平成8年12月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(佐藤啓二君) 社会民主党の佐藤啓二であります。
 質問に入ります前に、私事ですが、一言あいさつをさせていただきたいと存じます。
 御存じのように、私は去る18日、最高裁第二小法廷において上告棄却の判決を宣告され、一・二審無罪の判決を逆転され、有罪が確定したものであります。
 顧みますと、起訴から22年余、議員として、同時に刑事被告人の立場にあった私に対し、常に寛容におつき合いをいただき、時に温かい激励をいただいた多くの先輩並びに同僚議員、そして執行部の皆さんに、衷心から深くお礼を申し上げます。
 私は、判決は判決として厳しく受けとめているところですが、現在もこの社会を支えている勤労者の権利、すなわち、団結し団体交渉をし、そして団体行動をするという、憲法28条の定める権利は尊重されなければならないし、今後においても、国際労働常識に恥じない労働条件の確立に微力を尽くしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
 私は、この時期に一般質問の機会を与えられました。知事にとって、2年目のこれを迎えようとしています。振り返って、あなたが知事に就任した昨年、6月定例議会で、あなたは、今、まさに21世紀に向けた県土づくりの重要な時期にあり、私に課せられた責任の重大さを痛感いたしますとともに、県民の皆様から寄せられている期待の大きさに身が引き締まる思いであります。今後は、県民の負託にこたえ、ふるさと岩手の発展のために全力を尽くしてまいりたいとした上で、県政推進に当たっての3つの基本姿勢、すなわち、清新で公正、県民にわかりやすい県政の実現、2つには、県民の英知と創造力を結集した県政の推進、3つには、国、県、市町村の連携の強化を挙げ、あなたの所信を明らかにされたのであります。続いて、ことしの2月定例議会では、3県総後期計画を策定し、そのレールに乗った初めての予算を提出されました。そして5月には、広報誌いわてグラフで、また、全世帯配布の広報紙の銀河系いわてをめざしてを作成して、全県民に3県総後期実施計画の内容を明らかにされました。県民にわかりやすい県政の実現を目指すというあなたの熱意のあらわれで、率直にその努力を評価したいと存じます。特に、全世帯配布の資料では、あなた自身が次のような呼びかけをされております。
 すなわち、生誕100年を迎えた宮沢賢治の考えを紹介しながら、銀河は遠くからぼんやりとしていますが、よく眺めると、一つ一つの星が個性を持って光り輝き、それらが連携し合って1つの固まりを構成しているように見えます。これからの岩手県も、このような一人一人の人間や一つ一つの地域が個性豊かに輝きを放ち、さらに人々や地域がお互いに連携、交流し合って、大きな固まりを形づくっていくことが必要ではないでしょうか。私は、こうした考え方に立ち、今後、21世紀までの5カ年間に展開する施策を明らかにするため、7つの点に着目した第三次岩手県総合発展計画後期実施計画を策定しました。皆さん、ともに手を携えて銀河系いわてを築いていきましょうとし、次の7点、すなわち、連携と交流、2、安全と安心、3、自然との共生、4、国際化と地域経済、5、福祉の充実、6、人材の育成、7、男女共同参画を挙げています。私は、これらの視点は分権時代にふさわしいもので、簡明な表現は直ちに内容をイメージできるもので、知事の政治理念を具体化したものと理解しています。同時に、この視点は、県事業推進の基本として、執行各部局の共通の認識のもとに、お互いの緊密な連携が図られるべきものだと理解しています。
 知事にお伺いいたします。
 まず、あなたは、後期実施計画の第1年を振り返って、成果をどうとらえておられるのか。そして、2年目の施策の重点をどう設定されるとお考えか、お伺いいたします。また、国も県も厳しい財政状況に置かれていますが、明年度予算編成の基本方針をどう考えておられるのか、明らかにしてほしいと思います。
 次に、行政機構再編整備についてお伺いいたします。
 私は、今回の再編整備は、地方分権の時代を展望して構想されたものと理解していますし、端的に言って、部課の名称が、所管する事務を容易に理解できるよう配慮している点、評価をしたいと思っております。県民の行政ニーズの増加と、それに対応する行政組織の肥大化を抑制するということは、相矛盾するものであります。また、本庁そのものが狭隘になっています。
 そこでお伺いいたします。
 第1は、生活、文化、医療、交通などの面で、地域間格差のある地域に対し行政サービスの低下を来さないため、具体的にどんな配慮を考えておられるのか。
 第2に、各課室の配置と職員の労働環境の改善をどう進めるお考えか。私は、この際、職員団体からの積極的な提言を求めることも必要ではないかと考えますが、この点にも触れてお答え願いたいと存じます。
 次に、人事委員会勧告の取り扱いについてお伺いいたします。
 御承知のように、県人事委員会は去る10月4日、議会及び知事に対し給与改定に関する勧告を行い、その速やかな実施を要請しております。その意味で、知事にとっても議会にとっても、今議会で措置すべき案件と考えておりますが、今議会で当初提案はありません。一体、県人事委員会の給与改定勧告の早期実施についてどう措置されるお考えか、明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、奥産道についてお伺いいたします。
 最初に、奥産道の県営工事に伴い、県と担当の県職員が、自然公園法違反と森林法違反の疑いで書類送検をされたこと、また、県職員が収賄の疑いで逮捕された旨の報道がありました。まことに遺憾であります。遺憾の意を表しながら質問に入ります。
 三ツ石湿原付近の植生破壊問題については、知事は、責任はすべて県にあるとして深く陳謝の意を表明し、今年度工事の中止と復旧に全力を挙げることを明らかにして今日に至っております。その復旧については、9月に技術検討委員会が設置され、10月には委員会が植生被害復旧にかかわる本復旧計画書が出されています。この計画書は、現地の自然立地条件の厳しさに加えて、作業条件の制約などを十分に考慮に入れ、長期的視点に立って慎重に最善の方法を探っていくことが必要であるとして、平成8年から18年までの10年間を3期に分け、地盤の復旧策、土砂流出防止策、植生基盤の整備、植生の復旧対策、景観保全対策、そして復旧工事中の区域への立ち入り防止など、加えて毎年追跡調査を行うことを指摘しながら、きめ細かな提言をされております。
 質問の第1は、こうした重要な工事推進に当たって、この工事監督については県が直接当たらないとの話を聞いていますが、事実かどうか明らかにしていただきたいと存じます。
 第2は、事件を契機に、土木部は今後の事業推進について、内部的にどんな検討をされておられるのか明らかにしてほしいと思います。
 これまでの本会議や常任委員会での問題指摘に、どう検討されておられるのか。例えば、観光開発道路として自然との共生を図る観点から、この道路が唯一不可欠なものなのか。また、建設経費も含め、適切な工事工法が専門的に可能なのか。残工事部分のトンネル及び松川工区の工事推進の見通しなど、また、これらに関連して、改めて有識者の意見を聞くための検討委員会設置の可否に触れて、土木部長の率直な意見をお伺いしたいと存じます。
 次に、人材育成とかかわって教育問題についてお伺いいたします。
 まず、先日、知事が記者会見で、県立大学の学長に西澤潤一前東北大学学長の就任を内定したこと、その後定員の3割を推薦枠とし、県内出身者に充てたいとの考えを明らかにされました。副学長の内定など、教員確保の面で展望が開けてきたことを明らかにされたことは、県民にとって大きな朗報でありました。他方で、施設建設にかかわって談合疑惑の報道があったことはまことに遺憾であり、この際、関係者の一層の御精進を願ってやみません。
 さて、今年7月、中央教育審議会は、21世紀を展望した我が国の教育のあり方についての第1次答申をいたしました。その要点を申し上げますと、まず、これからの変化の激しい先行き不透明な時代を展望したとき、子供たちに求められる施設や能力は生きる力であり、その中身は、自分で課題を見つけ、みずから学びみずから考え、主体的に判断し行動し、よりよく問題を解決する能力、そしてみずからを律しつつ他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性とたくましく生きるための健康や体力であると、具体的に明らかにしています。その上で、この生きる力をはぐくむためには、子供たちを初め社会全体に豊かさを持たせる必要があり、特に課題として、過度の受験競争の緩和やいじめ、登校拒否の問題があるとしています。今、学校では、今でも忙しいのに、5日制が完全実施になったら、もっともっと忙しくなるのではないかとの心配の声があります。ゆとりをつくり出すことは、第一義的には、学校や教師や子供一人一人の努力によるものなのでしょう。同時に、公教育制度のもとでは、多くの制約のあることも事実であります。
 去る11月1日の朝日新聞のいわて論壇に、現代社会そして教育という、岩手大学人文社会学部の岡崎助教授の投稿がありました。同教授は、いじめ、不登校、非行といった現象を生み出す諸悪の根源とも言うべき受験競争と管理抑圧教育打破のための方法として、PTAの改革による活性化や真の学びの意義の追求と成績至上主義の否定などの提言をされております。最近、教育学会においても、学校教育が大きな転換点を迎えており、また、学校の存在価値や教育内容や授業の様式、さらに教師のあり方が問われているとして、教育方法学の構築が叫ばれています。
 こうした状況を踏まえて、教育長にお伺いいたします。
 第1は、中教審答申が指摘する受験競争の緩和や子供のいじめや不登校の問題に、どう対処するお考えか。学校におけるゆとり確保に、どんな施策を検討されておられるのか。
 第2に、学ぶということを改めて問い直す必要が指摘されておりますが、現在行われている各種研修会の開催を見直し、研究者、教師、行政による共同研究検討委員会を設置するお考えがないのか、見解をお聞きしたいと思います。
 山村振興についてお伺いいたします。
 まず、食パラダイス岩手'96の大成功を喜び、長期にわたる関係者の御労苦に敬意を表します。県立博物館が企画した繩文の食や県の調理師会の企画展など、歴史の流れに学び自然の恵みを食材とした食生活を通じ、改めて飽食の時代を問い直し、新たな食文化創造の契機をつくってくれたことを高く評価する次第であります。
 ところで、先日、船越昭治先生のお話をお聞きする機会がありました。先生は、今、なぜ山村なのか。山村を守るということは、民俗文化の源泉であり、人間の生存に必要な衣食住環境を守るという歴史の教訓に学ぶことだとして、中山間地域対策、森林流域管理システムや林野三法の制定など、行政の施策を評価されました。村は、群れから来た社会共同体の単位であり、そこをよりどころとして人々が集まり活力を得てきたと言われます。そして、地域の生活に密着して、思いと情熱を、芸能を表現することで、地域の活性化と環境の保全もが可能だったと指摘する意見もあります。全国高校文化祭で中野七頭舞や菅窪鹿踊が高く評価されましたが、こうした民俗文化が地域の人たちの協力のもとに、しっかりと受け継がれていることは注目したいと思います。
 先日、県は国の施策を受けて、農山漁村高齢者ビジョンを策定し、高齢者の自立した生活と生産活動の継続に力点を置き、今後、関係部局との連携を進めるとの報道がありました。
 そこでお伺いいたします。
 中山間地域の支援活動を展開してこられた施策の成果をどう総括されておられるのか。その上で、今後、どんな強化策を考えておられるのかを明らかにしていただきたい。また、耕作放棄地の実態や直接所得補償方式についての所見についてもお伺いしたいと存じます。
 この際、いわゆる新食糧法施行1年を迎え、米の需給と価格の安定を図るための同法をどう評価し対処されるお考えか、お聞かせ願いたいと存じます。
 最後に、知事に対し苦言を呈したいと思います。
 私は、あなた自身、清新で公正な方だと信じていますし、これからも信じたいと思っております。多くの県民も、あなたの清新で公正なお人柄と態度に誇りを感じ、それを貫いてほしいと考えておられると思います。そのあなたが、過日の定例記者会見で、公然と、特定候補の応援をされたことについて、知事と言っても政治的立場があり、私なりに考えてやった。批判は謙虚に受けとめ、耳を傾けていきたいと述べたことが報じられています。私も、政治的見解を持ち行動されることは、基本的人権だと思っています。もっとも、憲法15条の2項には、すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではないとの定めがあります。このこととかかわって、公務員の政治活動の制限については、学説上も判例上もなお論議の続いているところであり、さらには一般職と知事のような特別職の違いのあることも事実ですが、国民全体の利益であることが期待されているということや、制限を認める判例の大方はその理由として、行政の中立的運営とそれに対する国民の信頼が挙げられていることも一考に値するのではないかと思います。
 吾十有五にして学に志しに始まる論語の一節に、七十にして心の欲する所に従って矩を踰えずというところのあることは御存じのことと思います。あなたが、政治的見解に立って行動することは、それはそれでよろしいと思います。しかし、そのことで道を外れるということがあってはいけないと思います。私は、矩というのは、あなたが知事の地位にあるという自覚と責任ではないかと思います。そういう厳しさをわきまえてほしい、私はそのことを申し上げたいのです。同時に、今回の知事の行動を契機に、安易に知事に政治的行動を求めるのには慎重でなければならない、むしろ140万県民のために存分な仕事ができる環境づくりこそ心がけるべきではないのかと考えております。
 私の苦言の意味をわかっていただければよろしいので、あえてお答えは求めません。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤啓二議員の御質問にお答えいたします。
 まず、初めの3県総後期実施計画の成果と2年目の重点施策についてでございますけれども、今後、21世紀までの5カ年間に展開をする施策を明らかにするために、地域の連携と交流など7つの視点を念頭に置きまして、ことし3月に3県総後期実施計画を策定したところでございます。
 今年度におきましては、新交流ネットワーク道路整備事業の推進を初めといたしまして、地域活性化事業調整費の拡充、航空消防防災体制の整備、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の推進、食パラダイス岩手'96の開催、宮沢賢治、石川啄木生誕記念事業の実施、休日保育事業の創設、さらには東北大学の前総長西澤潤一氏の県立大学初代学長内定など、各分野におきまして積極的な事業推進を図ってまいりました結果、3県総後期実施計画に掲げました330の重点事業のうち、306事業について既に着手をし、あるいは着手する予定となっておりまして、県勢は着実に進展しているものと考えております。今後におきましても、内外の経済社会情勢の変化に伴う諸課題に適切に対応するため、地方振興局の機能を強化するなど、地方分権の時代に対応した行政機構の再編整備を行うとともに、高度情報化の推進及び情報発信機能の充実強化、地域の連携・交流の促進、国際的視野に立った地域経済の振興など、時代の潮流に対応した施策の一層の充実を図りながら、後期実施計画の達成に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、来年度の予算編成の基本方針についてでございますが、国、地方を通じる厳しい財政事情や現下の経済動向などをかんがみますと、本県の来年度の予算編成を取り巻く環境は大変厳しいと、このように認識をしております。このため、来年度の予算編成に当たりましては、限られた財源の効果的な活用を図るとともに、緊急度、優先度の高い施策については勇断をもって実行していくことが肝要であると、このように考えております。このような観点から行財政改革に積極的に取り組むとともに、3県総後期実施計画に掲げる7つの視点に立脚した諸施策を計画的に推進することを基本としながら、特に、予算編成上の重点課題といたしましては、高度情報化の推進と情報発信機能の充実強化、地域の連携・交流の促進、国際的視野に立った地域経済の振興の、この3つの柱を掲げまして、全庁的に取り組むこととしております。時代の変化にも対応できる、活力ある地域づくりを進めることが可能な予算となるように努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、中山間地域支援の総括と今後の対策についてでございますが、中山間地域は、県土の8割、農業生産の6割を占めておりまして、農林業の生産はもとより、県土の保全、自然環境の維持、伝統文化の継承など、多くの役割を担う地域であり、私は、県勢の均衡ある発展の上で、中山間地域の活性化が重要な課題であると、このように認識をいたしております。こうした考えのもとに、これまで農山村の産業、生活基盤整備のための山村振興等農林漁業特別対策事業や体質の強い農業への再編を加速する新いわて農業再編総合対策事業の優先採択、いきいき中山間賞交付事業の実施、特用林産物の積極的な導入による農林複合経営や日本一の炭の里づくり運動の展開、また、市町村がそれぞれの立地特性を生かした独自の考えで実践する活性化の取り組み、地域活性化事業調整費の有効活用による支援など、各種の施策を講じてまいったところでございます。その結果、県北・沿岸地域のホウレンソウや西和賀地域のリンドウ、ユリ、品質が日本一となった干しシイタケの産地形成、ブルーベリーやシソ、ミニトマトなど地域特産物を利用したジュース加工、川井村の短角牛振興のための赤ベコ共和国の建国や有森選手の参加を見た大野村のミルクロードマラソンの開催など、各地で生き生きとした個性的な取り組みが数多く展開されているところでございます。今後におきましても、地域の多彩な資源を生かした農林業の振興に加えまして、集落排水施設などの生活環境の整備、都市住民との多様な交流や農林業と他産業との連携による就業機会の拡大、地域活性化に向けての一層の支援など、総合的な施策の推進に努めてまいる考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承願いたいと存じますが、最後に、先ほど議員から私に対しまして苦言という形でお話がございました。政界に長い間身を置かれておられる先輩のお言葉といたしまして、その意味するところを考えさせていただきたい、このように存じております。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) まず、地域間格差のある地域に対する行政サービスについてでありますが、県政の推進に当たりましては、地域、地域におきまして行政サービスがひとしく受けられるように努めるとともに、広域的な視点に配慮しながら、各地域の主体性や創意が十分発揮された個性豊かな地域づくりを進めていくことが肝要であると考えております。このような観点から、本庁機構につきましては、県北沿岸地域等の振興を図るため、平成8年度に特定地域振興室を設置し、その振興策について調査検討を進めているところであります。今般の行政機構の整備に当たりましては、それぞれの地域で抱える行政課題を的確に施策に反映できるよう、総合出先機関である地方振興局及び先端行政として果たす役割が大きくなってきている市町村の支援や指導の担当部署、さらには豪雪地帯や県北沿岸地域等の振興など、本県の地域振興部門について企画振興部に一元化することとしております。
 また、地域に密着した行政を担っております地方振興局につきましては、地域課題に的確に対応するため、企画振興部門の充実強化を図るとともに、県民の利便性の向上の観点などから、本庁の権限の計画的な委譲を推進してまいる考えであります。
 なお、出先機関の統廃合を行う地域につきましては、交通事情などの地域特性を総合的に勘案し、支所や出張所を設置するなど、実質的にサービスの低下を招かないための措置を講じてまいる考えであります。
 こうした本庁、地方振興局を通じた行政機構の整備や権限の計画的な委譲によりまして、県民に対する行政サービスの一層の向上を図るとともに、それぞれの地域における活力に満ちた地域づくりを積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、行政機構の再編整備に伴う事務室の配置と労働環境の改善についてでありますが、県庁舎は建築後31年を経過し、この間、OA化の急激な進展や行政需要の増大などに伴い、事務室の狭隘化が見られることは御案内のとおりであります。このため、事務室の配置に当たりましては、県民への行政サービスが低下することなく、常に適切に提供することを念頭に置きながら、盛岡地区合同庁舎等を含めた県庁舎の効率的な利用を図るとともに、空調設備の改善を図るなど、職員の執務環境の向上に努めてまいったところであります。
 今回の行政機構の再編整備は、将来ますます多様化、高度化する県民のニーズを視野に入れた大幅な組織機構の再編であり、これに適切に対応する事務室の配置につきましては、県庁舎の限られたスペースを全庁的な視点に立って、望ましい職場環境の整備充実にも配慮しながらより一層効率的な活用を図ってまいることが重要でありますことから、庁内各部局等との十分な協議を進めることとしたところであります。今後、具体的な事務室の配置に当たりましては、各部局等との協議の場を通じて、職員の意向についても十分に配慮しながら、県民の利便性の向上はもとより、職員が事務を執行する上での効率性、さらには快適性、安全性なども重視し、新体制のスタートにふさわしい良好な職場づくりに取り組んでまいる考えであります。
 次に、人事委員会勧告の取り扱いについてでありますが、本年10月4日に勧告を受けて以来、この勧告を尊重するという従来からの基本姿勢に立ちながら、給与決定の諸原則にのっとり、その取り扱いについて慎重に検討いたしているところであります。御案内のように、国においては去る9月20日に人事院勧告の完全実施について閣議決定しているところであり、また、他県もこれに準ずる取り扱いをする方向で検討を進めていると聞いているところでありますので、本県におきましても、国における給与法案の推移を見極めるなど、諸般の事情を十分勘案いたしまして、でき得れば今次定例会に関係条例案を提出したいと考えているところであります。
 なお、給与改定に要する経費の予算措置につきましても、並行して検討を進めてまいる考えであります。
   〔土木部長藤本保君登壇〕
〇土木部長(藤本保君) 一般県道雫石東八幡平線、いわゆる奥産道についてでありますが、本路線の道路調査委託事業に伴う自然破壊問題につきまして、このたび自然公園法並びに森林法違反の疑いで県及び工事担当者が書類送検されましたことは極めて遺憾なことであり、ここに改めて深くおわび申し上げます。今後はこのような事態の再発防止に努め、県民に信頼される行政の推進を図ってまいりたいと考えております。
 まず、奥産道の復旧工事に伴う監督についてでありますが、三ツ石湿原付近の植生破壊に伴う復旧対策につきましては、御案内のとおり、森林防災学や植物生態学等の専門家から成る技術検討委員会を設置し、数回にわたる委員会での議論を経てその復旧計画を策定し、環境庁及び青森営林局等の関係機関との協議の上で復旧工事に着手し、去る10月21日に本年度分の復旧工事が完了したところであります。この復旧工事は、損傷原因を引き起こした委託業者の負担のもとに実施されたものでありますことから、通常の土木工事に当たって行われる岩手県県営建設工事監督規程に基づく監督体制とは異なるものではありますが、県としては、この問題発生の経緯や工事の内容を踏まえますと極めて重要な工事でありますことから、その監督を盛岡土木事務所が直接行っているところであり、さらにこれに加え、環境庁や営林局等の関係機関による現地での指導や工事完了後の確認等もいただきながら進めたものであります。
 次に、今回の問題を契機とし、今後の土木事業推進に当たって、土木部は内部的にどのような検討を行ったかとの御質問でございますが、今回の問題は、土木行政を推進するに当たり極めて憂慮される事態でありますことから、土木部としては、一日も早く県民の信用回復がなされるよう、再発防止に一丸となって努力することとし、事業執行方法の改善を行ったところであります。その主な内容といたしましては、発注設計書に関係法令に基づく土地利用手続のチェックリストを添付し、これに基づき、関係機関との協議経過を所長以下複数の職員による進行管理ができるよう徹底を図ったこと、また、事業実施に伴う各種関係機関との法的手続に関するマニュアルを整備し、事業執行の手引として職員に周知徹底を図ったこと、さらには、工事及び委託業務の多様化、高度化に対応し、適切な監督業務を遂行するため、現場の管理強化を図るとともに、監督補助業務の外部委託を本年度から橋梁下部工事など、あわせて県内10カ所余において試行する等の再発防止策を行ったところであります。このほか、土木部課長、所長会議の開催によります再発防止の徹底や土木部職員への綱紀の保持など、部が一丸となって再発防止に努めているところであります。
 次に、奥産道の今後の展開についてでありますが、これにつきましては、今まで皆様方からさまざまな意見をいただいているところであります。県としては、現段階では引き続き復旧対策に全力を傾注し、自然環境の回復に努めていくことが重要と考えており、御指摘のございました点につきましても、今後十分に検討しながら慎重に対応してまいりたいと考えております。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕
〇農政部長(中村盛一君) まず、耕作放棄地の実態や直接所得補償方式の所見についてのお尋ねでございますが、県内の耕作放棄地につきましては、平成7年農業センサスによりますと4、996ヘクタールと全耕地の3・8%でありまして、前回調査の5年前に比べますと1、057ヘクタールの増加となっております。県北部や沿岸部などの中山間地域がその大半を占めているところであります。耕作放棄地問題につきましては、農業生産の維持拡大はもとより、景観保全、農村が持つ公益機能の確保といった観点からも解決しなければならない重要な課題でありますので、これまでも遊休農地活用整備事業や農地環境整備事業を導入し、再整備を図った上で、担い手への農地利用集積や市民農園としての活用などを進めてきております。今後におきましても、農地としての利用あるいは植林等を含め多面的な利用を図るなど、それぞれの地域の実情を踏まえ、耕作放棄地の有効活用に向けた取り組みを支援してまいりたいと考えております。
 また、直接所得補償方式につきましては、中山間地域のような条件不利地域に対する農業振興対策として、本来、国において講じられるべきものと認識しております。これまでも国に対し、農産物の再生産が可能となるような我が国独自の所得補償制度の創設について機会あるごとに要望してきておりますが、今後とも働きかけを続けてまいる考えであります。
 次に、新食糧法をどう評価し、どう対処しようとしているかについてでございますが、新食糧法は、米の生産、流通、消費をめぐる諸情勢が大きく変化する中で、米穀の需給及び価格の安定を図ることを基本に、自主流通米を主体とした市場原理の導入や規制緩和を通じた流通の合理化等を目的として昨年11月に施行されたところであります。その後1年を経過したところでありますが、流通面では、販売業者について従来の許可制を登録制に改めましたことによりまして、業者数、店舗数の大幅増加や流通ルートの多様化などにより、米購入に対する消費者や販売業者の選択の幅が拡大されたものと存じております。しかしながら、生産面におきましては、米の需給が緩和基調にあり、また、産地間競争が一層激化する中で、自主流通米価格は一部銘柄を除き低下傾向にあります。さらには、流通の規制緩和により、消費者や流通業界から産地の選別が進むなど、新たな米の生産、流通時代を迎えたものと認識しております。このような状況のもとで、本県が今後とも米の主産地としての地位を確固たるものにしていくためには、消費者、流通業界から高い評価が得られ、安定した取引が確保できるような生産、流通体制をさらに強固なものにしていく必要があると考えております。このため、生産面では、適地適品種の配置や適切な栽培管理によります品質、食味のワンランクアップを目標とする、いわゆる売れる米づくり運動を全県的に展開いたしますとともに、農地の利用集積などにより一層の生産コストの低減を図ってまいる考えであります。
 また、販売戦略といたしましては、農業団体と密接な連携のもとに、特にも食味評価の高いひとめぼれ、あきたこまちを県産米の主力銘柄として、また、オリジナル品種のゆめさんさ、かけはしについては量販店向けの独自銘柄として販売促進を図るとともに、首都圏等の販売業者と一体となって販売促進活動を展開するエリア・マーケティングを積極的に進めてまいりたいと考えております。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君) まず、受験競争の緩和への対処についてでありますが、入学者選抜では、これまで推薦入学や面接の導入など選抜方法の多様化を図ってきたところであり、また、生徒の個性を伸ばしていくため、平成10年度から一部において傾斜配点制度を導入することとしたところであります。
 また、大学への進学状況や生徒の減少傾向などを踏まえ、1人でも多くの生徒が、希望する学習機会が得られるよう、長期的展望に立った高等学校再編計画を策定するため、年内をめどに、中学生や高校生とその保護者に対する意識調査を実施することといたしております。
 さらに、いじめや不登校の問題につきましては、教師の指導力の向上を図ることが何よりも重要であると考え、いじめ問題等研修講座や筑波大学カウンセリング講座への派遣を積極的に行うとともに、スクールカウンセラーの配置等による教育相談体制の充実を図っているところであります。
 さらに、学校におけるゆとりの確保についてでありますが、学校週5日制を完全実施する場合どうしても教育内容の厳選が必須でありますが、現在、教育課程審議会で検討中でもありますことから、これが実施されることにより、一層ゆとりのある教育が実現できるものと期待しているところであります。
 次に、各種研修会の見直し等についてでありますが、県におきましては、知識の習得に偏りがちであった教育から、みずから学び、みずから考える力を育成する教育への転換を図るため、また、学校週5日制の月2回実施に伴う教員研修の見直しも図る必要があることから、今年度新たに小、中、高の研究団体、研究機関及び行政の関係者による教員研修改善検討委員会を設置し、現在、研修内容、研修方法のあり方について協議を進めているところであります。今後におきましても、この検討委員会において学ぶということの問い直しを含めた各種研修のあり方を継続して検討してまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、山内隆文君。
   〔42番山内隆文君登壇〕(拍手)

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