平成8年12月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇18番(高橋賢輔君) 新進・公明の高橋賢輔でございます。
 昨年初めて議席を得ましてから早くも2年を迎えました。増田知事におかれましても、県政のかじ取りとして県民の信託を得て2年目であります。私は、4年間の任期を人間の成長に例えると、幼年期の1年目、以下成年期、そして熟年期を経て物事を成就させていくものと考えております。知事は、まさに成年期に入り、御自身が策定した3県総後期実施計画の成就に向けて、いよいよ力を燃焼させる時期であり、県民の熱い視線を受けているところでありますが、県民各界各層から幅広く意見を聞きながら、市町村との連携にも配慮して、着実に県政を推進しているものと、敬意を表する次第であります。どうか御自身の信念に基づいて、この岩手の地を大きく発展させ、だれもが住みよい豊かな郷土をつくり上げるため、力強く歩んでいかれるよう望むものであります。
 さて、農業のウエートが高い本県では、例年、夏場に至る時期の気候については、県民だれもが関心を寄せ、その推移に一喜一憂するのでありますが、幸い今年は心配された冷夏も後半から持ち直し、稲作の作況指数は101と平年作を上回る結果となりました。米の収穫が思うに任せぬ年は、農家はもとより、県内全体に暗く、重苦しい、沈滞したムードが漂うことを思えば、平年作を超える作柄には大いに喜んでいいものがございます。一方、全国を見ますと、良好な夏場の天候、病虫害の発生や台風などの災害が少なくなったことによって、作況指数が104と、3年連続の豊作であります。このような豊作に加え、ウルグァイ・ラウンド合意による外国産米の輸入開始によって、国内在庫量は膨れ上がり、10月末で早くも300万トン近い、15年ぶりの高水準であるとも言われております。こうした米余り現象を背景として、国では、来年産米の生産調整については、現在の転作面積を据え置くものの、政府買い入れ価格を6年ぶりに引き下げられることとするなど、私の地域の農家においても、米づくりに対して大きな不安を隠せず、気持ちも動揺しているのが実情であります。知事は、みずから田植えや収穫を体験されるなど、農業に理解と関心を示しているものと思います。このような時期に当たり、米づくりに対する動向を的確に把握しながら、今こそ低コスト生産や転換作目の普及奨励を図り、農家が動揺しないよう、早目早目に指導を強化するなど最善の努力を傾注すべきと思うのでありますが、知事の御所見はいかがでしょうか。
 現在の米市場は、こうした米余りの中で、規制緩和の流れを受けて、小売店の増加、スーパー主導の流通再編、卸会社の整理統合など、民間主体の流通システムが加速的に進展してきております。また、これに伴って首都圏をターゲットとした自主流通米販売合戦が激化し、今や産地間競争の時代に突入している状況にあります。私の地元である北上市では、春から北上市農協が東京に事務所を構えて、北上産米の売り込みに努めておりますし、その後、花巻市農協、東和町農協も東京に進出し、懸命に地元産米の販売に取り組んでおります。聞くところによりますと、市場では、新潟のコシヒカリ、秋田のあきたこまちの2大ブランドが確立しているとのことでありますが、本県も、すぐれた食味と消費者に手ごろな価格の販売を目指した生産はもちろんのこと、県産米のブランド化に向けてさらに販売戦略を打ち立て、これを実行することが急務であると思うのであります。県では、職員みずからがコマーシャルに出演したり、さまざまな機会にPRしているものと承知いたしておりますが、米余りの中で、この産地間競争の戦国時代に、県産米の銘柄確立と販路の拡大について、その課題をどうとらえ、どのようにしてこれを進めていくお考えか、お聞かせ願います。
 精魂込めてつくればつくったで生産調整が行われ、消費拡大についても明確な希望を持てないなど、農家の将来の不安が増してきていると思うのでありますが、私は、必ずしも悲観的なことばかりではないとも感じております。それは、今年開催された2つのイベントであります。1つは、皇太子殿下御夫妻の御臨席をいただいた第8回全国農業青年交換大会であります。この大会では、約2、000人の農業青年、関係者が全国から集まり、農業経営や農村生活の実践例の発表や農業技術協議、さらに県内青年との交流会など、多彩な企画が実施されました。私は、この大会を通じて県内の多くの次代を担う青年農業者が知識と技術を交換し合い、自信と誇りを確かめ合ったものと思うのであります。また、1つには、目標の30万人を大きく上回る50万人にも上る入場者を数えた食パラダイス岩手96であります。メーン会場のみならず、各地のサテライト会場も大変好評でありまして、県民の食に対する関心の高さをうかがわせるものであり、一方で、食料生産者に対しても、改めて生産の喜びと責任を感じさせるものとなったと思うのであります。この2つのイベントは、農業者を初めすべての農業関係者に少なからず勇気と希望を与えてくれ、私は、今後の本県農業の振興に何らかの方向性をもたらしてくれたものと思っております。増田知事は、これら2つのイベントを主催し、これを成功に導いてどのような感想をお持ちか、また、農業の将来展望についてどうお感じになったのか、お答え願います。
 次に、農山村の整備について伺います。
 私は、北上市、といっても旧和賀町の農村地帯に住む者でありますが、地域住民との対話の中でよく話題となるのは、農村部と都市部では生活環境などについていまだ格差が大きいということであります。まず生活道路、農道、用排水路などの生活環境や生産基盤はもちろん、各種施設の整備が乏しく、また、これによって通院、通学を初め、諸行事などでも遠隔地まで足を運ばなければならず、いかに車社会とはいえ、時間のロス、費用のむだが多くなっております。また、私は、農村は、都市近郊で都市と密接な関係にある平地地域の農村と、中間地域及び山間地域がまとまった中山間地域の農村の2つの形態があると考えており、これらは、それぞれ異なった自然的、社会的環境下にあり、農村の整備の方向性も、これに応じてしかるべきと思っております。しかしながら、私が農家の方々から聞くのは、県のソフト面での施策は非常にきめ細かく、平地及び中山間地域のいずれの地域においてもその状況に応じてさまざまな選択ができ、その意味では均衡しているが、ハード面では、生産基盤、生活環境とも中山間地域にかなりのおくれが目立つとの声であります。このような平地地域とその他の地域での整備のアンバランスは、農家の生産意欲の向上に水を差すものでありますし、特に、農家の後継者確保の上でも問題であります。農水省が行った農業・農村の若い担い手の動向調査によりますと、他産業に従事している農家の子弟の41%、5人に2人が、近い将来、主に農業に従事したいと考えていることが明らかになり、後継者確保に明るい材料を提供しております。もちろん農産物価格の安定や規模拡大可能な農地確保などの条件をも前提としたものでありますが、私は、このような若者を農村に定住させるためには、単に経済的な条件のみならず、排水施設を初めとする都市的な生活環境整備を急ぎ、あわせて生産基盤や流通施設の整備を行うなど、1日も早い総合的な環境整備が必要と思うのであります。県は、農山村の整備の状況についてどのように認識し、今後どう進めていくのか、お答え願います。
 次に、広域生活圏の整備について伺います。
 3県総では、県内を9つの圏域に区分し、各地域の施策の方向を示しており、また、広域的な地域連携や交流を促進するため、盛岡と県内各都市を90分以内で結び、拠点間の時間短縮を図ろうと新交流ネットワーク道路整備事業を進めているほか、高規格幹線道路や地域高規格幹線道路の整備の推進を図っているものと承知しております。これらの整備が進むことにより、将来各圏域間の交流条件が飛躍的に整備されるものと期待されるのであります。また、3県総では、各圏域について、地域の概況を掲げるとともに、その整備や施策の方向を示しております。県では、この方向によって各般の取り組みをしているものと思うのでありますが、私は、どうも圏域の特色ある顔が見えてこないのであります。他県では、地域ごとに、地域を代表するような施設が整備されるなどしておりますが、本県の場合、圏域というより市町村レベルの整備に終わっているのではないかと感じられるのであります。そこで、提案いたしたいのでありますが、今後の各圏域の整備に当たっては、各圏域に1つずつ、圏域の特性に応じた、特色ある大規模で国際的にも通用する文化施設、観光施設などを整備してはどうかということであります。こうした施設の整備は、県内圏域相互間はもとより、全国的、そして国際的な交流の促進に必ずや貢献すると思うのでありますが、いかがでしょうか、当局の御所見をお聞かせ願います。
 次に、河川整備についてお伺いいたします。
 県内河川の整備につきましては、3県総で定めた目標値に向かって、着実に進んでいるものと思います。今後も、事業の大幅な導入に努め早期に目標が達成されるよう希望するものでありますが、その整備地域についてアンバランスがあるのではないかと感じているところでありますし、また、そうした声を多く耳にするものであります。すなわち、整備は、下流の都市部とその周辺が優先され、上流の山村、中山間地などはかなりおくれているということであります。今このような地域では、活性化を図るため、また定住条件の整備のために、民間、市町村を通じてさまざまな取り組みが進められております。このようなとき、また、均衡ある県土の形成のためにも、上流部の整備にも力を注いでほしいと願うものであります。上流部の優先整備は、恒常的な県土の保全や良好な自然環境の確保が図られるなど、その地域の集落形成に多くの利点をもたらし、定住化の促進に役立つのではないでしょうか。もちろん整備による受益人口、面積など、現行の進め方にもそれなりの理由があることは重々承知の上、上流部の優先整備について、あえて提案したいのであります。当局の御所見をお聞かせ願います。
 次に、観光振興についてお伺いいたします。
 御承知のとおり、本県観光は、2つの国立公園を初めとする豊かな自然や温泉、そして平泉に代表される旧跡が主体となっております。しかしながら、県内各地域は、いまだ観光資源として眠っている多くの名所旧跡、名勝などがあるのではないでしょうか。私は、過日、ある団体の方々と北上川と石羽根ダムをボートでめぐる機会を得たのでありますが、北上川からの景色は、流れに沿って両岸の山々やまちの風景が刻々と変化し、飽きることなく見せ場が連続してあらわれます。また、石羽根ダムでは、五色織りなす湖面の中心で、自分の体が紅葉に染まるような錯覚さえ感ずるのでありました。いずれも日ごろ見なれた場所ではありますが、その中から周囲を見回しますと、これまでと全く異なった風景があらわれてくるのであります。県では、来年度から観光部門を強化しようとしております。また、先日は、岩手経済同友会が知事に観光立県を提言した折でもあります。このような県内各地の身近で、そして隠れた資源をもう一度掘り起こし、観光資源として、だれもがそこで楽しめるよう活用することを提案いたすものでありますが、当局の御所見をお聞かせ願います。
 次に、商業振興についてお伺いいたします。
 県内景気は、回復基調にあると言われておりますが、私には、県全体ではそうかもしれませんが、地域の経済を見たとき、特に商店街の地盤沈下は著しく、景気の回復とは無縁であるとさえ言いたくなるのであります。県が行った広域消費購買動向調査でも、郊外店の利用者の増加に伴って、地元商店街での購買率が下がり、その空洞化が進んでいることが明らかとなっております。商店街では空き店舗が目立ち始め、また、営業している商店からも息子に後を継がせたくないという声が上がっております。こうした厳しい現状の中で、商店主たちは、何とかまちの活気を取り戻そうと、共同店舗化を検討したり、歩道の整備や駐車場を確保したり、ポイントカードを導入したりと、努力しております。商店街の整備は、単に商業の振興が図られるだけでなく、活気あるまちづくりにとって欠かせないものであります。県では、今年度から魅力ある商店街整備事業を拡充したり、商店街情報化整備事業を新設するなど、心強い限りではありますが、大型店舗が増加していく中、さらなる支援の強化を望むものであります。私どもも、商品の共同仕入れや品ぞろえなど多くの取り組むべき課題に努力したいと思いますが、県当局の商業振興に向けた現状認識と今後どう取り組んでいくかについてお聞かせ願います。
 次に、高齢者の介護対策についてお伺いします。
 去る9月に発表されました平成7年国勢調査確定値によりますと、本県の高齢化率は18%と、平成2年国勢調査の14・5%から3・5ポイント拡大するなど、予想を超える速さで高齢化が進行していることが明らかとなったところであります。まさに、本県においては、超高齢社会が現実のものとなった感がいたします。高齢者が心身とも健康で、生きがいのある人生を過ごすことができるよう、また、介護が必要となった場合でも、できる限り住みなれた地域や家庭の中で安心して暮らせる社会の実現が求められているところであります。
 さて、このような中で、現在、国においては、21世紀の超高齢社会に備えた新たな介護システムとして、介護保険制度の検討がなされているところであります。これについては、現在、法案作成作業が進められていると聞き及んでおりますが、制度が円滑に運用するためには、安定した財政運営や円滑な事務運営の確保はもちろんのこと、保険あって介護なしといった問題が生じないよう、まずその基盤となる在宅、施設両面にわたる介護サービスの整備を一層計画的に推進していくことが重要と考えます。そこで、お伺いしますが、県は、老人保健法並びに老人福祉法に基づいて、高齢者の介護サービスの計画的な整備を図るため、平成11年度を目標年度とした県高齢者保健福祉計画を策定したところでありますが、その進捗状況はいかがでしょうか。
 また、今後どのような点に重点を置かれて介護サービスの整備を進めていかれるのか、お考えをお尋ねいたします。
 次に、保健所の機能についてお伺いします。
 知事は、先日、昭和51年以来の大規模な行政機構の改革案を発表し、本議会で関連条例案が審議されることになりました。私は、この案は、地方振興の機能の強化や観光行政の充実、保健医療と福祉の一体化など、本県が当面している諸課題へ的確に対応したものと高く評価するものであります。しかしながら、保健所については、マスコミでも取り上げられておりますから多くを申し述べませんが、地域住民が身近になじんできた保健所が、15から10保健所、2支所、1出張所に統廃合されることによって、そのサービス機能が低下しないかと危惧を覚えるものであります。長寿社会の進展によって保健医療分野はますます重要となりましょうし、O-157など新たな問題も生じております。当局は、よもやその機能が低下することのないよう運営方法をお考えのことと思いますが、この際、保健所の機能低下を来さないために、どのように配慮するお考えか、お聞かせ願います。
 また、保健所には、指定保健所とその他のもの、さらに、地域の特色に応じて類型化されていると聞いております。指定保健所の1つに北上保健所がありますが、御承知のとおり、県内第2の都市である北上市は、企業集積が著しく、人口は増加の一途をたどっております。このため、今後も保健行政の需要は増加するものと考えられますし、水質監視、労働衛生の確保など、保健所が直接、間接に関与するさまざまな業務の増加も予想されるのであります。こうした地域の同保健所の機能強化について、当局はどのような所見をお持ちか、お聞かせ願います。
 最後に、教育に関してお伺いいたします。
 国家の繁栄は教育にありと言われます。幼児教育から高等教育まで、だれもが等しい教育環境のもとで、健全と伸び伸びと教育を享受できることが必要であります。私は、このため、広い県内で、いかなる地域においても教える側、教えられる側、いずれにも格差のないような教育行政が行われることが大切だと思うのであります。こうした観点から、まず私学も含めた高等学校の第2体育館、部活動施設、セミナーハウスなど、校舎本体を取り巻く附属施設の整備状況や、これが十分満たされているのかなど、整備に当たっての認識についてお答え願います。
 私立学校教育につきましても、本県の教育に大きな役割を担っていることからも、その教育環境に公私の格差があってはならないと思うのでありますが、この際、私立高校運営の公費の負担割合はどのように推移しているかあわせてお知らせ願います。とともに、私学助成の充実を要望申し上げておきます。
 次に、大学に関連してでありますが、県立大学の学長に世界に誇る西澤前東北大総長を迎えることになり、進学を目指す生徒に大きな夢と希望を与えるとともに、本県教育に大きな貢献をなされるものと県民挙げて期待を寄せているところであります。
 県では、県立大学整備のほかに国立体育大学の誘致にも取り組んでおり、これまで相当長期間にわたって誘致活動を行ってきましたが、要望に対する国の感触など、その実現の可能性についてはどうお考えでしょうか。私は、もし誘致が困難であれば、大学誘致による地域振興という観点はともかく、県内スポーツの振興や競技力向上を図るためには国立体育大学のみにこだわらず、できるだけ早期に実現可能な方途を選択してもいい時期にあると思うのでありますがいかがでしょうか。そのような意味合いからも、昨日谷藤議員の質問にもありましたナショナル・トレーニングセンターはまさにふさわしいと考えますので、教育長の御決意のほどをお伺いするものであります。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 高橋賢輔議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、今後における稲作農家への指導の強化についてのお尋ねでございますけれども、最近におきます米を取り巻く情勢は、需給が緩和基調にある中で、新食糧法の施行に伴う新たな米流通システムの導入によりまして、生産や販売環境が大きく変化するなど、極めて難しい局面にあるわけでございますけれども、こうしたときにこそ将来を十分に見据えながら、本県農業の大宗をなす水田農業の経営体質をさらに強化することが肝要であると、このように考えております。
 こうした考えのもとに稲作につきましては、まず、適地適品種の配置を基本に、品質、食味にすぐれた米の安定生産によりまして商品性の向上を図りますとともに、低コスト、省力生産体制を早急に確立していかなければならないと、このように考えております。このため、品質や食味を分析する機器の活用によりまして、科学的な根拠に基づいた栽培指導を進めますとともに、畜産部門と結びついた有機物使用によります土づくりや、農薬の使用量を最小限に抑えた生産など、本県の立地条件を最大限に生かした、いわゆる特色ある米づくりを進めてまいりたいと、このように考えております。
 また、低コスト、省力生産を推進するためには、農地の利用集積や大区画圃場整備を通じた効率的な生産システムを構築するとともに、一方で、現在整備を進めております農業研究センターにおきまして、大区画圃場での用排水制御技術など、いわゆる革新的な省力技術の確立にも積極的に取り組んでいきたいと、このように考えております。
 一方、転作についてでございますけれども、これは地域において徹底した話し合いを行いまして、地域ぐるみでの営農方式の確立によりまして、野菜、果樹、花卉などの高収益作物の生産拡大や、麦、大豆など土地利用型作物の団地化を推進しまして、水田の高度利用を促進してまいりたいと、このように考えております。
 こうした稲作と転作を合理的に組み合わせた収益性の高い水田農業を確立するために、一日農業試験場の開催ですとか、新技術の迅速な提供のための農業情報システムの整備、さらには、市町村や農業団体と一体となった経営・技術の濃密な普及活動などによりまして、農家指導に万全を期してまいりたいと、このように考えております。
 それから次に、全国農業青年交換大会と食パラダイス岩手96、この2つのイベントについての感想と、農業の将来展望についてのお尋ねでございますけれども、まず、初めの第8回全国農業青年交換大会につきましては、本年の8月末に開催をしたところでございますけれども、企画、運営の中心となって活躍しました本県の農業青年が、この大会を通じまして全国の各地域の農業青年と知識や技術を交換いたしまして、また友情のネットワークを広げることができたということが大変大きな成果でございます。このような多くの農業青年に接しまして、今後の本県農業の振興に大変力強いものを感じたところでございます。
 また、食パラダイス岩手96、10月の末から11月の上旬にかけまして5日間開催をしたところでございますけれども、県内各地に伝承されるすぐれた伝統食や特産品、食にまつわる文化や歴史などを全体的にトータルな形で広く全国に発信をできたところでございますし、また、さらに参加団体などにとりましては、その大会を通じまして消費者ニーズの把握や販路拡大の契機となるなど大きな成果があったと、こういうふうに認識をしているところでございます。
 こうした2つの全国イベントの成功によりまして、本県の知名度の向上とイメージアップも図られたところでございますし、さらには、県内各地から参画をいたしました農業青年を初めといたしまして、市町村、農業団体、食品業界などの大会関係者にとっても、何にもかえがたいすばらしい財産を得ることができたものと、このように考えております。したがいまして、今後におきましては、これらの成果も踏まえまして、本県農業発展の原動力となります若い農業者を育成確保するとともに、消費者の視点に立った、いわゆる品質のすぐれた農産物の安定的な生産、そして、岩手ならではの食にまつわる情報の提供によりまして、農産物の有利販売を推進するといったようなことによりまして、21世紀に引き継ぐ足腰の強い本県農業を構築してまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願い申し上げます。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕
〇農政部長(中村盛一君) まず、県産米の銘柄確立と販路の拡大についてのお尋ねでございますが、新食糧法の施行に伴い米の販売ルートが多様化する中で、特にも最近は、消費者や流通業界から産地を指定した需要が増加する傾向にありますので、何にも増して品質、食味のよい米を安定的に供給していくことが重要になってきております。ここ数年、県産銘柄米の品質は高まっておりまして、特にも、ことしの一等米比率は、現在のところ過去最高の水準で全国でも6番目となっており、今後とも品質の維持向上に努めてまいらなければならないと考えております。
 このような生産面での努力に加え、販売面では卸売業者はもとより、量販店等の小売業者に至るまで、より川下を見据えたマーケティングを展開していくことが課題であると存じております。したがいまして、販売対策につきましては、農業団体と一体となって重点卸売業者と結びつきを強化するなど、安定的な販路を確保するとともに、最近、量販店等の独自商品であります、いわゆるプライベート・ブランドとして需要が出てきておりますので、こうした動向にも積極的にこたえ、県産米の販路拡大に結びつけてまいりたいと考えております。
 また、今回、知事にお願いして、お米ブラザーズと一緒になった県産米のPRポスターを作成し、県内外の販売店等に配布いたしたところでございますし、また、今後ともこうした独自性、話題性のあるPR活動を積極的に進めながら、県産米の銘柄確立と販路の拡大に努めてまいる考えであります。
 次に、農山村の整備状況の認識と今後の進め方についてでございますが、まず本県の農山村の整備状況は、生産基盤整備が東北の平均水田整備率58%に対し本県は51%とおくれておりますし、また、汚水処理施設等の生活環境施設につきましても、都市と農村の整備格差が見られる一方で、農村においても平地地域と比べまして中山間地域のおくれが著しいものとなっております。
 県といたしましては、ウルグァイ・ラウンド農業合意による新たな国際環境の中においても、力強い農業、活力のある農村の構築を図るため、効率の高い地域ぐるみ農業を展開できる生産条件と、若者も魅力を持って生活できる定住条件の改善を図っていくことが極めて重要であると存じております。このため、多くの農家がその推進に期待を寄せております。生産基盤の整備とともに、生活環境の整備を短期間に、かつ総合的に実施する必要があると考えており、ウルグァイ・ラウンド関連の農業農村整備緊急特別対策の実施を好機ととらえ、ここ数年、事業費を大幅にふやすなど、本対策を積極的に活用しているところであります。今後とも、農山村の整備を積極的に進めることとしておりますが、特にも平場に比べ自然条件が不利なことに加えて、財政条件が脆弱な市町村が多い中山間地域につきましては、国の補助率の高い事業制度の展開により、地域条件に配慮したきめ細かな事業展開を進め、地域の立地特性を生かした農業の振興と、快適で住みよい農山村の建設に取り組んでまいる考えであります。
   〔企画調整部長武居丈二君登壇〕
〇企画調整部長(武居丈二君) まず、各圏域ごとの特色ある施設の整備についてでありますが、県といたしましては、本年度を初年次とする3県総後期実施計画の推進に当たり、多様な地域連携、交流の促進による自立的な地域社会の形成を重要な視点の1つとして掲げ、各地域の自主的、主体的な地域づくりを尊重しながら、各圏域の持つ地理的、経済的条件や歴史的、文化的資源等の特性を踏まえた各種施策を積極的に展開しているところであります。
 このような考え方のもと、今後における施設の整備に当たりましては、住民の身近にあって住民生活の質的向上を図るための施設も引き続き必要でありますが、一方、それぞれの圏域の特性に応じ、地域の連携、交流が一層促進され、かつ広域的に利活用されるような施設の整備が進められていくこともまた重要でありますし、さらに、これらの施設の有機的なネットワーク化を図ることもますます必要になってきております。県といたしましては、これらの施設がそれぞれの役割分担を意識しながら、その特色を生かしつつ機能を十分に発揮し利活用されるよう、今後の施策を展開してまいりたいと考えております。
 なお、御提言の内容につきましては、各圏域の置かれた事情が異なることや現下の厳しい財政状況もあわせ考えますと、直ちにその具体化を図ることには難しい面もありますが、貴重な御意見として今後の地域振興を図る上での研究課題とさせていただきたいと存じます。
 次に、国立体育大学の本県への設置についてでありますが、国におきましては、昨今の18歳人口の減少や国の極めて厳しい財政事情などから、国立大学の新増設を原則として抑制する方向にあり、国段階における国立体育大学の設置構想そのものにつきましても、現在の状況では難しいとの説明を受けているところであります。一方、国における新たな動向としては、スポーツ医科学の研究機関や、ナショナル・トレーニングセンターなどの設置に向けた取り組みが見られるところであります。また、岩手大学においても、教育学部の改組の方向として、芸術、スポーツ等の課程の設置が検討されていると聞いております。
 県といたしましては、こうした動向を見きわめながら、これまでの経緯も十分に踏まえつつ、本県の振興発展につながるよう、国に対する要望について幅広く検討してまいりたいと考えております。
   〔土木部長藤本保君登壇〕
〇土木部長(藤本保君) 河川の整備についてでありますが、治水対策は洪水等による災害から県民の生命、財産を守り、安全で豊かな県民生活の確保を図る重要な施策の1つであることから、流域全体の状況を勘案し、河川改修やダム建設などに積極的に取り組んでいるところであります。
 河川改修に当たりましては、御承知のとおり、下流部の河道断面が上流部の河道断面より小さい場合、洪水を安全に流下させることができないため、都市部などに限らず下流部から整備を進めることを原則にしております。しかしながら、中・上流部の中山間地におきましても、人家連担部などの緊急に整備を必要とする地区及び圃場整備など、他事業と一体として整備を図ることが必要な地区の河川等につきましては、地元市町村等と協議の上、地域の要望等を踏まえながら、下流部との調整を図り河道の整備を行ってきているところであります。特に、圃場整備事業と関連する河川の改修要望が多いことから、平成7年度より県単圃場整備関連河川改修事業を創設し、中山間地の整備にも配慮しているところであります。さらに、川に親しめる、潤いのある水辺環境を創造する水辺空間創造事業や河川環境整備事業などを導入し、地域の交流拠点となる河川の整備にも努めているところであります。
 また、県では先般、今後の河川整備の指針となるいわての川づくりプランを策定したところであり、この中で中山間地における河川の整備につきましても、地域と連携をとりながら推進することとしており、今後ともまちづくり、地域づくりに貢献できる河川整備に一層努力してまいりたいと考えております。
   〔商工労働部長佐藤孝司君登壇〕
〇商工労働部長(佐藤孝司君) まず、観光資源の活用についてでありますが、御案内のとおり、本県には自然や歴史、文化、温泉などの観光資源が豊富にあり、これらを活用した観光地の形成と観光客の誘致に努めてきたところであります。しかしながら、県内にはこれらのほかに今後活用すべき観光資源も多く、御提言のように身近で隠れた観光資源を掘り起こし、工夫を凝らしていくことが必要であるとの考え方から、新しい魅力の発掘とその活用に取り組んでいるところであります。
 具体的には、市町村や旅行会社などと共同で幾つかの旅行企画を実施しておりますが、その中で農漁村生活体験や天台寺での寺修行、小岩井農場での星空観察、花巻市豊沢の大空の滝やブナ林の散策など、触れ合い体験メニューを設定したところ、首都圏を中心に数多くの参加者があり、好評を博したところであります。
 また、現在取り組んでいるものとしては、ことしの12月から来年の3月までの期間、宮古、久慈、釜石などを中心として、地元の新鮮な魚介類による番屋料理やイカ徳利つくり体験、サケの遡上見学など、沿岸地域ならではの観光資源を生かした旅行企画を実施することとしております。これらの内容は、これまでの観光地とは異なり、まさに身近で隠れた観光資源を生かした例であります。
 今後におきましても、市町村や地方振興局と連携を密にして、県内各地における観光資源の掘り起こしや活用に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、商業振興についての現状認識と今後の取り組みについてでありますが、大規模小売店舗法の規制緩和による大型店の増加やモータリゼーションの進展による消費者行動の変化、後継者難などを背景に小規模小売店は減少しております。この結果、商店街には空き店舗が生ずるなど、県内の商業を取り巻く現状はまことに厳しいものがあります。
 このため県といたしましては、無利子融資制度による中小小売店の共同店舗化や、魅力ある商店街整備事業などによる商店街の駐車場、街路灯などの基盤整備を促進してきたところであり、これらの事業導入によって、小売店及び商店街の意欲的な取り組みも進みつつあるものと考えているところであります。今年度においては、このような取り組みを一層促進するため、市町村が行う駐車場などの基盤整備、空き店舗対策、さらには、ポイントカードシステムの導入による商店街の情報化対策に対する助成などの支援制度を拡充、創設したところであります。
 今後におきましても、商店街を支える意欲的な小売店自体への支援や先進商店街の成功事例の研修、経営ノウハウの習得などによるすぐれた商店街リーダーの養成や後継者の育成など、市町村、商工団体との連携を強めながら、商業振興施策の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
   〔生活福祉部長佐々木孝太郎君登壇〕
〇生活福祉部長(佐々木孝太郎君) 県高齢者保健福祉計画の進捗状況についてでありますが、計画目標に対する主な整備状況は、8年度末見込みでホームヘルパーが65%、デイサービス54%、ショートステイ86%、特別養護老人ホーム98%、老人保健施設68%とおおむね順調に進捗しておりますが、在宅介護支援センターやケアハウスなどは進捗率が低い状況にあります。
 また、今後の重点的な取り組みについてでありますが、全国を上回る高齢化の進展と家庭での介護力の低下が見込まれる中で、介護の需要はますます増大すると考えられますことから、計画目標の達成に向けホームヘルパーの大幅な増員、在宅介護支援センターの整備促進など、在宅介護サービスを拡充するほか、在宅での生活が困難な場合に適切な施設が利用できるよう特別養護老人ホーム等の整備を進めるとともに、早朝、夜間等のホームヘルプサービスや休日におけるデイサービスなど、利用者のニーズに沿った質の高いサービスの提供に努めてまいりたいと考えております。
 また、家庭での介護を支援するために、住宅改善助成の充実や介護機器移動展示車の活用等による介護技術、知識の普及に努めてまいりたいと考えております。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) 保健所のサービス低下に対する配慮についてでありますが、保健所の統廃合による所管区域の拡大に対処するため、その機動力の確保に努めるほか、定期的に管内市町村に出向いての巡回等による各種相談や申請受付、地域のニーズに応じた監視指導等の実施に努めてまいりたいと考えております。さらに、緊急時においても専門職員の複数配置等により適切に対応できるよう努めてまいる考えであります。
 次に、指定保健所の機能強化についてでありますが、保健所では地域の実情に応じた衛生上の試験検査を行っており、また、特に本県では、一般の保健所におけるより高度な試験検査を効率的に行うための指定保健所を整備しており、現在県内に6カ所設置しております。
 地域保健法の制定による保健所の再編整備において、地域のニーズに対応し得る検査体制の整備は専門的、技術的拠点である保健所の機能強化の重要な課題であり、特に指定保健所については、限られた専門職員をより多く配置し、精密な検査機器を使用して、さらに高度な検査を実施するためにその一層の集約化が必要となっております。これらの点及び検査検体の搬送等を総合的に考慮し、新たな指定保健所については、県北、沿岸、県央、県南の4ブロックに1カ所ずつ配置することを基本として検討を進めております。
 なお、北上保健所においては、その機能について工場などへの監視指導や一般的な試験検査、調査研究、検査結果等の情報の提供など、地域保健の一層の推進を図ることといたしたいと考えております。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) 私立高校についてのお尋ねでありますが、私立高校は、それぞれ独自の建学の精神に基づいて特色ある教育を行うなど、本県の高校教育の充実発展に大きな役割を果たしていることから、県といたしましても、私立高校における教育環境の充実向上は重要な課題であると認識しているところであります。
 まず、私立高校の校舎の附属施設の整備につきましては、それぞれの私立高校におきまして、学校の実情に応じ主体的にその整備を進めているところであり、私立高校13校の現有状況は、格技場を含めた第2体育館が10校、専用部室が12校などという状況になっております。県といたしましては、私立高校の教育活動の充実向上を図る観点から、第2体育館などの校舎の附属施設を含めた私立高校の校舎、屋内運動場の整備事業に対しまして、従前から県単独措置による補助を行うなど、施設整備の促進に努めているところであります。
 次に、私立高校の運営費に占める公費負担の割合の推移についてでありますが、私立高校におきましては、特色ある教育の充実や個性化、多様化を目指した教育の推進など、個性的で魅力ある学校づくりを一層推進するとともに、中長期的な見通しのもとに、それぞれの自助努力による経営基盤の強化を図ることが重要な課題となっております。このため、県といたしましても、国の財政措置に加え、従前から措置している特色ある教育事業に対する補助について本年度において増額を図ったほか、平成6年度から経営改善推進費補助を県単独で措置するなど、私立高校の運営費に対する助成の充実強化に努めているところであり、この結果、私立高校の経常的経費に占める県補助の割合について見ますと、例えば平成元年度の38・5%から平成7年度には42・2%になるなど、その割合は年々増加してきているところであります。県といたしましては、今後におきましても、施設整備や運営に要する経費について、助成の充実に努めてまいる考えであります。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君) まず、県立高校の附属施設の整備についてでありますが、全日制高等学校83校の主な施設の整備状況は、柔剣道場を含めた第2体育館及び生徒部室を全校に、また、セミナーハウスを53校に整備しております。さらに、特色ある部活動施設として、自転車練習場、ボクシング場、弓道場、全天候テニスコートなどの整備を逐次進めてきているところであります。これらの施設は、高等学校における体育の授業はもとより、部活動の活発化を図り、生涯スポーツの振興や本県の競技力の向上にも資するよう、今後とも、地域のバランスや各学校の実情等を勘案しながら、計画的に整備を進める必要があると考えております。
 次に、ナショナルトレーニングセンターの誘致についてでありますが、ナショナルトレーニングセンターは、我が国選手の競技力向上を図るための総合的なトレーニング施設として、文部省が構想しているもので、まだ概算要求の段階にありますが、本県は、四季を通してさまざまなスポーツが可能な恵まれた自然環境や高速交通体系の整備状況などから、立地にふさわしい条件を備えていると考え、今回新たに統一要望を行ったところであります。ナショナルトレーニングセンターの誘致につきましては、他県との競合もあり、大変厳しいものがあると予想されますが、国の動向を的確に把握するとともに、本県の優位性をアピールしながら、誘致に向け、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、田村正彦君。
   〔15番田村正彦君登壇〕(拍手)

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