迷等から国産材は身の置き場を狭まれているのが実態であります。
 このような中で、我が遠野地域においては、木材の生産から加工、流通に至る連携を一層強め、より効率的に、より低コストで製品を供給するため、遠野地域木材総合供給モデル基地の整備が進められており、全国からも注目されていることから、早期の整備が待たれているところであります。しかしながら、最近の木材の流通状況を見ると、乾燥し、かんながけされた外材製品や合板集成材等が建築用材として幅をきかせ、さらにはプレカット部材の需要が増加してきているなど、木材の需要構造に大きな変革がもたされ、国産材は加工や流通の面で新たな対応を迫られているところであります。このような状況を踏まえ、今後ますます激化する外材や産地間競争に打ちかっていくために、木材需要構造の変化に対応できる県産材の総合供給基地の積極的な整備が必要と考えますが、知事の御所見をお伺いをいたします。
 また、遠野地域木材供給モデル基地の整備が計画に対してどの程度進んでおられるのか、また、基地全体が稼働を始めるのはいつごろになるのか、お伺いをいたします。
 最後に、岩手県航空宇宙産業基地構想についてお伺いをいたします。
 アメリカで去る1月20日午後4時にスペースシャトル・エンデバーが、約9日間の宇宙飛行を終え、多くの宇宙実験成果を土産に無事地球に帰還しました。この宇宙船には、日本人として4人目の若田宇宙飛行士も搭乗され、人工衛星の回収作業、あるいは宇宙基地建設実験のための船外作業支援という最先端技術を駆使しての重大な任務を果たされています。今、21世紀という新しい世紀が幕を上げようとしているとき、世界は冷戦構造による対戦やイデオロギーによる対立の時代ではなく、人類共通の課題として、いかに地球を清らかに守りながら、次の世紀に向けて宇宙開発にどう取り組むかが課題となっています。
 生命が地球に誕生して以来、海から陸へ、陸から空へと活動領域を拡大してきました。生命の進化の延長線上にある我々人類は、今や科学技術を駆使し、その活動領域を宇宙へと拡大しつつあります。
 次世代の最先端科学の目標は、宇宙空間の開拓と言われております。気象衛星、テレビ、電話、GPSによる船舶、自動車のナビゲーション等マスメディアの中継基地、あるいは微小重力、高真空、高エネルギー等の面で重大な分野であり、人類にとって最大、緊急の課題であると思うのであります。
 我が岩手は、かかる事態を先見し、昭和62年度に科学技術庁のスペースプレーン検討会報告書を受けて、遠野市を中心に関心が高まり、県と釜石広域市町村圏協議会で、昭和63年にイーハトーブコスモス・プロジェクトを、翌年3月には岩手県航空宇宙産業基地基本構想を発表しました。さらに、翌昭和63年度には、知事、議会議長の連名で、航空宇宙産業基地の立地について科学技術庁に対し要望するとともに、岩手県航空宇宙産業基地誘致連絡協議会が設置されております。この年の10月には、県内の官民の方々も参加して、日本マクロエンジニアリング学会スペースポート事業部会主催の調査団が編成され、アメリカのノースダコダ大学における第1回極超音速飛行国際会議に出席しております。私もこの会議に出席し、フロリダ州のケネディ宇宙センター、南米フランス領ギアナの宇宙センター、さらにはテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターを訪問し、つぶさに宇宙開発の実情を調査研修してまいりました。そこでは、スケールの巨大さと米国民の多くの理解と誇りのもとで、宇宙開発の研究が進められているのを実感してまいりました。この宇宙産業基地の誘致は単に岩手県のみの課題ではなく、東北全体の課題と考えています。東北には、既に宇宙産業にかかわりのある角田ロケット開発センター航空宇宙技術研究所角田支所、能代ロケット実験場、気象庁綾里気象ロケット観測所等の研究機関が散在しており、宇宙開発の基盤整備の可能性を十分に備えております。航空宇宙産業基地は、スペースプレーン離発着を中心に想定される世界的規模のプロジェクトであります。
 去る1月29日、日本の宇宙発着実験機アルフレックスがワイヤー一本づりの実験飛行に成功し、次は単独離発着飛行を行う予定であると報道されております。航空宇宙産業基地の誘致は、北海道の大樹町、鹿児島県の馬毛島など、各地で真剣に取り組んでおられますが、本県の宇宙航空産業基地構想は、スペースプレーンが離発着するだけの宇宙港を建設するのではなく、関連する施設、例えばスペースプレーン開発研究所、スペースプレーン飛行実験センター、宇宙環境利用研究所、有人宇宙飛行訓練施設とスペースプレーン総合技術センターなどの建設を想定し、宇宙産業基地誘致を提言しているものであります。この構想が実現すれば、いわゆる東北劣勢論が一気に解消されるものと確信しております。 文明は発達し過ぎると砂漠化が進み、新しい自然を求めて移動すると言われております。メソポタミア文明がヨーロッパへ移動したように、東京も近年、関東北部から東北南部へとの遷都移動がささやかれております。その次の中心地は、北上平野以外にないという人もいます。宇宙時代には、日本の岩手でなく世界の岩手になり得ます。かかる重大な構想案件が忘れ去られたごとくになっているように見受けられますが、岩手県にあってはこの実現に真剣に取り組むべきであると考えるものであります。しかし、アメリカ合衆国の財政危機による宇宙開発費予算の削減、ロシアの国情不安定からくる経済混乱による国策最優先の課題など、状況は時々刻々と事態が変化しつつあります。しかし、宇宙開発の必要性、重要性の認識までは変わるものではありません。アメリカにおいては、2010年には宇宙基地建設を目指し、開発目標年次を軌道修正するため、既に始動していると報道されています。識者の中には、スペースプレーン構想ははるかかなたの夢物語であるかのように認識している方もありますが、誤った認識であると言わざるを得ません。アメリカでケネディー宇宙センター……。
〇議長(堀口治五右衛門君) 佐藤一男君に申し上げます。申し合わせの発言時間を超過しておりますから、簡潔に願います。
〇17番(佐藤一男君)(続) ジョンソン宇宙センターと、それぞれの大統領の名前をつけたことは世界的に有名であります。そこで、本県においては、増田宇宙センターを実現させ、国際都市岩手をつくることは、まさに歴史的大事業であると考えますが、宇宙航空産業基地の構想の推進に対する知事の御所見をお伺いをいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。長時間にわたりまして御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤一男議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、いわゆる住専問題についてでございますけれども、この問題につきましては、目下、国民が最も強い関心を寄せている問題の1つでございまして、私自身も極めて大きな問題であると、このように受けとめておりますが、この金融システムのあり方につきましては、基本的には国政の場で十分論議されるべきものでございまして、私といたしましては、この問題につきまして広く国民の理解が得られるような適切な処理が図られるべきであると、このように考えているところでございます。
 次に、地方分権の視点から見ました地方振興局の機能強化についてでございますが、住民に身近な行政は、最も身近な行政主体でございます市町村と、その活動を広域的、総合的観点から支援をする地方振興局との間で緊密な連携をとりながら、できるだけ地域ごとに完結性のある形で展開されることが望ましく、本格的な地方分権の進行に伴いまして、この地方振興局の果たす役割がますます重要となってくるものと、このように考えているところでございます。このような考え方から、新たな行政改革大綱、これは本年1月にまとめたものでございますが、この大綱におきましては、地方分権を重要な要素の1つとして位置づけまして、県と市町村の連携の強化、そして地方振興局の充実強化に積極的に取り組んでいくこととしているところでございます。この地方振興局につきましては、これまでも一般旅券の交付や県営建設工事の執行などの権限を地方振興局長に対して委譲するなど、その強化を図ってきたところではございますが、まだ十分ではないと、このように考えておりまして、今後におきましては、地域の振興策を総合的に推進する拠点としての役割を十分に発揮することができますように、職員の企画立案能力の向上を図るとともに、総合案内窓口の設置など公聴機能の充実、地域活性化事業調整費の内容の拡充など、そして本庁権限の計画的委譲の推進などによりまして、総合性、そしてその自己完結性を高めまして、その機能をさらに充実強化をしていく考えでございます。
 次に、総合的な木材供給基地の整備についてでございますが、県といたしましては輸入材や産地間競争に打ち勝つため、これまで木材の高次加工施設の整備を進めるとともに、県産材の需要拡大やブランド化の推進に努めてきたところでございます。しかしながら、今後ますます激化する輸入材や産地間競争に打ち勝っていくためには、議員御指摘のとおりに、最新鋭の機械の導入などによりまして、製材コストの一層の低減を図るとともに、集成材やプレカット加工などの高次加工を促進するほか、住宅建築部門との連携によりまして、販売を拡大するなど木材の生産の段階から加工、流通の段階に至る総合的な施策を強力に展開していくことが何よりも重要であると、このように考えております。特に木材加工につきましては、製材から集成材や家具、建具、プレカット加工などの高次加工までを大規模に、そして効率的かつ低コストで行う総合加工基地の整備が喫緊の課題となっているところでございます。このため、現在、遠野地域におきまして、木材総合供給モデル基地の整備を進めているところでございますが、全国から国産材時代の先進的な取り組みとしてこの基地につきましては大きな期待がかけられておりますので、整備が計画どおりに完了するよう努力をいたしますとともに、その他の地域につきましても、遠野地域のような取り組みが行われますように、関係団体などを積極的に指導、助言していきたいと、このように考えております。
 次に、岩手宇宙航空産業基地構想についてでございますけれども、宇宙航空産業は、宇宙基地という未知なる分野への対応や、技術的にも高い信頼性が要求される非常に高度な最先端の科学技術を核とするものではございますけれども、それと同時に、幅広い関連産業への広がりも期待されるところでございまして、今後、その成長が大いに見込まれる産業分野でございます。御指摘のとおり、東北地方には、宇宙航空開発に関連する施設が多数立地しているなど、条件が整っていることから、広域的な連携のもとに、その機能の集積を図るべく、各県が協力をいたしまして協議会を設立をして、努力をしているところでございます。特に、本県におきましては、海に開けた広大で安定した大地を有しておりまして、さらに、気象ロケット観測所などの宇宙関連研究施設も立地するなど、宇宙航空開発の推進にとって好ましい素地があるものと考えられますことから、産学官による岩手県宇宙航空開発推進協議会を設置いたしまして、県としても、これと一体となりまして、スペースプレーンの離発着基地を核とした宇宙航空関連の試験研究施設などの集積を長期的な視点から目指しているところでございます。このため、現在までにも東北地区の推進協議会ともども、宇宙セミナーや宇宙少年団の国際ジャンボリーを開催するなど、県民の宇宙への関心を高めながら、国に対しまして、本県への関連試験研究施設の立地を働きかけてきたところでございます。今後におきましても、関係機関、団体などの広範な支持と協力を得ながら、さまざまな機会を通じまして、この構想の趣旨の周知に努めるとともに、引き続き、国に対しまして働きかけるなど、特に広範な運動を展開してこの構想を強力に推進してまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁をさせますので、御了承をお願い申し上げます。
   〔総務部長上田紘士君登壇〕
〇総務部長(上田紘士君) 職員の民間派遣等についてでございますが、現在、県におきましては、若手職員を対象といたしまして、平成3年度から日本貿易振興会に5名、さらに、平成5年度からは財団法人地域活性化センターに2名、合わせて7名の職員をそれぞれ2カ年間ずつ継続して派遣してきているところでございまして、また、民間との合同研修につきましても、平成6年度から、県及び民間企業の管理職員等を対象に、官民合同研修というものを自治研修所において実施し、民間企業の方々との討議や研究を通じて相互理解を深めながら、民間企業の経営感覚の修得に努めているところでございます。しかしながら、御提言のありましたように、民間企業における経営感覚あるいは企業感覚、それから業務運営の手法、能率的、機動的な対応、こういったものを学ぶことは、県の職員の視野の拡大と資質の向上を図る上でも大変有意義なものであると考えられますことから、合同研修の充実はもとより、今後、民間企業等の側の意向も伺いながら、職員の研修目的に合致した派遣先の拡大など、派遣研修につきましても充実を検討してまいりたいと考えております。
   〔生活福祉部長細屋正勝君登壇〕
〇生活福祉部長(細屋正勝君) まず、高齢者福祉サービスの市町村格差についてでありますが、厚生省がまとめた指標では、在宅福祉サービスの利用量の面で市町村間に開きが認められるところであります。このため、県高齢者保健福祉計画に基づいて、サービス供給基盤の整備を促進し、市町村格差の縮小を図っているところでありますが、一方、御指摘のとおり、利用者の立場に立ったサービス内容の向上のために特色ある施策を意欲的に取り入れている市町村もございます。これら市町村の特色ある施策の中には、ホームヘルプサービスを早朝、夜間にも実施するチーム運営方式や24時間対応の巡回サービスの導入、ボランティア活動との連携による休日デイサービスの実施、保健と福祉がパソコンによって、個人情報を共有しサービスを一体的に提供する活動、1回の申請で各種福祉サービスが利用できる総合利用券方式の導入、さらには、ホームヘルパー養成研修の修了者などによる有償ボランティア活動などがあります。県では、各種の大会、研修会等におきまして、これら先進優良事例を紹介し普及を図っているところであります。今後とも、市町村が地域の特性を生かし、創意工夫を凝らして先駆的に取り組む施策を積極的に支援するとともに、その成果を事務処理マニュアルの作成や、情報誌の発行等を通じて他の市町村にも広く紹介し波及させていくことにより、高齢者福祉サービスの量的拡充はもとより、質的なサービス水準の充実、向上を図ってまいりたいと考えております。
 次に、保健医療、福祉の連携についてでありますが、市町村におきましては各種保健、医療、福祉サービスを総合的、効果的に推進するという観点から、約半数の市町村において保健部門と福祉部門との統合が図られるなど、組織の統合化が進められてきております。また、サービスの運用面におきましても、市町村の在宅介護支援センターと高齢者サービス調整チームにおいて、訪問看護サービスやホームヘルプサービス等各種の保健医療、福祉サービスの利用調整を行うとともに、病院から退院した後に保健福祉サービスの利用を促進するため、脳卒中情報システムの情報を積極的に活用することなどにより、保健医療、福祉の調整機能の充実が図られてきております。今後におきましては、要援護老人が保健医療、福祉サービスを御指摘のように効率的かつスムーズに受けられるよう、各サービスシステムの連携の充実強化について市町村を指導してまいりたいと考えております。 次に、御提言のありました公民館等を利用したミニデイサービスセンターについてでありますが、高齢者が身近な公民館等で、交流やレクリエーションを通して在宅生活の維持向上を図る事業をモデル的に現在まで実施してまいりましたが、今年度から利用人員を5人程度とし、職員もパートによる対応が可能な小規模デイサービスセンターが制度化されたところであります。現在4市町村でこの制度による事業を実施いたしておりますが、議員御提言のとおり、今後、公民館などの既存施設を利用して、地域の実情に応じた事業運営ができるよう、小規模デイサービスセンター事業の普及を図ってまいりたいと考えております。
   〔医療局長中村盛一君登壇〕
〇医療局長(中村盛一君) 県立病院と在宅ケア等とのかかわりについてでございますが、現在、県立病院では、退院された患者さんのうち疾病や障害のため在宅で寝たきりの患者さん、または通院が困難となっている患者さんを対象に、また、時には開業医からの強い要望によりまして、医師、看護婦等によって訪問看護、訪問診療、訪問リハビリ等在宅医療を南光、北陽病院を除きます26病院で実施しております。今後の在宅ケア等につきましては、地元保健福祉等関係機関が中心となって地域の実情を踏まえながら総合的、一体的、効率的な在宅ケアサービスを提供するシステムが必要であると認識しております。一例を申し上げますと、県立遠野病院では、遠野市、遠野市医師会等と協力し合って策定されました保健、医療、福祉の連携システム、遠野・ハートフルプランの在宅ケア体制の中で訪問診療等医療の分野に参加し、健康診断、定期的往診などの医療サービスに従事しております。県立病院といたしましては、これからも保健、医療、福祉の連携システムづくりへの支援とそれを機能させるため、地域地域での果たすべき役割を明確にしながら、積極的に参加してまいりたいと考えております。
   〔農政部長佐藤昭美君登壇〕
〇農政部長(佐藤昭美君) 水稲品種かけはしの生産拡大対策についてでありますが、新食糧法のもとで、米の流通規定が緩和されたことに伴い、業界からは作柄の安定性や品質、食味等による産地の選別が一層進むものと予想されておりまして、本県が米主産地としての地位を確保していくためには、適地に適品種の配置を基本としまして、売れる米づくりに徹することが大事であると存じております。このような中で、かけはしは、低温のもとでも初期生育がよく、登熟にすぐれているなど耐冷性が強く栽培しやすい品種であり、また、搗精歩合や白度が高いことなどの特徴が評価されまして、全国チェーンの外食産業など大口需要者からの引き合いをいただいているところであります。したがいまして、かけはしを安定した取引先を確保できる商品性の高い米として、県中北部を中心としましてその普及を図ってまいりたいと考えております。その推進に当たりましては、昨年のいもち病発生を教訓といたしまして、これの徹底防除を推進してまいりますが、特に平成8年の作付につきましては、緊急的に助成措置を講じてまいりたいと考えております。
 また、品質を高めるためには、品種に適した肥培管理や適期刈り取り、適切な乾燥調製の徹底が必要でありますことから、生産者全員に栽培暦を配布するとともに、地域ごとの銘柄米確立研究会を中心として指導会の開催や流通情報の提供に努めるほか、作付推進用のビデオを活用するなどしまして、作付拡大と栽培指導に万全を期してまいりたいと存じます。
   〔林業水産部長田尾秀夫君登壇〕
〇林業水産部長(田尾秀夫君) 遠野地域木材総合供給モデル基地の整備についてでありますが、本事業は平成4年度に林業構造改善事業の指定を受けまして、翌5年度から事業に着手しております。総事業費は約100億円でございまして、事業完了は平成10年度を予定しておりますので、基地全体の本格稼働は平成11年となる見込みでございます。現在までに事業費17億円をもちましてプレカット加工施設や、建具の加工施設、管理棟の整備を完了いたしております。しかしながら、土地利用調整に時間を要したため、進捗率は17%となってございます。計画よりややおくれぎみでございますが、本県木材産業の中核となる基地を建設いたします重要な事業でございますので、計画どおりに事業が完了するよう、今後さらに努力してまいりたいと存じます。
〇17番(佐藤一男君) 再質問をさせていただきます。
 先ほど知事より宇宙産業基地の積極的な御答弁をちょうだいしました。昭和63年に、先ほど申し上げましたように超音速世界会議に私も出席させていただきました。これはアメリカのノース・ダコタ大学に世界の宇宙に一番権威のあるウィープという博士がおられまして、世界14カ国から320名の方々が出席されまして3日間にわたる会議でありました。何分とも英語だけの会議でございましたから全部は聞き取れなかったんでありますが、大体の柱としましては、要するに、今、地球上に大体53億の人口があられる。毎年1億ずつこの人口がふえておりますので、要するに2010年ごろには地球が崩壊するような状況になるので、どうしても宇宙にその人を住まわせるような対策を考えていかなきゃならぬ。こういうのが大きな課題であったんでありますが、そこでびっくりしましたのは、南米のフランス領のギアナというフランスの宇宙ロケット基地を研修してまいりました。そこのギアナにはフランスの宇宙ロケット基地がいくまでには、たった600名ほどの人口であったそうでありますが、宇宙基地を誘致したことによりまして20倍の1万2、000人の人口になられた。私はそのころは県議会議員でございませんから、単純に釜石広域圏にその数字を当てはめますと、今、遠野、大槌、釜石、宮守では約10万強でありますから、20倍でありますと約200万都市であります。このようなものが想定される産業であると、このように考えまして、こういうような事態が実現されますと、当然県庁を遠野に移さなきゃならぬというようなものも考えられるわけでありまして、要するに何年か前にサントリーの佐治社長さんが東北を、我々岩手県人を熊襲呼ばわりされた。これはやはり今までの戦後の経済の西高東低という、そういう後進県の風をまだまともに受けている状況であるわけでございますから、この広い範囲でこの科学技術関係の関連企業が我が岩手に来ますと、この東北劣性論が一気に解消されまして、東高西低の時代が近く来るものだと、このように勉強させてもらいました。そこで、この科学産業に取り組む知事のもう一度決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 今、再度お尋ねがございました宇宙航空産業、これは大変最先端の高度な技術を使うものでございますし、また、そのことによりまして、今、議員御指摘のとおりに大変すそ野の広い多分野に影響を及ぼす、そしてそのことは本県の産業の発展にとっても大変好ましい影響が及ぶものと、このようにとらえているところでございます。また、そうしたことのみならず多くの人々に夢やロマンを与えると、宇宙に対してのいろいろな関心を呼び起こすということにもなるわけでございまして、こうした構想を推進することは非常に重要で大事なことだというふうに私も考えているところでございます。したがいまして、これからなお一層関係機関、団体、特に市町村などとの連携を密にいたしまして、この構想につきまして強力に推進をしていきたいと、このように考えているところでございます。

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